前記液状可塑剤Bの質量部をB、前記粘着付与樹脂Dの質量部をD、及び前記オレフィンCの質量部をCとした場合に(B+D)/Cで示される比率が2.0〜20.0である、請求項1に記載のホットメルト組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のホットメルト組成物について詳細に説明する。
【0014】
本発明のホットメルト組成物は、ブチルゴムA、液状可塑剤B、軟化点110℃以上180℃以下のオレフィンC、及び粘着付与樹脂Dを含有し、
(1)前記液状可塑剤Bの含有量は、前記ブチルゴムA100質量部に対して180〜550質量部であり、
(2)前記オレフィンCの含有量は、前記ブチルゴムA100質量部に対して40〜320質量部であり、
(3)前記粘着付与樹脂Dの含有量は、前記ブチルゴムA100質量部に対して10〜430質量部である、
ことを特徴とする。
【0015】
上記特徴を有する本発明のホットメルト組成物は、ブチルゴム、液状可塑剤、特定の軟化点を有するオレフィン、及び粘着付与樹脂を所定割合で含有することにより、糸曳き性、高温での耐フロー性、及び離型紙への間欠塗工性に優れ、特に小生物捕獲器の粘着層を形成する用途に適している。
【0016】
なお、「糸曳き性に優れる」とは、本発明のホットメルト組成物及びそれから形成した粘着層が少なくとも常温下で小生物の捕獲に適した粘着性を有することを意味する。「高温での耐フロー性に優れる」とは、前記粘着層が常温のみならず高温(特に80〜100℃)でも形状変化しないことを意味する。「離型紙への間欠塗工性に優れる」とは、ホットメルト組成物を160〜180℃の塗工温度で離型紙上に間欠塗工する間欠塗工性が良好であること(塗工終了時の糊(組成物)の糸曳き汚れが発生しにくい、すなわち「糊切れが良い」こと)を意味する。また、後述する「ボールタック性に優れる」とは、本発明のホットメルト組成物及びそれから形成した粘着層が少なくとも常温下で小生物の捕獲に適した粘着性(特に粘着層上で動く物を捉える粘着性)を有することを意味する。
【0017】
ブチルゴムA
本発明のホットメルト組成物はブチルゴムAを含有する。ブチルゴムAは、粘着力及びホットメルト組成物の捕虫性(特に糸曳き性)を付与する。糸曳き性は捕虫性を向上させる特性であって、糸曳きにより小生物を絡め取る特性を意味する。ブチルゴムは、イソブテン(イソブチレン)及び少量のイソプレンの共重合体(イソブチレン−イソプレンゴム)である。
【0018】
ブチルゴムAの種類は特に限定されず、例えば、再生ブチルゴム、合成ブチルゴム等が挙げられる。なお、ブチルゴムAの重量平均分子量は限定的ではないが、ホットメルト組成物の粘度の観点から300,000〜700,000が好ましく、300,000〜400,000がより好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置を用いて標準ポリスチレンで換算することにより得られる測定値である。
【0019】
上記ブチルゴムAの重量平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置:Waters社製 商品名「ACQUITY APC」
測定条件:カラム
・ACQUITY APC XT45 1.7μm×1本
・ACQUITY APC XT125 2.5μm×1本
・ACQUITY APC XT450 2.5μm×1本
移動相:テトラヒドロフラン 0.8mL/分
サンプル濃度:0.2質量%
検出器:示差屈折率(RI)検出器
標準物質:ポリスチレン(Waters社製 分子量:266〜1,800,000)
カラム温度:40℃
RI検出器温度:40℃
ブチルゴムAは、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0020】
ブチルゴムAとしては、市販されている製品を用いることができる。市販品としては、JSR社製「Butyl Rubber B065」、JSR社製「Butyl Rubber 268」等が挙げられる。
【0021】
ブチルゴムAは、従来のスチレン系熱可塑性エラストマーと比較して、スチレンブロックのようなハードセグメントを有していないため、凝集力の低下が期待でき、これによりホットメルト組成物の糸曳き性が良好となる。
【0022】
液状可塑剤B
本発明のホットメルト組成物は、液状可塑剤Bを含有する。なお、上記「液状」とは、25℃で流動性をもつ(すなわち、容器に入れた場合に容器に合わせて形状を変える)ことを意味する。液状可塑剤Bとしては特に限定されず、例えば、ポリブテン、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、流動パラフィン、炭化水素系合成油等が挙げられる。これらの液状可塑剤Bの中でも、ポリブテン及びプロセスオイルの少なくとも一種が好ましい。また、プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル及びナフテン系プロセスオイルの少なくとも一種がより好ましく、高温での耐フロー性を高める点ではパラフィン系プロセスオイルが特に好ましい。
