(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-192520(P2020-192520A)
(43)【公開日】2020年12月3日
(54)【発明の名称】連続コーティング装置
(51)【国際特許分類】
B01J 2/00 20060101AFI20201106BHJP
A61K 9/28 20060101ALN20201106BHJP
A23L 5/00 20160101ALN20201106BHJP
【FI】
B01J2/00 B
A61K9/28
A23L5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-118771(P2019-118771)
(22)【出願日】2019年6月26日
(31)【優先権主張番号】特願2019-94949(P2019-94949)
(32)【優先日】2019年5月21日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000112912
【氏名又は名称】フロイント産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102853
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹野 寧
(72)【発明者】
【氏名】伏島 靖豊
(72)【発明者】
【氏名】今井 聖
【テーマコード(参考)】
4B035
4C076
4G004
【Fターム(参考)】
4B035LP26
4B035LT09
4C076AA44
4C076FF21
4C076GG16
4G004BA00
(57)【要約】
【課題】錠剤等のコーティング処理を連続的に実施可能な連続コーティング装置を提供する。
【解決手段】連続コーティング装置1は、螺旋状に配置されたフロートレイ2と、フロートレイ2が取り付けられセンターポール14を中心に回転するスカート12と、フロートレイ2に沿って配されたスプレーガン3と、フロートレイ2を覆うように配されたハウジング15を有する。ハウジング15には、ハウジング15内に温風を供給する開口部16と、ハウジング15内の温風を排出する排気口17が設けられている。連続コーティング装置1は、フロートレイ2の上部に供給されスカート12の回転に伴ってフロートレイ2内を下方に移動する被処理物4に対し、温風を供給しつつ、スプレーガン3によってコーティング液を噴霧し所望のコーティング処理を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体のコーティング処理を連続的に実施する連続コーティング装置であって、
螺旋状に配置され、前記粉粒体が収容されるフロートレイと、
前記フロートレイが取り付けられ、上下方向に延びる回転駆動軸を中心に回転可能なスカートと、
前記フロートレイの上方に該フロートレイに沿って配され、前記粉粒体にコーティング液を噴霧する複数個のスプレーガンと、
前記フロートレイを覆うように配されたハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、該ハウジング内に処理気体を供給する開口部と、該ハウジング内の前記処理気体を排出する排気口と、を有し、
前記フロートレイの上部に供給され前記スカートの回転に伴って前記フロートレイ内を下方に移動する前記被処理物に対し、前記処理気体を前記ハウジング内に供給しつつ、前記スプレーガンにより前記コーティング液を噴霧することを特徴とする連続コーティング装置。
【請求項2】
請求項1記載の連続コーティング装置において、
前記フロートレイは、円形螺旋状に複数段設けられることを特徴とする連続コーティング装置。
【請求項3】
請求項1記載の連続コーティング装置において、
前記フロートレイは、多角形螺旋状に複数段設けられることを特徴とする連続コーティング装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の連続コーティング装置において、
前記フロートレイは、螺旋の外径が下段側に向かって拡径していることを特徴とする連続コーティング装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の連続コーティング装置において、
前記フロートレイ内の前記被処理物に当接し、該被処理部の撹拌・転動を促進するバッフルを有することを特徴とする連続コーティング装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の連続コーティング装置において、
