【解決手段】発光素子側電極12を有する発光素子11と、基板側電極21を有する基板20と、発光素子側電極12と基板側電極21とを接続する金属層35と、を有し、発光素子側電極12と金属層35との界面または基板側電極21と金属層35との界面のうち少なくともどちらか一方の界面に金属間化合物が形成されている、ディスプレイ装置10。
前記発光素子側電極および前記駆動基板側電極は、Au、Ag、Cu、Al、Pt、Ni、Cr、Ti、およびITOよりなる群から選択される少なくとも1種の金属、またはグラフェンを少なくとも含み、
前記金属層は、Sn−Ag−Cu合金、Sn−Bi合金、Sn−Bi−Ag合金、およびSn−Ag−Cu−Ni合金よりなる群から選択される少なくとも1種の合金を含む、請求項1または2に記載のディスプレイ装置。
前記発光素子側電極は矩形状であり、前記金属層の膜厚は、前記発光素子側電極の短辺の長さの半分以下である、請求項1〜4のいずれか1つに記載のディスプレイ装置。
前記発光素子側電極は、Au、Ag、Cu、Al、Pt、Ni、Cr、Ti、およびITOよりなる群から選択される少なくとも1種の金属、またはグラフェンを少なくとも含み、
前記バンプは、Sn−Ag−Cu合金、Sn−Bi合金、Sn−Bi−Ag合金、およびSn−Ag−Cu−Ni合金よりなる群から選択される少なくとも1種の合金を含む、請求項6に記載のソース基板構造体。
前記バンプは、ドーム状、円柱、n角錐、n角柱(nは3以上の整数)、半円柱、半楕円柱、および半m角柱(mは4以上の整数)よりなる群から選択される少なくとも1つの形状である、請求項6〜9のいずれか1つに記載のソース基板構造体。
前記駆動基板側電極は、Au、Ag、Cu、Al、Pt、Ni、Cr、Ti、およびITOよりなる群から選択される少なくとも1種の金属、またはグラフェンを少なくとも含み、
前記バンプは、Sn−Ag−Cu合金、Sn−Bi合金、Sn−Bi−Ag合金、およびSn−Ag−Cu−Ni合金よりなる群から選択される少なくとも1種の合金を含む、請求項15に記載の駆動基板構造体。
前記発光素子側電極および前記駆動基板側電極は、Au、Ag、Cu、Al、Pt、Ni、Cr、Ti、およびITOよりなる群から選択される少なくとも1種の金属、またはグラフェンを少なくとも含み、
前記発光素子側電極および前記駆動基板側電極の間に、Sn−Ag−Cu合金、Sn−Bi合金、Sn−Bi−Ag合金、およびSn−Ag−Cu−Ni合金よりなる群から選択される少なくとも1種の合金を含む金属層が形成されている、請求項17〜22のいずれか1つに記載のディスプレイ装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マイクロLEDによるディスプレイ装置の発展には、一般消費者向け製品の市場投入が必要不可欠である。そのためには、より簡便な製造方法の確立が急務である。
【0007】
このような要望がある中で、従来技術である特許文献1では、発光デバイスに電力を供給するバックプレーン基板に段差を形成し、段差ごとに発光デバイスを接続している。このため、従来技術では、段差付きのバックプレーン基板をまず製造し、さらに、バックプレーン基板の段差ごとに発光デバイスを接続するなど、複雑な製造方法となっている。
【0008】
そこで、本発明は、発光素子と、発光素子を駆動する駆動基板とを簡便かつ確実に接合できるディスプレイ装置を提供することである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、発光素子を含むソース基板構造体であって、発光素子と駆動基板とを簡便かつ確実に接合できるソース基板構造体を提供することである。
【0010】
また、本発明の他の目的は、発光素子を駆動する駆動基板構造体であって、発光素子と駆動基板とを簡便かつ確実に接合できる駆動基板構造体を提供することである。
【0011】
また、本発明の他の目的は、発光素子を駆動する駆動基板とを簡便かつ確実に接合できるディスプレイ装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は以下の手段により達成される。
【0013】
(1)発光素子側電極を有する発光素子と、
前記発光素子を駆動するための駆動基板と、
前記駆動基板上に設けられた駆動基板側電極と、
前記発光素子側電極と前記駆動基板側電極とを接続する金属層と、を有し、
前記発光素子側電極と前記金属層との界面または前記駆動基板側電極と前記金属層との界面のうち少なくともどちらか一方の界面に金属間化合物が形成されている、ディスプレイ装置。
【0014】
(2)発光素子側電極を有する発光素子と、
前記発光素子を駆動するための駆動基板と、
前記駆動基板上に設けられた駆動基板側電極と、
前記発光素子側電極と前記駆動基板側電極とを接続する金属層と、
前記発光素子と前記駆動基板とを接続する接着剤層と、
を有する、ディスプレイ装置。
【0015】
(3)ディスプレイ装置の製造に使用する、ソース基板構造体であって、
所定波長のレーザー光を透過させるソース基板と、
前記ソース基板に樹脂材料を含むリリース層を介して保持された複数の発光素子と、
前記発光素子に設けられた発光素子側電極と、
前記発光素子側電極に設けられたバンプと、
を有する、ソース基板構造体。
【0016】
(4)ディスプレイ装置の製造に使用する、ソース基板構造体であって、
所定波長のレーザー光を透過させるソース基板と、
前記ソース基板に樹脂材料を含むリリース層を介して保持された複数の発光素子と、
前記発光素子に設けられた発光素子側電極と、
前記発光素子の前記発光素子側電極を含む面に形成されていて、金属粉を含む樹脂層と、
を有する、ソース基板構造体
(5)ディスプレイ装置の発光素子と電気的に接続するための駆動基板側電極が設けられている駆動基板と、
前記駆動基板側電極上を含む前記駆動基板上に形成されていて、樹脂材料を含む接着剤層と、
を有する、駆動基板構造体。
【0017】
(6)ディスプレイ装置の製造に使用する、駆動基板構造体であって、
ディスプレイ装置の発光素子と電気的に接続するための駆動基板側電極が設けられている駆動基板と、
前記駆動基板側電極上に設けられたバンプと、
を有する、駆動基板構造体。
【0018】
(7)サファイア基板上に発光素子となる半導体層を形成する半導体層形成工程と、
前記半導体層上に発光素子側電極を形成する発光素子側電極形成工程と、
前記発光素子側電極の面に中継基板を接着して前記半導体層を前記中継基板に転写する1次転写工程と、
前記サファイア基板を前記半導体層から除去するサファイア基板除去工程と、
所定波長のレーザー光を透過するソース基板上に、樹脂材料を含むリリース層を形成するリリース層形成工程と、
前記リリース層上へ前記中継基板上の前記半導体層を転写する2次転写工程と、
前記中継基板を除去する中継基板除去工程と、
前記半導体層を分割して前記発光素子にする発光素子形成工程と、
前記発光素子側電極にバンプを形成する発光素子側バンプ形成工程と、
駆動基板側電極が形成されている駆動基板の上に樹脂材料を含む接着剤層を形成する駆動基板側接着剤層形成工程と、
前記駆動基板側電極に対応させて前記発光素子を位置決めする位置決め工程と、
前記ソース基板側から、位置決めされた前記発光素子へ所定波長のレーザー光を照射して前記リリース層から前記発光素子を分離させて前記駆動基板へ接着させる発光素子固定工程と、
を有する、ディスプレイ装置の製造方法。
【0019】
(8)サファイア基板上に発光素子となる半導体層を形成する半導体層形成工程と、
前記半導体層上に発光素子側電極を形成する発光素子側電極形成工程と、
前記発光素子側電極の面に中継基板を接着して前記半導体層を前記中継基板に転写する1次転写工程と、
前記サファイア基板を前記半導体層から除去するサファイア基板除去工程と、
所定波長のレーザー光を透過するソース基板上に、樹脂材料を含むリリース層を形成するリリース層形成工程と、
前記リリース層上へ前記中継基板上の前記半導体層を転写する2次転写工程と、
