【解決手段】搬送制御装置20は、搬送システム1の動作を制御する。搬送制御装置20は、第1期間に関連付けられた搬送指令及び搬送システム1の状態を示す状態情報を入力して、搬送システム1の動作を制御するためのパラメータの設定値の候補毎に、第1期間の後の第2期間に関連付けられた搬送システム1の予測される状態を示す状態予測情報を出力するように機械学習された状態予測部21と、過去期間T
搬送路と、前記搬送路に沿って走行し、物品を搬送する複数の搬送車と、前記搬送車に搬送指令を割り付ける搬送車コントローラと、を含む搬送システムの動作を制御する搬送制御装置であって、
第1期間に関連付けられた前記搬送指令及び前記搬送システムの状態を示す状態情報を入力して、前記搬送システムの動作を制御するためのパラメータの設定値の候補毎に、前記第1期間の後の第2期間に関連付けられた前記搬送システムの予測される状態を示す状態予測情報を出力するように機械学習された状態予測部と、
予測対象期間よりも前の過去期間に関連付けられた前記搬送指令及び前記状態情報を前記状態予測部に入力することにより、前記パラメータの設定値の候補毎に前記予測対象期間に関連付けられた前記状態予測情報を取得し、前記パラメータの設定値の候補毎の前記状態予測情報の評価結果に基づいて、前記予測対象期間において前記搬送システムに適用される前記パラメータの設定値を決定する決定部と、を備える搬送制御装置。
前記搬送システムの状態は、前記搬送指令毎の搬送時間、前記物品の搬送量、前記搬送車の稼働率、前記搬送車のステータス情報と位置情報、及び前記搬送車の速度情報の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の搬送制御装置。
前記第1期間に関連付けられた前記搬送指令に関する情報を入力して、前記第2期間に発生すると予測される前記搬送指令に関する搬送指令予測情報を出力するように機械学習された搬送指令予測部を更に備え、
前記状態予測部は、前記搬送指令予測情報を更に入力して、前記第2期間に関連付けられた前記パラメータの設定値の候補毎の前記状態予測情報を出力するように機械学習されており、
前記決定部は、
前記過去期間に関連付けられた前記搬送指令に関する情報を前記搬送指令予測部に入力することにより、前記予測対象期間に関連付けられた前記搬送指令予測情報を取得し、
前記過去期間に関連付けられた前記搬送指令及び前記状態情報と前記予測対象期間に関連付けられた前記搬送指令予測情報とを前記状態予測部に入力することにより、前記パラメータの設定値の候補毎に前記予測対象期間に関連付けられた前記状態予測情報を取得する、請求項1又は2に記載の搬送制御装置。
前記パラメータは、前記搬送路において定められたエリア毎の、エリア内に同時に存在する空き搬送車の台数の目標値を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の搬送制御装置。
前記パラメータは、前記搬送路において定められたエリアの複数の入口及び複数の出口を前記搬送車に使用させる割合を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の搬送制御装置。
前記パラメータは、前記搬送指令が割り付けられた前記搬送車の搬送経路を決定する際に、予め用意された複数の経路選択アルゴリズムのうちからどのアルゴリズムを使用するかを決定するためのルールを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の搬送制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、図面の説明においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0014】
[第1実施形態]
図1に示されるように、本実施形態に係る搬送システム1は、搬送路4と、搬送路4に沿って走行可能な複数の搬送車2と、を含む。搬送路4は、例えば、工場内に敷設されたレール(軌道)等である。搬送車2は、物品を搬送する無人搬送車である。搬送車2は、例えば天井走行車、有軌道台車等である。本実施形態では一例として、搬送車2は、搬送路4に沿って走行可能に設けられた天井搬送車である。例えば、搬送車2は、天井走行式無人搬送車(OHT:Overhead Hoist Transfer)である。一例として、搬送車2によって搬送される物品は、複数枚の半導体ウェハが収容されるカセット(いわゆるFOUP(Front Opening Unified Pod))である。
【0015】
搬送路4は、複数(
図1の例では12個)の区画(ベイ)に分けられている。搬送路4は、ベイ内のルートであるイントラベイルート5と、異なるベイ間を接続するルートであるインターベイルート6と、を含む。搬送路4に沿って、処理装置7及びストッカ8が設けられている。処理装置7は、半導体ウェハに対する処理を実行する装置である。ストッカ8は、搬送車2が物品を仮置きできる地点であり、バッファとしての役割を果たす。合流部9は、搬送路4上において、複数の搬送車2が同時に進入することを排除する排他制御が必要となる地点である。
【0016】
