(54)【発明の名称】ラクトバチルス・ロイテリLRE03株および/またはラクトバチルス・サリバリウスLS06株を含む、抗癌化学療法、白血病治療またはエイズ治療を受けている対象におけるウイルスまたは細菌感染の治療または予防において使用するための組成物
顕著な抗ウイルス活性および/または抗細菌活性を示す炎症性サイトカイン(Th1)インターフェロン(INF)−γの産生を強力に刺激することができるラクトバチルス・ロイテリLRE03株 DSM23879、および/または顕著な抗ウイルス活性および/または抗細菌活性を示す樹状細胞の産生を強力に刺激することができるラクトバチルス・サリバリウスLS06株 DSM26037を含むか、または好ましくはそれからなる混合物からなる組成物を提供する。さらに、1つまたはそれ以上の次の化合物を含む組成物を提供する:摂取したとき、細菌の菌体外多糖類EPSを産生することができる細菌株;および/または、タラガム(tara gum)などの植物の多糖;および/または、キダチアロエ(Aloe arborescens)ゲル;および/または、アルギン酸ナトリウムなどのゲル化剤、および/または間欠滅菌された細菌細胞中に取り込まれる高度に生物学的に利用可能な亜鉛。
−3:2:1、3:1:1、2:1:1、2:2:1、1:1:1の重量比で、ラクトバチルス・ロイテリLRE03株 DSM23879、ラクトバチルス・サリバリウスLS06株 DSM26037およびラクトバチルス・ファーメンタムLF11株 DSM19188を含むか、あるいはそれからなる、
請求項3に記載の使用のための組成物。
投与されたとき、インサイチュウで菌体外多糖類を産生することができる、ストレプトコッカス・サーモフィルス種ST10 DSM25246として同定されるストレプトコッカス・サーモフィルス菌種に属する細菌株およびタラガム(tara gum)をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
アロエゲルまたはその誘導体、好ましくはキダチアロエゲル、さらにより好ましくは、凍結乾燥したキダチアロエゲルをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
2005年12月23日にBioMan S.r.L. CompanyによりDSMZに寄託された、受託番号DSM17850のビフィドバクテリウム・ラクティスBb1として同定されたビフィドバクテリウム・ラクティス菌種に属する細菌株であって、液体培養培地での増殖中にその細胞内部に亜鉛を蓄積することができる細菌株をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
抗癌化学療法剤、後天性免疫不全症候群の治療剤および白血病の治療剤を受けている個体において胃、食道および腸粘膜を保護するために使用する、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【背景技術】
【0002】
腫瘍学に関して、現在の薬物療法は、化学療法、内分泌療法、免疫応答調節剤を用いる処置および分子標的薬を用いる処置を含むことが知られている。抗腫瘍化学療法の主な目的は、任意の細胞周期段階で、腫瘍細胞を殺すこと、そして、原発腫瘍および転移巣の両方を縮小することである。
【0003】
抗癌化学療法剤は、免疫系の活性を低下させること、および低下した免疫系(compromised immune system)は、ウイルスおよび細菌感染から生物を保護することができないことが知られている。
【0004】
加えて、化学療法剤(化学療法)は、主に腫瘍に影響を与えるが、残念ながら、健康な組織に対する副作用も引き起こす、具体的には、食道、胃および腸の粘膜などの細胞増殖および代謝回転が速い組織における粘膜炎、悪心、嘔吐、下痢、栄養吸収不良およびそれによる栄養失調などを引き起こすことも知られている。
【0005】
従って、全ての化学療法剤の共通点は、骨髄毒性であり、それは免疫抑制につながり、その結果として、主にグラム陰性細菌およびカンジダなどの真菌により引き起こされる感染症、消化管上皮毒性および腸内細菌叢の毒性(化学療法抗生物質)をもたらす。
【0006】
化学療法剤の悪影響に−もちろん一定の制限の範囲内で−対抗することができる併用療法剤のない化学療法剤の有効量の投与は、補助療法を確立しなければ、不可能であった。
【0007】
従って、化学療法剤の一般的な副作用を軽減することができる、天然の、かつ良好な耐用性の解決法を提供することが望ましい。
【0008】
このため、通常の化学療法の際に影響を受けている、症状および腫瘍の処置、とりわけ食道、胃および腸粘膜への損傷の処置に使用される化学療法剤の副作用の両方を予防および/または軽減するために補助療法剤が強く必要とされている。例えば、食道粘膜、胃粘膜および腸粘膜などの粘膜を好適に保護および防御することが必要とされている。
【0009】
さらに、化学療法剤は、細菌およびウイルスに対する身体の感受性をもたらす免疫系の効力の低下を伴い、細菌およびウイルス感染の発生を引き起こすため、その免疫系の有効性を回復するために、免疫系を刺激することによりそれに作用することができる(免疫賦活)、化学療法剤に対する補助療法剤を有することが依然として必要とされている。
【0010】
異なる種に属する細菌株の広範な群における長期の集中的な研究開発活動の末、本発明者らは、上記の必要性を満たし得る特定の細菌株を発見し、選択した。
【0011】
本発明の目的は、
−ブタペスト条約下で、2010年8月5日にProbiotical SpAによりDSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに寄託された、受託番号DSM23879のラクトバチルス・ロイテリLRE03として同定されたラクトバチルス・ロイテリ菌種に属する細菌株、および/または
−ブタペスト条約下で、2012年6月6日にProbiotical SpAによりDSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに寄託された、受託番号DSM26037のラクトバチルス・サリバリウスLS06として同定されたラクトバチルス・サリバリウス種に属する細菌株