前記中継基板を除去する中継基板除去工程と、
前記半導体層を分割して前記発光素子にする発光素子形成工程と、
前記発光素子側電極にバンプを形成する発光素子側バンプ形成工程と、
前記発光素子側電極および前記バンプを含む前記発光素子上に樹脂材料を含む接着剤層を形成する発光素子側接着剤層形成工程と、
駆動基板上に形成された駆動基板側電極の前記駆動基板側電極に対応させて前記発光素子を位置決めする位置決め工程と、
前記ソース基板側から、位置決めされた前記発光素子へ所定波長のレーザー光を照射して前記リリース層から前記発光素子を分離させて前記駆動基板へ接着させる発光素子固定工程と、
を有する、ディスプレイ装置の製造方法。
【0020】
(9)サファイア基板上に発光素子となる半導体層を形成する半導体層形成工程と、
前記半導体層上に発光素子側電極を形成する発光素子側電極形成工程と、
前記発光素子側電極の面に中継基板を接着して前記半導体層を前記中継基板に転写する1次転写工程と、
前記サファイア基板を前記半導体層から除去するサファイア基板除去工程と、
所定波長のレーザー光を透過するソース基板上に、樹脂材料を含むリリース層を形成するリリース層形成工程と、
前記リリース層上へ前記中継基板上の前記半導体層を転写する2次転写工程と、
前記中継基板を除去する中継基板除去工程と、
前記半導体層を分割して前記発光素子にする発光素子形成工程と、
前記発光素子上に金属粉を含む樹脂層を形成する発光素子側樹脂層形成工程と、
駆動基板側電極が形成されている駆動基板の前記駆動基板側電極に対応させて前記発光素子を位置決めする位置決め工程と、
前記ソース基板側から、位置決めされた前記発光素子へ所定波長のレーザー光を照射して前記リリース層から前記発光素子を分離させて前記駆動基板へ接着させる発光素子固定工程と、
を有する、ディスプレイ装置の製造方法。
【0021】
(10)サファイア基板上に発光素子となる半導体層を形成する半導体層形成工程と、
前記半導体層上に発光素子側電極を形成する発光素子側電極形成工程と、
前記発光素子側電極の面に中継基板を接着して前記半導体層を前記中継基板に転写する1次転写工程と、
前記サファイア基板を前記半導体層から除去するサファイア基板除去工程と、
所定波長のレーザー光を透過するソース基板上に、樹脂材料を含むリリース層を形成するリリース層形成工程と、
前記リリース層上へ前記中継基板上の前記半導体層を転写する2次転写工程と、
前記中継基板を除去する中継基板除去工程と、
前記半導体層を分割して前記発光素子にする発光素子形成工程と、
前記発光素子上に金属粉を含む樹脂層を形成する発光素子側樹脂層形成工程と、
前記金属粉を含む樹脂層上に樹脂材料を含む接着剤層を形成する発光素子側接着剤層形成工程と、
駆動基板側電極が形成されている駆動基板の前記駆動基板側電極に対応させて前記発光素子を位置決めする位置決め工程と、
前記ソース基板側から、位置決めされた前記発光素子へ所定波長のレーザー光を照射して前記リリース層から前記発光素子を分離させて前記駆動基板へ接着させる発光素子固定工程と、
を有する、ディスプレイ装置の製造方法。
【0022】
(11)サファイア基板上に発光素子となる半導体層を形成する半導体層形成工程と、
前記半導体層上に発光素子側電極を形成する発光素子側電極形成工程と、
前記発光素子側電極の面に中継基板を接着して前記半導体層を前記中継基板に転写する1次転写工程と、
前記サファイア基板を前記半導体層から除去するサファイア基板除去工程と、
所定波長のレーザー光を透過するソース基板上に、樹脂材料を含むリリース層を形成するリリース層形成工程と、
前記リリース層上へ前記中継基板上の前記半導体層を転写する2次転写工程と、
前記中継基板を除去する中継基板除去工程と、
前記半導体層を分割して前記発光素子にする発光素子形成工程と、
前記発光素子上に樹脂材料を含む接着剤層を形成する発光素子側接着剤層形成工程と、
駆動基板側電極が形成されている駆動基板の前記駆動基板側電極の上にバンプを形成する駆動基板側バンプ形成工程と、
前記駆動基板側電極に対応させて前記発光素子を位置決めする位置決め工程と、
前記ソース基板側から、位置決めされた前記発光素子へ所定波長のレーザー光を照射して前記リリース層から前記発光素子を分離させて前記駆動基板へ接着させる発光素子固定工程と、
を有する、ディスプレイ装置の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、発光素子側電極と駆動基板側電極とを、金属間化合物が形成された金属層によって接続したので、発光素子と、発光素子を駆動する駆動基板とを簡便かつ確実に接合できる。
【0024】
また、本発明によれば、発光素子側電極と駆動基板側電極とを金属層によって接続すると共に、発光素子と駆動基板とを接着剤層によって接続したので、発光素子と、発光素子を駆動する駆動基板とを簡便かつ確実に接合できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付された図面を参照し、本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の図面において、同一参照符号は、同一構成要素を指し、図面上において、各構成要素の大きさは、説明の明瞭性および便宜さのために誇張されてもいる。一方、以下で説明される実施形態は、ただ例示的なものに過ぎず、そのような実施形態から多様な変形が可能である。
【0027】
以下において、「上部」や「上」と記載されたところは、接触して真上にあるものだけではなく、非接触で上にあるものも含んでもよい。
【0028】
単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」または「有する」とするとき、それは、特別に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいということを意味する。
【0029】
また、「前記」の用語、およびそれと類似した指示用語の使用は、単数および複数のいずれにも該当する。
【0030】
方法を構成する段階について、明白に順序を記載する、あるいは反対となる記載がなければ、段階は、適切な順序で実行される。必ずしも前記段階の記載順序に限定されるものではない。全ての例、または例示的な用語(たとえば、など)の使用は、単に技術的思想を説明するためのものであり、特許請求の範囲によって限定されない以上、前記例、または例示的な用語によって範囲が限定されるものではない。
【0031】
(実施形態1)
本発明の例示的な実施形態1によるディスプレイ装置の製造方法について説明する。
【0032】
図1から
図7は、ディスプレイ装置の製造方法に係る、マイクロLED形成工程を示した断面図である。
【0033】
ディスプレイ装置の製造方法に係る、マイクロLED形成工程は、まず、
図1に示すように、サファイア基板101にマイクロLED(発光素子)となる半導体層102が形成される。半導体層102は、LEDとして所定の波長の光を発光する。半導体層102は、サファイア基板101に成長させたGaN系半導体などである。この段階では、半導体層102は、個別のマイクロLEDの形態に分割されていない。本実施形態では、サファイア基板101と半導体層102を合わせて初期基板100と称する。
【0034】
サファイア基板101は、たとえば4インチウェーハサイズの大きさである。
【0035】
半導体層102の上には、さらに、分割後の各マイクロLEDに対応する位置に、電極が形成される。本実施形態では、この電極をLED側電極12(発光素子側電極)と称する。マイクロLEDへの分割については後述する。
【0036】
LED側電極12は、半導体層102上に、分割後のマイクロLEDとなる部分ごとに形成される。LED側電極12は、半導体層102と電気的に接続された金属配線の一部がそのまま用いられてもよいし、半導体層102と直接接する金属パッドとして形成されてもよい。
【0037】
