【解決手段】車両用ステアリング装置10は、反力モータ23を備えた操舵部12と、転舵モータ41を備えた転舵部14と、前記操舵部12と前記転舵部14との間に介在しているクラッチ15と、前記転舵モータ41を制御する制御装置16とを含む。前記制御装置16は、前記反力モータ23又は前記転舵モータ41が一次失陥状態であると判断したときに、前記クラッチ15の操舵部12側の回転速度V1と前記クラッチ15の転舵部14の回転速度V2との速度差ΔVを減少させるように制御する。その後に前記制御装置16は、前記反力モータ23と前記転舵モータ41とのうち、前記一次失陥状態であると判断された方に再度失陥が発生した二次失陥状態であると判断したときに、前記クラッチ15を接続させる。
請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両用ステアリング装置を搭載している車両が、駐車するために走行する駐車モードに入っていることを検出する駐車モード検出部と、
前記車両が障害物を待避しつつ走行する退避モードに入っていることを検出する退避モード検出部と、を更に有し、
前記制御装置は、前記一次失陥状態が発生したときから前記二次失陥状態が発生したときまでにわたって、前記駐車モード検出部の検出信号又は前記退避モード検出部の検出信号を受けたと判断したときには、前記転舵比を変更可能に制御する、
ことを特徴とする車両用ステアリング装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【0012】
<実施例1>
図1〜
図4を参照しつつ実施例1の車両用ステアリング装置10を説明する。
図1に示されるように、車両用ステアリング装置10は、車両(図示せず)のステアリングホイール11の操舵入力が生じる操舵部12と、左右の転舵車輪13,13(タイヤを含む)を転舵する転舵部14と、操舵部12と転舵部14との間に介在しているクラッチ15と、制御装置16とを含む。左右の転舵車輪13,13は、転舵部14によって転舵されるものであればよく、前輪、後輪、又は両方を含む。
【0013】
クラッチ15が開放状態となる通常時には、操舵部12と転舵部14との間が機械的に分離されている。このように、車両用ステアリング装置10は、通常時において、ステアリングホイール11の操舵量に応じて転舵用アクチュエータ39を作動させることにより、左右の転舵車輪13,13を転舵する方式、いわゆるステアバイワイヤ式(steer-by-wire)を採用している。
【0014】
操舵部12は、運転者が操舵するステアリングホイール11と、このステアリングホイール11に連結されているステアリング軸21と、ステアリングホイール11に対して操舵反力(反力トルク)を付加する反力付加アクチュエータ22と、を含む。
【0015】
反力付加アクチュエータ22(第1アクチュエータ22)は、運転者が操舵するステアリングホイール11の操舵力に抵抗する操舵反力を発生することによって、運転者に操舵感を与える。この反力付加アクチュエータ22は、操舵反力を発生する反力モータ23(第1モータ23)と、操舵反力をステアリング軸21に伝達する反力伝達機構24と、を含む。反力モータ23は、電動モータによって構成される。
【0016】
反力伝達機構24は、例えばウォームギア機構によって構成される。このウォームギア機構24(反力伝達機構24)は、反力モータ23のモータ軸23aに設けられたウォーム24aと、ステアリング軸21に設けられたウォームホイール24bとからなる。反力モータ23が発生した操舵反力は、反力伝達機構24によってステアリング軸21に付加される。ウォームギア機構24は、ウォームホイール24bによってウォーム24aを回転(逆駆動)することが可能である。
【0017】
転舵部14は、ステアリング軸21に自在軸継手31,31及び連結軸32によって連結されている入力軸33と、この入力軸33にクラッチ15を介して連結されている出力軸34と、この出力軸34に操作力伝達機構35によって連結されている転舵軸36と、この転舵軸36の両端にタイロッド37,37及びナックル38,38を介して連結されている左右の転舵車輪13,13と、転舵軸36に転舵用動力を付加する転舵用アクチュエータ39と、を含む。
【0018】
入力軸33と出力軸34とは、クラッチ15によって接続状態と開放状態とに切り替えられる。なお、クラッチ15は、ステアリング軸21のなかの、反力付加アクチュエータ22から操舵反力を伝達される部位よりも転舵部14側、又は、ステアリング軸21と転舵部14の入力軸33との間に介在すればよい。
【0019】
操作力伝達機構35は、例えばラックアンドピニオン機構によって構成される。このラックアンドピニオン機構35(操作力伝達機構35)は、出力軸34に設けられたピニオン35aと、転舵軸36に設けられたラック35bとからなる。転舵軸36は、軸方向(車幅方向)へ移動可能である。
【0020】
転舵用アクチュエータ39(第2アクチュエータ39)は、転舵用動力を発生する転舵モータ41と、転舵用動力を転舵軸36に伝達する転舵動力伝達機構42とからなる。転舵モータ41(第2モータ41)は、例えば電動モータによって構成される。転舵動力伝達機構42は、例えば第1伝達機構43と第2伝達機構44とからなる。
【0021】
