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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-193727(P2020-193727A)
(43)【公開日】2020年12月3日
(54)【発明の名称】温水システム及びサーバ
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/00 20060101AFI20201106BHJP
【FI】
   F24H1/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-97927(P2019-97927)
(22)【出願日】2019年5月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕平
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA03
3L122AA34
3L122AA62
3L122BA36
3L122CA06
3L122CA16
3L122FA03
3L122FA04
3L122FA05
3L122FA12
3L122FA13
3L122GA01
3L122GA04
(57)【要約】
【課題】温水機器に装着される回路基板の交換時に、交換前の回路基板に書き込まれていた情報を、交換後の回路基板に自動的に引き継ぐ。
【解決手段】温水機器11は、通信網40を経由してサーバ50と通信接続される。温水機器に装着された、初期設定データが記憶部に書込み済である回路基板11bに格納されたデータが、サーバ50へ送信されると、サーバ50は、当該データを引継ぎデータとして保存する。初期設定データが前記記憶部に書き込まれていない回路基板11bが装着された状態の温水機器11がサーバ50に通信接続すると、サーバ50は、保存している引継ぎデータを当該温水機器11へ送信する。温水機器11では、サーバ50から送信された引継データが回路基板11bの記憶部に書込まれる。初期設定データは、少なくとも温水機器11の個体識別情報を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水機器が通信網を経由してサーバと通信接続される温水システムであって、
前記温水機器に装着された、初期設定データが記憶部に書込み済である第1の回路基板の当該記憶部に格納されたデータを前記温水機器から前記サーバに送信する手段と、
前記サーバに送信されたデータを引継ぎデータとして前記サーバに保存する手段と、
前記初期設定データが前記記憶部に書き込まれていない第2の回路基板が前記温水機器に装着された状態で前記温水機器が前記サーバに通信接続した場合に、前記サーバに記憶された前記引継ぎデータを前記温水機器に送信する手段と、
前記サーバから送信された前記引継ぎデータを前記第2の回路基板の記憶部に書込む手段とを備え、
前記引継ぎデータは、前記初期設定データを含み、
前記初期設定データは、少なくとも前記温水機器の個体識別情報を含む、温水システム。
【請求項2】
前記温水機器の使用に関するユーザ設定データを前記温水機器から前記サーバに送信する手段を更に備え、
前記引継ぎデータは、前記ユーザ設定データを更に含む、請求項1記載の温水システム。
【請求項3】
前記温水機器の施工時に設定された施工時設定データを前記温水機器から前記サーバに送信する手段を更に備え、
前記引継ぎデータは、前記施工時設定データを更に含む、請求項1又は2に記載の温水システム。
【請求項4】
前記温水機器の運転実績データを定期的に前記サーバに送信する手段を更に備え、
前記引継ぎデータは、前記運転実績データを更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の温水システム。
【請求項5】
温水機器と通信網を経由して通信接続されるサーバであって、
前記温水機器に装着された、初期設定データが記憶部に書込み済である第1の回路基板の当該記憶部に格納されたデータを前記温水機器から受信する手段と、
前記温水機器から受信したデータを引継ぎデータとして保存する手段と、
前記初期設定データが前記記憶部に書き込まれていない第2の回路基板が装着された前記温水機器からの通信接続に応じて、保存していた前記引継ぎデータを前記温水機器に送信する手段とを備え、
前記引継ぎデータは、前記初期設定データを含み、