LED側電極12は、たとえば、Au、Ag、Cu、Al、Pt、Ni、Cr、Ti、およびITOよりなる群から選択される少なくとも1種の金属、またはグラフェン(Graphene)を少なくとも用いて形成される。中でも、Au、Ag、およびCuが好ましい。これらの金属は、後述するハンダ合金と金属間化合物を形成する。
【0038】
続いて、
図2に示すように、初期基板100のLED側電極12が形成された面に、転写用樹脂層111によって中継基板112が貼り付けられる。この工程は、たとえば、以下のように行われる。まず、中継基板112の、初期基板100と対向する面に転写用樹脂層111がスピンコーティングなどで形成される。続いて、初期基板100と中継基板112が貼り合わされる。続いて、加熱処理によって、転写用樹脂層111が硬化されて、初期基板100と中継基板112が固着される。
【0039】
中継基板112は、たとえば石英ガラス基板が用いられる。転写用樹脂層111は、たとえば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂(たとえばPMMA(Polymethyl methacrylate))、エポキシ樹脂、PP(Polypropylene)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂などの樹脂材料が用いられる。転写用樹脂層111は、例示した樹脂材料と共に熱硬化剤が配合されている。また転写用樹脂層111は、その他の熱硬化性樹脂が使用される。転写用樹脂層111は、後述するレーザーリフトオフで使用するレーザー光波長の吸収率が80%以上であることが好ましい。
【0040】
続いて、
図3に示すように、サファイア基板101が半導体層102から分離される。サファイア基板101の分離は、たとえば、レーザーリフトオフ技術を用いる。具体的には、サファイア基板101側から、その全面を走査するようにして、紫外線波長のレーザー光が照射される。レーザー光照射によって、サファイア基板101が半導体層102から分離される。レーザー光は、たとえば、波長248nmのKrFエキシマレーザーが使用される。使用する波長はこれに限定されず、サファイア基板101を半導体層102から分離できる波長であればよい。
【0041】
続いて、
図4に示すように、半導体層102側に、リリース層13を介してソース基板14を貼り合わせる。リリース層13は、ダイナミックリリース層(DRL(Dynamic Release Layer))とも称される。この工程は、たとえば、以下のように行われる。まず、半導体層102側に、リリース層13となる樹脂材料がスピンコーティングなどで形成される。続いて、この樹脂材料にソース基板14が貼り合わされる。続いて、加熱処理によって、樹脂材料が硬化されてリリース層13となり、ソース基板14が固着される。
【0042】
ソース基板14は、後述するレーザーアブレーション工程に使用するレーザー光の波長を透過させる。ソース基板14は、たとえば、石英ガラス基板が用いられる。石英ガラス基板は、たとえば、前述したサファイア基板101と同じサイズかそれ以上でよく、具体的には、サファイア基板101が4インチウェーハであれば、ソース基板14(石英ガラス基板)も4インチウェーハサイズが用いられる。具体的なソース基板の大きさの例は、後述する。
【0043】
リリース層13となる樹脂材料は、たとえば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂(たとえばPMMA(Polymethyl methacrylate))、エポキシ樹脂、PP(Polypropylene)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂などであり、熱硬化剤が配合されている。樹脂材料は、その他の熱硬化性樹脂が使用されてもよい。リリース層13となる樹脂材料は、レーザーアブレーション工程で使用するレーザー光の所定波長の吸収率が80%以上であることが好ましい。このような吸収率の樹脂材料を用いることによって、レーザーアブレーション工程におけるマイクロLEDの分離が容易になる。
【0044】
リリース層13の膜厚は、硬化後において0.1μm以上2μm以下となるように、樹脂材料の塗布時に調整される。
【0045】
続いて、
図5に示すように、中継基板112が除去される。中継基板112の除去は、たとえば、レーザーリフトオフ技術が用いられる。中継基板112の除去は、たとえば、以下ように行われる。まず、中継基板112側から、中継基板112の全面を走査するように紫外線波長のレーザー光が照射される。これにより、レーザー光の照射によって転写用樹脂層111が溶解し、中継基板112がLED側電極12の面から分離されて、除去される。LED側電極12の面に残った転写用樹脂層111は、洗浄処理により取り除かれる。ここで使用するレーザー光は、波長248nmのKrFエキシマレーザーである。使用する波長はこれに限定されず、転写用樹脂層111として使用する樹脂材料に応じて適宜決定されてもよい。
【0046】
続いて、
図6に示すように、半導体層102が複数のマイクロLED11に分割される。複数のマイクロLED11への分割は、たとえば、半導体層102上にフォトレジストを形成して、フォトリソグラフィによりパターニングし、パターニングされたフォトレジストをマスクとしてドライエッチングにより、個別のマイクロLED11に分割される。この段階では、さらに、分割されたマイクロLED11をマスクとして、リリース層13もマイクロLED11と同じ形状となるようにパターニングされる。使用されるドライエッチングは、異方性エッチングであるRIE(Reactive Ion Etching)が好ましい。マイクロLED11のチップ形状は、LED側電極12が形成されている面を平面として見たとき、矩形状である。マイクロLED11は、矩形の各辺のうち最も長い辺の長さが、たとえば100μm以下である。また、マイクロLED11の高さ、すなわち、半導体層102の厚さは、たとえば500μm以下である。したがって、マイクロLED11全体の形状としては、縦×横×高さ=100μm以下×100μm以下×500μm以下である。なお、縦、横および高さのそれぞれ下限値は、特に限定されず、製造可能な大きさであればよい。
【0047】
また、ソース基板14上に配列されたマイクロLED11は、マイクロLED11同士が確実に分割されていれば、それらの隙間(間隔)は製造可能な最小値でよい。このため、配列ピッチは、マイクロLED11の大きさにもよるが、たとえば200μm以下が好ましい。配列ピッチは、たとえば、隣接するマイクロLED同士の中心間距離、または隣接するマイクロLED同士の同じ側のエッジ間距離である。
【0048】
本実施形態1では、続いて、
図7に示すように、LED側電極12のそれぞれにバンプ31が形成される。バンプ31の形成は、周知の方法でよく、たとえば、ボールバンプ法、ソルダーペースト法、プレス法、めっき法などを用いることができる。また、異方性導電性ペーストの一つであるSAP(Self Assenmbly Anisotropic Conductive Paste)を用いることもできる。
【0049】
バンプ31を形成するための金属は、たとえば、Sn−Ag−Cu合金、Sn−Bi合金、Sn−Bi−Ag合金、およびSn−Ag−Cu−Ni合金よりなる群から選択される少なくとも1種の合金が好ましい。これらの合金は、先に説明したLED側電極12の金属および後述する駆動基板側電極の金属と、金属間化合物を形成する。このような合金は、市販のハンダ合金を用いることができる。市販のハンダ合金としては、たとえば、ハンダメーカーからハンダ(ソルダー)の組成が開示されている(参考:千住金属工業株式ホームページ内、「エコソルダー合金と形態」。URL=https://jp.senju.com/ja/products/ecosolder/alloy_form/)。このURLのページから抜粋したハンダ合金の組成を表1および2に示す。
