(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-195043(P2020-195043A)
(43)【公開日】2020年12月3日
(54)【発明の名称】電波伝播測定装置とそのビームフォーミングの測定結果表示方法
(51)【国際特許分類】
H04B 17/318 20150101AFI20201106BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20201106BHJP
H04W 24/00 20090101ALI20201106BHJP
H04W 88/02 20090101ALI20201106BHJP
H04W 16/18 20090101ALI20201106BHJP
【FI】
H04B17/318
H04W16/28
H04W24/00
H04W88/02 150
H04W16/18 110
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-98994(P2019-98994)
(22)【出願日】2019年5月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 純
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067EE10
5K067FF23
5K067KK02
5K067KK03
5K067LL11
(57)【要約】
【課題】測定者が測定したいビームインデックスの電波を容易にかつ正確に測定可能にすることができる電波伝播測定装置を提供すること。
【解決手段】ビームフォーミングの無線信号のビームインデックスを検出する無線信号処理部10と、検出されたビームインデックスに基づいてビームを測定して測定結果を制御部13に出力する無線信号測定部11と、ユーザからの操作入力を受け付ける入力部121と、無線信号測定部11の測定結果などを表示する表示部122と、全てのビームの測定結果を対応するビームインデックスとともに表示部122に表示させる制御部13と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局(2)からの無線信号の伝播状態を測定する電波伝播測定装置(1)であって、
画像を表示する表示部(122)と、
前記表示部に受信した無線信号の測定結果を表示させる制御部(13)と、を備え、
前記制御部は、ビームフォーミングの無線信号の測定を行なう場合、全てのビームの測定結果を対応するビームインデックスとともに表示させる電波伝播測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、全てのビームの受信強度をそれぞれ対応するビームインデックスとともに図表にして表示させる請求項1に記載の電波伝播測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、表示させた前記図表のなかから、選択された前記図表に対応するビームの詳細な測定結果を表示させる請求項2に記載の電波伝播測定装置。
【請求項4】
前記制御部は、受信している無線信号の情報をリストで表示し、当該リスト上で選択された無線信号の測定結果を表示する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電波伝播測定装置。
【請求項5】
基地局(2)からの無線信号の伝播状態を測定する電波伝播測定装置(1)のビームフォーミングの測定結果表示方法であって、
受信した無線信号の全てのビームインデックスを検出するステップと、
検出したビームインデックスに対応するビームを測定するステップと、
全てのビームの測定結果を対応するビームインデックスとともに表示させるステップと、
を備えるビームフォーミングの測定結果表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信システムの基地局の電波の伝播状態を測定する電波伝播測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの移動体通信システムにおいては、サービス提供エリア内に多数の基地局を設置している。基地局は、出力する電波の届く範囲が隣接する基地局同士で一部重なるように設置され、サービス提供エリア内で基地局の電波の届かない場所を無くすようにしている。
【0003】
このような移動体通信システムにおいて、サービス提供エリア内の任意の地点において、基地局からの電波の伝播状態を測定することは、基地局の保守やサービス提供エリアの管理にとって重要なことである。
【0004】
第5世代移動通信システム(以下、「5G」ともいう)では、多数の端末との同時通信を実現するため、多数のアンテナ素子を用いて、ビームフォーミングと呼ばれる技術により電波をビーム状にして送信して、端末との無線伝播経路を空間的に多重化している。
【0005】
