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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-195033(P2020-195033A)
(43)【公開日】2020年12月3日
(54)【発明の名称】高周波増幅回路及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H03G 3/10 20060101AFI20201106BHJP
   H03F 3/189 20060101ALI20201106BHJP
   H03F 1/22 20060101ALI20201106BHJP
   H03H 7/25 20060101ALI20201106BHJP
【FI】
   H03G3/10 E
   H03F3/189
   H03F1/22
   H03H7/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-98614(P2019-98614)
(22)【出願日】2019年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】栗山 保彦
【テーマコード(参考)】
5J026
5J100
5J500
【Fターム(参考)】
5J026AA03
5J026AA10
5J026AA18
5J100AA02
5J100AA14
5J100BA04
5J100BA10
5J100BB02
5J100BB08
5J100BB12
5J100BB13
5J100BB16
5J100BC02
5J100EA02
5J100FA02
5J500AA01
5J500AA13
5J500AA51
5J500AC21
5J500AC75
5J500AF10
5J500AF11
5J500AH09
5J500AH26
5J500AH30
5J500AH33
5J500AH39
5J500AK12
5J500AK23
5J500AM17
5J500AS01
5J500AS13
5J500AT01
5J500LV07
(57)【要約】

【課題】電気的特性を低下させることなく利得の切替ができるようにする。
【解決手段】高周波増幅回路は、高周波入力信号を増幅するソース接地の第1トランジスタと、第1トランジスタで増幅された信号をさらに増幅するゲート接地の第2トランジスタと、第1トランジスタのゲートに繋がる入力信号経路上に接続され、所定の利得モード時に高周波入力信号を減衰させ、所定の利得モード以外の利得モードでは高周波入力信号を減衰させることなく通過させる減衰器と、を備える。減衰器は、所定の利得モード時に入力信号経路上に接続される第1抵抗素子と、所定の利得モード時に、高周波入力信号の入力ノードと第1抵抗素子の一端との間の入力信号経路と、第1基準電位ノードと、の間に接続される第2キャパシタと、所定の利得モード時に第1抵抗素子の他端と第1トランジスタのゲートとの間の入力信号経路と第1基準電位ノードとの間に接続される第2抵抗素子と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波入力信号を増幅するソース接地の第1トランジスタと、
前記第1トランジスタで増幅された信号をさらに増幅するゲート接地の第2トランジスタと、
前記第1トランジスタのソースと第1基準電位ノードとの間に接続される第1インダクタと、
前記第2トランジスタのドレインと第2基準電位ノードとの間に接続される第2インダクタと、
前記第2トランジスタのドレインと当該高周波増幅回路の出力ノードとの間に接続される第1キャパシタと、
前記第1トランジスタのゲートに繋がる入力信号経路上に接続され、所定の利得モード時に前記高周波入力信号を減衰させ、前記所定の利得モード以外の利得モードでは前記高周波入力信号を減衰させることなく通過させる減衰器と、を備え、
前記減衰器は、
前記所定の利得モード時に前記入力信号経路上に接続される第1抵抗素子と、
前記所定の利得モード時に、前記高周波入力信号の入力ノードと前記第1抵抗素子の一端との間の前記入力信号経路と、前記第1基準電位ノードと、の間に接続される第2キャパシタと、
前記所定の利得モード時に、前記第1抵抗素子の他端と前記第1トランジスタのゲートとの間の前記入力信号経路と、前記第1基準電位ノードと、の間に接続される第2抵抗素子と、を有する、高周波増幅回路。
【請求項2】
前記減衰器は、
前記第1抵抗素子をバイパスさせるか否かを切り替える第3トランジスタと、
前記入力信号経路と前記第1基準電位ノードとの間に前記第2キャパシタを接続するか否かを切り替える第4トランジスタと、
前記第1抵抗素子から前記第1トランジスタのゲートまでの間の入力信号経路と前記第1基準電位ノードとの間に前記第2抵抗素子を接続するか否かを切り替える第5トランジスタと、を有し、
前記第3乃至第5トランジスタは、前記所定の利得モードか否かでオンまたはオフに切り替えられる、請求項1に記載の高周波増幅回路。
【請求項3】
バイパスモード時に前記高周波入力信号が前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタで増幅されないように、前記入力ノードから前記第2インダクタと前記第1キャパシタとの接続ノードを介して前記出力ノードに前記高周波入力信号をバイパスさせるバイパス経路と、