【0052】
バンプ形成方法の一例として、SAPを用いた方法を説明する。
図8Aから
図8Cは、SAPを用いたバンプ形成方法を説明するための断面図である。
図8Aから
図8Cは、1個のLED11を示している。
【0053】
SAP30を用いたバンプ31の形成は、まず、
図8Aに示すように、ソース基板14上で分割されたマイクロLED11が用意される。これは、既に
図6までの工程として説明したとおりである。
【0054】
続いて、
図8Bに示すように、LED側電極12がある面にSAP30が塗布される。SAP30は、熱硬化性樹脂30a内にハンダなどの金属粉30bが配合されている。金属粉30bの形状は限定されず、粒子状、板片状など、どのような形状でもよい。SAP30内に配合される金属粉30bは、上記したハンダ合金と同様の金属が用いられる。
【0055】
続いて、マイクロLED11が形成されているソース基板14全体が加熱される。加熱温度は、たとえば160℃である。加熱により、LED側電極12の金属表面には、金属粉30bが凝集する。一方、SAP30内の樹脂成分は、溶解して失われる。これにより、
図8Cに示すように、LED側電極12の金属表面に凝集された金属粉30bがバンプ31になる。
【0056】
図9Aから9Iは、バンプ31の形状例を示す斜視図である。LED側電極12の上に形成されるバンプ31の形状は、たとえば、
図9Aに示すドーム状311、
図9Bに示すアーチ状312、
図9Cに示す円柱313、
図9Dに示す半円柱314、
図9Eに示す半楕円柱315、
図9Fに示すn角錐316(nは3以上の整数、図はn=4を示す)、
図9Gに示すn角柱317(nは3以上の整数、図はn=4を示す)、
図9Hに示す半m角柱318(半m角柱とは、角柱の少なくとも1辺の長さが他の辺と異なり、mは4以上の整数)、
図9Iに示す不定形319などである。
【0057】
バンプ31の形成面積は、その形状によらず、バンプ31の底面の面積が、
図9Aに示したように、LED側電極12の面積より小さくしてもよいし、
図9Bに示したようにLED側電極12の面積とほぼ同じになるようにしてもよい。
【0058】
バンプ31の大きさは、LED側電極12および後述する駆動基板側電極の面積によって異なる。バンプ31は、後述するディスプレイ装置の完成品(詳細後述)において、LED側電極12と駆動基板側電極を接続する金属層になる。このため、バンプ31の大きさは、この金属層の膜厚を決めることになる。そこで、ディスプレイ装置の完成品において、金属層の膜厚を以下のように定義する。
図9Aを参照して、LED側電極12の短辺の長さをA、LED側電極12の長辺の長さをBとするとき(A=Bでもよい)、LED側電極面積S=A×Bとなる。そして、ディスプレイ装置の完成時における金属層の膜厚Tは、短辺Aの半分以下とする。金属層は、この範囲の膜厚にすることで、LED側電極12と駆動基板側電極を接続した際に、金属が周辺にあふれて、他の配線やパッドなどと接触してしまうのを防止できる。したがって、バンプ31の大きさは、ディスプレイ装置の完成時における金属層の膜厚Tを考慮して設計する。具体的には、たとえば、LED側電極12の大きさを、1辺が5μm以上10μm以下の正方形とした場合、バンプ31の高さtは、たとえば2μm以上20μm以下とすることが好ましい。このようなバンプ31の大きさは、限定的なものではなく、LED側電極12の大きさや、バンプ形状などによって適宜変更可能である。なお、バンプ31の高さtは、
図9Aに示したように、LED側電極表面からバンプ31の最も高い部分までの高さtである。バンプ31の高さtは、
図9Bから
図9Iには示していないが、
図9Bから
図9Iに示したバンプにおいても同様である。
【0059】
本実施形態1では、ここまでの工程で、マイクロLED11がリリース層13によってソース基板14に保持されたソース基板構造体が提供される。
【0060】
次に、駆動基板について説明する。
図10はディスプレイ装置の製造方法に係る駆動基板を示す断面図である。
【0061】
駆動基板20は、製造するディスプレイ装置のサイズに対応した大きさとなる。具体的な大きさの例は後述する。
【0062】
駆動基板20は、マイクロLED11に電力を供給するために必要な配線やTFT(thin−film−transistor)などと共に、LED側電極12と接続するための電極が形成される。本実施形態では、駆動基板20に設けられる電極を駆動基板側電極21と称する。駆動基板側電極21は、駆動基板20上に形成されている金属配線の一部がそのまま用いられてもよいし、配線と接続された金属パッドとして形成されてもよい。駆動基板側電極21は、既に説明したLED側電極12と同様の金属が用いられる。
【0063】
そして、本実施形態1では、駆動基板20の駆動基板側電極21が形成された面に、接着剤層32が形成される。接着剤層32は、たとえば、非導電性接着剤であるNCF(Nonconductive Film)、NCP(Nonconductive paste)、およびNCA(Non Conductive Adhesive)などが用いられる。また、接着材層は、たとえば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどに、熱硬化剤が配合されたものが使用されてもよい。接着剤層32は、これらに限定されず、熱硬化性樹脂を使用することができる。また、接着剤層32は、フォトレジスト(ポジ型)が使用されてもよい。
【0064】
接着剤層32は、たとえば、ラミネート法や印刷法などによって、駆動基板20の駆動基板側電極21が形成された面の全面に塗布される。接着剤層32の厚さは、たとえば、1μm以上50μm以下である。後述するマイクロLED11と駆動基板20との接続においては、加圧、加熱工程がある。本実施形態1では、接着剤層32の厚さを1μm以上50μm以下とすることで、この加圧、加熱工程によりLED側電極12に形成されたバンプ31を駆動基板側電極21まで到達させることができる。
【0065】
本実施形態1では、ここまでの工程で、接着剤層32が設けられている駆動基板構造体が提供される。
【0066】
次に、マイクロLED11と駆動基板20との接続について説明する。
図11および
図12は、ディスプレイ装置の製造方法に係るマイクロLED11と駆動基板20との接続方法を説明するための断面図である。
【0067】
マイクロLED11と駆動基板20との接続は、レーザーアブレーション技術を利用する。
図11に示すように、まず、1個のマイクロLED11が駆動基板20へ接続するための位置となるように、ソース基板14全体の位置が位置決めされる。このときの位置決めは、1個のマイクロLED11のLED側パッドが、これを駆動するために対応する駆動基板側電極21と接続できる位置にされる。
【0068】
位置決め後、ソース基板14側から、1個のマイクロLED11に目がけて、所定波長(紫外線(UV))のレーザー光16が照射される。レーザー光16の照射によって、1個のマイクロLED11をソース基板14に接着していたリリース層13が溶解されて、マイクロLED11が駆動基板20側へ放出される。放出されたマイクロLED11は、駆動基板20側の接着剤層32にキャッチされる。使用されるレーザー光16の所定波長としては、たとえば、波長248nmのKrFエキシマレーザーである。そのほか、波長266nmのYAG(FHG)、波長355nmのYAG(THG)などが用いられる。特に、波長355nmのレーザーは、石英ガラス基板に代えてガラス基板を用いることができ、部材および装置コストの面でより優位性が得られる。そのほかの波長のレーザー光を用いてもよい。
【0069】
レーザー光16のビーム径は1個のマイクロLED11のチップサイズと同じか、それ以上のサイズでもよい。ただし、レーザー光16のビーム径は、ソース基板14上で隣接するマイクロLED11に影響しない程度の大きさとすることが好ましい。このようなレーザー光16のビーム径とすることで、ソース基板14上で並んでいるマイクロLED11を1個1個選択的に駆動基板20側へ転写させることができる。
