【解決手段】トンネルTの延伸方向に伸縮するように配され、一端が、掘削機本体10の内部に固定され、他端が、既設のセグメントSを押圧することでトンネル掘削機1を前進させることを可能とする、推進ジャッキ20と、掘削機本体10に発生する振動を計測する振動計測器22と、推進ジャッキ20に対し、トンネル掘削機1を前進させるための伸縮制御を行うとともに、振動計測器22の計測結果に基づき、掘削機本体10に発生する振動の位相に対して逆位相となる逆位相振動を出力する伸縮制御を行う制御装置21とを備える。
筒状の掘削機本体と、前記掘削機本体の前端において地盤を掘削するカッタヘッドと、前記掘削機本体の後方において、掘削されたトンネルの内壁面に沿って覆工部材を組立可能とするエレクタ装置とを備えるトンネル掘削機であって、
一端が、前記掘削機本体及び当該掘削機本体に固定された部材のうち、任意の位置に固定され、他端が既設の前記覆工部材を押圧可能とする、伸縮可能な推進ジャッキと、
前記掘削機本体に発生する振動を計測する計測手段と、
前記推進ジャッキに対し、前記掘削機本体を前進させる伸縮制御を行うとともに、前記計測手段の計測結果に基づき、前記掘削機本体に発生する振動の位相に対して逆位相となる逆位相振動を出力する伸縮制御を行う制御手段とを備える
ことを特徴とするトンネル掘削機。
筒状の掘削機本体と、前記掘削機本体の前端において地盤を掘削するカッタヘッドと、前記掘削機本体の後方において、掘削されたトンネルの内壁面に沿って覆工部材を組立可能とするエレクタ装置とを備えるトンネル掘削機であって、
一端が既設の前記覆工部材を押圧可能とする、伸縮可能な推進用ジャッキ、及び、一端が、前記掘削機本体及び当該掘削機本体に固定された部材のうち、任意の位置に固定され、他端が当該推進用ジャッキの他端に固定される、伸縮可能な制振用ジャッキをそれぞれ備える、ジャッキ装置と、
前記掘削機本体に発生する振動を計測する計測手段と、
前記推進用ジャッキに対し、前記掘削機本体を前進させる伸縮制御を行うとともに、前記制振用ジャッキに対し、前記計測手段の計測結果に基づき、前記掘削機本体に発生する振動の位相に対して逆位相となる逆位相振動を出力する伸縮制御を行う制御手段とを備える
ことを特徴とするトンネル掘削機。
筒状の掘削機本体と、前記掘削機本体の前端において地盤を掘削するカッタヘッドと、前記掘削機本体の後方において、掘削されたトンネルの内壁面に沿って覆工部材を組立可能とするエレクタ装置とを備えるトンネル掘削機を用いたトンネル掘削方法であって、
前記トンネル掘削機は、さらに、一端が、前記掘削機本体及び当該掘削機本体に固定された部材のうち、任意の位置に固定され、他端が既設の前記覆工部材を押圧可能とする、伸縮可能な推進ジャッキを備えるものであり、
前記推進ジャッキに対し、前記掘削機本体を前進させる伸縮制御を行うとともに、前記掘削機本体に発生する振動を計測し、当該振動の位相に対して逆位相となる逆位相振動を出力するように伸縮制御を行う
ことを特徴とするトンネル掘削方法。
筒状の掘削機本体と、前記掘削機本体の前端において地盤を掘削するカッタヘッドと、前記掘削機本体の後方において、掘削されたトンネルの内壁面に沿って覆工部材を組立可能とするエレクタ装置とを備えるトンネル掘削機を用いたトンネル掘削方法であって、
前記トンネル掘削機は、さらに、一端が既設の前記覆工部材を押圧可能とする、伸縮可能な推進用ジャッキ、及び、一端が、前記掘削機本体及び当該掘削機本体に固定された部材のうち、任意の位置に固定され、他端が当該推進用ジャッキの他端に固定される、伸縮可能な制振用ジャッキをそれぞれ備える、ジャッキ装置を備えるものであり、
前記推進用ジャッキに対し、前記掘削機本体を前進させる伸縮制御を行うとともに、前記掘削機本体に発生する振動を計測し、前記制振用ジャッキに対し、当該振動の位相に対して逆位相となる逆位相振動を出力するように伸縮制御を行う
ことを特徴とするトンネル掘削方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のようなトンネル掘削機においては、加振器の設置面と、加振器が逆位相振動を与える面とが同じになっているため、加振器が逆位相振動を出力しても、その振動によって加振器自体が振れてしまうことになり、出力した逆位相振動をカッタヘッドや掘削機本体に対して適切に伝達させることができず、発生した振動を十分に抑制させることができないおそれがある。