前記バイパスモード時には、前記第2トランジスタのドレイン−ソース間と前記第1トランジスタのドレイン−ソース間とを通って前記第1基準電位ノードに至る信号経路を遮断する第6トランジスタと、を備える、請求項1又は2に記載の高周波増幅回路。
【請求項4】
前記バイパスモード時には前記高周波入力信号を増幅することなく、前記入力ノードから前記第2インダクタと前記第1キャパシタとの接続ノードにバイパスさせ、前記バイパスモード以外の利得モード時には前記バイパス経路を前記出力ノードから遮断するバイパス切替回路を備える、請求項3に記載の高周波増幅回路。
【請求項5】
前記バイパス切替回路は、
前記バイパス経路上にカスコード接続される第7トランジスタ及び第8トランジスタと、
前記第7トランジスタ及び第8トランジスタの接続ノードと、前記第1基準電位ノードとの間に接続される第9トランジスタと、を有し、
前記第7トランジスタ及び前記第8トランジスタは、前記バイパスモード以外の利得モード時にオフし、前記バイパスモード時にオンし、
前記第9トランジスタは、前記バイパスモード以外の利得モード時にオンし、前記バイパスモード時にはオフする、請求項4に記載の高周波増幅回路。
【請求項6】
前記第1インダクタは、
一端が前記第1トランジスタのソースに接続された第3インダクタと、
前記第3インダクタの他端と前記第1基準電位ノードとの間に接続される第4インダクタと、を有し、
前記所定の利得モード時には前記第1トランジスタのソースと前記第1基準電位ノードとの間に前記第3インダクタ及び前記第4インダクタを直列接続し、前記所定の利得モード以外の利得モードでは前記第4インダクタの両端をバイパスさせる第10トランジスタをさらに備える、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の高周波増幅回路。
【請求項7】
前記第2インダクタに並列接続可能で、それぞれ抵抗値が異なる複数の抵抗素子と、
前記複数の抵抗素子のそれぞれに直列接続され、対応する抵抗素子を前記第2インダクタに並列接続するか否かを切り替える複数の第1スイッチ回路と、を備え、
前記複数の第1スイッチ回路は、選択する利得モードに応じて切り替えられる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の高周波増幅回路。
【請求項8】
前記第1キャパシタに並列接続可能で、それぞれ容量が異なる複数のキャパシタと、
前記複数のキャパシタのそれぞれに直列接続され、対応するキャパシタを前記第1キャパシタに並列接続するか否かを切り替える複数の第2スイッチ回路と、を備え、
前記複数の第2スイッチ回路は、選択する利得モードに応じて切り替えられる、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の高周波増幅回路。
【請求項9】
SOI(Silicon on Insulator)基板上に配置される高周波増幅回路を備え、
前記高周波増幅回路は、
高周波入力信号を増幅するソース接地の第1トランジスタと、
前記第1トランジスタで増幅された信号をさらに増幅するゲート接地の第2トランジスタと、
前記第1トランジスタのソースと第1基準電位ノードとの間に接続される第1インダクタと、
前記第2トランジスタのドレインと第2基準電位ノードとの間に接続される第2インダクタと、
前記第2トランジスタのドレインと当該高周波増幅回路の出力ノードとの間に接続される第1キャパシタと、
前記第1トランジスタのゲートに繋がる入力信号経路上に接続され、所定の利得モード時に前記高周波入力信号を減衰させ、前記所定の利得モード以外の利得モードでは前記高周波入力信号を減衰させることなく通過させる減衰器と、を備え、
前記減衰器は、
前記所定の利得モード時に前記入力信号経路上に接続される第1抵抗素子と、
前記所定の利得モード時に、前記高周波入力信号の入力ノードと前記第1抵抗素子の一端との間の前記入力信号経路と、前記第1基準電位ノードと、の間に接続される第2キャパシタと、
前記所定の利得モード時に、前記第1抵抗素子の他端と前記第1トランジスタのゲートとの間の前記入力信号経路と、前記第1基準電位ノードと、の間に接続される第2抵抗素子と、を有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高周波増幅回路及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高周波低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)をSiGeバイポーラプロセス(以下、SiGeプロセス)からSOI(Silicon On Insulator)CMOSプロセス(以下、SOIプロセス)に置換する検討が進められている。SOIプロセスはSiGeプロセスよりも低コストであり、またSOIプロセスで形成したMOSトランジスタの寄生容量が小さいことから、高周波信号の電力損失が小さくなる。よって、SOIプロセスを用いれば、電気的特性を劣化させずに、高周波スイッチと高周波低雑音増幅器とを同一のSOI基板上に形成でき、ワンチップ化が可能となって集積度の向上が図れる。
【0003】
LNAは、受信された高周波信号(以下、高周波入力信号)の信号強度が小さい場合には必須となるが、高周波入力信号の信号強度が十分に大きい場合には、LNAで増幅する必要はない。そこで、LNAで増幅を行うか、あるいはLNAをバイパスするかを切替可能とした高周波増幅回路が提案されている。
【0004】