【0070】
レーザー光16のビームは1本でも良いが、マスクなどを用いて、またはレーザー光源を複数用意して、所望のピッチで複数のビームを同時に照射することとしてもよい。このようにすることで、多数のマイクロLED11を同時に転写させることもできる。
【0071】
また、レーザーアブレーション工程を行う際の、マイクロLED11と駆動基板20との隙間(ギャップ)間隔は、1μm以上200μm以下であることが好ましい。隙間間隔が1μm以上200μm以下とされることで、レーザーアブレーション工程により分離されたマイクロLED11を、狙い通りの位置で駆動基板20にキャッチさせることができる。
【0072】
続いて、駆動基板20上に必要数のマイクロLED11が配置されたなら、マイクロLED11を駆動基板20方向へ相対的に押圧して、密着させると共に加熱する。このときの加圧力はLED側電極12と駆動基板側電極21がバンプ31によって接続されるようにする。加熱温度は、バンプ31が溶解する温度である。加熱温度は、たとえば、上述した千住金属工業株式製のエコソルダーによりバンプ31を形成した場合、ハンダリフローと同様の温度が使用される。上述した千住金属工業株式製のホームページによれば、エコソルダーの溶融温度は、組成により異なり、139℃以上245℃以下となっている。したがって、加圧加熱工程における加熱温度は、使用したハンダ合金(エコソルダー)に合わせて設定される。
【0073】
加熱温度は、接着剤層32を硬化させる温度でもなければならない。たとえば、熱硬化性樹脂を含むNCF、NCP、NCAを用いた場合、加圧力にもよるが、圧力1MPa以上10MPa以下の場合、硬化温度は100℃以上200℃以下とされる。この温度範囲は、上述したハンダリフロー温度範囲と重なる温度である。このことから、加圧加熱工程における温度は、バンプ31に使用するハンダ合金の組成および接着剤層32として用いた樹脂材料の硬化温度から、両者の特性に合わせて適宜決定される。
【0074】
これにより、
図12に示すように、ディスプレイ装置10が完成する。完成品のディスプレイ装置10におけるLED側電極12と駆動基板側電極21は、バンプ31が金属層35となって電気的に接続される。金属層35は、バンプ31の金属と各電極の金属とで形成された金属間化合物である。金属層35の膜厚Tは既に説明したとおりである。
【0075】
金属間化合物は、2種類以上の金属からなる化合物である。金属間化合物は、いわゆる合金の仲間である。通常の合金は元の金属のどちらかの構造が保持され、もう一方の金属原子がランダムに置換された固溶体の構造を有している。通常の合金は固溶体合金と称される。固溶体合金の組成は、構成する金属が同じであっても、ある程度の幅はあるものの様々な比率とすることができる。一方、金属間化合物は、元の金属とは異なる結晶構造をもつ化合物である。金属間化合物の組成は、2種類以上の金属が簡単な整数比(1:2、1:3など)となっている。
【0076】
このような金属間化合物は、LED側電極12および駆動基板側電極21のそれぞれの金属にバンプ31の金属が接合される際に形成される。したがって、金属間化合物は、金属層35のうち、LED側電極12と金属層35との界面12a、または駆動基板側電極21と金属層35との界面21aのうち少なくともどちらか一方の界面を含む範囲に形成される。
【0077】
ディスプレイ装置10の製造方法としては、マイクロLED11と駆動基板20とを接続した後、必要な周辺回路の接続や配線などが行われる。
【0078】
本実施形態1によれば以下の効果を奏する。
【0079】
本実施形態1において、完成したディスプレイ装置10は、平面状の駆動基板20に対してマイクロLED11が、金属層35と接着剤層32の薄膜によって接続されている。したがって、本実施形態1は、マイクロLED11を保持したソース基板14も、駆動基板20も、素子構造や電極以外の段差などはないため、従来技術と比較して簡便かつ確実に、マイクロLED11と駆動基板20を接続することができる。しかも、本実施形態1は、駆動基板20とマイクロLED11が金属層35と接着剤層32の2層構造で接続されているため、強固に接続させることができる。
【0080】
また、本実施形態1では、マイクロLED11と駆動基板20の間が、金属間化合物による金属層35によって接続されるため、電気伝導性がよい。
【0081】
また、本実施形態1では、バンプ31を、マイクロLED11がソース基板14に保持された状態でLED側電極12に形成した。マイクロLED11が保持されているソース基板14は、ウェーハサイズである。一方、駆動基板20はディスプレイサイズである。
【0082】
ソース基板14と駆動基板20の大きさの違いについて具体例を挙げて説明する。表3から4は、パネルサイズごとに、ソース基板14と駆動基板20との配列ピッチおよび大きさの違いと、それらの比率を示している。表3は32インチパネル用の場合、表4は88インチパネル用の場合、表5は100インチパネル用の場合である。いずれの場合も、マイクロLED11のチップサイズは、40μm×40μm、ディスプレイパネルの解像度は4Kで画素数3,840×2,160である。
【0086】
表3に示すように、駆動基板20のサイズが32インチパネル用の場合、ソース基板14と駆動基板20とで、配列ピッチは3.6倍、面積は約57倍になる。
【0087】
また、表4に示すように、駆動基板20のサイズが88インチパネル用の場合、ソース基板14と駆動基板20とで、配列ピッチは10倍、面積は約440倍になる。
【0088】
また、表5に示すように、駆動基板20のサイズが100インチパネル用の場合、ソース基板14と駆動基板20とで、配列ピッチは12倍、面積は約569倍になる。
【0089】
これらのことから、ソース基板14上のマイクロLED11の配列ピッチは、駆動基板20上では3倍以上となるように配列されて、接着されることがわかる。しかも、パネルサイズが大きくなるほど、配列ピッチの比率も大きくなる。なお、駆動基板20上における配列ピッチの上限は、ディスプレイパネルとして所望される所定個数のマイクロLED11が配列できるピッチであればよい。
【0090】
面積についても同様に、約57倍から569倍と、パネルサイズが大きくなると、その比率も大きくなる。このことからは、SAP30を塗布してバンプ31を形成する場合、駆動基板20側に塗布するよりも、ソース基板14側へ塗布する方が、塗布面積が小さくなる。
【0091】
4インチウェーハサイズである70×70mmでは、そこに保持されるマイクロLEDの個数は、約188万個である。したがって、4K解像度(約830万画素)では、ソース基板約4.4枚必要となる。
【0092】
このことから、SAP30を塗布する場合、塗布面積は、駆動基板20の面積に対して必要枚数のソース基板14の面積が、32インチパネルで約13分の1、88インチパネルで約100分の1、100インチパネルで約144分の1になる。このため、本実施形態1では、使用するSAP30の量を少なくできる。したがって、材料コストや塗布工程に係る経費を低減することが可能となる。また、マイクロLED11の配列ピッチの大きく違うため、SAP30がソース基板側へ塗布されることで、無駄になるSAPの量も少なくできる。
【0093】
このように、本実施形態1では、ディスプレイパネルの大きさによって異なるもの、ソース基板14から駆動基板20へマイクロLED11を転写する際、配列ピッチで3倍以上、塗布面積比で10以上の差がある。このため、たとえば、駆動基板20側に、バンプ31と共に接着剤層32を形成するような方法と比較して、本実施形態1は、製造工程を簡便にし、かつ材料の無駄を少なくすることができる。
【0094】
