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特開2020-193622二元燃料船舶用燃焼エンジン、燃焼において過早点火を制御するための方法、低圧式二元燃料燃焼エンジンのための後付けキット、燃焼室への不活性ガスの導入を制御するためのコンピュータ・プログラム製品
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  • 特開2020193622-二元燃料船舶用燃焼エンジン、燃焼において過早点火を制御するための方法、低圧式二元燃料燃焼エンジンのための後付けキット、燃焼室への不活性ガスの導入を制御するためのコンピュータ・プログラム製品 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-193622(P2020-193622A)
(43)【公開日】2020年12月3日
(54)【発明の名称】二元燃料船舶用燃焼エンジン、燃焼において過早点火を制御するための方法、低圧式二元燃料燃焼エンジンのための後付けキット、燃焼室への不活性ガスの導入を制御するためのコンピュータ・プログラム製品
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/17 20160101AFI20201106BHJP
   F02D 19/06 20060101ALI20201106BHJP
   F02D 21/08 20060101ALI20201106BHJP
   F02D 23/00 20060101ALI20201106BHJP
   F02M 26/07 20160101ALI20201106BHJP
   F02M 26/35 20160101ALI20201106BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20201106BHJP
   F02M 26/22 20160101ALI20201106BHJP
   F02M 26/34 20160101ALI20201106BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20201106BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20201106BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20201106BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20201106BHJP
【FI】
   F02M26/17
   F02D19/06 B
   F02D21/08 311B
   F02D23/00 J
   F02M26/07 311
   F02M26/35 Z
   F02B37/00 302F
   F02M26/22
   F02M26/34
   F02D45/00 368S
   F02D43/00 301N
   F02D43/00 301W
   F02M21/02 N
   F02M21/02 301A
   F02M37/00 341D
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-139233(P2020-139233)
(22)【出願日】2020年8月20日
(62)【分割の表示】特願2016-30274(P2016-30274)の分割
【原出願日】2016年2月19日
(31)【優先権主張番号】15155893.9
(32)【優先日】2015年2月20日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515191442
【氏名又は名称】ヴィンタートゥール ガス アンド ディーゼル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナンダ サングラム キショア
【テーマコード(参考)】
3G005
3G062
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G005DA02
3G005DA04
3G005DA05
3G005EA16
3G005HA12
3G005HA13
3G005JA11
3G005JA22
3G062AA01
3G062AA02
3G062AA05
3G062EA10
3G062EB15
3G062ED01
3G062ED03