を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、ラクトバチルス・ロイテリLRE03株 DSM23879が、炎症性サイトカイン(Th1)インターフェロン(INF)−γの産生を刺激するための実証された、かつ驚くべき能力による顕著な抗ウイルス活性および/または抗細菌活性を示すことを発見した(実験の部を参照のこと)。ラクトバチルス・ロイテリLRE03株 DSM23879は、インターフェロンγ(IFN−γ)の内因性産生に向けて驚くべき免疫賦活活性を示す。本発明者らにより選択されたラクトバチルス・ロイテリLRE03株 DSM23879は、炎症性サイトカイン(Th1)インターフェロン(INF)−γの刺激を介して、抗細菌活性および炎症促進活性を発揮する、粘膜レベルでの免疫系の活性化による、驚くべき免疫調節活性を示す。内因性サイトカイン産生は、該サイトカインの点滴投与とは対照的に、外因性サイトカインの場合にように、毒性を引き起こすことはない。
【0014】
本発明者らは、ラクトバチルス・サリバリウスLS06株 DSM26037が、樹状細胞産生を刺激するための実証された、かつ驚くべき能力による顕著な抗ウイルス活性および/または抗細菌活性を示すことを発見した(実験の部を参照のこと)。樹状細胞は、ウイルスおよび細菌などの危険な微生物の外部からの攻撃から生物を保護する免疫系を支援する。
【0015】
最後に、本発明者らは、ブタペスト条約下で、2007年3月20日にAnidral S.r.l. Company (現在は、Probiotical S.p.A)によりDSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに寄託された、受託番号DSM19188のラクトバチルス・ファーメンタムLF11として同定されたラクトバチルス・ファーメンタム菌種に属する細菌株が、化学療法剤で処置された患者に頻繁に発生し、結果として慢性腸内毒素症の状態に起因する、カンジダ感染症、特に、カンジダ・アルビカンス種、カンジダ・クルセイ種、カンジダ・グラブラタ種およびカンジダ・パラプシロシス種に対する感染症の発生、持続感染または細菌増殖に不利な腸内環境を作製し、維持することができることを見出した。インビトロでの阻害データは、L.ファーメンタム株LF11 DSM19188の作用機序が、バクテリオシン、細胞外タンパク質または過酸化水素などの有機酸以外の特定の分子に少なくとも一部基づいていることを強く示唆している。
【0016】
本発明の目的は、(i)ラクトバチルス・ロイテリLRE03株 DSM23879、および/またはラクトバチルス・サリバリウスLS06株 DSM26037、および/またはラクトバチルス・ファーメンタムLF11株 DSM19188を含むか、あるいはそれからなる、細菌の混合物を提供することである。
【0017】
一態様において、該混合物は、抗癌化学療法、後天性免疫不全症候群の処置および白血病の処置を受ける個体において、抗ウイルス剤および/または抗細菌剤として使用するために、あるいは抗癌化学療法、後天性免疫不全症候群の処置および白血病の処置を受ける個体において、胃、食道および腸粘膜を保護するために、
(i)−ラクトバチルス・ロイテリLRE03株 DSM23879、または
−ラクトバチルス・サリバリウスLS06株 DSM26037、または
−ラクトバチルス・ファーメンタムLF11株 DSM19188、
を含むか、あるいはそれからなる。
【0018】
別の態様において、(i)細菌混合物は、抗癌化学療法、後天性免疫不全症候群の処置および白血病の処置を受ける個体において、抗ウイルス剤および/または抗細菌剤として使用するために、あるいは抗癌化学療法、後天性免疫不全症候群の処置および白血病の処置を受ける個体において、胃、食道および腸粘膜を保護するために、
−1:5から5:1、好ましくは1:3から3:1、さらにより好ましくは1:2から2:1または1:1の重量比で、ラクトバチルス・ロイテリLRE03株 DSM23879およびラクトバチルス・サリバリウスLS06株 DSM26037を含むか、あるいはそれからなる;または
−1:5から5:1、好ましくは1:3から3:1、さらにより好ましくは1:2から2:1または1:1の重量比で、ラクトバチルス・ロイテリLRE03株 DSM23879およびラクトバチルス・ファーメンタムLF11株 DSM19188を含むか、あるいはそれからなる;または
−1:5から5:1、好ましくは1:3から3:1、さらにより好ましくは1:2から2:1または1:1の重量比で、ラクトバチルス・サリバリウスLS06株 DSM26037およびラクトバチルス・ファーメンタムLF11株 DSM19188を含むか、あるいはそれからなる。
【0019】
さらに別の態様において、(i)細菌混合物は、抗癌化学療法、後天性免疫不全症候群の処置および白血病の処置を受ける個体において、抗ウイルス剤および/または抗細菌剤として使用するために、あるいは抗癌化学療法、後天性免疫不全症候群の処置および白血病の処置を受ける個体において、胃、食道および腸粘膜を保護するために、
−3:2:1、3:1:1、2:1:1、2:2:1、1:1:1の重量比で、ラクトバチルス・ロイテリLRE03株 DSM23879、ラクトバチルス・サリバリウスLS06株 DSM26037およびラクトバチルス・ファーメンタムLF11株 DSM19188を含むか、あるいはそれからなる。
【0020】
(i)細菌の混合物は、混合物1g当たり、1x10
8UFCから1x10
12UFC、好ましくは1x10
9UFCから1x10
11UFCの細菌細胞濃度を有する。本発明の文脈中で、上記の混合物は全て、簡略化のために、“1つまたは複数の本発明の細菌の混合物”を意味する。
【0021】
本発明の別の目的は、以下の本明細書中、簡略化のために、“1つまたは複数の本発明の組成物”と言う、医療機器指令93/42/EECの定義に準拠する物質を意味する医薬組成物または食品組成物または栄養補助食品組成物または医療用組成物(medical device composition)を提供することであって、該組成物は、
(i)上記の本発明の細菌の混合物、および/または
(ii)ストレプトコッカス・サーモフィルスST10株 DSM25246およびタラガム(tara gum)(植物の多糖)(ここで、該株は、投与されたとき、タラガム(tara gum)の存在下で、インサイチュウで菌体外多糖類(EPS)、いわゆる“粘膜付着性ゲル化複合体”を産生することができる)、および/または