特に、近年、実用化されてきた4K、8Kといった高精細解像度を有するディスプレイ装置10の製造では、多くのマイクロLED11を駆動基板20へ転写させて接続しなければならない。このため、本実施形態によって、製造時間を短縮することができ、生産性を向上できる。
【0095】
また、本実施形態1では、バンプ31として、既に説明したようにハンダ合金など、もともと金属間化合物を形成しやすい金属を使用することで、LED側電極12および駆動基板側電極21に使用している金属と容易に金属間化合物が形成される。これは、たとえば、電極の表面にメッキ法によって形成されるAuSn合金などよりも金属間化合物が形成されやすい。
【0096】
また、本実施形態1では、特に、バンプ31をSAP30により形成することで、微細化構造の電極でも確実にバンプ形成を行うことができる。
【0097】
また、本実施形態1では、特に、バンプ31をSAP30により形成することで、たとえば、金属ワイヤの先端部を溶融させたボールを固着させてバンプ31を形成させたり、ニードルディスペンサーやフォトレジスト工程を経るバンプ形成方法と比較して、工程時間が短くて済む。
【0098】
(実施形態2)
実施形態2は、マイクロLED11と駆動基板20とを接続する工程が実施形態1と異なる。それ以外の製造工程は、実施形態1と同様である。また、実施形態1で説明した部材と、同様機能を有する部材については、配置が異なっている場合も含めて同じ符号を付した。
【0099】
図13は、実施形態2における、駆動基板20と接続する前のマイクロLED11が保持されたソース基板14の断面図である。
図14は、実施形態2における、マイクロLED11が接続される前の駆動基板20の断面図である。
【0100】
ソース基板14側は、
図13に示すように、分割されたマイクロLED11のLED側電極12にバンプ31が形成され、さらに、マイクロLED11ごとに、バンプ31を覆うように接着剤層32が形成されている。バンプ31の形成方法、およびバンプ31となる金属材料は、実施形態1と同じである。接着剤層32は、たとえば、印刷法を用いて形成され、1個1個のマイクロLED11に対応して、分割されている。バンプ31を含む接着剤層32の膜厚は、50μm以下であることが好ましい。一方、接着剤層32の膜厚の下限は、バンプ31を覆うようにすることが好ましい。たとえば、バンプ31の高さtが実施形態1同様に、2μm以上20μm以下である場合、接着剤層32の膜厚の下限は、3μm以上21μm以下とすることが好ましい。
【0101】
本実施形態2では、バンプ31の上から接着剤層32が設けられているソース基板構造体が提供される。
【0102】
一方、駆動基板20側は、
図14に示すように、駆動基板側電極21が形成された状態である。したがって、本実施形態2では、実施形態1とは異なり、駆動基板20に接着剤層32は形成されていない。
【0103】
その後は、実施形態1同様に、用意されたソース基板14のマイクロLED11が1個1個、駆動基板20に対して位置決めされ、レーザーアブレーション工程によってソース基板14から1個1個のマイクロLED11が駆動基板20へ転写される(
図11参照)。
【0104】
完成したディスプレイ装置10は、実施形態1と同様に(
図12参照)、LED側電極12と駆動基板側電極21が金属層35により接続され、金属層35の一部または全部が金属間化合物となっている。また、マイクロLED11と駆動基板20は、それぞれの電極以外の部分が接着剤層32によって接続される。
【0105】
本実施形態2によれば、実施形態1と同様の効果に加え、以下の効果を奏する。
【0106】
本実施形態2は、接着剤層32を、ソース基板14のマイクロLED11上に形成した。このため、本実施形態2は、接着剤層32の塗布面積も少なくなり、実施形態1と比較して、さらに材料コストを低減できる。
【0107】
このように、本実施形態2では、たとえば、駆動基板20側にバンプ31と共に接着剤層32を形成するような方法と比較して、製造工程を簡便にし、かつ材料の無駄を少なくすることができる。
【0108】
(実施形態3)
実施形態3は、マイクロLED11と駆動基板20とを接続する工程が実施形態1および2と異なる。それ以外の工程は、実施形態1と同様である。また、実施形態1で説明した部材と、同様機能を有する部材については、配置が異なっている場合も含めて同じ符号を付した。
【0109】
図15は、実施形態3における、駆動基板20と接続する前のマイクロLED11が保持されたソース基板14の断面図である。
【0110】
本実施形態3では、ソース基板14側に、
図15に示すように、分割されたマイクロLED11ごとに、SAP30が塗布されている。本実施形態3では、SAP30が塗布されて形成された層は、熱硬化性樹脂30aの中に金属粉30bが入っている樹脂層である。本実施形態では、この樹脂層をSAP層36と称する。
【0111】
実施形態3のSAP層36は、実施形態1において例示したSAP30が用いられる。
【0112】
SAP層36は、たとえば、印刷法を用いることで、マイクロLED11のLED側電極12がある面にのみ形成される。したがって、SAP層36は、1個1個のマイクロLED11に対応して分割されている。
【0113】
SAP層36の膜厚は、たとえば50μm以下とすることが好ましい。SAP層36の膜厚を、50μm以下とすることで、実施形態1で説明した金属層35の膜厚とすることができる。
【0114】
本実施形態3では、SAP層36が設けられているソース基板構造体が提供される。
【0115】
一方、駆動基板20側は、実施形態2同様に、接着剤層32は形成されない(
図14参照)。
【0116】
その後は、実施形態1同様に、用意されたソース基板14のマイクロLED11が1個1個、駆動基板20に対して位置決めされ、レーザーアブレーション工程によってソース基板14から1個1個のマイクロLED11が駆動基板20へ転写される(
図11参照)。その後、実施形態3では、加圧加熱工程において、SAP30内の金属粉30bが電極間に凝集されて、電極同士を接続する金属層35となる。
【0117】
完成したディスプレイ装置10は、実施形態1と同様に(
図12参照)、LED側電極12と駆動基板側電極21が金属層35により接続され、金属層35の一部または全部が金属間化合物となっている。また、マイクロLED11と駆動基板20の電極以外の部分は、接着剤層32によって接続される。
【0118】
本実施形態3によれば、実施形態1と同様の効果に加え、以下の効果を奏する。
【0119】
本実施形態3は、ソース基板14側に、SAP30を塗布してSAP層36を形成したので、実施形態1または2のように、マイクロLED11上のLED側電極12にバンプ31を形成する必要がない。このため、本実施形態3は、実施形態1および2より、製造工程がいっそう簡便にできる。
【0120】
また、本実施形態3は、たとえば、駆動基板20の全面にSAPを塗布するような方法と比較して、SAP材料の無駄を少なくすることができる。
【0121】
なお、本実施形態3は、SAP30に代えて、その他の異方導電性ペーストであるACP(Anisotropic Conductive Paste)や、異方導電性フィルムACF(Anisotropic Conductive Film)を用いることもできる。ACPやACFを用いた場合、SAP層36は、ACP層またはACF層36となる。本実施形態3は、ACPやACFを用いた場合も、上述したSAP30を用いた場合と同様の効果を奏する。
【0122】
(実施形態3の変形例)
図16は、実施形態3の変形例における、駆動基板20と接続する前のマイクロLED11が保持されたソース基板14の断面図である。
【0123】
実施形態3の変形例では、実施形態3におけるSAP層36の上に、さらに接着剤層32が設けられている。SAP層36上の接着剤層32は、SAP層36を同様に、マイクロLED11に合わせて分割されて形成される。
【0124】
