【解決手段】院内搬送システム100は、搬送対象の物品を格納するカート2と、カート2をリフトアップして保持することで、カート2を所定の領域内で搬送可能な走行台車1’、1’’と、を備える。カート2は、カート2の周囲に存在する物体の位置に関する情報を取得するカート物体検出センサー24aを有する。走行台車1’、1’’は、走行部11と、走行台車1’、1’’の周囲に存在する物体の位置に関する情報を取得する物体検出センサー13と、走行台車1’、1’’がカート2をリフトアップする場合にはカート物体検出センサー24aを用いて取得した情報に基づいて走行部11を制御する。その一方、走行台車1’、1’’がカート2をリフトアップしない場合には物体検出センサー13を用いて取得した情報に基づいて走行部11を制御する。
前記走行台車が前記カートをリフトアップしない場合には、前記環境情報取得部は、前記第2物体検出センサーを用いて取得した情報に基づいて第2局所地図データを生成し、
前記自己位置推定部は、前記環境地図データと前記第2局所地図データとに基づいて、前記走行台車の自己位置を推定する、請求項2に記載の搬送システム。
前記環境地図データは、前記第1物体検出センサーを用いて取得した情報に基づいて生成された第1環境地図データと、前記第2物体検出センサーを用いて取得した情報に基づいて生成された第2環境地図データと、を含み、
前記自己位置推定部は、前記走行台車が前記カートをリフトアップする場合には、前記第1環境地図データと前記第1局所地図データに基づいて前記走行台車の自己位置を推定し、前記走行台車が前記カートをリフトアップしない場合には、前記第2環境地図データと前記第2局所地図データに基づいて前記走行台車の自己位置を推定する、請求項3に記載の搬送システム。
前記第1物体検出センサーは、前記走行台車が前記カートをリフトアップするときに、前記第2物体検出センサーと同じ高さとなる位置に設けられる、請求項1〜5のいずれかに記載の搬送システム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.第1実施形態
(1)院内搬送システムが導入される病院の概略
以下、第1実施形態に係る院内搬送システム100を説明する。最初に、
図1を用いて、院内搬送システム100が導入されている病院H(所定の領域の一例)の一例を説明する。
図1は、院内搬送システムが導入される病院の一例を示す図である。
院内搬送システム100が導入される病院Hは、例えば、多くの病院スタッフ(医師、看護師など)及び患者などが存在し、これら不特定多数の者が往来する大規模な病院である。
図1に示す病院Hは、1階FL1〜10階FL10を有する建物である。1階FL1には、病院Hの受付、精算をするための窓口、病院Hで使用する各種物品の管理場所(後述する荷積み場所)などが設けられる。一方、2階FL2及び3階FL3は、外来病棟であり、外来患者及び病院スタッフが存在する。さらに、4階FL4〜10階FL10は、入院病棟であり、入院患者及び病院スタッフが存在する。
【0023】
なお、入院病棟である4階FL4〜10階FL10には、それぞれ、病院スタッフの詰め所SR(例えば、スタッフステーション)が設けられる。4階FL4〜10階FL10へ物品を搬送するカート2、又は、物品を取り出し後のカート2は、この詰め所SRの中、あるいは、詰め所SRの近傍に配置される。その他、必要に応じて、病室の近傍にカート2を配置するようにしてもよい。なお、1つの階に複数の詰め所SRが存在していてもよい。
【0024】
また、後述するように、本実施形態の院内搬送システム100では、走行台車1は無軌道で自律走行できる。従って、1階FL1〜10階FL10の走行台車1の経路(物品の搬送経路)には、走行台車1をガイドするための軌道(例えば、レール、磁気テープなど)が設けられていない。すなわち、本実施形態の院内搬送システム100は、大規模な設置工事等を行うことなく、既存の病院Hに導入できる。
【0025】
また、病院Hには、院内搬送システム100の走行台車1単体、又は、カート2(後述)を保持した走行台車1を搭載可能なエレベータELが設けられている。後述するように、本実施形態の院内搬送システム100では、走行台車1は無軌道で自律走行できるので、このエレベータELは、患者及び病院スタッフが使用する既存のエレベータとできる。すなわち、院内搬送システム100は、走行台車1のための特別なエレベータを特に必要としない。エレベータELは、エレベータELを制御するエレベータ制御部EL1(
図3)と、エレベータEL内の走行台車1と、エレベータ制御部EL1及び上位コントローラ3との間で無線通信するための無線通信装置EL2(
図3)と、を有する。
詳細は後ほど説明するが、本実施形態の院内搬送システム100は、エレベータELのドアの開閉及び昇降と、走行台車1の走行とを協調させる制御を実行できる。
【0026】
さらに、病院Hには、防火設備として病院Hの所定の位置に防火扉FW(
図2)が設けられ、間仕切り目的として病院Hの所定の位置に自動ドアD(
図2)が設けられる。本実施形態の院内搬送システム100は、これら防火扉FW及び自動ドアDの開閉と、走行台車1の走行とを協調させる制御を実行できる。
【0027】
(2)院内搬送システム
(2−1)院内搬送システムの概略説明
以下、病院Hに導入される院内搬送システム100を説明する。まず、院内搬送システム100を概略的に説明する。本実施形態に係る院内搬送システム100は、
図1に示すような病院H内において、走行台車1単体、又は、病院Hで使用される物品を格納するカート2を保持した走行台車1の病院H内の1階FL1〜10階FL10における走行を制御することで、病院H内での物品の搬送を管理及び制御する。
この院内搬送システム100で搬送される物品としては、例えば、患者に投与するための薬剤、手術等の患者の治療に用いる滅菌器材、マスク、ガーゼなどの使い捨ての医療材料、検査対象の患者の血液や尿などの検体、病理検体、輸血液、医療機器、及び、布団等のリネン、などがある。
【0028】
院内搬送システム100において、上記の各物品は、例えば、以下の搬送経路にて搬送される。薬剤(例えば、注射剤、処方薬、製剤等)は、病院Hの薬剤部と病棟(2階FL2〜10階FL3)との間で搬送される。滅菌器材(例えば、手術に使用する器材等、使用済みの器材等)は、器材の滅菌等を行う中央材料部(中材)と病棟及び手術室との間で搬送される。医療材料は、院内物流管理センター(SPDセンター)と病棟及び手術室との間で搬送される。血液や尿などの検体は、病棟と検体検査部との間で搬送される。病理検体は、手術室と検体検査部との間で搬送される。輸血液は、輸血部と病棟及び手術室との間で搬送される。医療機器は、ME部と病棟との間で搬送される。リネンは、洗濯部と病棟及び手術室との間で搬送される。
【0029】
上記の搬送経路のうち、物品をカート2に格納する場所を「荷積み場所」と呼ぶ。上記の例では、荷積み場所は、例えば、薬剤部(薬剤の場合)、中央材料部(滅菌器材の場合)、院内物流管理センター(医療材料の場合)、病棟又は手術室(検体の場合)、輸血部(輸血液の場合)、ME部(医療機器の場合)、洗濯部(リネンの場合)である。
その他、上記物品を元の場所に返却する場合(例えば、薬剤の返却、使用済みの滅菌器材の搬送、使用済みの医療材料の搬送、輸血液の返却、医療機器の返却、使用済みのリネンの搬送など)には、荷積み場所は、例えば、病棟又は手術室である。
【0030】
図1に示すような病院H内では、上記物品は緊急に搬送が必要となる場合と、定期的に搬送される場合があるが、本実施形態に係る院内搬送システム100は、主に、定期的又は比較的多くの物品の搬送に用いられる。定期的又は比較的多くの物品の搬送としては、例えば、上記物品の病棟へ/病棟からの搬送がある。すなわち、院内搬送システム100は、緊急性は高くないが定期的に搬送する必要がある物品、重量があるか又は大きな物品、多くの物品、を搬送する場合に主に用いられる。
【0031】
なお、手術室への物品の搬送などの緊急又は少量の物品の搬送は、例えば、病院H内に設けられた他のシステム(例えば、気送管システムなど)により搬送される。すなわち、本実施形態の院内搬送システム100は、病院Hの他の搬送システムと協調的に運用されて、病院Hの物品の搬送を効率化できる。
【0032】
(2−2)院内搬送システムの構成
次に、
図2及び
図3を用いて、本実施形態に係る院内搬送システム100の具体的な構成を説明する。
図2は、院内搬送システムの構成を示す図である。
図3は、院内搬送システムにおけるアクセスポイントの配置の一例及びエレベータの制御構成を示す図である。
上記の病院H内で物品の搬送を管理/制御する院内搬送システム100は、走行台車1と、カート2と、上位コントローラ3と、制御盤4と、アクセスポイント5と、を備える。走行台車1は、病院H内を無軌道で自律走行する。カート2は、搬送対象の物品を格納し、走行台車1に保持されることで、病院H内を搬送される。
【0033】
本実施形態に係る院内搬送システム100においては、走行台車1及びカート2は複数台存在しており、カート2の台数が走行台車1の台数よりも多くなっている。例えば、院内搬送システム100は、3台の走行台車1と、約360台のカート2を有する。これにより、病院H内において大量の物品を効率よく搬送できる。なお、院内搬送システム100の走行台車1とカート2の台数は、病院Hの規模、搬送する物品の種類及び/又は量に応じて、適宜変更できる。
【0034】
上位コントローラ3は、CPU、記憶装置(例えば、RAM、ROM、SSD、ハードディスクなど)、ネットワークインタフェース、各種入出力インタフェース等により構成されるコンピュータシステムである。上位コントローラ3は、院内搬送システム100の各要素を制御することで、院内搬送システム100における物品の搬送を管理/制御する。
【0035】
具体的には、上位コントローラ3は、物品の搬送に関する搬送指令を特定の走行台車1に送信することで、複数台の走行台車1のうち特定の走行台車1に対して、複数台のカート2のうち特定のカート2を搬送するよう指令する。上位コントローラ3からの搬送指令を受信した走行台車1は、受信した搬送指令に従って病院H内を目的の荷積み場所まで自律走行し、搬送指令に示された特定のカート2を保持(リフトアップ)し、当該カート2を保持した状態で、搬送指令に示された病院H内の特定の場所(目的地点)まで自律走行する。
また、上位コントローラ3は、病院H内を表す環境地図データM1を記憶し、複数の走行台車1が環境地図データM1(すなわち、病院H内)のどの位置に存在するかを監視する。
【0036】
なお、上位コントローラ3の上記の機能は、上位コントローラ3を構成するコンピュータシステムの記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
【0037】
制御盤4は、ネットワークNW(例えば、LAN)を介して上位コントローラ3に接続され、上位コントローラ3から受信した指令に従って、院内搬送システム100の走行台車1以外の要素を制御する。
