【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
マルチトーン信号発生部10で、周波数の異なる3波以上の中間周波信号を、互いに周波数が異なるかまたは互いに位相が90度異なる基準信号でそれぞれ変調し合波したマルチトーン中間周波信号を出力する。マルチトーン中間周波信号はアップコンバートされ校正用信号が生成される。電気光学サンプリング部30では、校正用信号を短パルス光に従ってサンプリングして電気信号として出力する。マルチトーン信号分離部40では、各基準信号と同一周波数の正弦波または該正弦波と90度位相が異なる正弦波でそれぞれ該電気信号を変調することにより、トーン信号を分離する。マルチトーン位相差測定部50では、分離されたトーン信号間の位相差を検出し、位相補正値算出部55では、トーン信号間の位相差から位相補正値を算出する。
前記校正用信号生成部は、周波数の異なる3波以上の信号測定部用中間周波信号を合波した信号測定部用マルチトーン中間周波信号を出力する信号測定部用マルチトーン中間周波信号発生部(25)をさらに有し、前記局発信号と前記周波数変換部とにより前記信号測定部用マルチトーン中間周波信号をアップコンバートして信号測定部用校正用信号を生成し、
前記マルチトーン位相差測定部は、前記信号測定部用校正用信号を前記信号測定部に入力してダウンコンバートされた信号に含まれる前記3波以上の信号測定部用中間周波信号に対応する信号測定部用トーン信号間の位相差を検出し、
前記位相補正値算出部は、前記トーン信号間の位相差と前記信号測定部用トーン信号間の位相差とから前記信号測定部の前記ダウンコンバータ(72,73)の位相の周波数特性を補正する位相補正値を算出する、請求項1記載の位相特性校正装置。
測定用中間周波信号をアップコンバートして測定用信号として出力する信号発生部(80)のアップコンバータ(84)の位相の周波数特性を校正する位相特性校正装置(1B)であって、
所定の繰返し周波数のパルス光を発生するパルス光源(2)と、
前記パルス光を分岐する光分岐器(3)と、
周波数の異なる3波以上の中間周波信号を、前記中間周波信号と同一個数の互いに直交した基準信号でそれぞれ変調し合波したマルチトーン中間周波信号を出力するマルチトーン中間周波信号発生部(10)と、
を備え、前記信号発生部は、所定の周波数の局発信号を用い前記マルチトーン中間周波信号を前記信号発生部の前記アップコンバータでアップコンバートして校正用信号を生成し、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方が入力され、前記校正用信号に含まれるアップコンバートされた前記各中間周波信号の周波数が前記パルス光の繰返し周波数の整数倍になるように、前記3波以上の中間周波信号および前記局発信号の周波数を制御する同期処理部(5)と、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の他方が入力され、該パルス光に従って前記校正用信号をサンプリングして電気信号として出力する電気光学サンプリング部(30)と、
前記電気光学サンプリング部に入力される前記パルス光と前記校正用信号との相対的時間差を変える可変遅延器(4)と、
前記相対的時間差を変えながら前記電気信号を取得し、前記各基準信号と同一周波数の互いに直交した正弦波でそれぞれ前記電気信号を変調することにより、前記電気信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応するトーン信号を分離するマルチトーン信号分離部(40)と、
前記マルチトーン信号分離部で分離された前記トーン信号間の位相差を検出するマルチトーン位相差測定部(50)と、
前記トーン信号間の位相差から前記信号発生部の前記アップコンバータの位相の周波数特性を補正する位相補正値を算出する位相補正値算出部(55)と、
を具備する位相特性校正装置。
前記マルチトーン中間周波信号発生部は、互いに周波数の異なる第1の中間周波信号と第2の中間周波信号と第3の中間周波信号と第4の中間周波信号とを発生し、互いに周波数の異なる第1の基準信号と第2の基準信号とを発生し、前記第1の中間周波信号を前記第1の基準信号で変調し、前記第2の中間周波信号を前記第2の基準信号で変調し、前記第3の中間周波信号を前記第1の基準信号と90度位相が異なる第1の直交基準信号で変調し、前記第4の中間周波信号を前記第2の基準信号と90度位相が異なる第2の直交基準信号で変調し、変調された前記第1の中間周波信号と変調された前記第2の中間周波信号と変調された前記第3の中間周波信号と変調された前記第4の中間周波信号とを合波してマルチトーン中間周波信号として出力し、
前記マルチトーン信号分離部は、前記第1の基準信号と同一周波数で所定の位相差を持つ第1の正弦波で前記電気信号を変調し、前記第2の基準信号と同一周波数で所定の位相差を持つ第2の正弦波で前記電気信号を変調し、前記第1の正弦波と90度位相が異なる第3の正弦波で前記電気信号を変調し、前記第2の正弦波と90度位相が異なる第4の正弦波で前記電気信号を変調することにより前記電気信号に含まれる前記第1の中間周波信号と前記第2の中間周波信号と前記第3の中間周波信号と前記第4の中間周波信号とに対応する4つのトーン信号を分離することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の位相特性校正装置。
前記マルチトーン中間周波信号発生部は、互いに周波数の異なる第1の中間周波信号と第2の中間周波信号と第3の中間周波信号とを発生し、互いに周波数の異なる第1の基準信号と第2の基準信号とを発生し、前記第1の中間周波信号を前記第1の基準信号で変調し、前記第2の中間周波信号を前記第2の基準信号で変調し、前記第3の中間周波信号を前記第1の基準信号と90度位相が異なる直交基準信号で変調し、変調された前記第1の中間周波信号と変調された前記第2の中間周波信号と変調された前記第3の中間周波信号とを合波してマルチトーン中間周波信号として出力し、
前記マルチトーン信号分離部は、前記第1の基準信号と同一周波数で所定の位相差を持つ第1の正弦波で前記電気信号を変調し、前記第2の基準信号と同一周波数で所定の位相差を持つ第2の正弦波で前記電気信号を変調し、前記第1の正弦波と90度位相が異なる第3の正弦波で前記電気信号を変調することにより前記電気信号に含まれる前記第1の中間周波信号と前記第2の中間周波信号と前記第3の中間周波信号とに対応する3つのトーン信号を分離することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の位相特性校正装置。
前記マルチトーン中間周波信号発生部は、互いに周波数の異なる第1の中間周波信号と第2の中間周波信号と第3の中間周波信号とを発生し、互いに周波数の異なる第1の基準信号と第2の基準信号と第3の基準信号とを発生し、前記第1の中間周波信号を前記第1の基準信号で変調し、前記第2の中間周波信号を前記第2の基準信号で変調し、前記第3の中間周波信号を前記第3の基準信号で変調し、変調された前記第1の中間周波信号と変調された前記第2の中間周波信号と変調された前記第3の中間周波信号とを合波してマルチトーン中間周波信号として出力し、
前記マルチトーン信号分離部は、前記第1の基準信号と同一周波数で所定の位相差を持つ第1の正弦波で前記電気信号を変調し、前記第2の基準信号と同一周波数で所定の位相差を持つ第2の正弦波で前記電気信号を変調し、前記第3の基準信号と同一周波数で所定の位相差を持つ第3の正弦波で前記電気信号を変調することにより前記電気信号に含まれる前記第1の中間周波信号と前記第2の中間周波信号と前記第3の中間周波信号とに対応する3つのトーン信号を分離することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の位相特性校正装置。
測定用中間周波信号をアップコンバートして測定用信号として出力する信号発生部(80)のアップコンバータ(84)の位相の周波数特性を校正する位相特性校正方法であって、
所定の繰返し周波数のパルス光を光分岐器(3)で分岐し、
周波数の異なる3波以上の中間周波信号を、前記中間周波信号と同一個数の互いに直交した基準信号でそれぞれ変調し合波したマルチトーン中間周波信号を生成し、
所定の周波数の局発信号を用い前記マルチトーン中間周波信号を前記信号発生部の前記アップコンバータでアップコンバートして校正用信号を生成し、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方を用いて前記校正用信号に含まれるアップコンバートされた前記各中間周波信号の周波数が前記パルス光の繰返し周波数の整数倍になるように、前記3波以上の中間周波信号および前記局発信号の周波数を制御し、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の他方を用いて電気光学効果により前記校正用信号をサンプリングして電気信号として出力し、
前記サンプリングに用いられる該パルス光と前記校正用信号との相対的時間差を変えながら前記電気信号を取得し、
前記各基準信号と同一周波数の互いに直交した正弦波でそれぞれ前記電気信号を変調することにより、前記電気信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応するトーン信号を分離し、
分離された前記トーン信号間の位相差を検出し、
前記トーン信号間の位相差から前記信号発生部の前記アップコンバータの位相の周波数特性を補正する位相補正値を算出する、
ことを含む位相特性校正方法。
【背景技術】
【0002】
無線通信の伝送速度を向上させるために、従来よりもキャリア周波数が高いミリ波帯やサブミリ波帯やテラヘルツ波帯において広帯域の変調信号を使用する通信方式が検討されている。以下、ミリ波帯やサブミリ波帯やテラヘルツ波帯を総称してミリ波帯と記す。
【0003】
一般に、周波数が高く広帯域になると、ミリ波帯信号発生部やミリ波帯信号測定部の周波数変換部(アップコンバータまたはダウンコンバータ)の位相の周波数特性が無視できなくなるため、周波数変換部の位相特性を校正することが重要となる。また、周波数利用効率の高い多値直交振幅変調方式では、小さな位相誤差が伝送特性の劣化をもたらすため、正確に位相特性を校正することが求められている。
【0004】
通常、ミリ波帯受信器の性能を試験する試験装置は測定用信号を生成するためのミリ波帯信号発生部を備えており、ミリ波帯送信器の性能を試験する試験装置は被測定信号を測定するためのミリ波帯信号測定部を備えている。これらミリ波帯信号発生部とミリ波帯信号測定部とを接続して両者の周波数特性を一括して校正することは容易である。しかし、試験対象であるミリ波帯受信器を正確に評価するためには、ミリ波帯信号発生部のみの位相の周波数特性を校正し、位相誤差の少ない正確なミリ波帯変調信号(測定用信号)を発生してミリ波帯受信器に入力することが必要である。また、試験対象であるミリ波帯送信器を正確に評価するためには、ミリ波帯信号測定部のみの位相の周波数特性を校正し、ミリ波帯送信器から出力されるミリ波帯変調信号(被測定信号)を正確に測定することが必要である。