SAP30は、熱硬化性樹脂30aを有するが、樹脂成分によっては接着力が小さい場合がある。このため使用するSAP30の樹脂成分によっては、レーザーアブレーション工程により飛ばされたマイクロLED11が駆動基板20でキャッチされない(接着しない)場合がある。
【0125】
本実施形態3の変形例は、SAP層36上の接着剤層32が形成されたことで、使用するSAP30の樹脂成分によらず、レーザーアブレーション工程においてマイクロLED11を、狙い通りの位置で駆動基板20にキャッチさせることができる。
【0126】
SAP層36と接着剤層32との合計膜厚は、6μm以上100μm以下とすることが好ましい。これは、SAP層36を5μm以上50μm以下とした場合、その上に接着剤層32を1μm以上50μm以下形成するためである。もちろんこのような膜厚は適宜変更可能である。
【0127】
これにより本実施形態3の変形例は、SAP層36の上から接着剤層32が設けられているソース基板構造体が提供される。
【0128】
本実施形態3の変形例によるマイクロLED11と駆動基板20とを接続する工程は、実施形態3と同じでよい。
【0129】
このように構成された実施形態3の変形例による効果は、実施形態3の効果に加え、接着剤層32を設けたことで、マイクロLED11を駆動基板20へ確実にキャッチさせることができる。
【0130】
(実施形態4)
実施形態4は、マイクロLED11と駆動基板20とを接続する工程が実施形態1から3と異なる。それ以外の製造工程は、実施形態1と同様である。また、実施形態1で説明した部材と、同様機能を有する部材については、配置が異なっている場合も含めて同じ符号を付した。
【0131】
図17は、実施形態4における、駆動基板20と接続する前のマイクロLED11が保持されたソース基板14の断面図である。
図18は、実施形態4における、マイクロLED11が接続される前の駆動基板20の断面図である。
【0132】
ソース基板14側は、
図17に示すように、分割されたマイクロLED11ごとに、LED側電極12がある面に接着剤層32が形成されている。ただし、実施形態1および2とは異なり、バンプ31は形成されていない。
【0133】
接着剤層32は、たとえば、印刷法を用いることで、マイクロLED11のLED側電極12がある面にのみ形成される。したがって、接着剤層32は、1個1個のマイクロLED11に対応して分割されている。接着剤層32は、実施形態1と同様の材料が用いられる。
【0134】
これにより、本実施形態4では、LED側電極12の上から接着剤層32が設けられているソース基板構造体が提供される。
【0135】
一方、駆動基板20側は、
図18に示すように、駆動基板側電極21にバンプ38が形成される。バンプ31の形成方法は、実施形態1で説明したLED側電極12へのバンプ形成方法と同様の方法を用いることができる。
【0136】
これにより、本実施形態4では、駆動基板側電極21にバンプ38が設けられている駆動基板構造体が提供される。
【0137】
その後は、実施形態1同様に、ソース基板14のマイクロLED11が1個1個、駆動基板20に対して位置決めされ、レーザーアブレーション工程によってソース基板14から1個1個のマイクロLED11が駆動基板20へ転写される(
図11参照)。
【0138】
完成したディスプレイ装置10は、実施形態1と同様に(
図12参照)、LED側電極12と駆動基板側電極21が金属層35により接続され、金属層35の一部または全部が金属間化合物となっている。また、マイクロLED11と駆動基板20の電極以外の部分は、接着剤層32によって接続される。
【0139】
本実施形態4によれば、実施形態1と同様の効果に加え、以下の効果を奏する。
【0140】
本実施形態4は、接着剤層32を、ソース基板14のマイクロLED11上に形成する一方、駆動基板20側にバンプ31を形成した。このため、本実施形態4は、実施形態1と比較して、接着剤層32の塗布面積が少なくなり、接着剤層32の材料コストを低減できる。
【0141】
このように、本実施形態4では、たとえば、駆動基板20側にバンプ31と共に接着剤層32を形成するような方法と比較して、製造工程を簡便にし、かつ材料の無駄を少なくすることができる。
【実施例】
【0142】
以下では、ディスプレイ装置10を試作した例について説明する。
【0143】
(実施例1)
(ソース基板の作成)
本実施例1は、まず、4インチサイズのサファイア基板101上にLEDとなる半導体層102とLED側電極12を形成した。LED側電極12は半導体層102に直接形成した金(Au)製のパッドとした。半導体層102の膜厚は、5μm、LED側電極12(パッド)は60μm×35μmの矩形状とした。
【0144】
続いて、中継基板112上に、熱硬化剤を配合したポリイミド樹脂を10μmの膜厚でスピンコーティングし、転写用樹脂層111を形成した。中継基板112は石英ガラス基板を用いた。
【0145】
続いて、半導体層102と転写用樹脂層111が接するように、サファイア基板101と中継基板112を重ね合わせて、1000N、250℃で、10分間、加圧、加熱して、両基板を貼り合せた。
【0146】
続いて、波長248nmのKrFエキシマレーザーをサファイア基板101側から、200mJ/cm
2のエネルギー密度で全面照射し、半導体層102とサファイア基板101を分離した。
【0147】
続いて、ソース基板14として石英ガラス基板を用意し、このソース基板14上に、熱硬化剤が配合されたポリイミド樹脂をスピンコーティングして、膜厚0.15μmの樹脂層を形成し、真空オーブン中で250℃/1時間焼成してリリース層13を形成した。ポリイミド樹脂は、HD3007(HD MicroSystems)を所望の固形分濃度に希釈したものを用いた。HD3007は波長248nmの紫外線吸収率が99%以上である。
【0148】
続いて、中継基板112上の半導体層102の面をソース基板14のリリース層13に重ね合わせて、ボンディング装置を用いて圧力1000N、250℃で10分、加圧、加熱して、ソース基板14と中継基板112とを貼り合せた。
【0149】
続いて、波長248nmのKrFエキシマレーザーを中継基板112側から、200mJ/cm
2のエネルギー密度で全面照射し、転写用樹脂層111と中継基板112を分離した。半導体層102上に残った転写用樹脂を除去するために、N−メチルピロリドン(NMP)を60℃で転写用樹脂の表面に60秒間スプレーした。その後、純水で60秒間リンスした。
【0150】
続いて、ドライエッチング(酸素プラズマRIE)により半導体層102を個々のマイクロLED11に分割した。
【0151】
(バンプの形成)
バンプ31の形成のために、分割されたマイクロLED11を含むソース基板14の全面にディスペンサーを用いてSAP30を塗布した。SAP30の塗布後、ホットプレートを用いて160℃で1分間加熱し、その後、室温まで冷却した。SAP30は、リフロー実装異方性導電性ペーストEpowell AP series(積水化学工業株式会社製)を用いた。SAP30内の金属は、SnBiおよびSnAgCuハンダ合金であり、樹脂は、熱硬化型の熱可塑性エポキシ樹脂である。
【0152】
その後、SAP30の樹脂成分をN−メチルピロリドンを用いてスプレー洗浄し、イソプロパノールで溶剤成分をリンス除去し、減圧下真空乾燥を行った。これにより、LED側電極12上に、高さ3μmのバンプ31が形成された。
【0153】
(比較例1)
比較例1は、マイクロLED11にバンプ31を形成していない。比較例1は、バンプ31を形成していない以外は実施例1と同じ構成である。
【0154】
(レーザーアブレーション工程による転写)
一定の間隔に配線された銅(Cu)櫛型電極が形成されたガラス基板を用意した。ガラス基板は、駆動基板20に相当する。櫛型電極は駆動基板側電極21に相当する。櫛型電極の大きさは、25μm×70μmである。
【0155】