第1伝達機構43は、例えばウォームギア機構によって構成される。このウォームギア機構43(第1伝達機構43)は、転舵モータ41のモータ軸41aに設けられたウォーム43aと、伝動軸43bに設けられたウォームホイール43cとからなる。このウォームギア機構43は、ウォームホイール43cによってウォーム43aを回転(逆駆動)することが可能である。
【0022】
第2伝達機構44は、例えばラックアンドピニオン機構によって構成される。このラックアンドピニオン機構44(第2伝達機構44)は、伝動軸43bに設けられたピニオン44aと、転舵軸36に設けられたラック44bとからなる。転舵モータ41が発生した転舵用動力は、ウォームギア機構43及びラックアンドピニオン機構44によって転舵軸36に付加される。
【0023】
車両用ステアリング装置10は操舵角センサ51、操舵トルクセンサ52、ストロークセンサ53、反力モータ用回転角センサ54、転舵モータ用回転角センサ55、車速センサ61、ヨーレートセンサ62、加速度センサ63、その他の各種センサ64を備えている。
【0024】
操舵角センサ51は、ステアリングホイール11の操舵角を検出する。操舵トルクセンサ52は、ステアリング軸21に発生する操舵トルクを検出する。この操舵トルクセンサ52は、ステアリング軸21のなかの、反力伝達機構24よりもステアリングホイール11側に配置してもよい。この配置にすることにより、操舵トルクセンサ52によって操舵トルク(操舵負荷)を検出することができる。
【0025】
ストロークセンサ53は、転舵軸36の中立位置からのストローク量を検出する。なお、転舵軸36のストローク量と、出力軸34の回転角とは、相関関係を有する。従って、ストロークセンサ53は、転舵軸36のストローク量を直接に検出する構成の他に、出力軸34の回転角を検出してこの検出値に基づいて間接的にストローク量を検出(算出)する構成としてもよい。
【0026】
反力モータ用回転角センサ54は、反力モータ23の回転角を検出するものであり、例えばこの反力モータ23に備えたレゾルバによって構成される。転舵モータ用回転角センサ55は、転舵モータ41の回転角を検出するものであり、例えばこの転舵モータ41に備えたレゾルバによって構成される。車速センサ61は車両の車輪速度を検出する。ヨーレートセンサ62は車両のヨー角速度を検出する。加速度センサ63は車両の加速度を検出する。
【0027】
図2に示されるように、上記制御装置16は、制御部71と駆動回路72とクラッチ入力側回転速度演算部66とクラッチ出力側回転速度演算部67とを有している。クラッチ入力側回転速度演算部66は、操舵角センサ51によって検出された操舵角に基づいて、クラッチ15の入力側の回転速度V1(
図1に示される入力軸33の回転速度V1。つまり操舵部12側の回転速度V1。)を求める。クラッチ出力側回転速度演算部67は、ストロークセンサ53によって検出されたストローク量に基づいて、クラッチ15の出力側の回転速度V2(
図1に示される出力軸34の回転速度V2。つまり転舵部14側の回転速度V2。)を求める。
【0028】
図1及び
図2に示されるように、制御部71は、各センサ51〜55,61〜64からそれぞれ検出信号を受けて制御信号を発し、駆動回路72を介してクラッチ15、反力モータ23及び転舵モータ41に制御信号を発する。この制御装置16は、クラッチ15を開放しているときに、ステアリングホイール11の操舵量に対する転舵部14の転舵量の比(転舵比、制御比)を制御する転舵可変制御を実行するべく、転舵モータ41を制御する。
【0029】
ところで、
図3に示されるように、反力モータ23及び転舵モータ41は、それぞれ少なくとも二重系の巻線(二重化の巻線)、つまり二重巻線によって構成されている。
【0030】
例えば、反力モータ23は、巻線が二重化された2組の3相巻線、つまり、一方の巻線組23xと他方の巻線組23yとを有している、二重三相モータである。以下、一方の巻線組23xのことを、適宜「第1巻線組23x」または「第1巻線23x」という。他方の巻線組23yのことを、適宜「第2巻線組23y」または「第2巻線23y」という。第1巻線組23xのみを通電したときの最大出力と第2巻線組23yのみを通電したときの最大出力は同一である。
【0031】
また、転舵モータ41は、巻線が二重化された2組の3相巻線、つまり、一方の巻線組41xと他方の巻線組41yとを有している、二重三相モータである。以下、一方の巻線組41xのことを、適宜「第3巻線組41x」または「第3巻線41x」という。他方の巻線組41yのことを、適宜「第4巻線組41y」または「第4巻線41y」という。第3巻線組41xのみを通電したときの最大出力と第4巻線組41yのみを通電したときの最大出力は同一である。
【0032】
次に、
図3を参照しつつ、制御装置16について詳しく説明する。制御装置16は、反力モータ23及び転舵モータ41を制御する制御量を算出する制御部71と、制御量に基づいて各モータ23,41を駆動させる駆動回路72と、各モータ23,41に実際に流れる実電流Iaを検出する電流検出部73と、電流検出部73が検出した電流に基づいて後述する駆動系統81〜84の失陥を検出する失陥判断部74とを有している。
【0033】
制御部71は、目標電流設定部71aとフィードバック制御部71b(F/B制御部71b)とを有している。目標電流設定部71aは、操舵角センサ51によって検出された操舵角に基づいて、各モータ23,41に供給する目標電流Itを設定する。F/B制御部71bは、目標電流設定部71aによって設定された目標電流Itと、電流検出部73にて検出された各モータ23,41へ供給される実電流Iaと、の偏差に基づいてフィードバック制御を行う。
