【解決手段】ダイレクトゲートG1〜G38は千鳥状に配置されており、複数のゲートの列を並列に配置した場合に、隣接する列における複数のゲートのピッチをずらした配置とされている。すなわち、G1〜G5の列の複数のゲートG1〜G5を、列の延びる方向に対して直交する方向に投影した場合に、G1〜G5の列に隣接するG6〜G11の列の複数のゲートG6〜G11と一致しない配置とされている。
射出成形用の金型を用いて、樹脂製の平板成形品を製造する射出成型装置であって、前記金型は、前記平板成形品の形状に対応した略矩形のキャビティ面が形成されるとともに、このキャビティ面に連通する複数のゲートが設けられた固定型板を備え、前記複数のゲートは、千鳥状に配置されると共に、同時に樹脂充填を行う複数のゲートからなる複数のグループに分けられ、各一のグループは共通する充填樹脂流通路に配置されてなることを特徴とする平板成形品の射出成型装置。
前記キャビティ面に連通する複数のゲートのうち相互に隣接するゲート間の距離は一のゲートから射出される樹脂流動長よりも短いものとして設定される請求項1または請求項2に記載された平板成形品の射出成型装置。
前記樹脂流動長はゲートからの樹脂射出圧力と射出される樹脂の粘度、温度及び成形品の板厚から解析によって算出される請求項1〜請求項3のいずれか一に記載の平板成形品の射出成型装置。
請求項1または請求項2に記載された射出成型装置を用いて行う射出成型方法であって、前記金型の一側の同時に樹脂充填を行う一のグループの複数の前記ゲートから樹脂の射出を開始して、順次前記金型の他側に向かって他のグループの複数の前記ゲートから樹脂の射出を行い、前記一のグループの複数の前記ゲートからの樹脂射出停止前に前記他のグループの複数の前記ゲートから樹脂の射出を開始し、前記他のグループの複数の前記ゲートからの樹脂の射出開始後に、前記一のグループの複数の前記ゲートからの樹脂射出を停止することを特徴とする平板成形品の射出成型方法。
請求項1に記載された射出成型装置を用いて行う射出成型方法であって、前記金型の略中央部の同時に樹脂充填を行う一のグループの複数の前記ゲートから樹脂の射出を開始して、その後前記中央部の同時に樹脂充填を行う一のグループの両側の一対の同時に樹脂充填を行うグループの複数の前記ゲートから樹脂の射出を開始し、前記金型の略中央部の同時に樹脂充填を行う一のグループの複数の前記ゲートからの樹脂射出停止前に前記一対の同時に樹脂充填を行うグループの複数の前記ゲートから樹脂の射出を開始し、前記一対の同時に樹脂充填を行うグループの複数の前記ゲートからの樹脂の射出開始後に、前記金型の略中央部の同時に樹脂充填を行う一のグループの複数の前記ゲートからの樹脂射出を停止することを特徴とする平板成形品の射出成型方法。
同時に樹脂充填を行う一のグループの複数のゲートは射出圧力が成型機型締め力を超えない様に設定する請求項5〜請求項7のいずれか一に記載の平板成形品の射出成型方法。。
解析で求められる金型内の樹脂圧力と、同時に樹脂が射出されるゲート群からの射出樹脂の流動面積の投影面積積分値とを用いて、必要となる型締め力を解析によって算出する請求項5〜請求項8のいずれか一に記載の平板成形品の射出成型方法。
。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の射出成型装置の実施形態に係る射出成形用金型及びこれを用いる樹脂製の平板成形品の製造方法について説明する。まず、本実施形態に用いられる射出成形用金型のゲート配置について説明する。
【0012】
図1に示す本実施の形態の射出成形用金型1は、略矩形形状でその一側が台形状に形成されたキャビティ2を有し、そのキャビティ2にダイレクトゲート3がG1〜G38の38点配置とされる。またダイレクトゲート3相互間のピッチは200mmとされてなる。