【0007】
そこで、上記特許文献2には、掘削時にカッタヘッドに発生した振動を、両端が固定された制振ジャッキを用いて抑制することにより、周辺地域への振動被害を防止するトンネル掘削機が開示されている。
【0008】
しかしながら、上記特許文献2においては、掘削機本体の外周に沿って設けられた方向制御ジャッキを制振ジャッキとして併用しており、この方向制御ジャッキ兼制振ジャッキは、掘削機本体の軸方向における前胴と後胴との境に設けられているため、そもそも掘削機本体が前胴と後胴に分かれていない構造のトンネル掘削機においては、上記特許文献2の技術は適用することができない。
【0009】
上記技術的課題に鑑み、本発明は、掘削機本体の構造に依らず、確実に制振を行うことができるトンネル掘削機及びトンネル掘削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための第1の発明に係るトンネル掘削機は、
筒状の掘削機本体と、前記掘削機本体の前端において地盤を掘削するカッタヘッドと、前記掘削機本体の後方において、掘削されたトンネルの内壁面に沿って覆工部材を組立可能とするエレクタ装置とを備えるトンネル掘削機であって、
一端が、前記掘削機本体及び当該掘削機本体に固定された部材のうち、任意の位置に固定され、他端が既設の前記覆工部材を押圧可能とする、伸縮可能な推進ジャッキと、
前記掘削機本体に発生する振動を計測する計測手段と、
前記推進ジャッキに対し、前記掘削機本体を前進させる伸縮制御を行うとともに、前記計測手段の計測結果に基づき、前記掘削機本体に発生する振動の位相に対して逆位相となる逆位相振動を出力する伸縮制御を行う制御手段とを備える
ことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するための第2の発明に係るトンネル掘削機は、
上記第1の発明に係るトンネル掘削機において、
前記推進ジャッキは、複数であり、所定数ずつの複数のグループに分けられ、
前記計測手段は、前記グループに対応する位置に、それぞれ設けられ、
前記制御手段は、前記計測手段の計測結果に基づき、前記グループごとに前記推進ジャッキの制御を行う
ことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するための第3の発明に係るトンネル掘削機は、
筒状の掘削機本体と、前記掘削機本体の前端において地盤を掘削するカッタヘッドと、前記掘削機本体の後方において、掘削されたトンネルの内壁面に沿って覆工部材を組立可能とするエレクタ装置とを備えるトンネル掘削機であって、
一端が既設の前記覆工部材を押圧可能とする、伸縮可能な推進用ジャッキ、及び、一端が、前記掘削機本体及び当該掘削機本体に固定された部材のうち、任意の位置に固定され、他端が当該推進用ジャッキの他端に固定される、伸縮可能な制振用ジャッキをそれぞれ備える、ジャッキ装置と、
前記掘削機本体に発生する振動を計測する計測手段と、
前記推進用ジャッキに対し、前記掘削機本体を前進させる伸縮制御を行うとともに、前記制振用ジャッキに対し、前記計測手段の計測結果に基づき、前記掘削機本体に発生する振動の位相に対して逆位相となる逆位相振動を出力する伸縮制御を行う制御手段とを備える
ことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するための第4の発明に係るトンネル掘削機は、
上記第3の発明に係るトンネル掘削機において、
前記ジャッキ装置は、複数であり、所定数ずつの複数のグループに分けられ、
前記計測手段は、前記グループに対応する位置に、それぞれ設けられ、
前記制御手段は、前記計測手段の計測結果に基づき、前記グループごとに前記制振用ジャッキの制御を行う
ことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するための第5の発明に係るトンネル掘削方法は、
