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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-192576(P2020-192576A)
(43)【公開日】2020年12月3日
(54)【発明の名称】プレス装置
(51)【国際特許分類】
   B30B 1/32 20060101AFI20201106BHJP
   B30B 15/22 20060101ALI20201106BHJP
【FI】
   B30B1/32 C
   B30B15/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-99277(P2019-99277)
(22)【出願日】2019年5月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 太志
【テーマコード(参考)】
4E089
4E090
【Fターム(参考)】
4E089ED03
4E089ED07
4E089EF03
4E090AB01
4E090BA01
4E090BA02
4E090BB06
4E090BB07
4E090BB08
4E090CA02
4E090CA03
4E090CA04
4E090HA06
(57)【要約】
【課題】加圧力を確保しつつ省エネルギー化が可能なプレス装置を提供する。
【解決手段】プレス装置100は、粉体1を加圧する下型4に加圧力を付与する第1水圧シリンダ10と、加圧力の方向に沿った第1水圧シリンダ10の位置を決める第2水圧シリンダ20と、第2水圧シリンダ20に作動水を供給するポンプPと、ポンプPを駆動する電動モータMと、ポンプPから吐出される作動水を増圧して第1水圧シリンダ10に供給する増圧機構50と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象を加圧するプレス部材に加圧力を付与する第1液圧アクチュエータと、
前記加圧力の方向に沿った前記第1液圧アクチュエータの位置を決める第2液圧アクチュエータと、
前記第2液圧アクチュエータに作動液を供給するポンプと、
前記ポンプを駆動する電動モータと、
前記ポンプから吐出される作動液を増圧して前記第1液圧アクチュエータに供給する増圧機構と、を備えることを特徴とするプレス装置。
【請求項2】
前記増圧機構から前記第1液圧アクチュエータへ供給される前記作動液の流れを制御する第1制御弁と、
前記ポンプから前記第2液圧アクチュエータへ供給される前記作動液の流れを制御する第2制御弁と、
前記第1制御弁及び前記第2制御弁の作動を制御することにより、前記第1液圧アクチュエータ及び前記第2液圧アクチュエータの作動を制御するコントローラと、をさらに備え、
前記コントローラは、前記加圧力として繰り返し荷重が前記プレス部材に付与されるように前記第1液圧アクチュエータの作動を制御すると共に、前記第1液圧アクチュエータの位置を一定に保つように前記第2液圧アクチュエータの作動を制御することを特徴とする請求項1に記載のプレス装置。
【請求項3】
前記第1液圧アクチュエータは、
第1シリンダチューブと、
前記第1シリンダチューブに摺動自在に挿入される第1ピストンと、を有し、
前記第2液圧アクチュエータは、
第2シリンダチューブと、
前記第2シリンダチューブに摺動自在に挿入される第2ピストンと、を有し、
前記第1ピストンの外径は、前記第2ピストンの外径よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のプレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上型と下型からなる金型と、油圧ポンプと、油圧ポンプを駆動するモータと、油圧ポンプから油が供給され上型を駆動するアクチュエータとしての片ロッド油圧シリンダと、を備えるプレス機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−68389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるような、いわゆる液圧プレス装置において大きな加圧力を発揮するためには、一般に、ポンプを大型化したり、ポンプを駆動する電動モータを高速で回転させたりする必要がある。この場合、電動モータが高負荷で回転することになるため、その分エネルギー消費も大きくなる。このような液圧プレス装置に対しては、低いエネルギー消費で大きな加圧力を発生させることが求められている。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、加圧力を確保しつつ省エネルギー化が可能なプレス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、プレス装置であって、加工対象を加圧するプレス部材に加圧力を付与する第1液圧アクチュエータと、加圧力の方向に沿った第1液圧アクチュエータの位置を決める第2液圧アクチュエータと、第2液圧アクチュエータに作動液を供給するポンプと、ポンプを駆動する電動モータと、ポンプから吐出される作動液を増圧して第1液圧アクチュエータに供給する増圧機構と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明では、ポンプから吐出される作動液は、第1液圧アクチュエータの位置合わせをする第2液圧アクチュエータに導かれると共に、増圧機構に導かれる。増圧機構は、ポンプから吐出される作動液を増圧して、プレス部材に加圧力を付与する第1液圧アクチュエータに供給する。このように、第1液圧アクチュエータ及び第2液圧アクチュエータに作動液を供給するポンプが共通であっても、第1液圧アクチュエータには増圧機構によって増圧された作動液が供給されるため、電動モータを比較的低負荷で回転させても、充分な加圧力を発揮することができる。
【0008】
また、本発明は、増圧機構から第1液圧アクチュエータへ供給される作動液の流れを制御する第1制御弁と、ポンプから第2液圧アクチュエータへ供給される作動液の流れを制御する第2制御弁と、第1制御弁及び第2制御弁の作動を制御することにより、第1液圧アクチュエータ及び第2液圧アクチュエータの作動を制御するコントローラと、をさらに備え、コントローラが、加圧力として繰り返し荷重がプレス部材に付与されるように、第1液圧アクチュエータの作動を制御すると共に、第1液圧アクチュエータの位置を一定に保つように第2液圧アクチュエータの作動を制御することを特徴とする。