処理装置7及びストッカ8には、物品を搬入するための入庫ポート(すなわち、搬送車2が物品を荷降ろしするための地点)と、物品を搬出するための出庫ポート(すなわち、搬送車2が物品を荷つかみするための地点)と、が設けられている。入庫ポート及び出庫ポートは、搬送路4の下方に配置されている。入庫ポートは、出庫ポートと兼用されてもよい。ストッカ8は、物品が載置される複数の棚を有する。また、ストッカ8は、ストッカ8内において、当該複数の棚、入庫ポート、及び出庫ポートの間で物品を搬送するスタッカクレーン81(
図2参照)を有する。
【0017】
図2に示されるように、搬送システム1は、MCS(Material Control System)11と、搬送車コントローラ12と、ストッカコントローラ13と、搬送車コントローラ12の制御対象である搬送車2と、ストッカコントローラ13の制御対象であるスタッカクレーン81と、を有する。
【0018】
MCS11は、上位コントローラ(ここでは、製造業者等により管理されるMES(Manufacturing Execution System)3)からの搬送要求を取得する。MES3は、処理装置7と通信可能とされている。処理装置7は、処理が完了した物品の搬送要求(荷つかみ要求、荷降ろし要求)をMES3に送信する。MES3は、処理装置7から受信した搬送要求をMCS11に送信する。
【0019】
MCS11は、MES3から搬送要求を受けると、ストッカ8での入庫又は出庫が必要な場合、所定のタイミングで入庫又は出庫の指令をストッカコントローラ13に送信する。ストッカコントローラ13は、当該指令に応じて入庫又は出庫のための動作指令を該当するストッカ8のスタッカクレーン81に送信する。
【0020】
また、MCS11は、MES3から搬送要求を受けると、当該搬送要求を搬送指令に変換し、当該搬送指令を搬送車コントローラ12に送信する。これにより、搬送車コントローラ12を介して、搬送指令が特定の搬送車2に割り付けられる。搬送車コントローラ12は、予め定められた選択基準に基づいて、搬送指令の割付先となる搬送車2を決定する。また、搬送車コントローラ12は、予め定められたルート探索アルゴリズム(例えば公知の最短経路検索アルゴリズム等)を実行することにより、搬送指令を実行するための走行経路を決定し、当該走行経路を搬送車2に通知する。これにより、搬送車2は当該走行経路に基づいて走行する。
【0021】
搬送車コントローラ12及び搬送車2は、ルートマップを記憶している。ルートマップは、
図1に示したようなレイアウトの情報である。具体的には、ルートマップは、走行ルートの配置(すなわち、
図1に示されるような搬送路4の配置)、原点として設定された位置、原点を基準とする基準位置、移載位置(上述した入庫ポート、出庫ポート等)の座標等を示す情報である。また、搬送車2は、自機の現在位置の座標を示す位置情報を保持しており、ルートマップと位置情報とを比較することにより、上述のように決定された走行経路に基づく走行を行う。
【0022】
図3は、搬送指令に含まれる情報(データ項目)の一例を示す図である。本実施形態では、搬送指令は、「コマンドID」、「Fr」、「To」、「搬送プライオリティ」、及び「キャリアID」を含む。「コマンドID」は、搬送指令を一意に特定するID情報である。「Fr」は、荷つかみ搬送ポート(上述した出庫ポートに相当)を特定する情報である。「To」は、荷降ろし搬送ポート(上述した入庫ポートに相当)を特定する情報である。「搬送プライオリティ」は、搬送に関する優先度を示す情報(ここでは一例として、1から99までの数値)である。例えば、搬送の優先度(搬送を早期に完了させる必要性)が高い搬送指令ほど、搬送プライオリティとして小さい数値が設定される。「キャリアID」は、搬送対象となる物品を特定するID情報である。すなわち、上述した搬送指令は、「キャリアID」により特定される物品を「Fr」により特定される荷つかみ搬送ポート(From地点)から「To」により特定される荷降ろし搬送ポート(To地点)まで搬送することを指示する情報である。
【0023】
搬送指令の割り付けは、予め定められたルールに基づいて実行される。例えば、割り付け対象の搬送指令は、他の搬送指令が割り付けられていない一以上の搬送車2(空き搬送車)のうち、割り付け対象の搬送指令の「Fr」により特定される地点に近い位置に存在する搬送車2に対して優先的に割り付けられる。
【0024】
MCS11は、搬送システム1の動作を制御するためのパラメータを記憶する記憶部11aを有する。パラメータは、例えば、MCS11、搬送車コントローラ12、ストッカコントローラ13、搬送車2、及びスタッカクレーン81の少なくとも1つの動作を規定又は制限するための情報である。パラメータは、搬送路4のうち搬送車2が走行可能な経路を制限する情報、搬送車2の経路選択ロジックを規定する情報等を含み得る。例えば、パラメータは、エリア台数設定、エリアの入口及び出口の使用割合、経路選択ロジック等を含み得る。パラメータの具体例の詳細については後述する。
【0025】
本実施形態では一例として、記憶部11aに記憶されたパラメータは、必要に応じて、MCS11を介して、搬送車コントローラ12、ストッカコントローラ13、搬送車2、及びスタッカクレーン81等に通知される。これにより、搬送システム1内において上記パラメータが共有され、上記パラメータに基づいて搬送システム1の動作が制御される。搬送システム1の動作とは、コントローラ群(MCS11、搬送車コントローラ12、ストッカコントローラ13)により実行される制御内容に応じて定まる各搬送車2の走行動作である。例えば、上記パラメータの設定値によって、搬送車コントローラ12が搬送指令を割り付けるタイミング(例えば、MCS11から通知された搬送指令を直ちに割り付けるか、予め設定された搬送指令の同時実行数の上限値を超えないように搬送指令の割り付けを実行するか、等)や、搬送車コントローラ12が搬送車2の走行経路を決定するために実行するルート探索アルゴリズムの種類等が決定される。