LNAをバイパスするバイパス信号経路を設ける場合、できるだけ信号損失を生じさせずに高周波入力信号をバイパスするのが望ましい。さらに高い線形性も要求される。線形性を評価する尺度の一つにIP1dB(1dB Input Compression Point)がある。IP1dBは、利得が1dB低下する入力電力レベルを表しており、高周波入力信号をバイパスする際には、IP1dBはできるだけ大きい方が望ましい。
【0005】
また、LNAには、利得可変機能が要求されることが多い。LNAの後段に設けられる復調回路の入力ダイナミックレンジに適合させるためLNAに複数の利得モードの仕様が規定されている場合がある。より具体的には、各利得モードごとに、反射特性S11,S22、ノイズ指数NF、IIP3(Input 3rd-order Intercept Point)の許容範囲が定められている場合がある。利得が小さい利得モードほど、IIP3を許容範囲内に収めるのは容易ではない。また、各利得モード間での通過位相偏差として例えば20degを要求される場合もあるが、その要求を満たすのは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−128704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、電気的特性を低下させることなく利得の切替が可能な高周波増幅回路及び半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態によれば、高周波入力信号を増幅するソース接地の第1トランジスタと、
前記第1トランジスタで増幅された信号をさらに増幅するゲート接地の第2トランジスタと、
前記第1トランジスタのソースと第1基準電位ノードとの間に接続される第1インダクタと、
前記第2トランジスタのドレインと第2基準電位ノードとの間に接続される第2インダクタと、
前記第2トランジスタのドレインと当該高周波増幅回路の出力ノードとの間に接続される第1キャパシタと、
前記第1トランジスタのゲートに繋がる入力信号経路上に接続され、所定の利得モード時に前記高周波入力信号を減衰させ、前記所定の利得モード以外の利得モードでは前記高周波入力信号を減衰させることなく通過させる減衰器と、を備え、
前記減衰器は、
前記所定の利得モード時に前記入力信号経路上に接続される第1抵抗素子と、
前記所定の利得モード時に、前記高周波入力信号の入力ノードと前記第1抵抗素子の一端との間の前記入力信号経路と、前記第1基準電位ノードと、の間に接続される第2キャパシタと、
前記所定の利得モード時に、前記第1抵抗素子の他端と前記第1トランジスタのゲートとの間の前記入力信号経路と、前記第1基準電位ノードと、の間に接続される第2抵抗素子と、を有する、高周波増幅回路が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態による高周波増幅回路の回路図。
図2図1の可変抵抗素子と可変キャパシタの具体的な回路構成の一例を示す回路図。
図3】第1〜第4利得モード及びバイパスモード時に図1及び図2の各トランジスタのゲート等に入力される電圧値を示す図。
図4】G0モードのSパラメータとNFのシミュレーション結果を示す図。
図5】G1モードのSパラメータとNFのシミュレーション結果を示す図。
図6】G2モードのSパラメータとNFのシミュレーション結果を示す図。
図7】G3モードのSパラメータとNFのシミュレーション結果を示す図。
図8】バイパスモードのSパラメータとNFのシミュレーション結果を示す図。
図9】利得の入力信号電力依存性のシミュレーション結果を示す図。
図10】IIP3の入力信号依存性のシミュレーション結果を示す図。
図11】各利得モードの一般的な要求仕様をまとめた図。
図12】本実施形態のシミュレーション結果をまとめた図。
図13】第1変形例によるLNAの回路図。
図14】第2変形例によるLNAの回路図。
図15】第2の実施形態によるLNAの回路図。
図16図15の一変形例によるLNAの回路図。
図17図16のLNAに設定される各種の値を示す図。
図18】第1又は第2の実施形態によるLNAを内蔵する無線装置の概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、本件明細書と添付図面においては、理解のしやすさと図示の便宜上、一部の構成部分を省略、変更または簡易化して説明および図示しているが、同様の機能を期待し得る程度の技術内容も、本実施の形態に含めて解釈することとする。また、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物から変更し誇張してある。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態による高周波増幅回路(以下、LNA)1の回路図である。図1のLNA1は、例えばSOI基板上に配置可能である。また、LNA1の周辺回路、例えばアンテナスイッチとLNA1を同一のSOI基板上に配置してもよい。図1のLNA1は、例えば携帯電話やスマートフォンなどの無線装置で用いられるが、用途や実装場所は問わない。図1のLNA1は、利得を複数通りに切替可能である。以下では、利得モードの切替により、4通りに利得を切替可能な例を説明するが、利得モードの切替数は必ずしも4通りに限定されず、2通り以上であればよい。本明細書では、第1利得G0モードを最大利得のモード、第2利得G1モードを2番目に利得が大きいモード、第3利得G2モードを2番目に利得が小さいモード、第4利得G3モードを最小利得のモードとする。この他、図1のLNA1は、高周波入力信号を利得の調整をすることなく、そのまま出力するバイパスBYPモードを有する。