キャビティの深さは得られる平板成形品の厚みと略一致する。
【0013】
図1に示す様にダイレクトゲートG1〜G38は千鳥状に配置されており、複数のゲートの列を並列に配置した場合に、隣接する列における複数のゲートのピッチをずらした配置とされている。すなわち、G1〜G5の列の複数のゲートG1〜G5を、列の延びる方向に対して直交する方向に投影した場合に、G1〜G5の列に隣接するG6〜G11の列の複数のゲートG6〜G11と一致しない配置とされている。
すなわち、任意のp列目に配されたゲートG12〜G16、p+1列目に配置されたゲートG17〜G22、p+2列目に配置されたゲートG23〜G27、に着目した時、これら3つの列のゲートG12,G17、G23が直線状に配列されず、互い違いに位置する。
【0014】
この様に千鳥状に配置することにより、
図2(a)(b)に示す様に各ゲートG1〜G38から射出される樹脂間のガスたまり4を最小にすることが可能となる。
【0015】
これに対して
図3(a)(b)に示すように、各ゲートG1〜G38をキャビティ面の縦方向に沿った縦線Aと、横方向に沿った横線Bとからなる格子の交点部分Pの位置に設け、複数のゲートG1〜G38を、キャビティ面の縦方向および横方向のそれぞれの方向に沿って、略均等な間隔で形成する場合には、各ゲートG1〜G38から射出される樹脂間のガスたまり4が大きくなり樹脂の充填効率が悪い。
【0016】
また本実施の形態の射出成形用金型1では、キャビティ2面に連通する複数のG1〜G38のうち相互に隣接する任意の3ゲートが正三角形の頂点位置に配置される。
【0017】
以上の本発明の実施形態に係る射出成形用金型1では、千鳥配置のダイレクトゲートG1〜G38の中で相互に隣接するゲート間の距離は一のゲートから射出される樹脂流動長よりも短いものとして設定される。またその樹脂流動長はゲートからの樹脂射出圧力と射出される樹脂の粘度、温度及び成形品の板厚から解析によって算出される。
【0018】
またダイレクトゲートG1〜G38の一部の複数のゲートの同時開口時に射出圧力が成型機型締め力を超えない様に開口するゲートを設定する。
例えば
図1に示す射出成形用金型1で、G1〜5を1グループ、G6〜11を第2のグループとして開口し樹脂の射出を行う場合に射出圧力が成型機型締め力を超えるときには開口するゲート数を減らし、開口ゲート点数を3点としてグループ化する必要が生じる。
その様な場合には例えば、G1〜3もしくはG1,2,6を第1グループとして以下、G4,5,11もしくはG3,7,8を第2グループとして開口を進めて、開口ゲートが蛇行していくようにすることもできる。この様な開口する射出ゲートの選択の自由度はダイレクトゲートG1〜G38を千鳥状に配置した結果、樹脂間のガスたまり4を最小にすることができる結果として得られる利点である。
【0019】
尚以上に関連し、ダイレクトゲートG1〜G38の一部の複数のゲートを同時開口していく場合に、バルブコントローラーで同時開口の点数の上限を設定することができる。
【0020】
次に、以上の実施形態に係る射出成形用金型を用いて、実際に樹脂製の平板成形品を製造した実施例について説明する。以下の各実施例では、使用樹脂としてPP−GF30を用い製品体積4658cm
3 、製品投影面積19085cm
2 の製品を製造した。解析条件設定は、樹脂温度が220℃、金型温度が50℃、射出時間が4.7秒、保圧時間が190秒、保持圧力が40MPa、冷却時間が20秒とした。ホットランナーのダイレクトゲートを用い、型締力2000tonの成形機を用いた。
[実施例1]
図4は、本実施例においてゲートG1〜G38から樹脂を射出するタイミングを示す。
まず、型締力を2100tonとして射出成形用金型の型締めを行う。樹脂の充填圧力は787kg/cm