【0026】
搬送制御装置20は、上述したパラメータの設定値を調整することにより、搬送システム1の動作を制御する。
図4に示されるように、搬送制御装置20は、一以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ201と、主記憶装置である一以上のRAM(Random Access Memory)202及び一以上のROM(Read Only Memory)203と、オペレータが操作入力を行うためのキーボード等の入力装置204と、オペレータに情報を提示するディスプレイ等の出力装置205と、搬送システム1(例えば、MCS11等)と通信を行うための通信モジュール206と、HDD及びSSD等の補助記憶装置207と、を含むコンピュータシステムとして構成され得る。搬送制御装置20は、1台のサーバ装置として構成されてもよいし、分散配置される複数のサーバ装置として構成されてもよい。また、本実施形態では、搬送制御装置20は、搬送システム1のコントローラ群とは異なる装置であるが、搬送制御装置20は、搬送システム1のコントローラ(例えば、MCS11)に組み込まれてもよい。
【0027】
後述する搬送制御装置20の各機能は、例えば、RAM202等のメモリ上に所定のプログラムを読み込ませ、プロセッサ201の制御のもとで入力装置204及び出力装置205を動作させると共に通信モジュール206を動作させ、RAM202及び補助記憶装置207におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。搬送制御装置20は、機能的構成要素として、状態予測部21と、決定部22と、を有する。
【0028】
状態予測部21は、第1期間に関連付けられた搬送指令及び搬送システム1の状態を示す状態情報を入力して、第1期間の後の第2期間に関連付けられた搬送システム1の予測される状態を示す状態予測情報を出力するように機械学習された予測モデルである。第1期間及び第2期間は、例えば、互いに連続する期間である。第1期間及び第2期間は、それぞれ予め定められた長さの期間である。第1期間の長さは、第2期間の長さと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0029】
状態予測部21は、第2期間に関連付けられた状態予測情報を上述したパラメータの設定値の候補毎に出力する。例えば、状態予測部21は、予め定められたパラメータの設定値の複数の候補の各々について、第2期間に関連付けられた状態予測情報を出力するように構成されている。ここで、あるパラメータの設定値αに対応する第2期間に関連付けられた状態予測情報とは、第2期間において搬送システム1に当該パラメータの設定値αを適用した場合に、第2期間に生じると予測される搬送システム1の状態である。
【0030】
ここで、ある期間に関連付けられる搬送システム1の状態は、当該期間に発生した搬送指令毎の搬送時間、当該期間における物品の搬送量、当該期間における搬送車の稼働率、当該期間における搬送車のステータス情報(待機中、あるいは搬送中等の状態情報)と位置情報、及び当該期間における搬送車の速度情報の少なくとも1つを含む。
【0031】
搬送指令の搬送時間とは、MES3からの搬送要求の受信時点から物品の荷降ろしが完了し、MES3へ搬送指令の完了通知を送信するまでの時間である。具体的には、搬送指令の搬送時間とは、MCS11がMES3から当該搬送指令の基となる搬送要求を受信した時点t1から、当該搬送指令が割り付けられた搬送車2によって当該搬送指令の「To」により特定される荷降ろし搬送ポートにおいて当該搬送指令の「キャリアID」により特定される物品の荷降ろしが完了する時点t2までの時間(t2−t1)である。ここで、当該期間において物品の荷降ろしが完了していない搬送指令については、例えば、MCS11が当該搬送指令の基となる搬送要求を受信した時点t1から当該期間の終了時点t3までの時間(t3−t1)を暫定的な搬送時間として用いてもよい。当該期間における物品の搬送量とは、当該期間において荷降ろしが完了した搬送の総数である。搬送車2の稼働率とは、利用可能な搬送車2の総数(A1)に対する、搬送指令が割り付けられた搬送車2の台数(A2)の割合「A2/A1」である。当該期間における搬送車2の稼働率としては、例えば、当該期間における搬送車2の稼働率の平均、最大値等を用いることができる。当該期間における搬送車の位置情報及び速度情報とは、各搬送車2の位置に関する情報、及び各搬送車2の速度に関する情報である。当該期間における各搬送車2のステータス情報と位置情報、及び/又は各搬送車2の速度情報を分析することにより、例えば所定のエリア(例えばベイ)毎の渋滞度を数値化した情報を得ることができる。
【0032】