【0038】
具体的には、制御盤4は、自動ドアD及び防火扉FWに接続されている。制御盤4は、走行台車1が自動ドアD又は防火扉FWを通過するタイミングで上位コントローラ3から対応する自動ドアD又は防火扉FWを開閉させるための指令を受信したら、当該自動ドアD又は防火扉FWを開放する。走行台車1が自動ドアD又は防火扉FWを通過後、安全が確保されたら、制御盤4は、解放した自動ドアD又は防火扉FWを閉める。
【0039】
このように、走行台車1が自動ドアD又は防火扉FWを通過するタイミングで対応する自動ドアD又は防火扉FWを制御盤4が開閉することで、病院H内に自動ドアD及び防火扉FWが存在していても、走行台車1は、それらを自律的に通過できる。
【0040】
また、制御盤4は、エレベータELのエレベータ制御部EL1に接続されている。制御盤4は、上位コントローラ3から走行台車1が存在する階にエレベータELの籠を呼び出し当該階においてエレベータELのドアの開閉を行う指令を受信したら、エレベータ制御部EL1に対して、エレベータELの籠を上記指令に示された階まで移動させて、当該階においてエレベータELのドアを開けるよう指令する。
その後、無線通信装置EL2を介して、エレベータELの近傍に存在する走行台車1に対して、エレベータELの籠内に向けて走行するよう指令する。
【0041】
その後、制御盤4は、上位コントローラ3からの指令に基づいて、走行台車1を載せたエレベータELを当該指令に示された階まで移動させ、指示された階に到達後にドアを開けるよう、エレベータ制御部EL1に指令する。ドアを開けたあと、無線通信装置EL2を介して、走行台車1に対してエレベータELの籠内から到達した階に向けて走行するよう指令する。
【0042】
このように、走行台車1が存在する階までエレベータELの籠を呼び出して、エレベータELの籠内に走行台車1を載せた後、走行台車1を載せたエレベータELの籠を指示された階まで移動させることで、走行台車1は、病院H内の異なる階にも自律走行可能となる。すなわち、(物品を収納したカート2を保持した)走行台車1は、病院H内の異なる階に物品を自律的に搬送できる。
【0043】
制御盤4は、さらに、状態表示灯6に接続されている。状態表示灯6は、病院H内のスタッフが存在する場所(例えば、荷積み場所、スタッフの詰め所SRなど)に設けられた、例えば、複数の色にて点灯可能なランプである。制御盤4は、走行台車1により搬送中のカート2が特定の場所に搬送されたタイミングで状態表示灯6を点灯させるための指令を受信すると、状態表示灯6を特定の色にて点灯させる制御を実行する。
【0044】
このように、状態表示灯6を特定の色にて点灯させて、特定のカート2が目的地点である特定の場所に搬送されたことを通知することにより、走行台車1により所望のカート2(特定のカート)が所望の場所(特定の場所)に搬送されたことを病院H内のスタッフに視覚的に通知できる。
【0045】
なお、制御盤4は、院内搬送システム100において異常が発生したことを検知したタイミング、又は、走行台車1及び/又はカート2に人などが接近したことを検知したタイミングにおいて、状態表示灯6を点灯させてもよい。この場合、制御盤4は、院内搬送システム100で発生したイベント(異常発生、走行台車1及び/又はカート2に人が接近、など)に応じて異なる色にて点灯させてもよい。
【0046】
アクセスポイント5は、病院H内の走行台車1が走行しうる階FL1〜FL10に設けられ、各階FL1〜FL10を走行中の走行台車1と上位コントローラ3との無線通信を中継する装置である。アクセスポイント5は、例えば、無線ルーターである。
図3に示すように、アクセスポイント5は、各階FL1〜FL10の走行台車1の走行経路(物品の搬送経路)に沿って、所定の間隔で複数設けられる。これにより、走行台車1は、各階FL1〜FL10を走行中に常に、いずれかのアクセスポイント5と無線通信可能となる。すなわち、走行台車1は、いずれかのアクセスポイント5を介して、走行中に常に上位コントローラ3と無線通信可能となる。
【0047】
なお、病院H内の各階FL1〜FL10に、無線ルーターなどが既に設置されている場合には、当該無線ルーターを、院内搬送システム100のアクセスポイント5として使用してもよい。また、既設の無線ルーターは、アクセスポイント5としての機能と、他の機能とを兼用されていてもよい。例えば、無線ルーターにおいて、複数のドメインを使用可能とすることにより、機能の兼用を実現できる。
【0048】
院内搬送システム100は、充電部7を有する。充電部7は、走行台車1のバッテリーを充電する。走行台車1は、例えば、上位コントローラ3から指示があった場合に、充電部7が設けられた場所(例えば、病院H内の各階の所定の場所)に移動して、バッテリーの充電を実行する。
【0049】
具体的には、充電部7は、充電ステーション7aと、充電器7bと、を有する。充電ステーション7aは、走行台車1のバッテリー充電のための電力を供給する。具体的には、充電ステーション7aは、例えば、非接触電力伝送が可能なコイル、電力を出力するソケットなどを有する。
また、充電ステーション7aには、特徴的な形状または特徴的な反射強度を持つ素材を有するランドマークを有する。走行台車1は、このランドマークの形状または反射光をLRFにより検出し、検出されたランドマークの形状に基づいて、走行台車1と充電ステーション7aとの間の距離を測定できる。すなわち、ランドマークを設けることで、走行台車1が充電ステーション7aに自律的に接近(ドッキング)できる。
【0050】
充電器7bは、充電ステーション7aに電力を供給する電源である。充電器7bは、制御盤4を介して上位コントローラ3に接続されており、上位コントローラ3からの指令により制御盤4を介して、走行台車1がドッキングした充電ステーション7aに電力を供給する。
【0051】
院内搬送システム100は、ステーションSTを有する。ステーションSTは、走行台車1がカート2を保持(リフトアップ)又は保持を解除する作業を実行する場所である。院内搬送システム100において、ステーションSTは複数存在(例えば、走行台車1が走行しうる各階などに存在)し、各ステーションSTには識別番号が付されている。また、ステーションSTは、走行台車1がカート2を保持するための送信用ステーションと、走行台車1によるカート2の保持を解除する受信用ステーションと、を含む。さらに、ステーションSTは、走行台車1の待機場所を含んでいてもよい。
【0052】
院内搬送システム100は、カートプールCPを有する。カートプールCPは、使用されていないカート2を待機させるための場所である。カートプールCPは、例えば、物品の搬送開始地点である荷積み場所に設けられる。これにより、使用されていないカート2を所定の箇所に集合させつつ、必要に応じてカートプールCPから特定のカート2を選択して使用できる。
【0053】
(2−3)走行台車の構成
(2−3−1)走行台車の構成
次に、
図4〜
図6を用いて、本実施形態に係る院内搬送システム100が有する走行台車1の構成を説明する。
図4は、走行台車の構成を示す図である。
図5は、走行台車の制御部の構成を示す図である。
図6は、リフトを上昇させた状態の走行台車を示す図である。
院内搬送システム100において、走行台車1は、上位コントローラ3から受信した搬送指令に従って、物品を収納したカート2を保持した状態で、又は、単独で病院H内を無軌道で自律的に走行する。走行台車1は、本体Bと、走行部11と、物体検出センサー13と、リフト15と、制御部17(
図5)と、を有する。
【0054】
本体Bは、走行台車1の本体を構成する筐体である。走行部11は、本体Bの下部に取り付けられ、本体B(走行台車1)を走行させる。走行部11は、差動二輪型の走行部であり、具体的には、一対の主輪11aと、一対の従動輪11bと、を有する。
一対の主輪11aのそれぞれは、本体Bの左右に設けられ、モータ11c(
図5)の出力回転軸の回転に従って回転する。また、モータ11cの出力回転軸には、出力回転軸の回転量を測定するエンコーダ11d(
図5)が設けられている。一対の従動輪11bのそれぞれは、本体Bの前後に設けられ、主輪11aの回転により本体Bが走行するのに従って従動して回転する。
【0055】
物体検出センサー13は、走行台車1の周囲に存在する物体の位置に関する情報を取得するセンサーである。物体検出センサー13にて検出される物体は、走行台車1の搬送経路に存在する病院H内の壁、柱、設置物、病院H内を往来する人などである。
本実施形態の走行台車1において、物体検出センサー13は、前方物体検出センサー13aと、後方物体検出センサー13bと、を有する。前方物体検出センサー13aは、本体Bの前方に設けられ、走行台車1の進行方向前方に存在する物体の位置に関する情報を取得する。後方物体検出センサー13bは、本体Bの後方に設けられ、走行台車1の進行方向後方に存在する物体の位置に関する情報を取得する。
【0056】
本実施形態において、前方物体検出センサー13a、及び、後方物体検出センサー13bは、例えば、物体に対して照射したレーザ光が当該物体で反射してセンサーにより受光されるまでの時間に基づいて、センサーと物体との間の距離を測定する測距センサーである。測距センサーとしては、例えば、レーザレンジファインダ(LRF)、TOFセンサーなどがある。本実施形態において、前方物体検出センサー13a、及び、後方物体検出センサー13bは、中心角が270°である半円内にある物体の距離を測定できる。
上記の測距センサーである前方物体検出センサー13a、及び、後方物体検出センサー13bは、センサーから物体までの距離と、センサーから見た物体が存在する方向(角度)と、を物体の検出結果として、制御部17に出力する。
【0057】
リフト15は、本体Bの上部に設けられ、モータ(図示せず)などの駆動機構により、
図6のように高さ方向に昇降可能な平面部材である。後述するように、リフト15は、高さ方向に上昇することで、カート2を保持する。その一方、カート2を保持したリフト15は、高さ方向に下降することで、当該カート2の保持を解除できる。
【0058】
制御部17は、本体Bの内部に設けられた、CPU、記憶装置(例えば、RAM、ROM、SSD、ハードディスクなど)、ネットワークインタフェース、各種入出力インタフェース等により構成され、走行台車1を制御するコンピュータシステムである。なお、制御部17の一部又は全部は、SoC(System on Chip)で構成されていてもよい。なお、制御部17の具体的な制御構成は、後ほど詳しく説明する。
【0059】
走行台車1は、超音波センサー19をさらに有してもよい。超音波センサー19は、本体Bの前後または側面に取り付けられ、走行台車1への物体の接近を検知する。超音波センサー19を本体Bに設けることにより、走行台車1と物体との接触をより確実に回避できる。
【0060】
(2−3−2)制御部の構成
以下、