【0012】
図1のLNA1は、ソース接地のトランジスタ(第1トランジスタ)Q1と、ゲート接地のトランジスタ(第2トランジスタ)Q2と、第1インダクタLsと、第2インダクタLdと、可変抵抗素子Rdと、トランジスタ(第6トランジスタ)Q3と、可変キャパシタ(第1キャパシタ)Coutと、減衰器3と、シャント抵抗Rsh2と、バイパス切替回路4と、バイアス生成回路5とを備えている。
【0013】
トランジスタQ3はP型MOSトランジスタであり、それ以外のトランジスタはすべてN型MOSトランジスタである。なお、後述するように、可変抵抗素子Rdは、P型MOSトランジスタを用いて構成可能である。
【0014】
トランジスタQ1のゲートには、入力信号経路2が接続されている。入力信号経路2上には、高周波入力信号が入力される入力ノードLNAinと、減衰器3と、キャパシタCxとが接続されている。また、入力ノードLNAinには、外付けインダクタLextが接続されており、高周波入力信号は、この外付けインダクタLextを介して入力ノードLNAinに入力される。本実施形態は、図1のLNA1をSOI基板上に形成してチップ化することを想定しており、チップ内に外付けインダクタLextを形成する十分なスペースがないことから、外付けしている。チップ内に十分なスペースがある場合には、外付けインダクタLextをチップ内に内蔵してもよい。
【0015】
入力信号経路2は、キャパシタCxを介してトランジスタQ1のゲートに接続されている。入力信号経路2には、抵抗素子RB1を介して第1バイアス電圧VB1が供給される。第1バイアス電圧VB1は、バイアス生成回路5にて生成される。
【0016】
また、入力信号経路2と第1基準電位ノードの間には、シャント抵抗Rsh2と、トランジスタQ4とが接続されている。このトランジスタQ4は第3利得G2モードのときにオンし、入力信号経路2と第1基準電位ノードとの間にシャント抵抗Rsh2が接続される。これにより、第3利得G2モード時に高周波入力信号の利得を下げることができる。第1基準電位ノードは例えば接地ノードである。以下では、第1基準電位ノードをGNDと表記する。
【0017】
トランジスタQ1はソース接地であり、トランジスタQ1のソースと第1基準電位ノードGNDとの間には第1インダクタLsが接続されている。
【0018】
トランジスタQ2は、トランジスタQ1にカスコード接続されている。より詳細には、トランジスタQ1のドレインはトランジスタQ2のソースに接続されている。トランジスタQ2のゲートには、抵抗素子RB2を介してバイアス電圧VB2が供給される。トランジスタQ2のゲートと第1基準電位ノードGNDとの間にはキャパシタCB2が接続されている。キャパシタCB2の容量と抵抗RB2の抵抗値はいずれも十分に大きいため、トランジスタQ2はゲート接地の増幅器として機能する。トランジスタQ2のドレインには、トランジスタQ3のドレインが接続されている。トランジスタQ3のソースには、第2インダクタLd、可変抵抗素子Rd、キャパシタCbyp1、可変キャパシタCout、キャパシタCbyp2の各一端が接続されている。第2インダクタLdと可変抵抗素子Rdの各他端は第2基準電位ノードVDD_LNAに接続されている。
【0019】
トランジスタQ3のゲートは、抵抗素子RB3を介して第1基準電位ノードGNDに接続されている。トランジスタQ3は、第1〜第4利得G0〜G3モード時はオンし、バイパスモード時はオフする。このように、トランジスタQ3は、バイパスモード時に、トランジスタQ2のドレイン−ソース間とトランジスタQ1のドレイン−ソース間を通って第1インダクタLsに至る信号経路を遮断する。これにより、バイパスモード時に振幅の大きい高周波入力信号がバイパス経路6上を伝搬しても、トランジスタQ1、Q2が誤動作を起こすおそれがなくなる。
【0020】
減衰器3は、トランジスタQ1のゲートに繋がる入力信号経路2上に接続され、第4利得G3モード時に高周波入力信号を減衰させる。減衰器3は、第4利得G3モード以外の利得モードでは、高周波入力信号を減衰させることなく通過させる。減衰器3は、キャパシタ(第2キャパシタ)Csh3と、抵抗素子(第1抵抗素子)Rt3と、抵抗素子(第2抵抗素子)Rsh3とを有する。抵抗素子Rt3は、第4利得G3モード時に入力信号経路2上に接続される。キャパシタCsh3は、第4利得G3モード時に、高周波入力信号の入力ノードLNAinと抵抗素子Rt3の一端との間の入力信号経路と、第1基準電位ノードGNDと、の間に接続される。抵抗素子Rsh3は、第4利得G3モード時に、抵抗素子Rt3の他端とトランジスタQ1のゲートとの間の入力信号経路2と、第1基準電位ノードGNDと、の間に接続される。キャパシタCsh3を設けることで、第4利得G3モード時のSパラメータであるS11を改善することができる。
【0021】
このように、減衰器3は、第4利得G3モードよりも高利得の第1〜第3利得G0〜G2モード時には、抵抗素子Rt3をバイパスさせるとともに、入力信号経路2へのキャパシタCsh3及び抵抗素子Rsh3の接続を遮断する。また、減衰器3は、第4利得G3モード時には、抵抗素子Rt3を入力信号経路2上に接続するとともに、入力信号経路2と第1基準電位ノードGNDとの間にキャパシタCsh3を接続し、かつ抵抗素子Rt3からトランジスタQ1のゲートまでの間の入力信号経路2と第1基準電位ノードGNDとの間に抵抗素子Rsh3を接続する。
【0022】