上述したような予測モデルとしての状態予測部21は、例えば以下のような教師データを用いた機械学習を実行することにより得られる。すなわち、連続する過去の期間T1,T2の各々において、期間T1に関連付けられた搬送指令及び状態情報を取得すると共に、期間T2において搬送システム1に実際に適用されたパラメータの設定値及び期間T2に関連付けられた状態情報を取得する。そして、期間T1に関連付けられた搬送指令及び状態情報と、期間T2において搬送システム1に実際に適用されたパラメータの設定値及び期間T2に関連付けられた状態情報と、をペアとする教師データを作成する。ここで、期間T1と期間T2との関係は、上述した第1期間と第2期間との関係と同一である。複数の異なる期間について上記のような教師データを作成し、作成された複数の教師データに基づく機械学習を実行することにより、上述した状態予測部21を得ることができる。このようにして得られる状態予測部21は、例えばニューラルネットワークを含む学習済みモデルである。なお、機械学習の対象は、各種の数値データに限られず、搬送システム1のモニタ画像等の画像データであってもよい。
【0033】
決定部22は、予測対象期間T
n+1よりも前の過去期間T
nに関連付けられた搬送指令及び状態情報を状態予測部21に入力することにより、パラメータの設定値の候補毎に予測対象期間T
n+1に関連付けられた状態予測情報を取得する。ここで、過去期間T
nと予測対象期間T
n+1との関係は、上述した第1期間と第2期間との関係と同一である。また、決定部22による処理は、過去期間T
nの終了時点に行われる。すなわち、予測対象期間T
n+1は、決定部22による処理時点よりも未来の期間である。例えば、パラメータの設定値の候補として、設定値α、設定値β、及び設定値γが予め定められている場合、設定値αに対応する状態予測情報、設定値βに対応する状態予測情報、及び設定値γに対応する状態予測情報が得られる。
【0034】
そして、決定部22は、上述のようにして得られた候補毎の状態予測情報の評価結果に基づいて、予測対象期間T
n+1に搬送システム1に適用するためのパラメータの設定値(調整パラメータ)を決定する。例えば、決定部22は、複数の候補毎に得られた状態予測情報により示される搬送システム1の予測される状態のうちから、最も好ましいものを選択する。例えば、搬送指令毎の搬送時間はなるべく短い方がよく、物品の搬送量はなるべく多い方がよく、搬送車2の稼働率は予め定められた適正範囲(例えば70%以下等)となっている方がよく、渋滞はなるべく少ない方がよい。搬送システム1の予測される状態として、上述したような良否判断の基準が定まっている情報の少なくとも1つを用いることにより、状態予測情報間の評価を適切に行うことができる。そして、決定部22は、選択された状態予測情報に対応する候補を、予測対象期間T
n+1に搬送システム1に適用する調整パラメータとして決定する。なお、決定部22においても、状態予測部21と同様の機械学習を実行することにより、複数の候補毎に得られた状態予測情報により示される搬送システム1の予測される状態のうちから、最も好ましいものを選択する良否判断の基準情報等を得るようにしてもよい。
【0035】
図5は、搬送制御装置20による調整パラメータの決定フローを示す図である。
図6は、搬送制御装置20の動作を示すフローチャートである。
図5及び
図6に示されるように、まず、過去期間T
nに関連付けられた搬送指令と過去期間T
nに関連付けられた状態情報とが、状態予測部21に入力されることにより、予測対象期間T
n+1に関連付けられたパラメータの設定値の候補毎の状態予測情報が出力される。これにより、予測対象期間T
n+1の状態予測情報がパラメータの設定値の候補毎に得られる(ステップS11)。なお、搬送制御装置20は、過去期間T
nに関連付けられた搬送指令を、例えば搬送指令を生成するMCS11から得ることができる。また、搬送制御装置20は、過去期間T
nに関連付けられた状態情報を、搬送システム1の状態を監視するシステム(不図示)等から得ることができる。
【0036】
続いて、決定部22は、パラメータの設定値の候補毎の状態予測情報を評価することにより、複数の候補のうちから調整パラメータを決定する(ステップS12)。そして、決定部22は、当該調整パラメータを搬送システム1に適用する(ステップS13)。本実施形態では、決定部22は、調整パラメータをMCS11に送信する。これにより、当該調整パラメータがMCS11の記憶部11aに記憶され、予測対象期間T
n+1において、搬送システム1の動作が当該調整パラメータに基づいて制御されることになる。
【0037】
次に、状態予測部21において使用されるパラメータの例と当該パラメータを用いた場合に得られる効果について説明する。
【0038】
(第1実施例)
第1実施例では、状態予測部21は、パラメータとして「エリア台数設定」を用いる。すなわち、状態予測部21は、エリア台数設定の設定値の候補毎の状態予測情報を出力する。エリアとは、搬送路4(
図1参照)において定められた区画である。本実施形態では、エリアはベイ単位の区画である。このようなエリア単位で、エリア内の搬送車2を制御するエリアコントローラ(例えば搬送車コントローラ12の配下のコントローラ)が設けられ得る。エリア台数設定とは、エリア毎の、エリア内に同時に存在する空き搬送車の台数の目標値(規定台数)である。例えば、3つのエリアA,B,Cが存在する場合、エリア台数設定の設定値は、{N
A,N
B,N
C}と表され得る。ここで、「N
K」(K=A,B,C)は、エリアKの規定台数である。
【0039】
