【課題】本発明の課題は、作業衣を装着した作業者を冷やすことができ、これにより高温の作業環境においても作業者が快適に作業することを可能とする作業衣を得ることである。
【解決手段】本発明の作業衣100は、外布110と、内布120と、外布110と内布120との間の中空部130と、中空部130と気体供給装置1の排出口との接続部102とを備えた作業衣100であって、内布120は、気体供給装置1から、接続部100を介して中空部130に供給された気体を排出する複数の第1の排気孔121を備える。
隣接する前記第1の排気孔同士間の間隔は約10mm〜約50mmであって、格子状、千鳥状、円環状、渦巻状のいずれかの形態で配置される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の作業衣。
前記第2の排気孔は、直径約1mm〜約5mmであって、前記チューブの同一断面において約180°の間隔で設けられる、請求項2、3、請求項2又は請求項3に従属する請求項4又は5のいずれか一項に記載の作業衣。
前記第2の排気孔は、前記チューブの長さ方向の隣接する位置における前記チューブの断面視において約30°〜約90°異なる角度に設けられる、請求項2、3、請求項2又は請求項3に従属する請求項4〜6のいずれか一項に記載の作業衣。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0021】
本明細書において、「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。
【0022】
本明細書において、「排気孔の密度」とは、10cm角当たりに設けられる数で定義する。
【0023】
本発明は、作業衣を装着した作業者を冷やすことができ、これにより高温の作業環境においても作業者が快適に作業することを可能とする作業衣の提供を課題とし、
外布と、
内布と、
外布と内布との間の中空部と、
中空部と気体供給装置の排出口との接続部と
を備えた作業衣であって、
内布は、気体供給装置から、接続部を介して中空部に供給された気体を排出する複数の第1の排気孔を備える、作業衣を提供することによって、上記課題を解決した。
【0024】
すなわち、本発明の作業衣では、外布と内布との間に中空部が形成されており、内布には、気体供給装置から接続部を介して中空部に供給された気体を排出する複数の第1の排気孔が形成されているので、作業衣を装着した作業者を、気体供給装置から作業衣の中空部に供給された気体が複数の第1の排気孔から排出されることで冷やすることができる。これにより、高温の作業環境においても作業者が快適に作業することを可能となる。
【0025】
従って、本発明の作業衣は、外布と内布との間に中空部が形成され、中空部に供給された気体が内布の複数の第1の排気孔から排出されるものであれば、その他の構成はどのようなものでもよい。
【0026】
作業衣は、任意の形態であり得る。例えば、ジャンパー、ジャケット、前掛け(エプロン)、ベスト、ツナギ、ズボン、ポンチョなどである。
【0027】
また、作業衣が用いられる作業環境は任意であり得る。好ましくは、熱間鍛造作業、溶鉱炉周辺の製鉄作業、土木建築作業、消防作業など特に高温状態での作業であるが、これらに限定されない。特に高温状態に晒されない一般作業に用いられてもよい。
【0028】
外布は任意の材料であり得る。例えば、高温の作業場所であるが部品などの飛散などの危険がない場所で用いる仕様として、一般生活の衣服に用いられる材料(例えば、洋服の表地や気密性の高いウインドブレーカなどの生地)であってもよいし、高温の作業場所でかつ部品などの飛散などで危険な場所に用いる仕様として、防護服の材料などであってもよい。熱間鍛造の作業場のように高温かつ危険な場所に用いる仕様の好ましい実施形態として、外布は、防弾チョッキに使用されるアラミド繊維(高強度、高耐熱性、同じ重さの鋼鉄の5倍の強度を持つ)である。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0029】
内布は任意の材料であり得る。例えば、一般生活の衣服に用いられる材料(例えば、ポリエステルなど洋服の裏地や気密性の高いウインドブレーカなどの生地)であってもよい。好ましい実施形態おいて、ポリエステル繊維(例えば、テトロン(登録商標))とその表面に金属材料をコーティングしたものである。
【0030】