筒状の掘削機本体と、前記掘削機本体の前端において地盤を掘削するカッタヘッドと、前記掘削機本体の後方において、掘削されたトンネルの内壁面に沿って覆工部材を組立可能とするエレクタ装置とを備えるトンネル掘削機を用いたトンネル掘削方法であって、
前記トンネル掘削機は、さらに、一端が、前記掘削機本体及び当該掘削機本体に固定された部材のうち、任意の位置に固定され、他端が既設の前記覆工部材を押圧可能とする、伸縮可能な推進ジャッキを備えるものであり、
前記推進ジャッキに対し、前記掘削機本体を前進させる伸縮制御を行うとともに、前記掘削機本体に発生する振動を計測し、当該振動の位相に対して逆位相となる逆位相振動を出力するように伸縮制御を行う
ことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するための第6の発明に係るトンネル掘削方方法は、
筒状の掘削機本体と、前記掘削機本体の前端において地盤を掘削するカッタヘッドと、前記掘削機本体の後方において、掘削されたトンネルの内壁面に沿って覆工部材を組立可能とするエレクタ装置とを備えるトンネル掘削機を用いたトンネル掘削方法であって、
前記トンネル掘削機は、さらに、一端が既設の前記覆工部材を押圧可能とする、伸縮可能な推進用ジャッキ、及び、一端が、前記掘削機本体及び当該掘削機本体に固定された部材のうち、任意の位置に固定され、他端が当該推進用ジャッキの他端に固定される、伸縮可能な制振用ジャッキをそれぞれ備える、ジャッキ装置を備えるものであり、
前記推進用ジャッキに対し、前記掘削機本体を前進させる伸縮制御を行うとともに、前記掘削機本体に発生する振動を計測し、前記制振用ジャッキに対し、当該振動の位相に対して逆位相となる逆位相振動を出力するように伸縮制御を行う
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るトンネル掘削機及びトンネル掘削方法によれば、掘削機本体の構造に依らず、確実に制振を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るトンネル掘削機及びトンネル掘削方法について、実施例にて図面を用いて説明する。なお、下記実施例中の「前」及び「後」との表現は、トンネル延伸方向においてトンネル掘削機の向きを基準とした「前」及び「後」を示すものとする。
【0019】
[実施例1]
図1は、本実施例に係るトンネル掘削機(トンネル掘削機1)を説明する概略断面矢視図である。
図1に示すように、トンネル掘削機1は、主に、円筒状の掘削機本体10、及び、円盤状のカッタヘッド11を備えている。
【0020】
カッタヘッド11は、円筒状の掘削機本体10の前端に設けられている。また、カッタヘッド11の中心部にはカッタ回転軸11aの前端が嵌入されている。
【0021】
掘削機本体10の内周面10aには、カッタヘッド11よりも後方側において隔壁12が配されている。隔壁12の中心部にはカッタ回転軸11aが、その外周側には、連結部材11bが、ともに回転可能に支持されており、隔壁12の後面には、カッタ旋回用モータ13が設けられている。
【0022】
このカッタ旋回用モータ13を駆動させることにより、図示しないギヤ機構及び連結部材11bを介して、カッタヘッド11を、カッタ回転軸11aを中心として回転させ、地盤(切羽)を掘削することができる。
【0023】
カッタヘッド11と隔壁12との間には、チャンバ14が区画形成されている。チャンバ14は、掘削土砂を一時的に蓄えるための空間(室)となっており、チャンバ14内には、カッタヘッド11による地盤掘削に伴って発生する掘削土砂が取り込まれる。
【0024】
また、掘削機本体10の内部には、スクリューコンベヤ15が設けられている。このスクリューコンベヤ15は、前端の開口部が、隔壁12の(鉛直方向における)下方位置を貫通してチャンバ14内に挿入されており、後方側に向かうに従い(鉛直方向上方における)位置するように傾斜して配置されている。
【0025】
これにより、スクリューコンベヤ15を駆動させることで、チャンバ14内に蓄えられた掘削土砂を掘削機本体10の後方に向けて排出することができる。