【0034】
駆動回路72は、車両に搭載されているバッテリからの電源電圧を、反力モータ23の第1巻線組23xに供給する第1インバータ回路72a1と、反力モータ23の第2巻線組23yに供給する第2インバータ回路72a2と、転舵モータ41の第3巻線組41xに供給する第3インバータ回路72a3と、転舵モータ41の第4巻線組41yに供給する第4インバータ回路72a4と、を有している。
【0035】
また、駆動回路72は、制御部71からの駆動指令信号に基づいて各インバータ回路72a1〜72a4の駆動を制御する、駆動部72b1〜72b4を有している。第1駆動部72b1は、第1インバータ回路72a1の駆動を制御する。第2駆動部72b2は、第2インバータ回路72a2の駆動を制御する。第3駆動部72b3は、第3インバータ回路72a3の駆動を制御する。第4駆動部72b4は、第4インバータ回路72a4の駆動を制御する。
【0036】
電流検出部73は、反力モータ23の第1巻線組23xに流れる実電流値Iaを検出する第1反力電流検出部73aと、反力モータ23の第2巻線組23yに流れる実電流値Iaを検出する第2反力電流検出部73bと、転舵モータ41の第3巻線組41xに流れる実電流値Iaを検出する第1転舵電流検出部73cと、転舵モータ41の第4巻線組41yに流れる実電流値Iaを検出する第2転舵電流検出部73dと、を有している。
【0037】
以上のように構成された車両用ステアリング装置10は、第1駆動系統81、第2駆動系統82、第3駆動系統83、及び第4駆動系統84を有している。
【0038】
第1駆動系統81は、反力モータ23の第1巻線組23x、第1インバータ回路72a1、第1駆動部72b1、第1反力電流検出部73a、F/B制御部71bから第1巻線組23xまでの配線を含んで構成される。
第2駆動系統82は、反力モータ23の第2巻線組23y、第2インバータ回路72a2、第2駆動部72b2、第2反力電流検出部73b、F/B制御部71bから第2巻線組23yまでの配線を含んで構成される。
第3駆動系統83は、転舵モータ41の第3巻線組41x、第3インバータ回路72a3、第3駆動部72b3、第1転舵電流検出部73c、F/B制御部71bから第3巻線組41xまでの配線を含んで構成される。
第4駆動系統84は、転舵モータ41の第4巻線組41y、第4インバータ回路72a4、第4駆動部72b4、第2転舵電流検出部73d、F/B制御部71bから第4巻線組41yまでの配線を含んで構成される。
【0039】
失陥検出部74は、各電流検出部73a〜73dによって検出された各々の実電流値Iaが、予め定められた正常領域の値を超えた場合、又は、正常領域を下回った場合に、対応するいずれかの駆動系統81〜84に失陥が生じたと判断して、目標電流設定部71aに出力する。
【0040】
詳しく述べると、失陥検出部74は、次の(1)〜(4)の判断を行う。
(1)第1反力電流検出部73aによって検出された電流値Iaが、予め設定されている正常領域の値を超えたか、または、正常領域の値を下回った場合に、第1駆動系統81に失陥が発生したと判断する。
(2)第2反力電流検出部73bによって検出された電流値Iaが、予め設定されている正常領域の値を超えたか、または、正常領域の値を下回った場合に、第2駆動系統82に失陥が発生したと判断する。
(3)第1転舵電流検出部73cによって検出された電流値Iaが、予め設定されている正常領域の値を超えたか、または、正常領域の値を下回った場合に、第3駆動系統83に失陥が発生したと判断する。
(4)第2転舵電流検出部73dによって検出された電流値Iaが、予め設定されている正常領域の値を超えたか、または、正常領域の値を下回った場合に、第4駆動系統84に失陥が発生したと判断する。
【0041】
図2及び
図3に示されるように、制御装置16の制御部71は、失陥検出部74の判断結果に従って、反力モータ23(第1駆動系統81または第2駆動系統82)と、転舵モータ41(第3駆動系統83または第4駆動系統84)との、いずれか一方に最初に失陥が発生した一次失陥状態であると判断したときには、クラッチ15の入力側(操舵部12側)の回転速度V1とクラッチ15の出力側(転舵部14側)の回転速度V2との、速度差ΔVを減少させるように制御し、その後に、反力モータ23と転舵モータ41とのうち、一次失陥状態であると判断された方のモータに再度失陥が発生した二次失陥状態であると判断したときには、クラッチ15を接続するように制御をする。言い換えると、一次失陥状態においては、転舵可変制御の操舵量に対する転舵量を小さく設定、または同一とする。
【0042】
本発明では、一次失陥状態と二次失陥状態とについて、次のように定義する。
「一次失陥状態」とは、4つの駆動系統81〜84のいずれか1つに最初に失陥が発生、例えば4つの巻線組23x,23y,41x,41yのいずれか1つに最初に失陥が発生したことをいう。具体例を挙げると、反力モータ23の第1巻線組23xに最初に失陥が発生した場合には、反力モータ23が一次失陥状態である。この一次失陥が発生した後に、反力モータ23と転舵モータ41のなかの、一次失陥状態である方のモータの他の駆動系統(例えば、他の巻線組)にも失陥が発生したことを、「二次失陥状態」であるという。
【0043】