このように内布をその構成繊維を金属材料でコーティングした構造とすることで、繊維部分と金属とが一体となる。その結果、作業衣は、折れ曲がり難くなることで作業者が動いたときにしわができにくくなり、作業時の違和感のないものとなる。また、このような作業衣では、繊維部分と金属との一体化により内布の繊維部分の体積(厚み)が縮小することで、繊維部分が縮小した分だけ中空部の体積が広がることとなり、外布と内布との間の中空部での通気性が高まる。さらに、内布の繊維部分に一体化した、樹脂などに比べて熱伝導性の高い金属の存在により、内布での温度分布がより均一になり、内布の複数の排気孔から排気される気体の温度差を少なくすることができる。なお、内布の繊維部分にコーティングする金属は、任意であり得る。例えば、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)であってもよいし、銅(銅合金を含む)、チタン(チタン合金を含む)などの金属でもあってもよい。
【0031】
気体供給装置は、任意の形態であり得る。例えば、工場内に設けられる圧縮空気供給源であってもよいし、冷媒で冷風を発生させる冷媒装置を備えたものであってもよいし、外気を取り入れる換気装置であってもよい。また、気体供給装置は、作業衣と別体の外部装置であってもよいし、作業衣に一体的に取り付けられた装置であってもよい。
【0032】
接続部は、外布と内布との間に形成される中空部と気体供給装置の排出口との接続部であれば、特に限定されるものではなく、接続部は、中空部に気体供給装置の排出口を接続する配管や接手を含むものでもよいし、さらに、供給された気体を暖気と冷気とに分離するボルテックチューブ装置を含むものでもよい。
【0033】
作業衣は、中空部には気体供給装置に接続されたチューブが設けられ、チューブには気体を排出する複数の第2の排気孔が形成されているものでもよい。チューブを設けることにより、単に気体供給装置の排出口と接続された接続部から中空部に気体を排出する場合に比べて、効率的に中空部全体に気体を供給することが可能となる。この場合、接続部には、気体供給装置の排出口をチューブに接続する継手が用いられる。
【0034】
気体供給装置で供給される気体は、人体に悪影響の与えない範囲で任意であり得る。例えば、空気であってもよいし、酸素であってもよいし、炭酸ガスやヘリウムガスなどであってもよい。好ましい実施形態として、工場内に配設される圧縮空気源から供給される空気である。このようにすることで、作業衣の冷却用の気体供給装置を専用に設ける必要がなく、コスト削減を図ることが可能となる。
【0035】
また、気体供給装置から供給される気体は、冷気であってもよいし、常温であってもよい。
【0036】
中空部内に設けられるチューブの配設形状は任意であり得る。例えば、縦方向(上下方向)に往復して延びるジグザグ状、蛇腹状であってもよいし、横方向(左右方向)に往復して延びるジグザグ状、蛇腹状であってもいし、渦巻状であってもよい。1つの好ましい実施形態として、チューブは渦巻状に配置される。チューブをジグザグ、蛇腹状に配置した状態では、チューブが往復して延びる方向に沿ってチューブを折り曲げる場合は、チューブは主にねじれ変形するため、折り曲げやすいが、チューブが往復して延びる方向と交差する方向(典型的には直交する方向)に沿ってチューブを折り曲げる場合は、チューブの変形は折り曲げ変形が支配的となることから、折り曲げにくくなる。従って、作業者Wが動きやすい方向と動きにくい方向とができてしまい、場合によっては、用途に合わせてジグザグ方向や蛇腹状の形状の向きを調整する必要がある。これに対しチューブを渦巻状に配置することで、チューブを折り曲げる場合は、その折り曲げる方向にかかわらず、チューブの変形はねじれ変形が支配的となり、チューブがどの方向にも曲がりやすくなる。このため、作業者の動きに合わせて作業衣が変形しやすく、作業者が動きやすくなる。
【0037】
さらに、チューブは、樹脂製のチューブであってもよいし、金属製パイプからなるチューブであってもよい。好ましくは、人の動きに柔軟に追従可能な樹脂製である。樹脂は任意の材料であり得る。例えば、ポリウレタン、ゴムであるが、これに限定されない。
【0038】
第1の排気孔は、気体供給装置から外布と内布との間に形成された中空部に供給された気体を作業衣の外部に排出するための孔であり、複数設けられる。
【0039】
また、第1の排気孔の直径は任意であり得る。第1の排気孔の直径は大きすぎると、作業衣の内布から排気される気流の流速が遅くなり、気体供給装置からの気体が作業衣内の全体に行き渡りにくくなり、第1の排気孔の直径は小さすぎると、作業衣から気流を排出するのに必要な気圧が高くなる。このため、直径は約0.5mm〜約2.0mmであり、好ましくは、約1.2mmである。