(iii)ガム、好ましくはアルギン酸塩またはその誘導体、および/またはゲル、好ましくはアロエゲルまたはその誘導体を含むか、あるいはそれからなる混合物、および/または
(iv)高度に吸収可能な亜鉛の供給源、および/または
(V)身体に許容される、1つまたはそれ以上の食品グレードまたは医薬品グレードの賦形剤および/または添加剤および/または製剤成分(coformulants)
を含むか、またはそれからなる。
【0022】
本発明の目的である一態様において、本発明の組成物は、(i)本発明の細菌の混合物、および(v)身体に許容される、1つまたはそれ以上の食品グレードまたは医薬品グレードの賦形剤および/または添加剤および/または製剤成分(coformulants)を含むか、あるいはそれからなり、該組成物は、抗癌化学療法、後天性免疫不全症候群の処置および白血病の処置を受ける個体において、抗ウイルス剤および/または抗細菌剤として使用するために、あるいは抗癌化学療法、後天性免疫不全症候群の処置および白血病の処置を受ける個体において、胃、食道および腸粘膜を保護するために使用するためのものである。
【0023】
本発明の目的である別の態様において、本発明の組成物は、(i)本発明の細菌の混合物、(ii)ストレプトコッカス・サーモフィルスST10株 DSM25246およびタラガム(tara gum)(植物の多糖)(ここで、該株は、投与されたとき、タラガム(tara gum)の存在下で、インサイチュウで菌体外多糖類(EPS)、いわゆる“粘膜付着性ゲル化複合体”を産生することができる)、および(v)身体に許容される、1つまたはそれ以上の食品グレードまたは医薬品グレードの賦形剤および/または添加剤および/または製剤成分(coformulants)を含むか、あるいはそれからなり、該組成物は、抗癌化学療法、後天性免疫不全症候群の処置および白血病の処置を受ける個体において、抗ウイルス剤および/または抗細菌剤として使用するために、あるいは抗癌化学療法、後天性免疫不全症候群の処置および白血病の処置を受ける個体において、胃、食道および腸粘膜を保護するために使用するためのものである。該粘膜付着性ゲル化複合体は、胃腸管全体の機械的バリア効果を提供することができる。細菌の菌体外多糖類(EPS)は、ストレプトコッカス・サーモフィルスST10株 DSM25246によりインサイチュウで産生される菌体外多糖類である。ストレプトコッカス・サーモフィルスST10株 DSM25246は、ブタペスト条約下で、2011年9月19日にProbiotical S.p.AによりDSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに寄託された。本発明の組成物は、組成物1g当たり、1x10
8から1X10
12のストレプトコッカス・サーモフィルスST10 DSM25246生細胞、好ましくは1x10
9から1x10
11のストレプトコッカス・サーモフィルスST10 DSM25246生細胞を含む。
【0024】
本発明の目的である別の態様において、本発明の組成物は、(i)本発明の細菌の混合物、(ii)ストレプトコッカス・サーモフィルスST10株 DSM25246およびタラガム(tara gum)(植物の多糖)(ここで、該株は、投与されたとき、タラガム(tara gum)の存在下で、インサイチュウで菌体外多糖類(EPS)、いわゆる“粘膜付着性ゲル化複合体”を産生することができる)、(iii)ガム、好ましくはアルギン酸塩またはその誘導体、および/またはゲル、好ましくはアロエゲルまたはその誘導体を含むか、あるいはそれからなる混合物、および(v)身体に許容される、1つまたはそれ以上の食品グレードまたは医薬品グレードの賦形剤および/または添加剤および/または製剤成分(coformulants)を含むか、あるいはそれからなり、該組成物は、抗癌化学療法、後天性免疫不全症候群の処置および白血病の処置を受ける個体において、抗ウイルス剤および/または抗細菌剤として使用するために、あるいは抗癌化学療法、後天性免疫不全症候群の処置および白血病の処置を受ける個体において、胃、食道および腸粘膜を保護するために使用するためのものである。該(iii)混合物は、ガム、好ましくはアルギン酸塩またはその誘導体、および/またはゲル、好ましくはアロエゲルまたはその誘導体を含むか、あるいはそれからなる。アルギン酸塩またはその誘導体は、好ましくはアルギン酸ナトリウムである。アロエ製品またはその誘導体は、好ましくはキダチアロエ(Aloe arborescens)であり、好ましくは凍結乾燥形態である。キダチアロエは、好ましくは、凍結乾燥形態である。一態様において、本発明の組成物は、アルギン酸ナトリウムおよび凍結乾燥したキダチアロエ(Aloe arborescens)を、1:50(アルギン酸塩:アロエ)から50:1、好ましくは1:30(アルギン酸塩:アロエ)から30:1の重量比で含む。
【0025】
さらに、本発明者らは、本発明の組成物による免疫系(IS)の活性化は、ラクトバチルス・ロイテリLRE03株 DSM23879および/またはラクトバチルス・サリバリウスLS06株 DSM26037による促進作用に加えて、非常に高度に生物学的に利用可能な亜鉛を介しても得られ得ることを見出した。この非常に高度の生物学的利用能は、亜鉛が、ビフィドバクテリウム・ラクティス種に属する細菌株の間欠滅菌された細菌細胞内に取り込まれた亜鉛の形態であるという事実に基づき、好ましくは本発明者らにより選択された株は、欧州特許出願第08789404号(引用により本明細書中に包含させる)の対象である、2005年12月23日にDSMZに寄託されたビフィドバクテリウム・ラクティスBb1株 DSM17850である。
【0026】
基本的に、本発明者らは、間欠滅菌した細胞(不活性化細胞)に取り込まれる高度な生物学的利用能を有する亜鉛が、インターフェロン−γなどの非毒性の内因性サイトカインを産生するT−リンパ球の産生を担う免疫系(IS)、特に胸腺を活性化することができることを見出した。
【0027】