減衰器3は、トランジスタ(第3トランジスタ)Q5と、トランジスタ(第4トランジスタ)Q6と、トランジスタ(第5トランジスタ)Q7とを有していてもよい。トランジスタQ5は、抵抗素子Rt3をバイパスさせるか否かを切り替える。トランジスタQ6は、入力ノードLNAinと抵抗素子Rt3との間の入力信号経路2と、第1基準電位ノードGNDと、の間にキャパシタCsh3を接続するか否かを切り替える。トランジスタQ7は、抵抗素子Rt3からトランジスタQ1のゲートまでの間の入力信号経路2と第1基準電位ノードGNDとの間に抵抗素子Rsh3を接続するか否かを切り替える。トランジスタQ5〜Q7は、第4利得G3モードか否かでオンまたはオフが切り替えられる。すなわち、第4利得G3モード時には、トランジスタQ6とトランジスタQ7がオンし、トランジスタQ5はオフする。これにより、第4利得G3モード時には、抵抗Rt3が入力信号経路2上に接続され、かつキャパシタCsh3と抵抗素子Rsh3が入力信号経路2と第1基準電位ノードGNDとの間に接続される。よって、第4利得G3モード時には、高周波入力信号が十分に減衰される。
【0023】
バイアス生成回路5は、バイアス電圧VB1、VB2を生成する。トランジスタQ1,Q2の各ゲートに接続される抵抗RB1、RB2は、高周波入力信号RFinがバイアス生成回路5に回り込むのを防止するために設けられている。バイアス電圧VB1は例えば0.5V又は0.55V、バイアス電圧VB2は例えば1.3V又は1.34V、第2基準電位VDD_LNAは例えば1.8Vに設定される。
【0024】
図1のLNA1は、バイパスモード時に高周波入力信号をバイパスさせるバイパス経路6を備えている。バイパスモード時には、高周波入力信号は、トランジスタQ1、Q2で増幅されることなく、バイパス経路6を通って出力ノードOUTまで伝送される。バイパス経路は、バイパスモード時に高周波入力信号がトランジスタQ1及びトランジスタQ2で増幅されないように、入力ノードLNAinから第2インダクタLdと可変キャパシタCoutとの接続ノードn1を介して出力ノードOUTに高周波入力信号をバイパスさせる経路である。
【0025】
バイパス経路6上には、バイパス切替回路4が接続されている。バイパス切替回路4は、バイパスモード時には高周波入力信号を増幅せずに出力ノードOUTに伝送し、第1〜第4利得G0〜G3モード時にはバイパス経路6を出力ノードOUTから遮断する。
【0026】
より詳細には、バイパス切替回路4は、少なくとも3つのトランジスタQ8〜Q10を有するT型バイパス切替回路で構成可能である。トランジスタ(第7トランジスタ)Q8とトランジスタ(第8トランジスタ)Q9は、バイパス経路6上にカスコード接続されている。トランジスタQ10(第9トランジスタ)は、トランジスタQ8とトランジスタQ9の接続ノードと第1基準電位ノードGNDとの間に接続されている。トランジスタQ8及びトランジスタQ9は、第1〜第4利得G0〜G3モード時にオフし、バイパスモード時にオンする。トランジスタQ10は、第1〜第4利得G0〜G3モード時にオンし、バイパスモード時にオフする。
【0027】
図1のLNA1では、バイパス切替回路4内に、さらに3つのトランジスタQ11〜Q13を追加している。トランジスタQ11,Q8,Q9,Q12はバイパス経路6上でカスコード接続され、トランジスタQ10,Q13はバイパス経路6と第1基準電位ノードGNDの間でカスコード接続されている。これら3つのトランジスタQ11〜Q13を追加する理由は、第4利得G3モード時のIPIdBをより改善させるためであり、これら3つのトランジスタQ11〜Q13は必須の構成部品ではない。
【0028】
バイパス経路6上には、キャパシタCbyp1が接続されている。また、可変キャパシタCoutに並列に、キャパシタCbyp2とトランジスタQ14が接続されている。このトランジスタQ14は、バイパスモード時にオンする。よって、バイパスモード時には、可変キャパシタCoutとキャパシタCbyp2が並列接続される。第1〜第4利得G0〜G3モード時にはトランジスタQ14はオフしており、可変キャパシタCoutのみが出力ノードOUTに接続される。
【0029】
可変抵抗素子Rdは第2インダクタLdに並列接続されている。本実施形態では、第1〜第4利得G0〜G3モードのそれぞれごとに、可変抵抗素子Rdと可変キャパシタCoutの抵抗値と容量を最適化することを想定している。
【0030】
図2図1の可変抵抗素子Rdと可変キャパシタCoutの具体的な回路構成の一例を示す回路図である。図2の可変抵抗素子Rdは、第1〜第4利得G0〜G3モード用の4つの可変抵抗回路7を有し、これら可変抵抗回路7は並列接続されている。これら可変抵抗回路7は、第2基準電位ノードVDD_LNAと内部出力ノードn1との間に接続されている。内部出力ノードn1は、図1のトランジスタQ3のソースに接続されるノードである。
【0031】
第1利得G0モード用の可変抵抗回路7は、カスコード接続された2つのP型MOSトランジスタ(第1スイッチ回路)Q15,Q16と、抵抗素子Rd0とを有する。これらトランジスタQ15,Q16のゲートは抵抗素子を介して第1基準電位ノードGNDに接続されている。このため、これらトランジスタは第1〜第4利得G0〜G3モードのいずれにおいてもオンし、第2基準電位ノードVDD_LNAと内部出力ノードn1の間に抵抗素子Rd0が接続される。2つのトランジスタQ15,Q16をカスコード接続するのは、バイパスモード時のIP1dBを劣化させないためであり、必要に応じて3つ以上のトランジスタをカスコード接続してもよい。
