【解決手段】高周波増幅回路は、高周波入力信号を増幅するソース接地の第1トランジスタと、第1トランジスタで増幅された信号をさらに増幅するゲート接地の第2トランジスタと、第1トランジスタのゲートに繋がる入力信号経路上に接続され、所定の利得モード時に高周波入力信号を減衰させ、所定の利得モード以外の利得モードでは高周波入力信号を減衰させることなく通過させる減衰器と、を備える。減衰器は、所定の利得モード時に入力信号経路上に接続される第1抵抗素子と、所定の利得モード時に、高周波入力信号の入力ノードと第1抵抗素子の一端との間の入力信号経路と、第1基準電位ノードと、の間に接続される第2キャパシタと、所定の利得モード時に第1抵抗素子の他端と第1トランジスタのゲートとの間の入力信号経路と第1基準電位ノードとの間に接続される第2抵抗素子と、を有する。
バイパスモード時に前記高周波入力信号が前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタで増幅されないように、前記入力ノードから前記第2インダクタと前記第1キャパシタとの接続ノードを介して前記出力ノードに前記高周波入力信号をバイパスさせるバイパス経路と、
前記バイパスモード時には、前記第2トランジスタのドレイン−ソース間と前記第1トランジスタのドレイン−ソース間とを通って前記第1基準電位ノードに至る信号経路を遮断する第6トランジスタと、を備える、請求項1又は2に記載の高周波増幅回路。
前記バイパスモード時には前記高周波入力信号を増幅することなく、前記入力ノードから前記第2インダクタと前記第1キャパシタとの接続ノードにバイパスさせ、前記バイパスモード以外の利得モード時には前記バイパス経路を前記出力ノードから遮断するバイパス切替回路を備える、請求項3に記載の高周波増幅回路。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、本件明細書と添付図面においては、理解のしやすさと図示の便宜上、一部の構成部分を省略、変更または簡易化して説明および図示しているが、同様の機能を期待し得る程度の技術内容も、本実施の形態に含めて解釈することとする。また、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物から変更し誇張してある。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態による高周波増幅回路(以下、LNA)1の回路図である。
図1のLNA1は、例えばSOI基板上に配置可能である。また、LNA1の周辺回路、例えばアンテナスイッチとLNA1を同一のSOI基板上に配置してもよい。
図1のLNA1は、例えば携帯電話やスマートフォンなどの無線装置で用いられるが、用途や実装場所は問わない。
図1のLNA1は、利得を複数通りに切替可能である。以下では、利得モードの切替により、4通りに利得を切替可能な例を説明するが、利得モードの切替数は必ずしも4通りに限定されず、2通り以上であればよい。本明細書では、第1利得G0モードを最大利得のモード、第2利得G1モードを2番目に利得が大きいモード、第3利得G2モードを2番目に利得が小さいモード、第4利得G3モードを最小利得のモードとする。この他、
図1のLNA1は、高周波入力信号を利得の調整をすることなく、そのまま出力するバイパスBYPモードを有する。
【0012】
図1のLNA1は、ソース接地のトランジスタ(第1トランジスタ)Q1と、ゲート接地のトランジスタ(第2トランジスタ)Q2と、第1インダクタLsと、第2インダクタLdと、可変抵抗素子Rdと、トランジスタ(第6トランジスタ)Q3と、可変キャパシタ(第1キャパシタ)Coutと、減衰器3と、シャント抵抗Rsh2と、バイパス切替回路4と、バイアス生成回路5とを備えている。
【0013】
トランジスタQ3はP型MOSトランジスタであり、それ以外のトランジスタはすべてN型MOSトランジスタである。なお、後述するように、可変抵抗素子Rdは、P型MOSトランジスタを用いて構成可能である。
【0014】
トランジスタQ1のゲートには、入力信号経路2が接続されている。入力信号経路2上には、高周波入力信号が入力される入力ノードLNAinと、減衰器3と、キャパシタCxとが接続されている。また、入力ノードLNAinには、外付けインダクタLextが接続されており、高周波入力信号は、この外付けインダクタLextを介して入力ノードLNAinに入力される。本実施形態は、