前記フロートレイは、前記処理気体が流通可能な通気孔を有することを特徴とする連続コーティング装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の連続コーティング装置において、
前記フロートレイに対し振動を付与する加振装置を有することを特徴とする連続コーティング装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の連続コーティング装置において、
前記フロートレイは、上部が開口した断面略L字形に形成され、
該フロートレイの底面部の一端が、前記スカートの側面部に固定されていることを特徴とする連続コーティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤や食品等の粉粒体(以下、錠剤等と称する)に対しコーティング処理を行う装置に関し、特に、粉粒体のコーティング処理を連続的に行い得る連続コーティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医薬品や食品等の製造装置として、多角形断面や円形断面の回転ドラム(以下、適宜ドラムと略記する)を用いたコーティング装置が知られている。回転ドラムはコーティングパンとも呼ばれ、水平軸線を中心に回転し、ドラム内部にはコーティング液を供給するスプレー装置が設置される。ドラム内に投入された錠剤等は、ドラムの回転に伴って転動し、その表面にはスプレー装置から糖衣液等のコーティング液が噴霧される。コーティング液の噴霧と共に、回転ドラム内には適宜、熱風や冷風が供給・排気され、錠剤等の層を通過して、錠剤等の表面にコーティング層が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−230731号公報
【特許文献2】特開2001−129382号公報
【特許文献3】特開2014−152041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のコーティング装置は、回転ドラム内に錠剤等を所定量投入してコーティング処理を行うバッチ式の装置であるため、処理量が限られ、さらに、1バッチごとに装置の分解や洗浄が必要となるため生産効率が良くないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、錠剤等のコーティング処理を連続的に実施可能な連続コーティング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の連続コーティング装置は、粉粒体のコーティング処理を連続的に実施する連続コーティング装置であって、螺旋状に配置され、前記粉粒体が収容されるフロートレイと、前記フロートレイが取り付けられ、上下方向に延びる回転駆動軸を中心に回転可能なスカートと、前記フロートレイの上方に該フロートレイに沿って配され、前記粉粒体にコーティング液を噴霧する複数個のスプレーガンと、前記フロートレイを覆うように配されたハウジングと、前記ハウジングに設けられ、該ハウジング内に処理気体を供給する開口部と、該ハウジング内の前記処理気体を排出する排気口と、を有し、前記フロートレイの上部に供給され前記スカートの回転に伴って前記フロートレイ内を下方に移動する前記被処理物に対し、前記処理気体を前記ハウジング内に供給しつつ、前記スプレーガンにより前記コーティング液を噴霧することを特徴とする。
【0007】
本発明にあっては、錠剤等の被処理物をコーティング処理するフロートレイを螺旋状に配し、それを回転させつつ、フロートレイに沿って配したスプレーガンによってコーティング処理を実施する。これにより、フロートレイ内を移動させながら被処理物をコーティング処理することができ、粉粒体の連続的なコーティング処理が可能となる。
【0008】
前記連続コーティング装置において、前記フロートレイは、円形螺旋状(外形が円形となった螺旋状)に複数段設けても良く、また、多角形螺旋状(外形が、例えば、六角形、八角形、九角形などの多角形となった螺旋状)に複数段設けても良い。また、前記フロートレイは、螺旋の外径が下段側に向かって拡径するように、すなわち、全体形状が略円錐台状となるように形成しても良い。
【0009】
さらに、前記フロートレイ内の前記被処理物に当接し、該被処理部の撹拌・転動を促進するバッフルをさらに設けても良い。この場合、バッフルは、ハウジング側、スカート側の何れに設けても良く、フロートレイ内に設置しても良い。加えて、前記フロートレイに、前記処理気体が流通可能な通気孔を設けても良い。さらに、前記フロートレイに対し振動を付与する加振装置を設けることも可能である。
【0010】