【0005】
図1は、関連技術として、特許文献1および非特許文献1に記載のミリ波帯信号測定部の位相特性校正システムの基本構成を示す。以下、
図1に示す各構成要素について説明する。
【0006】
短パルス光源102は、所定の繰返し周波数で短パルス光P
1を出力する。短パルス光源102から出力された短パルス光P
1は、光分岐器103で2つの短パルス光P
2、P
3に分岐され、それぞれ光可変遅延器104と同期処理部105とに入力される。
【0007】
光可変遅延器104は、ミラー104aの位置を機械的に移動させることにより光の遅延時間を連続的に変えるものである。
【0008】
3トーン中間周波信号発生部110の中間周波信号発生器111a〜111cは、互いに異なる周波数の正弦波を所定の位相差で発生し、加算器112で3つの正弦波を加算して3トーン中間周波信号S
110として出力する。
【0009】
校正用信号生成部120は、CW(Continuous Wave)の局発信号S
122を発生する局発信号発生部122とミキサなどの周波数変換部121とを用いて、3トーン中間周波信号S
110をミリ波帯の周波数に周波数変換(アップコンバート)して校正用信号S
120として出力する。
【0010】
同期処理部105は、3トーン中間周波信号S
110と局発信号S
122とを短パルス光源102の繰返し周波数に同期させることにより、短パルス光源102の繰返し周波数に同期したミリ波帯の校正用信号S
120が得られるようにする。具体的には、同期処理部105は、位相同期ループ(PLL)回路を用いて、局発信号発生部122から出力される局発信号S
122の周波数および中間周波信号発生器111a〜111cから出力される正弦波の各周波数が短パルス光源102の繰返し周波数の整数倍になるように、局発信号発生部122および中間周波信号発生器111a〜111cを制御する。これにより、校正用信号S
120の繰返し周波数が、短パルス光源102の繰返し周波数の整数倍となる。
【0011】
スイッチSW101およびSW102を同図上側に設定すると、電気光学サンプリング部130を用いて校正用信号S
120の位相差が測定される。
【0012】
電気光学サンプリング部130は、校正用信号S
120の電界が電気光学結晶131に印加されると共に、光可変遅延器104からの短パルス光P
4が偏波分離部132を介して電気光学結晶131に入力され、電気光学結晶131の先端で反射した短パルス光が偏波分離部132を介して受光器133に入力される構成となっている。電気光学結晶131に電界が印加されると電気光学効果によって電気光学結晶131からの反射光の偏波が変化し、偏波分離部132と受光器133によって反射光の偏波変化を検出するようになっている。受光器133から出力される電気信号S
130は、電気光学結晶131に印加される電界に比例すると共に、短パルス光P
4の光パワーにも比例する。
【0013】
短パルス光P
1のパルス幅を校正用信号S
120の最大周波数の逆数の1/2よりも十分短くすると、電気光学サンプリング部130からの電気信号S
130は、校正用信号S
120を短パルス光P
1の繰返し周期でサンプリングしたものになる。短パルス光源102の繰返し周期は校正用信号S
120の繰返し周期の整数倍であるため、校正用信号S
120の繰返し波形の特定の点を繰返しサンプリングすることになる。光可変遅延器104の遅延時間を変えることにより、校正用信号S
120を短パルス光P
4でサンプリングする時刻が変わるので、光可変遅延器104の遅延時間を掃引しながら電気光学サンプリング部130からの電気信号S
130を記録すると低速の受光器133でミリ波帯の校正用信号S
120の時間波形が測定できる。
【0014】
3トーン位相差測定部150の位相検出部151aは、電気光学サンプリング部130からの電気信号S
130における3トーンのうちの第1トーンの位相を検出する。同様に、位相検出部151bおよび位相検出部151cは、それぞれ第2トーンおよび第3トーンの位相を検出する。ここで、中間周波信号発生器111a〜111cで発生する各正弦波の位相差を補正するようにしてもよい。また、電気光学サンプリング部130からの電気信号S
130を図示しないA/D変換器でディジタル信号に変換し、ディジタル信号処理にて各トーンの位相検出を行なうようにしてもよい。
【0015】
一般に、高周波信号の位相測定では絶対位相および位相の周波数傾斜が不定となるため、位相差算出部152は、3トーンの各位相の2階微分を算出し、電気光学サンプリング部130を用いた位相差測定結果として出力する。2階微分を算出するためには、少なくとも3トーンの位相が必要となる。以上の処理を校正用信号S
120の3トーンの周波数を変えて繰返し、所定の周波数範囲にわたって位相の2階微分値を測定する。位相の2階微分を2階積分することにより、位相の周波数特性を得ることができる。電気光学サンプリング部130による位相差測定結果S
150が位相差算出部152から出力される。
【0016】
スイッチSW101およびSW102を同図下側に、スイッチSW103およびSW104を同図上側に設定すると、ミリ波帯信号測定部170を用いて校正用信号S
120の位相差が測定される。
【0017】
ミリ波帯信号測定部170では、CWの局発信号S
171を発生する局発信号発生部171とミキサなどの周波数変換部172とを用いて、ミリ波帯の校正用信号S
120を中間周波信号に周波数変換(ダウンコンバート)する。局発信号S
171は必ずしも短パルス光P
1に同期させる必要は無いが、局発信号S
171の周波数が短パルス光源102の繰返し周波数の整数倍になるように、同期処理部105から局発信号発生部171を制御するようにしてもよい。中間周波信号変換部173には、第2中間周波信号に変換する周波数変換器やI/Q信号に変換する直交周波数変換器やディジタル信号に変換するA/D変換器等が含まれていてもよい。
【0018】
ミリ波帯信号測定部170の中間周波信号変換部173からの出力信号S
170は、スイッチSW104およびスイッチSW102を介して3トーン位相差測定部150に入力され、電気光学サンプリング部130からの電気信号S
130の位相差測定と同様に、位相検出部151a〜151cにおいて3トーンの各位相が検出され、位相差算出部152において3トーンの各位相の2階微分が算出され、校正用信号S
120の3トーンの周波数を変えて繰返し、位相の2階微分を2階積分することにより位相の周波数特性を得ることができ、ミリ波帯信号測定部170による位相差測定結果S
150'が出力される。
【0019】
3トーン位相差測定部150において、中間周波信号発生器111a〜111cで発生する各正弦波の位相差を補正してもよい。また、ミリ波帯信号測定部170からのIF信号またはI/Q信号を図示しないA/D変換器でディジタル信号に変換し、ディジタル信号処理にて各トーンの位相検出を行なうようにしてもよい。
【0020】
次に、ミリ波帯信号測定部170の周波数変換部(ダウンコンバータ)172、173の周波数特性を校正する方法を示す。
【0021】
ここでは、周波数特性を振幅Aと位相θを含む複素数A・e
jθで表し、位相の周波数特性の校正および振幅・位相両方の周波数特性の校正のいずれにも適用できる。校正用信号S
120の周波数特性(複素数)をX
c(f),ミリ波帯信号測定部170の周波数変換部172、173の周波数特性(複素数)をG(f),校正用信号S
120をミリ波帯信号測定部170に入力した時の中間周波信号変換部173からの出力信号S
170の周波数特性(複素数)をY
c(f)とする。前述のように、校正用信号S
120を電気光学サンプリング部130に入力して測定された校正用信号S
120の位相特性S
150からX
c(f)が求まり、校正用信号S
120をミリ波帯信号測定部170に入力して周波数変換された出力信号S
170の位相特性S
150'からY
c(f)が求まり、次式よりG(f)を求めることができる。
【0022】
【数1】
ここで、f
LOはミリ波帯信号測定部170の局発周波数である。
【0023】
位相補正値算出部155は、所定の周波数範囲にわたってG(f)を算出し、ミリ波帯信号測定部170の位相補正部174に出力する。
【0024】
被測定信号S
160の周波数特性(複素数)をX(f),被測定信号S
160をミリ波帯信号測定部170に入力した時の中間周波信号変換部173からの出力信号S
170'の周波数特性(複素数)をY(f)とすると、次式よりミリ波帯信号測定部170の周波数変換部172、173の周波数特性が補正されたX(f)を測定結果として求めることができる。
【0025】
【数2】
【0026】
スイッチSW103とSW104を同図下側に設定してミリ波帯信号送信部160からの被測定信号S
160をミリ波帯信号測定部170に入力し、中間周波信号変換部173からの出力信号S
170'を位相補正部174に入力する。位相補正部174では、ミリ波帯信号測定部170の周波数変換部172、173の周波数特性G(f)で除算する(位相のみを補正する場合はミリ波帯信号測定部170の周波数変換部172、173の位相特性を減算する)ことにより、ミリ波帯信号測定部170の周波数変換部172、173の周波数特性が補正された測定結果を得ることができる。
【0027】
図2は、関連技術として、別の位相特性校正システム100Aの構成を示す。
一般に、電気光学サンプリング部130からの電気信号S
130は微小なので、ロックイン検出を行なうことが有効である。
図2に示す位相特性校正システム100Aでは、校正用信号生成部120に基準信号変調部115を追加して基準信号S
116による振幅変調を行なうと共に、3トーン位相差測定部150の前にロックイン検出部140を追加して基準信号S
141によるロックイン検出を行なうようになっている。
【0028】
基準信号変調部115の基準信号発生器116は、基準同期信号発生器118からの基準同期信号S
118に従って、3トーンの各正弦波のいずれよりも周波数の低い基準信号S
116を発生する。変調器117は、3トーン中間周波信号S
110を基準信号S
116で変調し、変調された3トーン中間周波信号S
115を周波数変換部121へ出力する。基準同期信号S
118は、短パルス光源102の繰返し周波数に同期してもよく、同期していなくてもよい。
【0029】
基準信号変調部115からの出力信号S
115は、
図1と同様に、局発信号発生部122と周波数変換部121とを用いてミリ波帯の周波数にアップコンバートされ校正用信号S
120として出力される。スイッチSW101およびSW102を
図2上側に設定すると、
図1と同様に電気光学サンプリング部130を用いて校正用信号S
120の位相差が測定される。
【0030】
電気光学サンプリング部130からの電気信号S