図1のLNA1をSOI基板上に形成してチップ化することを想定しており、チップ内に外付けインダクタLextを形成する十分なスペースがないことから、外付けしている。チップ内に十分なスペースがある場合には、外付けインダクタLextをチップ内に内蔵してもよい。
【0015】
入力信号経路2は、キャパシタCxを介してトランジスタQ1のゲートに接続されている。入力信号経路2には、抵抗素子RB1を介して第1バイアス電圧VB1が供給される。第1バイアス電圧VB1は、バイアス生成回路5にて生成される。
【0016】
また、入力信号経路2と第1基準電位ノードの間には、シャント抵抗Rsh2と、トランジスタQ4とが接続されている。このトランジスタQ4は第3利得G2モードのときにオンし、入力信号経路2と第1基準電位ノードとの間にシャント抵抗Rsh2が接続される。これにより、第3利得G2モード時に高周波入力信号の利得を下げることができる。第1基準電位ノードは例えば接地ノードである。以下では、第1基準電位ノードをGNDと表記する。
【0017】
トランジスタQ1はソース接地であり、トランジスタQ1のソースと第1基準電位ノードGNDとの間には第1インダクタLsが接続されている。
【0018】
トランジスタQ2は、トランジスタQ1にカスコード接続されている。より詳細には、トランジスタQ1のドレインはトランジスタQ2のソースに接続されている。トランジスタQ2のゲートには、抵抗素子RB2を介してバイアス電圧VB2が供給される。トランジスタQ2のゲートと第1基準電位ノードGNDとの間にはキャパシタCB2が接続されている。キャパシタCB2の容量と抵抗RB2の抵抗値はいずれも十分に大きいため、トランジスタQ2はゲート接地の増幅器として機能する。トランジスタQ2のドレインには、トランジスタQ3のドレインが接続されている。トランジスタQ3のソースには、第2インダクタLd、可変抵抗素子Rd、キャパシタCbyp1、可変キャパシタCout、キャパシタCbyp2の各一端が接続されている。第2インダクタLdと可変抵抗素子Rdの各他端は第2基準電位ノードVDD_LNAに接続されている。
【0019】
トランジスタQ3のゲートは、抵抗素子RB3を介して第1基準電位ノードGNDに接続されている。トランジスタQ3は、第1〜第4利得G0〜G3モード時はオンし、バイパスモード時はオフする。このように、トランジスタQ3は、バイパスモード時に、トランジスタQ2のドレイン−ソース間とトランジスタQ1のドレイン−ソース間を通って第1インダクタLsに至る信号経路を遮断する。これにより、バイパスモード時に振幅の大きい高周波入力信号がバイパス経路6上を伝搬しても、トランジスタQ1、Q2が誤動作を起こすおそれがなくなる。
【0020】
減衰器3は、トランジスタQ1のゲートに繋がる入力信号経路2上に接続され、第4利得G3モード時に高周波入力信号を減衰させる。減衰器3は、第4利得G3モード以外の利得モードでは、高周波入力信号を減衰させることなく通過させる。減衰器3は、キャパシタ(第2キャパシタ)Csh3と、抵抗素子(第1抵抗素子)Rt3と、抵抗素子(第2抵抗素子)Rsh3とを有する。抵抗素子Rt3は、第4利得G3モード時に入力信号経路2上に接続される。キャパシタCsh3は、第4利得G3モード時に、高周波入力信号の入力ノードLNAinと抵抗素子Rt3の一端との間の入力信号経路と、第1基準電位ノードGNDと、の間に接続される。抵抗素子Rsh3は、第4利得G3モード時に、抵抗素子Rt3の他端とトランジスタQ1のゲートとの間の入力信号経路2と、第1基準電位ノードGNDと、の間に接続される。キャパシタCsh3を設けることで、第4利得G3モード時のSパラメータであるS11を改善することができる。
【0021】
このように、減衰器3は、第4利得G3モードよりも高利得の第1〜第3利得G0〜G2モード時には、抵抗素子Rt3をバイパスさせるとともに、入力信号経路2へのキャパシタCsh3及び抵抗素子Rsh3の接続を遮断する。また、減衰器3は、第4利得G3モード時には、抵抗素子Rt3を入力信号経路2上に接続するとともに、入力信号経路2と第1基準電位ノードGNDとの間にキャパシタCsh3を接続し、かつ抵抗素子Rt3からトランジスタQ1のゲートまでの間の入力信号経路2と第1基準電位ノードGNDとの間に抵抗素子Rsh3を接続する。