特許文献1には、ビームフォーミングを用いる通信において、適切なビームの形成にかかる時間を低減することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2017/164220号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなビームフォーミングの電波の測定では、測定者が設定したビーム方向の(または、所定の順番で複数のビーム方向を切り替えて)被測定信号を基地局から送信し、測定装置でその被測定信号を測定してエリアの評価を行なう。被測定信号には、各ビーム方向と対応するビームインデックスがそれぞれ付与されている。
【0008】
基地局が設置される実環境では、反射波や干渉波により、測定者が設定したビーム方向(ビームインデックス)の電波が、必ずしも他のビーム方向の電波より受信状態が良くなるとは限らず、被測定信号を測定できない場合がある。
【0009】
そこで、本発明は、測定者が測定したいビームインデックスの電波を容易にかつ正確に測定可能にすることができる電波伝播測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電波伝播測定装置は、基地局からの無線信号の伝播状態を測定する電波伝播測定装置であって、画像を表示する表示部と、前記表示部に受信した無線信号の測定結果を表示させる制御部と、を備え、前記制御部は、ビームフォーミングの無線信号の測定を行なう場合、全てのビームの測定結果を対応するビームインデックスとともに表示させるものである。
【0011】
この構成により、ビームフォーミングの無線信号の全てのビームの測定結果が対応するビームインデックスとともに表示される。このため、測定者が測定したいビームインデックスの電波を容易にかつ正確に測定可能にすることができる。
【0012】
また、本発明の電波伝播測定装置において、前記制御部は、全てのビームの受信強度をそれぞれ対応するビームインデックスとともに図表にして表示させるものである。
【0013】
この構成により、全てのビームの受信強度がそれぞれ対応するビームインデックスとともに図表にして表示される。このため、受信したビームの受信強度を図表で比較することができ、測定者が測定したいビームインデックスの電波で所望のエリアが得られているかを容易にかつ正確に評価することができる。
【0014】
また、本発明の電波伝播測定装置において、前記制御部は、表示させた前記図表のなかから、選択された前記図表に対応するビームの詳細な測定結果を表示させるものである。
【0015】
この構成により、表示させた図表のなかから、選択された図表に対応するビームの詳細な測定結果が表示される。このため、図表を選択することで詳細な測定結果が表示され、測定者が測定したいビームインデックスの電波で所望のエリアが得られているかを容易にかつ正確に評価することができる。
【0016】
また、本発明の電波伝播測定装置において、前記制御部は、受信している無線信号の情報をリストで表示し、当該リスト上で選択された無線信号の測定結果を表示するものである。
【0017】
この構成により、受信している無線信号の情報がリストで表示され、そのリスト上で選択された無線信号の測定結果が表示される。このため、容易に測定する無線信号を切り替えて、測定者が測定したい電波を容易に測定可能にすることができる。
【0018】
また、本発明のビームフォーミングの測定結果表示方法は、基地局からの無線信号の伝播状態を測定する電波伝播測定装置のビームフォーミングの測定結果表示方法であって、受信した無線信号の全てのビームインデックスを検出するステップと、検出したビームインデックスに対応するビームを測定するステップと、全てのビームの測定結果を対応するビームインデックスとともに表示させるステップと、を備えるものである。
【0019】
この構成により、ビームフォーミングの無線信号の全てのビームの測定結果が対応するビームインデックスとともに表示される。このため、測定者が測定したいビームインデックスの電波を容易にかつ正確に測定可能にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、測定者が測定したいビームインデックスの電波を容易にかつ正確に測定可能にすることができる電波伝播測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る電波伝播測定装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る電波伝播測定装置の測定結果の表示例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る電波伝播測定装置の遅延プロファイルの表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電波伝播測定装置について詳細に説明する。
【0023】
図1において、本発明の一実施形態に係る電波伝播測定装置1は、無線信号処理部10と、無線信号測定部11と、ユーザインターフェース部12と、制御部13とを含んで構成されている。
【0024】
無線信号処理部10は、アンテナ16を介して基地局2から受信した無線信号を、増幅や周波数変換などして無線信号測定部11に出力する。
【0025】