130は、ロックイン検出部140に入力される。ロックイン検出部140の基準信号発生器141は、基準同期信号発生器118からの基準同期信号S
119に従って、基準信号S
116と同じ周波数の正弦波である基準信号S
141を発生する。移相器142は、変調器144において電気光学サンプリング部130でサンプリングされた校正用信号中の基準信号S
116の位相と基準信号S
141の位相とが一致するように、基準信号S
141の位相を調整し、基準信号S
142として出力する。変調器144は、電気光学サンプリング部130からの電気信号S
130を基準信号S
142で変調し、低域通過フィルタ145で低周波成分を抽出する。
【0031】
一般に、低域通過フィルタ145の遮断周波数は、基準信号S
141の周波数よりも低く、かつ光可変遅延器104の掃引速度によって決まる電気光学サンプリング部130からの電気信号S
130における3トーン信号のいずれの周波数よりも高く設定する。低域通過フィルタ145の遮断周波数を低くすると、光可変遅延器104の掃引速度を遅くする必要があり測定に時間を要するが、周波数帯域が狭くなりS/N比が改善される。
【0032】
なお、通常は、後段の3トーン位相差測定部150の位相検出部151a〜151cが3トーンの各周波数を検出する周波数選択性を有し、ロックイン検出部140の低域通過フィルタ145の帯域よりも位相検出部151a〜151cの測定帯域の方が狭いため、後者によって位相測定のS/N比が決まる。
【0033】
従って、ロックイン検出部140の低域通過フィルタ145は、3トーン位相差測定部150にてA/D変換を行なう場合や位相検出部151a〜151cにおける演算量を低減するためにサンプリングレートを下げる場合におけるアンチエイリアスフィルタとして適切な遮断周波数に設定すればよい。
【0034】
ロックイン検出の利点は、基準信号で変調された信号を検出するため、例えば、基準信号S
116の周波数を数MHzに設定することにより電気光学サンプリング部130の受光器133の直流ドリフトや1/f雑音の影響を避けることができ、位相検出部151a〜151cの測定帯域が同一の場合でも測定感度を改善できることである。
【0035】
電気光学サンプリング部130からの電気信号S
130を図示しないA/D変換器によりディジタル信号に変換し、基準信号S
141の発生/移相、電気光学サンプリング部130からの電気信号S
130と基準信号S
142の乗算、ディジタルフィルタによる低域通過のフィルタ処理を全てディジタル演算で実現してもよい。
【0036】
ロックイン検出部140からの出力信号は、3トーン位相差測定部150に入力され、
図1の場合と同様に、3トーンの各位相が検出されて2階微分が算出される。校正用信号S
120の3トーンの周波数を変えて位相の2階微分値の測定を繰返し、位相の2階微分を2階積分することにより位相の周波数特性を得ることができる。以上のようにして、電気光学サンプリング部130による位相差測定結果S
150が位相差算出部152から出力される。
【0037】
スイッチSW101およびSW102を
図2中下側に、スイッチSW103およびSW104を
図2中上側に設定し、ミリ波帯信号測定部170を用いて校正用信号S
120の位相差を測定する際は、必ずしもロックイン検出を行なう必要は無いが、
図2では、電気光学サンプリング部130による測定と同様に基準信号S
116で変調された校正用信号S
120を使用してロックイン検出を行なうよう構成されている。ミリ波帯信号測定部170の中間周波信号変換部173からの出力信号S
170は、スイッチSW104およびスイッチSW102を介してロックイン検出部140に入力されてロックイン検出が行われる。ロックイン検出部140からの出力信号が3トーン位相差測定部150に入力され、位相検出部151a〜151cにおいて3トーンの各位相が検出され、位相差算出部152において3トーンの各位相の2階微分が算出され、校正用信号S
120の3トーンの周波数を変えて繰返し、位相の2階微分を2階積分することにより位相の周波数特性を得ることができ、ミリ波帯信号測定部170による位相差測定結果S
150'が出力される。
【0038】
ミリ波帯信号測定部170の周波数変換部(ダウンコンバータ)172、173の周波数特性を校正する方法は、
図1の場合と同様である。スイッチSW103およびSW104を
図2中下側に設定してミリ波帯信号送信部160からの被測定信号S
160をミリ波帯信号測定部170に入力し、中間周波信号変換部173からの出力信号S
170'を位相補正部174に入力することにより、ミリ波帯信号測定部170の周波数特性が補正された測定結果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0072】
(第1の実施形態)
図4は、本発明の第1の実施形態に係る位相特性校正装置1の構成図である。
位相特性校正装置1は、被測定信号を周波数変換(ダウンコンバート)して測定するミリ波帯信号測定部70のダウンコンバータ72、73の位相の周波数特性を補正するものである。このために、位相特性校正装置1は、短パルス光源2と、光分岐器3と、光可変遅延器4と、マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10を有する校正用信号生成部20と、同期処理部5と、電気光学サンプリング部30と、マルチトーン信号分離部40と、マルチトーン位相差測定部50と、位相補正値算出部55と、を備えている。
【0073】
なお、本実施形態のミリ波帯信号測定部、短パルス光源、光可変遅延器、およびマルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部は、本発明の信号測定部、パルス光源、可変遅延器、およびマルチトーン中間周波信号発生部にそれぞれ対応する。
【0074】
短パルス光源2は、所定の繰返し周波数で短パルス光P
1を出力するようになっている。具体的には、例えば、モード同期ファイバレーザにより、例えば繰返し周波数100MHzでパルス幅100fs程度の短パルス光P
1を生成する。短パルス光源2から出力される短パルス光P
1は光分岐器3で2つの短パルス光P
2、P
3に分岐され、それぞれ光可変遅延器4と同期処理部5とに入力される。
【0075】
光可変遅延器4は、ミラー4aの位置を機械的に移動させることにより光の遅延時間を連続的に変えるものである。光可変遅延器4から出力された短パルス光P
4は、電気光学サンプリング部30に入力される。
【0076】
本実施形態では、光可変遅延器4は、光分岐器3と電気光学サンプリング部30の間に配置されているが、この配置に限定されない。光可変遅延器4は、電気光学サンプリング部30に入力される短パルス光P
4と、校正用信号生成部20から出力され電気光学サンプリング部30に入力される校正用信号S
20との相対的な時間差を変えることができればよい。よって、光可変遅延器4は、光分岐器3と同期処理部5の間に入れてもよく、短パルス光P
3を電気信号に変換して電気可変遅延器を経て同期処理部5に入力するようにしてもよく、これらを組み合わせた構成でもよい。
【0077】
校正用信号生成部20は、所定の周波数の局発信号S
22を用い、後で説明するマルチトーン中間周波信号S
10をアップコンバートして校正用信号S
20を生成するようになっている。このために、校正用信号生成部20は、マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10と、局発信号発生部22と、周波数変換部21と、を備えている。
【0078】
マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10は、3トーン以上のマルチトーン信号(中間周波信号)S
1〜S
4を発生し、互いに周波数が異なるかまたは互いに位相が90度異なる、中間周波信号と同一個数の基準信号(すなわち、互いに直交した基準信号)S
5〜S
8による変調を行ない、変調信号を合波してマルチトーン中間周波信号S
10を発生する。具体的には、マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10は、周波数の異なる中間周波信号S
1〜S
4を発生し、該中間周波信号を互いに周波数の異なる基準信号S
5,S
7または該基準信号と周波数が等しく位相が90度異なる直交基準信号S
6,S
8でそれぞれ変調し合波したマルチトーン中間周波信号S
10を出力するようになっている。本実施形態では、4トーン信号を発生する例を示している。基準信号S
5と基準信号S
7、基準信号S
5と直交基準信号S
8、基準信号S
7と直交基準信号S
6、直交基準信号S
6と直交基準信号S
8は周波数が異なるため直交しており、基準信号S
5と直交基準信号S
6、基準信号S
7と直交基準信号S
8は周波数が等しいが位相が90度異なるため直交しており、従って基準信号S
5,S
7および直交基準信号S
6,S
8は全ての組み合わせにおいて互いに直交している。
【0079】
より具体的には、マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10は、中間周波信号発生器11a〜11dと、基準信号発生器12a、12bと、90度移相器14a、14bと、変調器13a〜13dと、加算器15と、基準同期信号発生器16と、を備えている。
【0080】
中間周波信号発生器11a〜11dは、それぞれ中間周波信号S
1〜S
4を発生する。中間周波信号S
1〜S
4は、互いに周波数が異なり所定の位相差をもった繰返し信号である。通常は正弦波が用いられるが、所望の周波数成分を持つ繰返し信号でもよい。後述するように、位相測定データ処理の簡単化のため、中間周波信号S
1〜S
4の周波数は位相測定の周波数分解能に応じた一定の周波数間隔に設定するのが望ましい。
【0081】
基準信号発生器12aは、基準同期信号発生器16からの基準同期信号S
16に同期した周波数の繰返し信号を基準信号S
5として出力する。基準信号発生器12aは、例えば基準同期信号S
16の3倍の周波数の正弦波や矩形波を出力する。基準信号S
5は変調器13aに入力され、中間周波信号S
1を基準信号S
5で変調する。また、基準信号S
5は90度移相器14aを介して変調器13bに入力され、中間周波信号S
2を基準信号S
5と90度位相が異なる直交基準信号S
6で変調する。
【0082】
基準信号発生器12bは、基準信号S
5と周波数が異なり、かつ基準同期信号発生器16からの基準同期信号S
16に同期した周波数の繰返し信号を基準信号S
7として出力する。基準信号発生器12bは、例えば、基準同期信号S
16の4倍の周波数の正弦波や矩形波を出力する。基準信号S
7は変調器13cに入力され、中間周波信号S
3を基準信号S
7で変調する。また、基準信号S
7は90度移相器14bを介して変調器13dに入力され、中間周波信号S
4を基準信号S
7と90度位相が異なる直交基準信号S
8で変調する。
【0083】
基準信号S