前記初期設定データは、少なくとも前記温水機器の個体識別情報を含む、サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水システム及びサーバに関し、より特定的には、管理装置(サーバ)と温水機器とが通信接続された温水システムにおける温水機器の回路基板へのデータ書込に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、給湯装置等の温水機器では、複数の機種間で共通化された回路基板のメモリに対して、工場出荷前に、当該温水機器の個体識別情報を含む初期設定データが書き込まれる。例えば、初期設定データの記憶には、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)やフラッシュメモリ等のデータ書込が可能な不揮発性メモリが用いられる。
【0003】
このような構成とすることにより、部品の汎用性が向上するが、一方で、故障等により回路基板を交換する場合を想定すると、新品の回路基板には、初期設定データが書き込まれていない。このため、何らかの方法によって、交換後の回路基板に対して当該初期設定データを書き込む必要がある。
【0004】
例えば、特許第5373701号公報(特許文献1)には、交換前の制御ユニット及び交換後の制御ユニットの間の運転条件承継方法が記載されている。具体的には、両制御ユニットの通信ポート間を通信ケーブルで接続して、両通信ポート間に確立された通信路により運転条件データ等を送受信することで、交換前及び交換後の間で制御ユニットのバージョンが異なる場合であっても、旧制御ユニットの運転バージョンを新制御ユニットに継承される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5373701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の手法では、交換前の制御ユニットの通信機能に故障が生じた場合には、必要なデータを交換後の制御ユニットに引継ぐことができない。従って、通信機能の不具合を含む故障に伴う新品の回路基板への交換では、特許文献1の手法を用いて、交換前の回路基板から交換後(新品)の回路基板へ、初期設定データを書込むことができない。
【0007】
このようなケースでは、回路基板を交換する作業者が、当該初期設定データを新品の回路基板へ手動入力することが必要となるが、作業負荷の増大、及び、作業ミスの発生の虞が懸念される。
【0008】
本発明はこの様な問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、温水機器に装着される回路基板の交換時に、交換前の回路基板に書き込まれていた情報を、交換後の回路基板に自動的に引継ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある局面では、温水機器が通信網を経由してサーバと通信接続される温水システムであって、温水機器に装着された、初期設定データが記憶部に書込み済である第1の回路基板の当該記憶部に格納されたデータを温水機器からサーバに送信する手段と、サーバに送信されたデータを引継ぎデータとしてサーバに保存する手段と、初期設定データが記憶部に書き込まれていない第2の回路基板が温水機器に装着された状態で温水機器がサーバに通信接続した場合に、サーバに記憶された引継ぎデータを温水機器に送信する手段と、サーバから送信された引継データを第2の回路基板の記憶部に書込む手段とを備える。引継ぎデータは、初期設定データを含み、初期設定データは、少なくとも温水機器の個体識別情報を含む。
【0010】
この発明の他のある局面では、温水機器と通信網を経由して通信接続されるサーバであって、温水機器に装着された、初期設定データが記憶部に書込み済である第1の回路基板の当該記憶部に格納されたデータを温水機器から受信する手段と、温水機器から受信したデータを引継ぎデータとして保存する手段と、初期設定データが記憶部に書き込まれていない第2の回路基板が装着された温水機器からの通信接続に応じて、保存していた引継ぎデータを温水機器に送信する手段とを備える。引継ぎデータは、初期設定データを含み、初期設定データは、少なくとも温水機器の個体識別情報を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、通信網を経由してサーバと通信接続される温水機器に装着される回路基板の交換時に、交換前の回路基板に格納されていた情報を、交換後の回路基板に自動的に引継ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係る温水システムの構成例を示す概略図である。
図2図1の温水システム1を構成する各機器の回路ブロック図である。
図3】ケーブル接続による回路基板間のデータ引継ぎの問題点を説明する概念図である。
図4】本実施の形態に係る温水システムにおける回路基板間でのデータ引継ぎ処理を説明するシーケンス図である。
図5】本実施の形態に係る温水システムにおいてサーバに保存される引継ぎデータの一例を説明する図表である。
図6】本実施の形態に係る温水システムにおけるデータ書込起動の変形例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る温水システムの構成例を示す概略図である。