さらに一例を挙げると、反力モータ23の第1巻線組23xが一次失陥状態であるときに、一次失陥状態である方の反力モータ23の第2巻線組23yにも失陥が発生した場合には、反力モータ23が二次失陥状態である。つまり、同一のモータ(例えば反力モータ23)の巻線に2回の失陥を発生した状態が、二次失陥状態である。
【0044】
制御装置16の制御部71は、例えばマイクロコンピュータによって構成される。マイクロコンピュータによって構成した制御部71の、具体的な制御の一例を説明すると、次の通りである。
図1〜
図3を参照しつつ、
図4に基づいて制御部71の制御について説明する。
【0045】
図4は、制御部71の制御フローチャートであって、制御部71の一連の制御のなかの、モータ失陥時の処理を実行するサブルーチンを示している。このサブルーチンは、例えば所定の条件による割込処理や、時分割処置によって実行する。
【0046】
制御部71は制御を開始すると、先ずステップS01では、失陥判断部74から失陥発生信号を受けたか、つまり反力モータ23の第1巻線組23xと第2巻線組23y、転舵モータ41の第3巻線組41xと第4巻線組41y、のいずれか1つの巻線組に最初に失陥が発生した一次失陥状態であるか否かを判断する。言い換えると、ステップS01では、4つの駆動系統81〜84のいずれか1つに、最初に失陥が発生した一次失陥状態であるか否かを判断する。ここで、一次失陥状態ではないと判断した場合には、ステップS02においてクラッチ15の開放状態を維持して、このサブルーチンを終了する。一方、ステップS01で一次失陥状態であると判断した場合には、ステップS03に進む。
【0047】
ステップS03では、クラッチ入力側回転速度演算部66から、クラッチ15の入力側(操舵部12側)の回転速度V1を得る。
次に、ステップS04において、クラッチ出力側回転速度演算部67から、クラッチ15の出力側(転舵部14側)の回転速度V2を得る。
【0048】
次に、ステップS05において、入力側の回転速度V1と出力側の回転速度V2とを比較し、回転速度V1と回転速度V2との、速度差ΔVを減少させるように制御、例えば反力モータ23と転舵モータ41とを同期制御する。この同期制御の実行方法は、次の3通りのなかから1つを適宜設定すればよい。第1の実行方法は、一次失陥状態に入ったときに、直ちに、速度差ΔVを減少させるように同期制御を実行する。第2の実行方法は、一次失陥状態に入ったときに、徐々に、速度差ΔVを減少させるように同期制御を実行する。第3の実行方法は、操舵部12と転舵部14の両方が中立点となった場合、つまりステアリングホイール11と転舵軸36の両方が中立位置に至った場合に、速度差ΔVを減少させるように同期制御を実行する。
【0049】
次に、ステップS06では、失陥判断部74から失陥発生信号を受けるまで、つまり二次失陥状態であると判断するまで、このステップを繰り返す。ここで、二次失陥状態であると判断した場合には、ステップS07に進む。
ステップS07では、クラッチ15を接続するように制御した後に、このサブルーチンを終了する。
【0050】
上記実施例1の説明をまとめると次の通りである。
図1〜
図4に示されるように、車両用ステアリング装置10は、
ステアリングホイール11の操舵入力が生じるとともに反力モータ23を備えた操舵部12と、
転舵車輪13,13を転舵軸36を介して転舵することが可能な転舵モータ41を備えた転舵部14と、
前記操舵部12と前記転舵部14との間に介在しているクラッチ15と、
前記クラッチ15を開放しているときに、前記ステアリングホイール11の操舵量に対する前記転舵部14の転舵量の転舵比を制御するべく、前記転舵モータ41を制御する制御装置16と、を含み、
前記制御装置16は、
前記反力モータ23と前記転舵モータ41とのいずれか一方に最初に失陥が発生した一次失陥状態であると判断したときには(
図4のステップS01)、前記クラッチ15の操舵部12側(入力側)の回転速度V1と前記クラッチ15の転舵部14側(出力側)の回転速度V2との、速度差ΔVを減少させるように制御し(
図4のステップS05)、
その後に、前記反力モータ23と前記転舵モータ41とのうち、前記一次失陥状態であると判断された方に再度失陥が発生した二次失陥状態であると判断したときには(
図4のステップS06)、前記クラッチ15を接続するように制御をする(
図4のステップS07)。
【0051】
このように、実施例1では、制御装置16がステアバイワイヤによる操舵制御を実行している状態において、各モータ23,41の一方に一次失陥が発生したときに、制御装置16は、クラッチ15の開放状態をそのまま維持することによって、ステアバイワイヤによる操舵制御を維持しつつ、クラッチ15の操舵部12側と転舵部14側との速度差ΔVを減少させる。その後、反力モータ23と転舵モータ41とのうち、一次失陥状態であると判断された方に再度失陥が発生した、つまり二次失陥が発生したときには、制御装置16はクラッチ15を接続する。一次失陥が発生したときから二次失陥が発生するまで、クラッチ15を開放状態に維持することができる。従って、ステアバイワイヤによる操舵制御からマニュアル操舵へ移行するタイミングを遅らせることができる。この結果、操縦の安定性や操舵フィーリングを極力確保することができる。しかも、クラッチ15を接続する前に、クラッチ15の操舵部12側と転舵部14側との速度差ΔVを減少させるので、モータ23,41の失陥時に接続するクラッチ15の小型化を図ることができる。
【0052】
好ましくは、
図3に示されるように、
前記反力モータ23は、少なくとも二重系の巻線23x,23y(巻線組23x,23y)によって構成され、