例えば、搬送車コントローラ12は、エリア台数設定に基づいて、各エリアについて以下のような搬送車2の配車制御を行うように構成され得る。なお、上記配車制御は、上述したエリアコントローラを介して行われてもよい。搬送車コントローラ12は、あるエリア内の空き搬送車の台数が規定台数より多い場合には、このエリア内の空き搬送車の台数が規定台数となるように、このエリア内の空き搬送車をエリア外に移動させる。一方、搬送車コントローラ12は、あるエリア内の空き搬送車の台数が規定台数より少ない場合には、このエリア内の空き搬送車の台数が規定台数となるように、このエリア外(他のエリア)に存在する空き搬送車をこのエリア内へと移動させる。このように、搬送車コントローラ12は、所定のタイミングで(或いは定期的に)、エリア台数設定と空き搬送車の分布とを比較し、搬送システム1全体の空き搬送車の分布を調整する。すなわち、エリア台数設定は、搬送車コントローラ12による空き搬送車の分布の調整に影響を与えるパラメータである。
【0040】
ここで、上述したように3つのエリアA,B,Cが存在し、現時点(過去期間T
nと予測対象期間T
n+1との境界時点)におけるエリア台数設定の設定値が{2,2,5}であり、現時点において実際に各エリアに存在する空き搬送車の台数も上記設定値通り(すなわち、エリアAに2台、エリアBに2台、エリアCに5台)である場合について考える。また、予測対象期間T
n+1において発生すると予測される搬送指令(予想搬送指令)が9つであり、それぞれの搬送指令のピックアップ地点(Fr)の分布が{4,4,1}(すなわち、エリアAでの荷つかみが必要な搬送指令が4つ、エリアBでの荷つかみが必要な搬送指令が4つ、エリアCでの荷つかみが必要な搬送指令が1つ)であるとする。ここで、予想搬送指令の情報は、予めオペレータ等によって定められてもよいし、過去期間T
nに関連付けられた搬送指令と予め定められた予測ルールとに基づいて予測されてもよい。また、後述する第2実施形態では、搬送指令予測部23により出力される搬送指令予測情報から上記予想搬送指令の情報を得ることができる。
【0041】
上記の場合、状態予測部21は、例えば、エリア台数設定の設定値の複数の候補(ここでは一例として、設定値{4,4,1}、設定値{3,3,3}、設定値{2,2,5})の各々についての状態予測情報を出力する。一例として、状態予測部21は、設定値の候補毎に、予想搬送指令毎の搬送時間及びエリア毎の渋滞度を状態予測情報として出力する。
【0042】
一例として、決定部22は、搬送の優先度が基準以上(搬送プライオリティが予め定められた基準値以下)である予想搬送指令の搬送時間が短いほど良く、且つ、予めオペレータによって選定された一以上の特定エリア(特定のベイ)の渋滞度が小さいほど良いという観点に基づいて、設定値の各候補について評価を行う。ここで、特定エリアとは、複数のエリア(ベイ)のうち、エリア内の渋滞が搬送システム1全体の搬送効率を低下させる原因となり易いエリアとして、予めオペレータによって選定されたエリア等である。例えば、決定部22は、設定値の各候補i(ここでは、i=1,2,3)について、下記式(1)により求まるスコアS
iを算出する。下記式(1)において、t
jは、搬送プライオリティ(予想値)が予めオペレータ等によって定められた閾値γ以下の予想搬送指令jの搬送時間を示しており、c
kは、特定エリアkについての予想渋滞度を示している。α
j及びβ
kは、予めオペレータによって定められた重みパラメータである。
S
i=Σ
j(α
j×t
j}+Σ
k(β
k×c
k) …(1)
【0043】
ここでは、上記スコアS
iが小さい程、上述した観点において優れていることを意味する。従って、決定部22は、複数の設定値の候補のスコアS
i(ここでは、S
1,S
2,S
3)のうち最小となるスコアを有する設定値の候補iを、予測対象期間T
n+1に搬送システム1に適用する調整パラメータとして決定する。上述した評価例によれば、搬送システム1内において、搬送システム1の搬送効率を低下させる原因となり易い渋滞の発生を抑制しつつ、搬送の優先度が高い搬送指令の搬送時間をなるべく短くすることが可能となる。
【0044】
なお、状態予測部21により出力される設定値の候補毎の状態予測情報は、必ずしも上記例(予想搬送指令毎の搬送時間及びエリア毎の渋滞度)に限られない。例えば、設定値の候補毎の状態予測情報は、以下に示すように、全予想搬送指令の予想搬送時間(平均等の統計値)及び搬送システム全体の予想渋滞度(エリア平均等の統計値)であってもよい。
<エリア台数設定の設定値の候補毎の出力結果の他の例>
・設定値{4,4,1}→全予想搬送指令の予想搬送時間(平均30秒、分散10秒)+搬送システム全体の予想渋滞度(エリア平均:大)
・設定値{3,3,3}→全予想搬送指令の予想搬送時間(平均40秒、分散20秒)+搬送システム全体の予想渋滞度(エリア平均:中)
・設定値{2,2,5}→全予想搬送指令の予想搬送時間(平均60秒、分散60秒)+搬送システム全体の予想渋滞度(エリア平均:小)
【0045】
また、上記例では、搬送プライオリティが閾値γ以下の予想搬送指令のみについて「α
j×t
j」が加算されたが、予想搬送指令毎の搬送プライオリティの予想値が得られない場合には、全ての予想搬送指令についての「α
j×t
j」が加算されてもよい。
【0046】
以上説明した第1実施例によれば、決定部22が、状態予測部21の出力結果に基づいて、エリア設定台数の設定値(調整パラメータ)を動的に設定することにより、搬送の最適化(ここでは一例として、着目された特定エリアの渋滞度を抑制しつつ、搬送の優先度が高い搬送指令の搬送時間をなるべく短くすること)を図ることができる。
