特開 2020-194026 カポタスト

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】特開2020-194026(P2020-194026A)

(43)【公開日】2020年12月3日

(54)【発明の名称】カポタスト

(51)【国際特許分類】

   G10D 3/053 20200101AFI20201106BHJP

   G10G 7/02 20060101ALI20201106BHJP

【ＦＩ】

   G10D3/04 110

   G10G7/02 100

【審査請求】未請求

【請求項の数】3

【出願形態】ＯＬ

【全頁数】5

(21)【出願番号】特願2019-98286(P2019-98286)

(22)【出願日】2019年5月27日

(71)【出願人】

【識別番号】719002920

【氏名又は名称】野田 順朗

(72)【発明者】

【氏名】野田 順▲朗▼

【テーマコード（参考）】

5D002

5D182

【Ｆターム（参考）】

5D002AA08

5D002CC23

5D182DD08

(57)【要約】

【課題】フレットのない三線や三味線、等の調弦や移調作業が簡単に精度よく行うことができるカポタストを提供する。
【解決手段】フレットのない弦楽器の棹に、該棹の裏側に配される支持バー２０と、棹の表面に配される弦押さえバー３０と、これらのバーの一部に設けられた開閉軸４０と、これらのバーを棹に対し閉じる方向に荷重するように設けられたバネ５０を具備し、弦を該棹表面に押さえつけるクリップ式カポタストであって、弦押さえバー本体３２に弾性体材料３４と弦接触部にプラスチック等低摩擦材料３３を重ねて具備する。カポタスト１０を棹１に装着したまま片手で棹の長手方向にスライドでき調弦が素早くできる。
【選択図】図２

【特許請求の範囲】

【請求項1】

フレットのない弦楽器の棹に、該棹の裏側に配される支持バーと、棹の表面に配される弦押さえバーと、これらのバーの一部に設けられた開閉軸と、これらのバーを棹に対し閉じる方向に荷重するように設けられたバネを具備し、弦を該棹表面に押さえつけるクリップ式カポタストであって、
弦押さえバーに弾性体材料と弦接触部材に低摩擦材を重ねて具備することを特徴とするカポタスト。

【請求項2】

請求項１に記載のカポタストであって、弦接触部材の、弦の長手方向の接触長さが５ｍｍ未満であることを特徴とするカポタスト。

【請求項3】

請求項１または２に記載のカポタストであって、チューナと一体としたことを特徴とするカポタスト。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、三線や三味線等フレットのない弦楽器のカポタストに関するものである。

【背景技術】

【0002】

三線や三味線等フレットのない弦楽器は、複数の弦が張られた棹を有しており、棹の表面に指で弦を押さえることで演奏されるものであるが、このような弦楽器を演奏するに際しては、曲のキーを調整するためにカポタストを用いることがある。ここでカポタストは、弦楽器の棹に装着される器具であり、全ての弦を棹の長手方向において同じ位置に押さえつける器具である。

【0003】

従来のカポタストは、すべての弦を棹の表面に確実に押さえつけるため、弦押さえ部にゴム等弾性体が組み込まれているが、フレットのない三線や三味線等は、弦押さえ部の棹の長手方向の位置精度が重要で、チューニングしながら位置を微調整する必要があるが、カポタストを棹に取り付けたまま棹の長手方向にスライドするには大きな操作力が必要で容易にできないため、カポタストを脱着し直す必要があり面倒であるという欠点があった。

【0004】

従来のカポタストは、すべての弦を棹の表面に確実に押さえつけるため、弦押さえ部にゴム等弾性体が組み込まれているが、フレットのない三線や三味線等は、弾性体が振動する弦に直接接触するため、解放弦の状態で弦を弾く場合、振動の減衰が大きく音の響きが短いという欠点があった。

【0005】

従来のカポタストは、弦接触部材の弦の長手方向の寸法（押さえ巾）が５ｍｍ〜１０ｍｍと大きく、フレットのない三線や三味線等にとっては、カポタストの各部材の寸法ばらつきや棹の形状、等の原因により偏当たりになった場合、押さえ巾の範囲内で真の弦押さえのポイントがばらつき、調弦が不正確になるという欠点があった。

【0006】

カポタストを弦楽器の棹に装着する場合、チューニング作業を伴うことが多く、カポタストのほかにチューナを取り付けたりするのが面倒でチューニングに時間を要するという欠点があった。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0007】

【特許文献1】実全昭５５−１６７２８０

【特許文献2】特開２０１８−１５５８３９

【特許文献3】特開２０１２−１４１３５８

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0008】

三線や三味線等フレットのない弦楽器は、調弦しながら棹の長手方向の押さえ位置を微調整する必要があるが、カポタストを棹に取り付けたまま棹の長手方向にスライドするには大きな操作力が必要で容易でないため、カポタストを脱着し直す必要があり面倒であるという欠点がある。この発明の目的はこの問題に鑑み、カポタストを棹に取り付けたまま棹の長手方向に容易にスライドできるカポタストを提供することにある。

【0009】

従来のカポタストは、弦接触部材がゴム等弾性体であるため、解放弦の状態で弦を弾く場合、振動の減衰が大きく音の響きが短いという欠点がある。この発明の目的はこの問題に鑑み、解放弦の状態で弦を弾く場合、振動の減衰が小さく音の響きが長いカポタストを提供することにある。