前記転舵モータ41は、少なくとも二重系の巻線41x,41y(巻線組41x,41y)によって構成され、
前記反力モータ23の前記それぞれの巻線23x,23yの電流値Iaを検出する反力電流検出部73a,73bと、
前記転舵モータ41の前記それぞれの巻線41x,41yの電流値Iaを検出する
転舵電流検出部73c、73dと、を更に有し、
前記制御装置16は、
前記反力電流検出部73a,73bによって検出された前記反力モータ23の前記巻線23x,23yの電流値Iaに基づいて前記反力モータ23の駆動系統81,82(前記巻線23x,23yを含む)に失陥が発生したか否かを判断し、
前記転舵電流検出部57によって検出された前記転舵モータ41の前記巻線41x,41yの電流値Iaに基づいて前記転舵モータ41の駆動系統83,84(前記巻線41x,41yを含む)に失陥が発生したか否かを判断する。
【0053】
このため、反力モータ23及び転舵モータ41の駆動系統81〜84の失陥を、容易に検出することができる。
【0054】
さらに、
図1及び
図2に示されるように、車両用ステアリング装置10は、前記ステアリングホイール11の操舵角を検出する操舵角センサ51と、前記転舵軸36のストローク量を検出するストロークセンサ53と、を更に有する。
前記制御装置16は、前記操舵角センサ51によって検出された前記操舵角に基づいて、前記クラッチ15の前記操舵部12側(入力側)の回転速度V1を求めるとともに、前記ストロークセンサ53によって検出された前記ストローク量に基づいて、前記クラッチ15の前記転舵部14側(出力側)の回転速度V2を求めている。
【0055】
<実施例2>
図5を参照しつつ、実施例2の車両用ステアリング装置100を説明する。
図5は上記
図2に対応させて表してある。実施例2の車両用ステアリング装置100は、
図1〜
図4に示される上記実施例1の車両用ステアリング装置10の制御装置16を、
図5に示される制御装置116に変更したことを特徴とし、他の構成は実施例1と同じなので、説明を省略する。
【0056】
制御装置116は、
図2に示されるクラッチ出力側回転速度演算部67の代わりに、クラッチ出力側回転速度演算部167を備えている。このクラッチ出力側回転速度演算部167は、転舵モータ用回転角センサ55によって検出された、転舵モータ41の回転角に基づいて、クラッチ15の出力側の回転速度V2(出力軸34の回転速度V2。つまり転舵部14側の回転速度V2。)を求める。
【0057】
上記実施例2の説明をまとめると次の通りである。
図1及び
図5に示されるように、車両用ステアリング装置100は、前記ステアリングホイール11の操舵角を検出する操舵角センサ51と、前記転舵モータ41の回転角を検出する転舵モータ用回転角センサ55と、を有し、
前記制御装置116は、
前記操舵角センサ51によって検出された前記操舵角に基づいて、前記クラッチ15の前記操舵部12側(入力側)の回転速度V1を求めるとともに、
前記転舵モータ用回転角センサ55によって検出された前記転舵モータ41の前記回転角に基づいて、前記クラッチ15の前記転舵部14側(出力側)の回転速度V2を求めている。
【0058】
このような構成の実施例2は、上記
図1〜4に示される実施例1と同様の作用、効果を発揮することができる。
【0059】
<実施例3>
図6を参照しつつ、実施例3の車両用ステアリング装置200を説明する。
図6は上記
図2に対応させて表してある。実施例3の車両用ステアリング装置200は、
図1〜
図4に示される上記実施例1の車両用ステアリング装置10の制御装置16を、
図6に示される制御装置216に変更したことを特徴とし、他の構成は実施例1と同じなので、説明を省略する。
【0060】
制御装置216は、
図2に示されるクラッチ入力側回転速度演算部66の代わりに、クラッチ入力側回転速度演算部266を備えている。このクラッチ入力側回転速度演算部266は、反力モータ用回転角センサ54によって検出された、反力モータ23の回転角に基づいて、クラッチ15の入力側の回転速度V1(入力軸33の回転速度V1。つまり操舵部12側の回転速度V1。)を求める。
【0061】
上記実施例3の説明をまとめると次の通りである。
図1及び
図6に示されるように、車両用ステアリング装置200は、前記反力モータ23の回転角を検出する反力モータ用回転角センサ54と、前記転舵軸36のストローク量を検出するストロークセンサ53と、を有し、
前記制御装置216は、
前記反力モータ用回転角センサ54によって検出された前記反力モータ23の前記回転角に基づいて、前記クラッチ15の前記操舵部12側(入力側)の回転速度V1を求めるとともに、
前記ストロークセンサ53によって検出された前記ストローク量に基づいて、前記クラッチ15の前記転舵部14側(出力側)の回転速度V2を求めている。
【0062】
このような構成の実施例3は、上記
図1〜4に示される実施例1と同様の作用、効果を発揮することができる。
【0063】
<実施例4>
図7を参照しつつ、実施例4の車両用ステアリング装置300を説明する。
図7は上記
図2に対応させて表してある。実施例4の車両用ステアリング装置300は、
図1〜
図4に示される上記実施例1の車両用ステアリング装置10の制御装置16を、
図7に示される制御装置316に変更したことを特徴とし、他の構成は実施例1と同じなので、説明を省略する。
【0064】
制御装置316は、