無線信号測定部11は、無線信号処理部10と接続され、無線信号処理部10の出力する無線信号の復調、復号を行なうとともに、SS−RSRP(Synchronization Signal-Reference Signal Received Power)、SS−SIR(Synchronization Signal-Signal to Interference Ratio)、SS−RSRQ(Synchronization Signal-Reference Signal Received Quality)、RSSI(Received Signal Strength Indicator)、遅延プロファイルなどを測定し、測定結果を制御部13に出力するようになっている。制御部13は、無線信号測定部11からの測定結果を時刻情報などと関連付けてハードディスク等に記憶しておき、ユーザの要求によりユーザインターフェース部12に表示出力させたり、ログとしてファイルに出力したりするようになっている。
【0026】
無線信号測定部11は、GPS(Global Positioning System)受信部14や内部クロック15からクロック信号を入力されるようになっている。無線信号測定部11は、GPS受信部14からのPPS(Pulse Per Second:1秒周期の信号)または内部クロック15からのクロック信号に基づいて無線信号の受信タイミングを測定するようになっている。なお、外部からGPS信号を入力するようにしてもよい。
【0027】
ユーザインターフェース部12は、ユーザからの操作入力を受け付ける入力部121と、測定のパラメータの設定画面や無線信号測定部11の測定結果などを表示する表示部122とを備えている。入力部121は、タッチパッドやキーボードやプッシュボタンやロータリーノブなどによって構成される。表示部122は、液晶表示装置などによって構成される。
【0028】
制御部13は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、ハードディスク装置と、入出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0029】
このコンピュータユニットのROM及びハードディスク装置には、各種制御定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御部13として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、CPUがROM及びハードディスク装置に記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、制御部13として機能する。なお、ハードディスク装置は、フラッシュメモリによるCF(Compact Flash)カード等であっても良い。
【0030】
制御部13の入出力ポートには、無線信号測定部11、ユーザインターフェース部12が接続され、制御部13と各部は信号の送受信をできるようになっている。
【0031】
なお、本実施形態において、無線信号測定部11は、各処理を実行するようにプログラミングされたDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサによって構成されている。また、無線信号処理部10は、通信モジュールによって構成されている。
【0032】
このような電波伝播測定装置1において、制御部13は、例えば、表示部122に表示させた設定画面に対する入力部121への操作入力で設定された周波数の無線信号の測定を無線信号測定部11に行なわせる。
【0033】
制御部13は、表示部122に表示させた設定画面により、測定する無線信号の中心周波数や周波数帯域幅や測定する信号数などを入力部121から入力させる。測定する無線信号の中心周波数は、複数設定可能になっている。
【0034】
制御部13は、入力部121により入力された設定情報を無線信号測定部11に通知して、無線信号の測定を行わせる。
【0035】
無線信号測定部11は、制御部13から設定情報を通知されると、通知された中心周波数や周波数帯域幅を無線信号処理部10に通知して、その中心周波数や周波数帯域幅の無線信号を受信させる。
【0036】
無線信号処理部10は、無線信号測定部11から中心周波数や周波数帯域幅を通知されると、その中心周波数や周波数帯域幅の無線信号を受信し、増幅や周波数変換などして無線信号測定部11に出力する。
【0037】
無線信号測定部11は、無線信号処理部10の出力する無線信号の復調、復号を行なうとともに、SS−RSRP、SS−SIR、SS−RSRQ、RSSI、遅延プロファイルなどを測定し、測定結果を制御部13に出力する。
【0038】
制御部13は、無線信号測定部11の出力する測定結果に基づいて、入力部121の操作入力により選択された測定結果表示種別に応じて表示部122に表示させる画像を作成して表示部122に表示させる。
【0039】
本実施形態において、ビームフォーミングの無線信号の測定を行う場合、無線信号処理部10は、アンテナ16を介して基地局2から受信した無線信号を、増幅や周波数変換などした信号から、同期信号としてのSS(Synchronization Signals)/PBCH(Physical Broadcast CHannel)ブロックを検出する。
【0040】