【0009】
この本発明では、コントローラによって第1液圧アクチュエータの位置を一定に保つように第2アクチュエータの作動を制御しつつ、第1液圧アクチュエータの作動を制御することで、第1液圧アクチュエータが発揮する推力によって加圧力としての繰り返し荷重をプレス部材に付与することができる。
【0010】
また、本発明は、第1液圧アクチュエータが、第1シリンダチューブと、第1シリンダチューブに摺動自在に挿入される第1ピストンと、を有し、第2液圧アクチュエータが、第2シリンダチューブと、第2シリンダチューブに摺動自在に挿入される第2ピストンと、を有し、第1ピストンの外径は、第2ピストンの外径よりも小さいことを特徴とする。
【0011】
この発明では、第1液圧アクチュエータの第1ピストンの受圧面積が、第2液圧アクチュエータの第2ピストンの受圧面積よりも小さい。これにより、第2液圧アクチュエータと比較して、第1液圧アクチュエータの応答性が向上し第1液圧アクチュエータが発揮する加圧力の制御が容易になるため、第2液圧アクチュエータのみによって加圧力を制御する場合と比較して、加圧力の制御精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加圧力を確保しつつプレス装置が省エネルギー化される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るプレス装置の水圧回路図であり、第1水圧シリンダが初期位置にある状態を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るプレス装置の水圧回路図であり、下型に加圧力が付与される状態を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るプレス装置の制御を説明するための図であり、(a)は時間と加圧力との関係を示すグラフ図であり、(b)は、時間と第1水圧シリンダの鉛直方向における位置との関係を示すグラフ図である。
図4】本発明の実施形態に係るプレス装置の変形例を示す水圧回路図であり、第1水圧シリンダが初期位置にある状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るプレス装置100について説明する。
【0015】
プレス装置100は、加工対象としての粉体1を加圧圧縮して、例えばファンデーションやアイシャドウなどの化粧品、タブレット状の入浴剤や錠菓、薬剤といった粉体成形体を加工する粉体成形機に用いられる。
【0016】
図1に示すように、プレス装置100は、ダイ2に形成される収容孔2aに一対の型3,4が挿入され、一対の型3,4によって収容孔2a内に形成されるキャビティ内の粉体1を加圧圧縮して粉体成形体を加工する。以下では、一対の型をそれぞれ「上型3」、「下型4」と称する。下型4が、プレス装置100によって加圧力が付与されるプレス部材に相当する。
【0017】
上型3は、図示しない移動機構により、収容孔2aの内周面に沿って収容孔2aの中心軸方向に移動可能に構成される。なお、本実施形態では、収容孔2aの中心軸は、鉛直方向に沿って設けられる。
【0018】
プレス装置100は、下型4に加圧力を付与する第1液圧アクチュエータとしての第1水圧シリンダ10と、加圧力の方向に沿った第1水圧シリンダ10の位置を決める第2液圧アクチュエータとしての第2水圧シリンダ20と、作動液としての作動水を吐出するポンプPと、ポンプPを駆動する電動モータMと、作動水を貯留するタンクTと、第1水圧シリンダ10及び第2水圧シリンダ20に給排される作動水の流れを制御する流体圧制御装置30と、プレス装置100の作動を制御するコントローラ70と、を備える。
【0019】
第1水圧シリンダ10は、円筒状の第1シリンダチューブ11と、第1シリンダチューブ11内に挿入される第1ピストンロッド12と、第1ピストンロッド12の端部に設けられ第1シリンダチューブ11の内周面に沿って摺動する第1ピストン13と、を有する。
【0020】
第1シリンダチューブ11の内部は、第1ピストン13によって第1ロッド側室14と第1ボトム側室15とに仕切られる。第1ロッド側室14室及び第1ボトム側室15には、作動水が充填される。
【0021】
第1シリンダチューブ11から突出する第1ピストンロッド12の先端には、径方向外側に広がるフランジ部12aが設けられる。フランジ部12aが第1シリンダチューブ11の端部に当接することにより、第1水圧シリンダ10の収縮方向へのストローク端が規定される。また、第1ピストンロッド12のフランジ部12aには、下型4に付与される加圧力を測定する荷重検出部としてのロードセル71が取り付けられる。つまり、プレス装置100による加工時には、第1ピストンロッド12の先端は、ロードセル71を介して下型4に当接する。ロードセル71が検出した加圧力は、コントローラ70に入力される。
【0022】
第1ボトム側室15に作動水が供給され、第1ロッド側室14の作動水が排出されることで、第1水圧シリンダ10は伸長作動する。反対に、第1ロッド側室14に作動水が供給され、第1ボトム側室15の作動水が排出されることで、第1水圧シリンダ10は収縮作動する。
【0023】
第1水圧シリンダ10が伸長作動することで、下型4が上型3に向けて押圧され、粉体成形体を加工する加圧力が下型4に付与される。本実施形態では、プレス装置100による加圧力の方向は、鉛直方向に相当する。
【0024】
第2水圧シリンダ20は、平坦面である設置面G上に設けられる。第1水圧シリンダ10と同様、第2水圧シリンダ20は、円筒状の第2シリンダチューブ21と、第2シリンダチューブ21内に挿入される第2ピストンロッド22と、第2ピストンロッド22の端部に設けられ第2シリンダチューブ21の内周面に沿って摺動する第2ピストン23と、を有する。
【0025】
第2シリンダチューブ21の内部は、第2ピストン23によって第2ロッド側室24と第2ボトム側室25とに仕切られる。第2ロッド側室24室及び第2ボトム側室25には、作動水が充填される。
【0026】
第2水圧シリンダ20の第2ピストンロッド22の先端は、第1水圧シリンダ10の第1シリンダチューブ11に鉛直方向の下方から当接する。