3G062ED08
3G062GA21
3G092AA02
3G092AA03
3G092AA17
3G092AA18
3G092AB12
3G092AC10
3G092DB03
3G092DC08
3G092FA16
3G092HC01Z
3G092HC03Z
3G384AA03
3G384AA04
3G384AA14
3G384AA16
3G384AA26
3G384BA27
3G384DA55
3G384EG01
3G384FA29Z
3G384FA30Z
3G384FA48Z
(57)【要約】
【課題】ガスと空気又は液体燃料と空気の混合物を点火するための少なくとも1つの燃焼室2を有する二元燃料船舶用燃焼エンジン1、好適には低圧式二元燃料エンジン、特に2ストロークの二元燃料低速エンジンにおいて、過早点火及び燃焼速度を制御すること、並びに対応する方法及び後付けキット。
【解決手段】エンジンが、燃焼室2への空気入口3と、燃焼室2からの排気出口4とを有する。さらに、エンジン1が、ガス・モードの運転と、液体燃料モードの運転とを有し、不活性ガス入口弁5が制御ユニット6によって制御可能であり、それにより不活性ガスが、事前定義された燃焼状態に応じて、好適には空気入口3を通して、少なくとも1つの燃焼室2へ導入可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスと空気の混合物又は液体燃料と空気の混合物を点火するための少なくとも1つの燃焼室(2)と、前記燃焼室(2)への空気入口(3)と、前記燃焼室(2)からの排気出口(4)とを有する二元燃料船舶用燃焼エンジン(1)、好適には低圧式二元燃料エンジン、特に2ストロークの二元燃料低速エンジンであって、ガス・モードの運転と液体燃料モードの運転とを有している二元燃料船舶用燃焼エンジン(1)において、
不活性ガス入口弁(5)が、過早点火の発生を低減するために制御ユニット(6)によって制御可能であり、それにより不活性ガスは、過早点火が発生する又は発生しそうな事前定義された燃焼状態に応じて、好適には前記空気入口(3)を通して、前記少なくとも1つの燃焼室(2)へ導入可能であることを特徴とする、二元燃料船舶用燃焼エンジン(1)。
【請求項2】
前記不活性ガスは、ガス・モードの運転中に導入され得ることを特徴とする、請求項1に記載の二元燃料船舶用燃焼エンジン(1)。
【請求項3】
前記不活性ガスが排気ガスであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の二元燃料船舶用燃焼エンジン(1)。
【請求項4】
前記エンジンが、前記燃焼室(2)に排気ガスを導入するための排気ガス再循環システム(7)を有することを特徴とする、請求項3に記載の二元燃料船舶用燃焼エンジン。
【請求項5】
前記排気ガス再循環システム(7)が、ブロワ(11)と、冷却デバイス(9)と、好適にはターボチャージャ(12)に並列に配置され、より好適にはターボチャージャ(12)の低圧側に配置される洗浄ユニット(8)とを少なくとも有することを特徴とする、請求項4に記載の二元燃料船舶用燃焼エンジン。
【請求項6】
前記排気ガス再循環システム(7)が前記制御ユニット(6)によって制御可能であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の二元燃料船舶用燃焼エンジン。
【請求項7】
前記事前定義された燃焼状態が、前記燃焼室(2)内の温度及び/又は圧力に依存していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の二元燃料船舶用燃焼エンジン(1)。
【請求項8】
事前定義された燃焼状態は、論理的に事前に、或いは前記エンジンの試運転時又は運転中に決定される状態であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の二元燃料船舶用燃焼エンジン(1)。
【請求項9】
前記二元燃料船舶用燃焼エンジン(1)が、前記燃焼室内での過早点火の開始を検出するためにシリンダ圧力トレースを有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載の二元燃料船舶用燃焼エンジン(1)。
【請求項10】
前記制御ユニットは、ガス・モード運転でのエンジンの運転中に連続的に燃焼状態を決定するように設計され、それにより、前記燃焼状態が、事前定義された燃焼状態に一致する状況において不活性ガスが前記燃焼室に導入されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の二元燃料船舶用燃焼エンジン(1)。