5,S
7および直交基準信号S
6,S
8は、電圧がゼロ以上の単極性信号でも正負両方の両極性信号でもよいが、直流成分を持たない両極性信号の方が変調度を大きくできるので望ましい。基準信号S
5,S
7および直交基準信号S
6,S
8を矩形波等の正弦波以外の繰返し信号にする場合は、基本周波数の整数倍の高調波成分が存在するため、例えば、基準信号S
5の周波数の整数倍が基準信号S
7の周波数と一致しないように両者の周波数を設定するとよい。
【0084】
マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10は、変調器13a〜13dで変調された中間周波信号を加算器15で加算(合波)し、マルチトーン中間周波信号S
10として出力する。
【0085】
マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10で発生する信号を予めディジタル演算にて生成して波形メモリに格納し、波形メモリのデータをD/A変換器に入力してアナログ信号に変換しマルチトーン中間周波信号S
10として出力するようにしてもよい。
【0086】
ここでは、1つの基準同期信号S
16に同期して基準信号S
5と基準信号S
7を発生する構成としているが、周波数の異なる基準同期信号S
16Aと基準同期信号S
16Bを用意して、基準信号S
5は基準同期信号S
16Aに同期し、基準信号S
7は基準同期信号S
16Bに同期する構成としてもよい。
【0087】
校正用信号生成部20は、所定の周波数のCWの局発信号S
22を発生する局発信号発生部22とミキサなどの周波数変換部21とを用いて、マルチトーン中間周波信号S
10をミリ波帯にアップコンバートして校正用信号S
20として出力する。周波数変換部21には、ミキサの後に周波数変換における上側帯波または下側帯波のいずれか一方のみを抽出し局発信号S
22の洩れを除去するフィルタが含まれていてもよい。以下の例では、周波数変換における上側帯波を使用する場合を示す。下側帯波を使用する場合は周波数関係が異なるが、同様に本手法を適用することができる。
【0088】
また、局発信号発生部22または周波数変換部21には、局発信号S
22の周波数を逓倍する逓倍器が含まれていてもよく、その場合逓倍された周波数を局発信号S
22の周波数と解釈する。
【0089】
同期処理部5は、中間周波信号S
1〜S
4と局発信号S
22とを短パルス光源2の繰返し周波数に同期させることにより、短パルス光源2の繰返し周波数に同期したミリ波帯の校正用信号S
20が得られるようにする。具体的には、同期処理部5は、光分岐器3から出力される短パルス光P
3が入力され、校正用信号S
20に含まれるアップコンバートされた中間周波信号の各周波数が短パルス光P
3の繰返し周波数の整数倍になるように、中間周波信号S
1〜S
4および局発信号S
22の周波数を制御するようになっている。
【0090】
より具体的には、同期処理部5は、位相同期ループ(PLL)回路を用いて、局発信号S
22および中間周波信号S
1〜S
4の各周波数が短パルス光源2の繰返し周波数の整数倍になるように局発信号発生部22および中間周波信号発生器11a〜11d内の電圧制御発振器(VCO)を制御するようになっている。
【0091】
なお、基準同期信号S
16は、短パルス光源2の繰返し周波数に同期させても、させなくてもよい。前述のように、マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10を波形メモリとD/A変換器で構成する場合は、D/A変換クロックを短パルス光源2の繰返し周波数に同期させ、マルチトーン中間周波信号中の中間周波信号の各周波数が短パルス光源2の繰返し周波数の整数倍になるように波形メモリのデータを作成すればよい。これにより、(基準信号S
5,S
7と直交基準信号S
6,S
8による変調を除いた)校正用信号S
20の繰返し周波数が短パルス光源2の繰返し周波数の整数倍となる。
【0092】
電気光学サンプリング部30を用いて校正用信号S
20の位相差を測定する場合には、スイッチSW1およびSW2が
図4中上側に設定される。電気光学サンプリング部30は、校正用信号S
20の電界が電気光学結晶31に印加されると共に、光可変遅延器4からの短パルス光P
4が偏波分離部32を介して電気光学結晶31に入力され、電気光学結晶31の先端で反射した短パルス光が偏波分離部32を介して受光器33に入力される構成となっている。電気光学結晶31に電界が印加されると電気光学効果によって電気光学結晶31からの反射光の偏波が変化し、偏波分離部32と受光器33によって反射光の偏波変化を検出して電気信号S
30として出力する。
【0093】
電気光学サンプリング部30の具体的な構成は、例えば、非特許文献2に記載の
図6または
図7の構成で実現することができる。
【0094】
図6は、偏光ビームスプリッタ(PBS)32と1/2波長板(HWP)35と1/4波長板(QWP)36と電気光学結晶31と受光器33とからなる構成を示す。短パルス光P
4は、直線偏波で電気光学サンプリング部30に入力される。PBSは、入力された直線偏波の短パルス光P
4が透過するように、その方向が合わせられるとよい。HWPとQWPは、電気光学結晶31に電界を印加しない場合に電気光学結晶31からの反射光の光パワーの1/2がPBSで反射して受光器33に入力され、かつ電気光学結晶31に電界を印加した場合に受光器33に入力される光パワーの変化が最大となるように、それらの方向が調整されるとよい。また、短パルス光の反射率を高くするために、電気光学結晶31の先端に短パルス光の波長に応じた誘電体反射膜34を付けることが望ましい。このような構成により、電気光学結晶31からの反射光の光パワーの1/2に相当するオフセットに電気光学結晶31に印加された電界に比例する振幅成分が重畳した電気信号S
30が出力される。
【0095】
図7は、
図6と同様の偏光ビームスプリッタ(PBS)32aと1/2波長板(HWP)36と1/4波長板(QWP)35aと電気光学結晶31と受光器33aとに加えて、偏光ビームスプリッタ(PBS')32bと1/2波長板(HWP')34bとファラデーローテータ(FR)37と受光器33bと差動増幅器38とからなる構成を示す。
【0096】
入力された直線偏波の短パルス光P
4が透過するようにPBS'の方向を合わせ、入射光のFRによる45度の偏波回転を戻すようにHWP'の方向を合わせ、
図6と同様にPBSとHWPとQWPの方向を合わせるとよい。このようにすると、短パルス光P
4がPBS'およびPBSを透過して電気光学結晶31に入力され、受光器33aでは
図6と同様の電気光学結晶31からの反射光が検出されると共に、電気光学結晶31からの反射光のうちPBSを透過した光は90度偏波が回転しPBS'で反射して全て受光器33bに入力されるようになる。
【0097】
この構成により、受光器33aおよび受光器33bの出力は電気光学結晶31からの反射光の光パワーの1/2に相当するオフセットに電気光学結晶31に印加された電界に比例する振幅成分が互いに逆方向に重畳するため、差動増幅器38からの出力はオフセットが相殺してゼロとなり、電界に比例する振幅成分が2倍となる。差動構成によって信号の振幅が2倍になるのに対して、雑音は2倍にならないので、信号対雑音比が改善される。
【0098】
短パルス光P
4のパルス幅を校正用信号S
20の最大周波数の逆数の1/2よりも十分短くすると、電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30は、校正用信号S
20を短パルス光P
4の繰返し周期でサンプリングしたものになる。短パルス光源2の繰返し周期が(基準信号S
5,S
7と直交基準信号S
6,S
8による変調を除いた)校正用信号S
20の繰返し周期の整数倍であるため、(基準信号S
5,S
7と直交基準信号S
6,S
8による変調を除いた)校正用信号S
20の繰返し波形の特定の点を繰返しサンプリングすることになる。光可変遅延器4の遅延時間を変えることにより、校正用信号S
20を短パルス光P
4でサンプリングする時刻が変わるので、光可変遅延器4の遅延時間を掃引しながら電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30を記録すると、低速の受光器33でミリ波帯の校正用信号S
20の時間波形が測定できる。
【0099】
具体的には、電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30は、校正用信号S
20の時間波形の時間軸に光可変遅延器4の掃引レートを掛けたものとなるため、例えば、光可変遅延器4の掃引レートを1s当たり1psにすると、校正用信号S
20の時間軸の1psを1sに拡大して時間波形を測定することができる。周波数で表すと、300GHzのミリ波帯の校正用信号S
20を0.3Hzの低周波信号に変換して測定することができる。光可変遅延器4を所定の速度で連続的に掃引させて連続的に時間波形を測定してもよく、光可変遅延器4の遅延時間を所定の時間間隔で階段状に変化させて離散的に時間波形を測定するようにしてもよい。
【0100】
電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30は、マルチトーン信号分離部40に入力される。
【0101】
マルチトーン信号分離部40は、校正用信号S
20と短パルス光P
4との相対的時間差を変えながら電気信号S
30を取得し、基準信号S
5,S
7と同一周波数で所定の位相差を持つ正弦波S
42,S
44または該正弦波と90度位相が異なる正弦波S
43,S
45でそれぞれ電気信号S
30を変調することにより、電気信号S
30に含まれる3波以上(
図4の実施形態では4波)の中間周波信号S
1〜S
4に対応するトーン信号を分離するよう構成されている。このために、マルチトーン信号分離部40は、基準信号発生器41a〜41bと、移相器42a〜42bと、90度移相器43a〜43bと、変調器44a〜44dと、低域通過フィルタ45a〜45dと、を備えている。正弦波S
42と正弦波S
44、正弦波S
42と正弦波S
45、正弦波S
44と正弦波S
43、正弦波S
43と正弦波S
45は周波数が異なるため直交しており、正弦波S
42と正弦波S
43、正弦波S
44と正弦波S
45は周波数は等しいが90度位相が異なるため直交しており、従って正弦波S
42〜S
45は全ての組み合わせにおいて互いに直交している。
【0102】
基準信号発生器41aは、基準同期信号発生器16からの基準同期信号S
17に従って、基準信号S
5と同じ周波数の正弦波である基準信号S
40を発生する。ここで、基準同期信号S
17は、通常は基準同期信号S
16と同じ周波数の信号であるが、それに限られるものではなく、例えば基準同期信号S
17が基準同期信号S
16の1/2の周波数の場合でも結果的に基準信号S
5と基準信号S
40の周波数が等しくなるように基準信号発生器41aを適宜設定すればよい。