【0027】
第2ボトム側室25に作動水が供給され、第2ロッド側室24の作動水が排出されることで、第2水圧シリンダ20は伸長作動する。反対に、第2ロッド側室24に作動水が供給され、第2ボトム側室25の作動水が排出されることで、第2水圧シリンダ20は収縮作動する。第2水圧シリンダ20が伸縮作動することで、第1水圧シリンダ10が鉛直方向に移動し、加圧力の方向である鉛直方向における第1水圧シリンダ10の位置が決められる。
【0028】
鉛直方向における第1水圧シリンダ10の位置は、位置検出部としての位置センサ72によって検出される。位置センサ72の検出結果は、コントローラ70に入力される。位置センサ72は、第1水圧シリンダ10の位置(言い換えれば、第2水圧シリンダ20のストローク位置)を検出する公知の構成を採用できるため、詳細な説明は省略し、以下簡単に説明する。位置センサ72は、例えば、第1水圧シリンダ10の第1シリンダチューブ11に取り付けられ、第1水圧シリンダ10の第1シリンダチューブ11と第2水圧シリンダ20の第2シリンダチューブ21との相対位置を測定する光学式のものである。位置センサ72は、光学式に限らず、その他の非接触式の位置センサや接触式の位置センサであってもよい。また、第2水圧シリンダ20のストローク位置を検出するストロークセンサを位置センサ72として用いてもよい。また、位置センサ72は、第1水圧シリンダ10の第1シリンダチューブ11に限らず、例えば、第2水圧シリンダ20の第2シリンダチューブ21、第2水圧シリンダ20が設置される設置面G、ダイ2等、任意の位置に設けることができる。
【0029】
第1水圧シリンダ10と第2水圧シリンダ20は、それぞれの第1ピストン13と第2ピストン23との中心軸が互いに一致するように並んで設けられる。つまり、第1水圧シリンダ10と第2水圧シリンダ20とは、互いに伸縮作動の方向が一致するものであり、それぞれ鉛直方向に沿って伸縮作動する。
【0030】
また、第1水圧シリンダ10の第1ピストン13の外径は、第2水圧シリンダ20の第2ピストン23の外径よりも小さく形成される。
【0031】
電動モータMは、例えば、三相ブラスレスモータであり、電力供給によって駆動される。ポンプPは、電動モータMによって回転駆動され吐出通路31を通じて作動水を加圧して吐出する。吐出通路31は、2つに分岐して、それぞれ後述する第2制御弁41と増圧制御弁52とに接続される。
【0032】
流体圧制御装置30は、ポンプPから吐出される作動水を増圧して第1水圧シリンダ10に供給する増圧機構50と、増圧機構50から第1水圧シリンダ10に供給される作動水の流れを制御する第1制御弁40と、ポンプPから第2水圧シリンダ20に供給される作動水の流れを制御する第2制御弁41と、を有する。
【0033】
増圧機構50は、作動水によって往復動すると共に往復動に伴って作動水を増圧して吐出する増圧シリンダ60と、作動水を蓄圧した状態で貯留するアキュムレータ51と、ポンプPから増圧シリンダ60に供給される作動水の流れを制御する増圧制御弁52と、増圧シリンダ60からタンクTに排出される作動水の流れを制御する排出制御弁53と、を有する。
【0034】
増圧シリンダ60は、シリンダ部材61と、シリンダ部材61の内部を往復動する増圧ピストン65と、を有する。
【0035】
シリンダ部材61には、円形の小径穴61aと、小径穴61aよりも内径が大きい円形の大径穴61bと、が形成される。小径穴61aと大径穴61bとは、同軸的に互いに接続される。シリンダ部材61の内周には、小径穴61aと大径穴61bの内径差によって、環状の段差面61cが形成される。
【0036】
増圧ピストン65は、シリンダ部材61の小径穴61aに摺動自在に挿入されるロッド部66と、シリンダ部材61の大径穴61bに摺動自在に挿入されるヘッド部67と、を有する。ロッド部66とヘッド部67とは、互いに同軸的に接続される。増圧ピストン65の中心軸に垂直なロッド部66の断面積は、増圧ピストン65の中心軸に垂直なヘッド部67の断面積よりも小さい。
【0037】
シリンダ部材61の内部には、増圧ピストン65のロッド部66とシリンダ部材61の一方の端部(小径穴61aの底部)との間に形成される第1圧力室62と、ロッド部66の外周と大径穴61bの内周面の間であってヘッド部67と段差面61cとの間に形成される第2圧力室63と、ヘッド部67とシリンダ部材61の他方の端部(大径穴61bの底部)との間に形成される第3圧力室64と、が区画される。
【0038】
第1圧力室62には、増圧制御弁52と第1制御弁40とを接続する接続通路32に連通する合流通路55が連通する。第2圧力室63には、増圧制御弁52に接続される供給通路56と、排出制御弁53に接続される排出通路57と、が連通する。第3圧力室64には、アキュムレータ51に接続される蓄圧通路58が連通する。
【0039】
アキュムレータ51の内部には、蓄圧通路58に連通し作動水が貯留される液室51aと、ガス(例えば窒素ガス)が圧縮状態で封入され内圧によって液室51aの作動水を加圧する気室51bと、が仕切部材(ブラダ)51cによって区画される。アキュムレータ51の液室51aには、増圧シリンダ60の増圧ピストン65の移動に伴い、蓄圧通路58を通じて第3圧力室64との間で作動水が給排される。液室51aへの作動水の給排に伴い、気室51bが拡縮する。
【0040】
また、アキュムレータ51には、液室51aの圧力を検出する圧力検出部としての圧力センサ54が設けられる。圧力センサ54の検出結果は、コントローラ70に入力される。
【0041】
増圧制御弁52は、3ポート2ポジションの電磁切換弁(ON−OFF弁)である。増圧制御弁52の一方側のポートには、ポンプPに連通する吐出通路31が接続される。増圧制御弁52の他方側のポートには、増圧シリンダ60の第2圧力室63に連通する供給通路56と、第1制御弁40に接続する接続通路32と、が接続される。
【0042】
増圧制御弁52は、吐出通路31に対する供給通路56及び接続通路32の連通をそれぞれ遮断する遮断ポジション52Aと、吐出通路31を供給通路56及び接続通路32のそれぞれに連通させる連通ポジション52Bと、を有する。増圧制御弁52は、ソレノイド52dへの通電が遮断された状態では、スプリング52cの付勢力によって遮断ポジション52Aに切り換えられる。ソレノイド52dへ通電されると、増圧制御弁52は、連通ポジション52Bに切り換えられる。
