【課題】アンテナコイル及びカップリングコイルと磁性シートを有するアンテナ装置において、磁性シート側に位置する例えばICモジュールとカップリングコイルの電磁界結合を確保する。
【解決手段】アンテナ装置1は、基板30と、基板30の表面に形成された導体パターン及び磁性シート20とを備える。導体パターンは、スパイラル状又はループ状のアンテナコイルACと、アンテナコイルACに接続され、アンテナコイルACよりも径が小さいスパイラル状又はループ状のカップリングコイルCC1とを含む。アンテナコイルACは、磁性シート20と重なる。磁性シート20は、カップリングコイルCC1と重なる位置に開口部21を有する。カップリングコイルCC1の内径領域は、平面視で全体が開口部21と重なる。これにより、磁性シート20によって阻害されることなく、ICモジュール50とカップリングコイルCC1が電磁界結合する。
前記カップリングコイルは、前記基板の表面のうち、前記磁性シートと接する面とは反対側の面に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態によるICカード1の外観を示す略斜視図である。
【
図2】
図2は、ICカード1を裏面b側から見た略透視斜視図である。
【
図3】
図3は、ICカード1の略分解斜視図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態において基板30の一方の表面31に形成された導体パターンのパターン形状を示す略平面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態において基板30の他方の表面32に形成された導体パターンのパターン形状を一方の表面31側から見た略透視平面図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態において基板30の一方の表面31に形成された導体パターンと基板30の他方の表面32に形成された導体パターンを重ねた状態を示す略透視平面図である。
【
図7】
図7は、ICモジュール50を裏面側から見た略斜視図である。
【
図8】
図8は、カップリングコイルCC1,CC2と開口部11,21の好ましい関係を説明するための図であり、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)は変形例による断面図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態によるICカード1の等価回路図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態によるICカード2を裏面b側から見た略透視斜視図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態において基板30の一方の表面31に形成された導体パターンのパターン形状を示す略平面図である。
【
図13】
図13は、第2の実施形態において基板30の他方の表面32に形成された導体パターンのパターン形状を一方の表面31側から見た略透視平面図である。
【
図14】
図14は、第2の実施形態において基板30の一方の表面31に形成された導体パターンと基板30の他方の表面32に形成された導体パターンを重ねた状態を示す略透視平面図である。
【
図15】
図15は、第2の実施形態によるICカード2の等価回路図である。
【
図16】
図16は、第3の実施形態によるICカード3を裏面b側から見た略透視斜視図である。
【
図18】
図18は、第3の実施形態において基板30の一方の表面31に形成された導体パターンのパターン形状を示す略平面図である。
【
図19】
図19は、第3の実施形態において基板30の他方の表面32に形成された導体パターンのパターン形状を一方の表面31側から見た略透視平面図である。
【
図20】
図20は、第3の実施形態において基板30の一方の表面31に形成された導体パターンと基板30の他方の表面32に形成された導体パターンを重ねた状態を示す略透視平面図である。
【
図21】
図21は、第3の実施形態によるICカード3の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0016】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態によるICカード1の外観を示す略斜視図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態によるICカード1は、x方向を長手方向、y方向を短手方向、z方向を厚み方向とする板状体であり、xy面を構成する上面aと裏面bを有している。ICカード1には後述するICモジュールが内蔵されており、ICモジュールの端子電極EがICカード1の上面aに露出している。ICカード1は、裏面bをカードリーダー4と向かい合わせることによって通信を行うことができる。
【0018】
図2はICカード1を裏面b側から見た略透視斜視図であり、
図3はICカード1の略分解斜視図である。
【0019】
図2及び
図3に示すように、本実施形態によるICカード1は、上面a側から裏面b側に向かって、メタルプレート10、磁性シート20、基板30及びカバー層40がこの順に積層された構造を有している。メタルプレート10は、ステンレスやチタンなどの金属材料からなり、その一方の表面はICカード1の上面aを構成する。メタルプレート10には開口部11が設けられており、開口部11の内部にはICモジュール50が配置される。