【0022】
減衰器3は、トランジスタ(第3トランジスタ)Q5と、トランジスタ(第4トランジスタ)Q6と、トランジスタ(第5トランジスタ)Q7とを有していてもよい。トランジスタQ5は、抵抗素子Rt3をバイパスさせるか否かを切り替える。トランジスタQ6は、入力ノードLNAinと抵抗素子Rt3との間の入力信号経路2と、第1基準電位ノードGNDと、の間にキャパシタCsh3を接続するか否かを切り替える。トランジスタQ7は、抵抗素子Rt3からトランジスタQ1のゲートまでの間の入力信号経路2と第1基準電位ノードGNDとの間に抵抗素子Rsh3を接続するか否かを切り替える。トランジスタQ5〜Q7は、第4利得G3モードか否かでオンまたはオフが切り替えられる。すなわち、第4利得G3モード時には、トランジスタQ6とトランジスタQ7がオンし、トランジスタQ5はオフする。これにより、第4利得G3モード時には、抵抗Rt3が入力信号経路2上に接続され、かつキャパシタCsh3と抵抗素子Rsh3が入力信号経路2と第1基準電位ノードGNDとの間に接続される。よって、第4利得G3モード時には、高周波入力信号が十分に減衰される。
【0023】
バイアス生成回路5は、バイアス電圧VB1、VB2を生成する。トランジスタQ1,Q2の各ゲートに接続される抵抗RB1、RB2は、高周波入力信号RFinがバイアス生成回路5に回り込むのを防止するために設けられている。バイアス電圧VB1は例えば0.5V又は0.55V、バイアス電圧VB2は例えば1.3V又は1.34V、第2基準電位VDD_LNAは例えば1.8Vに設定される。
【0024】
図1のLNA1は、バイパスモード時に高周波入力信号をバイパスさせるバイパス経路6を備えている。バイパスモード時には、高周波入力信号は、トランジスタQ1、Q2で増幅されることなく、バイパス経路6を通って出力ノードOUTまで伝送される。バイパス経路は、バイパスモード時に高周波入力信号がトランジスタQ1及びトランジスタQ2で増幅されないように、入力ノードLNAinから第2インダクタLdと可変キャパシタCoutとの接続ノードn1を介して出力ノードOUTに高周波入力信号をバイパスさせる経路である。
【0025】
バイパス経路6上には、バイパス切替回路4が接続されている。バイパス切替回路4は、バイパスモード時には高周波入力信号を増幅せずに出力ノードOUTに伝送し、第1〜第4利得G0〜G3モード時にはバイパス経路6を出力ノードOUTから遮断する。
【0026】
より詳細には、バイパス切替回路4は、少なくとも3つのトランジスタQ8〜Q10を有するT型バイパス切替回路で構成可能である。トランジスタ(第7トランジスタ)Q8とトランジスタ(第8トランジスタ)Q9は、バイパス経路6上にカスコード接続されている。トランジスタQ10(第9トランジスタ)は、トランジスタQ8とトランジスタQ9の接続ノードと第1基準電位ノードGNDとの間に接続されている。トランジスタQ8及びトランジスタQ9は、第1〜第4利得G0〜G3モード時にオフし、バイパスモード時にオンする。トランジスタQ10は、第1〜第4利得G0〜G3モード時にオンし、バイパスモード時にオフする。
【0027】
図1のLNA1では、バイパス切替回路4内に、さらに3つのトランジスタQ11〜Q13を追加している。トランジスタQ11,Q8,Q9,Q12はバイパス経路6上でカスコード接続され、トランジスタQ10,Q13はバイパス経路6と第1基準電位ノードGNDの間でカスコード接続されている。これら3つのトランジスタQ11〜Q13を追加する理由は、第4利得G3モード時のIPIdBをより改善させるためであり、これら3つのトランジスタQ11〜Q13は必須の構成部品ではない。
【0028】
バイパス経路6上には、キャパシタCbyp1が接続されている。また、可変キャパシタCoutに並列に、キャパシタCbyp2とトランジスタQ14が接続されている。このトランジスタQ14は、バイパスモード時にオンする。よって、バイパスモード時には、可変キャパシタCoutとキャパシタCbyp2が並列接続される。第1〜第4利得G0〜G3モード時にはトランジスタQ14はオフしており、可変キャパシタCoutのみが出力ノードOUTに接続される。
【0029】
可変抵抗素子Rdは第2インダクタLdに並列接続されている。本実施形態では、第1〜第4利得G0〜G3モードのそれぞれごとに、可変抵抗素子Rdと可変キャパシタCoutの抵抗値と容量を最適化することを想定している。