図1を参照して、本実施の形態に係る温水システム1は、温水機器10と、ルータ20と、外部通信網40と、サーバ50とを備える。
【0015】
温水機器10は、例えば、給湯装置であり、給湯器11と、リモートコントローラ(以下、単に「リモコン」とも表記する)12,13を含む。給湯器11からの湯は、給湯口11aにそれぞれ接続された配管(図示せず)を経由して、図示しない、カラン及び浴槽等に供給される。給湯器11が、床暖房機能、浴室暖房機能、又は、パネルヒータによる暖房機能等をさらに有する場合には、これらの機能を実現するための機器に対しても、給湯器11からの湯が供給される。
【0016】
給湯器11の内部には、回路基板11bが装着される。当該回路基板11bには、給湯器11を駆動及び制御するための回路部が搭載される。当該回路部によって、図示しない燃焼器に対する燃料ガスの供給等を制御するための電磁弁(図示せず)、及び、当該燃料ガスと混合される空気を供給するための給気ファン(図示しない)等が制御される。
【0017】
リモコン12,13は、例えば、2心通信線によって、給湯器11と接続される。リモコン12,13は、表示部121,131、及び、入力部122,132を有する。ユーザは、表示部121,131による表示画面に従って入力部122,132を操作することにより、湯張りや給湯設定温度等を設定することができる。例えば、リモコン12は浴室に配設され、リモコン13は台所に配設される。このように、リモコン12,13を用いて、ユーザは、温水機器10の各機能について、種々の設定を行うことができる。以下では、リモコン12を「浴室リモコン12」とも称し、リモコン13を「台所リモコン13」とも称する。
【0018】
ルータ20は、建物内(ここでは、宅内H10)に存在する機器を、外部通信網40を介してサーバ50に通信接続するための通信中継器である。例えば、ルータ20は、いわゆる、無線LAN(Local Area Network)ルータによって構成される。外部通信網40は、代表的には、インターネットである。
【0019】
サーバ50は、外部通信網40に接続されて、温水機器10に対する遠隔制御(遠隔操作及び遠隔監視)を管理するための機能を有する。台所リモコン13は、無線通信により、ルータ20に接続されることで、ルータ20及び外部通信網40を介して、サーバ50と通信することができる。これにより、温水機器10はサーバ50と通信接続される。
【0020】
スマートフォン又はタブレット端末等の携帯端末装置30が宅内H10に存在する場合には、当該携帯端末装置30は、無線通信によりルータ20に接続されて、サーバ50と通信可能である。又、携帯端末装置30が宅外(H10の外部)にある場合、当該携帯端末装置30は、ルータ60又は基地局70を介して外部通信網40に接続することで、サーバ50と通信することができる。即ち、ユーザは、携帯端末装置30を用いて、宅内H10及び宅外のいずれからでも、温水機器10に対する遠隔制御(遠隔操作及び遠隔監視)を行うことができる。
【0021】
台所リモコン13及び携帯端末装置30には、温水システム1のアプリケーションプログラムが、サーバ50からダウンロードされ、インストールされている。このアプリケーションプログラムには、サーバ50にアクセスするためのアドレス情報(例えば、IPアドレス)が含まれる。台所リモコン13及び携帯端末装置30は、当該アドレス情報に基づいてサーバ50にアクセスして、サーバ50と通信する。
【0022】
台所リモコン13のアドレス情報は、初期設定の際に、サーバ50に送信され、かつ、サーバ50で保持される。このとき同時に、台所リモコン13のID情報が、台所リモコン13からサーバ50に送信される。台所リモコン13のアドレス情報としては、例えば、MAC(Media Access Control)アドレスを用いることができる。サーバ50は、当該アクセス情報を用いて、通信先である台所リモコン13、即ち、温水機器10を識別することができる。
【0023】
図2は、図1の温水システム1を構成する各機器の回路ブロック図である。
図2を参照して、給湯器11は、制御部111と、記憶部112と、通信部113と、センサ114と、通信ポート115とを含む。制御部111と、記憶部112と、通信部113とは、図1に示した回路基板11bに搭載される。
【0024】
制御部111は、CPU(Central Processing Unit)を有し、記憶部112に記憶されたプログラムに従って、給湯器11内の各部の制御を行う。記憶部112は、メモリを有し、所定の制御プログラム及び各種のデータを記憶する。
【0025】
通信部113は、制御部111による制御に従って、浴室リモコン12及び台所リモコン13と通信することができる。通信ポート115は、給湯器11の外部からの通信ケーブル接続のために設けられる。通信ポート115への通信ケーブル接続時には、通信部113は、通信ケーブルによる接続先と通信することができる。