【0040】
また、隣接する第1の排気孔同士の間隔は任意であり得る。この間隔が狭すぎると、作業衣の内布には多くの第1の排気孔が形成されることとなり、気体供給装置から中空部に供給された気体が中空部の先まで到達しにくくなり、中空部の先では十分な冷却効果が得られない恐れもある。一方、この間隔が広すぎると、作業衣から気体が排気される位置が少なくなり、作業衣の内側で気体供給装置からの気体が届かない部分が生じ、部分的にしか冷却されないこととなる。第1の排気孔同士間の間隔は約10mm〜約50mmであり、好ましくは、約20mm〜約40mmである。
【0041】
第1の排気孔の密度も任意であり得る。例えば、作業衣全体にわたり一定の密度であってもよいし、作業衣の部分に応じて密度を変えてもよい。ここで、第1の排気孔の密度は、10cm角当たり0個〜10cm角当たり約100個であり、好ましくは、0個〜約60個、さらに好ましくは、0個〜約30個である。第1の排気孔の密度が小さい部分では、排出される気体量が少ないため冷却能力が低くなり、第1の排気孔の密度を大きい部分では、排出される気体量が大きいため冷却能力が高くなる。好ましい実施形態として、腹部周りの過剰な冷却を避けるために、腹部部分では密度を小さくする。例えば、腹部以外の第1の排気孔の密度が10cm角当たり約5個〜約60個に対して、腹部部分の第1の排気孔の密度は0個〜約40個である。さらに好ましくは、腹部以外の第1の排気孔の密度が10cm角当たり約8個〜約30個に対して、腹部部分の第1の排気孔の密度は0個〜約20個である。
【0042】
また、脇や首部回りなど発汗しやすい部分では密度を大きくするようにしてもよい。
【0043】
第2の排気孔は、気体供給装置に接続された中空部内のチューブに設けられた気体を排出する孔であり、複数設けられる。
【0044】
第2の排気孔の直径や間隔も第1の排気孔同様に任意であり得る。その直径は好ましくは約1.0mm〜約5.0mmであり、さらに好ましくは、約2mm〜約4mmである。また、チューブの延びる方向での間隔は好ましくは約40mm〜約80mmであり、さらに好ましくは、約50mm〜約70mmである。
【0045】
また、チューブの直径は、約5mm〜約20mmであり、さらに好ましくは、約7mm〜約14mmである。
【0046】
さらに、隣接する第2の排気孔の位置関係も特に限定されるものではないが、例えば、チューブの同一断面においては、一対の第2の排気孔が180°の間隔で設けられる。すなわち、チューブの中心を通る外布の内面に垂直な線(内布内面の法線)上に一対の第2の排気孔が位置する。さらに、第2の排気孔は、チューブの軸方向(延びる方向)の隣接する位置では、チューブの断面視(チューブの軸方向に対して垂直な断面)において、内布内面の法線を基準として約30°〜約90°異なる角度に設けられ、好ましくは約45°〜約75°異なる角度に設けられる。
【0047】
例えば、作業衣は、作業者の全体を覆い、さらに、作業者の全体に気体流が当たるように、内布の全体に渡って第1の排気孔を設けてもよいが、内布には、少なくとも、温度の影響を受けやすい上身部のみに気流が当たるように第1の排気孔を設けてもよいし、あるいは、気体を導入する中空部を少なくとも上身部のみに設けてもよい。
【0048】
以下、本発明の好ましい本発明の実施形態について説明する。
【0049】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1による作業衣100を説明するための図であり、
図1(a)は作業者が装着した状態の作業衣を前側から見た構造を示し、
図1(b)は、その状態の作業衣を後側から見た構造を示す。
【0050】
この実施形態1の作業衣100は、
図1に示すように、作業者Wが作業中に身を守るための防護服として着用するものであり、例えば、熱間鍛造作業などのハンマ打撃時の部品の破損、飛散による危険を伴う作業に適したもの(鍛造用の前掛け)である。作業衣100は、作業衣本体101と、作業衣本体101内部の中空部130(
図2参照)と外部の気体供給装置(図示せず)の排出口との接続部102とを有している。
【0051】
図2は、
図1に示す作業衣100をより詳しく説明するための図であり、
図2(a)、
図2(b)はそれぞれ、
図1(a)、
図1(b)に示す作業衣の排気孔(第1の排気孔)121を示す拡大図、
図2(c)は
図2(a)あるいは
図2(b)に示す作業衣の左側を示す図、
図2(d)、
図2(e)はそれぞれ、
図2(a)の2A−2A線断面図、