また、前記フロートレイを、上部が開口した断面略L字形に形成し、該フロートレイの底面部の一端を、前記スカートの側面部に固定しても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明の連続コーティング装置によれば、被処理物をコーティング処理するフロートレイを螺旋状に配し、それを回転させつつ、フロートレイに沿って配したスプレーガンによってコーティング処理を実施するようにしたので、フロートレイ内を移動させながら被処理物をコーティング処理することができ、粉粒体の連続的なコーティング処理が可能となる。したがって、バッチ式のコーティング装置のように、処理量の制限がなく、また、各バッチごとの洗浄等も必要ないため、効率良いコーティング処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態1である連続コーティング装置の構成を示す説明図である。
【
図2】
図1の連続コーティング装置の内部構成を示す説明図である。
【
図3】
図1の連続コーティング装置の要部構成を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態2である連続コーティング装置のフロートレイ構成を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施の形態3である連続コーティング装置のフロートレイ構成を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施の形態4である連続コーティング装置の要部構成を示す説明図である。
【
図7】処理気体の供給経路に関する変形例の説明図である。
【
図8】スプレーガンをハウジング側に取り付けた変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜3は、本発明の実施の形態1である連続コーティング装置の構成を示す説明図であり、当該連続コーティング装置1は、錠剤等の被処理物に対しフイルムコーティングを行う。
図1,2に示すように、連続コーティング装置1は、円錐台形状のハウジング15内に円形螺旋状に形成したフロートレイ2を複数段(8〜12段程度)配した構成となっており、フロートレイ2の上方には、フロートレイ2に沿ってスプレーガン3が配置されている。連続コーティング装置1では、錠剤等の被処理物4は、装置上部から下部に向かってフロートレイ2内を転動しつつ移動する。フロートレイ2上の被処理物4には、スプレーガン3によりコーティング液が噴霧される。被処理物4に噴霧されたコーティング液は、装置上部から供給される処理気体によって乾燥固化され、被処理物4の表面にコーティング層が形成される。
【0014】
フロートレイ2は、上部が開口した断面略半楕円形状となっており、螺旋の外径が下段側に向かって拡径したスパイラルトレイ構造となっている。フロートレイ2の上部開口幅は約60〜80mm、高さは約100〜150mm程度に形成されており、フロートレイ2の底面と側方部には直径3mm程度の通気孔11が多数設けられている。該通気孔11により、給気が被処理物層を通過して被処理物4の表面のコーティング液を乾燥させ、被処理物4の表面にコーティング層が形成される。フロートレイ2の最上段の螺旋外径は約600〜900mm、最下段の螺旋外径は約2800〜4000mm程度となっており、装置全体では、フロートレイ2の長さは約25〜35m程度に設定されている。フロートレイ2は、円錐台形状のスカート12の側面に、トレイサポート13によって支持されている。なお、装置全体の高さは、1200〜1800mm程度となっている。
【0015】
スカート12は、装置上部からの給気がコーティング液の乾燥に寄与せず、装置中央をバイパスして排気されてしまうことを防止すべく設けられている。この場合、スカート12を設けることなく螺旋状のフロートレイ2をハウジング15内に配すると、給気の多くが螺旋中央を下方に抜けて排気されてしまうおそれがあり、熱効率が低下するという問題が生じる。そこで、本発明による連続コーティング装置1では、ハウジング15内にスカート12を設け、装置上部からの給気がスカート12の表面に沿って流れるよう構成する。これにより、スカート12の周囲に配したフロートレイ2に対し、上方からの給気が無駄なく流れ込み、装置の熱効率向上が図られる。
【0016】
スカート12は、厚手のステンレス鋼にて形成されており、スカート12の内部は中空となっている。スカート12の中央には、直径300mm程度の中空のセンターポール(回転駆動軸)14が設けられている。スカート12は、図示しないモータにより、センターポール14を中心に回転する。また、センターポール14には、図示しない加振装置によって振動を付与できるようになっており、連続コーティング装置1では、当該加振装置により、フロートレイ2及びその中の被処理物4に振動が付与される。この場合、加振装置による振動は、連続振動、間欠振動の何れも付与可能である。なお、上記寸法や以下に述べる各種数値はあくまでも例示であり、被処理物4の種類や仕様、処理形態等により種々変更可能であり、本発明はこれらの数値には限定されない。