【0026】
さらに、掘削機本体10の隔壁12よりも後方側には、掘削機本体10の内周面10aに、例えば略井桁状に配されるビーム18が設けられている。
【0027】
ビーム18の後面には、エレクタ装置19が掘削機本体10の軸方向、径方向、及び周方向(すなわちトンネル延伸方向、径方向、及び周方向)に移動可能に支持されている。このエレクタ装置19は、覆工部材としてのセグメントSを把持可能となっており、その把持したセグメントSをトンネルTの内壁面(坑壁)に沿って組立可能となっている。
【0028】
セグメントSは、掘削されたトンネルTの内壁面に対応する形状の環片となっている。従って、エレクタ装置19を駆動させることにより、複数のセグメントSをトンネル周方向に沿ってリング状に組み立てることができる。
【0029】
また、掘削機本体10には、複数の推進ジャッキ20が、内周面10aに沿って、かつ、その周方向において所定の間隔で、並設されている。そして、これらの推進ジャッキ20は、後述の制御装置21によって動作制御が行われる。
【0030】
さらに、掘削機本体10は、その内周面10aから径方向内側に突出しつつ、隔壁12に対し後方側から固定される円環状部材23を有しており、推進ジャッキ20の前端は、この円環状部材23の後面に固定されている。さらに、推進ジャッキ20の後端は、既設(エレクタ装置19によって既に設置済み)のセグメントSを押圧可能である。
【0031】
このうち、推進ジャッキ20の後端側については、駆動ロッド20bをトンネル延伸方向に伸縮可能としており、駆動ロッド20bの先端には、スプレッダ20aが装着されている。このスプレッダ20aは、既設のセグメントSにおける前端面と対向している。
【0032】
したがって、推進ジャッキ20の駆動ロッド20bを、後方側に向けて伸長して、スプレッダ20aを既設のセグメントSに押圧させることにより、円環状部材23を介して掘削機本体10に推進反力を与えることができる。すなわち、掘削機本体10は、推進ジャッキ20がセグメントSを押圧したときに発生する推進反力によって、前進可能となっている。
【0033】
また、推進ジャッキ20は、駆動ロッド20bを小刻みに繰り返し伸縮させることにより、振動を発生させることができる。この推進ジャッキ20の微伸縮によって発生された振動は、地盤の掘削に伴ってカッタヘッド11に発生した振動の位相と逆位相となる逆位相振動となっている。
【0034】
既に説明したように、円環状部材23は掘削機本体10の内周面10aに固定されているため、掘削機本体10に発生した振動に対して、推進ジャッキ20による逆位相振動が干渉し、その振動を抑制することができる。また、推進ジャッキ20は、その後端がセグメントSを押圧した状態で、上記逆位相振動を発生させるため、特許文献1に開示された技術に比べ、より効果的な振動抑制が可能となる。また、特許文献2に開示された技術では、掘削機本体が前胴と後胴に分かれている構造のみに適用できるものであったが、本実施例は、掘削機本体が前胴と後胴に分かれていない構造に適用することができる。
【0035】
そして、推進ジャッキ20の推進反力の発生と逆位相振動の発生とは、同時に行われる。すなわち、逆位相振動は微少なストロークであり、ストロークが大きく滑らかで連続的な動きである推進反力の動きを阻害するものではないため、両者を同時に発生させることができる。
【0036】
ただし、推進ジャッキ20は、掘削機本体10に対し推進反力及び逆位相振動を伝達可能であれば良いため、円環状部材23に限らず、掘削機本体10及び掘削機本体10に固定される部材のうち、任意の位置に固定されるようにすればよい。
【0037】
また、円環状部材23には振動計測器(計測手段)22が配されている。振動計測器22は、掘削機本体10に発生する振動(波形、周期、及び振幅)を計測するものである。
【0038】
ただし、振動計測器22は、上記位置に限らず、掘削機本体10に発生する振動を計測することができればどこでもよい。あるいは振動計測器22は、円環状部材23における各推進ジャッキ20の前端の固定位置に対応する位置に、それぞれ設けるようにしてもよい。