【0043】
排出制御弁53は、2ポート2ポジションの電磁切換弁(ON−OFF弁)である。排出制御弁53の一方側のポートには、増圧シリンダ60の第2圧力室63に連通する排出通路57が接続される。排出制御弁53の他方側のポートには、タンクTに連通するタンク通路37が接続される。
【0044】
排出制御弁53は、排出通路57とタンク通路37との連通を遮断する保持ポジション53Aと、排出通路57とタンク通路37とを連通する排出ポジション53Bと、を有する。排出制御弁53は、ソレノイド53dへの通電が遮断された状態では、スプリング53cの付勢力によって保持ポジション53Aに切り換えられる。ソレノイド53dへ通電されると、排出制御弁53は、排出ポジション53Bに切り換えられる。
【0045】
第1制御弁40は、4ポート3ポジションのサーボ弁である。第1制御弁40の一方側のポートには、増圧制御弁52に接続される接続通路32と、タンクTに連通するタンク通路37と、が接続される。第1制御弁40の他方側のポートには、第1水圧シリンダ10の第1ロッド側室14に連通する第1ロッド側通路33と、第1水圧シリンダ10の第1ボトム側室15に連通する第1ボトム側通路34と、が接続される。
【0046】
第1制御弁40は、接続通路32と第1ロッド側通路33とを連通しタンク通路37と第1ボトム側通路34とを連通する第1収縮ポジション40Aと、接続通路32及びタンク通路37に対する第1ロッド側通路33及び第1ボトム側通路34の連通をそれぞれ遮断する第1中立ポジション40Bと、接続通路32と第1ボトム側通路34とを連通しタンク通路37と第1ロッド側通路33とを連通する第1伸長ポジション40Cと、を有する。
【0047】
第1制御弁40は、ソレノイド40eへの通電が遮断された状態では、スプリング40dの付勢力によって第1収縮ポジション40Aに切り換えられる。ソレノイド40eへの通電量の増加に伴い、第1制御弁40は、第1収縮ポジション40Aから第1中立ポジション40B、第1伸長ポジション40Cの順で連続的に切り換えられる。第1制御弁40は、コントローラ70からの制御指令によって開度(切換位置)が目標値に制御される。
【0048】
第2制御弁41は、4ポート3ポジションのサーボ弁である。第2制御弁41の一方側のポートには、ポンプPから吐出される作動水を導く吐出通路31と、タンクTに連通するタンク通路37と、が接続される。第2制御弁41の他方側のポートには、第2水圧シリンダ20の第2ロッド側室24に連通する第2ロッド側通路35と、第2水圧シリンダ20の第2ボトム側室25に連通する第2ボトム側通路36と、が接続される。
【0049】
第2制御弁41は、吐出通路31と第2ロッド側通路35とを連通しタンク通路37と第2ボトム側通路36とを連通する第2収縮ポジション41Aと、吐出通路31及びタンク通路37に対する第2ロッド側通路35及び第2ボトム側通路36の連通をそれぞれ遮断する第2中立ポジション41Bと、吐出通路31と第2ボトム側通路36とを連通しタンク通路37と第2ロッド側通路35とを連通する第2伸長ポジション41Cと、を有する。
【0050】
第2制御弁41は、ソレノイド41eへの通電が遮断された状態では、スプリング41dの付勢力によって第2収縮ポジション41Aに切り換えられる。ソレノイド41eへの通電量の増加に伴い、第2制御弁41は、第2収縮ポジション41Aから第2中立ポジション41B、第2伸長ポジション41Cの順で連続的に切り換えられる。第2制御弁41は、コントローラ70からの制御指令によって開度(切換位置)が目標値に制御される。
【0051】
また、吐出通路31には、タンクTに連通するリリーフ通路38が接続される。リリーフ通路38には、吐出通路31の圧力が所定の圧力(リリーフ圧)に達すると開弁するリリーフ弁45が設けられる。
【0052】
コントローラ70は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。コントローラ70は、複数のマイクロコンピュータで構成されてもよい。コントローラ70は、少なくとも、各実施形態や変形例に係る制御のために必要な処理を実行可能となるようにプログラムされている。なお、コントローラ70は一つの装置として構成されていても良いし、複数の装置に分けられ、本実施形態における各制御を当該複数の装置で分散処理するように構成されていてもよい。
【0053】
コントローラ70は、第1制御弁40、第2制御弁41、増圧制御弁52、及び排出制御弁53の作動を制御することにより、第1水圧シリンダ10及び第2水圧シリンダ20の作動を制御する。
【0054】
次に、プレス装置100の作動及び粉体成形体の製造方法について説明する。
【0055】
粉体成形体の製造においては、まず、準備工程として、上型3を鉛直方向に上昇させてダイ2の収容孔2aから退避させ、下型4上に原材料である粉体1を投入する。粉体1の投入は、例えば、コントローラ70によって作動が制御される粉体投入機(図示省略)などにより行われる。粉体1が投入された後、上型3を鉛直方向に下降させて、上型3と下型4により粉体1を挟み込む。上型3は、駆動機構によって粉体1に接触した位置で保持される。準備工程においては、第1水圧シリンダ10及び第2水圧シリンダ20は作動せず、図1に示すように、第1水圧シリンダ10は、第1ピストンロッド12のフランジ部12aが第1シリンダチューブ11に当接する最収縮状態であり、第1ピストンロッド12が下型4に当接しない初期位置に位置する。
【0056】
次に、ポンプPから吐出される作動水を増圧機構50のアキュムレータ51に蓄圧する蓄圧工程が行われる。
【0057】
蓄圧工程では、まず、コントローラ70からの指令に基づき、電動モータMを回転させてポンプPを駆動すると共に、増圧制御弁52のソレノイド52dに通電して、増圧制御弁52を連通ポジション52Bに切り換える。この際、第1制御弁40と第2制御弁41のソレノイド40e,41eにもそれぞれ所定の通電量で通電し、第1制御弁40と第2制御弁41とをそれぞれ第1中立ポジション40Bと第2中立ポジション41Bとに切り換える。また、排出制御弁53のソレノイド53dには通電されず、排出制御弁53は、保持ポジション53Aに切り換えられる。
【0058】