【0032】
第2利得G1モード用の可変抵抗回路7は、カスコード接続された2つのP型MOSトランジスタ(第1スイッチ回路)Q17,Q18と、抵抗素子Rd1とを有する。これらトランジスタQ17,Q18のゲートには、抵抗素子を介してxG1信号が入力される。xG1信号は、第2利得G1モード時にローになる信号である。抵抗素子Rd1は、抵抗素子Rd0よりも小さい抵抗値を有する。よって、第2利得G1モード時には、抵抗素子Rd0とRd1が並列接続される。
【0033】
第3利得G2モード用の可変抵抗回路7は、カスコード接続された2つのP型MOSトランジスタ(第1スイッチ回路)Q19,Q20と、抵抗素子Rd2とを有する。これらトランジスタQ19,Q20のゲートには、抵抗素子を介してxG2信号が入力される。xG2信号は、第3利得G2モード時にローになる信号である。抵抗素子Rd2は、抵抗素子Rd1よりも小さい抵抗値を有する。よって、第3利得G2モード時には、抵抗素子Rd0とRd2が並列接続される。
【0034】
第4利得G3モード用の可変抵抗回路7は、カスコード接続された2つのP型MOSトランジスタ(第1スイッチ回路)Q21,Q22と、抵抗素子Rd3とを有する。これらトランジスタQ21,Q22のゲートには、抵抗素子を介してxG3信号が入力される。xG3信号は、第4利得G3モード時にローになる信号である。抵抗素子Rd3は、抵抗素子Rd2よりも小さい抵抗値を有する。よって、第4利得G3モード時には、抵抗素子Rd0とRd3が並列接続される。
【0035】
このように、可変抵抗素子Rd内の各可変抵抗回路7の抵抗素子Rd0〜Rd3の抵抗値は、Rd0>Rd1>Rd2>Rd3の関係があり、利得の大きな利得モードほど、可変抵抗素子Rdの抵抗値は大きい値に設定される。
【0036】
図2の可変キャパシタCoutは、内部出力ノードn1と出力ノードOUTとの間に、キャパシタCout0と3つの可変キャパシタ回路8とが並列接続されている。
【0037】
第2利得G1モード用の可変キャパシタ回路8は、直列接続されたキャパシタCout1とトランジスタ(第2スイッチ回路)Q23とを有する。キャパシタCout1は、キャパシタCout0よりも小さい容量を有する。トランジスタQ23は、第2利得G1モードがハイのときにオンし、キャパシタCout0とCout1が並列接続される。
【0038】
第3利得G2モード用の可変キャパシタ回路8は、直列接続されたキャパシタCout2とトランジスタ(第2スイッチ回路)Q24とを有する。キャパシタCout2は、キャパシタCout1よりも大きい容量を有する。トランジスタQ24は、第3利得G2モードがハイのときにオンし、キャパシタCout0とCout2が並列接続される。
【0039】
第4利得G3モード用の可変キャパシタ回路8は、直列接続されたキャパシタCout3とトランジスタ(第2スイッチ回路)Q25とを有する。キャパシタCout3は、キャパシタCout2よりも大きい容量を有する。トランジスタQ25は、第4利得G3モードがハイのときにオンし、キャパシタCout0とCout3が並列接続される。
【0040】
このように、可変キャパシタ内の各可変キャパシタ回路8のキャパシタCout1〜Cout3は、Cout1<Cout2<Cout3の関係があり、利得の大きな利得モードほど、可変キャパシタの容量は小さい値に設定される。
【0041】
図3は第1〜第4利得G0〜G3モード及びバイパスモード時に図1及び図2の各トランジスタのゲート等に入力される電圧値を示す図である。図3は、図1の可変抵抗素子Rdと可変キャパシタとして図2の構成を適用した場合の電圧値を示している。図3の電圧値は一例であり、図1のLNA1の半導体プロセスや使用環境等に応じて、任意に変更可能である。図3の例では、第1〜第4利得G0〜G3モード時には第2基準電位ノードVDD_LNAは1.8Vに設定され、バイパスモード時には0Vに設定される。バイアス生成回路5が生成するバイアス電圧VB1とVB2は、第1及び第2利得G0,G1モード時と、第3及び第4利得G2,G3モード時と、バイパスモード時とで異なっている。
【0042】
次に、図1のLNA1の回路についてシミュレーションを行った結果を示す。図4(a)、図5(a)、図6(a)、図7(a)及び図8(a)は第1〜第4利得G0〜G3モード、バイパスモード時のSパラメータであり、横軸は周波数[GHz」、縦軸はSパラメータ値である。これらの図には、入力側の反射特性S11の曲線と、出力側の反射特性S22の曲線と、入力側から出力側への通過特性S21の曲線とが示されている。
【0043】
図4(b)、図5(b)、図6(b)、図7(b)及び図8(b)は第1〜第4利得G0〜G3モード、バイパスモード時のノイズ指数NFを示す図であり、横軸は周波数[GHz]、縦軸はノイズ指数NFである。
【0044】
これらの図では、LTE(Long Term Evolution)バンドの一つであるバンド41の周波数帯域である2.496GHz、2.593GHz、2.690GHzに目印を付している。本実施形態によるLNA1は、バンド41の周波数帯域で使用することを想定して設計したものである。バイパスモードのシミュレーション結果を示す図8(a)からわかるように、バンド41の周波数帯域内のSパラメータは良好である。通過損失(−S21)とノイズ指数NFはともに3dB以下で、S11は−10dB以下、S22は−14dB以下と一般的要求を満たしている。
【0045】