本発明の1つの目的である別の態様において、本発明の組成物は、(i)本発明の混合物、(ii)ストレプトコッカス・サーモフィルスST10株 DSM25246およびタラガム(tara gum)(植物の多糖)(ここで、該株は、投与されたとき、タラガム(tara gum)の存在下で、インサイチュウで菌体外多糖類(EPS)、いわゆる“粘膜付着性ゲル化複合体”を産生することができる)、(iii)ガム、好ましくはアルギン酸塩またはその誘導体、および/またはゲル、好ましくはアロエゲルまたはその誘導体を含むか、あるいはそれからなる混合物、(iv)ビフィドバクテリウム・ラクティス種に属する細菌株の間欠滅菌された細菌細胞内に取り込まれる亜鉛形態の高度に同化可能かつ生物学的に利用可能な亜鉛の供給源、該株は、好ましくは、ビフィドバクテリウム・ラクティス細菌Bb1株 DSM17850であり、および(v)身体に許容される、1つまたはそれ以上の食品グレードまたは医薬品グレードの添加剤および/または製剤成分(coformulants)および/または剤形化成分(formulation technological ingredients)、を含むか、あるいはそれからなり、該組成物は、抗癌化学療法、後天性免疫不全症候群の処置および白血病の処置を受ける個体において、抗ウイルス剤および/または抗細菌剤として使用するために、あるいは抗癌化学療法、後天性免疫不全症候群の処置および白血病の処置を受ける個体において、胃、食道および腸粘膜を保護するために使用するためのものである。該(iv)高度に同化可能かつ生物学的に利用可能な亜鉛の供給源は、2005年12月23日にBioMan S.r.L. Company(Italy)によりDSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに寄託された、ビフィドバクテリウム・ラクティスBb1株 DSM17850(ProbioZinc(登録商標))の間欠滅菌された細菌製品の形態の有機亜鉛として存在する。ビフィドバクテリウム属アニマリス亜種ラクティス細菌Bb1株 DSM17850の間欠滅菌された製品は、組成物1g当たり、10から50mg、好ましくは20mgの量で含まれる。
【0028】
本発明の上記の全ての組成物は、抗癌化学療法剤、後天性免疫不全症候群の治療剤および白血病の治療剤ための補助療法剤として使用するのに有効に適用可能である。さらに、本発明の組成物は、症状および腫瘍の処置のために使用される化学療法剤の一般的な副作用、具体的には、化学療法中に通常影響を受ける、食道、胃および腸の粘膜に引き起こされる損傷を予防および/または軽減するために補助療法剤として使用するのに有効に適用可能である。最後に、本発明の組成物は、化学療法剤が、免疫系の有効性の低下を伴い、それは、細菌およびウイルスに対する身体の感受性をもたらし、細菌およびウイルス感染の発生を引き起こすため、免疫系への補助療法剤として使用するために効果的に適用される。
最後に、本発明の組成物は、粉末、顆粒、錠剤またはカプセルのような剤形の製造を可能にする、食品グレードまたは医薬品グレードの賦形剤および/または添加剤および/または製剤成分(coformulants)を含む。
【0029】
本発明の組成物は、組成物1g当たり、1x10
8から1X10
12個の細菌生細胞UFC、好ましくは1x10
9から1x10
11個の細菌生細胞UFCを含む。本発明の組成物は、好ましくは、4−12週間の間に、1日1−2回投与することが推奨されている。
【0030】
本発明の組成物は、そのゲル化および粘膜付着特性のために摂取後数分以内にヒドロゲルを形成することができる、好適な量のタラガム(tara gum)からなり、そのチキソトロピー(thixotropy)特性により、初期において胃腸管で臓器の粘膜への病原性微生物の付着に対する機械的バリア作用を生じることにより、免疫系機能の障害が発生したときの基礎的なリスクである、腸壁を介する微生物の移動やその結果の隣接する臓器感染を低下させる。このようなバリア効果は、微生物ストレプトコッカス・サーモフィルスST10によりインサイチュウで産生される菌体外多糖類(EPS)が同時に存在することにより胃腸管全体に完成され、拡張され、それにより、自己調整される唯一の機械的な機構を通じて周囲の環境の粘度を増加させる。該細菌の摂取は、ヒトの腸内にゲル化分子の原料を提供し、こうしてタラガム(tara gum)に対して完全に相補的な作用を発揮する。
【0031】
上記の粘膜付着性ゲル化複合体は、考慮されるべき斬新な特性を有している。すなわち、植物タラガム(tara gum)は、胃腸管を通過する間に常在菌によって徐々に分解され、それにより機械的妨害物となるゲル化力が次第に低下することになる。しかし、植物ガム作用の段階的低下は、主に回腸および結腸に作用する、ストレプトコッカス・サーモフィルスST10株 DSM25246によりインサイチュウで産生される菌体外多糖類(EPS)の腸管腔での放出の漸進的増加によって効果的に相殺される。
【0032】
このように、タラガム(tara gum)およびインサイチュウで産生される菌体外多糖類(EPS)の相乗的な組み合わせは、胃腸管全体のゲル化分子の存在を可能とし、該産物の機械的なバリア作用を最大化かつ最適化する。従って、臓器の内腔における親水性ゲルの存在、産生および保持は、植物ガムの作用が最大となる第一の領域およびインサイチュウで産生される菌体外多糖類(EPS)の作用が最大になる第二の領域を備えて、初めて、実際に完成したとみることができる。
【0033】
ゲル化活性を有する2つの成分である、凍結乾燥したキダチアロエ(Aloe arborescens)(Alagel(商標))(例えば、1.5g/用量)およびアルギン酸ナトリウム(例えば、50mg/用量)が存在するため、本発明の組成物は、食道、胃および腸の粘膜を保護するための機械的なバリア効果を確実にすることができる。さらに、アルギン酸ナトリウムは、胃食道逆流に対する機械的妨害活性を有し、ならびに食道炎および胃炎に対する物理的保護活性を有する。この方法では、キダチアロエ(Aloe arborescens)およびアルギン酸ナトリウムの組み合わせは、化学療法剤の副作用を、腫瘍疾患を有する個体においてより忍容性とすることができる。さらに、キダチアロエ(Aloe arborescens)製品は、食道、胃および腸の粘膜の物理的保護の作用に加えて、特に、食道および胃腸レベルの両方で鞭毛微生物に関して、物理的・機械的妨害を介して病原株の接着能力を低下させることができる。アロエ製品はまた、胃および腸の透過性を低下させることができ、それにより、そのような臓器の生理学的バリア効果の回復に寄与し、タラガム(tara gum)および菌体外多糖類(EPS)を用いて相乗的に作用させて、腸からの細菌の移行リスクを低下させることができる。また、キダチアロエ(Aloe arborescens)は、抗炎症活性を有して、粘膜レベルでのさらなる保護を提供する。