【0026】
センサ114は、給湯器11に搭載された、温度センサ、燃焼センサ及び流量センサ等の各種センサを総称するものである。制御部111は、センサ114による検出値に基づき、各機器の動作を制御するとともに、その動作状態を監視することができる。例えば、燃料ガスの供給異常や給気ファンの異常等、異常の検出及び異常履歴の記憶を制御部111で行うことも可能である。又、制御部111は、センサ114の一部として、浴槽の水位センサが配置される場合には、当該水位センサの出力に基づき、浴槽に対する人の出入りを検知することも可能である。
【0027】
更に、制御部111は、センサ114の検出値に基づき、給湯器11の燃焼時間、燃焼回数、給湯量(積算値)等の運転実績データを収集し、管理することも可能である。更に、制御部111は、センサ114の検出値とは無関係に、給湯器11の通電時間についても、運転実績データとして収集及び管理することができる。
【0028】
浴室リモコン12は、上述の表示部121及び入力部122に加えて、制御部123と、記憶部124と、通信部125と、入室センサ126と、スピーカ127とを含む。表示部121は、例えば、液晶パネルにより構成される。入力部122は、温度設定ボタン等の各種操作ボタンを有する。或いは、表示部121がタッチパネルで構成される場合には、当該タッチパネルを用いて、入力部122の少なくとも一部を形成することも可能である。スピーカ127は、制御部123に制御されて、音声メッセージやメロディ等を出力する。スピーカ127の音量は、入力部122に対するユーザ操作によって調整することが可能である。
【0029】
制御部123は、CPUを有し、記憶部124に記憶されたプログラムに従って所定の制御を実行する。記憶部124は、メモリを有し、所定の制御プログラムを記憶する。通信部125は、制御部123による制御に従って、給湯器11と通信する。入室センサ126は、例えば、赤外線を利用した人感センサによって構成される。制御部123は、入室センサ126の出力に基づき、浴室に対する人の出入りを検知することができる。制御部123による当該検知結果は、通信部125を用いて、随時、台所リモコン13へ送信される。スピーカ127の音量は、入力部122に対するユーザ操作によって調整することが可能である。
【0030】
台所リモコン13は、上述の表示部131及び入力部132に加えて、制御部133と、記憶部134と、通信部135と、無線通信部136と、スピーカ137とを含む。表示部131は、例えば、液晶パネルにより構成される。入力部132は、温度設定ボタン等の各種操作ボタンを有する。或いは、表示部131がタッチパネルで構成される場合には、当該タッチパネルを用いて、入力部132の少なくとも一部を形成することも可能である。スピーカ137は、制御部133に制御されて、音声メッセージやメロディ等を出力する。スピーカ137の音量についても、入力部132に対するユーザ操作によって調整することが可能である。
【0031】
制御部133は、CPUを有し、記憶部134に記憶されたプログラムに従って所定の制御を実行する。記憶部134は、メモリを有し、所定の制御プログラムを記憶する。通信部135は、制御部133による制御に従って、給湯器11と通信する。
【0032】
無線通信部136は、ルータ20との間で無線通信が可能な無線通信モジュールによって構成することができる。無線通信部136には、宅内H10に設定されたLAN上の機器を特定するためのIP(Internet Protocol)アドレスが割り振られている。又、無線通信部136は、上述のMACアドレスを保持している。
【0033】
サーバ50は、制御部501と、記憶部502と、通信部503とを含む。制御部501は、CPUを有し、記憶部502に記憶されたプログラムに従って所定の制御を実行する。記憶部502は、メモリ及びハードディスクを有し、所定の制御プログラム及びデータベースを記憶する。通信部503は、制御部501による制御に従って、給湯器11と通信可能である。サーバ50では、外部通信網40を介した給湯器11との通信によって、給湯器11から送信されたデータを、随時、記憶部502に格納することができる。
【0034】
給湯器11の回路基板11bに対して、工場出荷前に、当該給湯器11の個体識別情報を含む初期設定データが、記憶部112に書込まれる。記憶部112の少なくとも一部は、データ書込が可能な不揮発性メモリによって構成されており、初期設定データは、当該不揮発性メモリに保持される。
【0035】
故障等によって回路基板11bを交換する必要が生じると、交換後の新品の回路基板には、初期設定データが書き込まれていないため、交換前の回路基板11bに保持されていたデータを引継ぐ必要がある。
【0036】
図3には、特許文献1に記載された通信ケーブル接続によるデータ引継ぎの問題点を説明するための概念図が示される。