よって、ポンプPから吐出される作動水は、合流通路55を通じて増圧シリンダ60の第1圧力室62に供給されると共に、供給通路56を通じて増圧シリンダ60の第2圧力室63に供給される。第1圧力室62及び第2圧力室63に作動水が供給されることで、増圧シリンダ60の増圧ピストン65は、第3圧力室64の容積を減少する方向に移動する。このような増圧ピストン65の移動に伴い、第3圧力室64内の作動水の一部は、蓄圧通路58を通じてアキュムレータ51の液室51aに導かれ、液室51aが拡張すると共に、気室51bが収縮する。これにより、作動水が、液室51a内で蓄圧された状態で貯留される。なお、第1制御弁40と第2制御弁41がそれぞれ第1中立ポジション40B及び第2中立ポジション41Bであるため、ポンプPから吐出される作動水が第1水圧シリンダ10及び第2水圧シリンダ20に導かれることはない。
【0059】
アキュムレータ51の液室51a内の圧力が所定の圧力まで上昇すると、増圧制御弁52のソレノイド52dへの通電が遮断され、増圧制御弁52はスプリング52cの付勢力により遮断ポジション52Aに切り換えられる。これにより、増圧シリンダ60への作動水の供給が停止され、アキュムレータ51には所定の圧力で蓄圧された状態の作動水が貯留される。
【0060】
次に、第1水圧シリンダ10及び第2水圧シリンダ20を駆動して、上型3及び下型4によって粉体1を加圧圧縮する成形工程が行われる。成形工程には、第2水圧シリンダ20を伸長作動させて第1水圧シリンダ10を初期位置から加工位置(図2に示す状態)まで上昇させる上昇工程と、第1水圧シリンダ10を伸縮作動させて所定の加圧力を下型4に付与する加圧工程と、第2水圧シリンダ20を収縮作動させて第1水圧シリンダ10を初期位置まで下降させる下降工程と、が含まれる。
【0061】
図3(a)は、時間経過に伴う加圧力の目標値の波形を示すグラフ図であり、横軸が時間、縦軸が加圧力の目標値である。図3(b)は、時間経過に伴う第1水圧シリンダ10の鉛直方向の目標位置の波形を示すグラフ図であり、横軸が時間、縦軸が第1水圧シリンダ10の目標位置である。成形工程では、コントローラ70は、下型4に付与される加圧力と第1水圧シリンダ10の位置がそれぞれ図3(a)及び図3(b)に示す加圧力及び位置となるように第1水圧シリンダ10及び第2水圧シリンダ20の作動を制御する。より具体的には、コントローラ70は、図3(a)に示す加圧力の目標値とロードセル71が検出する実際の加圧力との偏差に基づくフィードバック制御により、第1水圧シリンダ10の作動を制御する。また、コントローラ70は、図3(b)に示す第1水圧シリンダ10の目標位置と、位置センサ72が検出する第1水圧シリンダ10の実位置との偏差に基づくフィードバック制御により、第2水圧シリンダ20の作動を制御する。
【0062】
上昇工程では、コントローラ70は、第2制御弁41のソレノイド41eへの通電量を増加させ、第2制御弁41を第2中立ポジション41Bから第2伸長ポジション41Cに切り換える。これにより、ポンプPから吐出される作動水が第2水圧シリンダ20の第2ボトム側室25に供給され、第2水圧シリンダ20が伸長作動する。これにより、第1水圧シリンダ10は、図3(b)に示すように所定の一定速度で上昇する。
【0063】
第1水圧シリンダ10を上昇させると、図2に示すように、第1水圧シリンダ10の第1ピストンロッド12の先端が、ロードセル71を介して下型4に当接する(時間=T1)。この状態からさらに第2水圧シリンダ20を伸長作動させて第1水圧シリンダ10を上昇させると、下型4に付与される加圧力が徐々に上昇し、下型4に付与される加圧力が所定の圧力(以下、「保持荷重」と称する。)に達する。なお、上昇工程では、第1水圧シリンダ10は作動せず、最収縮状態が維持される。保持荷重は、ポンプPから吐出される作動水によって伸長する第2水圧シリンダ20によって第1水圧シリンダ10を介して下型4に付与される加圧力である。
【0064】
下型4に付与される加圧力が保持荷重に達すると、加圧工程の開始から所定時間T2が経過するまで、第1水圧シリンダ10の位置が変化しないように、言い換えれば加圧力が保持荷重で維持されるように、第2水圧シリンダ20の作動を制御する。具体的には、加圧力が保持荷重に達した際の第1水圧シリンダ10の位置(加工位置)よりも第1水圧シリンダ10が下降すると、第2制御弁41への通電量を増加させて第2制御弁41を第2伸長ポジション41C側へ切り換え、第2水圧シリンダ20を伸長作動させる。また、第1水圧シリンダ10が保持位置よりも上昇すると、第2制御弁41への通電量を減少させて第2制御弁41を第2収縮ポジション41A側へ切り換え、第2水圧シリンダ20を収縮作動させる。このようにして、第1水圧シリンダ10の位置が保持位置に維持される。
【0065】
加圧工程では、増圧機構50によって増圧された作動水を第1水圧シリンダ10に供給して下型4に加圧力を付与すると共に、ポンプPから吐出される作動水によって第2水圧シリンダ20を作動させて第1水圧シリンダ10の位置制御を行う。
【0066】
具体的に説明すると、加圧工程では、増圧機構50の排出制御弁53のソレノイド53dに通電して排出制御弁53を排出ポジション53Bに切り換える。また、第1制御弁40のソレノイド40eに通電して第1制御弁40を第1伸長ポジション40Cに切り換える。
【0067】
排出制御弁53が排出ポジション53Bに切り換えられると、増圧シリンダ60の第2圧力室63の作動水が排出通路57を通じてタンクTに排出される。これにより、第2圧力室63の圧力、言い換えれば、第3圧力室64を収縮させる方向へ増圧ピストン65を移動させる推力が低下する。よって、アキュムレータ51に蓄圧して貯留された作動水が第3圧力室64に導かれ、増圧ピストン65は第1圧力室62を収縮する方向に移動する。
【0068】
ここで、第3圧力室64の圧力を受圧するヘッド部67の受圧面積(ヘッド部67の断面積に相当)は、第1圧力室62の圧力を受圧するロッド部66の受圧面積(ロッド部66の断面積に相当)よりも大きい。よって、増圧ピストン65が第1圧力室62を収縮する方向へ移動するのに伴い、第1圧力室62の作動水は、増圧ピストン65における第3圧力室64の圧力の受圧面積と第1圧力室62の圧力の受圧面積との面積比に応じて増圧されて、増圧シリンダ60から吐出される。増圧された作動水は、合流通路55から接続通路32を通じて第1水圧シリンダ10の第1ロッド側室14に供給される。これにより、第1水圧シリンダ10が伸長作動して、下型4に加圧力が付与される。