図2(b)の2B−2B線断面図である。
【0052】
この作業衣100は、
図2に示すように、外布110と内布120とからなる作業衣本体101を有し、作業衣本体101には、外布110と内布120との間に中空部130が形成されている。ここでは、外布110と内布120とは同一の形状を有しており、外布110の周縁部と内布120の周縁部とはシールされている。シールの形態は任意であり得る。実施形態においては、縫い合わされているが、これに限定されず、接着剤などを用いてもよい。ここで、気体は例えば空気であるが、これに限定されず、その他の安全な気体、例えば、炭酸ガスやヘリウムなどでもよい。
【0053】
また、作業衣本体101は、
図2(a)、(b)に示すように、上半身(作業者の腰より上の部分)に対応する上身部101aと、下半身(作業者の腰より下の部分)に対応する下身部101bとを有し、気体が送り込まれるのは、上身部101aに形成されている中空部である。好ましい実施形態において、下身部101bは作業者の腰より下の部分であって、かつ膝部よりも上の部分である。下身部101bを膝部よりも上にすることにより歩行や屈伸などの動作が行いやすくなる。ここでは、下身部101bの中空部と上身部101aの中空部とは線状のシール部(図示せず)により分離されている。シール部は外布110と内布120とを、下身部101bの中空部と上身部101aの中空部との間で気体の流れが遮断されるように接着した部分である。
【0054】
ここで、下身部101bは、作業者Wの前面を覆う部分のみで構成されているが、上身部101aは、作業者Wの前面を覆う前部分11aと、作業者Wの両側面を覆う左右両方の側部11bと、両側面に繋がる背面の一部を覆う背面両側部11cとを含む。
【0055】
さらに、作業衣100は、中空部130と外部の気体供給装置1(
図7参照)の排出口との接続部102を備えている。ここでは、接続部102には、例えば、ボルテックチューブ装置が用いられている。
【0056】
また、ここで、外布の材料としては、防弾チョッキに使用されるアラミド繊維が用いられ、さらに、内布の材料として、ポリエステル繊維にアルミニウム(アルミニウム合金を含む)がコーティングされたものである。このような材料を用いた内布に多数の孔を開け、ボルテックス効果を利用した装置により、気体供給装置からの気体を送ることにより、作業中の作業者Wの安全を確保するとともに、作業者Wの体を冷やして熱中症の予防を行うことができる。
【0057】
図2Aは、
図2に示す作業衣100を外布110と内布120とに分解して示す図であり、
図2A(a)、(b)はそれぞれ、外布110を作業衣の表側、裏側から見た構造を示し、
図2A(d)、(e)はそれぞれ、内布120を作業衣の表側、裏側から見た構造を示し、
図2A(c)、(f)はそれぞれ、
図2A(a)の2A1−2A1線断面図、
図2A(d)の2B1−2B1線断面図である。また、
図3は、
図2(d)のR1部分の構造を拡大して示す断面図である。
【0058】
内布120は作業者Wの体に接触する布地であり、
図2A(d)、(e)および
図3に示すように、気体供給装置から、接続部102を介して中空部130に供給された気体を排出する複数の第1の排気孔121を備える。なお、作業者Wの体に接触しない外布110には、
図2A(a)、(b)、
図3に示すように排気孔は形成されていない。
【0059】
ここでは、内布120は、
図2A(e)に示すように、作業者Wの上半身に対応する上身部120aと、作業者Wの下半身に対応する下身部120bとを有し、第1の排気孔121は、上身部120aにのみ設けられている。また、第1の排気孔121は、ここでは、上述したように直径約0.5mm〜約2.0mmの孔としている。さらに、隣接する第1の排気孔121同士間の間隔は上述したとおり約30mmであって、格子状、千鳥状、円環状、渦巻状のいずれかの形態で配置されている。好ましい実施形態において、
図4に示すように渦巻状に配置される。
【0060】
また、作業衣本体101の上身部101には、
図4に示すように、接続部102に接続されるチューブ140が設けられている。
【0061】
図4は、
図3に示すチューブ140の全体構造を説明するための図であり、
図4(a)は、
図1(a)に示す作業衣内でのチューブ140の配置を示し、
図4(b)は、
図4(a)に示すチューブ140に設けられている排気孔(第2の排気孔)141(d)を拡大して示す図である。
【0062】