【請求項11】
前記制御ユニットは、前記エンジンの運転中に事前定義された燃焼状態を決定し、また、それまで過早点火が認められなかった状態において前記燃焼室(2)内の過早点火が検出された場合に、決定した事前定義された燃焼状態を、前記予め決定していた事前定義された燃焼状態に追加するようにさらに設計されていることを特徴とする、請求項10に記載の二元燃料船舶用燃焼エンジン(1)。
【請求項12】
ガス運転モードと液体燃料運転モードとを有する、二元燃料、ガス−液体燃料、特にディーゼル式の、請求項1から11までのいずれか一項に記載の船舶用燃焼エンジン(1)において燃焼の過早点火を制御するための方法において、
過早点火が発生する又は発生しそうな事前定義された燃焼状態の間、ガス・モードの運転中に不活性ガスが前記燃焼室(2)に導入され、それにより過早点火の発生が低減されることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記事前定義された燃焼状態が、前記燃焼室(2)内の温度及び/又は圧力に依存していることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
燃焼状態が、ガス・モード運転でのエンジンの運転の間、連続的に決定されることを特徴とする、請求項12又は13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記エンジンの燃焼状態が試運転時に事前に決定され、前記事前定義された燃焼状態が前記試運転に基づいて決定されることを特徴とする、請求項12又は13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記燃焼室内での過早点火の開始が、シリンダ圧力トレースによって検出されることを特徴とする、請求項12から15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
燃焼状態が、ガス・モード運転でのエンジンの運転の間、連続的に決定され、また
前記燃焼状態が、事前定義された燃焼状態に一致する状況、及び/又は、過早点火が発生しそうな又は既に発生した状況で、不活性ガスが導入されることを特徴とする、請求項12から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
事前定義された燃焼状態が、論理的に事前に、或いは過早点火が発生しそうな前記エンジンの試運転時又は運転中に決定され、
燃焼状態が、ガス・モード運転でのエンジンの運転の間、連続的に決定され、また
それまで過早点火が認められなかった状態において前記燃焼室(2)内で過早点火が検出された場合、別の事前定義された燃焼状態が、予め決定していた事前定義された燃焼状態に追加されることを特徴とする、請求項12から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記不活性ガスが排気ガスであり、好適には再循環排気ガスであることを特徴とする、請求項12から18までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ガス運転モードとディーゼル運転モードとを有する低圧式二元燃料燃焼エンジン、特に船舶用エンジンのための後付けキットであって、ガス・モード運転の間に燃焼室(2)内へ排気ガスを再循環させるための排気ガス再循環システム(7)と、不活性ガス入口弁(5)と、前記排気ガス再循環システム(7)を制御するため、及び過早点火が発生する又は発生しそうな事前定義された燃焼状態を使用して過早点火の発生を低減するための制御ユニット(6)とを有する後付けキット。
【請求項21】
請求項1から11までのいずれか一項に記載の低圧式二元燃料燃焼エンジンの燃焼室(2)内への不活性ガスの導入を制御するためのコンピュータ・プログラム製品であって、請求項12から19までのいずれか一項に記載の方法が実行可能であるコンピュータ・プログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項に係る、二元燃料(dual−fuel)船舶用燃焼エンジンと、二元燃料船舶用燃焼エンジン内の燃焼において過早点火(pre−ignition)及び燃焼速度を制御するための方法と、二元燃料燃焼エンジンのための後付けキットと、二元燃料燃焼エンジンの燃焼室への不活性ガスの導入を制御するためのコンピュータ・プログラム製品とに関する。
【背景技術】
【0002】