【0034】
その作用機序全体に照らして、本発明の組成物は、腫瘍疾患を有する個体において化学療法剤の副作用、とりわけ細菌感染をより許容されるものにすることができる。
【0035】
加えて、本発明の組成物中の、(i)
−ラクトバチルス・ロイテリLRE03株 DSM23879、または
−ラクトバチルス・サリバリウスLS06株 DSM26037、または
−ラクトバチルス・ファーメンタムLF11株 DSM19188、または
−1:5から5:1、好ましくは1:3から3:1、さらにより好ましくは1:2から2:1または1:1の重量比で、ラクトバチルス・ロイテリLRE03株 DSM23879およびラクトバチルス・サリバリウスLS06株 DSM26037、または
−1:5から5:1、好ましくは1:3から3:1、さらにより好ましくは1:2から2:1または1:1の重量比で、ラクトバチルス・ロイテリLRE03株 DSM23879およびラクトバチルス・ファーメンタムLF11株 DSM19188、または
−1:5から5:1、好ましくは1:3から3:1、さらにより好ましくは1:2から2:1または1:1の重量比で、ラクトバチルス・サリバリウスLS06株 DSM26037およびラクトバチルス・ファーメンタムLF11株 DSM19188、または
−3:2:1、3:1:1、2:1:1、2:2:1、1:1:1の重量比で、ラクトバチルス・ロイテリLRE03株 DSM23879、ラクトバチルス・サリバリウスLS06株 DSM26037およびラクトバチルス・ファーメンタムLF11株 DSM19188、
を含むか、あるいはそれからなる、本発明の混合物(混合物1g当たり、1x10
8UFCから1x10
12UFC、好ましくは1x10
9UFCから1x10
11UFCの細菌細胞濃度を有する)の存在は、粘膜付着性ゲル化複合体、キダチアロエ(Aloe arborescens)およびアルギン酸ナトリウムのバリア作用に補足される機序により上記のバリア作用を強化する。
【0036】
実際に、L.ロイテリLRE03株 DSM23879は、インターフェロン−γ(IFN−γ)の内因性産生を顕著に刺激することができる。免疫系の主要な細胞による、サイトカイン、特にインターフェロン−γ(INF−γ)の放出を誘導する、L.ロイテリLRE03株 DSM23879の能力を、それを健常な成人個体の末梢血から単離されたPBMC(末梢血単核細胞)と共にインキュベートすることにより定量化した。結果は、480pg/mlの濃度でIFN−γ分泌の刺激を示し、すなわち対照より47倍強力であった。IFN−γ産生を、非刺激条件(ベースライン)に対して、刺激の5日後の培養上清において評価した。
【0037】
インターフェロン−γ(IFN−γ)は、他のインターフェロンと同様に、ウイルスおよび細菌感染に対する阻害特性、ならびに細胞骨格と細胞膜の変化によって仲介される非生理的な細胞増殖、癌遺伝子産物の発現の調節および細胞分化過程の制御(正常細胞および腫瘍細胞の両方におけるほとんど全ての有糸分裂期の延長)の阻害特性を有する。IFN−γはまた、マクロファージ、単球、好中球などの体内の免疫応答に特化した細胞ならびに血小板、内皮細胞および上皮細胞、線維芽細胞および実質細胞(parenchymal cell)などの未分化細胞の両方の活性を刺激することにより、重要かつ特徴的な免疫調節効果を示す。
【0038】
本発明の組成物に由来する、そしてアロエおよびアルギン酸ナトリウムが介在するバリア作用のさらなる強化は、微生物ビフィドバクテリウム・ラクティスBb1により取り込まれる高度に同化可能な亜鉛の好適な量(2mg/用量)の存在により可能となる。高度に生物学的に利用可能な(内在性の)亜鉛は、間欠滅菌(不活性化)された細胞の形態である。亜鉛のこの形態は、顕著に生物学的に利用可能であり、それ故に、生物によってより容易に同化可能である。生物により生物学的に利用可能であり、容易に同化可能である亜鉛イオンは、重要な役割を果たし、リンパ球の形成/生産を担う、胸腺に対して作用する。
【0039】
ビフィドバクテリウム・ラクティスBb1株 DSM17850は、2005年12月23日にBioMan S.r.L. Company(Italy)によりDSMZに寄託された。実際に、ビフィドバクテリウム・ラクティスBb1株 DSM17850は、液体培養培地中での増殖中に細胞内に亜鉛を蓄積することができる。細胞内に蓄積された食品由来の亜鉛(ProbioZinc(登録商標))は、トランスウェル・システム内のCaco−2細胞にて行われたインビトロ試験で示されているように、グルコン酸亜鉛よりも17倍、硫酸亜鉛よりも31.5倍高い同化率を有する。微量元素である亜鉛の高い同化率は、非常に低い投与量でも効果的に欠乏状態を相殺することができる。さらに、亜鉛は、免疫系に、とりわけ、CD4+T−リンパ球(ヘルパーT−リンパ球)に分化するとき、IL−12およびIFN−γなどのサイトカイン類を分泌するT−リンパ球の産生が行われる臓器である胸腺に関して重要な役割を果たすことが知られている。該亜鉛の作用機序は、L.ロイテリLRE03株 DSM23879の作用機序と相乗的である。
【0040】
上記に加えて、L.ロイテリLRE03株 DSM23879およびL.ファーメンタムLF11株 DSM19188は、グラム陰性菌に対する障害作用により、ゲル化複合体、アロエおよびアルギン酸ナトリウムが介在する、胃腸の粘膜を保護するためのバリア効果の強化に介在し、主にL.ファーメンタムLF11株 DSM19188は、大腸菌群、大腸菌およびカンジダ属の真菌に対して直接作用する。化学療法を受けている個体における胃腸管の重度の感染症をもたらし得る細菌群である、大腸菌種エンテロバクター・クロアカおよびクレブシエラ・ニューモニエを特に参照して、潜在的なグラム陰性病原体に対する顕著なバリア作用を有する微生物を選択した。この研究活動後に、L.ファーメンタムLF11株 DSM19188が成功裏に選択された。
【0041】