図2に示されるクラッチ入力側回転速度演算部66の代わりにクラッチ入力側回転速度演算部366を備えるとともに、
図2に示されるクラッチ出力側回転速度演算部67の代わりにクラッチ出力側回転速度演算部367を備えている。
【0065】
クラッチ入力側回転速度演算部366は、反力モータ用回転角センサ54によって検出された、反力モータ23の回転角に基づいて、クラッチ15の入力側の回転速度V1(入力軸33の回転速度V1。つまり操舵部12側の回転速度V1。)を求める。
【0066】
クラッチ出力側回転速度演算部367は、転舵モータ用回転角センサ55によって検出された、転舵モータ41の回転角に基づいて、クラッチ15の出力側の回転速度V2(出力軸34の回転速度V2。つまり転舵部14側の回転速度V2。)を求める。
【0067】
上記実施例4の説明をまとめると次の通りである。
図1及び
図7に示されるように、車両用ステアリング装置300は、前記反力モータ23の回転角を検出する反力モータ用回転角センサ54と、前記転舵モータ41の回転角を検出する転舵モータ用回転角センサ55と、を有し、
前記制御装置16は、
前記反力モータ用回転角センサ54によって検出された前記反力モータ23の前記回転角に基づいて、前記クラッチ15の前記操舵部12側(入力側)の回転速度V1を求めるとともに、
前記転舵モータ用回転角センサ55によって検出された前記転舵モータ41の前記回転角に基づいて、前記クラッチ15の前記転舵部14側(出力側)の回転速度V2を求めている。
【0068】
このような構成の実施例4は、上記
図1〜4に示される実施例1と同様の作用、効果を発揮することができる。
【0069】
<実施例5>
図8及び
図9を参照しつつ、実施例5の車両用ステアリング装置400を説明する。
図8は上記
図2に対応させて表してある。実施例5の車両用ステアリング装置400は、
図1〜
図4に示される上記実施例1の車両用ステアリング装置10に、駐車モード検出部401と退避モード検出部402とを追加したことを特徴とし、他の構成は実施例1と同じなので、説明を省略する。
【0070】
駐車モード検出部401は、車両用ステアリング装置400を搭載している車両(図示せず)が、駐車するために走行するモード、つまり「駐車モード」に入っていることを検出するものである。この駐車モードの有無は、車両が後退走行に入ったか否かや、車内に設けられた駐車スイッチの動作によって判断することができる。駐車モード検出部401は、例えば、シフト装置のシフトレバーがリバースポジションに位置していることを検出する検出部によって構成される。
【0071】
退避モード検出部402は、車両用ステアリング装置400を搭載している車両が、障害物を待避しつつ走行するモード、つまり「退避モード」に入っていることを検出するものである。退避モード検出部402は、例えば車両に搭載された撮像機、超音波センサ、レーダーによって障害物を検出する障害物検出装置(図示せず)と、この障害物検出装置の情報に基づいて障害物を待避していると判断する退避判断装置(図示せず)とによって構成される。例えば、退避モード検出部402は、車両の自動運転中に退避モードとなったことを検出した場合には、運転者に対してマニュアル操舵を促す警告を発する構成でもよい。
【0072】
図9は、実施例5の制御部71の制御フローチャートであって、制御部71の一連の制御のなかの、モータ失陥時の処理を実行するサブルーチンを示している。
図9に示される実施例5の制御フローチャートは、上記
図4に示される実施例1の制御フローチャートに対して、ステップS101〜S102を追加したことを特徴とし、他のステップS01〜S07は実施例1と同じなので、説明を省略する。
【0073】
制御部71は、ステップS01で一次失陥状態であると判断した場合には、ステップS101に進む。このステップS101では、駐車モード又は退避モードに入っているか否かを判断する。具体的には、駐車モード検出部401の検出信号を受けた場合には、駐車モードに入っていると判断する。退避モード検出部402の検出信号を受けた場合には、退避モードに入っていると判断する。このステップS101で、駐車モードと退避モードのどちらにも入っていないと判断した場合には、ステップS03〜S05を実行した後に、ステップS06に進む。一方、ステップS101で駐車モード又は退避モードに入っていると判断した場合には、ステップS102に進む。
【0074】
ステップS102では、ステアリングホイール11の操舵量に対する転舵部14の転舵量の比(転舵比)の制御を実行して、ステップS06に進む。つまり、一次失陥状態が発生したときから二次失陥状態が発生したときまでにわたって、ステアリングホイール11の操舵量に対する転舵部14の転舵量の転舵比を変更可能に制御する。
【0075】
上記実施例5の説明をまとめると次の通りである。
図1、
図8及び
図9に示されるように、車両用ステアリング装置400は、
この車両用ステアリング装置400を搭載している車両(図示せず)が、駐車するために走行する駐車モードに入っていることを検出する駐車モード検出部401と、
前記車両が障害物を待避しつつ走行する退避モードに入っていることを検出する退避モード検出部402と、を有し、
前記制御装置16は、前記一次失陥状態が発生したときから前記二次失陥状態が発生したときまでにわたって、前記駐車モード検出部401の検出信号又は前記退避モード検出部402の検出信号を受けたと判断したときには(