【0069】
このように、プレス装置100では、第1水圧シリンダ10は、第2水圧シリンダ20と共通の流体圧源(ポンプP)によって作動するものの、第1水圧シリンダ10には増圧機構50によって増圧された作動水が供給される。
【0070】
以下、加圧工程における第1水圧シリンダ10と第2水圧シリンダ20の作動の制御について、より詳細に説明する。
【0071】
本実施形態では、図3(a)に示すように、所定の最大荷重及び最小荷重の間で周期的に変動する繰り返し荷重が下型4に付与されるように、第1水圧シリンダ10及び第2水圧シリンダ20の作動が制御される。なお、最小荷重は、保持荷重以上に設定される。
【0072】
第1水圧シリンダ10が発揮する加圧力(推力)は、増圧機構50から供給される作動水の圧力に応じて定まる。増圧機構50から第1水圧シリンダ10に供される作動水の圧力は、第1制御弁40のポジション(開度)によって制御される。よって、ロードセル71が検出する実荷重が図3(a)に示す目標荷重よりも大きい場合には、第1制御弁40のソレノイド40eへの通電量を減少させ、第1制御弁40のポジションが第1収縮ポジション40A側へ切り換える。言い換えれば、第1制御弁40における第1伸長ポジション40Cの開度が減少する。これにより、第1水圧シリンダ10の第1ボトム側室15へ供給される圧力が減少し、第1水圧シリンダ10から下型4へ付与される加圧力が低下する。
【0073】
反対に、実荷重が目標荷重よりも小さい場合には、第1制御弁40のソレノイド40eへの通電量を増加させて第1伸長ポジション40Cの開度が増加するように第1制御弁40を切り換える。これにより、第1水圧シリンダ10の第1ボトム側室15へ供給される圧力が増加し、第1水圧シリンダ10から下型4に付与される加圧力が上昇する。
【0074】
また、加圧工程では、第2水圧シリンダ20は、第1水圧シリンダ10の位置を加工位置に維持するように、制御される。
【0075】
このように第1水圧シリンダ10及び第2水圧シリンダ20の作動を制御することで、下型4には、図3(a)の波形で示す繰り返し荷重が加圧力として付与される。これにより、粉体1が上型3と下型4とによって圧縮され、粉体成形体が製造される。
【0076】
所定の回数だけ繰り返し荷重が付与されると、第1制御弁40のソレノイド40eへの通電量を減少させて第1制御弁40を第1収縮ポジション40Aに切り換える。これにより、第1水圧シリンダ10は収縮して最収縮状態となり、下型4に付与される加圧力は保持荷重まで低下する。このようにして、加圧工程が完了する(時間=T3)。
【0077】
下降工程では、第1水圧シリンダ10を保持位置で一定時間だけ維持した後、所定の速度で第1水圧シリンダ10を下降させる。第1水圧シリンダ10が初期位置まで下降すると、駆動装置によって上型3を上昇させ、成形された粉体成形体が取り出される。以上のようにして、粉体成形体の製造が行われる。
【0078】
なお、上記各工程によって一つの粉体成形体の製造が完了した際、アキュムレータ51の液室51a内の圧力が所定の圧力よりも低くなっている場合には、次の粉体成形体の製造の際、再び上記蓄圧工程が行われる。一方、一つの粉体成形体の製造が完了した際、アキュムレータ51の液室51a内に所定の圧力よりも大きな圧力が残存している場合には、次の粉体成形体の製造の際には、蓄圧工程を行う必要はない。
【0079】
ここで、プレス装置としては、一般に、電動モータの回転をベルト、プーリ、ボールねじなどの機械要素によって直線運動に変換して加圧力を発揮する機械プレスと、油圧などの液圧を利用して加圧力を発揮する液圧プレスと、が知られている。
【0080】
しかしながら、機械プレスでは、機械要素における摩擦やガタ、すべり、摩耗等の影響によって伝達遅れや伝達ロスが生じるおそれがあり、加圧力の制御性が低下するおそれがある。
【0081】
また、液圧プレスである油圧プレス装置では、作動油が作動水と比べて圧縮性が高いため、高い精度で加圧力を制御することが難しい。
【0082】
これに対し、本実施形態に係るプレス装置100は、作動水を作動液とする水圧プレスである。このため、機械プレスや油圧プレスと比較して、加圧力の制御において、応答性に優れ、高い精度を発揮することができる。このため、プレス装置100は、図3(a)に示すように、繰り返し荷重を下型4に付与する場合であっても、高い精度で加圧力を制御することができ、粉体成形体の品質を向上させることができる。
【0083】
ここで、プレス装置としては、単一の水圧シリンダによって下型に加工力を付与する場合も考えられる。一般に、水圧シリンダは、ピストン径が大きく、供給される作動水の圧力を受けるピストンの受圧面積が大きいほど、大きな推力を発揮できる。その一方、ピストンの受圧面積が大きいほど、供給される圧力の変化に対する推力の変化の度合いも大きくなり、水圧シリンダが発揮する推力の制御が難しくなる。よって、プレス装置として充分な加圧力を発揮するために水圧シリンダのピストン径を大きくすると、加圧力の制御精度がその分低下するおそれがある。このように、単一の水圧シリンダによって下型に加圧力を付与する場合には、加圧力の確保と加圧力の制御精度の向上との両立が難しい。
【0084】
これに対し、本実施形態では、相対的に外径が大きい第2ピストン23を有する第2水圧シリンダ20によって第1水圧シリンダ10が位置決めされると共に、相対的に外径が小さい第1ピストン13を有する第1水圧シリンダ10によって下型4へ繰り返し荷重が付与される。プレス装置100では、第2水圧シリンダ20により加圧力として保持荷重が発揮されるため、粉体成形体を製造するために第1水圧シリンダ10が発揮すべき荷重を抑制することができる。また、第1水圧シリンダ10には、増圧機構50によって増圧された作動水が第1水圧シリンダ10に導かれる。よって、第1水圧シリンダ10の第1ピストン13の外径が相対的に小さい場合でも、粉体成形体を製造するために充分な加圧力を発揮することができる。
【0085】