さらに、特にカンジダ・アルビカンス種、カンジダ・クルセイ種、カンジダ・グラブラタ種およびカンジダ・パラプシロシス種に対して証明されているように、L.ファーメンタムLF11株 DSM19188もまた、カンジダ属の酵母に対するバリア効果を確立し、保持することができる。具体的には、L.ファーメンタムLF11株 DSM19188は、しばしば化学療法剤で処置された患者でしばしば発生し、結果として慢性腸内毒素症の発現に至るカンジダ感染症の発生、持続感染または増殖に対して不利な腸内環境を作成し、かつ維持することができる。
【0042】
インビトロ阻害データは、L.ファーメンタムLF11株 DSM19188の作用機序が、バクテリオシン、細胞外タンパク質または過酸化水素などの有機酸以外の特定の分子に少なくとも一部基づくことを、強く示唆している。
【0043】
興味深いことに、機械的活性を有する本発明の目的の組成物の成分は、特に鞭毛微生物に関しては、主に、物理的・機械的障害を介して病原性株の接着特性を低下させることによって作用し、一方で、L.ロイテリLRE03株 DSM23879、ラクトバチルス・サリバリウスLS06株 DSM26037およびL.ファーメンタムLF11株 DSM19188は、粘膜表面に付着できなくなる病原体(ウイルスや細菌や酵母)に対する上記の障害への補助効果を発揮して、胃腸内腔に残留する。
【0044】
上記に照らして、本発明の目的の組成物の作用機序は、食道、胃および腸の粘膜の物理的保護のための機械的なバリア効果の確立および維持であり、また特に鞭毛を有する株に関しては、病原性株の接着能力を低下させることである。さらに、製品の機械的なバリア効果は、一般的には、化学療法治療中に増加した腸粘膜の生理学的な浸透性を回復することができる。
【0045】
主要なバリア効果の強化効果は、ウイルス感染および非生理的な細胞増殖に対抗することができるサイトカインの内因性の分泌の刺激、ならびに抗菌活性および抗カンジダ活性を有する特定の分子の合成であり、それにより、抗腫瘍化学療法剤で処置されている個体のさらなる保護を提供する。
【0046】
その全体的な作用機序に照らして、本発明の対象である組成物は、腫瘍疾患を有する個体および化学療法を受けている個体における補助療法として、ならびに後天性免疫不全症候群(AIDS)を有する個体および白血病治療を受けている個体における抗レトロウイルス治療の補助療法として使用するために効果的に適用される。
【実施例】
【0047】
実験の部
本発明者らは、以下に記載の通り、ラクトバチルス・ロイテリLRE03株(ID1777)DSM23879の免疫調節特性を試験した。
具体的には、自然免疫に関与するサイトカインと獲得免疫に関与するサイトカインの両方を分析するために、刺激後の種々の時間で試験を行った。
【0048】
a)細菌の培養および増殖条件
最初に、ラクトバチルス・ロイテリLRE03株 DSM23879の細菌培養物を特定の増殖条件下で調製した。該菌株を、Man Rogosa Sharpe(MRS)培地中、37℃の恒温槽中で培養した。免疫調節実験に関しては、約16時間の増殖後、細菌を、指数増殖期に到達させるために上記の条件下で6時間継代培養した。その後、それらを滅菌したリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.2)で2回洗浄した。生理学的状態および細胞数を、Becton Dickinson Companyから販売されている市販のキット“液体ビーズを含む細胞生存率キット(Cell Viability Kit with liquid beads)”を製造者の指示書に従って使用して、細胞蛍光検出技術を用いて決定した。このようにして、細胞を予備実験で確立された最適な濃度にして、その後のテストで使用した。
【0049】
b)末梢血単核細胞の分離
次に、末梢血単核細胞を分離した。末梢血単核細胞(PBMC)を密度勾配遠心分離により分離した。この目的のために、Ospedale di Borgomanero (Italy)の免疫輸血サービスからの健康なドナーの20mlの“バフィーコート”を、各試験に使用して、200x10
6PBMC/バフィーの平均収量を得た。分離した細胞の量を、単核細胞と多核細胞の区別が可能であるTurk色素を用いてBurkerチャンバー内の細胞数により決定した。細胞を、10%の熱不活化したウシ胎仔血清(FCS、Gibco)、1%グルタミンおよび25mM Hepesを添加したRPMI−1640増殖培地(Invitrogen)中、2x10
6細胞/mlの濃度にした。
【0050】
c)PBMC刺激
次に、末梢血単核細胞(PBMC)を細菌株を用いて刺激した。分離後、PBMCを、1日および5日の間、細菌株を用いて刺激した。各試験のインターナルコントロールは以下の通りであった。
陰性対照:PBMCのみ。
1日の対照:1μg/mlのリポ多糖(LPS;大腸菌、血清型055:B5、Sigma Chemicals Co., St. Louis, MO)で刺激したPBMC。
5日の対照:1μg/mlのフィトヘマグルチニン(PHA−P; Sigma Chemicals Co., St. Louis, MO)で刺激したPBMC。
異なる分析時点で、培養物を、1500rpmで10分間、遠心した。上清を捨て、分析まで−20℃で貯蔵した。細胞をその後の試験に使用した。
【0051】
d)細胞増殖分析
その後、細胞増殖分析を行った。細胞増殖を、ブロモデオキシウリジン(BrdU)核標識プロトコールを用いて細胞蛍光検出技術を用いて評価した。この方法は、トリチウム化チミジンを用いる伝統的な放射性標識システムに代わるものとして開発された。特に、細胞培養物に、5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)および2’−デオキシシチジン(dC)をそれぞれ20μMの終濃度で添加した。16時間、加湿雰囲気中、5%CO
2下、37℃にてインキュベーション後、細胞増殖を細胞蛍光技術によって分析した。培養上清を捨て、分析まで−20℃で貯蔵した。固定処理および細胞壁の透過処理後、細胞DNAを抗BrdU FITC結合モノクローナル抗体(mAb)(Becton Dickinson)で標識した。細胞を、調製から24時間以内に、Becton Dikinson Companyのフローサイトメーター FACScaliburおよび分析プログラムcellQuestを用いて分析した。
【0052】