【0030】
図2は
図1の可変抵抗素子Rdと可変キャパシタCoutの具体的な回路構成の一例を示す回路図である。
図2の可変抵抗素子Rdは、第1〜第4利得G0〜G3モード用の4つの可変抵抗回路7を有し、これら可変抵抗回路7は並列接続されている。これら可変抵抗回路7は、第2基準電位ノードVDD_LNAと内部出力ノードn1との間に接続されている。内部出力ノードn1は、
図1のトランジスタQ3のソースに接続されるノードである。
【0031】
第1利得G0モード用の可変抵抗回路7は、カスコード接続された2つのP型MOSトランジスタ(第1スイッチ回路)Q15,Q16と、抵抗素子Rd0とを有する。これらトランジスタQ15,Q16のゲートは抵抗素子を介して第1基準電位ノードGNDに接続されている。このため、これらトランジスタは第1〜第4利得G0〜G3モードのいずれにおいてもオンし、第2基準電位ノードVDD_LNAと内部出力ノードn1の間に抵抗素子Rd0が接続される。2つのトランジスタQ15,Q16をカスコード接続するのは、バイパスモード時のIP1dBを劣化させないためであり、必要に応じて3つ以上のトランジスタをカスコード接続してもよい。
【0032】
第2利得G1モード用の可変抵抗回路7は、カスコード接続された2つのP型MOSトランジスタ(第1スイッチ回路)Q17,Q18と、抵抗素子Rd1とを有する。これらトランジスタQ17,Q18のゲートには、抵抗素子を介してxG1信号が入力される。xG1信号は、第2利得G1モード時にローになる信号である。抵抗素子Rd1は、抵抗素子Rd0よりも小さい抵抗値を有する。よって、第2利得G1モード時には、抵抗素子Rd0とRd1が並列接続される。
【0033】
第3利得G2モード用の可変抵抗回路7は、カスコード接続された2つのP型MOSトランジスタ(第1スイッチ回路)Q19,Q20と、抵抗素子Rd2とを有する。これらトランジスタQ19,Q20のゲートには、抵抗素子を介してxG2信号が入力される。xG2信号は、第3利得G2モード時にローになる信号である。抵抗素子Rd2は、抵抗素子Rd1よりも小さい抵抗値を有する。よって、第3利得G2モード時には、抵抗素子Rd0とRd2が並列接続される。
【0034】
第4利得G3モード用の可変抵抗回路7は、カスコード接続された2つのP型MOSトランジスタ(第1スイッチ回路)Q21,Q22と、抵抗素子Rd3とを有する。これらトランジスタQ21,Q22のゲートには、抵抗素子を介してxG3信号が入力される。xG3信号は、第4利得G3モード時にローになる信号である。抵抗素子Rd3は、抵抗素子Rd2よりも小さい抵抗値を有する。よって、第4利得G3モード時には、抵抗素子Rd0とRd3が並列接続される。
【0035】
このように、可変抵抗素子Rd内の各可変抵抗回路7の抵抗素子Rd0〜Rd3の抵抗値は、Rd0>Rd1>Rd2>Rd3の関係があり、利得の大きな利得モードほど、可変抵抗素子Rdの抵抗値は大きい値に設定される。
【0036】
図2の可変キャパシタCoutは、内部出力ノードn1と出力ノードOUTとの間に、キャパシタCout0と3つの可変キャパシタ回路8とが並列接続されている。
【0037】
第2利得G1モード用の可変キャパシタ回路8は、直列接続されたキャパシタCout1とトランジスタ(第2スイッチ回路)Q23とを有する。キャパシタCout1は、キャパシタCout0よりも小さい容量を有する。トランジスタQ23は、第2利得G1モードがハイのときにオンし、キャパシタCout0とCout1が並列接続される。
【0038】
第3利得G2モード用の可変キャパシタ回路8は、直列接続されたキャパシタCout2とトランジスタ(第2スイッチ回路)Q24とを有する。キャパシタCout2は、キャパシタCout1よりも大きい容量を有する。トランジスタQ24は、第3利得G2モードがハイのときにオンし、キャパシタCout0とCout2が並列接続される。
【0039】
第4利得G3モード用の可変キャパシタ回路8は、直列接続されたキャパシタCout3とトランジスタ(第2スイッチ回路)Q25とを有する。キャパシタCout3は、キャパシタCout2よりも大きい容量を有する。トランジスタQ25は、第4利得G3モードがハイのときにオンし、キャパシタCout0とCout3が並列接続される。
【0040】