【0023】
液状可塑剤Bは、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0024】
ポリブテンとしては特に限定されず、例えば、イソブテンのホモポリマー、イソブテンとn−ブテンとのコポリマー等が挙げられる。
【0025】
ポリブテンとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、日本油脂社製「10N」、イネオス社製「インドポールH−100」、新日本石油化学製「日石ポリブテン」、新日本石油化学製「テトラックス」等が挙げられる。
【0026】
ポリブテンの数平均分子量は限定的ではないが900〜2,100が好ましく、900〜1,800がより好ましい。ポリブテンの数平均分子量が900以上であると、ホットメルト組成物のボールタック性が向上し、高温での耐フロー性も良好な組成物となる。また、ポリブテンの数平均分子量が2,100以下であると、ホットメルト組成物をスロットコーターにて好適に塗工することが可能な組成物となる。なお、本明細書における数平均分子量はASTM D 3536に準じて測定した値である。
【0027】
パラフィン系プロセスオイルとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、出光興産社製「PW−32」、出光興産社製「ダイアナフレシアS32」、出光興産社製「PS−32」等が挙げられる。
【0028】
ナフテン系プロセスオイルとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、PetroChina社製「KN4010」、出光興産社製「ダイアナフレシアN28」、出光興産社製「ダイアナフレシアN90」、出光興産社製「ダイアナフレシアU46」、出光興産社製「ダイアナプロセスオイルNR」等が挙げられる。
【0029】
芳香族系プロセスオイルとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、新日本石油社製「アロマックス」が挙げられる。
【0030】
これらのプロセスオイルの数平均分子量は限定的ではないが200〜700が好ましく、300〜600がより好ましい。
【0031】
流動パラフィンとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、MORESCO社製「P−100」、Sonneborn社製「Kaydol」等が挙げられる。
【0032】
炭化水素系合成油としては、市販品を用いることができる。市販品としては、三井化学社製「ルーカントHC−10」、三井化学社製「ルーカントHC−20」等が挙げられる。
【0033】
液状可塑剤Bの含有量は、ブチルゴムA100質量部に対して180〜550質量部であればよいが、その中でも特に200〜400質量部が好ましい。液状可塑剤Bの含有量が180質量部以上であると、ホットメルト組成物の柔軟性が良好であり糸曳き性及びボールタック性が向上する。また、液状可塑剤Bの含有量が550質量部以下であると、糸曳き性及びボールタック性が向上する。なお、糸曳き性及び高温での耐フロー性を向上させる観点では液状可塑剤Bの含有量は200〜400質量部が好ましく、同時にボールタック性も向上させる観点では液状可塑剤Bの含有量は300〜400質量部が好ましい。
【0034】
軟化点110℃以上180℃以下のオレフィンC
本発明のホットメルト組成物は、軟化点110℃以上180℃以下のオレフィンC(以下、「オレフィンC」ともいう)を含有する。オレフィンCとしては軟化点110℃以上180℃以下の要件を満たす限り特に限定されず、ポリプロピレン、ポリプロピレン系共重合体、ポリエチレン系共重合体等が挙げられる。特にポリプロピレン系共重合体としては、例えば、非晶質ポリα−オレフィン(いわゆるAPAO)であるものが好ましく、特にプロピレン−1ブテン共重合体が好ましい。
【0035】
オレフィンCの軟化点は110℃以上180℃以下であればよいが、その中でも120℃以上が好ましく、120〜140℃がより好ましい。なお、本明細書におけるオレフィンCの軟化点は環球式軟化点温度を意味し、JIS K2207に準拠して測定される値である。オレフィンCの軟化点がかかる範囲内であることにより、良好なボールタック性を確保するとともに、高温でも良好な耐フロー性を発現することができる。
【0036】
オレフィンCの180℃における溶融粘度は限定的ではないが、1,000〜60,000mPa・sであることが好ましい。また、190℃における溶融粘度は限定的ではないが、500〜25,000mPa・sであることが好ましい。オレフィンCの溶融粘度がかかる範囲内であることにより、良好なボールタック性、並びに、高温で良好な耐フロー性を確保し易くなる。
【0037】
なお、本明細書における「溶融粘度」は、一定の温度で加熱溶融状態となったホットメルト組成物の粘度である。180℃における溶融粘度は、ホットメルト組成物を加熱溶融し、180℃における溶融状態の粘度を、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)を用いて測定した値である。また、190℃における溶融粘度は、上記測定方法において180℃を190℃に換えたものである。
