(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-195049(P2020-195049A)
(43)【公開日】2020年12月3日
(54)【発明の名称】アンテナ装置及びこれを備えるICカード
(51)【国際特許分類】
H01Q 7/00 20060101AFI20201106BHJP
H01Q 7/06 20060101ALI20201106BHJP
H01Q 19/02 20060101ALI20201106BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20201106BHJP
B42D 25/305 20140101ALI20201106BHJP
【FI】
H01Q7/00
H01Q7/06
H01Q19/02
G06K19/077 296
G06K19/077 272
B42D25/305 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-99246(P2019-99246)
(22)【出願日】2019年5月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】松島 正樹
(72)【発明者】
【氏名】千代 憲隆
(72)【発明者】
【氏名】森木 朋大
【テーマコード(参考)】
2C005
5J020
【Fターム(参考)】
2C005NA08
2C005NA09
2C005NB13
2C005TA22
5J020AA04
5J020BA03
5J020BC02
5J020BC10
5J020DA02
(57)【要約】
【課題】アンテナコイルとカップリングコイルを有するアンテナ装置において、アンテナコイル及びカップリングコイルの抵抗成分を抑えつつ、通信距離を拡大する。
【解決手段】アンテナ装置は、基板30の表面31に形成されたアンテナコイルAC及びカップリングコイルCC1と、アンテナコイルACに接続されることなく、基板30の表面32に形成されたブースターコイルBCと、ブースターコイルBCに接続された共振用キャパシタRCを備え、ブースターコイルBCのターン数は、アンテナコイルACのターン数よりも多い。これによれば、アンテナコイルACのターンを増やすことなく、通信距離を拡大することが可能となる。しかも、ブースターコイルBCのターン数は、アンテナコイルACのターン数よりも多いことから、十分な通信距離を確保することが可能となる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と前記基板の表面に形成された導体パターンを備えるアンテナ装置であって、
前記導体パターンは、
スパイラル状又はループ状のアンテナコイルと、
前記アンテナコイルに接続され、前記アンテナコイルよりも径が小さいスパイラル状又はループ状のカップリングコイルと、
前記アンテナコイルに接続されることなく、少なくとも一部が前記基板を介して前記アンテナコイルと重なるスパイラル状のブースターコイルと、を含み、
前記ブースターコイルに接続された共振用キャパシタをさらに備え、
前記ブースターコイルのターン数は、前記アンテナコイルのターン数よりも多いことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記基板は矩形であり、
前記アンテナコイルは、前記基板の辺に沿って一方の表面に形成され、
前記ブースターコイルは、前記基板の前記辺に沿って他方の表面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記カップリングコイルは、前記アンテナコイル及び前記ブースターコイルの内径領域と重なる位置に設けられ、且つ、前記基板の一方の短辺側にオフセットして配置されていることを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記共振用キャパシタは、前記導体パターンによって構成され、且つ、前記基板の他方の短辺側にオフセットして配置されていることを特徴とする請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記導体パターンは、前記アンテナコイルに対して直列又は並列に接続されたマッチング用キャパシタをさらに含み、
前記マッチング用キャパシタは、前記アンテナコイル及び前記ブースターコイルの内径領域と重なる位置に設けられ、且つ、前記基板の前記一方の短辺側にオフセットして配置されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアンテナ装置と、
前記アンテナ装置と重なるメタルプレートと、
前記アンテナ装置と前記メタルプレートの間に配置された磁性シートと、
前記カップリングコイルと電磁界結合するICモジュールと、を備えることを特徴とするICカード。
【請求項7】