チューブ140は、このチューブ140は例えば伸縮自在のチューブであり、作業衣本体101の上身部110aの中空部130内に渦巻状に配置されており、さらに、気体を排出する複数の第2の排気孔141を備えている。ここでは、第2の排気孔141は、直径約2mm〜約4mmであって、チューブ140の同一断面において約180°の間隔で設けられている。約180°の間隔で設けられていることからチューブからの気体の排出が効率よく行われる。また、チューブ140の中心軸に垂直な断面における、外布110の内面に立てた法線に対する位置は、種々の位置を取り得る。
【0063】
図5は、
図4(b)の4A−4A線断面における排気孔141の配置を説明するための図であり、
図5(a)〜
図5(c)は、
図4(b)の4A−4A線断面における排気孔141の異なる配置の例を示している。
【0064】
例えば、第2の排気孔141は、
図5(a)に示すように、チューブ140の中心軸に垂直な断面において、外布110の内面の法線Lv上に配置されていてもよい。また、第2の排気孔141は、
図5(b)に示すように、チューブ140の中心軸に垂直な断面において、外布110の内面に平行な線(外布110の内面の法線Lvに垂直な線)Lh上に配置されていてもよい。さらに、第2の排気孔141は、
図5(c)に示すように、チューブ140の中心軸に垂直な断面において、外布110の内面の法線Lvに対して所定の角度(ここでは60°)をなす線Lt上に配置されていてもよい。
【0065】
図6は、チューブ140の中心軸に垂直な断面における、第2の排気孔のその他の配置を説明するための図であり、
図6(a)、
図6(b)はそれぞれ、
図4(b)の4A−4A線断面、
図4(b)の4B−4B線断面での第2の排気孔の配置を示している。
【0066】
第2の排気孔141は、チューブ140の長さ方向の隣接する位置におけるチューブ140の断面視において約60°異なる角度に設けられている。
【0067】
具体的には、チューブ140の長さ方向にて隣接する位置の一方(
図4(b)の4A−4A線断面)にて、第2の排気孔141が、チューブの中心を通る外布の内面に垂直な線に対して約60°の角度をなす線Lta上に排気孔が位置し、上記隣接する位置の他方(
図4(b)の4B−4B線断面)にて、第2の排気孔141が、チューブ140の中心を通る外布の内面に垂直な線に対して約120°の角度をなす線Ltb上に位置していてもよい。第2の排気孔141をチューブ140の長さ方向の隣接する位置におけるチューブ140の断面視において異なる角度で配置することにより、チューブからより均一に中空部に気体を排出することが可能となる。
【0068】
次に、実施形態1の作業衣100を利用する方法を説明する。
【0069】
この作業衣100を
図1に示すように作業者Wが着用した状態で、
図7に示すようにチューブ140の一端に接続されている接続部(ボルテックチューブ装置)102を、外部からの気体の供給を受けるための着脱ソケット継手30に接続する。着脱ソケット継手30は、コイリングチューブ20および流量調整弁10を介して一次エアーの供給源(例えば、コンプレッサなどの空気供給装置1)の排出口に接続されており、このため、流量調整弁10を調整することにより所望の空気圧の空気流が作業衣100の中空部130にチューブ140を介して導入される。
【0070】
このとき、チューブ140に形成されている複数の第2の排気孔141から作業衣100の中空部130に空気が噴出され、さらに中空部130に吹き出された空気は、内布120に形成されている複数の第1の排気孔121から作業者Wの身体に吹き付けられる。
【0071】
これにより作業者Wが高温の作業環境で作業している間、作業者Wの身体が冷却されることとなり、高温の作業環境においても作業者が快適に作業することを可能とする。
【0072】
このように実施形態1の作業衣100では、外布110と内布120との間に中空部130が形成されており、内布120には、気体供給装置1から中空部130に供給された気体を排出する複数の第1の排気孔121が形成されているので、作業衣100を着用した作業者Wを、気体供給装置1から作業衣100の中空部130に供給された気体が複数の第1の排気孔141から排出されることで冷やすることができる。これにより、高温の作業環境においても作業者が快適に作業することを可能となる。
【0073】
また、この作業衣100では、外布110の材料としては、防弾チョッキに用いられるアラミド繊維素材が用いられているので、作業中に部材の破片が飛来しても作業者Wの体を保護することができる。また、内布120の材料としては、ポリエステル繊維(テトロン(登録商標))の表面にアルミニウム(アルミニウム合金を含む)をコーティングしたものが用いられているので、作業者Wの汗が内布に浸み込みにくく、中空部の冷気が逃げにくい構造となっている。さらに、作業者Wにおける外布110および内布120の2枚重ね構造は、作業者Wの体温の保温対策にもなっている。