【0038】
オレフィンCの含有量は、ブチルゴムA100質量部に対して40〜320質量部(特に41〜320質量部)であればよいが、その中でも特に50〜300質量部が好ましい。オレフィンCの含有量が40質量部(特に41質量部)以上であると、本発明のホットメルト組成物の高温での耐フロー性が良好となる。また、オレフィンCの含有量が320質量部以下であると、本発明のホットメルト組成物のボールタック性が向上する。なお、糸曳き性及び高温での耐フロー性を向上させる観点ではオレフィンCの含有量は90〜300質量部が好ましく、同時にボールタック性も向上させる観点ではオレフィンCの含有量は90〜200質量部が好ましい。
【0039】
粘着付与樹脂D
本発明のホットメルト組成物は、粘着付与樹脂Dを含有する。粘着付与樹脂Dとしては特に限定されず、ロジン系化合物、テルペン系化合物、石油樹脂等が挙げられる。
【0040】
上記ロジン系化合物としては、例えば、天然ロジン、変性ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。
【0041】
上記テルペン系化合物としては、例えば、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの三次元ポリマー、天然テルペンのコポリマーの水素化誘導体、テルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体等が挙げられる。
【0042】
上記石油樹脂としては、例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂等の石油樹脂が挙げられる。また、これらの石油樹脂が水素添加された水添石油樹脂(部分水添石油樹脂、完全水添石油樹脂)も挙げられる。水添石油樹脂の中では、部分水添石油樹脂の方が、前記ブチルゴムAとの相溶性が高く、且つ加熱安定性に優れる点でより好ましい。なお、C5系石油樹脂は石油のC5留分を原料とした石油樹脂であり、C9系石油樹脂は石油のC9留分を原料とした石油樹脂であり、C5C9系石油樹脂は石油のC5留分とC9留分とを原料とした石油樹脂である。C5留分としては、シクロペンタジエン、イソプレン、ペンタン等が挙げられる。C9留分としては、スチレン、ビニルトルエン、インデン等が挙げられる。C5系石油樹脂、C5C9系石油樹脂としては、C5留分の一種であるシクロペンタジエンに由来するジシクロペンタジエン(DCPD)を骨格中に含むものが好ましい。
【0043】
粘着付与樹脂Dとしては、ホットメルト組成物の臭気、熱安定性に優れている点で、石油樹脂(部分水添石油樹脂及び完全水添石油樹脂を含む)が好ましく、部分水添石油樹脂及び完全水添石油樹脂がより好ましい。
【0044】
粘着付与樹脂Dは、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0045】
粘着付与樹脂Dの軟化点温度は限定的ではないが、90℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。軟化点温度の上限は限定的ではないが、130℃程度である。粘着付与樹脂Dの軟化点が90℃以上であると、本発明のホットメルト組成物が高温で良好な耐フロー性を発現することができる。
【0046】
粘着付与樹脂Dの含有量は、ブチルゴムA100質量部に対して10〜430質量部であればよいが、その中でも特に50〜430質量部が好ましい。粘着付与樹脂Dの含有量が10質量部以上であると、本発明のホットメルト組成物を離型紙上に間欠塗工する際の間欠塗工性が良好となる。また、粘着付与樹脂Dの含有量が430質量部以下であると、本発明のホットメルト組成物のボールタック性が向上するとともに良好な延糸性を発現することができる。なお、糸曳き性及び高温での耐フロー性を向上させる観点では粘着付与樹脂Dの含有量は200〜430質量部が好ましく、同時にボールタック性も向上させる観点では粘着付与樹脂Dの含有量200〜380質量部が好ましい。
【0047】
粘着付与樹脂Dは、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0048】
粘着付与樹脂Dとしては、市販されている製品を用いることができる。市販品としては、例えば、東燃ゼネラル石油社製「HA−085」、東燃ゼネラル石油社製「HA−103」、東燃ゼネラル石油社製「HB−103」、東燃ゼネラル石油社製「HB−125」、荒川化学社製「アルコンP−90」、荒川化学社製「アルコンM−100」、出光興産社製「アイマーブP100」、Kolon社製「スコレッツSU400」、ヤスハラケミカル社製「YSレジンTO−105」等が挙げられる。
【0049】