2 とした。樹脂の全体の充填時間は5.2秒とし、樹脂温度を217℃とし、樹脂流の先端温度を223℃とした。必要となった射出圧力は1150kg/cm
2 であった。
先ず、ゲートG34〜G38を開けて、1.8秒間樹脂を射出した。次にゲートG34〜G38からの樹脂射出開始後1.6秒経過時点で、ゲートG34〜G38を開いた状態でゲートG28〜G33を開けて、0.7秒間樹脂を射出した。その間、ゲートG34〜G38からの樹脂射出開始後1.8秒経過時点でゲートG34〜G38からの樹脂射出を停止した。
【0021】
次にゲートG34〜G38からの樹脂射出開始後2.1秒経過時点で、ゲートG28〜G33を開いた状態でゲートG23〜G27を開けて、0.7秒間樹脂を射出した。その間、ゲートG34〜G38からの樹脂射出開始後2.3秒経過時点、すなわちゲートG28〜G33からの樹脂射出開始後0.7秒経過時点でゲートG28〜G33からの樹脂射出を停止した。
【0022】
次にゲートG34〜G38からの樹脂射出開始後2.7秒経過時点で、ゲートG23〜G27を開いた状態でゲートG17〜G22を開けて、0.7秒間樹脂を射出した。その間、ゲートG34〜G38からの樹脂射出開始後2.8秒経過時点、すなわちゲートG23〜G27からの樹脂射出開始後0.7秒経過時点でゲートG23〜G27からの樹脂射出を停止した。
【0023】
次にゲートG34〜G38からの樹脂射出開始後3.3秒経過時点で、ゲートG17〜G22を開いた状態でゲートG12〜G16を開けて、0.7秒間樹脂を射出した。その間、ゲートG34〜G38からの樹脂射出開始後3.4秒経過時点、すなわちゲートG17〜G22からの樹脂射出開始後0.7秒経過時点でゲートG17〜G22からの樹脂射出を停止した。
【0024】
次にゲートG34〜G38からの樹脂射出開始後3.9秒経過時点で、ゲートG12〜G16を開いた状態でゲートG6〜G11を開けて、0.7秒間樹脂を射出した。その間、ゲートG34〜G38からの樹脂射出開始後4.0秒経過時点、すなわちゲートG12〜G16からの樹脂射出開始後0.7秒経過時点でゲートG12〜G16からの樹脂射出を停止した。
【0025】
次にゲートG34〜G38からの樹脂射出開始後4.5秒経過時点で、ゲートG6〜G11を開いた状態でゲートG1〜G5を開けて、樹脂を射出した。その間、ゲートG34〜G38からの樹脂射出開始後4.6秒経過時点、すなわちゲートG6〜G11からの樹脂射出開始後0.7秒経過時点でゲートG6〜G11からの樹脂射出を停止した。
【0026】
以上の実施例では、
図1上向かって右側のゲートG34〜G38から樹脂射出を開始し、このゲートG34〜G38を第1射出ゲート列として、これに近い順に第2ゲート列として、このゲート列の順に樹脂射出のタイミングをずらして樹脂射出を行った。しかも複数のゲートを千鳥状に配置したので、キャビティ内の空気溜りを最小にして、空気溜りによる焼け等の外観不良が生じるのを防止できる。このため、高品質な平板成形品を製造できる。また、このように複数のゲートを千鳥状にかつ均等に配置したので、キャビティ内において、部分的に圧力が上昇することがなく、型内圧を低く抑えることができる。従って、型内圧を低く抑えて、高品質な平板成形品を効率的に製造することができた。
【0027】
また、本実施例によれば、キャビティ面10において、複数のゲートを千鳥状にかつ均等に配置したので、キャビティ内のどの位置でも型内圧が略同程度になる。このため、型内圧を低く抑えることができることから、型締力の小さい型締装置を用いることができ、省スペース化を図ることができる。
【0028】
また、