【0103】
移相器42aは、変調器44aにおいて電気光学サンプリング部30でサンプリングされた校正用信号S
20中の基準信号S
5の位相と基準信号S
40の位相とが一致するように、基準信号S
40の位相を調整し、基準信号S
42として出力する。ここでは、移相器42aで基準信号S
40の位相を調整する構成としているが、基準信号発生器41aと移相器42aの順序を入れ替えて基準同期信号S
17の位相を調整し、基準信号発生器41aで位相の調整された基準信号S
42を直接生成して変調器44aに入力するようにしてもよい。また、基準信号S
5の周波数が低く、校正用信号S
20と基準同期信号S
17の伝搬遅延時間差による位相差が無視できる場合は、移相器42aは無くてもよい。
【0104】
変調器44aは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30を基準信号S
42で変調し、低域通過フィルタ45aで低周波成分を抽出する。また、移相器42aの出力は90度移相器43aを介して変調器44bに入力され、変調器44bは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30を基準信号S
42と90度位相の異なる基準信号S
43で変調し、低域通過フィルタ45bで低周波成分を抽出する。
【0105】
基準信号発生器41bは、基準同期信号発生器16からの基準同期信号S
17に従って、基準信号S
7と同じ周波数の正弦波である基準信号S
41を発生する。
【0106】
移相器42bは、変調器44cにおいて電気光学サンプリング部30でサンプリングされた校正用信号S
20中の基準信号S
7の位相と基準信号S
41の位相とが一致するように、基準信号S
41の位相を調整し、基準信号S
44として出力する。ここでは、移相器42bで基準信号S
41の位相を調整する構成としているが、基準信号発生器41bと移相器42bの順序を入れ替えて基準同期信号S
17の位相を調整し、基準信号発生器41bで位相の調整された基準信号S
44を直接生成して変調器44cに入力するようにしてもよい。また、基準信号S
7の周波数が低く、校正用信号S
20と基準同期信号S
17の伝搬遅延時間差による位相差が無視できる場合は、移相器42bは無くてもよい。
【0107】
変調器44cは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30を基準信号S
44で変調し、低域通過フィルタ45cで低周波成分を抽出する。また、移相器42bの出力は、90度移相器43bを介して変調器44dに入力され、変調器44dは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30を基準信号S
44と90度位相の異なる基準信号S
45で変調し、低域通過フィルタ45dで低周波成分を抽出する。
【0108】
ここでは、基準同期信号S
16,S
17に従って基準信号S
5と基準信号S
7と基準信号S
40と基準信号S
41とを個別に発生する構成としたが、互いに周波数の異なる正弦波を発生する基準信号発生器Aと基準信号発生器Bとを用意し、基準信号発生器Aの出力信号を基準信号S
5および基準信号S
40として使用し、基準信号発生器Bの出力信号を基準信号S
7および基準信号S
41として使用する構成としてもよい。
【0109】
なお、電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30をA/D変換器によりディジタル信号に変換し、移相された基準信号S
42〜S
45を三角関数や三角関数テーブルによりディジタル信号で生成し、乗算により電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30を基準信号S
42〜S
45で変調し、ディジタルフィルタにより低域通過のフィルタ処理を行なうことにより、全てディジタル演算で実現してもよい。
【0110】
次に、上記構成により電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30の4トーンが分離される原理を説明する。
【0111】
校正用信号S
20の4トーンの各振幅をA
1,A
2,A
3,A
4,各角周波数をω
RF1,ω
RF2,ω
RF3,ω
RF4,各位相をφ
1,φ
2,φ
3,φ
4,基準信号S
40の角周波数をω
r1,基準信号S
41の角周波数をω
r2,光可変遅延器4の掃引レートをRとすると、校正用信号x
RF(t)および電気光学サンプリング部30からの電気信号x
EO(t)は次式で表される。
【数3】
【0112】
変調器44a,変調器44b,変調器44c,変調器44dの出力信号y
1(t),y
3(t),y
2(t),y
4(t)は次式のようになる。
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【0113】
低域通過フィルタ45a〜45dで|ω
r1−ω
r2|以上の角周波数を遮断すると
【数8】
となり、各トーンを分離することができる。
【0114】
一般に、低域通過フィルタ45a〜45dは、|ω
r1−ω
r2|以上の角周波数を遮断し、電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30における4トーン信号の角周波数Rω
RF1,Rω
RF3,Rω
RF2,Rω
RF4を通過するように遮断周波数を設定するとよい。低域通過フィルタ45a〜45dの遮断周波数を低くすると、光可変遅延器4の掃引速度を遅くする必要があり、測定に時間を要するが、測定の周波数帯域が狭くなりS/N比が改善される。
【0115】
なお、後段のマルチトーン位相差測定部50の位相検出部51a〜51dは、一般に4トーンの各周波数を検出する周波数選択性を有し、マルチトーン信号分離部40の低域通過フィルタ45a〜45dの帯域よりも位相検出部51a〜51dの測定帯域を狭く設定することが容易である。この場合、後者によって位相測定のS/N比が決まるため、マルチトーン信号分離部40の低域通過フィルタ45a〜45dは、マルチトーン位相差測定部50にてA/D変換を行なう場合や位相検出部51a〜51dにおける演算量を削減するためにサンプリングレートを下げる場合におけるアンチエイリアスフィルタとして適切な遮断周波数に設定すればよい。A/D変換やサンプリングレート変換を行なわない場合は、マルチトーン信号分離部40の低域通過フィルタ45a〜45dは無くてもよい。
【0116】
また、電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30において、サンプリングされた4トーン信号の角周波数Rω
RF1,Rω
RF3,Rω
RF2,Rω
RF4ではなく、基準信号S
5,基準信号S
7で変調された角周波数ω
r1±Rω
RF1,ω
r1±Rω
RF3,ω
r2±Rω
RF2,ω
r2±Rω
RF4の成分を検出するため、例えば、ω
r1とω
r2を数MHzに設定することにより数MHzの周波数の信号を測定することになり、電気光学サンプリング部30の受光器33等の直流ドリフトや1/f雑音を避けて高いS/N比で測定することが可能となる。このように、本実施形態のマルチトーン信号分離部40は、関連技術のロックイン検出の機能とマルチトーン信号を分離する機能を併せ持ち、感度のよい測定が可能となる。
【0117】
そして、マルチトーン信号分離部40において各トーン信号が分離されるため、光可変遅延器4の掃引幅Tから決まる周波数分解能Δf=1/Tよりも狭い周波数間隔で各トーン信号を配置することも可能となり、光可変遅延器4を大型化することなく周波数間隔を狭くして位相特性を測定することができる。
【0118】
更に、校正用信号S
20に位相揺らぎが存在する場合においても、隣接するトーン信号の漏洩を未然に防止し、精度よく位相測定を行なうことが可能となる。特に、ミリ波帯のような周波数が高い校正用信号S
20を生成する場合は、局発信号S
22の位相揺らぎが大きくなるため有用である。
【0119】
また、一般に高周波のミキサやアンプ等の電気部品には非線形歪みが存在し、周波数の異なる2つの正弦波を入力すると、3次相互変調歪みによって2つの入力正弦波のスペクトルの両側に新たにスペクトルが発生する。校正用信号S
20の第1,第2,第3,第4トーンの各周波数をf
RF1,f
RF2,f
RF3,f
RF4,基準信号S
5を周波数f
r1の正弦波、基準信号S
7を周波数f
r2の正弦波とすると、基準信号S
5または基準信号S
7による各トーンの変調によって上側帯波と下側帯波が発生し、校正用信号S
20の理想的なスペクトルは
図8(a)のようになる。ここでは、f
r1<f
r2の場合を図示している。
【0120】
この校正用信号S
20を3次の非線形素子に入力すると、第1トーンの下側帯波と第1トーンの上側帯波の3次相互変調によってf
RF1から3f
r1離れた周波数にスペクトルが発生し、第1トーンの下側帯波と第2トーンの上側帯波の3次相互変調によってf
RF3から2f
r2+f
r1離れた周波数にスペクトルが発生し、第1トーンの上側帯波と第2トーンの上側帯波の3次相互変調によってf
RF3から2f
r2−f
r1離れた周波数にスペクトルが発生する。同様にして、校正用信号S
20の第1〜第4トーンの周辺には
図8(b)に示す周波数関係で3次相互変調歪みのスペクトルが発生し、結果として
図8(c)に示すスペクトルのようになる。
【0121】
このように、第1〜第4トーンの付近に合計24個の3次相互変調歪みによるスペクトルが発生するが、第1〜第4トーンの上側帯波および下側帯波のいずれにも重ならない。マルチトーン信号分離部40の低域通過フィルタ45a〜45dの帯域または周波数選択性を持つ位相検出部51a〜51dの片側周波数帯域を|2f
r2―2f
r1|よりも狭く設定すると、3次相互変調歪みによるスペクトルはマルチトーン信号分離部40の低域通過フィルタ45a〜45dの帯域外または位相検出部51a〜51dの測定帯域外となる。従って、3次相互変調歪みの影響を受けずに正確な位相測定が可能となる。
【0122】
マルチトーン位相差測定部50の位相検出部51aは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30における4トーンのうちの第1トーン(周波数:Rf
RF1)の位相を検出する。例えば、
図5に示すように、位相検出部51aは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30における第1トーンの周波数Rf
RF1の正弦波を発生する正弦波発生器53aと、マルチトーン信号分離部40からの信号を同正弦波および90度移相された正弦波で変調する2つの変調器53d、53eと、変調器53d、53eからの信号を所定の時間だけ積分する2つの積分器53f、53gと、2つの積分器53f、53gからの出力から位相を算出する逆正接関数53hと、を備えることで実現できる。