図5を用いて、走行台車1を制御する制御部17の具体的構成を説明する。制御部17は、走行統括部171と、第1通信部173と、第2通信部175と、リフト制御部177と、バッテリー179と、を有する。走行統括部171は、病院H内における走行台車1の走行制御を統括する。走行統括部171の具体的な制御構成は、後ほど詳しく説明する。
【0061】
第1通信部173は、アクセスポイント5を介した上位コントローラ3との無線通信、及び、無線通信装置EL2を介したエレベータ制御部EL1との無線通信を行う。第1通信部173は、例えば、無線ネットワーク通信を行うための回路である。
【0062】
第2通信部175は、カート2と通信する。具体的には、第2通信部175は、リフト15により保持したカート2に設けられた異常検出センサー24(後述)による物体の検知結果を受信する。また、第2通信部175は、必要に応じて、カート2に関する他の情報の送受信(例えば、カート2の識別情報の受信、カート2の行先に関する情報の送信)をカート2と行ってもよい。第2通信部175は、例えば、赤外線通信(IrDA規格による通信)、ブルートゥース(登録商標)などの近距離無線通信、無線ネットワーク通信などの無線通信可能な回路である。その他、第2通信部175は、カート通信部26(後述)の通信電極と接触する端子にてカート通信部26と有線通信する回路であってもよい。
【0063】
リフト制御部177は、リフト15の昇降を制御する。バッテリー179は、走行台車1への電力供給を行う二次電池である。バッテリー179は、その他、受電部179a及び給電部179bに接続されている。受電部179aは、本体Bに設けられ、走行台車1が充電ステーション7aに接近すると、充電ステーション7aからバッテリー179の充電電力を入力し、当該充電電力を用いてバッテリー179を充電する。受電部179aは、例えば、非接触電力伝送用のコイル、ソケットである。
給電部179bは、リフト15に設けられ、リフト15にて保持したカート2に電力を供給する。この電力は、カート2に設けられた各種センサーなどを駆動するために用いられる。給電部179bは、例えば、非接触電力伝送用のコイル、ソケット、給電用の金属端子である。
【0064】
(2−3−3)走行統括部の構成
以下、
図5を用いて、走行台車1の走行を統括する走行統括部171の具体的な構成を説明する。なお、以下に説明する走行統括部171の各機能ブロックの機能の一部又は全部は、制御部17を構成するコンピュータシステムにて実行可能なコンピュータプログラムにより実現されてもよいし、ハードウェア的に実現されてもよい。機能ブロックの機能をコンピュータプログラムで実現する場合、当該コンピュータプログラムは、制御部17を構成するコンピュータシステムの記憶装置に記憶される。
走行統括部171は、記憶部171aと、環境情報取得部171bと、自己位置推定部171cと、走行制御部171dと、を有する。
【0065】
記憶部171aは、制御部17を構成するコンピュータシステムの記憶装置の記憶領域の一部であり、走行台車1の制御に必要な設定等を記憶する。具体的には、記憶部171aは、環境地図データM1と、局所地図データM2と、搬送スケジュールSCと、を記憶する。
環境地図データM1は、病院H内を表す地図情報である。環境地図データM1は、病院H内全体(全ての階FL1〜FL10)を表す地図情報であってもよいし、病院H内全体のうち、対応する走行台車1が走行しうる病院H内の一部の領域(一部の階)の地図情報であってもよい。また、環境地図データM1は、走行台車1に搬送経路を実際に走行させて教示する際に得られた局所地図データM2を用いて作成されてもよいし、病院H内の設計図などのCADデータをデータ変換して作成されてもよい。
【0066】
局所地図データM2は、走行台車1の現在位置を中心とした所定の範囲内にある物体を表す地図情報である。局所地図データM2は、環境情報取得部171bが、物体検出センサー13(前方物体検出センサー13a、後方物体検出センサー13b)から入力したデータに基づいて作成する。
【0067】
搬送スケジュールSCは、走行台車1の搬送開始地点から搬送終了地点までの搬送に関するデータである。本実施形態において、搬送スケジュールSCは、搬送開始地点から搬送終了地点までの間に所定の間隔で設定された複数の目標点の集合として搬送経路を表すデータである。この場合には、搬送スケジュールSCは、上位コントローラ3により経路計画されたものであってもよいし、予め教示して上位コントローラ3に記憶されたものであってもよい。その他、搬送スケジュールSCは、搬送開始地点及び搬送終了地点に関するデータであってもよい。この場合には、搬送経路の計画は、走行台車1で実行されてもよい。
【0068】
なお、搬送スケジュールSCは、上位コントローラ3から搬送指令とともに送信されてもよいし、搬送経路の計画時に教示されて記憶部171aに予め記憶しておいてもよい。
【0069】
環境情報取得部171bは、局所地図データM2を取得する。具体的には、環境情報取得部171bは、前方物体検出センサー13aにて取得した走行台車1の前方に存在する物体に関する情報と、後方物体検出センサー13bにて取得した走行台車1の後方に存在する物体に関する情報とを用い、必要に応じて座標変換を行って局所地図データM2を生成する。
【0070】
自己位置推定部171cは、走行台車1が自律的に走行中に、記憶部171aに記憶された環境地図データM1と、環境情報取得部171bにて取得した局所地図データM2とに基づいて、走行台車1の自己位置を推定する。具体的には、自己位置推定部171cは、環境地図データM1上において、主輪11aの回転量に基づいて推定された位置の近傍に設定された複数の候補位置に局所地図データM2を配置し、各候補位置において環境地図データM1と環境地図データM1上に配置した局所地図データM2との一致度を評価し、複数の候補位置のうち上記の一致度が最も高い候補位置を自己位置と推定する。
【0071】
なお、例えば、環境地図データM1及び/又は局所地図データM2が単調であるなどの理由により、環境地図データM1と局所地図データM2との一致度を適切に評価できない場合には、自己位置推定部171cは、エンコーダ11dにより得られた主輪11aの回転量に基づいて自己位置を推定してもよい(デッドレコニングによる自己位置推定)。
【0072】
走行制御部171dは、自己位置推定部171cにより推定された自己位置から、搬送スケジュールSCの次の目標点(目標位置)まで走行するための走行指令を算出する。走行制御部171dは、算出した走行指令に基づいてモータ11cを制御する。なお、走行制御部171dは、エンコーダ11dにより測定された主輪11aの回転量をフィードバックして、モータ11cを制御する。
【0073】
なお、走行制御部171dは、現在位置にて取得した局所地図データM2に、走行台車1との距離が短い物体が存在する(局所地図データM2において、局所地図データM2の中心から近い位置に物体の像が存在する)場合には、走行台車1を減速、停止、または回避させる制御を行う。
【0074】
走行台車1の走行を統括する走行統括部171が上記の構成を有することで、走行台車1は、不特定多数の者が往来する病院H内を無軌道で自律走行できる。
【0075】
(2−4)カートの構成
次に、
図7A〜
図9を用いて、院内搬送システム100において、病院H内の物品を収納して搬送するために用いられるカート2の構成を説明する。
図7Aは、カートの正面図である。
図7Bは、カートの背面図である。
図8は、カートに取り付けられたセンサーの構成を示す図である。
図9は、走行台車がカートを保持した状態を示す図である。
カート2は、カート本体21と、車輪22と、把持部材23と、を有する。カート本体21は、カート2の本体を構成する筐体であり、当該筐体の内側に物品を格納可能な格納空間を有する。カート本体21の格納空間には複数のトレイTRが格納されており、物品はこのトレイTRに収納された状態でカート2に格納される。この構成により、カート2は、格納空間に大量の物品を格納できる。
【0076】
また、カート本体21の前面のトレイTR(物品)を出し入れするための開口には、鍵付きシャッター211が設けられている。鍵付きシャッター211は、トレイTRに物品を収納後にカート本体21の上記開口に蓋をする。鍵付きシャッター211は、カート本体21の開口に蓋をした状態で施錠できる。これにより、カート本体21からトレイTRを外部に持ち運ぶこと、及び、物品の搬送中にトレイTR及び/又は物品が落下することなどを防止できる。
【0077】
さらに、カート本体21の上部左右には、表示灯213が設けられている。表示灯213は、例えば、カート2の移動方向等を知らせる方向指示器として機能する。また、カート本体21の上部中心には、行先表示部215が設けられる。行先表示部215は、カート2の搬送先が表示される。行先表示部215は、例えば電子ペーパー等の文字表示装置であってもよいし、行先を記載したプレートを挿入するための部材であってもよい。
【0078】
車輪22は、取付部材22aを介して、カート本体21の底部の四隅に固定されている。この構成により、カート2は、例えば病院のスタッフなどが牽引又は押すことにより移動可能となっている。また、上記の構成を有するカート2は、車輪22とカート本体21の底部との間に、走行台車1が侵入可能な空間SPを有する。
把持部材23は、カート本体21の上部の四隅に設けられ、病院のスタッフなどがカート2を牽引又は押して移動させる際に把持する部材である。
図7A及び
図7Bに示すように、把持部材23は、カート本体21の前面のみでなく背面にも取り付けられているので、カート2は前面及び背面の両面から牽引又は押すことが可能となっている。カート2は走行のための駆動源(モータ)を有していないが、この構成により、カート2をスタッフなどが容易に動かすことが可能である。
【0079】
また、カート2には、カート2への物体の接近及び接触を検知するための各種のセンサー及びスイッチ(異常検出センサー24)が設けられている。具体的には、本実施形態のカート2には、異常検出センサー24として、カート物体検出センサー24aと、テープスイッチ24b(
図8、
図9)と、接触検知スイッチ24c(
図8)と、ライトカーテン24d(
図8)と、が設けられる。これらのセンサーを、「第2センサー」と呼ぶ。
カート物体検出センサー24aは、カート本体21の下部の対角線で結ばれる二隅に設けられ、カート2(カート本体21)に接近する物体を検出するセンサーである。カート物体検出センサー24aは、走行台車1に設けられている物体検出センサー13と同様に測距センサー(例えば、LRF、TOFセンサー)である。カート物体検出センサー24aを「第1センサー」と呼ぶ。
【0080】
テープスイッチ24b及び接触検知スイッチ24cは、カート本体21への物体の接触を検知する。テープスイッチ24bは、例えば、カート本体21の前後左右の側面に貼り付けられた、テープ形態の電気スイッチである。テープスイッチ24bは、物体が触れるとスイッチ状態(オン状態/オフ状態)が変化することで、物体の接触を検知する。