図9は第1〜第4利得G0〜G3モード及びバイパスモード時における利得Gpの入力信号電力Pin[dBm]依存性を示す図である。図9より、バイパスモードにおけるIP1dBは9.2dBmであり、一般的な要求である9dBmを満たしている。
【0046】
図10は第1〜第4利得G0〜G3モード及びバイパスモード時におけるIIP3[dBm]の入力信号電力Pin[dBm]依存性を示す図である。図示のように、第4利得モードG3時のIIP3は12[dBm]程度と大きく、良好な特性である。
【0047】
図11は第1〜第4利得G0〜G3モード及びバイパスモード時における一般的な要求仕様をまとめた図である。また、図12図4図10のシミュレーション結果をまとめた図である。図12に示すように、本実施形態によるシミュレーション結果は、図11の要求仕様を満たしていることがわかる。
【0048】
図1のLNA1は、種々の変更が可能である。図13は第1変形例によるLNA1の回路図である。図13のLNA1は、第1インダクタLsを第3インダクタLs1と第4インダクタLs2に分けたものである。第3インダクタLs1の一端は、トランジスタQ1のソースに接続されている。第4インダクタLs2は、第3インダクタLs1の他端と第1基準電位ノードGNDとの間に接続されている。また、図13のLNA1は、第4インダクタLs2をバイパスさせるか否かを切り替えるトランジスタQ26を備えている。このトランジスタQ26は第4利得G3モード以外のときにオンし、第4利得G3モード時にオフする。第4利得G3モード以外では、第4インダクタLs2はバイパスされるため、トランジスタQ1のソースと第1基準電位ノードGNDの間には第3インダクタLs1のみが接続される。第4利得G3モード時は、トランジスタQ1のソースと第1基準電位ノードGNDの間に第3インダクタLs1と第4インダクタLs2が接続される。このように、図13のLNA1では、第4利得G3モード時における第1インダクタLsのインダクタンスを他のモードよりも大きくする。これにより、第4利得G3モード時にIIP3とノイズ指数NFを低下させることなく、第4利得G3モード時の利得を十分に絞ることができる。
【0049】
なお、図13のLNA1における可変抵抗素子Rdと可変キャパシタCoutは、図2の可変抵抗素子Rdと可変キャパシタで構成可能である。
【0050】
図14は第2変形例によるLNA1の回路図である。図14のLNA1は、図1のLNA1におけるトランジスタQ3の代わりに、N型MOSトランジスタ(第6トランジスタ)Q27を設けたものである。トランジスタQ27は、トランジスタQ1のソースと第1インダクタLsとの間に接続されている。トランジスタQ27のゲートには、抵抗素子RB4を介してxBYP信号が入力される。xBYP信号は、バイパスモード以外のときにハイレベルになる信号である。このため、バイパスモード以外の第1〜第4利得G0〜G3モード時には、トランジスタQ27はオンし、トランジスタQ1のソースと第1インダクタLsの一端とが接続される。一方、バイパスモード時には、トランジスタQ27がオフし、トランジスタFET1のソースと第1インダクタLsとの接続が遮断される。これにより、バイパスモード時には、トランジスタQ2からトランジスタQ1と第1インダクタLsを通って第1基準電位ノードGNDに至る信号経路が遮断される。したがって、図14のLNA1によれば、バイパスモード時のIP1dBを向上できる。
【0051】
なお、図14の減衰器3は、図1の減衰器3のトランジスタQ6とQ7をそれぞれ二段構成のトランジスタQ6a,Q6bとQ7a,Q7bにしている。同様に、図14のLNA1では、図1のシャント抵抗Q4を二段構成のシャント抵抗Q4a,Q4bにしている。これらのトランジスタを二段構成にするのは、IP1dBを向上させるためである。IP1dBを向上させる必要がなければ、図1と同様に減衰器3とシャント抵抗Q4を構成してもよい。また、図14のLNA1では、可変抵抗Rdを図2と同様に構成している。また、図14のバイパス切替回路4は、図1のバイパス切替回路4からトランジスタQ11,Q12を省略した構成になっているが、これらトランジスタQ11,Q12を追加してもよい。
【0052】
このように、第1の実施形態によるLNA1は、高周波入力信号の入力信号経路2上に減衰器3を接続し、この減衰器3で第4利得G3モード時に高周波入力信号を減衰させるため、S11やIIP3、ノイズ指数NF等の電気的特性を劣化させることなく、第4利得G3モード時の利得を十分に絞ることができ、第4利得G3モードでの仕様を満たす利得の信号を出力できる。特に、減衰器3内に、第4利得G3モード時に、入力ノードLNAinと抵抗素子Rt3との間の入力信号経路2と、第1基準電位ノードGNDとの間にキャパシタCsh3を接続することで、第4利得G3モードでのS11を改善することができる。
【0053】
また、第1インダクタLsを第3インダクタLs1と第4インダクタLs2に分けて、第4インダクタLs2は第4利得G3モードのみ第3インダクタLs1に接続されるようにすることで、第4利得G3モード時の第1インダクタLsのインダクタンスを十分に大きくでき、よりいっそう利得を絞ることができる。
【0054】
また、トランジスタQ3又はトランジスタQ27を設けることで、バイパスモード時にトランジスタQ2からトランジスタQ1を通って第1インダクタLsに至る信号経路を遮断することができ、バイパスモード時に大振幅の高周波入力信号が入力されても、トランジスタQ1やQ2が増幅動作を行うおそれがなくなり、IP1dBを向上できる。
【0055】