【0047】
(第2実施例)
第2実施例では、状態予測部21は、パラメータとして「エリアの入口及び出口の使用割合」を用いる。すなわち、状態予測部21は、エリア(ここでは一例としてイントラベイ)の入口及び出口の使用割合の設定値の候補毎の状態予測情報を出力する。ここで、入口(又は出口)の使用割合とは、複数の入口(又は出口)がある場合に、複数の入口(又は出口)を搬送車2に使用させる割合である。ここで、エリアの入口とは、搬送路4において搬送車2が当該エリア外から当該エリア内に入るために通過可能な経路であり、エリアの出口とは、搬送路4において搬送車2が当該エリア内から当該エリア外に出るために通過可能な経路である。
【0048】
例えば、
図1の例では、中央左端のイントラベイ(イントラベイルート5)について、2つの入口IN1,IN2と2つの出口OUT1,OUT2とが設けられている。この場合において、入口IN1と入口IN2とを均等な割合で搬送車2に使用させたい場合には、当該イントラベイの入口の使用割合の設定値は、「入口IN1:入口IN2=1:1」等と規定され得る。一方、入口IN1のみを搬送車2に使用させたい場合には、当該イントラベイの入口の使用割合の設定値は、「入口IN1:入口IN2=1:0」等と規定され得る。当該パラメータの設定値は、例えば、搬送車コントローラ12が搬送車2の走行経路を決定する際に加味される。すなわち、搬送車コントローラ12は、当該パラメータの設定値を考慮して、搬送車2の走行経路を決定する。より具体的には、搬送車コントローラ12は、上記イントラベイの実際の入口又は出口の使用割合が当該パラメータの設定値により規定される入口又は出口の使用割合に近づくように、各搬送車2の走行経路を決定する。
【0049】
上記の場合、状態予測部21は、例えば、ある特定のエリア(例えば、オペレータ等によって予め指定されたエリア)の入口の使用割合及び出口の使用割合の設定値の複数の候補の各々についての状態予測情報を出力する。一例として、状態予測部21は、設定値の候補毎に、上記実施例1と同様に、予想搬送指令毎の搬送時間及びエリア毎の渋滞度を状態予測情報として出力する。例えば、上記特定のエリアが
図1に示した中央左端のイントラベイである場合、複数の設定値の候補として、例えば、以下の候補1〜候補3等が使用され得る。
候補1:入口IN1:入口IN2=0:1及び出口OUT1:出口OUT2=0:1
候補2:入口IN1:入口IN2=1:1及び出口OUT1:出口OUT2=1:1
候補3:入口IN1:入口IN2=1:0及び出口OUT1:出口OUT2=1:0
【0050】
一例として、決定部22は、上記実施例1と同様にして、上記式(1)により算出される複数の設定値の候補のスコアS
i(ここでは、候補1のスコアS
1,候補2のスコアS
2,候補3のスコアS
3)のうち最小となるスコアを有する設定値の候補iを、予測対象期間T
n+1に搬送システム1に適用する調整パラメータとして決定する。
【0051】
以上説明した第2実施例によれば、決定部22が、状態予測部21の出力結果に基づいて、ある特定のエリアの入口及び出口の使用割合の設定値(調整パラメータ)を動的に設定することにより、搬送の最適化(ここでは一例として、着目された特定エリアの渋滞度を抑制しつつ、搬送の優先度が高い搬送指令の搬送時間をなるべく短くすること)を図ることができる。なお、第2実施例において、特定のエリアの入口又は出口は、3つ以上存在してもよい。また、複数のエリアが特定のエリアとして用いられてもよい。
【0052】
(第3実施例)
第3実施例では、状態予測部21は、パラメータとして「経路選択ロジック」を用いる。すなわち、状態予測部21は、経路選択ロジックの設定値の候補毎の状態予測情報を出力する。ここで、経路選択ロジックとは、搬送指令が割り付けられた搬送車2の搬送経路を決定する際に、予め用意された複数の経路選択アルゴリズムのうちからどのアルゴリズムを使用するかを決定するためのルールである。
【0053】
例えば、経路探索アルゴリズムとして、2つの異なるアルゴリズムが用意されている場合について考える。具体的には、一例として、経路探索アルゴリズムとして、最短時間経路探査(例えば、ダイクストラ法等。以下「方式A」)と統計コスト経路探査(例えば、統計コストを用いて最短時間経路を求める手法。以下「方式B」)とが用意されている場合について考える。この場合、経路選択ロジックの設定値の複数の候補として、例えば、以下のような候補1〜候補3等が使用され得る。
候補1:常に方式Aを使用する。
候補2:所定のエリア(例えば、インターベイルート6等)の渋滞度が予め定められた閾値以下であれば方式Aを使用し、そうでない場合には方式Bを使用する。
候補3:対象となる搬送指令の搬送プライオリティが予め定められた閾値以下であれば方式Aを使用し、当該搬送プライオリティが当該閾値より大きければ方式Bを使用する。
【0054】
一例として、決定部22は、上記実施例1,2と同様にして、上記式(1)により算出される複数の設定値の候補のスコアS
i(ここでは、候補1のスコアS
1,候補2のスコアS
2,候補3のスコアS
3)のうち最小となるスコアを有する設定値の候補iを、予測対象期間T
n+1に搬送システム1に適用する調整パラメータとして決定する。
【0055】