海洋産業において大気汚染の基準が厳しくなっていることから、造船産業では二元燃料エンジンが重要なエンジンとなっている。
【0003】
市場には、低圧コンセプト又は高圧コンセプトのいずれかに基づく二元燃料エンジンが存在する。低圧式二元燃料エンジンは、2ストローク・エンジンのオットー・サイクルのガス・エンジンとなるように最適化されている。高圧二元燃料エンジンはディーゼル・サイクル・エンジンであり、実質的により多くのパイロット燃料を必要とし、より高レベルのNOxを発生させる。
【0004】
ガス燃料が燃焼エンジンの燃焼室に入って燃焼空気と混合されるとき、過早点火と呼ばれる非制御燃焼が起こる危険性がある。過早点火は、主として、燃焼室内部のラジカルを原因として起こる。過早点火が起こるとエンジンの効率が低下し、部品の損耗が強まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、従来技術の欠点を回避すること、並びに二元燃料船舶用燃焼エンジンと、過早点火及び燃焼速度を制御するための方法と、二元燃料燃焼エンジンのための後付けキットと、過早点火の発生を低減するための二元燃料燃焼エンジンの燃焼室への不活性ガスの導入を制御するためのコンピュータ・プログラム製品とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立請求項に係る、二元燃料船舶用燃焼エンジンと、過早点火及び燃焼速度を制御するための方法と、二元燃料燃焼エンジンのための後付けキットと、二元燃料燃焼エンジンの燃焼室への不活性ガスの導入を制御するためのコンピュータ・プログラム製品とによって達成される。
具体的には、この目的は、ガスと空気の混合物又は液体燃料と空気の混合物を点火するための少なくとも1つの燃焼室を有する二元燃料船舶用燃焼エンジン、好適には低圧式二元燃料エンジン、特に2ストロークの二元燃料低速エンジンによって達成される。エンジンは、燃焼室に入る空気入口と、燃焼室から出る排気出口とを有し、またエンジンは、ガス・モードの運転と、液体燃料モードの運転とを有する。不活性ガス入口弁(inert gas inlet valve)が制御ユニットによって制御可能であり、それにより不活性ガスが、事前定義された燃焼状態に応じて、好適には空気入口を通して、少なくとも1つの燃焼室へ導入可能である。
【0007】
このような二元燃料エンジンより、燃焼室において過早点火を回避し、燃焼速度を制御することが可能となることで、燃焼の効率が向上し、またエンジンの部品の損耗が軽減される。
【0008】
事前定義された燃焼状態とは、理論的に事前に決定されるか、試運転時に決定されるか、過早点火を起こしやすいエンジン運転中に決定される状態である。本発明による事前定義された燃焼状態は、過早点火の起こる可能性のみによって決定される。事前定義された燃焼状態は、排気排出物質の基準によっては一切決定されない。
【0009】
本発明による低速エンジンは、最大200rpmの速度で回転するエンジンである。具体的には、これらの低速エンジンは、250mmから1000mmのボア径の燃焼室を有する大型エンジンである。
【0010】
ティア3(tier3)のエミッションが、排気処理を一切行うことなくガス・モードで達成され、また最低限のティア2レベルが液体燃料で達成されるので、低圧式二元燃料エンジンは処理後に排気を一切必要としない。したがって、低圧式二元燃料エンジンは、アイドリング速度からフルパワー出力までの考えられるあらゆる運転状態ですべての国際的な排出物質制限に適合することができる。
【0011】
不活性ガス入口弁は、エンジンが高圧システム又は低圧システムのいずれであるかに応じて、ターボチャージャの上流又は下流のいずれかに配置され得る。別法として、不活性ガス入口弁は、シリンダ・ライナ上にある別個の部品であってもよい。
【0012】
不活性ガスはガス運転モード中に導入され得る。
【0013】
ガス・モードの運転中に不活性ガスを導入することにより、ガス・モードにおいて過早点火及び燃焼速度が抑制される。エンジンの効率が向上し、部品の損耗が低減される。さらに、液体燃料モードの運転中のプロセスは影響を受けない。
【0014】
不活性ガスは排気ガスであってもよい。
【0015】
不活性ガスとして排気ガスを使用することによりプロセスが非常に高効率となり、また排気ガスがさらに除去されるようになり、それによりエンジンのエミッションが最適化される。加えて、追加の不活性ガス・リザーバが必要なくなる。
【0016】
エンジンは、燃焼室内に排気ガスを導入するための排気ガス再循環システムを有することができる。
【0017】