前記メタルプレートは、第1の開口部を有し、
前記ICモジュールは、前記第1の開口部に配置され、
前記磁性シートは、前記ICモジュールと重なる位置に第2の開口部を有し、
前記カップリングコイルと前記ICモジュールは、前記第2の開口部を介して電磁界結合することを特徴とする請求項6に記載のICカード。
【請求項8】
前記カップリングコイルの内径領域は、平面視で全体が前記第2の開口部と重なることを特徴とする請求項7に記載のICカード。
【請求項9】
前記カップリングコイルのコイル領域は、平面視で全体が前記第2の開口部と重なることを特徴とする請求項8に記載のICカード。
【請求項10】
前記カップリングコイルは、前記基板の表面のうち、前記磁性シートと向かい合う面とは反対側の面に形成されていることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載のICカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナ装置及びこれを備えるICカードに関し、特に、ICモジュールと電磁界結合するカップリングコイルと、カードリーダーと電磁界結合するアンテナコイルを有するアンテナ装置及びこれを備えるICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICモジュールを有するICカードが広く利用されている。例えば、特許文献1及び2には、ICモジュールと電磁界結合するカップリングコイルと、カードリーダーと電磁界結合するアンテナコイルを備えたICカードが開示されている。特許文献1及び2に記載されたICカードは、ICモジュールと電磁界結合するカップリングコイルを備えていることから、アンテナコイルとICモジュールを直接接続することなく、ICモジュールに対する電力供給及び信号の送受信を行うことが可能となる。
【0003】
ここで、ICカードとカードリーダーの通信距離を拡大するためには、アンテナコイルのターン数を増やせばよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−149536号公報
【特許文献2】特開2008−67057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アンテナコイルの他にカップリングコイルを備えるICカードにおいては、アンテナコイルの抵抗成分とカップリングコイルの抵抗成分の両方が存在することから、アンテナコイルのターン数を増やすと、抵抗成分がさらに増大してしまう。このため、アンテナコイルとカップリングコイルを備えるICカードでは、アンテナコイル及びカップリングコイルの抵抗成分を抑えつつ、通信距離を拡大することは容易ではなかった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、アンテナコイルとカップリングコイルを有するアンテナ装置及びこれを備えるICカードにおいて、アンテナコイル及びカップリングコイルの抵抗成分を抑えつつ、通信距離を拡大することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるアンテナ装置は、基板と基板の表面に形成された導体パターンを備えるアンテナ装置であって、導体パターンは、スパイラル状又はループ状のアンテナコイルと、アンテナコイルに接続され、アンテナコイルよりも径が小さいスパイラル状又はループ状のカップリングコイルと、アンテナコイルに接続されることなく、少なくとも一部が基板を介してアンテナコイルと重なるスパイラル状のブースターコイルとを含み、ブースターコイルに接続された共振用キャパシタをさらに備え、ブースターコイルのターン数は、アンテナコイルのターン数よりも多いことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、アンテナコイルに接続されることなくアンテナコイルと電磁界結合するブースターコイルが設けられていることから、アンテナコイルのターンを増やすことなく、通信距離を拡大することが可能となる。しかも、ブースターコイルのターン数は、アンテナコイルのターン数よりも多いことから、十分な通信距離を確保することが可能となる。
【0009】
本発明において、基板は矩形であり、アンテナコイルは、基板の辺に沿って一方の表面に形成され、ブースターコイルは、基板の辺に沿って他方の表面に形成されていても構わない。これによれば、アンテナコイル及びブースターコイルの内径領域を十分に確保することが可能となる。
【0010】
本発明において、カップリングコイルは、アンテナコイル及びブースターコイルの内径領域と重なる位置に設けられ、且つ、基板の一方の短辺側にオフセットして配置されていても構わない。これによれば、アンテナコイル及びブースターコイルの内径領域と重なり、且つ、基板の一方の短辺側にオフセットした位置にICモジュールを配置することが可能となる。