以上説明した第3実施例によれば、決定部22が、状態予測部21の出力結果に基づいて、経路選択ロジックの設定値(調整パラメータ)を動的に設定することにより、搬送の最適化(ここでは一例として、着目された特定エリアの渋滞度を抑制しつつ、搬送の優先度が高い搬送指令の搬送時間をなるべく短くすること)を図ることができる。
【0056】
なお、上述した第1実施例〜第3実施例は、単独で実施されてもよいし、適宜組み合わされてもよい。例えば、決定部22は、第1実施例に基づいて、エリア設定台数に関する調整パラメータを決定すると共に、第2実施例に基づいて、エリアの入口及び出口の使用割合に関する調整パラメータを決定してもよい。
【0057】
以上述べた搬送制御装置20では、上記のように機械学習された状態予測部21により、過去期間T
nの搬送指令及び状態情報から、予測対象期間T
n+1の搬送システム1の予測される状態が、パラメータの設定値の候補毎に取得される。すなわち、パラメータの設定値の候補毎に、当該パラメータの設定値を搬送システム1に適用した場合に予測対象期間T
n+1に生じると予測される搬送システム1の状態が、状態予測情報として取得される。そして、このように取得されたパラメータの設定値の候補毎の状態予測情報の評価結果に基づいて、予測対象期間T
n+1において搬送システム1に適用されるパラメータの設定値(調整パラメータ)が決定される。従って、搬送制御装置20によれば、搬送システム1の将来の状態の予測結果(状態予測情報)を踏まえて、搬送システム1の将来の状態(すなわち、予測対象期間T
n+1における状態)がなるべく良い状態(例えば、渋滞が抑制され、搬送システム全体での搬送時間が短くなる状態)となるように、最適なパラメータの設定値を決定することが可能となる。以上により、搬送制御装置20によれば、より好適に搬送の最適化を図ることができる。
【0058】
また、搬送システム1の状態は、搬送指令毎の搬送時間、物品の搬送量、搬送車2の稼働率、搬送車2のステータス情報と位置情報、及び搬送車2の速度情報の少なくとも1つを含む。搬送システム1の状態として上記のような情報を用いることにより、状態予測部21による予測を適切に行うことができる。また、決定部22において、調整パラメータを決定する際に、パラメータの設定値の候補毎の状態予測情報間の比較(評価)を適切に行うことができる。
【0059】
[第2実施形態]
次に、
図7〜
図9を参照して、第2実施形態の搬送制御装置20Aについて説明する。
図7に示されるように、搬送制御装置20Aは、搬送指令予測部23を更に備える点、状態予測部21の代わりに状態予測部21Aを備える点、及び決定部22の代わりに決定部22Aを備える点において、搬送制御装置20と相違しており、その他の構成については搬送制御装置20と同様である。
【0060】
搬送指令予測部23は、第1期間に関連付けられた搬送指令に関する情報を入力して、第1期間の後の第2期間に発生すると予測される搬送指令に関する搬送指令予測情報を出力するように機械学習された予測モデルである。第1期間に関連付けられた搬送指令とは、第1期間に発生した搬送指令(例えば、第1期間にMES3からMCS11に通知された搬送要求に基づいてMCS11において生成された搬送指令)である。第1期間に関連付けられた搬送指令は、複数存在し得る。
【0061】
ここで、搬送指令の基となるMES3から出力される搬送要求は、一定期間に亘って実行される所定の製造プロセスフローに応じて発生する。このため、ある期間に発生する搬送指令と当該期間の後続の期間に発生する搬送指令との間には、相関があると考えられる。そこで、例えば以下のような教師データを用いた機械学習を実行することにより、搬送指令予測部23を得ることができる。すなわち、連続する過去の期間T1,T2の各々において搬送指令を集計することにより、期間T1に発生したベイ毎のFr数及びTo数を取得すると共に、期間T2に発生したベイ毎のFr数及びTo数を取得する。そして、期間T1に発生したベイ毎のFr数及びTo数と期間T2に発生したベイ毎のFr数及びTo数とをペアとする教師データを作成する。複数の異なる期間について搬送指令を集計することにより、上記のような教師データを複数作成することができる。そして、このように作成された複数の教師データに基づく機械学習を実行することにより、第1期間に関連付けられた搬送指令に関する情報(本実施形態では、第1期間におけるベイ毎のTo数及びFr数)を入力して、第2期間に発生すると予測される搬送指令に関する搬送指令予測情報(第2期間におけるベイ毎のTo数及びFr数)を出力するように構成された搬送指令予測部23を得ることができる。このようにして得られる搬送指令予測部23は、例えばニューラルネットワークを含む学習済みモデルである。
【0062】
状態予測部21Aは、搬送指令予測部23により出力された搬送指令予測情報を更に入力して、第2期間に関連付けられた候補毎の状態予測情報を出力するように機械学習されている点で、状態予測部21と相違している。状態予測部21Aは、例えば、状態予測部21の機械学習に用いられた教師データ(期間T1に関連付けられた搬送指令及び状態情報、並びに、期間T2において搬送システム1に実際に適用されたパラメータの設定値及び期間T2に関連付けられた状態情報)に期間T2に関連付けられた搬送指令を加えた教師データを用いた機械学習を実行することにより得られる。
【0063】