【0017】
フロートレイ2及びスカート12は、ステンレス製のハウジング15内に収容されている。前述のようにハウジング15もまた円錐台形状となっており、上部には開口部16、下部には排気口17が設けられている。開口部16には、図示しないブロア等の給気装置により、熱風や温風、冷風などの処理気体を適宜供給できるようになっている。排気口17は、装置や製品の仕様に応じて複数個設けても良く、それらを適宜開閉可能としても良い。また、開口部16には、ホッパ等により、連続的に被処理物4が供給される。ハウジング15の上部と下部にはそれぞれ軸受18a,18bが設けられており、センターポール14を回転自在に支持している。なお、装置仕様に応じて、上部の軸受18aは省くことも可能である。
【0018】
スカート12の外壁には、複数個(例えば、50個)のスプレーガン3が取り付けられている。スプレーガン3はニードルレスタイプのものが使用されており、各段のフロートレイ2の上方に配されている。なお、本実施の形態ではスプレーガン3としてニードルレスタイプを用いているが、本発明の連続コーティング装置においてはニードルタイプのスプレーガンも使用可能である。
図3に示すように、スプレーガン3は、コーティング液の供給路を兼ねた給液パイプ21に取り付けられている。給液パイプ21は、フロートレイ2に沿って、スカート12の外側に周方向に螺旋状に配管されており、スカート12の外壁に突設されたガンサポート22に支持されている。給液パイプ21には、センターポール14内に配された図示しない給液路を介して、装置外からコーティング液が供給される。
【0019】
フロートレイ2内の被処理物4には、スプレーガン3により、図示しないコーティング液供給装置から送給されるコーティング液が噴霧される。連続コーティング装置1では、スプレーガン3と被処理物4との距離は30〜60mm程度となっており、各段の間隔は80〜120mm程度に設定されている。なお、スプレーガン3は、フロートレイ2の最上段1〜2段と最下段1〜2段には配されておらず、フロートレイ2の最上段は予熱加温、最下段は乾燥加温にそれぞれ充当される。
【0020】
一方、ハウジング15の内壁には、フロートレイ2内の被処理物4を撹拌・転動させるためのバッフル23が取り付けられている。バッフル23は、ハウジング15からフロートレイ2の被処理物層内に挿入される。このバッフル23により、スカート12の回転や振動に伴って移動する被処理物4の流れが適宜妨げられ、被処理物4の撹拌・転動が促進される。
【0021】
このような連続コーティング装置1では、次のようにしてコーティング処理が実施される。連続コーティング装置1のフロートレイ2は、センターポール14を中心としてスカート12と共に回転しており、その状態にてハウジング15の開口部16から被処理物4が連続的に投入される。また、ハウジング15内には、開口部16から温風が供給される。開口部16から供給された温風はスカート12の表面に沿って下方に流れ、フロートレイ2に当たり、フロートレイ2自体やその中の被処理物4を加温し、通気孔11からさらに下方へと流通する。フロートレイ2の上部に供給された被処理物4は、スカート12の回転、あるいは回転と振動に伴って下方に転動しつつ移動する。移動に際し、被処理物4は、まずフロートレイ2の最上段部の予熱処理段Pにて予熱され、中段のコーティング処理段Cに流下する。
【0022】
コーティング処理段Cは6〜7段(概ね、20m程度の長さ)設けられており、コーティング処理段Cでは、フロートレイ2の延伸方向に沿って複数設けられたスプレーガン3から被処理物4にコーティング液が噴霧される。その際、被処理物4はバッフル23によって適宜撹拌・転動されつつ、コーティング処理が施される。なお、スプレーガン3の噴霧方向を被処理物4の移動方向に傾け、スプレーガン3のエアにより被処理物4の移動を促進することも可能である。
【0023】
フロートレイ2内の被処理物4は、コーティング液の噴霧を受けながら転動し、開口部16から供給されスカート12の表面を流れる温風にて適宜乾燥されて下方に移動する。コーティング処理段Cを通った後、被処理物4は、最下段部の乾燥処理段Dに至り温風乾燥が施される。そして、乾燥処理段Dにて乾燥処理を施された被処理物4は、ハウジング15の底部に設けられた排出トレイ24に送られ、装置外へと排出される。
【0024】