【0011】
本発明において、共振用キャパシタは、導体パターンによって構成され、且つ、基板の他方の短辺側にオフセットして配置されていても構わない。これによれば、カップリングコイルと共振用キャパシタの相互干渉を防止することが可能となる。
【0012】
本発明において、導体パターンは、アンテナコイルに対して直列又は並列に接続されたマッチング用キャパシタをさらに含み、マッチング用キャパシタは、アンテナコイル及びブースターコイルの内径領域と重なる位置に設けられ、且つ、基板の一方の短辺側にオフセットして配置されていても構わない。これによれば、マッチング用キャパシタをカップリングコイルの近傍に配置することが可能となる。
【0013】
本発明によるICカードは、上記のアンテナ装置と、アンテナ装置と重なるメタルプレートと、アンテナ装置とメタルプレートの間に配置された磁性シートと、カップリングコイルと電磁界結合するICモジュールとを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、メタルプレートに阻害されることなく、カードリーダーとの間で通信を行うことが可能となる。
【0015】
本発明において、メタルプレートは第1の開口部を有し、ICモジュールは第1の開口部に配置され、磁性シートはICモジュールと重なる位置に第2の開口部を有し、カップリングコイルとICモジュールは、第2の開口部を介して電磁界結合するものであっても構わない。これによれば、磁性シートに阻害されることなく、カップリングコイルとICモジュールを電磁界結合させることが可能となる。
【0016】
本発明において、カップリングコイルの内径領域は、平面視で全体が第2の開口部と重なるものであっても構わないし、カップリングコイルのコイル領域は、平面視で全体が第2の開口部と重なるものであっても構わない。これらによれば、カップリングコイルとICモジュールの結合度を十分に高めることが可能となる。
【0017】
本発明において、カップリングコイルは、基板の表面のうち、磁性シートと向かい合う面とは反対側の面に形成されていても構わない。これによれば、磁性シートに第2の開口部を形成するプロセスにおいて、カップリングコイルにダメージが加わることがない。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明によれば、アンテナコイルとカップリングコイルを有するアンテナ装置及びこれを備えるICカードにおいて、アンテナコイル及びカップリングコイルの抵抗成分を抑えつつ、通信距離を拡大することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるICカード1の外観を示す略斜視図である。
【
図2】
図2は、ICカード1を裏面b側から見た略透視斜視図である。
【
図3】
図3は、ICカード1の略分解斜視図である。
【
図4】
図4は、基板30の一方の表面31に形成された導体パターンのパターン形状を示す略平面図である。
【
図5】
図5は、基板30の他方の表面32に形成された導体パターンのパターン形状を一方の表面31側から見た略透視平面図である。
【
図6】
図6は、基板30の一方の表面31に形成された導体パターンと基板30の他方の表面32に形成された導体パターンを重ねた状態を示す略透視平面図である。
【
図7】
図7は、ICモジュール50を裏面側から見た略斜視図である。
【
図8】
図8は、カップリングコイルCC1,CC2と開口部11,21の好ましい関係を説明するための図であり、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)は変形例による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるICカード1の外観を示す略斜視図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態によるICカード1は、x方向を長手方向、y方向を短手方向、z方向を厚み方向とする板状体であり、xy面を構成する上面aと裏面bを有している。ICカード1には後述するICモジュールが内蔵されており、ICモジュールの端子電極EがICカード1の上面aに露出している。ICカード1は、裏面bをカードリーダー4と向かい合わせることによって通信を行うことができる。
【0023】
図2はICカード1を裏面b側から見た略透視斜視図であり、
図3はICカード1の略分解斜視図である。
【0024】
図2及び
図3に示すように、本実施形態によるICカード1は、上面a側から裏面b側に向かって、メタルプレート10、磁性シート20、基板30及びカバー層40がこの順に積層された構造を有している。メタルプレート10は、ステンレスやチタンなどの金属材料からなり、その一方の表面はICカード1の上面aを構成する。メタルプレート10には開口部11が設けられており、開口部11の内部にはICモジュール50が配置される。