【0039】
また、掘削機本体10内には、制御装置(制御手段)21が設けられている。この制御装置21は、推進ジャッキ20に対して油圧を給排するためのサーボ弁と、振動計測器22とに電気的に接続されている。
【0040】
そして、制御装置21は、上記サーボ弁の弁開度を制御することで、推進ジャッキ20に対し、掘削機本体10を(セグメントSを押圧することによる推進反力によって)前進させるための伸縮制御を行うとともに、振動計測器22の計測結果に基づき、掘削機本体10に発生した振動の逆位相振動を算出し、当該逆位相振動を出力する伸縮制御を行う。
【0041】
このうち逆位相振動の出力については、制御装置21は、各振動計測器22によって計測された振動が入力されると、それらの振動を解析して、掘削機本体10に発生した振動の主体となる振動モードを特定した後、その振動モードに応じた逆位相振動の制御信号を、各推進ジャッキ20の上記サーボ弁に入力するようになっている。
なお、制御装置21は、上記サーボ弁の弁開度を制御することで、推進ジャッキ20に対し、掘削機本体10を前進させるための伸縮制御を行うとともに、掘削機本体10に発生した振動の逆位相振動を算出し、当該逆位相振動を出力する伸縮制御を行うとしたが、前進させるための伸縮制御は制御における油量は大油量であるがその変動が少なく、逆位相振動を出力する伸縮制御は制御における油量は小油量であるが変動が激しいという、顕著に違う特徴があるため、前者を通常マシンと同様の油圧制御バルブで分担し、後者を上記サーボ弁で分担し、両者を合流(合成)させることで推進ジャッキ20の制御を行ってもよい。
【0042】
なお、制御装置21が逆位相振動を出力する対象は、全ての推進ジャッキ20であっても一部の推進ジャッキ20であってもよい。また、振動計測器22は、制御装置21が逆位相振動を出力する対象の推進ジャッキ20に対応する位置に配置されるので、必ずしも全ての推進ジャッキ20に対応して配置されるものとは限らない。
【0043】
実際に掘削機本体10に発生する振動モードとしては、主としてトンネル延伸方向の振動があり、加えて、トンネル径方向(鉛直方向と水平方向)の振動も発生する。制御装置21においては、複数の推進ジャッキ20に対して、全て一括して制御するようにしても良いが、全ての推進ジャッキ20を(周方向に)所定数ずつの複数のグループに分け、振動計測器22の計測結果に基づき、このグループごとに(逆位相振動を)制御するようにしてもよい。
【0044】
以上より、トンネル掘削機1によってトンネル構造体を施工する場合には、先ず、カッタヘッド11を回転させながら、複数の推進ジャッキ20を伸長させて既設のセグメントSに押し付ける。これにより、掘削機本体10がその既設のセグメントSから推進反力を得て前進すると共に、回転するカッタヘッド11により、トンネルTが掘削される。
【0045】
このとき、地盤掘削によって発生した掘削土砂は、カッタヘッド11の掘削土砂取込口を介して、チャンバ14内に充填されることになり、そのチャンバ14は、充填された掘削土砂によって、所定の内圧に維持される。そして、チャンバ14内に充填された掘削土砂は、スクリューコンベヤ15の回転によって後方側に向けて排出される。
【0046】
これと同時に、短縮した推進ジャッキ20の後方側においては、エレクタ装置19の駆動によって、これに保持されたセグメントSが、トンネルTの内壁面に沿って、リング状に順次組み立てられる。
【0047】
すなわち、カッタヘッド11の掘削による掘削量に見合う土砂量を、スクリューコンベヤ15によって円滑に排出して、チャンバ14内を常に掘削土砂によって充満させることにより、切羽の安定化を図りつつ、トンネルTを掘削するとともに、制御装置21の制御による推進ジャッキ20の伸長によって、既設のセグメントSから推進反力を取って掘進しながら、短縮させた推進ジャッキ20の後方側において、新たなセグメントSを組み立てる。
【0048】
また同時に、振動計測器22によって掘削機本体10の振動が計測されると、計測された振動の大きさに応じた逆位相振動が発生するように、制御装置21が推進ジャッキ20の伸縮を制御する。
【0049】