本発明のホットメルト組成物は、液状可塑剤Bの質量部をB、粘着付与樹脂Dの質量部をD、及びオレフィンCの質量部をCとした場合にB/Cで示される比率が1.2〜7.0の範囲であることが好ましい。また、D/Cで示される比率が0超過7.0以下の範囲であることが好ましい。更に(B+D)/Cで示される比率が2.0〜20.0であることが好ましい。特に(B+D)/Cで示される比率は2.0〜20.0の中でも2.0〜14.0の範囲であることが好ましく、2.0〜8.0の範囲であることがより好ましい。かかる範囲内であることにより、糸曳き性、高温での耐フロー性、及び離型紙への間欠塗工性に優れ、特に小生物捕獲器の粘着層を形成する用途に適したホットメルト組成物が得られ易くなる。
【0050】
他の添加剤
本発明のホットメルト組成物は、本発明の目的を本質的に妨げない範囲で、他の添加剤を含有していてもよい。例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0051】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ぺンチルフェニル)]アクリレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0052】
酸化防止剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0053】
紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;サリチル酸エステル系紫外線吸収剤;シアノアクリレート系紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
【0054】
紫外線吸収剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0055】
本発明のホットメルト組成物中の上記他の添加剤の含有量の合計は、ブチルゴムA100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。
【0056】
上記他の添加剤の含有量の合計を上記範囲とすることにより、本発明のホットメルト組成物により優れた熱安定性及び塗工適性を付与できるとともに、本発明のホットメルト組成物に所望の性能を付与することができる。
【0057】
ホットメルト組成物の物性
本明細書における「溶融粘度」は、一定の温度で加熱溶融状態となったホットメルト組成物の粘度である。180℃における溶融粘度は、ホットメルト組成物を加熱溶融し、180℃における溶融状態の粘度を、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)を用いて測定した値である。
【0058】
本発明のホットメルト組成物は、180℃溶融粘度が9,000mPa・s以下であることが好ましい。180℃溶融粘度9,000mPa・sを超えると、本発明のホットメルト組成物の塗工適性が低下するおそれがある。180℃溶融粘度は、100〜7,000mPa・sが好ましく、400〜4,000mPa・sがより好ましい。180℃における溶融粘度を上記範囲とすることにより、本発明のホットメルト組成物の間欠塗工適性がより一層優れる。
【0059】
本明細書において、ホットメルト組成物の「軟化点」は、R&B法(日本接着剤工業会規格JAI 7)にて測定できるホットメルト組成物の溶融温度である。本発明のホットメルト組成物は、軟化点温度が60〜110℃であることが好ましい。この範囲であることにより、小生物の捕獲性能と高温での良好な耐フロー性の効果が得られる。
【0060】
本明細書における「糸曳き性」は、糸曳き応力測定値により評価する。詳細には、80mm
2の接着面積をもつプローブを本発明のホットメルト組成物から形成した粘着剤ブロックに10mm/minにて5mm沈み込ませた後、そのプローブを300mm/minにて25mm引き上げたときの応力の最大値を糸曳き応力測定値とする。なお、糸曳き応力としては3.0N以上であれば好ましく、応力が大きいほど強い粘着性を示す。
【0061】
本明細書における「ボールタック」は、JIS Z0237のタック試験法(転球法、23℃)に基づいて測定できる値である。
【0062】
本発明のホットメルト組成物は、23℃環境下におけるボールタックが24以上であることが好ましく、24〜32がより好ましい。ボールタックがかかる範囲内であることにより、常温での小生物の捕捉性能に優れる。
【0063】
本発明のホットメルト組成物は、ゴキブリやハエといった害虫などの小生物を捕獲する捕獲器の粘着層として好適に使用することができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の実施例について説明する。本発明は、下記の実施例に限定されない。
【0065】
なお、実施例及び比較例で用いた原料は以下の通りである。
【0066】
<ブチルゴムA>
・ブチルゴムA1:JSR社製 Butyl Rubber B065
(重量平均分子量430,000)
・ブチルゴムA2:JSR社製 Butyl Rubber 268
(重量平均分子量580,000)
【0067】
<液状可塑剤B>
・液状ポリブテンB1:日本油脂社製 10N