【0123】
積分器53f、53gの積分時間の逆数が位相測定の測定帯域に相当するため、積分時間を長くすると測定帯域が狭くなりS/N比が改善される。位相検出部51aは、マルチトーン信号分離部40からの信号をディジタル信号に変換し、正弦関数および余弦関数を乗算し、2つの乗算結果をそれぞれ所定のサンプル数だけ積算し、逆正接関数により位相を算出するディジタル演算で実現してもよい。また、マルチトーン信号分離部40からの信号をディジタル信号に変換してメモリに格納し、CPUによりオフラインで正弦関数および余弦関数を乗算し、所定のサンプル数だけ積算し、逆正接関数により位相を算出するようにしてもよい。
【0124】
同様に、位相検出部51c,51b,51dは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30における第2,第3,第4トーン(周波数:Rf
RF2,Rf
RF3,Rf
RF4)の位相を検出するようになっている。中間周波信号発生器11a〜11dで発生する中間周波信号S
1〜S
4の位相差を補正するように、位相検出部51a〜51d内の移相器53bを設定してもよく、中間周波信号発生器11a〜11dで発生する中間周波信号S
1〜S
4の位相差を補正するように逆正接関数による位相算出結果を補正してもよい。
【0125】
一般に、高周波信号の位相測定では絶対位相および位相の周波数傾斜が不定となるため、位相差算出部52では、4トーンの各位相の2階微分を算出し、電気光学サンプリング部30による位相差測定結果として出力する。2階微分を算出するために3トーンの位相が必要となり、4トーンの位相から2つの周波数における位相の2階微分が求まる。同様にして、Nトーンの位相からN−2点の周波数における位相の2階微分が求まるので、本手法は3トーン以上の任意のトーン数に拡張することができる。
【0126】
具体的には、第1,第2,第3トーンの各周波数をf
1,f
2,f
3、第1,第2,第3トーンの各位相をθ
1,θ
2,θ
3とすると、周波数fにおける位相の微分θ′(f)および2階微分θ′′(f)は次式で表される。
【数9】
【0127】
簡単化のため、f
2−f
1=f
3―f
2=Δfとすると、
【数10】
となり、周波数f
2における位相の2階微分値が得られる。同様にして、第2,第3,第4トーンの各位相から周波数f
3における位相の2階微分値が得られる。
【0128】
以上の処理を校正用信号S
20の4トーンの周波数を変えて繰返し、所定の周波数範囲にわたって位相の2階微分値を測定する。位相の2階微分を2階積分することにより位相の周波数特性を得ることができる。簡単化のため、校正用信号S
20の4トーンの周波数を2Δfステップで変えてΔfステップの2階微分値θ′′(f
i)を測定すると、位相φ(f
k)は
【数11】
となる。i,j,kは整数、φ(f
0),φ′((f
0+f
1)/2)は絶対位相と位相傾斜に相当する任意の積分定数である。以上のようにして、電気光学サンプリング部30による位相差測定結果S
50が位相差算出部52から出力される。
【0129】
ミリ波帯信号測定部70を用いて校正用信号S
20の位相差を測定する場合には、スイッチSW1およびSW2を
図4下側に、スイッチSW3およびSW4を
図4上側に設定する。ミリ波帯信号測定部70では、所定の周波数のCWの局発信号S
71を発生する局発信号発生部71とミキサなどの周波数変換部72とを用いてミリ波帯の校正用信号S
20を中間周波信号にダウンコンバートする。周波数変換部72には、ミキサの前にイメージレスポンスを除去するフィルタが含まれていてもよい。局発信号S
71は必ずしも短パルス光P
1に同期させる必要は無いが、局発信号S
71の周波数が短パルス光源2の繰返し周波数の整数倍になるように、同期処理部5から局発信号発生部71を制御するようにしてもよい。
【0130】
中間周波信号変換部73には、周波数変換部72から出力された中間周波信号を再度周波数変換する第2の周波数変換器や、中間周波(IF)信号を同相(I)信号と直交(Q)信号に変換する直交周波数変換器や、ディジタル信号に変換するA/D変換器等が含まれていてもよい。中間周波信号変換部73に周波数変換が含まれる場合は、局発信号S
71の周波数に加えて中間周波信号変換部73の局発周波数も含めてミリ波帯信号測定部70の局発周波数と解釈する。なお、本実施形態の周波数変換部72と周波数変換を含む場合の中間周波信号変換部73とが、本発明のダウンコンバータに対応する。
【0131】
ミリ波帯信号測定部70の中間周波信号変換部73からの出力信号S
70は、スイッチSW4およびスイッチSW2を介してマルチトーン信号分離部40に入力され、電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30の位相差測定と同様に、マルチトーン信号分離部40により4つのトーンが分離され、マルチトーン位相差測定部50の位相検出部51a〜51dにおいて4トーンの各位相が検出され、位相差算出部52において4トーンの各位相の2階微分が算出され、校正用信号S
20の4トーンの周波数を変えて位相の2階微分値の測定を繰返し、位相の2階微分を2階積分することにより位相の周波数特性を得ることができ、ミリ波帯信号測定部70による位相差測定結果S
50'として出力される。
【0132】
位相検出部51a〜51dにおいて、中間周波信号発生器11a〜11dで発生する中間周波信号S
1〜S
4の位相差を補正するようにしてもよい。また、ミリ波帯信号測定部70のIF信号またはI/Q信号を図示しないA/D変換器でディジタル信号に変換し、ディジタル信号処理にて各トーンの位相検出を行なうようにしてもよく、ミリ波帯信号測定部70のIF信号またはI/Q信号をディジタル信号に変換してメモリに格納し、CPUによりオフラインで各トーンの位相検出を行なうようにしてもよい。
【0133】
(第2の実施形態)
次に、
図9を参照して、本発明の第2の実施形態に係る位相特性校正装置1Aを説明する。
【0134】
ミリ波帯信号測定部70による位相差測定では、電気光学サンプリング部30による位相差測定のような光可変遅延器4の掃引時間幅による周波数分解能の制限が無いため、必ずしもマルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10における基準信号の変調とマルチトーン信号分離部40による4トーン分離とを行なう必要が無い。
【0135】
そのため、本実施形態に係る位相特性校正装置1Aは、マルチトーン中間周波信号発生部25を備えており、この点で第1の実施形態と異なっている。その他の構成は第1の実施形態と同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。なお、本実施形態のマルチトーン中間周波信号発生部25は、本発明の信号測定部用マルチトーン中間周波信号発生部に対応する。
【0136】
図9に示すように、マルチトーン中間周波信号発生部25は、中間周波信号発生器26a〜26dと、加算器27と、を備えている。マルチトーン中間周波信号発生部25は、周波数の異なる4波のミリ波帯信号測定部用中間周波信号S
11〜S
14を合波したミリ波帯信号測定部用マルチトーン中間周波信号S
15を出力するようになっている。
【0137】
例えば、ミリ波帯信号測定部70による位相差測定時は、スイッチSW10,SW1,SW21,SW22,SW23,SW24を同図下側に、スイッチSW3,SW4を同図上側に設定する。マルチトーン中間周波信号発生部25は、中間周波信号S
11〜S
14を加算器27で合波した第2のマルチトーン中間周波信号S
15を発生する。第2のマルチトーン中間周波信号S
15は、校正用信号生成部20の局発信号発生部22と周波数変換部21により、ミリ波帯の第2の校正用信号S
21にアップコンバートされる。第2の校正用信号S
21は、ミリ波帯信号測定部70に入力され、ミリ波帯信号測定部70の中間周波信号変換部73からの出力信号S
70が、マルチトーン位相差測定部50の位相検出部51a〜51dに入力され、4トーンの各位相が検出される。そして、位相差算出部52が、4トーンの各位相の2階微分を算出し、第2の校正用信号S
21の4トーンの周波数を変えて位相の2階微分値の測定を繰返し、位相の2階微分を2階積分することにより位相の周波数特性が得られ、ミリ波帯信号測定部70による位相差測定結果S
50'として出力する。
【0138】
マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10を波形メモリとD/A変換器で構成する場合は、波形メモリの内容を中間周波信号S
11〜S
14の和に変更すればよい。
【0139】
[周波数特性の校正方法]
次に、ミリ波帯信号測定部70の周波数変換部(ダウンコンバータ)72、73の周波数特性を校正する方法を示す。この周波数特性の校正方法は、第1の実施形態と第2の実施形態とで同一であり、ここでは
図4を用いて説明する。
ここでは、周波数特性を振幅Aと位相θを含む複素数A・e
jθで表し、位相の周波数特性の校正および振幅・位相両方の周波数特性の校正のいずれにも適用できる。
【0140】
振幅の周波数特性は、位相検出部51の逆正接関数tan
―1(y/x)の代わりに絶対値(x
2+y
2)
1/2を算出して求めてもよく、位相特性校正装置1とは別のスペクトラムアナライザで測定してもよく、CW信号を用いて位相特性校正装置1とは別のパワーメータで測定してもよい。
【0141】
校正用信号S
20を電気光学サンプリング部30に入力した時の受光器33からの電気信号S
30の周波数特性(複素数)をX
c(f
EO)、校正用信号S
20をミリ波帯信号測定部70に入力した時の中間周波信号変換部73からの出力信号S
70の周波数特性(複素数)をY
c(f
IF)、ミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の周波数特性(複素数)をG(f
RF)とする。ここで、f
EOは電気光学サンプリング部30でサンプリングされた電気信号S
30の周波数、f
IFはミリ波帯信号測定部70で周波数変換された信号S
70の周波数、f
RFは校正用信号S
20およびミリ波帯信号S
60の周波数である。
【0142】
前述のように、
図4のスイッチSW1とSW2を同図上側に設定して校正用信号S
20を電気光学サンプリング部30に入力し、マルチトーン位相差測定部50にて測定された位相からX
c(f
EO)が求まる。また、スイッチSW1とSW2を同図下側に設定し、スイッチSW3とSW4を同図上側に設定し、校正用信号S
20をミリ波帯信号測定部70に入力し、マルチトーン位相差測定部50にて測定された位相からY
c(f
IF)が求まる。そして、次式より、G(f
RF)を求めることができる。
【数12】
【0143】
ここで、f