すなわち、制御装置21は、推進ジャッキ20に対し、概略的にはトンネル掘削機1を推進するために伸長させつつ、委細には掘削機本体10に発生する振動に対する逆位相振動を発生させるように微伸縮させる制御を行う。
【0050】
そして、推進ジャッキ20によって出力された逆位相振動は、掘削機本体10に伝達されることにより、掘削機本体10に発生した元の振動と干渉し、当該振動を減少させる。
【0051】
またこのとき、掘削機本体10に発生する振動モードに応じて、周方向に区分けされたグループごとに、推進ジャッキ20の伸縮を制御することで、掘削機本体10に発生する振動は逆位相振動によって十分に抑制されることになる。
【0052】
[実施例2]
本実施例は、実施例1のうち、推進ジャッキ20を後述するジャッキ装置30に、制御装置21を後述する制御装置31に、それぞれ変更したものである。以下では、実施例1と異なる部分を中心に説明し、重複部分は極力省略する。
【0053】
図2の拡大断面矢視図に示すように、本実施例におけるジャッキ装置(ジャッキ装置30)は、主たる構成として、推進用ジャッキ32及び制振用ジャッキ33を備えており、これら推進用ジャッキ32及び制振用ジャッキ33は、制御装置(制御手段)31によって、その伸縮が制御される。なお、ジャッキ装置30の設置箇所については、実施例1の推進ジャッキ20と同様である。
【0054】
推進用ジャッキ32は、前端面が制振用ジャッキ33の後端面に固定されており、後端側は既設のセグメントS(
図1参照)を押圧可能となっている。
【0055】
推進用ジャッキ32の後端側については、駆動ロッド32bをトンネル延伸方向に伸縮可能としており、駆動ロッド32bの先端には、スプレッダ32aが装着されている。このスプレッダ32aは、既設のセグメントSにおける前端面と対向している。
【0056】
制振用ジャッキ33は、後端面が上述のごとく推進用ジャッキ32の前端面と固定されており、前端面は円環状部材23の後面に固定されている。
【0057】
制振用ジャッキ33の前端側については、駆動ロッド33bをトンネル延伸方向に微伸縮可能としており、駆動ロッド33bの先端にはスプレッダ33aが装着されている。そして、このスプレッダ33aが円環状部材23の後面に固定されている。
【0058】
ただし、
図3に示すように、制振用ジャッキ33は、前後逆に配置してもよい。
【0059】
ジャッキ装置30は、推進用ジャッキ32及び制振用ジャッキ33を上記構成とすることで、まず推進用ジャッキ32が、駆動ロッド32bを後方側に向けて伸長して、スプレッダ32aを既設のセグメントSに押圧させることにより、制振用ジャッキ33及び円環状部材23を介して、掘削機本体10に推進反力を与えることができる。すなわち、掘削機本体10は、推進用ジャッキ32がセグメントSを押圧したときに発生する推進反力によって、前進可能となる。
【0060】
また、制振用ジャッキ33は、駆動ロッド33bを小刻みに繰り返し伸縮させることにより、振動を発生させることができる。この制振用ジャッキ33の微伸縮によって発生された振動は、地盤の掘削に伴ってカッタヘッド11に発生した振動の位相と逆位相となる逆位相振動となっている。
【0061】
そして、推進用ジャッキ32による推進反力の発生と、制振用ジャッキ33による逆位相振動の発生とは、後述の制御装置31の制御によって、同時に行われる。
【0062】
また、推進ジャッキ装置30は、実施例1同様、円環状部材23に限らず、掘削機本体10及び掘削機本体10に固定される部材のうち、任意の位置に固定されるようにすればよい。
【0063】
また、掘削機本体10内には、制御装置(制御手段)31が設けられている。この制御装置31は、推進用ジャッキ32に対して油圧を給排するための油圧制御バルブ、制振用ジャッキ33に対して油圧を給排するためのサーボ弁、及び、振動計測器22に、それぞれ電気的に接続されている。
【0064】
そして、制御装置31は、上記油圧制御バルブを制御することで、推進用ジャッキ32に対し、掘削機本体10を(推進反力により)前進させるためのセグメントSへの押圧動作の制御を行うとともに、振動計測器22の計測結果に基づき、掘削機本体10に発生した振動の逆位相振動を算出し、上記サーボ弁の弁開度を制御することで、制振用ジャッキ33に対し、当該逆位相振動を出力するように制御を行う。