このように、本発明の連続コーティング装置1は、被処理物4をコーティング処理するフロートレイ2を螺旋状に配し、それを回転させつつ、フロートレイ2に沿って配したスプレーガン3によってコーティング処理を実施する。これにより、フロートレイ2を流下させながら錠剤等の被処理物4をコーティング処理することができ、粉粒体の連続的なコーティング処理が可能となる。したがって、バッチ式のコーティング装置のように、処理量の制限がなく、また、各バッチごとの洗浄等も必要ないため、効率良いコーティング処理が可能となる。なお、当該連続コーティング装置1では、被処理物4の処理は、投入から排出までおよそ150分で完了する。
【0025】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2である連続コーティング装置31について説明する。
図4は、本発明の実施の形態2である連続コーティング装置31のフロートレイ構成を示す説明図である。なお、以下の実施の形態では、実施の形態1の連続コーティング装置1と同様の部分、部材については同一の名称あるいは符号を付し、その説明は省略する。
【0026】
実施の形態2の連続コーティング装置31では、フロートレイ32が多角形の螺旋状に形成されている。この実施形態では、フロートレイ32は六角形にてスパイラル状にとなっており、下段側に向かって拡径している。フロートレイ32の各段は下方に向かって傾斜しており、各段は傾斜角度の大きい斜面部33にて接続されている。スプレーガン3やスカート12、ハウジング15などその他の構成は実施の形態1の連続コーティング装置1と同様となっている。なお、この場合、スカート12をフロートレイ32の形状に合わせて、角錐台(ここでは、六角錐台)に形成しても良い。
【0027】
このような連続コーティング装置31においても、フロートレイ32を回転させつつ、スプレーガン3によってコーティング処理を実施する。その際、被処理物4は、フロートレイ32の角部34に当接しながら移動し、斜面部33を滑り落ちる形で次段に移動する。したがって、フロートレイ32内の被処理物4は、角部34にて撹拌・転動され、さらに、斜面部33でも撹拌・転動される。このため、バッフル23のみならず、フロートレイ32の構成自体でも撹拌・転動が促進され、コーティング処理の効率化がさらに図られる。
【0028】
(実施の形態3)
前述の実施の形態1,2では、フロートレイ2が常に下方に傾斜した状態で配置されているが、
図5に示すように、傾斜のない水平なフロートレイ2を複数段設け、各段の間をスロープ(斜面部)35にて接続するようにしても良い。この場合、被処理物4は、回転・振動等により、フラットなフロートレイ2上にて一定方向に移動し、スカート12の外周を一周回りきらないところで、スロープ35により下段のフロートレイ2に流下する。このように、フロートレイ2の各段を水平に設け、各段をスロープ35にて接続する構成とすることにより、傾斜したフロートレイ2に比して装置の製造が容易となり、製品コストの削減が図られる。
【0029】
(実施の形態4)
さらに、前述の実施の形態では、フロートレイ2が断面U字形となっているが、フロートレイとして断面L字形の部材を使用することも可能である。
図6は、本発明の実施形態4である連続コーティング装置41におけるフロートレイ部分の構成を示す説明図である。
図6に示すように、連続コーティング装置41に使用されているフロートレイ42は、上部が開口した断面略L字形状となっている。この場合も、フロートレイ42は、垂直方向に積み上がる形で螺旋状に設けられている。
【0030】
フロートレイ42の上部開口幅は約80〜120mm、高さは約50〜100mm程度に形成されている。また、フロートレイ42の底面部42aには前面に亘って直径3mm程度の通気孔11が多数設けられている。装置上部からの給気は、この通気孔11を通ってフロートレイ42を上から下に抜け、下段側に流通する。フロートレイ42は、底面部42aの一端縁42bが、スカート12の側面部12aに溶接等により固定されており、フロートレイ42はスカート側面部12aに固定支持された状態となっている。このように、フロートレイ42を断面L字形に形成し、その一端縁42bをスカート側面部12aに直接固定することにより、前述の実施の形態におけるトレイサポート13を省くことができ、装置構成が簡略化され、装置製造工数の削減も図られる。
【0031】
また、連続コーティング装置41では、スカート側面部12aに、処理気体の吹き抜け防止用の邪魔板43が設けられている。邪魔板43は、上方からの処理気体が通気孔11を通らず、フロートレイ42に沿って下方に吹き抜けてしまうのを防止するため、その流路を塞ぐように、フロートレイ42の上方に配されている。連続コーティング装置41では、邪魔板43は各段に1〜4枚程度設けられている。なお、邪魔板43は、前述の実施の形態1〜3の連続コーティング装置1,31にも設置可能である。