【0037】
図3を参照して、故障の発生により、給湯器11に搭載されている回路基板11b−xの交換が必要になった場面を想定する。このとき、交換用の新品の回路基板11b−yに対して、回路基板11b−xに保持されていたデータを引継ぐ必要がある。
【0038】
例えば、回路基板11b−x及び11b−yの通信ポート115同士を通信ケーブル200で接続することにより、回路基板11b−x及び11b−yの間に、両回路基板の通信部113及び通信ケーブル200による通信路を形成することが可能である。
【0039】
当該通信路を用いて回路基板11b−xから回路基板11b−yへデータを送信し、回路基板11b−yの記憶部112(図2)に当該データを記憶することで、上述した、初期設定データを含むデータの引継ぎが可能となる。その後、給湯器11に対しては、故障した回路基板11b−xを取り外して、データが書き込まれた回路基板11b−yを新たに取り付けることにより、給湯器11を再び動作させることが可能となる。
【0040】
しかしながら、回路基板11b−xでの故障が通信部113の不具合を含む場合には、通信ケーブル200を接続しても、回路基板11b−x及び11b−yの間に、引継がれるべきデータの通信路を形成することができない。
【0041】
このような場合には、作業者が、マニュアル等に従い、必要最小限のデータ、例えば、上記初期設定データのうちの重要な一部のみを、回路基板11b−yに対して、キーボード操作等による手作業で書き込むことが想定される。このような手作業では、作業負荷の増大、及び、作業ミスの虞が問題となる。又、引継がれるデータが制限される点も懸念される。
【0042】
従って、本実施の形態に係る温水システムでは、図4に示すシーケンス図に従って回路基板間のデータ引継ぎ処理が実行される。
【0043】
図4を参照して、リモコン(台所リモコン13)が、ルータ20及び外部通信網40を介して、サーバ50と通信することにより、給湯器11の回路基板11bと、サーバ50との間でもデータの送受信が可能となる。
【0044】
初期設定データが書込み済みである回路基板11bは、処理P5により、記憶部112内に保持されたデータを台所リモコン13へ送信する。処理P5のタイミングは、任意に設定することが可能であり、定期的に設けられてもよく、給湯器11での特定イベント発生に応じて、回路基板11b側で設定されてもよい。或いは、台所リモコン13からの送信要求P6に応じて、回路基板11bからデータを送信する処理P5が実行されてもよい。即ち、処理P5における回路基板11bは「第1の回路基板」に対応する。
【0045】
台所リモコン13は、処理P5により回路基板11bから受信したデータを、処理P7により、サーバ50へ送信する。これにより、「第1の回路基板」の記憶部112に格納されたデータがサーバ50に送信される。サーバ50は、処理P8により、処理P7によって台所リモコン13から受信したデータを、引継ぎデータとして記憶部502に保存する。これにより、「第1の回路基板」からのデータが、引継ぎデータとしてサーバ50に保存される。
【0046】
図5には、本実施の形態に係る温水システムにおいてサーバ50に保存される引継ぎデータの一例が示される。
【0047】
図5を参照して、サーバ50には、少なくとも初期設定データが引継ぎデータとして保存される。初期設定データは、給湯器11の製品名を示す仕様データ(コード)、ロットナンバ(No.)、制御ソフトウェアのバージョン情報、及び、給湯器11の燃料のガス種、号数等を示す機種セレクトデータを含む。これらの初期設定データは、工場出荷時に、回路基板11bに書込まれる情報に対応しており、新品の回路基板11bを給湯器11に取り付ける際に、必要最小限必要なデータに相当する。このように、初期設定データは、仕様データ及びロットナンバ等による、給湯器11の個体識別情報を含んでいる。
【0048】
更に、サーバ50に保存される引継ぎデータは、施工時設定データを含むことができる。施工時設定データは、給湯器11の施工時に設定されるデータであり、例えば、顧客情報、浴槽位置(階上/通常)、配管長(延長有/通常)、及び、排気経路(通常/延長有)を含む。これらの施工時設定データは、給湯器11の設置施工時に、給湯器11の配置態様を反映して入力されるデータである。施工時設定データによって制御量を補正する等により、給湯器11の配置態様に適合させて、給湯器11のパフォーマンスを向上することができる。施工時設定データは、例えば、温水機器10(給湯器11)の施工時に、作業者によってリモコン13へ入力されることによって、回路基板11bに書込まれる。
【0049】
例えば、給湯器11の施工の一環としてのサーバ50への初回通信接続時に、処理P5及びP7を起動することによって、初期設定データ及び施工時設定データは、台所リモコン13を経由して、サーバ50に保存される。