また、第1水圧シリンダ10の第1ピストン13の外径を比較的小さくできるため、供給される圧力の変化に対する第1水圧シリンダ10の推力の変化の割合が比較的小さくなる。よって、第1水圧シリンダ10に供給される圧力値の制御、言い換えれば、第1水圧シリンダ10に供給される作動水の流れを制御する第1制御弁40の制御において、高い精度で制御しなくても、第1水圧シリンダ10に所望の推力を発揮させることができる。このため、第1水圧シリンダ10が発揮する推力、つまり、下型4に付与される加圧力を所望の加圧力に制御しやすく、加圧力の制御精度をより一層向上させることができる。
【0086】
以上のように、低圧の作動水であっても比較的大きな推力を発揮できる大型の第2水圧シリンダ20によって保持荷重が下型4に付与されることで、粉体成形体の製造に必要な加圧力を確保し、制御精度が高い小型の第1水圧シリンダ10に増圧機構50からの作動水を供給することで、所望の繰り返し荷重を精度良く下型4に付与することができる。これにより、粉体成形体の製造に必要な加圧力の確保と加圧力の制御精度の向上とを両立でき、かつ、プレス装置100を省エネルギー化することができる。
【0087】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0088】
プレス装置100では、ポンプPから吐出される作動水は、第1水圧シリンダ10の位置合わせをする第2水圧シリンダ20に導かれると共に、増圧機構50に導かれる。増圧機構50は、ポンプPから吐出される作動水を増圧して、第1水圧シリンダ10に供給する。このように、第1水圧シリンダ10及び第2水圧シリンダ20に作動水を供給するポンプPが共通であっても、第1水圧シリンダ10には増圧機構50によって増圧された作動水が供給されるため、電動モータMを比較的低負荷で回転させても、充分な加圧力を発揮することができる。したがって、加圧力を確保しつつプレス装置100が省エネルギー化される。
【0089】
また、プレス装置100は、作動水によって作動する第1水圧シリンダ10及び第2水圧シリンダ20によって加圧力を発揮する、いわゆる水圧プレスである。このため、機械プレスや油圧プレスと比較して加圧力の制御の応答性がよく、高い精度で加圧力を制御することができる。よって、プレス装置100によれば、繰り返し荷重を加圧力として発揮する場合であっても、高い精度で加圧力を制御することができ、粉体成形体の品質を向上させることができる。
【0090】
また、プレス装置100は、水圧プレスであるため、クリーンな製造環境が要求される粉体成形体(例えば薬剤など)の製造においても、容易に適用できる。
【0091】
また、プレス装置100では、増圧機構50によって増圧された作動水が第1水圧シリンダ10に導かれるため、小型の水圧シリンダを第1水圧シリンダ10として利用することができる。プレス装置100では、下型4に加圧力を付与する第1水圧シリンダ10の第1ピストン13の外径は、第2水圧シリンダ20の第2ピストン23の外径よりも小さい。第1水圧シリンダ10として小型の水圧シリンダを利用することすることで、大型の場合よりも、供給される圧力の変化に対する第1水圧シリンダ10の推力の変化の割合が小さくなる。よって、第1水圧シリンダ10に供給される作動水の流れを制御する第1制御弁40の制御には、比較的高い精度が要求されない。このため、第1水圧シリンダ10が発揮する推力、つまり、下型4に付与される加圧力を所望の加圧力に制御しやすく、加圧力の制御精度をより一層向上させることができる。
【0092】
次に、本発明の変形例について説明する。
【0093】
まず、図4に示す変形例について説明する。図4に示す変形例において、上記実施形態と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0094】
上記実施形態では、増圧機構50は、アキュムレータ51に蓄圧された作動水によって増圧シリンダ60を駆動して、増圧された作動水を吐出する。これに対し、増圧機構50は、上記実施形態における構成に限らず、ポンプPから吐出される作動水を増圧して供給できるものであれば、その他の構成でもよい。
【0095】
図4に示す変形例では、増圧機構50は、アキュムレータ51を備えていない一方、吐出通路31から分岐してポンプPから吐出される作動水を導くバイパス通路81と、バイパス通路81と蓄圧通路58の連通と遮断を切り換える切換弁80と、を備える。
【0096】
バイパス通路81は、増圧制御弁52の上流において吐出通路31から分岐する。
【0097】
切換弁80は、3ポート2ポジションの電磁切換弁である。切換弁80の一方側のポートには、増圧シリンダ60の第3圧力室64に連通する蓄圧通路58が接続される。切換弁80の他方側のポートには、バイパス通路81と、タンクTに連通するタンク通路37と、が接続される。
【0098】
切換弁80は、蓄圧通路58とタンク通路37とを連通する開放ポジション80Aと、蓄圧通路58とバイパス通路81と連通する供給ポジション80Bと、を有する。ソレノイド80dに通電されていない状態では、スプリング80cの付勢力によって切換弁80は開放ポジション80Aに切り換えられえる。ソレノイド80dに通電されると、切換弁80は供給ポジション80Bに切り換えられる。
【0099】
蓄圧工程において、増圧制御弁52が連通ポジション52Bに切り換えられて増圧シリンダ60の第1圧力室62及び第2圧力室63にポンプPから作動水が導かれると、切換弁80はソレノイド80dへの通電が遮断され開放ポジション80Aに切り換えられる。第1圧力室62及び第2圧力室63に供給される作動水の圧力により、増圧ピストン65が第3圧力室64を収縮する方向へ移動し、第3圧力室64の作動水は切換弁80を通じてタンクTに排出される。所定の位置まで第3圧力室64を収縮する方向へ増圧ピストン65が移動すると、増圧制御弁52が遮断ポジション52Aに切り換えられる。
【0100】
加圧工程においては、排出制御弁53が排出ポジション53Bに切り換えられ、第1制御弁40が第1伸長ポジション40Cに切り換えられると、切換弁80は供給ポジション80Bに切り換えられる。これにより、増圧シリンダ60の第3圧力室64には、ポンプPから吐出される作動水が切換弁80を通じて導かれる。よって、上記実施形態と同様に、第3圧力室64の圧力の受圧面積と第1圧力室62の圧力の受圧面積の面積比に応じて第1圧力室62の作動水が増圧されて、増圧シリンダ60から吐出される。
【0101】
このような変形例においても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0102】