【0020】
基板30は、PETなどの絶縁性樹脂材料からなるフィルムであり、その両面に導体パターンが形成されることによってアンテナ装置を構成する。基板30の厚みについては特に限定されないが、20〜30μm程度とすることができる。
【0021】
図4は、第1の実施形態において基板30の一方の表面31に形成された導体パターンのパターン形状を示す略平面図である。また、
図5は、第1の実施形態において基板30の他方の表面32に形成された導体パターンのパターン形状を一方の表面31側から見た略透視平面図である。さらに、
図6は、第1の実施形態において基板30の一方の表面31に形成された導体パターンと基板30の他方の表面32に形成された導体パターンを重ねた状態を示す略透視平面図である。
【0022】
図4に示すように、基板30の一方の表面31に設けられた導体パターンは、カップリングコイルCC1、キャパシタ電極パターンP11及び接続パターン100を含んでいる。カップリングコイルCC1は、スパイラル状に例えば5ターン巻回された構成を有している。但し、カップリングコイルCC1のターン数が複数ターンである点は必須でなく、1ターンのみからなるループ状であっても構わない。
【0023】
カップリングコイルCC1の外周端は、接続パターン100を介して接続ノード90に接続されている。接続パターン100には、キャパシタ電極パターンP11が接続されている。接続ノード90は、基板30を貫通して設けられたスルーホール導体T11を介して、基板30の他方の表面32に設けられた接続ノード91に接続される。一方、カップリングコイルCC1の内周端92は、基板30を貫通して設けられたスルーホール導体T12を介して、基板30の他方の表面32に設けられた接続ノード93に接続される。
【0024】
図5に示すように、基板30の他方の表面32に設けられた導体パターンは、アンテナコイルAC、キャパシタ電極パターンP12及び接続パターン101を含んでいる。アンテナコイルACは、矩形である基板30の辺に沿ってスパイラル状に例えば4ターン巻回された構成を有するループアンテナである。このように、アンテナコイルACは基板30の辺に沿って設けられていることから、基板30の大部分がアンテナコイルACの内径領域を構成する。但し、アンテナコイルACのターン数が複数ターンである点は必須でなく、1ターンのみからなるループ状であっても構わない。
【0025】
アンテナコイルACの外周端は、接続ノード91に接続されている。これにより、アンテナコイルACの外周端とカップリングコイルCC1の外周端が短絡される。一方、アンテナコイルACの内周端は、接続パターン101を介して接続ノード93に接続されている。これにより、アンテナコイルACの内周端とカップリングコイルCC1の内周端が短絡される。接続パターン101には、キャパシタ電極パターンP12が接続されている。キャパシタ電極パターンP12は、平面視でキャパシタ電極パターンP11と重なる位置に設けられている。
【0026】
かかる構成により、アンテナコイルACとカップリングコイルCC1は直列に接続され、その接続部分にはキャパシタ電極パターンP11,P12からなるマッチング用キャパシタMCが挿入されることになる。このように、アンテナコイルAC及びカップリングコイルCC1は、直流的な接続を行うための外部端子を備えておらず、直流的には完全に閉じた回路である。
【0027】
ここで、カップリングコイルCC1は、ICモジュール50と重なるようメタルプレート10の開口部11と重なる位置に配置されている。メタルプレート10の開口部11は、基板30の−x方向、つまり、一方の短辺側にオフセットして配置されているため、カップリングコイルCC1も同様にオフセットして配置される。キャパシタ電極パターンP11,P12からなるマッチング用キャパシタMCについても、カップリングコイルCC1の近傍に配置されることから、基板30の一方の短辺側にオフセットして配置される。
【0028】
図3に示すように、磁性シート20は、メタルプレート10と基板30の間に配置され、基板30の表面に直接形成される。磁性シート20の材料としては、透磁率の高い材料であれば特に限定されないが、フェライトや金属磁性体などからなるバルク体であっても構わないし、樹脂材料とフェライト粉や金属磁性体粉を混合した複合磁性材料からなるものであっても構わない。複合磁性材料を用いる場合、未硬化の樹脂材料とフェライト粉や金属磁性体粉の混合物を基板30の表面に塗布し、その後樹脂材料を硬化させることで基板30の表面に複合磁性材料からなる磁性シート20を直接形成することができる。磁性シート20の平面サイズは、アンテナコイルACの外形よりも僅かに大きく、これにより、アンテナコイルACと鎖交する磁束の磁路として機能する。本実施形態によるICカード1は、金属材料からなるメタルプレート10を備えているため、メタルプレート10と基板30をそのまま重ねると通信が困難となるが、両者間に磁性シート20を介在させることによって通信が可能となる。
【0029】
また、磁性シート20には、カップリングコイルCC1と重なる位置に開口部21が設けられている。これにより、カップリングコイルCC1とICモジュール50は、磁性シート20を介することなく直接向かい合うことになる。
【0030】
図7は、ICモジュール50を裏面側から見た略斜視図である。
【0031】