排気ガス再循環システムの使用とは、過早点火及び燃焼速度を抑制するという新たな効果をもたらす標準部品(standard part)の導入である。
【0018】
排気ガス再循環システムは、ブロワと、冷却デバイスと、好適には水分離器と、好適にはターボチャージャに対して並列に配置され、より好適にはターボチャージャの低圧側に配置される洗浄ユニット又はスクラビング・ユニットとを少なくとも有することができる。
【0019】
ターボチャージャの低圧側への配置は、高圧側への配置より安価である。
【0020】
この排気ガス再循環システムは、ターボチャージャに導入する前に排気ガスを洗浄すること、排気ガスを冷却すること、及び最後に排気ガスの圧力を増大させることを可能とする。
【0021】
排気ガス再循環システムは、制御ユニットによって制御可能となり得る。
【0022】
このようにして、過早点火が起こる場合又は過早点火が起こりやすい場合にのみ排気ガス再循環システムが起動され得る。排気ガス再循環システムは、ある特定のエミッション・レベルに到達するために連続的に動作しない。
【0023】
事前定義された燃焼状態は、燃焼室内の温度及び/又は圧力に依存し得る。
【0024】
例えば、燃焼室内での過早点火の開始を検出するのにシリンダ圧力のトレース(trace)が利用され得る。具体的な圧力値及び/又は温度値は、ガス及び使用される特定のエンジン次第であり、事前に決定される必要、或いは試運転時又はエンジンの使用時に制御ユニットに教えられる必要がある。
【0025】
本目的はさらに、二元燃料のガスと液体燃料の、特にディーゼル式の船舶用燃焼エンジン、好適には上で説明したエンジン内での燃焼における過早点火を制御するための方法によって達成される。この方法は、ガス運転モードと、液体燃料運転モードとを有する。不活性ガスが、事前定義された燃焼状態の間、ガス運転モードで燃焼室に導入される。
【0026】
事前定義された燃焼状態は、過早点火の発生又は過早点火の発生の可能性に基づく。事前定義された燃焼状態は、エンジンのエミッション・レベルに依存しない。
【0027】
この方法を使用することにより、過早点火の発生が制御および未然に防がれることができ、それによりエンジンの効率が向上する。
【0028】
事前定義された燃焼状態は、燃焼室内の温度及び/又は圧力に依存し得る。
【0029】
これにより、不活性ガスは必要とされるときのみ導入される。
【0030】
燃焼状態はガス・モード運転でのエンジンの運転中に連続的に決定され得る。
【0031】
連続的な決定が燃焼状態の連続的な監視(supervision)をもたらし、それにより、過早点火が起こりやすい状況又は既に起こっている状況において不活性ガスを導入することが可能となる。さらに、液体燃料モードが、不活性ガスによる過早点火の抑制によって影響を受けることもない。
【0032】
エンジンの燃焼状態は試運転時に事前に決定され得、また事前定義された燃焼状態は試運転に基づいて決定される。
【0033】
これにより、連続的な監視を実施することなく、又は連続的な監視を追加的に実施して、不活性ガスが導入され得、そしてエンジンの効率が向上する。
【0034】
燃焼室内で過早点火が検出された場合、好適には、以前には過早点火が認められなかったような状態において過早点火が検出された場合、事前定義された燃焼状態が追加され得る。
【0035】
このようにして、システムはエンジンの運転中に学習し、別の事前定義された燃焼状態が追加され得る。
【0036】
不活性ガスは排気ガスであってよく、好適には再循環する排気ガスであってよい。
【0037】
これにより排気ガスが再使用され、排出物質が低減される。加えて、追加的な不活性ガス・リザーバが必要なくなる。
【0038】
本目的はさらに、ガス運転モード及びディーゼル運転モードを有する二元燃料燃焼エンジン、好適には低圧エンジン、特に船舶用エンジンのための後付けキットによって達成される。後付けキットは、ガス・モード運転中に燃焼室内へと排気ガスを再循環させるための排気ガス再循環システムを有する。さらに、後付けキットは、不活性ガス入口弁と、排気ガス再循環システムを制御するための制御ユニットとを有する。
【0039】
このような後付けキットを用いることにより、既存の燃焼エンジンでも、二元燃料モード中の過早点火を抑制するようにアップデートさせることができる。
【0040】
本目的はさらに、燃焼エンジン、好適には低圧式二元燃料燃焼エンジン、好適には上で説明したようなエンジンの燃焼室内への不活性ガスの導入を制御するためのコンピュータ・プログラム製品によって達成される。上で説明したような過早点火を制御するための方法が、このコンピュータ・プログラム製品によって実行可能である。