さらに、バイパス経路6上に、バイパスモード時は高周波入力信号をそのまま出力ノードOUTに伝搬させ、第1〜第4利得G0〜G3モード時は高周波入力信号を遮断するバイパス切替回路4を設けるため、第1〜第4利得G0〜G3モード時に高周波入力信号がバイパス経路6の影響を受けなくなる。
【0056】
また、第2インダクタLdに並列に、各利得モードに対応した複数の可変抵抗回路7を接続するため、各利得モードに最適な抵抗値を設定できる。同様に、キャパシタCout0に並列に、各利得モードに対応した複数の可変キャパシタ回路8を接続するため、各利得モードに最適な容量を設定できる。
【0057】
(第2の実施形態)
第1の実施形態によるLNA1はバイパスモードを備えていたが、バイパスモードを備えていないLNA1も考えられる。
【0058】
図15は第2の実施形態によるLNA1の回路図である。図15のLNA1はバイパスモード及びバイパス経路を備えていない。図15では、図1及び図2と共通する構成部分には同一符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
【0059】
図15のLNA1は、図1及び図2のLNA1におけるバイパス経路6と、バイパス切替回路4と、キャパシタCbyp1、Cbyp2とを省略した回路構成を備えている。図15のLNA1は、バイパスモードは持たないが、第1〜第4利得G0〜G3モードを備えている。各利得モードでの各トランジスタのゲート電圧等は、図3と同様である。
【0060】
図15のLNA1は、図1のLNA1と同様の減衰器3を備えており、第4利得G3モード時には高周波入力信号を減衰器3で減衰してからトランジスタQ1のゲートに入力する。これにより、S11やIIP3、ノイズ指数等の電気的特性を低下させることなく、第4利得G3モード時の利得を十分に絞ることができる。
【0061】
図16図15の一変形例によるLNA1の回路図である。図16のLNA1は、図13と同様に、第1インダクタLsを第3インダクタLs1と第4インダクタLs2に分けて、第4インダクタLs2は第4利得G3モード時のみ有効にしている。これにより、第4利得G3モード時の第1インダクタLsのインダクタンスを大きくでき、第4利得G3モード時の利得をよりいっそう絞ることができる。
【0062】
なお、図15図16の減衰器3内の各トランジスタQ6,Q7や、シャント抵抗Rsh2に接続されるトランジスタQ4を、図14と同様に二段構成にしてIP1dBの向上を図ってもよい。また、図16の可変抵抗器Rdと可変キャパシタCoutは、図2と同様の構成にしてもよい。
【0063】
図17は第1〜第4利得G0〜G3モード時に図16のLNA1に設定される各種の値を示す図である。図17では、第1及び第2利得G0,G1モード時における可変キャパシタCoutの容量を0.65[pF]とし、第3及び第4利得G2,G3モード時における可変キャパシタCoutの容量を0.80[pF]としている。また、可変抵抗素子Rdの抵抗値は第1〜第4利得G0〜G3モードのそれぞれで異なる値に設定している。図17に示す各値は一例であり、任意に変更可能である。
【0064】
このように、第2の実施形態によるLNA1は、バイパスモードを備えていないが、第1の実施形態と同様に、入力信号経路2に接続された減衰器3を備えているため、IIP3を低下させることなく、第4利得G3モード時に利得を十分に絞ることができる。
【0065】
(第3の実施形態)
上述した第1又は第2の実施形態によるLNA1は、無線装置に内蔵可能である。図18は第1又は第2の実施形態によるLNA1を内蔵する無線装置11の概略構成を示すブロック図である。図1の無線装置11は、アンテナ12と、アンテナスイッチ13と、バンドパスフィルタ(BPF)14と、LNA15と、無線IC(RFIC)16と、パワーアンプ(PA)17と、ローパスフィルタ(LPF)18とを備えている。
【0066】
図17のLNA15は、第1又は第2の実施形態によるLNA1、又は第3の実施形態による高周波増幅回路10と同様の回路構成を有する。
【0067】
アンテナスイッチ13は、送受信を切り替えるスイッチである。図1では、送信側と受信側がそれぞれ1系統の例を示しているが、送信側と受信側がそれぞれ、複数の周波数帯域の信号を送受する複数系統を有していてもよい。図1のアンテナスイッチ13とLNA15は同一のSOI基板上に配置可能であり、ワンチップにすることができる。アンテナスイッチ13とLNA15をSOI基板上に配置することで、消費電力の削減と小型化も可能となる。
【0068】
このように、第1又は第2の実施形態によるLNA1はSOI基板上に形成することで、MOSトランジスタの寄生容量を小さくできることから、高周波信号の電力損失を小さくできる。また、SOI基板上には、LNA1だけでなく、アンテナスイッチ13も形成できるため、LNA1とアンテナスイッチ13をワンチップにまとめることができ、無線装置の小型化を図ることができる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 高周波増幅回路、2 入力信号経路、3 減衰器、4 バイパス切替回路、5 バイアス生成回路、6 バイパス経路、7 可変抵抗回路、8 可変キャパシタ回路、11 無線装置、12 アンテナ、13 アンテナスイッチ、14 バンドパスフィルタ、15 LNA、16 無線IC、17 パワーアンプ、18 ローパスフィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図18