(数平均分子量1,000)
・ナフテン系プロセスオイルB2:PetroChina社製 KN4010
(数平均分子量385)
【0068】
<軟化点110℃以上180℃以下のオレフィンC>
・オレフィンC1:千葉ファインケミカル製 サンアタックM
(PP,PP−1ブテン,PE−PP,PEの混合物(APAO)、軟化点123℃、180℃溶融粘度1,300mPa・s、190℃溶融粘度670mPa・s)
・オレフィンC2:EASTMAN製 Aerafin17
(PP系共重合体(APAO)、軟化点130℃、180℃溶融粘度2,000mPa・s、190℃溶融粘度1,700mPa・s)
・オレフィンC3:EVONIK製 VP828
(プロピレン−1ブテン共重合体(APAO)、軟化点161℃、180℃溶融粘度3,3000mPa・s、190℃溶融粘度25,000mPa・s)
・オレフィンC4:EVONIK製 VP750(比較品)
(プロピレン−1ブテン共重合体(APAO)、軟化点107℃、180℃溶融粘度6,2000mPa・s、190℃溶融粘度50,000mPa・s)
【0069】
<粘着付与樹脂D>
・水添石油樹脂D1:東燃ゼネラル石油社製 HA−085
(軟化点:85℃)
・水添石油樹脂D2:東燃ゼネラル石油社製 HB−103
(軟化点:100℃)
・水添石油樹脂D3:東燃ゼネラル石油社製 HB−125
(軟化点:125℃)
【0070】
実施例1〜24及び比較例1〜5
上述した原料を、それぞれ表1〜表4に示した配合量で、加熱装置を備えた攪拌混練機中に投入し、145℃で90分間加熱・混練してホットメルト組成物を製造した。
【0071】
得られたホットメルト組成物について、以下の測定条件により特性を評価した。
【0072】
(溶融粘度)
ホットメルト組成物を加熱溶融し、180℃における溶融状態の粘度を、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)を用いて測定した。
【0073】
(軟化点)
ホットメルト組成物を加熱溶融し、日本接着剤工業会規格JAI 7にて定められた方法に従って測定した。
【0074】
(糸曳き性)
80mm
2の接着面積をもつプローブを本発明のホットメルト組成物から形成した粘着剤ブロックに10mm/minにて5mm沈み込ませた後、そのプローブを300mm/minにて25mm引き上げたときの応力の最大値を糸曳き応力測定値とした。糸曳き応力は3.0N以上であれば数値が大きいほど捕虫性が良好であると判断する。
【0075】
(ボールタック)
ホットメルト組成物を160℃〜180℃の塗工温度でスロット塗工により、離型紙上に塗布する。
【0076】
次いで、別途用意したボール紙に転写することによって試験片とする。塗布量は300g/m
2、塗布幅は50mmとする。このとき塗工された試験片を、23℃、相対湿度50%雰囲気下の条件で24時間にわたって保管し、ホットメルト組成物を冷却する。
【0077】
次いで、離型紙を剥離し、JIS Z0237のタック試験法(転球法)に基づいて測定を行い、30℃の傾斜をつけた架台に試験片を設置し、助走距離10cmにてボールを転がし、ホットメルト組成物上で停止したボールの最大サイズを記録する。
【0078】
(耐フロー性)
上述のボールタックの測定方法と同様にして作製した試験片を用い、100mm×50mmの大きさにカットし、長手方向(ホットメルト組成物の塗工方向)が上下に位置するよう試験片を90℃に調温された恒温槽に垂直に立てて保管し、12時間養生した。12時間後に恒温槽から取り出し、長手方向の下面の形状変化を下記基準に従い、評価した。
【0079】
同様に、100℃×24時間、及び100℃×48時間の条件において耐フロー性を評価した。
【0080】
なお、評価が○以上であれば実使用において問題ないと評価できる。
◎:0mm以上2mm未満の変形が見られる。
○:2mm以上5mm未満の変形が見られる。
△:5mm以上10mm未満の変形が見られる
×:11mm以上の変形が見られる。
【0081】
(間欠塗工性)
本発明のホットメルト組成物を160℃〜180℃の塗工温度、5m/minのスピードで、50μmの厚みで1秒塗工1秒停止で塗工(間欠塗工)し、糸曳きの程度を計測した。
◎:1cm未満
○:1cm以上〜3cm未満
△:3cm以上〜5cm未満
×:5cm以上
【0082】
なお、評価が○以上であれば間欠塗工性に優れると評価できる。
【0083】
結果を表1〜表4に示す。
【0084】
表1〜表4の結果から明らかな通り、所定の要件を満たす実施例1〜24で調製したホットメルト組成物は糸曳き性(捕虫性の指標)、高温での耐フロー性、及び離型紙への間欠塗工性に優れ、特に小生物捕獲器の粘着層を形成する用途に適していることが分かる。これに対して、所定の要件を満たさない比較例1〜5で調製したホットメルト組成物は、特に比較例1〜4では糸曳き性又は高温での耐フロー性が不十分であり、比較例5では離型紙への間欠塗工性が不十分であることが分かる。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】