ビームインデックスは、SS/PBCHブロック単位で切り替わるため、無線信号処理部10は、検出したSS/PBCHブロック内のSS burst setの中にあるSS Block Indexをビームインデックスとして検出する。
【0041】
ビームインデックスの検出は、PBCHのDMRS(DeModulation Reference Signals)から行なってもよい。
【0042】
無線信号処理部10は、検出したビームインデックスに基づいて、他のビームインデックスを検出する。
【0043】
無線信号処理部10は、検出した全てのビームインデックスの情報を無線信号測定部11に送信する。
【0044】
無線信号測定部11は、無線信号測定部11から受信したビームインデックスの情報に基づいて、検出された全てのビームインデックスのそれぞれのSS−RSRP、SS−SIR、SS−RSRQ、RSSI、遅延プロファイルなどを測定し、測定結果を制御部13に出力する。
【0045】
制御部13は、無線信号測定部11の出力する測定結果に基づいて、
図2に示すように測定結果を表示部122に表示させる。
【0046】
図2において、測定条件表示部101は、測定条件として設定された、測定する無線信号の条件を表示するものである。測定条件表示部101において、「Fn」は設定された無線信号の条件を識別する番号を示している。
【0047】
また、「MHz」は測定する無線信号の中心周波数を示している。「BW」は、測定する無線信号の周波数帯域幅を示している。「N」は、測定可能なPCI(Physical Cell Identity)の数を示している。PCIは、基地局2ごとに異なる値が設定される。
【0048】
図2において、リスト表示部102は、測定条件表示部101に設定された無線信号のうち、受信している無線信号の情報をリストで表示するものである。「No.」は、並べ替えられた順に無線信号に付与された番号である。「Fn」は、測定条件表示部101の「Fn」を示している。「PCI」は、受信信号のPCIを示している。「RSRP」、「RSRQ」、「SIR」、「RSSI」は、測定されたSS−RSRP、SS−RSRQ、SS−SIR、RSSIの測定値を示している。
【0049】
「Timing(μs)」は、無線信号のフレームタイミング値を示している。「N」は、測定されたビームの数を示している。
【0050】
図2において、マーカ表示部103は、リスト表示部102で選択された受信信号の情報を表示するものである。
【0051】
マーカ表示部103の「F1」は、測定条件表示部101の「Fn」の「1:」で設定された信号であることを示す。また、「PCI」は、受信信号のPCIを示している。PCIは、基地局2ごとに異なる値が設定される。
【0052】
図2において、グラフ表示部104は、リスト表示部102で選択された受信信号の各ビームインデックスのビームの受信強度をビームインデックスごとに棒グラフで表示するものである。なお、折れ線グラフやマーカを使った散布図によりビームインデックスごとのビームの受信強度を表示するようにしてもよい。
【0053】
グラフ表示部104の棒グラフのいずれかが入力部121の操作により選択されると、測定結果表示部105に選択されたビームの測定結果が表示される。
【0054】
また、ビームの測定結果として、
図3に示す遅延プロファイルを表示するようにしてもよい。
【0055】
このように、上述の実施形態では、測定条件表示部101に設定された無線信号の全てのビームインデックスを検出し、各ビームインデックスに対応するビームの測定結果を対応するビームインデックスとともに表示する。
【0056】
これにより、測定対象となる無線信号の全てのビームの測定結果が表示され、測定者が測定したいビームインデックスの電波を容易にかつ正確に測定可能にすることができる。
【0057】
また、受信したビームの受信強度をそれぞれ棒グラフにして、ビームインデックスとともにグラフ表示部104に表示する。
【0058】
これにより、受信したビームの受信強度を棒グラフで比較することができ、測定者が測定したいビームインデックスの電波で所望のエリアが得られているかを容易にかつ正確に評価することができる。
【0059】
また、ビームごとの棒グラフから選択された棒グラフに対応するビームの詳細な測定結果を測定結果表示部105に表示する。
【0060】
これにより、棒グラフを選択することで詳細な測定結果が表示され、測定者が測定したいビームインデックスの電波で所望のエリアが得られているかを容易にかつ正確に評価することができる。
【0061】
また、受信している無線信号の情報をリストでリスト表示部102に表示し、リスト上で選択された無線信号の測定結果をマーカ表示部103やグラフ表示部104に表示する。
【0062】
これにより、容易に測定する無線信号を切り替えて、測定者が測定したい電波を容易に測定可能にすることができる。
【0063】
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0064】
1 電波伝播測定装置
2 基地局
10 無線信号処理部
11 無線信号測定部
12 ユーザインターフェース部
13 制御部
102 リスト表示部
104 グラフ表示部
105 測定結果表示部
121 入力部
122 表示部