【0041】
実施例の図を用いて本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】低圧での排気ガスの再循環を利用するデバイスを示す概略図である。
図2】高圧での排気ガスの再循環を利用するデバイスを示す概略図である。
図3】過早点火を制御するための方法を示す概略的な流れ図である。
図4】標準的な燃焼サイクルを示すグラフである。
図5】過早点火の発生を伴う燃焼サイクルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、低圧での排気ガスの再循環を利用するデバイスの概略図を示す。低圧排気ガス再循環システム内において、排気ガス再循環システム7がターボチャージャ12の低圧側に配置される。二元燃料船舶用燃焼エンジン1は、2ストローク低圧式二元燃料エンジン1である。二元燃料エンジン1は、ガス・モード運転及び液体燃料モード運転の、2つの別個の運転モードを有する。いずれのモードでも燃料が燃焼室2に導入される。さらに、空気が空気入口3を通して燃焼室2に導入される。燃焼後、排気が燃焼室2から排気出口4へと放出される。空気入口3の下流にターボチャージャ12が配置される。ターボチャージャ12を使用することによりエンジン1の効率が向上する。ターボチャージャ12の下流に排気ガス再循環システム7が配置される。排気ガス再循環システム7は、洗浄ユニット8と、冷却ユニット9と、水分離器10と、ブロワ11とを有する。燃焼室2内において、事前定義された燃焼状態に到達すると、不活性ガス入口弁5が制御ユニット6によって開けられる。液体燃料運転中に排気ガス再循環システムを使用するために、排気ガス再循環システム7をターボチャージャ12の圧縮側に接続することも可能である。事前定義された燃焼状態が燃焼室2内に存在するかどうかを決定するために、制御ユニット6は、燃焼室2内の1つのセンサ又は複数のセンサに接続される。排気ガス再循環システム7は、事前定義された燃焼状態をセンサによって感知した場合にのみ制御ユニット6によって起動される。これらのセンサは燃焼室2内にある圧力センサ及び温度センサである。
【0044】
図2は、図1の代替的実施例を示しており、ここでは、排気ガス再循環システム7がターボチャージャ12の高圧側に配置される。排気ガス再循環システム7は、洗浄ユニット8と、冷却ユニット9と、水分離器10と、ブロワ11と、不活性ガス入口弁5とを有する。不活性ガス入口弁5が制御ユニット6によって制御され、燃焼室2内での事前定義された燃焼状態の発生に基づいて燃焼室2に排気ガスが導入されることを可能にする。この目的のため、制御ユニット6は、事前定義された燃焼状態を決定する1つ又は複数のセンサに接続される。これらのセンサは燃焼室2内にある圧力センサ及び温度センサである。利用可能な排気を両方の流体接続ラインで分け合うことにより、燃焼室2からの排気をターボチャージャ12のため、及び排気ガスの再循環のために同時に使用することが可能となる。事前定義された燃焼状態がもはや認められなくなるとすぐに、ガス・モード運転で排気ガス再循環システムが停止される。
【0045】
図3は、燃焼の過早点火を制御するための方法の概略的な流れ図を示す。エンジン使用時にガス・モード31が開始されると、事前定義された燃焼状態32に関して燃焼が連続的に監視される。事前定義された燃焼状態32は燃焼室2(図1及び2を参照)内の温度及び圧力によって定義される。事前定義された状態32の一実例が図5に示される。事前定義された燃焼状態32に達していない場合、ガス運転モードでは排気ガスの再循環33は必要ない。事前定義された燃焼状態32が認められると、燃焼室2への排気ガスの再循環が開始される。事前定義された燃焼状態が認められなくなると、排気ガスの再循環が停止される。エンジン1のガス・モードの運転31の間、事前定義された燃焼状態の監視が連続的に行われる。
【0046】
図4は、過早点火のない標準的な燃焼サイクル中の、クランク角に対するシリンダ圧力によって示される燃焼のプロセスを示す。シリンダ圧力のピークは約5°のクランク角のところであり、ピーク自体は非常にシャープである。
【0047】
図5は、過早点火が起こっている事前定義された燃焼状態での図4と同じグラフを示す。過早点火の発生中、シリンダ圧力は0°のクランク角のところで既にそのピークに達している。また、そのピークはよりソフトであり、ピーク圧力は、図4に示される標準的なサイクルのピーク圧力より約10%高い。
【0048】
また、本願は以下の項目に係る発明を開示する。
(項目1)