結果は、刺激の存在下で増殖する細胞の割合と刺激の非存在下で増殖する細胞の割合との比として計算される、細胞増殖指数(P.I.)として表された。2以上のP.I値は、許容されるとみなされた(カットオフ値)。全ての試験において、対照としてのマイトジェン(PHA)での刺激の結果は、常に、カットオフ値よりも高くなり、PBMCが、生存能および増殖能を有したことが確認された。
【0053】
e)個々の細胞亜集団を特徴付ける分子の分析
次に、個々の細胞亜集団を特徴付ける分子の分析を行った。免疫表現型の特徴付けに関しては、細胞を、以下の種々の組み合わせ:フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)またはペリジニンクロロフィルタンパク質(PerCP):CD3、CD4、CD8、CD14、CD16、CD19、CD20、CD56、HLA−DRと結合させたモノクローナル抗体(mAb)と共に、暗所で30分間インキュベートした。インキュベーション後、サンプルを洗浄し、1%パラホルムアルデヒドを含有する溶液で固定し、4℃で貯蔵した。調製から24時間以内に、サンプルをフローサイトメーター FACScaliburにより、分析から汚染物質である細胞破片を除外するように選択された細胞で、分析した。
【0054】
f)サイトカイン投与
次いで、サイトカイン投与を行った。培養上清中のサイトカイン濃度を、ELISA.アッセイ(酵素結合免疫アッセイ)によって決定した。具体的には、サイトカイン(IL−4、IL−10、IFN−γおよびIL−12p70)投与について、eBioscence Company(San Diego CA)のキット“ヒトELISA Ready−SET−Go”を使用した。
【0055】
g)統計分析
スチューデントのt検定を用いる統計分析を行った。p<0.05値を有意とみなした。
【0056】
結果
i)ラクトバチルス・ロイテリLRE03株 DSM23879による誘導される増殖応答を決定した。細胞増殖のインビトロ分析は、免疫機能を調査するのに非常に有用な生物学的パラメーターである。試験した細菌株がリンパ球増殖の誘導に影響を与え得るかどうかを分析するために、末梢血単核細胞(PBMC)を細菌株ラクトバチルス・ロイテリLRE03 DSM23879で刺激した。T−リンパ球ポリクローナル増殖を誘導することができるマイトジェン刺激剤であるフィトヘマグルチニン(PHA)を、陽性対照として用いた。PBMCを、Ospedale S.S.Trinita, Borgomanero (Novara)の輸血サービスからの、平均年齢40歳(21−52歳)の4名の健常な男性ドナーの末梢静脈血サンプルから単離した。
【0057】
図1に示す通り、細胞増殖指数(P.I.、上記の方法を参照)が報告されるとき、全ての刺激条件下でのPBMC増殖応答は、刺激の非存在下(ベースライン)でよりも有意に高くなった。
【0058】
図1では、4つの独立した試験の平均±標準誤差(S.E.M.)を示す。統計的有意性を、スチューデントのt検定を用いて計算した。p<0.05値は、ベースライン(刺激をしていないPBMC)と比較して、統計的に有意であるとみなされるべきである。
【0059】
ii)異なる細胞亜集団に対する細菌株ラクトバチルス・ロイテリLRE03 DSM23879の作用を評価した。どの細胞亜集団が、試験したプロバイオティック株での刺激によって増殖を誘導されたかを検出するために、マルチパラメトリックフローサイトメトリー分析を行った。図面(
図2および
図3)は、自然免疫応答および獲得免疫応答の両方に関与する主な細胞亜集団の割合を示している。
【0060】
iia)自然免疫。1日後、細菌株ラクトバチルス・ロイテリLRE03(DSM23879)による刺激は、全樹状細胞の割合(Lineage−/HLA−DR+)を変化させた。
図2に、4つの独立した試験の増殖応答の平均±S.E.Mを示す。統計的有意性を、スチューデントのt検定を用いて計算した。p<0.05値は、ベースライン(刺激をしていないPBMC)と比較して、統計的に有意であるとみなされるべきである。
【0061】
iib)獲得免疫。5日後、細菌株ラクトバチルス・ロイテリLRE03 DSM23879による刺激は、ヘルパーT−リンパ球(CD3+/CD4)の割合を有意に増加させた。
図3に、12の独立した試験の平均±S.E.Mを示す。統計的有意性を、スチューデントのt検定を用いて計算した。p<0.05値は、ベースライン(刺激をしていないPBMC)と比較して、統計的に有意であるとみなされるべきである。
【0062】
iii)サイトカイン分泌。免疫応答に関与する細胞亜集団により分泌されるサイトカインの種々のスペクトルは、特定の抗原刺激に応答して使用されるエフェクター系を選択する際に重要な役割を果たしている。T−リンパ球は、細胞仲介性免疫の主なエフェクターおよび調節細胞を表す。抗原または病原体に応答して、T細胞は、増殖および分化に必要とされる種々のサイトカインならびに他の免疫担当細胞の活性化因子としてのサイトカインを合成および分泌する。試験した細菌株がPBMCによる種々のサイトカイン分泌を誘導するかどうかを調べるために、該細胞を1日間および5日間、活性化させた。培養上清中に放出されたサイトカイン(IL−12p70、IFN−γおよびIL−4)の量を、ELISAアッセイにより測定した。
【0063】
iv)主に炎症促進作用を有するサイトカイン。主に炎症促進作用を有するサイトカインの主な代表として、サイトカイン類IL−12p70およびIFN−γの誘導を評価した。
図4に示す通り、細菌株ラクトバチルス・ロイテリ菌LRE03(DSM23879)は、ベースライン状態と比較して、試験した両サイトカインの有意な増加を誘導することができる。
【0064】
v)主に免疫調節作用を有するサイトカイン。主に免疫調節作用を有するサイトカインの主な代表として、サイトカインIL−4の誘導を評価した。
図4に示す通り、試験した細菌株ラクトバチルス・ロイテリ菌LRE03(DSM23879)は、ベースライン状態と比較して、サイトカインIL−4分泌の低下を誘導することが可能であることが示された。
【0065】
図4に、4つの独立した試験の平均±S.E.Mを示す。統計的有意性を、スチューデントのt検定を用いて計算した。p<0.05値は、ベースライン(刺激をしていないPBMC)と比較して、統計的に有意であるとみなされるべきである。サイトカインIL−12p70の産生を、刺激の1日後の培養上清中で評価した。IFN−γおよびIL−4産生を、刺激の5日後の培養上清中で評価した。