状態予測部21Aは、第1期間に関連付けられた搬送指令及び搬送システム1の状態を示す状態情報、並びに第1期間に関連付けられた搬送指令に関する情報(すなわち、上述した搬送指令予測部23により出力される情報)を入力して、第2期間に関連付けられた搬送システム1の予測される状態を示す状態予測情報を出力するように機械学習された予測モデルである。状態予測部21Aは、状態予測部21と同様に、第2期間に関連付けられた状態予測情報を上述したパラメータの設定値の候補毎に出力する。
【0064】
決定部22Aは、過去期間T
nに関連付けられた搬送指令に関する情報を搬送指令予測部23に入力することにより、予測対象期間T
n+1に関連付けられた搬送指令予測情報を取得する。そして、決定部22Aは、過去期間T
nに関連付けられた搬送指令及び状態情報と予測対象期間T
n+1に関連付けられた搬送指令予測情報とを状態予測部21Aに入力することにより、パラメータの設定値の候補毎に予測対象期間T
n+1に関連付けられた状態予測情報を取得する。それ以降の決定部22Aの処理は、決定部22と同様である。
【0065】
図8は、搬送制御装置20Aによる調整パラメータの決定フローを示す図である。
図9は、搬送制御装置20Aの動作を示すフローチャートである。
図8及び
図9に示されるように、まず、過去期間T
nに関連付けられた搬送指令に関する情報(本実施形態では、過去期間T
nにおけるベイ毎のTo数及びFr数)が、搬送指令予測部23に入力されることにより、搬送指令予測情報(予測対象期間T
n+1において予測されるベイ毎のTo数及びFr数)が出力される。これにより、予測対象期間T
n+1の搬送指令予測情報が得られる(ステップS21)。なお、
図8に点線で示されるように、搬送指令予測部23に状態情報を入力し、状態情報も加味して搬送指令予測情報が出力されるようにしてもよい。
【0066】
続いて、過去期間T
nに関連付けられた搬送指令と、過去期間T
nに関連付けられた状態情報と、ステップS21において搬送指令予測部23により出力された予測対象期間T
n+1に関連付けられた搬送指令予測情報とが、状態予測部21Aに入力される。その結果、予測対象期間T
n+1に関連付けられた、パラメータの設定値の候補毎の状態予測情報が、状態予測部21Aにより出力される。これにより、予測対象期間T
n+1の状態予測情報がパラメータの設定値の候補毎に得られる(ステップS22)。
【0067】
ステップS23及びステップS24の処理は、上述した
図6に示されるフローチャートにおけるステップS12及びステップS13の処理と同一である。
【0068】
予測対象期間T
n+1における搬送システム1の状態は、予測対象期間T
n+1に発生する搬送指令によって影響を受ける。従って、搬送制御装置20Aでは、状態予測部21Aが、搬送指令予測部23によって予測された予測対象期間T
n+1の搬送指令に関する情報に基づいて、予測対象期間T
n+1における搬送システム1の将来の状態(パラメータの設定値の候補毎の状態予測情報)をより精度良く予測することが可能となる。その結果、決定部22Aにおいて、搬送最適化の観点から、より適切な調整パラメータを決定することが可能となる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0070】
例えば、第1実施形態の搬送制御装置20は、搬送指令予測部23を備えておらず、将来の搬送指令(予測対象期間に発生すると予測される搬送指令)に関する情報を入力情報として用いなかった。ただし、例えばMES3から将来予定されている搬送要求が前もってMCS11に通知され、MCS11において将来発生すると予測される搬送指令を予め把握することが可能な場合には、状態予測部21は、このように予測される搬送指令に関する情報を入力情報として用いてもよい。
【0071】
また、決定部22,22Aにより決定される調整パラメータは、MCS11等の搬送システム1内の要素以外の動作を制御するためにも用いられてもよい。例えば、調整パラメータは、上位コントローラであるMES3に通知されてもよく、当該調整パラメータによってMES3の動作(例えば、搬送要求をMCS11に通知するタイミング等)が制御されてもよい。
【0072】
また、上述した状態予測部21,21A又は搬送指令予測部23の機械学習に用いるための教師データは、搬送制御装置20,20Aを運用する過程(すなわち、
図6又は
図9に示されるフローチャートの動作を繰り返し実行する過程)で新たに生成及び蓄積される。そこで、状態予測部21,21A又は搬送指令予測部23は、このように新たに生成及び蓄積される教師データを用いた機械学習を随時行うことにより、適宜アップデートされてもよい。このように、搬送制御装置20,20Aを運用しつつ、予測モデルとしての状態予測部21,21A又は搬送指令予測部23をアップデートすることにより、予測モデルの精度を徐々に向上させることができる。すなわち、決定部22,22Aにより決定される調整パラメータの妥当性を徐々に高めることができる。
【0073】
また、上記実施形態では、搬送車2によって搬送される物品(被搬送物)として、複数の半導体ウェハが収容されたFOUPを例示したが、物品はこれに限定されず、例えば、ガラスウェハ、レチクル等が収容されたその他の容器やその他の物品であってもよい。また、搬送システム1が設けられる場所は、半導体製造工場に限定されず、搬送システム1は、その他の施設に設けられてもよい。