図9のステップS101)、前記ステアリングホイール11の操舵量に対する前記転舵部14の転舵量の転舵比を変更可能に制御する(
図9のステップS102)。
【0076】
このため、駐車モード又は退避モードに入っているときには、一次失陥状態が発生したにもかかわらず、転舵比を変更することが可能である。従って、一次失陥状態であっても、容易に駐車もしくは障害物を待避しつつ走行することができる。車両の走行状態に合わせた、きめ細かい制御をすることができる。さらに実施例5は、上記
図1〜4に示される実施例1と同様の作用、効果を発揮することができる。
【0077】
<実施例6>
図10〜
図12を参照しつつ、実施例6の車両用ステアリング装置500を説明する。
図10は上記
図1に対応させて表してある。
図11は上記
図2に対応させて表してある。
図12は上記
図3に対応させて表してある。
【0078】
実施例6の車両用ステアリング装置500は、
図1〜
図4に示される上記実施例1の車両用ステアリング装置10に、転舵モータ511(追加した転舵モータ511。第3モータ511ともいう)を追加したことと、
図1〜
図4に示される上記実施例1の制御装置16を、
図10〜
図12に示される制御装置516に変更したことを特徴とし、他の構成は実施例1と同じなので、説明を省略する。
【0079】
詳しく説明すると、車両用ステアリング装置500は、転舵用アクチュエータ39(第2アクチュエータ39)の他に、もう1つの転舵用アクチュエータ510(第3アクチュエータ510)を備える。この第3アクチュエータ510は、クラッチ15と操作力伝達機構35との間に介在、つまり出力軸34に設けられている。この第3アクチュエータ510は、転舵用動力を発生する転舵モータ511と、転舵用動力を出力軸34に伝達する転舵動力伝達機構512とからなる。転舵モータ511は、例えば電動モータによって構成される。
【0080】
転舵動力伝達機構512は、例えばウォームギア機構によって構成される。このウォームギア機構512(転舵動力伝達機構512)は、転舵モータ511のモータ軸511aに設けられたウォーム512aと、出力軸34に設けられたウォームホイール512bとからなる。このウォームギア機構512は、ウォームホイール512bによってウォーム512aを回転(逆駆動)することが可能である。
【0081】
転舵モータ511の回転角は、転舵モータ用回転角センサ521(追加したモータ用回転角センサ521)によって検出される。この転舵モータ用回転角センサ521は、例えばこの転舵モータ511に備えたレゾルバによって構成される。
【0082】
制御装置516の制御部71は、各センサ51〜55,521,73a〜73f,61〜64からそれぞれ検出信号を受けて制御信号を発し、駆動回路72を介してクラッチ15、反力モータ23及び2つの転舵モータ41,511に制御信号を発する。
【0083】
図12に示されるように、転舵モータ511は、少なくとも二重系の巻線(二重化の巻線)、つまり二重巻線によって構成されている。詳しく述べると、転舵モータ511は、巻線が二重化された2組の3相巻線、つまり一方の巻線組511xと他方の巻線組511yとを有している、二重三相モータである。以下、一方の巻線組511xのことを、適宜「第5巻線511x」または「第5巻線511x」という。他方の巻線組511yのことを、適宜「第6巻線組511y」または「第6巻線511y」という。第5巻線511xのみを通電したときの最大出力と第6巻線組511yのみを通電したときの最大出力は同一である。
【0084】
図12に示されるように、制御装置516は、駆動回路72に第5インバータ回路72a5と第6インバータ回路72a6と第5駆動部72b5と第6駆動部72b6とを追加し、電流検出部73に第3転舵電流検出部73eと第4転舵電流検出部73fとを追加した構成である。
【0085】
第5インバータ回路72a5は、バッテリからの電源電圧を転舵モータ511の第5巻線組511xに供給する。第6インバータ回路72a6は、バッテリからの電源電圧を転舵モータ511の第6巻線組511yに供給する。第5駆動部72b5は、第5インバータ回路72a5の駆動を制御する。第6駆動部72b6は、第6インバータ回路72a6の駆動を制御する。第3転舵電流検出部73eは、転舵モータ511の第5巻線組511xに流れる実電流値Iaを検出する。第4転舵電流検出部73fは、転舵モータ511の第6巻線組511yに流れる実電流値Iaを検出する。
【0086】
車両用ステアリング装置500は、4つの駆動系統81〜84の他に、第5駆動系統85と第6駆動系統86とを有している。
第5駆動系統85は、転舵モータ511の第5巻線組511x、第5インバータ回路72a5、第5駆動部72b5、第3転舵電流検出部73e、F/B制御部71bから第5巻線組511xまでの配線を含んで構成される。
第6駆動系統86は、転舵モータ511の第6巻線組511y、第6インバータ回路72a6、第6駆動部72b6、第4転舵電流検出部73f、F/B制御部71bから第6巻線組511yまでの配線を含んで構成される。
【0087】
失陥検出部74は、各電流検出部73a〜73dfよって検出された実電流値Iaが、予め定められた正常領域の値を超えた場合、又は、正常領域を下回った場合に、対応するいずれかの駆動系統81〜86に失陥が生じたと判断する。
【0088】