このように、可変キャパシタ内の各可変キャパシタ回路8のキャパシタCout1〜Cout3は、Cout1<Cout2<Cout3の関係があり、利得の大きな利得モードほど、可変キャパシタの容量は小さい値に設定される。
【0041】
図3は第1〜第4利得G0〜G3モード及びバイパスモード時に
図1及び
図2の各トランジスタのゲート等に入力される電圧値を示す図である。
図3は、
図1の可変抵抗素子Rdと可変キャパシタとして
図2の構成を適用した場合の電圧値を示している。
図3の電圧値は一例であり、
図1のLNA1の半導体プロセスや使用環境等に応じて、任意に変更可能である。
図3の例では、第1〜第4利得G0〜G3モード時には第2基準電位ノードVDD_LNAは1.8Vに設定され、バイパスモード時には0Vに設定される。バイアス生成回路5が生成するバイアス電圧VB1とVB2は、第1及び第2利得G0,G1モード時と、第3及び第4利得G2,G3モード時と、バイパスモード時とで異なっている。
【0042】
次に、
図1のLNA1の回路についてシミュレーションを行った結果を示す。
図4(a)、
図5(a)、
図6(a)、
図7(a)及び
図8(a)は第1〜第4利得G0〜G3モード、バイパスモード時のSパラメータであり、横軸は周波数[GHz」、縦軸はSパラメータ値である。これらの図には、入力側の反射特性S11の曲線と、出力側の反射特性S22の曲線と、入力側から出力側への通過特性S21の曲線とが示されている。
【0043】
図4(b)、
図5(b)、
図6(b)、
図7(b)及び
図8(b)は第1〜第4利得G0〜G3モード、バイパスモード時のノイズ指数NFを示す図であり、横軸は周波数[GHz]、縦軸はノイズ指数NFである。
【0044】
これらの図では、LTE(Long Term Evolution)バンドの一つであるバンド41の周波数帯域である2.496GHz、2.593GHz、2.690GHzに目印を付している。本実施形態によるLNA1は、バンド41の周波数帯域で使用することを想定して設計したものである。バイパスモードのシミュレーション結果を示す
図8(a)からわかるように、バンド41の周波数帯域内のSパラメータは良好である。通過損失(−S21)とノイズ指数NFはともに3dB以下で、S11は−10dB以下、S22は−14dB以下と一般的要求を満たしている。
【0045】
図9は第1〜第4利得G0〜G3モード及びバイパスモード時における利得Gpの入力信号電力Pin[dBm]依存性を示す図である。
図9より、バイパスモードにおけるIP1dBは9.2dBmであり、一般的な要求である9dBmを満たしている。
【0046】
図10は第1〜第4利得G0〜G3モード及びバイパスモード時におけるIIP3[dBm]の入力信号電力Pin[dBm]依存性を示す図である。図示のように、第4利得モードG3時のIIP3は12[dBm]程度と大きく、良好な特性である。
【0047】
図11は第1〜第4利得G0〜G3モード及びバイパスモード時における一般的な要求仕様をまとめた図である。また、
図12は
図4〜
図10のシミュレーション結果をまとめた図である。
図12に示すように、本実施形態によるシミュレーション結果は、
図11の要求仕様を満たしていることがわかる。
【0048】
図1のLNA1は、種々の変更が可能である。
図13は第1変形例によるLNA1の回路図である。
図13のLNA1は、第1インダクタLsを第3インダクタLs1と第4インダクタLs2に分けたものである。第3インダクタLs1の一端は、トランジスタQ1のソースに接続されている。第4インダクタLs2は、第3インダクタLs1の他端と第1基準電位ノードGNDとの間に接続されている。また、
図13のLNA1は、第4インダクタLs2をバイパスさせるか否かを切り替えるトランジスタQ26を備えている。このトランジスタQ26は第4利得G3モード以外のときにオンし、第4利得G3モード時にオフする。第4利得G3モード以外では、第4インダクタLs2はバイパスされるため、トランジスタQ1のソースと第1基準電位ノードGNDの間には第3インダクタLs1のみが接続される。第4利得G3モード時は、トランジスタQ1のソースと第1基準電位ノードGNDの間に第3インダクタLs1と第4インダクタLs2が接続される。このように、