接触検知スイッチ24cは、例えば、カート本体21の側面に設けられた圧力センサーである。接触検知スイッチ24cは、物体がカート本体21を押してたわむことにより生じる圧力変化を検出する。接触検知スイッチ24cによるカート本体21への物体の検出感度を向上させるために、カート本体21の側面は、物体の接触により撓んで圧力変化が生じやすい構造としておくことが好ましい。
【0081】
なお、接触検知スイッチ24cは、カート本体21の前面以外の3つの側面(左右側面、背面)に設けられてもよいし、カート本体21の4つの側面(前後左右側面)に設けられてもよい。
【0082】
ライトカーテン24dは、カート本体21の前面に設けられた鍵付きシャッター211及び開口への物体の接近及び接触を検知する。ライトカーテン24dは、カート本体21前面に設けられ、カート本体21の前面の開口(鍵付きシャッター211)を覆うように光(例えば、赤外光)を出力し、当該光が物体により遮られたか否かを検出する光センサーである。
【0083】
カート2には、上記の異常検出センサー24以外にも、停止ボタン25が設けられている。
図7Bに示すように、停止ボタン25は、例えば、カート本体21の上部背面に設けられ、例えば、カート2を保持した走行台車1の走行を停止させる際に押される。
【0084】
また、
図8に示すように、カート2は、カート通信部26を有する。カート通信部26は、カート本体21の底部に設けられ、カート2が走行台車1のリフト15に保持されている際に、第2通信部175とデータ送受信を実行する。具体的には、カート通信部26は、例えば、異常検出センサー24による物体の検出結果を、走行台車1の第2通信部175に送信する。
カート通信部26は、例えば、赤外線通信(IrDA規格による通信)、ブルートゥース(登録商標)などの近距離無線通信、無線ネットワーク通信などの無線通信可能な回路である。この場合、カート通信部26及び第2通信部175により、走行台車1とカート2は互いに無線通信できる。その他、カート通信部26は、第2通信部175の通信電極と接触する端子にて第2通信部175と有線通信する回路であってもよい。
【0085】
カート2に上記の異常検出センサー24及び停止ボタン25を設けてカート2への物体の接近及び接触を検出し、当該検出結果を走行台車1に送信可能とすることで、走行台車1は、例えば、カート2への物体の接近及び接触があったときに、減速又は停止する制御を実行できる。すなわち、カート2に異常検出センサー24及び停止ボタン25を設けることで、搬送中のカート2を保持した走行台車1が、不特定多数の者が往来する病院H内を走行する際の安全性を確保できる。
【0086】
さらに、
図8に示すように、カート2は、カート受電部27を有する。カート受電部27は、カート本体21の底部に設けられ、カート2が走行台車1のリフト15に保持されている際に、走行台車1の給電部179bから電力を入力し、当該電力を異常検出センサー24及びカート通信部26に出力する。カート受電部27は、例えば、非接触電力伝送用のコイル、ソケット、受電用の金属端子である。
【0087】
これまで説明したように、上記の構成を有するカート2は、走行台車1に保持されて病院H内を搬送される。具体的には、カート2は、
図9に示すように走行台車1に保持されて、病院H内を搬送される。カート2の走行台車1への保持は、カート本体21の下の空間SP内に走行台車1が入り、空間SP内の走行台車1がリフト15を上昇してカート2を上昇させることで実現される。このとき、カート2の車輪22は、走行面から離間している。
【0088】
なお、院内搬送システム100においては、病院H内で搬送される物品毎に専用のカート2が存在し、上記の
図7A〜
図9を用いて説明したカート2は、薬剤を搬送する際に用いられるカートの一例である。
カート2は、搬送する物品が汚染されてはならない「クリーン」なものであるか、又は、すでに汚染されており「ダーティ」なものであるかにより、種類が異なっている。例えば、滅菌器材を搬送するカート2は、細菌等が付着しにくい材料で構成され、他の物品の搬送用途には用いられない。また、使用前の滅菌器材と使用後の滅菌器材は異なるカート2を用いて搬送する。
【0089】
また、例えば、搬送する物品毎に専用のトレイTR(例えば、薬剤用のトレイ、医療材料用のトレイ、輸血液用のトレイ、検体用のトレイ)を用いて、カート2は「クリーン」な物品(例えば、薬剤、使用前の医療材料、輸血液など)の搬送用と、「ダーティ」な物品(例えば、使用後の医療材料、検体など)の搬送用とで分けて用いることもできる。
【0090】
上記のカート2の種類は、例えば、カート2の意匠(形状、模様、色彩等)を種類毎に異ならせることで視覚的に識別できる。このように、搬送する物品毎に専用のカート2を用いることで、物品の種類に応じた適切なカート2を用いて物品を搬送可能として、院内搬送システム100の拡張性及び自由度を高くできる。
【0091】
(3)院内搬送システムの動作
(3−1)概略動作
以下、本実施形態の院内搬送システム100の動作を説明する。まず、
図10を用いて、院内搬送システム100の概略的な動作を説明する。
図10は、院内搬送システムの概略動作を示すフローチャートである。院内搬送システム100の概略的な動作は、どのような物品をどの場所に搬送するかにかかわらず、基本的にはほぼ同じである。搬送する物品、荷積み場所、搬送終了地点等によって異なるのは、
図10のフローチャートにおける各ステップの具体的な処理内容である。
最初に、ステップS1で、出庫処理が実行される。具体的には、スタッフが、搬送したい物品の荷積み場所において、その物品専用のカート2に搬送対象の物品を格納する。その後、物品を格納したカート2を、走行台車1にカート2を保持させる場所(ステーションST)に移動させ、端末を用いて上位コントローラ3に上記カート2の搬送要求を送信する。
【0092】
出庫処理を実行後、ステップS2で、搬送処理が実行される。具体的には、搬送要求を受信した上位コントローラ3が、搬送要求に基づいて搬送指令を生成し、それを適切な走行台車1に送信する。例えば、搬送要求がなされた荷積み場所(ステーションST)に最も近い位置に存在し、カート2を保持していない走行台車1に、搬送指令が送信される。
上位コントローラ3が送信する搬送指令には、搬送経路に関する情報(搬送スケジュールSC、又は、搬送開始地点及び搬送終了地点に関する情報)、保持すべき特定のカート2の識別番号等が含まれる。
【0093】
上記搬送指令を受信した走行台車1は、搬送指令に示された搬送開始地点まで自律走行し、荷積み場所において搬送指令に示された特定のカート2をリフト15によりリフトアップして保持する。その後、特定のカート2を保持した走行台車1は、搬送指令に示された搬送終了地点まで自律走行し、搬送終了地点においてリフト15を下降させてカート2の保持を解除する。
【0094】
特定のカート2を搬送終了地点まで搬送後、ステップS3で、搬送後処理が実行される。具体的には、搬送終了地点に置かれた特定のカート2については、搬送終了地点のスタッフが当該特定のカート2から物品を取り出す作業を実行する。その後、物品を取り出したカート2を返却する。
一方、搬送指令の実行を完了した走行台車1については、走行台車1のバッテリー179の残量が少ない場合には、上位コントローラ3は、当該走行台車1に対してバッテリー179を充電するよう指令する。当該指令を受信した走行台車1は、充電ステーション7aまで自律走行し、充電ステーション7aに自律的に接近(ドッキング)する。
【0095】
その他、走行台車1のバッテリー179の残量が十分な場合には、上位コントローラ3は、当該走行台車1に対して走行台車1の待機場所まで走行し、その待機場所で待機するよう指令する。
【0096】
上記のステップS1〜S3は、院内搬送システム100が稼働中に、物品の搬送がなされる毎に繰り返し実行される。また、同時に複数種類の物品の搬送がなされる場合には、上記のステップS1〜S3は、院内搬送システム100で同時に実行される。
【0097】
(3−2)院内搬送システムの詳細動作
(3−2−1)薬剤部の構成
次に、本実施形態の院内搬送システム100の具体的な動作を説明する。ここでは、院内搬送システム100の具体的な動作例として、病院Hの1階FL1に存在し薬剤を管理する薬剤部を荷積み場所の一例とし、当該薬剤部から病院Hの5階FL5に存在する入院病棟のスタッフの詰め所SRまで薬剤を搬送する場合を説明する。この薬剤部から病院Hの入院病棟の詰め所SRまでの薬剤の搬送は、例えば、1日に4回(朝、昼、夕、夜)定期的に実行される。
最初に、薬剤部の構成について簡単に説明する。本実施形態の薬剤部は、オートアンプルディスペンサーADを有する。オートアンプルディスペンサーADは、第1端末T1から出力された薬剤のオーダーに基づいて作成された処方箋に基づいて、カート2に格納する薬剤をピッキングする装置である。なお、第1端末T1は、例えば、医師が電子カルテ等を作成する際に用いる端末である。
【0098】
薬剤部は、さらに、第2端末T2を有する。第2端末T2は、処方箋に示された薬剤を格納したカート2を、薬剤部から目的の入院病棟まで搬送するよう要求する搬送要求を上位コントローラ3に送信するための端末である。第2端末T2は、例えば、薬剤師(または、監査を担当するスタッフ)が所有するタブレット端末であってもよいし、薬剤を格納したカート2を搬送のために待機させるステーションSTに設置された端末(パーソナルコンピュータ)であってもよい。
また、第2端末T2は、上位コントローラ3と無線通信してもよいし、有線にて通信してもよい。さらに、第2端末T2の上記機能は、第2端末T2に記憶されたプログラム(アプリケーションソフトウェア)により実現される。
【0099】
(3−2−2)薬剤を搬送する例における出庫動作
次に、院内搬送システム100における、上記の薬剤部から病院Hの5階FL5に存在する詰め所SRまで薬剤を搬送する動作例を詳細に説明する。上記にて説明したように、院内搬送システム100では、
図10のフローチャートに従って、(i)出庫処理(ステップS1)、(ii)搬送処理(ステップS2)、(iii)搬送後処理(ステップS3)、が一連の動作として実行される。従って、以下の説明も、上記(i)〜(iii)(ステップS1〜S3)のステップ毎に具体的な動作を説明する。
まず、
図11を用いて、薬剤部から病院Hの5階FL5の詰め所SRまで薬剤を搬送する例における出庫動作を説明する。
図11は、薬剤部から詰め所SRまで薬剤を搬送する例における出庫動作を示すフローチャートである。
【0100】
薬剤の出庫動作は、医師が、第1端末T1を用いて、薬剤のオーダーをすることから開始される(ステップS11)。第1端末T1を用いてオーダーが出力されると、そのオーダーに対応する電子カルテと処方箋が生成される。第1端末T1から出力された処方箋は、オートアンプルディスペンサーADに送信される。
【0101】