図1上向かって右側のゲートG34〜G38から樹脂射出を開始し、このゲートG34〜G38を第1射出ゲート列として、これに近い順に第2ゲート列として、このゲート列の順に樹脂射出のタイミングをずらして一側から他側の一方向に向けて樹脂射出を行ったので、キャビティ内に空気溜りが生じることがない。このため、得られる平板成形品に、空気溜りによって生じる焼け等の外観不良が生じないため、高品質な平板成形品を効率的に製造できる。
【0029】
図5〜
図8は実施例1に於ける樹脂充填過程の射出成形用金型1の解析結果を示す。
図5は射出成形用金型1のウエルドライン5を示す。第1列のゲートG34〜G38を開き樹脂を充填することで、第1列のゲート間には溶融樹脂が合流する部分にウエルド5が発生する。第1列で発生したウエルド5とゲート位置との間に樹脂が充填されるまでに千鳥状に配列した第2列のゲートG28〜G33に樹脂が到達する。このタイミングで第2列のゲートG28〜G33を開くことにより、第2列のゲートG28〜G33の間にはウエルドが生じない解析結果が得られた。さらに第2列のゲートG28〜G33から充填される樹脂が、第3列のゲートG23〜G27の位置まで到達した時に、第3列のゲートG23〜G27を開くことで第2列と同様に第3列のゲートG23〜G27間においてもウエルドが生じない。以後、これを繰り返すことによって、金型1内に樹脂を充填させる。
この様に千鳥状に配置したゲートG1〜G38から射出されキャビティに充填される樹脂は任意の単一のゲートに着目した場合には、そのゲートを中心として同心円状にキャビティ内に射出される。その結果、キャビティに充填される樹脂はゲートG1〜G38のそれぞれを中心とする円弧を描くように流れることがわかっている。また、相互に隣接するゲート間の距離は一のゲートから射出される樹脂流動長よりも短く、ほぼ一致する様にゲートG1〜G38は配列されているために、樹脂の充填速度を充填の途中で変更しないという条件下で、ゲートを開く時間の制御のみで容易に成形条件を設定することが可能である。
【0030】
図6はV/P切替時の圧力分布を示す。第1列のゲートG34〜G38から順に最終列のゲート群までのゲートを開くことにより金型1内に樹脂が充填される。各ゲートを開くタイミングでの解析で求められる金型1内の樹脂圧力と、同時に樹脂が射出されるゲート群からの射出樹脂の流動面積の投影面積積分値を用いて、型締め力を解析によって算出することができる。この解析で算出される型締め力を確認しながら射出成形機の能力を超えないように、金型設計上のゲート間距離や開くゲート点数を決定する。ここでは、型締め力の最大値である2100tonを超えないように設定した。最後にVP切り替え圧力を確認する事で、最終列の各ゲートから出てくる樹脂の流動末端が製品の端末にほぼ同時に到達することを確認した。
【0031】
図7は充填時間5.184秒時点の射出成形用金型1の圧力分布を示す。
図7は金型内の各場所に樹脂が到達する時間を示し、樹脂を完全に充填するまでの樹脂の流れのパターンが確認できる。5.184秒で充填が完了し成形品の片側から順に樹脂が流れていったことが確認できる。
【0032】
図8は充填樹脂先端部の温度を示す。樹脂の流れのパターンを確認すると、第p+1列のゲートを開く直前のタイミングでは、第p+1列のゲート部分の樹脂圧力は低い。ランナー内の樹脂溶融体は連結した連続流路にあるためそれまで樹脂が流れていた第p列のゲート部分のランナー内の樹脂圧力は第p+1列のゲートを開くと低下する。この結果、第p列のゲートからの樹脂の流量は低下する。そのように樹脂の流量が低下すると、それまでの流動先端の部分の流速が下がり急激にその部分の樹脂温度が下がる。そのように樹脂温度が下がった場合、樹脂の流動性が低下することから各ゲートを中心とする円弧状の充填ができなくなり、また、僅かにガスだまりやウエルドが発生した場合に充填不良や成形品の強度不良が起こる。そこで、流動先端がその流速が下がる場所に来たときに当該樹脂が流動性を持って流動できるように一定以上の温度であることを確保する必要がある。ここでは該樹脂が流動性を持って流動できる200℃以上であることを確認した。