反力モータ23及び2つの転舵モータ41,511が全て正常である場合には、クラッチ15は開放状態にある。この場合には、2つの転舵モータ41,511は、互いに協働して必要とされる転舵用動力を分担して出力するか、又は、必要とされる転舵用動力をいずれか一方のみが出力する。
【0089】
制御部71は、2つの転舵モータ41,511のなかの、いずれか一方のモータに一次失陥と二次失陥の両方が発生したと判断した場合には、正常な他方のモータのみに制御信号を発する。正常な他方のモータは、必要とされる転舵用動力を出力する。この場合には、反力モータ23が正常であれば、クラッチ15を開放状態に維持すればよい。
【0090】
また、制御部71は、2つの転舵モータ41,511の両方に一次失陥が発生したと判断した場合には、反力モータ23が正常であれば、上記実施例1と同様に、前記クラッチ15の入力側の回転速度V1と前記クラッチ15の出力側の回転速度V2との、速度差を減少させるように前記反力モータ23と、2つの転舵モータ41,511のなかのいずれか一方のモータと、を同期制御し、その後に、2つの転舵モータ41,511の両方に二次失陥が発生したと判断したときには、前記クラッチ15を接続するように制御をする。
【0091】
上記実施例6の説明をまとめると次の通りである。
図10〜
図12に示されるように、車両用ステアリング装置500に備えている前記転舵モータは、2つのモータ41,511によって構成されており、
前記2つのモータ41,511は、それぞれ少なくとも二重系の巻線41x,41y,511x,511yによって構成されている。
【0092】
つまり、転舵モータ41(第2モータ41)は、少なくとも二重系の巻線41x,41yによって構成されている。転舵モータ511(第3モータ511)は、少なくとも二重系の巻線511x,511yによって構成されている。このため、車両用ステアリング装置500のフェールセーフ性能を高めることができる。さらに実施例6は、上記
図1〜4に示される実施例1と同様の作用、効果を発揮することができる。
【0093】
なお、上記実施例6のように、転舵モータが2つのモータ41,511によって構成されている場合に、各モータ41,511をそれぞれ単系統の巻線とした、変形例の構成であってもよい。つまり、実施例6の変形例では、転舵モータ41(第2モータ41)は、2つの巻線41x,41yのいずれか一方のみによって構成される。また、転舵モータ511(第3モータ511)は、2つの巻線511x,511yのいずれか一方のみによって構成される。従って、第2モータ41の巻線の数は1であり、第3モータ511の巻線の数も1である。この結果、変形例では、2つのモータ41,511の巻線の合計は2である。
【0094】
上記実施例6の変形例の説明をまとめると、次の通りである。
前記転舵モータは、2つのモータ41,511によって構成されており、
前記2つのモータ41,511の巻線の合計は、少なくとも二重系の巻線からなる1つのモータの、巻線の合計に相当する。
【0095】
より詳しく説明すると、上述のように、実施例6において、二重系の巻線41x,41yからなる1つのモータ41(第2モータ41)の、巻線41x,41yの合計は2である。また、二重系の巻線511x,511yからなる1つのモータ511(第3モータ511)の巻線511x,511yの合計は2である。
【0096】
これに対して実施例6の変形例では、例えば、それぞれ単系統の巻線41x,511x(第3巻線41x又は第5巻線511x)を有している2つのモータ41,511の巻線の合計は2であり、二重系の巻線41x,41yを有している1つのモータ41の巻線の合計2に相当、又は、二重系の巻線511x,511yからなる1つのモータ511の巻線の合計2に相当する。
【0097】
実施例6の変形例によれば、転舵モータを2つのモータ41,511によって構成することにより、車両用ステアリング装置500のフェールセーフ性能を高めることができる。さらに実施例6の変形例は、上記
図1〜4に示される実施例1と同様の作用、効果を発揮することができる。
【0098】
なお、本発明による車両用ステアリング装置10,100,200,300,400,500は、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、実施例に限定されるものではない。
例えば、本発明の各実施例では、操舵部12側と転舵部14側との回転速度の差ΔV(回転速度V1と回転速度V2との速度差ΔV)を確認し、この差ΔVを減少させるような制御を行っているが、転舵可変制御を解除することによってこれを実現してもよい。その場合は、操舵部12側と転舵部14側とが両方とも中立点(中立位置)となった場合に、転舵可変制御を解除することによって操舵部12に対する転舵部14の位置を合わせることができる。
また、各実施例のそれぞれを適宜に組み合わせることが可能である。例えば、実施例5及び実施例6は、他の実施例に組み合わせることが可能である。
また、反力モータ23及び転舵モータ41,511は、それぞれ少なくとも二重系(二重化)の巻線によって構成されていればよく、3相巻線に限定されるものではない。
また、各駆動系統81〜86に、それぞれ電流検出部73a〜73fを含むか否かは、任意である。
また、失陥検出部74は、各電流検出部73a〜73f毎に個別に対応するように、複数の構成に分離した構成であってもよい。
また、反力モータ23と転舵モータ41,511の、失陥の発生の有無は、各モータ23,41,511の各電流値Iaに基づいて判断する構成に、限定されるものではない。