【0025】
基板30は、PETなどの絶縁性樹脂材料からなるフィルムであり、その両面に導体パターンが形成されることによってアンテナ装置を構成する。基板30の厚みについては特に限定されないが、20〜30μm程度とすることができる。
【0026】
図4は、基板30の一方の表面31に形成された導体パターンのパターン形状を示す略平面図である。また、
図5は基板30の他方の表面32に形成された導体パターンのパターン形状を一方の表面31側から見た略透視平面図である。さらに、
図6は、基板30の一方の表面31に形成された導体パターンと基板30の他方の表面32に形成された導体パターンを重ねた状態を示す略透視平面図である。
【0027】
図4に示すように、基板30の一方の表面31に設けられた導体パターンは、アンテナコイルAC、カップリングコイルCC1、キャパシタ電極パターンP1,P3及び接続パターン71,74を含んでいる。アンテナコイルACは、矩形である基板30の辺に沿ってスパイラル状に例えば4ターン巻回された構成を有するループアンテナである。このように、アンテナコイルACは基板30の辺に沿って設けられていることから、基板30の大部分がアンテナコイルACの内径領域を構成する。但し、アンテナコイルACのターン数が複数ターンである点は必須でなく、1ターンのみからなるループ状であっても構わない。一方、カップリングコイルCC1は、アンテナコイルACの内径領域に設けられたより径の小さいコイルであり、スパイラル状に例えば5ターン巻回された構成を有している。但し、カップリングコイルCC1についてもターン数が複数ターンである点は必須でなく、1ターンのみからなるループ状であっても構わない。
【0028】
そして、アンテナコイルACの内周端とカップリングコイルCC1の外周端は、接続パターン71を介して短絡されている。接続パターン71には、キャパシタ電極パターンP1が接続されている。また、アンテナコイルACの外周端60は、基板30を貫通して設けられたスルーホール導体T1を介して、基板30の他方の表面32に設けられた接続ノード61に接続される。一方、カップリングコイルCC1の内周端62は、基板30を貫通して設けられたスルーホール導体T2を介して、基板30の他方の表面32に設けられた接続ノード63に接続される。
図5に示すように、接続ノード61と接続ノード63は、接続パターン72を介して短絡される。接続パターン72は、平面視でキャパシタ電極パターンP1と重なる位置に設けられたキャパシタ電極パターンP2に接続される。
【0029】
かかる構成により、アンテナコイルACとカップリングコイルCC1は直列に接続され、その接続部分にはキャパシタ電極パターンP1,P2からなるマッチング用キャパシタMCが挿入されることになる。このように、アンテナコイルAC及びカップリングコイルCC1は、直流的な接続を行うための外部端子を備えておらず、直流的には完全に閉じた回路である。
【0030】
図5に示すように、基板30の他方の表面32に設けられた導体パターンは、ブースターコイルBC、キャパシタ電極パターンP2,P4及び接続パターン72,73を含んでいる。ブースターコイルBCは、矩形である基板30の辺に沿ってスパイラル状に例えば8ターン巻回された構成を有している。このように、ブースターコイルBCは基板30の辺に沿って設けられていることから、基板30の大部分がブースターコイルBCの内径領域を構成する。そして、ブースターコイルBCとアンテナコイルACは、平面視で互いに重なるように設けられていることから、両者は電磁界結合する。
【0031】
そして、ブースターコイルBCの外周端64は、基板30を貫通して設けられたスルーホール導体T3を介して、基板30の一方の表面31に設けられた接続ノード65に接続される。また、ブースターコイルBCの内周端66は、基板30を貫通して設けられたスルーホール導体T4を介して、基板30の一方の表面31に設けられた接続ノード67に接続される。接続ノード67は、キャパシタ電極パターンP3に接続される。基板30の他方の表面32には、キャパシタ電極パターンP3と重なる位置にキャパシタ電極パターンP4が設けられており、キャパシタ電極パターンP3,P4によって共振用キャパシタRCが構成される。そして、キャパシタ電極パターンP4は、接続パターン73を介して接続ノード68に接続される。接続ノード68は、基板30を貫通して設けられたスルーホール導体T5を介して、基板30の一方の表面31に設けられた接続ノード69に接続される。接続ノード65と接続ノード69は、接続パターン74を介して短絡される。
【0032】
かかる構成により、ブースターコイルBCと共振用キャパシタRCは直列に接続されることになる。このように、ブースターコイルBCは、直流的な接続を行うための外部端子を備えておらず、直流的には完全に閉じた回路である。
【0033】