【0074】
さらに、この作業衣100は、作業者Wの前面を覆う下身部101bと、作業者Wの前面、両側面および背面の一部を覆う上身部101aとを含むので、作業者Wの前面を膝から肩までに跨って、作業者Wの両側面を少なくとも腰から肩までに跨って保護することができる。
【0075】
また、作業衣100の中空部130には気体供給装置1に接続されたチューブ140が設けられ、チューブ140には空気を排出する複数の第2の排気孔141が形成されている。このようなチューブ140を設けることにより、単に気体供給装置1の排出口と接続された接続部102から中空部130に空気を排出する場合に比べて、気体を均等に分散して効率的に中空部130全体に空気を供給することが可能となる。
【0076】
チューブ140は渦巻状に配置されることで、チューブ140がどの方向にも曲がりやすくなる。このため、作業者Wの動きに合わせて作業衣100が変形しやすく、作業者Wが動きやすくなる。
【0077】
さらに、作業衣の接続部はボルティク効果を利用したボルテックチューブ装置を含むので、作業衣100にはボルテックチューブ装置からの冷風が送り込まれることとなり、作業者の体を効果的に冷やすことができる。
【0078】
具体的には、空気供給装置からの空気が流量調整弁10を通り、コイルリングチューブ20よりボルテックチューブ装置102に入り、そこで作られた冷却空気が作業衣100内のポリウレタンチューブ140を介して中空部130に送り込まれ、作業衣100の内布120の孔121より吐出することで、作業者Wの体を冷やす。その結果、冷却空気の調整は、流量調整弁10により行うことでベストな温度を設定することができる。
【0079】
また、鍛造機の傍には金型冷却用、離型剤吹用などの空気の発生源があるので、鍛造が行われる作業環境では、空気を確保するための工事には手間がかからない。さらに、コイルリングチューブ20は、伸縮自在のチューブであるので、作業動作の負担にならず、自由性が損なわれない。
【0080】
さらに、この作業衣は鍛造作業で用いる場合に限定されず、溶接作業や鋳造作業、ガラス細工などの高温の環境で行われる作業に用いることができる。
【0081】
(実施形態2)
実施形態1では、作業衣100の中空部130に配置されるチューブ140は渦巻状に配置されているが、チューブ140は縦方向や横方向に延びるジグザグ状又は蛇腹状に配置されていてもよい。さらに、実施形態1では、内布120の上身部120aには全体に渡って第1の排気孔121を設けているが、第1の排気孔121は内布120の上身部120aにおいて部分的に設けてもよい。
【0082】
以下実施形態2として、中空部にはチューブをジグザグに配置し、第1の排気孔121は、内布のうちの身体の腹部に相当する部分を避けて設けた作業衣200を具体的に説明する。
【0083】
図8は、本発明の実施形態2による作業衣200を説明するための図であり、
図8(a)、
図8(b)はそれぞれ、実施形態2の作業衣の排気孔(第1の排気孔)221を示す図、
図8(c)は
図8(a)あるいは
図8(b)に示す作業衣の左側を示す図、
図8(d)、
図8(e)はそれぞれ、
図8(a)の8A−8A線断面図、
図8(b)の8B−8B線断面図である。
【0084】
この作業衣200は、
図8に示すように、外布210と内布220とからなる作業衣本体201を有し、作業衣本体201には、外布210と内布220との間に中空部230が形成されている。また、この作業衣200は、実施形態1の作業衣100と同様、上身部201aと下身部201bとを有し、空気が送り込まれるのは、上身部201aに形成されている中空部230である。
【0085】
この実施形態2の作業衣200は、実施形態1の作業衣100とは以下の点で異なる。
【0086】
図8Aは、
図8に示す作業衣200を外布210と内布220とに分解して示す図であり、
図8A(a)、(b)はそれぞれ、外布210を作業衣の表側、裏側から見た構造を示し、
図8A(d)、(e)はそれぞれ、内布220を作業衣の表側、裏側から見た構造を示し、
図8A(c)、(f)はそれぞれ、
図8A(a)の8A1−8A1線断面図、
図8A(d)の8B1−8B1線断面図である。
【0087】
内布220は、