処方箋を受信したオートアンプルディスペンサーADは、ステップS12で、受信した処方箋に示された薬剤をピッキングする。ピッキングされた薬剤は、その薬剤を使用する患者専用のトレイTRに払い出される。オートアンプルディスペンサーADは、薬剤の払い出しとともに、払い出した薬剤に関する情報を表すバーコードを出力する。払い出した薬剤に関する情報は、例えば、薬剤が払い出されたトレイTRに関する情報(例えば、患者に関する情報)、払い出された薬剤の種類の情報等の医療情報である。
【0102】
その後、薬剤部のスタッフ(薬剤師)が、ステップS13で、薬剤の搬送用のカート2をカートプールCPから所定の場所まで持ってきて、当該場所でカート2に薬剤が払い出されたトレイTRを格納する。なお、薬剤の搬送用のカート2のカートプールCPは、例えば、薬剤部の内部又はその近傍に設けられる。また、当該カート2には、同じ搬送先の複数のトレイTRが格納される。
薬剤の搬送用のカート2に薬剤が払い出されたトレイTRを格納後、ステップS14で、薬剤部のスタッフ(監査員)が、カート2に格納された薬剤の監査をする。監査後に、鍵付きシャッター211によりカート2の開口を閉じて、鍵付きシャッター211を施錠する。
【0103】
鍵付きシャッター211を施錠後、ステップS15で、上位コントローラ3に対して搬送要求がなされる。具体的には、まず、薬剤のトレイTRを格納したカート2を、走行台車1がカート2を保持する作業を実行するステーションSTまで移動する。その後、第2端末T2を用いて、搬送対象のカート2の識別番号と、カート2(薬剤)の搬送先(搬送終了地点)と、当該カート2のステーションSTにおける位置(ステーションSTの識別番号)と、を入力する。
【0104】
上記の情報は、第2端末T2を用いて手動入力してもよいし、カート2に付されたバーコードを読み取ることにより入力してもよい。例えば、ステップS13でトレイTRをカート2に格納する際に、カート2の識別番号をカート2に付されたバーコードから読み取ることができる。また、トレイTRの識別情報をトレイTRに付されたバーコードから読み取り、読み取ったトレイTRの識別情報に基づいて判定した薬剤の搬送先をカート2の搬送先とできる。
【0105】
次に、第2端末T2を用いて、上記の搬送対象のカート2の識別番号と、カート2の搬送先と、カート2のステーションSTにおける位置(識別番号)と、を搬送要求として上位コントローラ3に送信する。また、搬送開始地点が薬剤部であることを示す情報も搬送要求に含めて上位コントローラ3に送信される。
搬送開始地点が薬剤部であることを示す情報は、例えば、第2端末T2の識別情報(例えば、IPアドレス、MACアドレス、など)、薬剤部のスタッフの識別情報などである。その他、カート2が搬送する物品の種類毎に存在することに基づいて、カート2の識別情報を、搬送開始地点が薬剤部であることを示す情報として用いることもできる。
【0106】
上記の出庫処理を実行することにより、第1端末T1を用いて医師からオーダーのあった薬剤を確実にカート2に格納し、当該カート2を特定の場所(本実施形態では、5階LF5の詰め所SR)まで搬送することを上位コントローラ3に要求できる。
【0107】
(3−2−3)薬剤を搬送する例における搬送動作
(I)上位コントローラ側の搬送動作
次に、薬剤部から病院Hの5階FL5の詰め所SRまで薬剤を搬送する例における搬送動作を説明する。搬送動作は、上位コントローラ3及び走行台車1がお互いに通信をして必要な情報を送受信しつつ、上位コントローラ3及び走行台車1が個別に搬送のための動作を実行することで実現される。従って、以下では、搬送動作における上位コントローラ3側の動作と、走行台車1側における動作とを個別に説明する。まず、
図12を用いて、上位コントローラ3側の搬送動作を説明する。
図12は、薬剤部から詰め所まで薬剤を搬送する例における上位コントローラ側の搬送動作を示すフローチャートである。
上位コントローラ3側での搬送動作は、薬剤部の第2端末T2から搬送要求を受信することで開始される。搬送要求を受信すると(ステップS21で「Yes」)、上位コントローラ3は、ステップS22で、受信した搬送要求に基づいて搬送指令を生成する。
【0108】
具体的には、上位コントローラ3は、搬送要求に含まれる搬送開始地点が薬剤部であることを示す情報と、カート2の搬送先(5階FL5に存在する詰め所SR)と、から、薬剤部から5階FL5の詰め所SRまでの搬送経路を表す搬送スケジュールSCを生成する。上位コントローラ3は、例えば、薬剤部から5階FL5の詰め所SRまでの経路計画を実行して搬送スケジュールSCを生成してもよいし、又は、予め記憶しておいた薬剤部から5階FL5の詰め所までの搬送スケジュールSCを選択してもよい。
【0109】
その他、走行台車1側で経路計画をする場合には、上位コントローラ3は、第2端末T2から受信した搬送開始地点が薬剤部であることを示す情報と、カート2の搬送先と、をそのまま搬送指令とできる。
【0110】
上位コントローラ3は、さらに、搬送要求に含まれる搬送対象のカート2の識別番号と、当該カート2のステーションSTにおける位置(ステーションSTの識別番号)と、を搬送指令に含める。これにより、後述するように、当該搬送指令を受信した走行台車1は、ステーションSTに置かれたどのカート2を搬送すべきかを判断できる。
【0111】
上記のステップS22を実行することで、上位コントローラ3は、第2端末T2から受信した搬送要求に基づいて、荷積み場所(薬剤部)まで走行し、当該荷積み場所にて物品(薬剤)を格納したカート2を保持し、その後、当該カート2を特定の場所(5階FL5の詰め所SR)まで搬送するよう走行台車1に指令する搬送指令を生成できる。
【0112】
搬送指令を生成後、上位コントローラ3は、ステップS23で、搬送指令を送信すべき走行台車1を特定し、当該特定した走行台車1に搬送指令を送信する。搬送指令を送信すべき走行台車1としては、例えば、待機場所(ステーションST)で待機中の走行台車1、薬剤部の最も近くを走行中でありカート2を保持していない走行台車1、を選択できる。
【0113】
なお、例えば、搬送指令を送信すべき適切な走行台車1を見つけられない場合には、上位コントローラ3は、生成した搬送指令を記憶装置にキューイングする。適切な走行台車1を見つけられない場合としては、例えば、全ての走行台車1がカート2を保持している場合、全ての走行台車1が充電中である、走行台車1との通信ができない場合がある。
その後、適切な走行台車1を見つけたタイミングで、上位コントローラ3は、その走行台車1にキューイングした搬送指令を送信する。
【0114】
その他、所定の数以上の搬送指令がキューイングされている場合に、上位コントローラ3は、上記のステップS21において、第2端末T2から受信した搬送要求をキューイングしてもよい。その後、キューイングされた搬送指令が所定の数より少なくなったときに、上位コントローラ3が、上記のステップS22及びS23を実行して、搬送指令を生成し、走行台車1に送信してもよい。
【0115】
上位コントローラ3から搬送指令を受信した走行台車1は、搬送指令に基づいて自律的にカート2を搬送するための動作を開始する。このとき、上位コントローラ3は、搬送指令を出力したカート2の病院H内の位置を監視してもよい。上位コントローラ3は、例えば、所定の周期で走行台車1が推定した自己位置を受信することで、当該走行台車1の病院H内の位置を監視してもよい。
【0116】
搬送指令に基づいて走行することで、走行台車1が1階のエレベータELの前に到達したことを検知すると(ステップS24で「Yes」)、上位コントローラ3は、ステップS25で、制御盤4に対して、エレベータELを制御するための指令を出力する。
なお、走行台車1がエレベータELの前に到達したことは、例えば、監視中の走行台車1の病院Hにおける位置情報、又は、走行台車1から送信されたエレベータELへの乗降要求、を受信することにより検知できる。
【0117】
上位コントローラ3は、制御盤4に対して、以下のエレベータELの制御指令を送信する。まず、走行台車1が1階FL1のエレベータELの乗降口の前に到達したことを検知すると、上位コントローラ3は、制御盤4に対して、エレベータELの籠を1階に呼び出す指令を送信する。制御盤4は、この指令を受信すると、エレベータ制御部EL1に対して、エレベータELの籠を1階に移動させるよう指令する。
エレベータELの籠が1階FL1に到達すると、上位コントローラ3は、制御盤4に対して、エレベータELのドアを開ける指令を送信する。制御盤4は、この指令を受信すると、エレベータ制御部EL1に対して、エレベータELのドアを開けるよう指令する。
【0118】
エレベータELのドアが開いて走行台車1がエレベータELの籠内に移動すると、上位コントローラ3は、制御盤4に対して、エレベータELのドアを閉じて、エレベータELの籠を目的の階に移動させる(5階FL5に移動させる)指令を送信する。制御盤4は、この指令を受信すると、エレベータ制御部EL1に対して、エレベータELのドアを閉じて、エレベータELの籠を5階FL5に移動させるよう指令する。
【0119】
エレベータELの籠が目的の階(5階FL5)に到達すると、上位コントローラ3は、制御盤4に対して、エレベータELのドアを開ける指令を送信する。制御盤4は、この指令を受信すると、エレベータ制御部EL1に対して、エレベータELのドアを開けるよう指令する。その後、走行台車1が、エレベータELの籠内から5階FL5に移動する。
【0120】
また、走行台車1が搬送終了地点(5階FL5の詰め所SR)に向けて自律走行中に、上位コントローラ3は、ステップS26で、走行台車1が病院H内の自動ドアD又は防火扉FWの近傍に到達し、これらを通過しようとしているか否かを検知する。
走行台車1が自動ドアD又は防火扉FWの近傍に到達したことは、例えば、監視中の走行台車1の病院Hにおける位置情報、又は、走行台車1から送信された自動ドアD又は防火扉FWの開閉要求、を受信することにより検知できる。
【0121】
走行台車1が自動ドアD又は防火扉FWの近傍に到達したことを検知すると(ステップS26で「Yes」)、上位コントローラ3は、ステップS27で、制御盤4に対して、対応する自動ドアD又は防火扉FWを開閉させる指令を送信する。
具体的には、まず、上位コントローラ3は、制御盤4に対して、対応する自動ドアD又は防火扉FWを開けるよう指令する。その後、走行台車1が開状態の自動ドアD又は防火扉FWを通過したことを検知すると、上位コントローラ3は、制御盤4に対して、走行台車1が通過した自動ドアD又は防火扉FWを閉めるよう指令する。
【0122】
なお、上位コントローラ3は、自動ドアD又は防火扉FW付近に人又は障害物が存在することを検知すると、例えば、エラーなどを発生して、自動ドアD又は防火扉FWの開閉を中止してもよい。また、例えば、病院H内の不特定多数の者が往来する場所に設けられた自動ドアDを常に開状態とする一方、不特定多数の者が往来する場所に設けられた防火扉FWは緊急時を除いて閉状態としてもよい。
【0123】