【0010】

従来のカポタストは、弦接触部材の弦の長手方向の寸法（押さえ巾）が５ｍｍ〜１０ｍｍと大きく、三線や三味線等フレットのない弦楽器にとっては、カポタストの各部材の寸法ばらつきや棹の形状、等の原因により偏当たりとなった場合、その押え巾の範囲内で真の弦押さえのポイントがばらつき、調弦が不正確になるという欠点がある。この発明の目的はこの問題に鑑み、正確な調弦が可能なカポタストを提供することにある。

【0011】

カポタストを弦楽器の棹に装着する場合、チューニング作業を伴うことが多く、カポタストのほかにチューナを取り付けたりするのが面倒でチューニングに時間を要するという欠点がある。この発明の目的はこの問題に鑑み、容易に短時間でチューニングできるカポタストを提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0012】

本発明は、弦押さえバーに弾性体材料と弦接触部材にプラスチック等低摩擦材料を重ねて具備したカポタストであり、弾性体材料は従来のすべての弦を棹の表面に確実に押さえつけるための機能を保持しつつ、弦接触部材は低摩擦材料により棹に取り付けたまま棹の長手方向に片手で小さい力で容易にスライドすることができる。

【0013】

弦接触部材はプラスチック等であり、従来のゴム等弾性体に比較し音の響きを長くすることができる。

【0014】

本発明は、弦接触部材の、弦の長手方向の寸法（押さえ巾）が５ｍｍ未満であり、カポタストの各部材の寸法ばらつきや棹の形状、等の原因による偏当たりとなった場合でも、真の弦押さえポイントのばらつき巾は小さく、調弦の精度が向上する。

【0015】

本発明は、チューナと一体としたことで、棹に取り付けたまま棹の長手方向にスライドしながら同時にチューニングできるので調弦作業が短時間で可能となる。

【発明の効果】

【0016】

本発明のカポタストは、カポタストを棹に取り付けたまま棹の長手方向に片手で小さい力で容易にスライドでき、また、調弦の精度が向上するので短時間で調弦が可能となる。

【0017】

本発明のカポタストは、弦接触部材がプラスチック等であり、ゴム等振動減衰性の大きい材料ではないので、解放弦の状態で弦を弾く場合、振動の減衰が小さく音の響きが長く良好である。

【0018】

本発明のカポタストは、チューナと一体なので、棹に取り付けたまま棹の長手方向にスライドしながら同時にチューニングできるので調弦作業を素早くすることが可能になる。

【図面の簡単な説明】

【0019】

【図1】本発明に係るカポタストの一例を示す（a）背面図、（b）側面図、（c）正面図である。

【図2】同カポタストを三線の棹に装着した状態を示す（a）側面図、（b）正面図である。

【図3】本発明に係るチューナを一体化したカポタストの一例を三線の棹に装着した状態を示す（a）側面図、（b）正面図である。

【発明を実施するための形態】

【0020】

本発明に係るカポタストの実施形態としての一例を、以下、図面にしたがって詳細に説明する。なお、以下では、弦楽器として３本の弦を有する三線に用いるカポタストを例示するが、本発明に係るカポタストは、三味線等フレットのない他の弦楽器にも用いることができる。

【0021】

図１に示すように、カポタスト１０は、支持バー２０と、弦押さえバー３０とが開閉軸４０にて開閉可能に組合わされ、ばね５０により常時閉じる方向に荷重されている。

【0022】

弦押さえバー３０は、弦押さえバー本体３２と、弦接触部材３３と、その間に弾性体材料３４が接着されている。

【0023】

図２は、カポタスト１０を棹１に装着した状態を示す。つまみ部２１、３１を指でつまむとカポタストが開くので、その状態で棹１に装着する。弦２は棹１表面に弦接触部材３３と弾性体３４を介し弦押さえバー本体３２により押さえ付けられた状態である。複数の弦の太さの差異や、各部材の製作誤差、等によるばらつきは、弾性体材料３４が吸収し、弦接触部材３３が適度に撓んで、各弦を棹の表面に一定の力で押さえつけることができる。

【0024】

弦接触部材３３はプラスチック等低摩擦材料なので、図２の状態のままカポタスト全体を片手で棹の長手方向に小さな力でスライドでき調弦が素早くできる。

【0025】

弦接触部材３３の材質は、摩擦係数０．４以下のポリプロピレン・ポリアセタール・ナイロン等プラスチックや竹が好ましく、また、厚みは撓みやすいよう１ｍｍ以下が好ましい。

【0026】

カポタスト１０を棹１に取り付けたまま棹の長手方向にスライドするに必要な力は、ばね５０による弦押さえ力が１２Ｎにおいて、従来の弦押さえ部がゴム製のものでは９〜１２Ｎと大きな力が必要だが、本発明のものは、２〜３Ｎと小さく、片手で素早くスライドすることができる。

【0027】

弦接触部材３３は弦の長手方向の寸法（押え巾）が５ｍｍ未満であり、カポタストの各部材の寸法ばらつきや棹の形状、等の原因による偏当たりとなった場合でも、真の弦押さえポイントのばらつき巾は小さく、調弦の精度が向上する。

【0028】

図３は、チューナ７０を一体化したカポタスト１０を棹１に装着した状態を示す。カポタスト１０を棹１に取り付けたまま棹１の長手方向にスライドしながら同時にチューニングでき、調弦作業を素早くすることが可能になる。

【符号の説明】

【0029】

１ 棹
２ 弦
１０ カポタスト
２０ 支持バー
２１ つまみ部
３０ 弦押さえバー
３１ つまみ部
３２ 弦押さえバー本体
３３ 弦接触部材
３４ 弾性体材料
４０ 開閉軸
５０ ばね
７０ チューナ

【図1】

【図2】

【図3】