次に、その他の変形例について説明する。
【0103】
上記実施形態では、プレス装置100は、粉体1を加工対象として粉体成形体を加工するものである。これに対し、プレス装置100は、粉体1に限らずその他のものを加工対象とするものでもよい。例えば、プレス装置100は、金属加工に利用されるものであってもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、下型4には加圧力として繰り返し荷重が付与される。これに対し、プレス装置100は、加圧力として繰り返し荷重を発揮するものに限らず、加工対象等に応じて任意の加圧力を発揮するように構成してもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、増圧機構50のアキュムレータ51に作動水を貯留する蓄圧工程の完了後に、成形工程が行われる。これに対し、蓄圧工程と成形工程における上昇工程とは、並行して行ってもよいし、先に上昇工程を行ってもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、第1水圧シリンダ10の第1ピストン13の外径は、第2水圧シリンダ20の第2ピストン23の外径よりも小さい。これに対し、第1水圧シリンダ10及び第2水圧シリンダ20の大きさは、上記実施形態に限られるものではなく、加工対象やプレス装置100の仕様に応じて適宜設定できる。
【0107】
また、上記実施形態では、プレス装置100は水圧プレスである。これに対し、作動液は、作動水に限られず、作動油などその他のものでもよい。
【0108】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0109】
プレス装置100は、加工対象(粉体1)を加圧する下型4に加圧力を付与する第1液圧アクチュエータ(第1水圧シリンダ10)と、加圧力の方向に沿った第1液圧アクチュエータ(第1水圧シリンダ10)の位置を決める第2液圧アクチュエータ(第2水圧シリンダ20)と、第2液圧アクチュエータ(第2水圧シリンダ20)に作動液(作動水)を供給するポンプPと、ポンプPを駆動する電動モータMと、ポンプPから吐出される作動液(作動水)を増圧して第1液圧アクチュエータ(第1水圧シリンダ10)に供給する増圧機構50と、を備える。
【0110】
この構成では、ポンプPから吐出される作動液(作動水)は、第1液圧アクチュエータ(第1水圧シリンダ10)の位置合わせをする第2液圧アクチュエータ(第2水圧シリンダ20)に導かれると共に、増圧機構50に導かれる。増圧機構50は、ポンプPから吐出される作動液(作動水)を増圧して、下型4に加圧力を付与する第1液圧アクチュエータ(第1水圧シリンダ10)に供給する。このように、第1液圧アクチュエータ(第1水圧シリンダ10)及び第2液圧アクチュエータ(第2水圧シリンダ20)に作動液(作動水)を供給するポンプPが共通であっても、第1液圧アクチュエータ(第1水圧シリンダ10)には増圧機構50によって増圧された作動液(作動水)が供給されるため、電動モータMを比較的低負荷で回転させても、充分な加圧力を発揮することができる。したがって、プレス装置100によれば、加圧力を確保しつつ省エネルギー化される。
【0111】
また、プレス装置100は、増圧機構50から第1液圧アクチュエータ(第1水圧シリンダ10)へ供給される作動液(作動水)の流れを制御する第1制御弁40と、ポンプPから第2液圧アクチュエータ(第2水圧シリンダ20)へ供給される作動液(作動水)の流れを制御する第2制御弁41と、第1制御弁40及び第2制御弁41の作動を制御することにより、第1液圧アクチュエータ(第1水圧シリンダ10)及び第2液圧アクチュエータ(第2水圧シリンダ20)の作動を制御するコントローラ70と、をさらに備え、コントローラ70は、加圧力として繰り返し荷重が下型4に付与されるように、第1液圧アクチュエータ(第1水圧シリンダ10)及び第2液圧アクチュエータ(第2水圧シリンダ20)の作動を制御する。
【0112】
この構成では、コントローラ70によって第1液圧アクチュエータ(第1水圧シリンダ10)の位置を一定に保つように第2アクチュエータ(第2水圧シリンダ20)の作動を制御しつつ、第1液圧アクチュエータ第1水圧シリンダ10)の作動を制御することで、第1液圧アクチュエータ第1水圧シリンダ10)が発揮する推力によって加圧力としての繰り返し荷重を下型4に付与することができる。
【0113】
また、プレス装置100では、第1液圧アクチュエータ(第1水圧シリンダ10)は、第1シリンダチューブ11と、第1シリンダチューブ11に摺動自在に挿入される第1ピストン13と、を有し、第2液圧アクチュエータ(第2水圧シリンダ20)は、第2シリンダチューブ21と、第2シリンダチューブ21に摺動自在に挿入される第2ピストン23と、を有し、第1ピストン13の外径は、第2ピストン23の外径よりも小さい。
【0114】
この構成では、第1液圧アクチュエータ(第1水圧シリンダ10)の第1ピストン13の受圧面積が、第2液圧アクチュエータ(第2水圧シリンダ20)の第2ピストン23の受圧面積よりも小さい。これにより、第2液圧アクチュエータ(第2水圧シリンダ20)と比較して、第1液圧アクチュエータ(第1水圧シリンダ10)の応答性が向上し第1液圧アクチュエータ(第1水圧シリンダ10)が発揮する加圧力の制御が容易になるため、第2液圧アクチュエータ(第2水圧シリンダ20)のみによって加圧力を制御する場合と比較して、加圧力の制御精度を向上させることができる。
【0115】
また、プレス装置100では、作動液は、作動水であり、加工対象は、粉体1である。
【0116】
この構成では、プレス装置100は、作動水によって作動するため、クリーンな製造環境が要求される粉体成形に容易に適用できる。
【0117】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0118】
1…粉体(加工対象)、4…下型(プレス部材)、10…第1水圧シリンダ(第1液圧アクチュエータ)、11…第1シリンダチューブ、13…第1ピストン、20…第2水圧シリンダ(第2液圧アクチュエータ)、21…第2シリンダチューブ、23…第2ピストン、40…第1制御弁、41…第2制御弁、50…増圧機構、70…コントローラ、100…プレス装置
図1
図2
図3
図4