さらに、走行台車1が搬送終了地点(5階FL5の詰め所SR)に向けて自律走行中に、上位コントローラ3は、ステップS28で、走行台車1が搬送終了地点(5階FL5の詰め所SR)に到達し、走行台車1がカート2の保持を解除したか否かを検知する。
走行台車1が搬送終了地点に到達したことは、例えば、監視中の走行台車1の病院Hにおける位置情報を受信することにより検知できる。また、走行台車1がカート2の保持を解除したことは、例えば、走行台車1からカート2の搬送が完了した旨の通知を受信することにより検知できる。
【0124】
走行台車1が搬送終了地点に到達し、カート2の保持を解除したことを検知すると(ステップS28で「Yes」)、上位コントローラ3は、ステップS29で、搬送終了地点(5階FL5の詰め所SR)のスタッフに対して、搬送が完了した旨を通知する。
具体的には、上位コントローラ3は、制御盤4に対して、搬送終了地点(5階FL5の詰め所SR)に設けられた状態表示灯6を特定の色(搬送完了を通知する色)にて点灯するよう指令する。これにより、走行台車1により特定のカート2が5階FL5の詰め所SRに搬送されたことを、当該詰め所SRのスタッフに視覚的に通知できる。
【0125】
その他、上位コントローラ3は、走行台車1により特定のカート2が5階FL5の詰め所SRに搬送されたことを、当該詰め所SRの内線をコールすることによってスタッフに通知してもよい。
【0126】
なお、走行台車1が搬送終了地点に到達していない場合(ステップS28で「No」)、上位コントローラ3における搬送動作はステップS24に戻り、上位コントローラ3は、必要に応じて、エレベータELの制御指令、及び、自動ドアD又は防火扉FWの開閉指令を送信する。また、上記のステップS21〜S29を実行して1つの搬送要求に対する搬送が終了後、上位コントローラ3は、搬送要求を受信する毎に、上記のステップS21〜S29を実行する。
【0127】
上記のステップS21〜S29を実行することにより、上位コントローラ3は、薬剤部の第2端末T2から受信した搬送要求に基づいて、搬送したい薬剤を格納したカート2を薬剤部から目的の搬送終了地点(病院H内の入院病棟の詰め所SR)まで搬送する搬送指令を生成し走行台車1に送信できる。
【0128】
それとともに、上位コントローラ3は、走行台車1が自律走行中に、必要に応じてエレベータELを制御する指令を送信することで、走行台車1を異なる階にも自律移動させることができる。さらに、上位コントローラ3は、走行台車1が自律走行中に、必要に応じて自動ドアD又は防火扉FWの開閉指令を送信することで、走行台車1は自律的に自動ドアD及び防火扉FWを通過できる。
【0129】
(II)走行台車側の搬送動作
次に、
図13を用いて、走行台車1側の搬送動作を説明する。
図13は、薬剤部から詰め所まで薬剤を搬送する例における走行台車側の搬送動作を示すフローチャートである。
走行台車1側での搬送動作は、上位コントローラ3から搬送指令を受信することにより開始される。上位コントローラ3から搬送指令を受信すると(ステップS31で「Yes」)、走行台車1は、ステップS32で、薬剤部のステーションST、すなわち、搬送開始地点まで自律走行する。
【0130】
具体的には、走行台車1は、以下の動作を、走行台車1の現在位置(例えば、走行台車1の待機場所など)から薬剤部のステーションSTに到達するまで繰り返し実行することで、薬剤部のステーションSTまで自律走行する。なお、走行台車1の現在位置から薬剤部のステーションSTまでの経路についても、搬送スケジュールSCと同様に、走行台車1が通過すべき複数の目標点の集合として走行経路(走行スケジュール)が計画される。この経路計画は、走行台車1により実行されてもよいし、上位コントローラ3により実行されてもよい。
【0131】
最初に、走行台車1の環境情報取得部171bが現在位置における局所地図データM2を取得する。その後、自己位置推定部171cが、主輪11aの回転量、局所地図データM2、及び、環境地図データM1を用いて、走行台車1の自己位置を推定する。さらに、走行制御部171dが、推定された自己位置から薬剤部のステーションSTまでの経路上の目標点に到達するための走行指令を算出し、それをモータ11cに出力する。
ステップS32における自律走行中に、走行台車1の物体検出センサー13が人又は障害物を検知した場合には、走行制御部171dは、主輪11aの回転速度を減少させるか又は停止させて、走行台車1を減速させるか又は停止させる。走行台車1を減速させるか停止させるかは、例えば、検出された物体の種類、物体までの距離などに基づいて決定できる。
【0132】
薬剤部のステーションSTの近傍に到達すると、ステップS33において、走行台車1がカート2を保持する。具体的には、ステップS33においては、以下の動作が実行される。
まず、走行台車1の制御部17が、搬送すべきカート2が置かれたステーションSTの位置を特定する。例えば、制御部17は、ステーションSTの識別番号と搬送指令に含まれるステーションSTの識別番号を比較するか、又は、カート2に付されたバーコードを読み取って得られたカート2の識別番号と搬送指令に含まれるカート2の識別番号とを比較することで、搬送すべきカート2が置かれたステーションSTの位置を特定する。
【0133】
次に、走行台車1の制御部17は、特定したステーションSTの位置に存在するカート2の下部の空間SP内のカート2を保持可能な位置に走行台車1を移動させる。なお、制御部17は、走行台車1が空間SP内のカート2を保持可能な位置に到達したか否かを、例えば、第2通信部175を用いてカート2のカート通信部26と通信可能であるか否かにより判断することができる。
【0134】
走行台車1がカート2を保持可能な位置に到達すると、リフト制御部177がリフト15を上昇させてカート2をリフトアップする。このように、リフト15によりカート2をリフトアップすることで、走行台車1はカート2を保持できる。
【0135】
走行台車1がカート2を保持後、走行台車1は、ステップS34において、搬送スケジュールSCに従って、搬送開始地点である薬剤部のステーションSTから、搬送終了地点である病院H内の特定の場所(5階FL5の詰め所SR)まで自律走行する。
具体的には、走行台車1は、以下の動作を繰り返し実行することで、5階FLの詰め所SRまで自律走行する。最初に、走行台車1の環境情報取得部171bが現在位置における局所地図データM2を取得する。その後、自己位置推定部171cが、主輪11aの回転量、局所地図データM2、及び、環境地図データM1を用いて、走行台車1の自己位置を推定する。さらに、走行制御部171dが、推定された自己位置から搬送スケジュールSCの次の目標点に到達するための走行指令を算出し、それをモータ11cに出力する。
【0136】
ステップS34における自律走行中において、走行台車1の物体検出センサー13及び/又はカート物体検出センサー24aが人又は障害物を検知した場合には、走行制御部171dは、主輪11aの回転速度を減少させるか又は停止させて、走行台車1を減速させるか又は停止させる。また、カート2のテープスイッチ24b、接触検知スイッチ24c、又はライトカーテン24dによりカート2への人又は物体の接触が検知された場合には、走行制御部171dは、走行台車1を停止させる。
【0137】
走行台車1が薬剤部のステーションSTから自律走行を開始して1階のエレベータELの乗降口の前に到達すると(ステップS35で「Yes」)、走行台車1は、ステップS36で、5階FL5に到達するためにエレベータELの籠への乗降動作を開始する。具体的には、以下の動作が実行される。
上位コントローラ3により呼び出されたエレベータELの籠が1階に到達してドアが開くと、走行台車1は、エレベータELの籠内に向けて自律走行する。なお、走行台車1は、上位コントローラ3から指令があったタイミングで、エレベータELの籠内への自律走行を開始する。
【0138】
エレベータELの籠内への自律走行中、走行台車1は、第1通信部173により、エレベータELの無線通信装置EL2を介して、エレベータ制御部EL1及び/又は上位コントローラ3と通信をする。上記の通信により走行台車1がエレベータELの籠内に移動したことを検知すると、エレベータELの籠はドアを閉じて目的の階(5階FL5)への移動を開始する。
【0139】
エレベータELの籠が目的の階に到達してドアを開くと、走行台車1は、エレベータELの籠内から5階FLの詰め所SRに向けて自律走行する。なお、走行台車1は、第1通信部173及び無線通信装置EL2を介して、上位コントローラ3から指令があったタイミングで、5階FLの詰め所SRへの自律走行を開始する。
【0140】
また、走行台車1が、搬送終了地点(5階FL5の詰め所SR)に向けて自律走行中に病院H内の自動ドアD又は防火扉FWの近傍に到達すると、上位コントローラ3の指令により対応する自動ドアD又は防火扉FWが開く。これにより、走行台車1は、自動ドアD及び防火扉FW付近で待機することなく、自律走行を継続して自動ドアD及び防火扉FWを通過できる。
【0141】
走行台車1が自律走行により搬送終了地点(5階FL5の詰め所SR)に到達すると(ステップS37で「Yes」)、走行台車1は、ステップS38で、詰め所SR内又は詰め所SRの近傍の廊下などに設けられたステーションSTにおいて、カート2の保持を解除する。具体的には、走行台車1が詰め所SRのステーションSTに到達すると、リフト制御部177がリフト15を下降して、カート2の車輪22を接地させる。すなわち、カート2を、スタッフ等の人手により移動可能とする。上記のステップS38を実行後に、走行台車1側の搬送動作は終了する。
【0142】
なお、走行台車1が搬送終了地点に到達していない場合(ステップS37で「No」)、走行台車1における搬送動作はステップS35に戻り、走行台車1は、搬送終了地点(5階FL5の詰め所SR)への自律走行を継続する。
【0143】
上記のステップS31〜S38を実行することにより、走行台車1は、上位コントローラ3から受信した搬送指令に基づいて、搬送したい薬剤を格納したカート2を薬剤部から目的の搬送終了地点まで、自律的に搬送できる。また、上記のステップS31〜S38を実行することにより、走行台車1は、不特定多数の者が往来する病院H内を、特定の軌道を必要とすることなく、目的の搬送終了地点までカート2を安全に搬送できる。
【0144】
(3−2−4)搬送後処理
(I)上位コントローラ側の搬送後処理
次に、物品を搬送したあとに実行される搬送後処理を説明する。搬送後処理は、上位コントローラ3、走行台車1、搬送終了地点(詰め所SR)において個別の処理を実行することで実現される。従って、以下では、上位コントローラ3側における搬送後処理と、走行台車1側における搬送後処理と、詰め所SR側における搬送後処理と、を個別に説明する。まず、
図14を用いて、上位コントローラ3側の搬送後処理を説明する。
図14は、上位コントローラ側の搬送後処理を示すフローチャートである。
【0145】