図13のLNA1では、第4利得G3モード時における第1インダクタLsのインダクタンスを他のモードよりも大きくする。これにより、第4利得G3モード時にIIP3とノイズ指数NFを低下させることなく、第4利得G3モード時の利得を十分に絞ることができる。
【0049】
なお、
図13のLNA1における可変抵抗素子Rdと可変キャパシタCoutは、
図2の可変抵抗素子Rdと可変キャパシタで構成可能である。
【0050】
図14は第2変形例によるLNA1の回路図である。
図14のLNA1は、
図1のLNA1におけるトランジスタQ3の代わりに、N型MOSトランジスタ(第6トランジスタ)Q27を設けたものである。トランジスタQ27は、トランジスタQ1のソースと第1インダクタLsとの間に接続されている。トランジスタQ27のゲートには、抵抗素子RB4を介してxBYP信号が入力される。xBYP信号は、バイパスモード以外のときにハイレベルになる信号である。このため、バイパスモード以外の第1〜第4利得G0〜G3モード時には、トランジスタQ27はオンし、トランジスタQ1のソースと第1インダクタLsの一端とが接続される。一方、バイパスモード時には、トランジスタQ27がオフし、トランジスタFET1のソースと第1インダクタLsとの接続が遮断される。これにより、バイパスモード時には、トランジスタQ2からトランジスタQ1と第1インダクタLsを通って第1基準電位ノードGNDに至る信号経路が遮断される。したがって、
図14のLNA1によれば、バイパスモード時のIP1dBを向上できる。
【0051】
なお、
図14の減衰器3は、
図1の減衰器3のトランジスタQ6とQ7をそれぞれ二段構成のトランジスタQ6a,Q6bとQ7a,Q7bにしている。同様に、
図14のLNA1では、
図1のシャント抵抗Q4を二段構成のシャント抵抗Q4a,Q4bにしている。これらのトランジスタを二段構成にするのは、IP1dBを向上させるためである。IP1dBを向上させる必要がなければ、
図1と同様に減衰器3とシャント抵抗Q4を構成してもよい。また、
図14のLNA1では、可変抵抗Rdを
図2と同様に構成している。また、
図14のバイパス切替回路4は、
図1のバイパス切替回路4からトランジスタQ11,Q12を省略した構成になっているが、これらトランジスタQ11,Q12を追加してもよい。
【0052】
このように、第1の実施形態によるLNA1は、高周波入力信号の入力信号経路2上に減衰器3を接続し、この減衰器3で第4利得G3モード時に高周波入力信号を減衰させるため、S11やIIP3、ノイズ指数NF等の電気的特性を劣化させることなく、第4利得G3モード時の利得を十分に絞ることができ、第4利得G3モードでの仕様を満たす利得の信号を出力できる。特に、減衰器3内に、第4利得G3モード時に、入力ノードLNAinと抵抗素子Rt3との間の入力信号経路2と、第1基準電位ノードGNDとの間にキャパシタCsh3を接続することで、第4利得G3モードでのS11を改善することができる。
【0053】
また、第1インダクタLsを第3インダクタLs1と第4インダクタLs2に分けて、第4インダクタLs2は第4利得G3モードのみ第3インダクタLs1に接続されるようにすることで、第4利得G3モード時の第1インダクタLsのインダクタンスを十分に大きくでき、よりいっそう利得を絞ることができる。
【0054】
また、トランジスタQ3又はトランジスタQ27を設けることで、バイパスモード時にトランジスタQ2からトランジスタQ1を通って第1インダクタLsに至る信号経路を遮断することができ、バイパスモード時に大振幅の高周波入力信号が入力されても、トランジスタQ1やQ2が増幅動作を行うおそれがなくなり、IP1dBを向上できる。
【0055】
さらに、バイパス経路6上に、バイパスモード時は高周波入力信号をそのまま出力ノードOUTに伝搬させ、第1〜第4利得G0〜G3モード時は高周波入力信号を遮断するバイパス切替回路4を設けるため、第1〜第4利得G0〜G3モード時に高周波入力信号がバイパス経路6の影響を受けなくなる。
【0056】
また、第2インダクタLdに並列に、各利得モードに対応した複数の可変抵抗回路7を接続するため、各利得モードに最適な抵抗値を設定できる。同様に、キャパシタCout0に並列に、各利得モードに対応した複数の可変キャパシタ回路8を接続するため、各利得モードに最適な容量を設定できる。
【0057】
(第2の実施形態)
第1の実施形態によるLNA1はバイパスモードを備えていたが、バイパスモードを備えていないLNA1も考えられる。