LOはミリ波帯信号測定部70の局発周波数、Rは光可変遅延器4の掃引レート(単位時間当たりの遅延時間変化量)である。位相補正値算出部55は、所望の周波数範囲にわたってG(f
RF)を算出し、ミリ波帯信号測定部70の位相補正部74に出力する。
【0144】
被測定信号S
60の周波数特性(複素数)をX(f
RF),被測定信号S
60をミリ波帯信号測定部70に入力した時の中間周波信号変換部73からの出力信号S
70'の周波数特性(複素数)をY(f
IF)とすると、次式よりミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の位相特性が補正されたX(f
RF)を求めることができる。
【数13】
【0145】
従って、ミリ波帯信号測定部70の中間周波信号変換部73からの出力信号S
70'に対して、ミリ波帯信号測定部70の局発周波数f
LOだけ周波数をシフトし、ミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の周波数特性G(f
RF)で除算する処理を位相補正部74に設定することにより、ミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の周波数特性の補正が可能となる。
【0146】
例えば、中間周波数に変換されたミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の周波数特性(複素数)の逆数H(f
IF)=1/G(f
IF+f
LO)をフーリエ逆変換してミリ波帯信号測定部70の中間周波数における時間領域のインパルス応答を算出し、そのインパルス応答を係数とするFIRディジタルフィルタを位相補正部74に構成することにより、ミリ波帯信号測定部70の中間周波信号を時間領域で補正することが可能である。ミリ波帯信号測定部70の中間周波信号変換部73において中間周波(IF)信号を同相(I)信号と直交(Q)信号に直交周波数変換する場合は、複素数のインパルス応答を算出し、複素FIRディジタルフィルタを使用すればよい。
【0147】
ミリ波帯信号送信部60は、例えば、中間周波信号発生部61と局発信号発生部62と周波数変換部63とからなる。
図4のスイッチSW3とSW4を下側に設定してミリ波帯信号送信部60からの被測定信号S
60をミリ波帯信号測定部70に入力し、中間周波信号変換部73からの出力信号S
70'を位相補正部74に入力することにより、ミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の周波数特性が補正された測定結果を得ることができる。ミリ波帯信号測定部70の位相補正部74の後に、変調信号を解析してエラーベクトル振幅(Error Vector Magnitude;EVM)などを表示するシグナルアナライザの機能を含んでいてもよい。
【0148】
(第3の実施形態)
次に、
図10を参照して、本発明の第3の実施形態に係る位相特性校正装置1Bを説明する。
【0149】
本実施形態に係る位相特性校正装置1Bは、測定用中間周波信号S
81を周波数変換(アップコンバート)して測定用信号S
80'として出力するミリ波帯信号発生部80の周波数変換部84の位相の周波数特性を補正する点、マルチトーン中間周波信号S
10をミリ波帯信号発生部80の局発信号発生部83と周波数変換部84とでアップコンバートしてミリ波帯信号S
80を生成している点で、第1の実施形態と異なっている。その他の構成は第1の実施形態と同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。なお、本実施形態のミリ波帯信号S
80、ミリ波帯信号発生部80および周波数変換部84が、本発明の校正用信号、信号発生部およびアップコンバータにそれぞれ対応する。
【0150】
本願の周波数特性の校正方法は、ミリ波帯信号発生部80の周波数変換部84の周波数特性を補正する用途に使用することも可能である。
図10に示す構成において、マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10から出力されるマルチトーン中間周波信号S
10の周波数特性(複素数)をX
c1(f
IF1)、ミリ波帯信号発生部80の周波数変換部84の周波数特性(複素数)をG
1(f
RF)、ミリ波帯信号発生部80の周波数変換部84から出力されるミリ波帯信号S
80を電気光学サンプリング部30に入力した時の受光器33からの電気信号S
30の周波数特性(複素数)をY
c1(f
EO)とする。ここで、f
IF1はマルチトーン中間周波信号S
10の周波数(中間周波数)、f
RFはミリ波帯信号S
80および測定用信号S
80'の周波数、f
EOは電気光学サンプリング部30でサンプリングされた電気信号S
30の周波数である。
【0151】
X
c1(f
IF1)は、マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10で生成するマルチトーン中間周波信号S
10の周波数特性なので既知であり、スイッチSW6およびSW7を
図10上側に設定してミリ波帯信号発生部80の周波数変換部84から出力されるミリ波帯信号S
80を電気光学サンプリング部30に入力し、マルチトーン位相差測定部50にて測定された位相からY
c1(f
EO)が求まり、次式よりG
1(f
RF)を求めることができる。
【数14】
ここで、f
LO1はミリ波帯信号発生部80の局発信号S
83の周波数、Rは光可変遅延器4の掃引レート(単位時間当たりの遅延時間変化量)である。
【0152】
位相補正値算出部55は、所望の周波数範囲にわたってG
1(f
RF)を算出する。周波数変換部84の周波数特性の補正は、ミリ波帯信号発生部80の位相補正部82において補正する方法と、ミリ波帯信号受信部90の中間周波信号変換部93の後に位相補正部を配置して周波数特性を補正する方法がある。
図10は前者の場合を示している。
【0153】
前者の場合は、ミリ波帯信号発生部80の中間周波数に変換された周波数変換部84の周波数特性(複素数)の逆数H
1(f
IF1)=1/G
1(f
IF1+f
LO1)をフーリエ逆変換してミリ波帯信号発生部80の中間周波数における時間領域のインパルス応答を算出し、そのインパルス応答を係数とするFIRディジタルフィルタをミリ波帯信号発生部80の中間周波信号発生部81からの信号にかければよい。
【0154】
後者の場合は、ミリ波帯信号受信部90の中間周波数に変換された周波数変換部84の周波数特性(複素数)の逆数H
2(f
IF2)=1/G
1(f
IF2+f
LO2)をフーリエ逆変換してミリ波帯信号受信部90の中間周波数における時間領域のインパルス応答を算出し、そのインパルス応答を係数とするFIRディジタルフィルタをミリ波帯信号受信部90の中間周波信号変換部93からの信号にかければよい。ここで、f
IF2はミリ波帯信号受信部90の中間周波信号S
90の周波数、f
LO2はミリ波帯信号受信部90の局発信号S
91の周波数である。ミリ波帯信号受信部90は、例えば、局発信号発生部91と周波数変換部92と中間周波信号変換部93とからなる。ミリ波帯信号受信部90の中間周波信号変換部93に周波数変換が含まれる場合は、f
LO2は局発信号S
91の周波数に加えて中間周波信号変換部93の局発周波数も含めたものと解釈する。
【0155】
スイッチSW6とSW7を
図10下側に設定し、ミリ波帯信号発生部80の中間周波信号発生部81から出力される任意の中間周波信号S
81を位相補正部82に入力して位相補正を行い、局発信号発生部83と周波数変換部84とでアップコンバートしてミリ波帯の測定用信号S
80'を生成し、ミリ波帯信号受信部90に入力することにより、周波数変換部84の周波数特性が補正された測定用信号S
80'を測定対象であるミリ波帯信号受信部90で受信した結果を得ることができる。もしくは、ミリ波帯信号発生部80の中間周波信号発生部81から出力される任意の中間周波信号S
81を局発信号発生部83と周波数変換部84とでアップコンバートして位相未補正の測定用信号を生成し、ミリ波帯信号受信部90に入力し、中間周波信号変換部93から出力される信号に対して位相補正を行うことにより、周波数変換部84の周波数特性が補正された測定用信号S
80'を測定対象であるミリ波帯信号受信部90で受信した場合に相当する結果を得ることができる。
【0156】
ミリ波帯信号発生部80の中間周波信号発生部81で発生する中間周波信号S
81をQPSKなどの変調信号とし、ミリ波帯信号受信部90から出力される変調信号を解析してエラーベクトル振幅(EVM)などを表示するようにしてもよい。
【0157】
(第4の実施形態)
次に、
図11を参照して、本発明の第4の実施形態に係る位相特性校正装置1Cを説明する。
【0158】
本実施形態に係る位相特性校正装置1Cは、マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Aとマルチトーン信号分離部40Aとマルチトーン位相差測定部50Aの構成が、
図4に示す第1の実施形態と異なっている。その他の構成は第1の実施形態と同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0159】
マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Aは、中間周波信号発生器11a〜11cと、基準信号発生器12a〜12cと、変調器13a〜13cと、加算器15と、基準同期信号発生器16と、を備えている。マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Aは、互いに周波数の異なる3波の中間周波信号S
1,S
2,S
3を中間周波信号と同一個数かつ互いに周波数の異なる基準信号S
4,S
5,S
6でそれぞれ変調し合波してマルチトーン中間周波信号S
10として出力するようになっている。基準信号S
4,S
5,S
6は互いに周波数が異なるため、互いに直交している。
【0160】
具体的には、マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Aでは、3トーンのマルチトーン信号S
1〜S
3を発生し、トーン数と同数で周波数の異なる基準信号S
4〜S
6によりそれぞれ変調を行なう。ここでは3トーン信号を発生する例を示す。中間周波信号発生器11a,11b,11cは、それぞれ中間周波信号S
1,S
2,S
3を発生する。中間周波信号S
1〜S
3は、互いに周波数が異なり所定の位相差をもった繰返し信号である。通常は正弦波が用いられるが、所望の周波数成分を持つ繰返し信号でもよい。
【0161】
基準信号発生器12aは、基準同期信号発生器16からの基準同期信号S
16に同期した周波数の繰返し信号を基準信号S
4として出力する。基準信号発生器12aは、例えば、基準同期信号S
16の3倍の周波数の正弦波や矩形波を出力する。基準信号S
4は変調器13aに入力され、中間周波信号S
1を基準信号S