走行台車1が搬送終了地点に到達し当該地点でカート2の保持を解除した後、上位コントローラ3は、ステップS41で、カート2の搬送を完了した走行台車1のバッテリー179の充電が必要であるか否かを判断する。具体的には、上位コントローラ3は、走行台車1からバッテリー179の残量の情報を取得し、当該残量が所定の値以下であれば、バッテリー179の充電が必要であると判断する。
【0146】
バッテリー179の充電が必要であると判断した場合(ステップS41で「Yes」)、上位コントローラ3は、ステップS42で、カート2の搬送を完了した走行台車1に対して、バッテリー179の充電を行うよう指令する。この指令を受信した走行台車1は、バッテリー179の充電を実行するための動作を開始する。なお、走行台車1側の動作は、後ほど説明する。
【0147】
一方、バッテリー179の充電は不要であると判断した場合(ステップS41で「No」)、上位コントローラ3は、ステップS43で、カート2の搬送を完了した走行台車1に対して、走行台車1の待機場所に向けて走行するよう指令する。院内搬送システム100が複数の待機場所を有する場合、上位コントローラ3は、走行台車1に対して、特定の待機場所に移動するよう指令する。上位コントローラ3は、例えば、搬送開始地点(薬剤部)に近く、空きのある待機場所を特定の待機場所として選定する。
【0148】
上記のステップS41〜S43を実行することにより、上位コントローラ3は、カート2を搬送後の走行台車1のバッテリー179の残量に基づいて、走行台車1にバッテリー179を充電するよう指令するか、又は、待機場所に移動するよう指令するかを決定し、適切に搬送後処理を実行できる。
【0149】
(II)走行台車側の搬送後処理
次に、
図15を用いて、走行台車1側の搬送後処理を説明する。
図15は、走行台車側の搬送後処理を示すフローチャートである。
搬送終了地点に到達し当該地点でカート2の保持を解除した後、走行台車1は、上位コントローラ3から充電指令を受信した場合(ステップS51で「Yes」)、走行台車1は、ステップS52で、搬送終了地点から充電ステーション7aへ自律走行を開始する。なお、搬送終了地点から充電ステーション7aへの走行経路は、上位コントローラ3で経路計画されて充電指令とともに送信されてもよいし、走行台車1において経路計画されてもよいし、予め教示されて走行台車1の記憶部171aなどに記憶されていてもよい。
【0150】
充電ステーション7aに到達後、走行台車1は、ステップS53で、バッテリー179の充電が開始される。具体的には、充電ステーション7aの近傍に到達すると、走行台車1は、自律的に充電ステーション7aに接近(ドッキング)する。その後、上位コントローラ3から制御盤4を介して充電器7bに充電電力の供給指令がなされることで、バッテリー179の充電が開始される。また供給指令は、充電ステーション7aにドッキングした走行台車1から直接充電器7bへ出力してもよい。
【0151】
一方、上位コントローラから待機場所へ移動するよう指令された場合(ステップS51で「No」)、走行台車1は、ステップS54で、上位コントローラ3から指示された待機場所まで自律走行を開始する。なお、搬送終了地点から指示された待機場所への走行経路は、上位コントローラ3で経路計画されて上記指令とともに送信されてもよいし、走行台車1において経路計画されてもよいし、予め教示されて走行台車1の記憶部171aなどに記憶されていてもよい。
なお、待機場所への自律走行中に上位コントローラ3から搬送指令を受信した場合には、走行台車1は、待機場所に向かうことなく、受信した搬送指令に基づいた動作を開始する。
【0152】
上記のステップS51〜S54を実行することにより、走行台車1は、上位コントローラ3からの指令に従って、バッテリー179を充電する動作を開始するか、又は、指示された待機場所へ移動できる。
【0153】
(III)詰め所側の搬送後処理
次に、
図16を用いて、詰め所SR(搬送終了地点)における搬送後処理を説明する。
図16は、詰め所における搬送後処理を示すフローチャートである。
5階FL5の詰め所SRに設けられた状態表示灯6が点灯するか、又は、当該詰め所SRの内線呼出により、薬剤を格納したカート2が搬送されてきたことを検知すると、詰め所SRのスタッフは、ステップS61で、当該カート2の鍵付きシャッター211を解錠して、カート2から薬剤を取り出す。その後、スタッフは、ステップS62で、取り出した薬剤を、患者に対して投与する。
【0154】
カート2から薬剤を取り出して投与した後、詰め所SRのスタッフは、ステップS63で、薬剤を取り出した後のカート2の返却を要求する。具体的には、スタッフは、詰め所SRに設けられた詰め所端末T3を用いて、上位コントローラ3に対して、薬剤を取り出した後のカート2を詰め所SR(搬送開始地点)から薬剤部(搬送終了地点)に搬送する搬送要求を送信する。
当該搬送要求の送信により、上位コントローラ3が
図12を用いて説明したステップS21〜ステップS29と同様の処理を実行し、走行台車1が
図13を用いて説明したステップS31〜ステップS38を実行して、薬剤を取り出した後のカート2が、詰め所SRから薬剤部(のステーションST)に搬送される。
【0155】
2.第2実施形態
上記にて説明した第1実施形態に係る院内搬送システム100は、病院Hにて使用される他のシステムに組み込むことができる。例えば、第2実施形態に係るシステム200のように、院内搬送システム100を病院情報システム(Hospital Information System、HIS)に組み込むことができる。以下、
図17を用いて、第2実施形態に係るシステム200の構成を説明する。
図17は、第2実施形態に係るシステムの構成を示す図である。
システム200は、第1実施形態で説明した院内搬送システム100と、病院情報システム20と、中間コンピュータ30と、を備える。病院情報システム20は、CPU、記憶装置(例えば、RAM、ROM、SSD、ハードディスクなど)、ネットワークインタフェース、各種入出力インタフェース等により構成され、病院H内にて使用される各種情報(例えば、電子カルテなど)を管理するサーバコンピュータである。
【0156】
中間コンピュータ30は、CPU、記憶装置(例えば、RAM、ROM、SSD、ハードディスクなど)、ネットワークインタフェース、各種入出力インタフェース等により構成されるコンピュータシステム(Material Handling System、MHS)であり、院内搬送システム100の上位コントローラ3と病院情報システム20との間に配置される。
中間コンピュータ30は、病院情報システム20と院内搬送システム100との間の情報の送受信を管理する。具体的には、中間コンピュータ30は、病院情報システム20と院内搬送システム100との間の情報の相互変換、すなわち、病院情報システム20にて扱われる情報を院内搬送システム100にて使用可能な情報に変換し、またその逆の情報変換を実行する。
【0157】
上記の構成を有するシステム200では、病院情報システム20と院内搬送システム100とが中間コンピュータ30を介して協働することで、院内搬送システム100における物品の搬送をより全自動化できる。
【0158】
3.第3実施形態
上記の第1実施形態及び第2実施形態では、走行台車1がカート2をリフトアップして保持しているか否かにかかわらず、走行制御部171dは、物体検出センサー13(前方物体検出センサー13a、後方物体検出センサー13b)(第2物体検出センサーの一例)にて取得した情報に基づいて走行部11を制御していた。
具体的には、環境情報取得部171bが物体検出センサー13にて取得した情報から局所地図データM2を生成し、自己位置推定部171cが当該局所地図データM2と環境地図データM1とのマップマッチングにより自己位置を推定し、さらに、走行制御部171dが自己位置から次の目標位置まで走行するための走行指令を算出し、それをモータ11cに出力していた。
【0159】
走行台車1がカート2をリフトアップしている場合に走行制御部171dが物体検出センサー13にて取得した情報に基づいて走行部11を制御することには、走行台車1をより精度よく自律走行させるという点において課題がある。
具体的には、例えば
図9に示すように、走行台車1がカート2をリフトアップしているときに、カート2の取付部材22aが、高さ方向において、物体検出センサー13の走行台車1における取付位置まで及んでいる。言い換えると、物体検出センサー13の視野の一部が取付部材22aにより遮られている。また、カート2の高さ寸法によっては、物体検出センサー13の視野の一部は、車輪22によって遮られる場合もある。
【0160】
物体検出センサー13の視野の一部が取付部材22aにより遮られていると、物体検出センサー13は取付部材22aにより遮られた部分の物体の位置に関する情報を得られなくなり、環境情報取得部171bにより生成される局所地図データM2は、カート2をリフトアップしていない場合よりも狭い範囲のデータしか含まない。
【0161】
従って、第3実施形態に係る走行台車1’は、物体検出センサー13にて取得した情報だけでなく、それに加えて、カート2に設けられたカート物体検出センサー24a(第1物体検出センサーの一例)にて取得した情報にも基づいて走行する。
具体的には、走行台車1’がカート2をリフトアップする場合には、カート物体検出センサー24aを用いて取得した情報に基づいて走行部11が制御され、走行台車1’がカート2をリフトアップしない場合には、物体検出センサー13を用いて取得した情報に基づいて走行部11が制御される。
【0162】
以下、
図18を用いて、第3実施形態に係る走行台車1’をより詳細に説明していく。
図18は、第3実施形態に係る走行台車の自律走行動作を示すフローチャートである。
なお、第3実施形態に係る走行台車1’では、走行制御部171dがカート物体検出センサー24aにて取得した情報も用いて走行部11を制御することのみが第1及び第2実施形態と異なるだけであり、走行台車1’の他の構成及び機能は第1及び第2実施形態に係る走行台車1と同一である。従って、ここでは、走行台車1’の第1及び第2実施形態に係る走行台車1との共通部分についての説明は省略する。
【0163】
なお、第3実施形態に係る走行台車1’では、カート物体検出センサー24aは、カート本体21の下部において、走行台車1’がカート2をリフトアップするときに、走行台車1’の物体検出センサー13の高さ方向の位置とカート物体検出センサー24aの高さ方向の位置とが同じになる位置に設けられることが好ましい。
これにより、走行台車1’の物体検出センサー13にて取得した情報を用いて生成した第2局所地図データM2’’(後述)と、カート物体検出センサー24aにて取得した情報を用いて生成した第1局所地図データM2’(後述)と、をほぼ同一のものとできる。その結果、自己位置推定部171cは、第1局所地図データM2’と第2局所地図データM2’’とで共通の環境地図データM1を使用しても、正確に自己位置を推定できる。