【0050】
サーバ50に保存される引継ぎデータは、更に、ユーザ設定データ及び運転実績データを含むことができる。ユーザ設定データは、給湯器11の使用に際して、ユーザが浴室リモコン12又は台所リモコン13の入力部122,132を用いて設定したデータであり、ユーザによる設定値が回路基板11bに書き込まれる。例えば、ユーザ設定データは、スピーカ127,137の音量設定、及び、ふろ予約時刻等を含む。ユーザ設定データについては、ユーザによってリモコン(台所リモコン13)に入力設定されたときに、当該データについて、回路基板11bに書込むとともに、処理P7を起動してサーバ50へ送信することができる。
【0051】
運転実績データは、給湯器11の制御部111で収集されて、回路基板11bの記憶部112に随時保存される。例えば、運転実績データは、通電時間、燃焼時間、燃焼回数、給湯量(積算値)等を含む。これらの運転実績データについては、定期的に処理P5を起動することにより、回路基板11b(給湯器11)から台所リモコン13へ送信することができる。
【0052】
ユーザ設定データ及び運転実績データについても、台所リモコン13は、定期的に(例えば、24時間毎)、或いは、処理P5による回路基板11b(給湯器11)からの受信毎に、処理P7を起動することができる。このようにして、ユーザ設定データ及び運転実績データについて、随時更新された最新のデータ内容を、サーバ50の記憶部502に保存することができる。
【0053】
尚、初期設定データ及び施工時設定データについても、ユーザ設定データ及び/又は運転実績データを送信するための処理P5及びP7において、同一内容であっても、サーバ50に対して繰り返し送信することが可能である。
【0054】
図5に示された各データについて、サーバ50は、通信先のMACアドレス等に基づき、いずれの給湯器11(温水機器10)のデータであるかを識別することができる。サーバ50は、各データを、温水機器10(給湯器11)毎に区別して記憶部502に保存する。
【0055】
再び図4を参照して、台所リモコン13は、コンセント接続による給湯器11の電源投入に応じてサーバ50に通信接続すると、処理P10により、当該給湯器11の識別情報を送信する。例えば、識別情報は、上述のMACアドレスを含む。これにより、サーバ50は、通信接続された給湯器11を識別することができる。
【0056】
サーバ50は、処理P20により、処理P10で通信接続された給湯器11に基板交換が有ったか否かを判定する。例えば、処理P10において、給湯器11の識別情報に併せて、回路基板11bの初期設定データを送信するシーケンスが実行されると、回路基板の交換により、初期設定データが未書き込みの新品の回路基板11bが装着されている場合には、処理P10では、初期設定データがサーバ50に送信されてこない。この場合に、サーバ50は、給湯器11に基板交換が有ったと判断して、処理P20をYES判定とすることができる。一方で、サーバ50は、処理P10により、工場出荷時に書込まれた初期設定データが回路基板11bから送信された場合には、給湯器11に基板交換が無かったと判断して、処理P20をNO判定とすることができる。
【0057】
処理P20がYES判定となるときに、温水機器10(給湯器11)に装着されている、初期設定データが未書き込みの新品の回路基板は「第2の回路基板」に相当する。処理P20により、サーバ50は、「第2の回路基板」が温水機器10に装着された状態で当該温水機器10がサーバ50に通信接続したことを検知できることが理解される。
【0058】
或いは、台所リモコン13が、回路基板11bに初期設定データが書き込まれているかを確認して、処理P10において、当該確認結果を示すフラグを識別情報とともにサーバ50へ送信することも可能である。このようにしても、サーバ50は、処理P10により台所リモコン13から送信された上記フラグに基づき、処理P20の判定を実行することができる。
【0059】
サーバ50は、処理P20のYES判定時には、処理P30により、引継ぎデータ書込を起動して、処理P35により、処理P10で識別された給湯器11に対応する引継ぎデータを記憶部502から読み出す。
【0060】
サーバ50は、処理P40により、処理P35で読み出された引継ぎデータを、温水機器10の台所リモコン13へ送信する。台所リモコン13は、処理P50により、処理P40によりサーバ50から受信した引継ぎデータを、給湯器11の回路基板11bへ送信する。回路基板11bでは、制御部111が、処理P60により、処理P50で受信した引継ぎデータを記憶部112へ書き込む。
【0061】
ここで、引継ぎデータは、少なくとも初期設定データを含む。これにより、交換後の回路基板11bを用いて給湯器11を作動するのに必要最小限なデータを、自動的に交換後の回路基板11bに書込むことができる。この結果、少なくとも、図3で説明した、通信部113の異常時に作業者が手入力するデータについて、交換後の回路基板11bに対して、自動的にサーバ50から書込むことが可能となる。この結果、回路基板の交換作業の負荷を軽減するとともに、データ入力ミスによるトラブルが回避される。