ガスと空気の混合物又は液体燃料と空気の混合物を点火するための少なくとも1つの燃焼室(2)と、前記燃焼室(2)への空気入口(3)と、前記燃焼室(2)からの排気出口(4)とを有する二元燃料船舶用燃焼エンジン(1)、好適には低圧式二元燃料エンジン、特に2ストロークの二元燃料低速エンジンであって、ガス・モードの運転と液体燃料モードの運転とを有している二元燃料船舶用燃焼エンジン(1)において、
不活性ガス入口弁(5)が制御ユニット(6)によって制御可能であり、それにより不活性ガスが、事前定義された燃焼状態に応じて、好適には前記空気入口(3)を通して、前記少なくとも1つの燃焼室(2)へ導入可能であることを特徴とする、二元燃料船舶用燃焼エンジン(1)。
(項目2)
前記不活性ガスは、ガス・モードの運転中に導入され得ることを特徴とする、項目1に記載の二元燃料船舶用燃焼エンジン(1)。
(項目3)
前記不活性ガスが排気ガスであることを特徴とする、項目1又は2に記載の二元燃料船舶用燃焼エンジン(1)。
(項目4)
前記エンジンが、前記燃焼室(2)に排気ガスを導入するための排気ガス再循環システム(7)を有することを特徴とする、項目3に記載の二元燃料船舶用燃焼エンジン。
(項目5)
前記排気ガス再循環システム(7)が、ブロワ(11)と、冷却デバイス(9)と、好適にはターボチャージャ(12)に並列に配置され、より好適にはターボチャージャ(12)の低圧側に配置される洗浄ユニット(8)とを少なくとも有することを特徴とする、項目4に記載の二元燃料船舶用燃焼エンジン。
(項目6)
前記排気ガス再循環システム(7)が前記制御ユニット(6)によって制御可能であることを特徴とする、項目4又は5に記載の二元燃料船舶用燃焼エンジン。
(項目7)
前記事前定義された燃焼状態が、前記燃焼室(2)内の温度及び/又は圧力に依存していることを特徴とする、項目1から6までのいずれか一項に記載の二元燃料船舶用燃焼エンジン(1)。
(項目8)
ガス運転モードと液体燃料運転モードとを有する、二元燃料、ガス−液体燃料、特にディーゼル式の、好適には項目1から7までのいずれか一項に記載の船舶用燃焼エンジン(1)において燃焼の過早点火を制御するための方法において、
事前定義された燃焼状態の間、ガス・モードの運転中に不活性ガスが前記燃焼室(2)に導入されることを特徴とする方法。
(項目9)
前記事前定義された燃焼状態が、前記燃焼室(2)内の温度及び/又は圧力に依存していることを特徴とする、項目8に記載の方法。
(項目10)
燃焼状態が、ガス・モード運転でのエンジンの運転の間、連続的に決定されることを特徴とする、項目8又は9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記エンジンの燃焼状態が試運転時に事前に決定され、前記事前定義された燃焼状態が前記試運転に基づいて決定されることを特徴とする、項目8又は9のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記燃焼室(2)内で過早点火が検出された場合、事前定義された燃焼状態が追加されることを特徴とする、項目8から11までのいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記不活性ガスが排気ガスであり、好適には再循環排気ガスであることを特徴とする、項目8から12までのいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
ガス運転モードとディーゼル運転モードとを有する低圧式二元燃料燃焼エンジン、特に船舶用エンジンのための後付けキットであって、ガス・モード運転の間に前記燃焼室(2)内へ排気ガスを再循環させるための排気ガス再循環システム(7)と、不活性ガス入口弁(5)と、前記排気ガス再循環システム(7)を制御するための制御ユニット(6)とを有する後付けキット。
(項目15)
好適には項目1から7までのいずれか一項に記載の低圧式二元燃料燃焼エンジンの燃焼室(2)内への不活性ガスの導入を制御するためのコンピュータ・プログラム製品であって、項目8から13までのいずれか一項に記載の方法が実行可能であるコンピュータ・プログラム製品。
【符号の説明】
【0049】
1 二元燃料船舶用燃焼エンジン
2 燃焼室
3 空気入口
4 排気出口
5 不活性ガス入口弁
6 制御ユニット
7 排気ガス再循環システム
8 洗浄ユニット
9 冷却ユニット
10 水分離器
11 ブロワ
12 ターボチャージャ
31 ガス・モード
32 事前定義された燃焼状態
33 排気ガスの再循環
図1
図2
図3
図4
図5