【0032】
スカート12の側面部12aには、複数個(例えば、50個)のスプレーガン3が取り付けられている。スプレーガン3は各段のフロートレイ42の上方に配されている。
図6に示すように、スプレーガン3は、給液配管やエア配管が収容されたガンホルダ44に取り付けられている。ガンホルダ44は、スカート側面部12aに放射状に複数本(例えば、周方向に等分に4〜8本)突設されており、図示しないコーティング液供給装置に接続されている。
【0033】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
たとえば、乾燥処理段Dにおける温風乾燥を効果的に行うため、温風等の処理気体を直接乾燥処理段Dに供給する供給路を設け、スカート表面に設けたルーバー付きの送気口51からフロートレイ2に温風等を供給しても良い。この場合、処理気体の供給路として、スカート12の内面に送気ダクト52を設けたり(
図7(a))、スカート12を二重構造とし外壁53と内壁54の間に通気部55を設けて処理気体を流通させたり(
図7(b))、センターポール14からスカート表面に向かって送気管56を設けたりする(
図7(c))など、種々の構成が採用可能である。また、乾燥処理段Dに対応してハウジング15に遠赤外線ヒータなどの加熱装置を配したり、スカート12やフロートレイ2,32自体に加熱装置を設けたりしても良い。
【0034】
また、前述の実施形態では、スプレーガン3をスカート12に取り付けた例を示したが、
図8に示すように、スプレーガン3をハウジング15側に取り付けることも可能である。その場合、ハウジング15の内壁に給液路を兼ねたガンサポート61を所定間隔で突設し、スプレーガン3をフロートレイ2の上方に配置する。ガンサポート61には、バッフルを取り付けることも可能である。ハウジング15の外壁には、各ガンサポート61にコーティング液を供給する給液パイプ62を設ける。この場合、給液パイプ62は、ガンサポート61に対応して複数本(例えば、周方向に等分に4〜8本)配置される。なお、
図8では、フロートレイ2として、実施の形態4にて示した断面L字形のものを採用している。
【0035】
さらに、フロートレイ2,32の加振方法は、センターポール14を介した加振のみならず、スカート12やフロートレイ2,32自体を加振したり、装置全体を加振したりする方法も採用し得る。加えて、バッフル23は、フロートレイ2,32の内部や斜面部33などにも設置可能である。また、ハウジング15の熱効率向上や作業性改善のため、ハウジング15の外側にケースを配しても良く、その際、ハウジング15とケースとの間に断熱材を配しても良い。
【0036】
一方、前述の実施の形態では、フロートレイ2,32が下方ほど拡径し、全体が円錐台状となった構成を示したが、フロートレイ2,32全体を同径に構成しても良い。この場合、コーティング処理の際にはフロートレイ2,32が回転することから、スプレーガン3はスカート12側に取り付けることが好ましい。
【0037】
なお、被処理物4の移動促進のため、装置全体を若干傾斜させることも可能である。ただし、スカート12が傾いて回転する構成となるため、センターポール14の軸受負荷等を考慮すると、スカート12を水平回転させる構成が好ましい。また、前述の実施形態では、被処理物にフイルムコーティングを行う装置形態を示したが、当該連続コーティング装置により、被処理物に対し糖衣コーティングを行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、錠剤のコーティング以外にも、菓子やガム等の食品のコーティングにも適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 連続コーティング装置
2 フロートレイ
3 スプレーガン
4 被処理物
11 通気孔
12 スカート
13 トレイサポート
14 センターポール
15 ハウジング
16 開口部
17 排気口
18a,18b 軸受
21 給液パイプ
22 ガンサポート
23 バッフル
24 排出トレイ
31 連続コーティング装置
32 フロートレイ
33 斜面部
34 角部
35 スロープ
41 連続コーティング装置
42 フロートレイ
42a 底面部
42b 一端縁
43 邪魔板
44 ガンホルダ
51 送気口
52 送気ダクト
53 外壁
54 内壁
55 通気部
56 送気管
61 ガンサポート
62 給液パイプ
P 予熱処理段
C コーティング処理段
D 乾燥処理段