ここで、カップリングコイルCC1は、ICモジュール50と重なるようメタルプレート10の開口部11と重なる位置に配置されている。メタルプレート10の開口部11は、基板30の−x方向、つまり、一方の短辺側にオフセットして配置されているため、カップリングコイルCC1も同様にオフセットして配置される。キャパシタ電極パターンP1,P2からなるマッチング用キャパシタMCについても、カップリングコイルCC1の近傍に配置されることから、基板30の一方の短辺側にオフセットして配置される。これに対し、キャパシタ電極パターンP3,P4からなる共振用キャパシタRCは、基板30の+x方向、つまり、他方の短辺側にオフセットして配置されている。このように、共振用キャパシタRCをカップリングコイルCC1やマッチング用キャパシタMCから離れた位置に配置すれば、両者間における相互干渉を防止することが可能となる。
【0034】
図3に示すように、磁性シート20は、メタルプレート10と基板30の間に配置される。磁性シート20の材料としては、透磁率の高い材料であれば特に限定されないが、フェライトや金属磁性体などからなるバルク体であっても構わないし、樹脂材料とフェライト粉や金属磁性体粉を混合した複合磁性材料からなるものであっても構わない。磁性シート20の平面サイズは、アンテナコイルAC及びブースターコイルBCの外形よりも僅かに大きく、これにより、アンテナコイルAC及びブースターコイルBCと鎖交する磁束の磁路として機能する。本実施形態によるICカード1は、金属材料からなるメタルプレート10を備えているため、メタルプレート10と基板30をそのまま重ねると通信が困難となるが、両者間に磁性シート20を介在させることによって通信が可能となる。
【0035】
また、磁性シート20には、カップリングコイルCC1と重なる位置に開口部21が設けられている。これにより、カップリングコイルCC1とICモジュール50は、磁性シート20を介することなく直接向かい合うことになる。
【0036】
図7は、ICモジュール50を裏面側から見た略斜視図である。
【0037】
図7に示すように、ICモジュール50はモジュール基板51及びこれに搭載又は内蔵されたICチップ52を備え、モジュール基板51の裏面側にはカップリングコイルCC2が形成されている。モジュール基板51の表面側には、
図1に示す端子電極Eが設けられる。カップリングコイルCC2の内径サイズ及び外径サイズは、基板30に設けられたカップリングコイルCC1の内径サイズ及び外径サイズとほぼ同じであり、これにより両者を重ねると、電磁界結合が生じる。これにより、端子電極を用いてICモジュール50とアンテナコイルACを直接接続することなく、カップリングコイルCC1,CC2を介して両者を交流的に接続することが可能となる。
【0038】
図8は、カップリングコイルCC1,CC2と開口部11,21の好ましい関係を説明するための図であり、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)は変形例による断面図である。
【0039】
図8において、符号81はカップリングコイルCC1,CC2のコイル領域、つまり、最外周ターンと最内周ターンの間に位置し、導体パターンが形成された領域を指し、符号82はカップリングコイルCC1,CC2の内径領域、つまり、最内周ターンに囲まれた領域を指す。そして、
図8に示す例では、平面視で、内径領域82及びコイル領域81の全体が開口部21と重なっている。これにより、カップリングコイルCC1の内径領域82及びコイル領域81と、カップリングコイルCC2の内径領域82及びコイル領域81の間に磁性シート20が全く介在しない構造が得られることから、カップリングコイルCC1とカップリングコイルCC2の間の電磁界結合が磁性シート20によって妨げられることがない。
【0040】
但し、本発明において、コイル領域81の全体が開口部21と重なっている点は必須でなく、磁性シート20の一部がコイル領域81と重なっていても構わない。この場合であっても、カップリングコイルCC1とカップリングコイルCC2の間の結合度を十分に確保するためには、内径領域82の全体が開口部21と重なっていることが好ましい。また、
図8に示す例では、メタルプレート10の開口部11が磁性シート20の開口部21よりも大きいが、この点は必須でなく、メタルプレート10の開口部11よりも磁性シート20の開口部21の方が大きくても構わないし、両者のサイズが同じであっても構わない。
【0041】
また、本実施形態では、
図8(b)に示すように、カップリングコイルCC1が基板30の一方の表面31、つまり、磁性シート20と向かい合う表面32とは反対側の面に形成されているが、逆に、
図8(c)に示す変形例のように、カップリングコイルCC1を基板30の他方の表面32、つまり、磁性シート20と向かい合う面に形成しても構わない。前者によれば、基板30の他方の表面32に複合磁性材料を塗布した後、複合磁性材料を部分的に除去することによって開口部21を形成する場合であっても、複合磁性材料を部分的に除去する工程においてカップリングコイルCC1にダメージが加わることがない。この場合であっても、