図8A(e)に示すように、作業者Wの上半身に対応する上身部201aと、作業者Wの下半身に対応する下身部201bとを有し、第1の排気孔221は、上身部220aにのみ設けられている。また、下身部201bは、作業者Wの前面を覆う部分のみで構成されているが、上身部201aは、作業者Wの前面を覆う前部分21aと、作業者Wの両側面を覆う左右両方の側部21bと、両側面に繋がる背面の一部を覆う背面両側部21cとを含む。これらの点は、実施形態1のものと同一である。
【0088】
ただし、この実施形態2の作業衣200では、内布220には、胸部に対応する胸部対応部20a1と腹部に対応する腹部対応部20a2とのうちの腹部対応部20a2を除いて第1の排気孔221が形成されている点で実施形態1の作業衣100とは異なっている。
【0089】
図9は、
図8に示される実施形態2の作業衣200に用いられるチューブ240の構造を説明するための図であり、
図9(a)は、
図8(a)に示す作業衣内でのチューブ240の配置を示し、
図9(b)は、
図9(a)に示すチューブ240に設けられている排気孔(第2の排気孔)241を示す断面図である。
【0090】
また、この実施形態2の作業衣200では、作業衣本体201の上身部201aには、
図9に示すように、接続部102に接続されるチューブ240が設けられているが、チューブ240は、上身部201aの中空部230内でジグザグ状、蛇腹状に配置されている点で実施形態1の作業衣100とは異なっている。
【0091】
そして、実施形態2の作業衣200のその他の構成は実施形態1の作業衣100と同一である。
【0092】
図10は、
図8〜
図9で説明した実施形態2の作業衣200の利用方法を説明するための図である。
【0093】
この作業衣200も実施形態1の作業衣100と同様、
図1に示すように作業者Wが着用した状態で、
図10に示すように、チューブ240の一端に接続されている接続部(ボルテックチューブ装置)102を、外部からの気体の供給を受けるための着脱ソケット継手30に接続し、流量調整弁10を調整することで、所望の空気圧の空気流が作業衣200の中空部230にチューブ240を介して導入される。
【0094】
このとき、この作業衣200では、作業衣の中空部230に供給された気体が複数の第1の排気孔221から排出されるが、作業衣200の内布220の腹部に対応する腹部対応部20a2には第1の排気孔221が設けられていないので、作業者Wの腹部が空気流により過度に冷やされるのを回避することができ、作業者Wの健康状態を考慮した冷却を行うことができる。
【0095】
このような構成の実施形態2の作業衣200では、内布220の上身部220aには、腹部に相当する部分20a2を除いて、中空部230から空気を排出するための第1の排気孔221が設けられているので、作業者の腹部が冷却されるのを回避して作業者の体調悪化を事前に回避することができる効果が得られる。
【0096】
図8、10に示す実施形態においては、腹部対応部20a2に第1の排気孔221を設けない場合について示したが、本発明はこれに限定されない。腹部対応部20a2に設ける第1の排気孔221の密度を、胸部対応部20a1に設けられる第1の排気孔221の密度よりも小さい密度で配置する場合であってもよい。
【0097】
(実施形態3)
この実施形態2の作業衣200ように、内布220の上身部220aの一部にのみ第1の排気孔221を設ける構成は、実施形態1の作業衣100に適用することが可能である。
【0098】
図11は、このような実施形態の作業衣300を説明するための図であり、実施形態3の作業衣300の利用方法を示している。
【0099】
この実施形態3の作業衣300は、実施形態1の作業衣100における作業衣本体101に代えて、実施形態2の作業衣200の作業衣本体201と同じ構造の作業衣本体301を備えたものである。
【0100】
従って、この実施形態3の作業衣本体301を構成する内布には、実施形態2の作業衣本体201を構成する内布220と同様、腹部に相当する部分30a2を除いて、中空部から空気を排出するための第1の排気孔221が設けられている。
【0101】
このような構成の実施形態3の作業衣300では、実施形態1の作業衣100の特有の効果、つまり、作業衣を着用した作業者が動きやすいという効果に加えて、実施形態2の作業衣200の効果、つまり、作業者の腹部が過度に冷されるのを回避して作業者の体調悪化を事前に回避することができる効果が得られる。
【0102】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。