4で変調する。
【0162】
基準信号発生器12bは、基準信号S
4と周波数が異なり、かつ基準同期信号発生器16からの基準同期信号S
16に同期した周波数の繰返し信号を基準信号S
5として出力する。基準信号発生器12bは、例えば、基準同期信号S
16の4倍の周波数の正弦波や矩形波を出力する。基準信号S
5は変調器13bに入力され、中間周波信号S
2を基準信号S
5で変調する。
【0163】
基準信号発生器12cは、基準信号S
4および基準信号S
5と周波数が異なり、かつ基準同期信号発生器16からの基準同期信号S
16に同期した周波数の繰返し信号を基準信号S
6として出力する。基準信号発生器12cは、例えば、基準同期信号S
16の5倍の周波数の正弦波や矩形波を出力する。基準信号S
6は変調器13cに入力され、中間周波信号S
3を基準信号S
6で変調する。
【0164】
基準信号S
4〜S
6は、電圧がゼロ以上の単極性信号でも正負両方の両極性信号でもよいが、直流成分を持たない両極性信号の方が変調度を大きくできるので望ましい。マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Aは、変調器13a〜13cで変調された中間周波信号を加算器15で加算(合波)し、マルチトーン中間周波信号S
10として出力する。
【0165】
マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Aで発生するマルチトーン中間周波信号S
10を予めディジタル演算にて生成して波形メモリに格納し、波形メモリのデータをD/A変換器に入力してアナログ信号に変換し、マルチトーン中間周波信号S
10として出力するようにしてもよい。
【0166】
ここでは、1つの基準同期信号S
16に同期して基準信号S
4〜S
6を発生する構成としているが、周波数の異なる基準同期信号S
16Aと基準同期信号S
16Bと基準同期信号S
16Cとを用意して、基準信号S
4は基準同期信号S
16Aに同期し、基準信号S
5は基準同期信号S
16Bに同期し、基準信号S
6は基準同期信号S
16Cに同期する構成としてもよい。
【0167】
同期処理部5は、中間周波信号S
1〜S
3の各周波数が短パルス光源2の繰返し周波数の整数倍になるように中間周波信号発生器11a〜11cを制御する。
【0168】
マルチトーン信号分離部40Aは、基準信号発生器41a〜41cと、移相器42a〜42cと、変調器44a〜44cと、低域通過フィルタ45a〜45cと、を備えている。マルチトーン信号分離部40Aは、基準信号S
4〜S
6と同一周波数で所定の位相差を持つ正弦波S
43〜S
45で電気光学サンプリング部30から出力される電気信号S
30を変調することにより、該電気信号S
30に含まれる3波以上の中間周波信号S
1〜S
3に対応するトーン信号を分離するようになっている。正弦波S
43〜S
45はそれぞれ基準信号S
4〜S
6と同一周波数であり、互いに周波数が異なるため互いに直交している。
【0169】
具体的には、基準信号発生器41aは、基準同期信号発生器16からの基準同期信号S
17に従って、基準信号S
4と同じ周波数の正弦波である基準信号S
40を発生する。移相器42aは、変調器44aにおいて電気光学サンプリング部30でサンプリングされた校正用信号S
20中の基準信号S
4の位相と基準信号S
40の位相とがほぼ一致するように、基準信号S
40の位相を調整し、基準信号S
43として出力する。変調器44aは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30を、位相の調整された基準信号S
43で変調し、低域通過フィルタ45aで低周波成分を抽出する。
【0170】
基準信号発生器41bは、基準同期信号発生器16からの基準同期信号S
17に従って、基準信号S
5と同じ周波数の正弦波である基準信号S
41を発生する。移相器42bは、変調器44bにおいて電気光学サンプリング部30でサンプリングされた校正用信号S
20中の基準信号S
5の位相と基準信号S
41の位相とがほぼ一致するように、基準信号S
41の位相を調整し、基準信号S
44として出力する。変調器44bは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30を、位相の調整された基準信号S
44で変調し、低域通過フィルタ45bで低周波成分を抽出する。
【0171】
基準信号発生器41cは、基準同期信号発生器16からの基準同期信号S
17に従って、基準信号S
6と同じ周波数の正弦波である基準信号S
42を発生する。移相器42cは、変調器44cにおいて電気光学サンプリング部30でサンプリングされた校正用信号S
20中の基準信号S
6の位相と基準信号S
42の位相とがほぼ一致するように、基準信号S
42の位相を調整し、基準信号S
45として出力する。変調器44cは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S
30を、位相の調整された基準信号S
45で変調し、低域通過フィルタ45cで低周波成分を抽出する。
【0172】
ここでは、移相器42a〜42cで基準信号S
40〜S
42の位相を調整する構成としているが、基準信号発生器41a〜41cと移相器42a〜42cの順序を入れ替えて基準同期信号S
17の位相を調整し、基準信号発生器41a〜41cで位相の調整された基準信号S
43〜S
45を直接生成して変調器44a〜44cに入力するようにしてもよい。また、基準信号S
4〜S
6の周波数が低く、校正用信号S
20と基準同期信号S
17の伝搬遅延時間差による位相差が無視できる場合は、移相器42a〜42cは無くてもよい。
【0173】
図4に示す第1の実施形態の構成では、周波数の異なる基準信号S
42と基準信号S
44と、基準信号S
42と90度位相の異なる基準信号S
43と、基準信号S
44と90度位相の異なる基準信号S
45との4つの互いに直交した基準信号を用いて4トーン信号を分離するのに対して、
図11に示す本実施形態の構成では、周波数の異なる3つの基準信号S
43〜S
45(互いに直交した基準信号)を用いて3トーン信号を分離する。
【0174】
図11の構成では、90度位相の異なる基準信号を使用しておらず、周波数の異なる基準信号によって基準信号間の直交性が保たれるため、変調器44a〜44cにおいて電気光学サンプリング部30でサンプリングされた校正用信号S
20中の基準信号S
4〜S
6の位相と基準信号S
40〜S
42の位相とが正確に一致するように、基準信号S
40〜S
42の位相を必ずしも厳密に調整する必要はない。マルチトーン信号分離部40Aからのトーン信号出力が小さくならないように例えば±15度程度以内に位相を合わせればよく、移相器42a〜42cの調整が容易であるという特徴を持つ。
【0175】
マルチトーン位相差測定部50Aは、3トーンの各位相を検出する位相検出部51a〜51cと、3トーンの各位相の2階微分を算出する位相差算出部52とを備える。位相検出部51a〜51cは
図4と同様であり、例えば、
図5の構成で実現することができる。2階微分を算出するために3トーンの位相が必要となるため、
図11の位相差算出部52では1回につき1つの周波数における位相の2階微分を求め、3トーンの周波数を変えて繰り返し、位相の2階微分を2階積分することにより所定の周波数範囲における校正用信号S
20の位相が得られる。
【0176】
図11のマルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Aとマルチトーン信号分離部40Aとマルチトーン位相差測定部50Aは、
図10のミリ波帯信号発生部80の位相特性を校正する位相特性校正装置1Bに適用することも可能であり、各実施形態を適宜組み合わせることができる。
【0177】
図12は、マルチトーンのトーン数を減らす場合の構成例を示す。
例えば、
図12に示すように、
図4の第1の実施形態のマルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10から中間周波信号発生器11dと変調器13dと基準信号S
7を90度移相する90度移相器14bとを削除し、マルチトーン信号分離部40から基準信号S
44を90度移相する90度移相器43bと変調器44dと変調器44dの後の低域通過フィルタ45dとを削除し、マルチトーン位相差測定部50から位相検出部51dを削除することにより、3トーンの構成のマルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10B、マルチトーン信号分離部40B、マルチトーン位相差測定部50Bに変更することも可能であり、トーン数が奇数の場合にも対応可能である。
【0178】
図13は、マルチトーンのトーン数を増やす場合の構成例を示す。
例えば、
図13に示すように、
図4の第1の実施形態のマルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10に対し、2つの中間周波信号発生器11e、11fと基準信号発生器12cと90度移相器14cと2つの変調器13e、13fとを追加し、マルチトーン信号分離部40に基準信号発生器41cと移相器42cと90度移相器43cと2つの変調器44e、44fと2つの低域通過フィルタ45e、45fとを追加し、マルチトーン位相差測定部50に2つの位相検出部51e、51fを追加することにより、4トーンから6トーンに増やしたマルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10C、マルチトーン信号分離部40C、マルチトーン位相差測定部50Cに変更することも可能である。
【0179】
図14は、マルチトーンのトーン数を増やす場合の別の構成例を示す。
図11の第4の実施形態の構成についても、例えば
図14に示すようにマルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Aに中間周波信号発生器11dと基準信号発生器12dと変調器13dとを追加し、マルチトーン信号分離部40Aに基準信号発生器41dと移相器42dと変調器44dと低域通過フィルタ45dとを追加し、マルチトーン位相差測定部50Aに位相検出部51dを追加することにより、3トーンから4トーンに増やしたマルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10D、マルチトーン信号分離部40D、マルチトーン位相差測定部50Dに変更することが可能である。以上のようにして、第4の実施形態においても3トーン以上の任意のトーン数に拡張することができる。
【0180】
以上述べたように、本発明は、隣接するトーン信号の変動および非線形の影響を排除して高精度な位相測定を実現すると共に、可変遅延器の掃引幅によらず高い周波数分解能での位相測定ができるという効果を有し、位相特性校正装置および位相特性校正方法の全般に有用である。