【0065】
また、制御装置31は、実施例1同様、複数のジャッキ装置30に対して、全て一括して上記制御するようにしても良いが、全てのジャッキ装置30を(周方向に)所定数ずつの複数のグループに分け、また、振動計測器22も各グループのジャッキ装置30に対応する位置及び個数を設け、振動計測器22の計測結果に基づき、グループごとにジャッキ装置30の逆位相振動を制御するようにしてもよい。
【0066】
なお、実施例1と同様に、制御装置31が逆位相振動を出力する対象は、全てのジャッキ装置30であっても一部のジャッキ装置30であってもよい。また、振動計測器22は、制御装置21が逆位相振動を出力する対象の推進ジャッキ20に対応する位置に配置されるので、必ずしも全ての推進ジャッキ20に対応して配置されるものとは限らない。
【0067】
換言すれば、制振用ジャッキ33の装備数を推進用ジャッキ32の装備数よりも少なくしてもよく、振動計測器22は制振用ジャッキ33に対応して設けられる。制振用ジャッキ33が取り付けられていない推進用ジャッキ32は、その前端面が、円環状部材23に固定されることになる。
【0068】
このようにして本実施例では、実施例1同様、掘削機本体10に発生した振動を抑制することができる。
【0069】
[実施例3]
本実施例に係るトンネル掘削機は、実施例2のうち、ジャッキ装置30を後述するジャッキ装置40に、制御装置31を後述する制御装置41に、それぞれ変更したものである。以下では、実施例2と異なる部分を中心に説明し、重複部分は極力省略する。
【0070】
図4の拡大断面矢視図に示すように、本実施例におけるジャッキ装置(ジャッキ装置40)は、主たる構成として、推進用ジャッキ42及び制振用ジャッキ43を備えており、これら推進用ジャッキ42及び制振用ジャッキ43は、振動計測器(計測手段)22の計測結果に基づき、制御装置(制御手段)41によって、その伸縮が制御される。なお、推進用ジャッキ42は実施例2の推進用ジャッキ32と同様のものである。振動計測器22は、
図4に示すように、ジャッキ装置40の固定位置からそれほど遠くない位置に設置されている。
【0071】
制振用ジャッキ43は、中空形状の駆動ロッド43bの内周面43baが、推進用ジャッキ42におけるシリンダ部42cの外周面42caに固定されている。また、駆動ロッド43bの外周面には、径方向に突起した凸部43bbが制振用ジャッキ43のピストン部として形成されている。つまり、推進用ジャッキ42の外周面42caが推進用ジャッキ42の他端となり、制振用ジャッキ43の内周面43baが制振用ジャッキ43の他端となっている(請求項3,4,6)。
【0072】
また、制振用ジャッキ43のシリンダ部43cは、駆動ロッド43bの外周に配されており、その後端側に形成されたフランジ部43caがビーム18の後面に固定されている。つまり、フランジ部43caが制振用ジャッキ43の一端となっている(請求項3,4,6)。
【0073】
これにより、駆動ロッド43bは、トンネル延伸方向に移動することが可能となり、またその移動範囲が凸部43bbによって制限されることになる。
【0074】
ジャッキ装置40は、推進用ジャッキ42及び制振用ジャッキ43を上記構成とすることで、まず推進用ジャッキ42が、駆動ロッド42bを後方側に向けて伸長して、スプレッダ42aを既設のセグメントSに押圧させることにより、制振用ジャッキ43及びビーム18を介して、掘削機本体10に推進反力を与えることができる。すなわち、掘削機本体10は、推進用ジャッキ42がセグメントSを押圧したときに発生する推進反力によって、前進可能となる。また、制振用ジャッキ43は、駆動ロッド43bを小刻みに繰り返し伸縮させることにより、振動を発生させることができる。
【0075】
なお、本実施例は、例えば上記特許文献2に開示されるような、掘削機本体が前胴と後胴に分かれているような構造に対しても、後胴側にジャッキ装置40を取り付けることで、適用可能となる。