【0062】
引継ぎデータが、施工時設定データ、又は、ユーザ設定データを更に含むことにより、当該データを給湯器11側で再入力することが不要となる。このため、回路基板の交換作業負荷の軽減、又は、ユーザ利便性の向上を図ることができる。
【0063】
又、引継ぎデータが、運転実績データを更に含むことで、図3で説明した、通信部113の異常時に作業者の手入力では引継げないデータについても、交換後の回路基板11bに書込むことが可能となる。
【0064】
尚、サーバ50は、処理P20のNO判定時には、処理P30,P35をスキップするので、引継ぎデータの書込は、給湯器11に、初期設定データが書き込まれていない回路基板11b(第2の回路基板)が装着されている場合に限定して実行される。
【0065】
このように、本実施の形態に係る温水システムでは、温水機器10の動作時において、給湯器11に装着された回路基板11b(第1の回路基板)に記憶されるデータをサーバ50に保存しておき、回路基板11bの交換時には、サーバ50に保存しておいたデータを、交換後の回路基板11b(第2の回路基板)に書込むことができる。これにより、交換前の回路基板に書き込まれていた情報を、交換後の回路基板に自動的に引継ぐことができる。この結果、通信ケーブルの接続によるデータ転送が不要となるので、回路基板の交換作業負荷を軽減できるとともに、交換前の回路基板の通信部の故障時にも、手作業を要することなく、正確にデータを引継ぐことができる。
【0066】
図6には、本実施の形態に係る温水システムにおけるデータ書込起動の変形例を説明するフローチャートが示される。
【0067】
図6を参照して、サーバ50は、処理P20のYES判定時には、処理P22により、給湯器11に装着された回路基板11bが、通信ケーブルによって他の回路基板11bと接続されているか否かを判定する。例えば、回路基板11bは、通信ポート115の状態に基づき、通信ケーブル200が接続されていることを検知できる。従って、処理P22では、サーバ50から台所リモコン13を経由して回路基板11bに対して、他の回路基板との接続有無を問い合わせることができる。この結果、図3に示したように、作業者によって交換前及び交換後の回路基板間が通信ケーブルによって接続されている場合には、処理P22はYES判定とされる。
【0068】
給湯器11に装着された回路基板11bが他の回路基板と接続されていないとき(P22のNO判定時)には、図4の処理P30に処理が進められて、図4と同様に、サーバ50から回路基板11bへ引継ぎデータが書込まれる。
【0069】
サーバ50は、回路基板間が接続されているとき(P22のYES判定時)には、処理P24により、処理P30の起動を待機する。P24による待機中には、予め定められた時間の経過を検知するタイムアウト処理P26が実行される。回路基板間が接続されたままの状態でタイムアウトが検知されると(P26のYES判定)、処理P30及びP35をスキップして、処理が一旦終了される。
【0070】
図6の処理とすることにより、作業者による回路基板11b間のケーブル接続が発生した場合には、手動優先として、本実施に係る引継ぎデータのサーバからの自動書込との共存を図ることが可能となる。
【0071】
尚、本実施の形態では、温水機器10の回路基板11bとサーバ50との間でデータを送受信するための通信経路が、台所リモコン13からルータ20への通信接続を介して形成される構成例を説明したが、回路基板11b及びサーバ50間の通信経路は、これ以外の構成によっても形成することが可能である。例えば、台所リモコン13とは別個に接続された通信アダプタからルータに接続する構成によって、回路基板11b及びサーバ50間の通信経路を形成することも可能である。又、ルータ20として有線ルータを用いて、回路基板11b及びサーバ50間の通信経路を形成することも可能である。
【0072】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 温水システム、10 温水機器、11 給湯器、11a 給湯口、11b 回路基板、12 浴室リモコン、13 台所リモコン、20,60 ルータ、30 携帯端末装置、40 外部通信網、50 サーバ、70 基地局、111,123,133,501 制御部、112,124,134,502 記憶部、113,125,135,503 通信部、114 センサ、115 通信ポート、121,131 表示部、122,132 入力部、126 入室センサ、127,137 スピーカ、136 無線通信部、200 通信ケーブル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6