図5に示す接続パターン72については、複合磁性材料を除去する工程に晒されることになるが、これによるダメージが問題となる場合には、接続パターン72の導体幅をカップリングコイルCC1など他のパターンの導体幅よりも広く設計すれば良い。一方、後者によれば、カップリングコイルCC1とカップリングコイルCC2の距離がより近くなることから、結合度をより高めることが可能となる。
【0042】
図9は、本実施形態によるICカード1の等価回路図である。
【0043】
図9に示すように、本実施形態においては、アンテナコイルACの一端とカップリングコイルCC1の一端が接続され、アンテナコイルACの他端とカップリングコイルCC1の他端が接続され、これらの接続点にマッチング用キャパシタMCが接続されることにより、主アンテナANT1が構成される。主アンテナANT1に含まれるカップリングコイルCC1は、ICモジュール50に含まれるカップリングコイルCC2と電磁界結合する。カップリングコイルCC2は、入力キャパシタC1に並列接続され、入力キャパシタC1の一端がICチップ52の入力端子に接続される。
【0044】
さらに、主アンテナANT1に含まれるアンテナコイルACは、
図1に示すカードリーダー4との間の通信を行うだけでなく、ブースターコイルBCと電磁界結合する。ブースターコイルBCと共振用キャパシタRCは、補助アンテナANT2を構成する。これにより、本実施形態によるICカード1は、主アンテナANT1と補助アンテナANT2によってカードリーダー4と通信することから、通信距離を拡大することができる。
【0045】
尚、通信距離を拡大する方法としては、ブースターコイルBCを用いるのではなく、アンテナコイルACのターン数をより増やす方法が考えられるが、アンテナコイルACのターン数を増やすと、アンテナコイルACの抵抗成分が増大するため、損失が大きくなる。特に、本実施形態においては、アンテナコイルACとカップリングコイルCC1が直列に接続されており、2つのコイルの抵抗成分が加算されることから、抵抗成分による損失を抑えつつ、アンテナコイルACのターン数を増やすことは困難である。
【0046】
これに対し、本実施形態においては、アンテナコイルACのターン数を増やすのではなく、アンテナコイルACと電磁界結合するブースターコイルBCを用いていることから、抵抗成分を増やすことなく、通信距離を拡大することが可能となる。しかも、本実施形態においては、アンテナコイルACのターン数よりもブースターコイルBCのターン数が多いことから、アンテナコイルACの抵抗成分がより小さく抑えられるとともに、ブースターコイルBCを用いた補助アンテナANT2の特性を高めることが可能となる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によるICカード1は、アンテナ装置を構成する基板30とメタルプレート10の間に磁性シート20が設けられていることから、メタルプレート10に阻害されることなく、裏面b側からカードリーダー4と無線通信することが可能となる。また、カップリングコイルCC1,CC2と重なる位置には、磁性シート20に開口部21が設けられていることから、カップリングコイルCC1とカップリングコイルCC2の電磁界結合が磁性シート20によって阻害されることもない。さらに、本実施形態によるICカード1は、アンテナコイルACと電磁界結合するブースターコイルBCを備えていることから、アンテナコイルACの抵抗成分を抑えつつ、十分な通信距離を確保することが可能となる。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0049】
例えば、上記実施形態においては、基板30の両面に形成されたキャパシタ電極パターンによってマッチング用キャパシタMCや共振用キャパシタRCを形成しているが、これらの一方又は両方がチップ型のキャパシタ部品であっても構わない。
【符号の説明】
【0050】
1 ICカード
4 カードリーダー
10 メタルプレート
11,21 開口部
20 磁性シート
30 基板
31 基板の一方の表面
32 基板の他方の表面
40 カバー層
50 ICモジュール
51 モジュール基板
52 ICチップ
60,64 外周端
61,63,65,67〜69 接続ノード
62,66 内周端
71〜74 接続パターン
81 コイル領域
82 内径領域
a ICカードの上面
b ICカードの裏面
AC アンテナコイル
ANT1 主アンテナ
ANT2 補助アンテナ
BC ブースターコイル
C1 入力キャパシタ
CC1,CC2 カップリングコイル
E 端子電極
MC マッチング用キャパシタ
P1〜P4 キャパシタ電極パターン
RC 共振用キャパシタ
T1〜T5 スルーホール導体