【0033】
[実施例2]
次に、本発明の樹脂製の平板成形品の製造方法の他の実施例について説明する。
実施例1と同様に図示しない型締装置を用いて、型締力を2800tonとして射出成形用金型の型締めを行った。樹脂の充填圧力は688kg/cm
2 とした。樹脂の全体の充填時間は6.2秒として、樹脂温度を186℃とし、樹脂流の先端温度を221℃とした。必要となった射出圧力は1000kg/cm
2 であった。
【0034】
図9は、本実施例においてゲートG1〜G38から樹脂を射出するタイミングを示す。 先ず、金型の略中央部のゲートG17〜G22を開けて、1.8秒間樹脂を射出した。
次にゲートG17〜G22からの樹脂射出開始後1.7秒経過時点で、ゲートG17〜G22を開いた状態でゲートG17〜G22の両側の一対の同時に樹脂充填を行うグループであるゲートG12〜G16及びゲートG23〜G27を開けて、1.3秒間樹脂を射出した。その間、ゲートG17〜G22からの樹脂射出開始後1.8秒経過時点でゲートG17〜G22からの樹脂射出を停止した。
【0035】
次にゲートG17〜G22からの樹脂射出開始後2.9秒経過時点で、ゲートG12〜G16及びゲートG23〜G27を開いた状態でゲートG6〜G11及びゲートG28〜G33を開けて、1.1秒間樹脂を射出した。その間、ゲートG17〜G22からの樹脂射出開始後3.0秒経過時点、すなわちゲートG12〜G16及びゲートG23〜G27からの樹脂射出開始後1.3秒経過時点でゲートG12〜G16及びゲートG23〜G27からの樹脂射出を停止した。
【0036】
次にゲートG17〜G22からの樹脂射出開始後3.9秒経過時点で、ゲートG6〜G11及びゲートG28〜G33を開いた状態でゲートG1〜G5及びゲートG34〜G8を開けて、樹脂を射出した。その間、ゲートG17〜G22からの樹脂射出開始後4.0秒経過時点、すなわちゲートG6〜G11及びゲートG28〜G33からの樹脂射出開始後1.1秒経過時点でゲートG6〜G11及びゲートG28〜G33からの樹脂射出を停止した。
【0037】
本実施例2において用いる射出成形用金型は、上述の実施例1と同様に、固定型板と可動型板とを備え、固定型板と可動型板との空隙によりキャビティ2が形成されており、キャビティ2の深さは、得られる平板成形品の厚みと略一致している。
【0038】
図10〜
図13は実施例2に於ける樹脂充填過程の射出成形用金型1の解析結果を示す。
図10は射出成形用金型1のウエルドライン6を示す。金型の略中央部のゲートG17〜G22を第1列として、ゲートG17〜G22を開き樹脂を充填することで、第1列のゲート間には溶融樹脂が合流する部分にウエルド6が発生する。第1列で発生したウエルド6とゲート位置との間に樹脂が充填されるまでに千鳥状に配列した一対の第2列のゲートG12〜G16及びゲートG23〜G27に樹脂が到達する。このタイミングで各第2列のゲートG12〜G16及びゲートG23〜G27を開くことにより、各第2列のゲートG12〜G16及びゲートG23〜G27の間にはウエルドが生じない解析結果が得られた。さらに第2列のゲートG12〜G16及びゲートG23〜G27から充填される樹脂が、一対の第3列のゲートG6〜G11及びゲートG28〜G33の位置まで到達した時に、各第3列のゲートG6〜G11及びゲートG28〜G33を開くことで第2列と同様に第3列のゲートG6〜G11及びゲートG28〜G33間においてもウエルドが生じない。以後、これを繰り返すことによって、金型1内に樹脂を充填させる。