【0164】
カート2をリフトアップして保持して搬送を開始するか、又は、単独で自律走行を開始すると、制御部17は、ステップS71で、走行台車1’がカート2を保持しているか否かを判断する。これは、例えば、第2通信部175を用いてカート2と通信できているか否かにより判断できる。
【0165】
走行台車1’がカート2をリフトアップして保持している場合(ステップS71で「Yes」)、走行制御部171dは、カート物体検出センサー24aにて取得した物体の位置に関する情報に基づいて、走行部11を制御する。具体的には、ステップS72で、環境情報取得部171bが、第1通信部173を介して、カート物体検出センサー24aにて取得した情報を受信し、それに基づいて第1局所地図データM2’を生成する。
なお、環境地図データM1が物体検出センサー13にて取得した情報を用いて(あるいはそれを基準として)生成されている場合には、環境情報取得部171bは、カート物体検出センサー24aにて取得した物体の位置に関する情報を、物体検出センサー13の取り付け位置に対するカート物体検出センサー24aの取り付け位置のずれ量だけ移動(シフト)させて第1局所地図データM2’を生成してもよい。
【0166】
その後、ステップS73で、自己位置推定部171cが、記憶部171aに記憶している環境地図データM1と、ステップS72で生成した第1局所地図データM2’と、に基づいて(これらをマップマッチングして)、自己位置を推定する。
さらに、ステップS76で、走行制御部171dが、ステップS73で推定した自己位置から搬送スケジュールSCに示された次の目標位置まで走行するための走行指令を算出して、それをモータ11cに出力する。
【0167】
一方、走行台車1’がカート2をリフトアップしていない場合(ステップS71で「No」)、走行制御部171dは、物体検出センサー13にて取得した物体の位置に関する情報に基づいて、走行部11を制御する。具体的には、ステップS74で、環境情報取得部171bが、物体検出センサー13にて取得した情報に基づいて第2局所地図データM2’’を生成する。
なお、環境地図データM1がカート物体検出センサー24aにて取得した情報を用いて(あるいはそれを基準として)生成されている場合には、環境情報取得部171bは、物体検出センサー13にて取得した物体の位置に関する情報を、カート物体検出センサー24aの取り付け位置に対する物体検出センサー13の取り付け位置のずれ量だけ移動(シフト)させて第2局所地図データM2’’を生成してもよい。
【0168】
その後、ステップS75で、自己位置推定部171cが、記憶部171aに記憶している環境地図データM1と、ステップS74で生成した第2局所地図データM2’’と、に基づいて(これらをマップマッチングして)、自己位置を推定する。
さらに、ステップS76で、走行制御部171dが、ステップS75で推定した自己位置から搬送スケジュールSCに示された次の目標位置まで走行するための走行指令を算出して、それをモータ11cに出力する。
【0169】
このように、カート2をリフトアップするか否かにより、走行部11の制御のためにカート物体検出センサー24aを用いるか、又は、物体検出センサー13を用いるかを切り替えることにより、これらの物体検出センサーの全検出範囲内の物体を適切に検出して、精度よく走行部11を制御できる。
具体的には、走行台車1’がカート2をリフトアップするか否かにより、走行台車1’の自己位置推定に第1局所地図データM2’(カート物体検出センサー24aによる地図データ)を用いるか、又は、第2局所地図データM2’’(物体検出センサー13による地図データ)を用いるかを切り替えることにより、自己位置推定部171cにおける自己位置の推定精度を向上させて、走行部11をより精度よく制御できる。
【0170】
4.第4実施形態
上記の第3実施形態では、走行台車1’がカート2をリフトアップするか否かにかかわらず共通の環境地図データM1を用いて自己位置推定が実行されていた。走行台車1’がカート2をリフトアップしている場合、物体検出センサー13及びカート物体検出センサー24aの位置関係は同一ではない。この場合、物体検出センサー13を基準とした環境地図データと、カート物体検出センサー24aを基準とした環境地図データとは、差異があると考えられる。これらのセンサーの位置関係、及び/又は、病院Hの構造等により、この差異の大小が決まる。
すなわち、共通の環境地図データと、異なるセンサーで取得した異なる局所地図データと、を用いて自己位置推定を実行すると、どの局所地図データを用いたかにより推定結果が変わり得るので、自己位置推定の精度に課題が残る。
【0171】
従って、第4実施形態に係る走行台車1’’においては、走行台車1’’がカート2をリフトアップするか否かにより環境地図データを切り替える。
【0172】
具体的には、走行台車1’’がカート2をリフトアップする場合には、自己位置推定部171cは、カート物体検出センサー24aにて取得した情報を用いて(あるいはそれを基準として)生成された第1環境地図データM1’と、同じセンサーで取得した情報を用いて生成された第1局所地図データM2’と、に基づいて走行台車1’’の自己位置を推定する。
一方、走行台車1’’がカート2をリフトアップしない場合には、自己位置推定部171cは、物体検出センサー13にて取得した情報を用いて(あるいはそれを基準として)生成された第2環境地図データM1’’と、同じセンサーで取得した情報を用いて生成された第2局所地図データM2’’と、に基づいて走行台車1’’の自己位置を推定する。
【0173】
なお、第1環境地図データM1’は、例えば、走行台車1’’にカート2をリフトアップさせた状態で、走行台車1’’を病院H内にて走行させつつ、当該走行中に所定の周期にてカート物体検出センサー24aの情報を用いて局所地図データを生成し、それらを対応する位置に配置することで生成できる。
一方、第2環境地図データM1’’は、例えば、走行台車1’’を単独で病院H内にて走行させつつ、当該走行中に所定の周期にて物体検出センサー13の情報を用いて局所地図データを生成し、それらを対応する位置に配置することで生成できる。
【0174】
このように、走行台車1’’がカート2をリフトアップするか否かにより、自己位置推定に第1環境地図データM1’を用いるか、第2環境地図データM1’’を用いるかを切り替えることで、同一のセンサーにより得られた情報に基づいて生成された環境地図データと局所地図データとを用いて、精度よく自己位置を推定できる。
【0175】
なお、第4実施形態に係る走行台車1’’では、走行台車1’’がカート2をリフトアップするか否かにより、自己位置推定に第1環境地図データM1’を用いるか、第2環境地図データM1’’を用いるかを切り替えることのみが第3実施形態と異なるだけであり、走行台車1’’の他の構成及び機能は第3実施形態に係る走行台車1’と同一である。従って、ここでは、走行台車1’’の第3実施形態に係る走行台車1’との共通部分についての説明は省略する。
【0176】
5.実施形態の共通事項
上記第3〜第4実施形態は、下記の構成及び機能を共通に有している。
搬送システム(例えば、院内搬送システム100)は、カート(例えば、カート2)と、走行台車(例えば、走行台車1’,1’’)と、を備える。カートは、搬送対象の物品を格納する。走行台車は、カートをリフトアップして保持することで、カートを所定の領域(例えば、病院H)内で搬送可能である。また、カートは、第1物体検出センサー(例えば、カート物体検出センサー24a)を有する。第1物体検出センサーは、カートの周囲に存在する物体の位置に関する情報を取得する。
走行台車は、走行部(例えば、走行部11)と、第2物体検出センサー(例えば、物体検出センサー13)と、走行制御部(例えば、走行制御部171d)と、を有する。第2物体検出センサーは、走行台車の周囲に存在する物体の位置に関する情報を取得する。
走行制御部は、走行台車がカートをリフトアップする場合には、第1物体検出センサーを用いて取得した情報に基づいて走行部を制御する。その一方、走行台車がカートをリフトアップしない場合には、第2物体検出センサーを用いて取得した情報に基づいて走行部を制御する。
【0177】
走行台車がカートをリフトアップして搬送する上記の搬送システムでは、走行台車の走行制御部は、走行台車がカートをリフトアップする場合には、カートが有する第1物体検出センサーを用いて取得した情報に基づいて走行部を制御し、走行台車がカートをリフトアップしない場合には、走行台車が有する第2物体検出センサーを用いて取得した情報に基づいて走行部を制御する。
このように、カートをリフトアップするか否かにより、走行部の制御のためにカートに設けられたセンサー(第1物体検出センサー)を用いるか、又は、走行台車に設けられたセンサー(第2物体検出センサー)を用いるかを切り替えることにより、物体検出センサーの全検出範囲内の物体を適切に検出できる。その結果、物体検出センサーから得られる情報に基づいて、走行台車を適切に走行できる。
【0178】
6.他の実施形態
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
例えば、上記の
図10〜
図16、
図18を用いて説明したフローチャートにおける各ステップの処理の順番、及び/又は、各ステップの処理内容は、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0179】
(A)上記の院内搬送システム100では、カート2は走行台車1のバッテリー179から電力を供給されていたが、これに限られない。カート2は、異常検出センサー24等に電力を供給する小型のバッテリーを独自に搭載してもよい。
【0180】
(B)カート2は、第2端末T2などの携帯端末を設置可能なブラケットなどを有してもよい。
【0181】
(C)例えば、薬剤部が広く、カート2に薬剤(トレイTR)を格納する場所(すなわち、オートアンプルディスペンサーADの設置位置)と、カート2に格納した薬剤の監査を行う場所とが離れている場合には、走行台車1により、薬剤を格納したカート2を、薬剤の格納場所から監査を行う場所まで搬送させてもよい。
【0182】
(D)走行台車1及びカート2は、走行台車1にカート2をリフトアップする構成以外を有していてもよい。例えば、カート2を走行台車1により牽引することにより、カート2を走行台車1に保持する構成を有していてもよい。
【0183】
(E)走行台車1がカート2をリフトアップして保持するときに、物体検出センサー13にて取得した情報に基づいて生成した局所地図データM2(第2局所地図データM2’’)のうち、カート2の取付部材22aにより遮られた部分のデータを、カート物体検出センサー24aにて取得した情報により補完してもよい。
【0184】
(F)特に、第3実施形態及び第4実施形態に係る搬送システムは、病院H内の物品の搬送に限られず、カートに搬送対象を格納し、そのカートを走行台車の上に搭載(リフトアップ)して搬送する用途にも適用できる。