この銅櫛型電極を含むガラス基板の全面に、非導電性材料を厚さ30μmでアプリケーターを用いて塗布して接着剤層32を形成した。非導電性材料は、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂が主成分の熱硬化性樹脂である。
【0156】
続いて、ソース基板14のマイクロLED11が保持されている面と、ガラス基板の櫛型電極が形成されている面を所定の隙間を開けて向かい合わせて保持した。この状態で、レーザーアブレーション工程により、マイクロLED11をガラス基板へ転写させた。ソース基板14とガラス基板との隙間は、最も近接している部分で100μmとなるように保持した。レーザーアブレーション工程は、波長248nmのKrFエキシマレーザーを使用し、照射エネルギー100mJ/cm
2で行った。
【0157】
なお、実施例1は、評価実験のため、レーザーアブレーション工程の後、加圧加熱工程は行っていない。
【0158】
(転写位置精度の評価)
レーザーアブレーション工程によってガラス基板にキャッチされたマイクロLED11の位置を測定した。測定は、目標となっている櫛型電極のエッジとマイクロLED11のエッジとの間隔を測定した。測定サンプル数は、マイクロLED11の個数として、実施例1および比較例1共に、それぞれ30個である。
【0159】
実施例1(バンプ31あり)では、測定値のバラツキの最大値が±2μmであった。比較例1(バンプ31なし)では、測定値のバラツキの最大値が±5μmであった。
【0160】
この転写精度の評価結果から、マイクロLED11にバンプ31を形成した実施例1の方が、バンプ31なしの比較例1よりも転写の際に位置ずれが少なくなることがわかる。
【0161】
(キャッチ性能評価)
上記同様に、銅櫛型電極が形成されたガラス基板に、接着剤層32として、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂が主成分である非導電性材料を厚さ5、10、20、30μm塗布したガラス基板サンプルを用意した。接着剤層32として使用した熱硬化性樹脂は、既に説明したものと同じである。
【0162】
上記レーザーアブレーション工程による転写と同じく、波長248nmのKrFエキシマレーザーを使用し、各ガラス基板サンプルごとに、それぞれ照射エネルギーを50、60、70、80、90、および100mJ/cm
2により照射してマイクロLED11を転写した。
【0163】
ガラス基板サンプルごと、および照射エネルギーごとに、上述した転写位置精度を評価した。結果を表6に示す。なお、評価結果は、目標位置に対するずれ量を評価し、×=±10μm以上のずれが発生、△=±2μm以上10μm未満のずれが発生、○=±2μm未満のずれが発生とした。
【0164】
表6から、実施例1(バンプ31あり)は、比較例1(バンプ31なし)と比較して、照射エネルギーが低くても、位置精度が高いことがわかる。このため、バンプ31を形成した方が、照射エネルギーマージンが広いことがわかる。一方、非導電性材料の膜厚については、実施例1(バンプ31あり)の方が、比較例1(バンプ31なし)より、膜厚が薄くても、位置ずれが少ない。このため、バンプ31を形成した方が、非導電性材料の塗布時の膜厚のマージンが広いことがわかる。また、バンプ31を形成した方が、非導電性材料の膜厚を薄くできるので、非導電性材料の使用量を少なくしてコスト低減を図ることができる。
【0165】
【表6】
【0166】
(実施例2)
実施例2は、実施例1同様にソース基板14にマイクロLED11を形成し、さらにマイクロLED11の電極にバンプ31を形成した。
【0167】
そして、実施例2は、バンプ31の上からソース基板14の全面に、接着剤層32としてビスフェノールA型液状エポキシ樹脂が主成分である非導電性材料を厚さ10μmでアプリケーターを用いて塗布した。
【0168】
(レーザーアブレーション工程による転写)
一定の間隔に配線された銅(Cu)櫛型電極が形成されたガラス基板を用意した。櫛型電極の大きさは、25μm×70μmである。
【0169】
続いて、ソース基板14のマイクロLED11が保持されている面と、ガラス基板の櫛型電極が形成されている面を向かい合わせて保持し、レーザーアブレーション工程により、マイクロLED11をガラス基板へ転写させた。ソース基板14とガラス基板との隙間は、最も近接している部分で100μmとなるように保持した。レーザーアブレーション工程は、波長248nmのKrFエキシマレーザーを使用し、照射エネルギー100mJ/cm
2で行った。
【0170】
なお、実施例2においても、実施例1同様に、評価実験のため、レーザーアブレーション工程の後、加圧加熱工程は行っていない。
【0171】
(転写位置精度の評価)
レーザーアブレーション工程によってガラス基板にキャッチされたマイクロLED11の位置を測定した。測定は、目標となっている櫛型電極のエッジとマイクロLED11のエッジとの間隔を測定した。測定サンプル数は、マイクロLED11の個数として、実施例2および比較例1共に、それぞれ30個である。
【0172】
実施例2(バンプ31あり)では、測定値のバラツキの最大値が±2μmであった。比較例1(バンプ31なし)では、測定値のバラツキの最大値が±5μmであった。
【0173】
この転写精度の評価結果から、マイクロLED11にバンプ31を形成後、さらに接着剤層32を塗布した実施例2の方が、バンプ31なしの比較例1よりも転写の際に位置ずれが少ないことがわかる。
【0174】
(キャッチ性能評価)
上記レーザーアブレーション工程による転写と同じく、波長248nmのKrFエキシマレーザーを使用し、各ガラス基板サンプルごとに、それぞれ照射エネルギーを50、60、70、80、90、および100mJ/cm
2により照射してマイクロLED11を転写した。
【0175】
ガラス基板サンプルごと、および照射エネルギーごとに、上述した転写位置精度を評価した。結果を表7に示す。なお、評価結果は、表6と同様に、×=±10μm以上のずれが発生、△=±2μm以上10μm未満のずれが発生、○=±2μm未満のずれが発生とした。
【0176】
表7から、実施例2(バンプ31あり)は、比較例1(バンプ31なし)と比較して、照射エネルギーが低くても、位置精度が高いことがわかる。このため、バンプ31を形成した方が、照射エネルギーマージンが広いことがわかる。
【0177】
【表7】
【0178】
以上のように各実施例は、マイクロLED11を駆動基板20側への転写位置精度がよい。また各実施例は、照射エネルギーに多くのマージンがある。これらのことから、本発明は、マイクロLED11のディスプレイ装置10を製造する際に、従来よりも簡便な製造方法を採用したうえで、歩留まりの向上が期待できることがわかる。
【0179】
以上、本発明の実施形態および実施例を説明したが、本発明はこれら実施形態や実施例に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
【0180】
上述した各実施形態では、LED側電極12と駆動基板側電極21を接続する金属として、金属間化合物を形成しやすい金属を用いることとした。しかし、本発明は、金属間化合物を形成しやすい金属に限定されない。本発明の実施形態としては、たとえば、LED側電極12と駆動基板側電極21を電気的に接続できる金属であってもよい。その場合は、LED側電極12と駆動基板側電極21とが金属層35で接続され、マイクロLED11と駆動基板20とが接着剤層32によって接続される。したがって、このような場合も、マイクロLED11と駆動基板20とが金属層35と接着剤層32の2層構造によって接続された形態となる。金属間化合物を形成しやすい金属を用いなかった場合の製造方法は、説明した各実施形態と同様であるので、簡便かつ確実にマイクロLED11と駆動基板20を接続することができる。
【0181】
そのほか、本発明は特許請求の範囲に記載された構成に基づき様々な改変が可能であり、それらについても本発明の範疇である。