この様に千鳥状に配置したゲートG1〜G38は、充填中の樹脂が当該ゲートG1〜G38のそれぞれを中心とする円弧を描くように流れるため、また、相互に隣接するゲート間の距離は一のゲートから射出される樹脂流動長よりも短く、ほぼ一致する様にゲートG1〜G38は配列されているために、樹脂の充填速度を充填の途中で変更しないという条件下で、ゲートを開く時間の制御のみで容易に成形条件を設定することが可能である。また、第1ゲート群のゲートG17〜G22間にはウエルドが発生するが、同一ゲート配置であっても、正三角形の頂点のゲートを基準に流動解析を用いてゲート位置の微調整を行うことによって、外観や製品強度の必要な部分のウエルドを避けることが、成形条件の変更で容易に行うことが可能である。
【0039】
図11はV/P切替時の圧力分布を示す。第1列のゲートG17〜G22から順に最終列のゲート群までのゲートを開くことにより金型1内に樹脂が充填される。各ゲートを開くタイミングでの解析で求められる金型1内の樹脂圧力と、同時に樹脂が射出されるゲート群からの射出樹脂の流動面積の投影面積積分値を用いて、型締め力を解析によって算出することができる。この解析で算出される型締め力を確認しながら射出成形機の能力を超えないように、金型設計上のゲート間距離や開くゲート点数を決定する。ここでは、型締め力の最大値である2100tonを超えないように設定した。最後にVP切り替え圧力を確認する事で、最終列の各ゲートから出てくる樹脂の流動末端が製品の端末にほぼ同時に到達することを確認した。これらの充填途中の圧力分布を確認して、必要に応じて充填途中の型締め力が所定の成形機の制限を超えないように各ゲート位置を解析結果を用いて調整する。
【0040】
図12は充填時間6.180秒時点の射出成形用金型1の圧力分布を示す。
図12は金型内の各場所に樹脂が到達する時間を示しており、樹脂を完全に充填するまでの樹脂の流れのパターンが確認できる。6.180秒で充填が完了し成形品の中央部から両側に向けて順に樹脂が流れていったことが確認できる。
【0041】
図13は充填樹脂先端部の温度を示す。樹脂の流れのパターンを確認すると、第p+1列のゲートを開く直前のタイミングでは、第p+1列のゲート部分の圧力は低く、樹脂溶融体は連結した連続流路にあるためそれまで樹脂が流れていた第p列のゲート部分の樹脂圧力は低下する。この結果、第p列のゲートからの樹脂の流量は低下する。そのように樹脂の流量が低下すると、それまでの流動先端の部分の流速が下がり急激にその部分の樹脂温度が下がる。そのように樹脂温度が下がった場合、樹脂の流動性が低下することから各ゲートを中心とする円弧状の充填ができなくなり、また、僅かにガスだまりやウエルドが発生した場合に充填不良や成形品の強度不良が起こる。そこで、流動先端がその流速が下がる場所に来たときに当該樹脂が流動性を持って流動できるように一定以上の温度であることを確保する必要がある。ここでは該樹脂が流動性を持って流動できる200℃以上であることを確認した。
実施例2では、製品中央にウエルドラインを移動させると型締め力が増え、樹脂が金型に充填する時間は増加するが、ゲート位置を変更せずにウエルド位置を変えた製品を得ること可能である。
一方、実施例2の場合において、実施例1のゲート位置の解析結果を用いてゲート位置やゲート群を調整して成形することも可能である。
【0042】
以下に以上の各実施例についての解析結果について説明する。
実施例1は右側から充填している。実施例2は中央から充填している。
充填圧力は、実施例2で12%低くすることができた。
型締力は実施例1が25%低くすることができた。
実施例2の開き方では中央から2番目のゲートで短手方向への流動長が長く、ゲートを開いている時間が長くなり、型締力が上昇する。
一方、反りは、外周の変形量は、実施例1が小さくなった。
断面の変形量は実施例2が小さくなった。
以上の各実施例の結果、ゲート点数を増やした方が、変形量は小さくなると言える。また長手方向に流すと断面で変形量が大きくなる。