【0066】
細菌株ラクトバチルス・ロイテリLRE03 DSM23879での刺激後のPBMCによって分泌されるサイトカインの量に関するデータは、その細菌株自体の大幅に炎症性サイトカインを増加させる能力を明確に示した。具体的には、細菌株ラクトバチルス・ロイテリ菌LRE03 DSM23879は、非刺激条件(ベースライン、
図5)に比べて、サイトカインIL−12p70およびサイトカインIFN−γの分泌をそれぞれ6倍および47倍増加させた。
【0067】
細菌株ラクトバチルス・ロイテリLRE03 DSM23879のサイトカインIFN−γ分泌を刺激する顕著な能力を考慮して、本試験の結果を、全てのプロバイオティクス菌種コレクションに属する他の細菌株を用いた試験から得られる結果と比較した。具体的には、ベースラインに対する増加を比較し、すなわち、非刺激条件(ベースライン)と比べたIFN−γ量の変化倍を調べた。
【0068】
表1に示す通り、細菌株ラクトバチルス・ロイテリLRE03(DSM23879)は、全てのラクトバチルス属に属する同種および異種の両株と比較して最良のIFN−γ誘導物質であった。
表1に、ベースラインと比較して、種々のラクトバチルス属およびビフィドバクテリウム属による刺激によって誘導されるサイトカインIFN−γの増加が示されている。
【0069】
実験の部
本発明者らは、以下に記載の通りに、細菌株ラクトバチルス・サリバリウスLS06 DSM26037の免疫調節特性を試験した。
【0070】
具体的には、微生物学的観点および分子的観点の両方から予め特徴づけられた、プロバイオティクス菌株ラクトバチルス・サリバリウスLS06 DSM26037の全循環樹状細胞に対する免疫調節特性を評価した。特に、刺激の24時間後、健康な成人ドナー由来の末梢血単核細胞中のDCを選択することにより、マルチパラメトリックフローサイトメトリー分析を行った。
【0071】
a)細菌培養および増殖条件
菌株を、Man Rogosa Sharpe(MRS)培地中、37℃の恒温槽中で培養した。免疫調節実験に関しては、約16時間の増殖後、細菌を、指数増殖期に到達させるために上記の条件下で6時間継代培養した。その後、それらを滅菌したリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.2)で2回洗浄した。生理学的状態および細胞数を、Becton Dickinson Companyから販売されている市販のキット“液体ビーズを含む細胞生存率キット(Cell Viability Kit with liquid beads)”を製造者の指示書に従って使用して、細胞蛍光検出技術を用いて決定した。次いで、細胞を予備実験で確立された最適な濃度にして、その後のテストで使用した。
【0072】
b)末梢血単核細胞の分離
末梢血単核細胞(PBMC)を密度勾配遠心分離により分離した。この目的のために、Ospedale di Borgomaneroの免疫輸血サービスからの健康なドナーの20mlの“バフィーコート”を、各試験に使用して、200x10
6PBMC/バフィーの平均収量を得た。分離した細胞の量を、単核細胞と多核細胞の区別が可能であるTurk色素を用いてBurkerチャンバー内の細胞数により決定した。細胞を、10%の熱不活化したウシ胎仔血清(FCS、Gibco)、1%グルタミンおよび25mM Hepesを添加した、RPMI−1640増殖培地(Invitrogen)中、2x10
6細胞/mlの濃度にした。
【0073】
c)PBMC刺激
分離後、PBMCを、細菌株を用いて24時間刺激した。各試験のインターナルコントロールは以下の通りであった。
陰性対照:PBMCのみ。
1日(24時間)の対照:1μg/mlのリポ多糖(LPS;大腸菌、血清型055:B5、Sigma Chemicals Co., St. Louis, MO)で刺激したPBMC。
刺激後、培養物を、1500rpmで10分間、遠心した。その後、上清を捨て、細胞をその後の試験に使用した。
【0074】
d)総樹状細胞分析
免疫表現型の特徴付けに関しては、細胞を、以下の種々の組み合わせ:フルオレセインイソチオシアネート(FITCまたはペリジニンクロロフィルタンパク質(PerCP):CD3、CD14、CD16、CD19、CD20、CD56およびHLA−DRと結合させたモノクローナル抗体(mAb)と共に、暗所で30分間インキュベートした。インキュベーション後、サンプルを洗浄し、1%パラホルムアルデヒドを含有する溶液で固定し、4℃で貯蔵した。調製から24時間以内に、サンプルをフローサイトメーター FACScaliburにより、分析から汚染物質である細胞破片を除外するように選択された細胞で、分析した。
【0075】
e)統計分析
スチューデントのt検定を用いる統計分析を行った。p<0.05値を有意とみなした。
【0076】
結果:樹状細胞に対する細菌株の効果
試験したプロバイオティック株が樹状細胞の調節に影響を与え得るかどうかを決定するために、マルチパラメトリックフローサイトメトリー分析を行った。
図6Aに示す通り、24時間後、株LS06による刺激は、全樹状細胞(Lineage−/HLA−DR+)の割合の有意な増加を誘導した。
具体的には、細菌株L.サリバリウスLS06(DSM26037)は、非刺激条件と比べて(ベースライン、
図6B)、全樹状細胞の割合の7倍増加を示した。
【0077】
図6Bに、12の独立した試験の平均±S.E.Mを示す。統計的有意性を、スチューデントのt検定を用いて計算した。p<0.05値は、ベースライン(刺激をしていないPBMC)と比較して、統計的に有意であるとみなされるべきである。
表2に、ベースラインと比較して、種々のラクトバチルス属およびビフィドバクテリウム属による刺激によって誘導される樹状細胞の増加が示されている。
【0078】
結論
データは、細菌株L.サリバリウスLS06が、標準的な基礎的条件と比較して、総DC割合の有意な増加を誘導することを実証した。特に、細菌LS06は、総DC割合を7倍増加させた。
【0079】
本試験で特定された、菌株L.サリバリウスLS06などの樹状細胞を調節することができる細菌による腸内でのコロニー形成は、免疫不均衡によって決定される疾患において非常に重要な因子である。
【0080】
【表1-1】
【表1-2】
【0081】
【表2】