【0058】
図15は第2の実施形態によるLNA1の回路図である。
図15のLNA1はバイパスモード及びバイパス経路を備えていない。
図15では、
図1及び
図2と共通する構成部分には同一符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
【0059】
図15のLNA1は、
図1及び
図2のLNA1におけるバイパス経路6と、バイパス切替回路4と、キャパシタCbyp1、Cbyp2とを省略した回路構成を備えている。
図15のLNA1は、バイパスモードは持たないが、第1〜第4利得G0〜G3モードを備えている。各利得モードでの各トランジスタのゲート電圧等は、
図3と同様である。
【0060】
図15のLNA1は、
図1のLNA1と同様の減衰器3を備えており、第4利得G3モード時には高周波入力信号を減衰器3で減衰してからトランジスタQ1のゲートに入力する。これにより、S11やIIP3、ノイズ指数等の電気的特性を低下させることなく、第4利得G3モード時の利得を十分に絞ることができる。
【0061】
図16は
図15の一変形例によるLNA1の回路図である。
図16のLNA1は、
図13と同様に、第1インダクタLsを第3インダクタLs1と第4インダクタLs2に分けて、第4インダクタLs2は第4利得G3モード時のみ有効にしている。これにより、第4利得G3モード時の第1インダクタLsのインダクタンスを大きくでき、第4利得G3モード時の利得をよりいっそう絞ることができる。
【0062】
なお、
図15や
図16の減衰器3内の各トランジスタQ6,Q7や、シャント抵抗Rsh2に接続されるトランジスタQ4を、
図14と同様に二段構成にしてIP1dBの向上を図ってもよい。また、
図16の可変抵抗器Rdと可変キャパシタCoutは、
図2と同様の構成にしてもよい。
【0063】
図17は第1〜第4利得G0〜G3モード時に
図16のLNA1に設定される各種の値を示す図である。
図17では、第1及び第2利得G0,G1モード時における可変キャパシタCoutの容量を0.65[pF]とし、第3及び第4利得G2,G3モード時における可変キャパシタCoutの容量を0.80[pF]としている。また、可変抵抗素子Rdの抵抗値は第1〜第4利得G0〜G3モードのそれぞれで異なる値に設定している。
図17に示す各値は一例であり、任意に変更可能である。
【0064】
このように、第2の実施形態によるLNA1は、バイパスモードを備えていないが、第1の実施形態と同様に、入力信号経路2に接続された減衰器3を備えているため、IIP3を低下させることなく、第4利得G3モード時に利得を十分に絞ることができる。
【0065】
(第3の実施形態)
上述した第1又は第2の実施形態によるLNA1は、無線装置に内蔵可能である。
図18は第1又は第2の実施形態によるLNA1を内蔵する無線装置11の概略構成を示すブロック図である。
図1の無線装置11は、アンテナ12と、アンテナスイッチ13と、バンドパスフィルタ(BPF)14と、LNA15と、無線IC(RFIC)16と、パワーアンプ(PA)17と、ローパスフィルタ(LPF)18とを備えている。
【0066】
図17のLNA15は、第1又は第2の実施形態によるLNA1、又は第3の実施形態による高周波増幅回路10と同様の回路構成を有する。
【0067】
アンテナスイッチ13は、送受信を切り替えるスイッチである。
図1では、送信側と受信側がそれぞれ1系統の例を示しているが、送信側と受信側がそれぞれ、複数の周波数帯域の信号を送受する複数系統を有していてもよい。
図1のアンテナスイッチ13とLNA15は同一のSOI基板上に配置可能であり、ワンチップにすることができる。アンテナスイッチ13とLNA15をSOI基板上に配置することで、消費電力の削減と小型化も可能となる。
【0068】
このように、第1又は第2の実施形態によるLNA1はSOI基板上に形成することで、MOSトランジスタの寄生容量を小さくできることから、高周波信号の電力損失を小さくできる。また、SOI基板上には、LNA1だけでなく、アンテナスイッチ13も形成できるため、LNA1とアンテナスイッチ13をワンチップにまとめることができ、無線装置の小型化を図ることができる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。