図7に示すように、ICモジュール50はモジュール基板51及びこれに搭載又は内蔵されたICチップ52を備え、モジュール基板51の裏面側にはカップリングコイルCC2が形成されている。モジュール基板51の表面側には、
図1に示す端子電極Eが設けられる。カップリングコイルCC2の内径サイズ及び外径サイズは、基板30に設けられたカップリングコイルCC1の内径サイズ及び外径サイズとほぼ同じであり、これにより両者を重ねると、電磁界結合が生じる。これにより、端子電極を用いてICモジュール50とアンテナコイルACを直接接続することなく、カップリングコイルCC1,CC2を介して両者を交流的に接続することが可能となる。
【0032】
図8は、カップリングコイルCC1,CC2と開口部11,21の好ましい関係を説明するための図であり、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)は変形例による断面図である。
【0033】
図8において、符号81はカップリングコイルCC1,CC2のコイル領域、つまり、最外周ターンと最内周ターンの間に位置し、導体パターンが形成された領域を指し、符号82はカップリングコイルCC1,CC2の内径領域、つまり、最内周ターンに囲まれた領域を指す。そして、
図8に示す例では、平面視で、内径領域82及びコイル領域81の全体が開口部21と重なっている。これにより、カップリングコイルCC1の内径領域82及びコイル領域81と、カップリングコイルCC2の内径領域82及びコイル領域81の間に磁性シート20が全く介在しない構造が得られることから、カップリングコイルCC1とカップリングコイルCC2の間の電磁界結合が磁性シート20によって妨げられることがない。
【0034】
但し、本発明において、コイル領域81の全体が開口部21と重なっている点は必須でなく、磁性シート20の一部がコイル領域81と重なっていても構わない。この場合であっても、カップリングコイルCC1とカップリングコイルCC2の間の結合度を十分に確保するためには、内径領域82の全体が開口部21と重なっている必要がある。また、
図8に示す例では、メタルプレート10の開口部11が磁性シート20の開口部21よりも大きいが、この点は必須でなく、メタルプレート10の開口部11よりも磁性シート20の開口部21の方が大きくても構わないし、両者のサイズが同じであっても構わない。
【0035】
また、本実施形態では、
図8(b)に示すように、カップリングコイルCC1が基板30の一方の表面31、つまり、磁性シート20と向かい合う表面32とは反対側の面に形成されているが、逆に、
図8(c)に示す変形例のように、カップリングコイルCC1を基板30の他方の表面32、つまり、磁性シート20と向かい合う面に形成しても構わない。前者によれば、基板30の他方の表面32に複合磁性材料を塗布した後、複合磁性材料を部分的に除去することによって開口部21を形成する場合であっても、複合磁性材料を部分的に除去する工程においてカップリングコイルCC1にダメージが加わることがない。この場合であっても、
図5に示す接続パターン101については、複合磁性材料を除去する工程に晒されることになるが、これによるダメージが問題となる場合には、接続パターン101の導体幅をカップリングコイルCC1など他のパターンの導体幅よりも広く設計すれば良い。一方、後者によれば、カップリングコイルCC1とカップリングコイルCC2の距離がより近くなることから、結合度をより高めることが可能となる。
【0036】
図9は、第1の実施形態によるICカード1の等価回路図である。
【0037】
図9に示すように、第1の実施形態においては、アンテナコイルACの一端とカップリングコイルCC1の一端が接続され、アンテナコイルACの他端とカップリングコイルCC1の他端が接続され、これらの接続点にマッチング用キャパシタMCが接続されることにより、主アンテナANT1が構成される。主アンテナANT1に含まれるアンテナコイルACは、
図1に示すカードリーダー4との間の通信を行う。主アンテナANT1に含まれるカップリングコイルCC1は、ICモジュール50に含まれるカップリングコイルCC2と電磁界結合する。カップリングコイルCC2は、入力キャパシタC1に並列接続され、入力キャパシタC1の一端がICチップ52の入力端子に接続される。
【0038】
以上説明したように、第1の実施形態によるICカード1は、アンテナ装置を構成する基板30とメタルプレート10の間に磁性シート20が設けられていることから、メタルプレート10に阻害されることなく、裏面b側からカードリーダー4と無線通信することが可能となる。また、カップリングコイルCC1,CC2と重なる位置には、磁性シート20に開口部21が設けられていることから、カップリングコイルCC1とカップリングコイルCC2の電磁界結合が磁性シート20によって阻害されることもない。特に、カップリングコイルCC1,CC2の内径領域は、平面視で全体が磁性シート20の開口部21と重なっていることから、磁性シート20をバイパスすることなく、ほとんどの磁束をカップリングコイルCC1,CC2に鎖交させることが可能となる。しかも、磁性シート20が基板30の表面に直接形成され、両者が一体化していることから、部品点数も削減される。
【0039】
<第2の実施形態>
図10は、第2の実施形態によるICカード2を裏面b側から見た略透視斜視図である。また、
図11はICカード2の略分解斜視図である。
【0040】
図10及び
図11に示すように、第2の実施形態によるICカード2は、基板30の表面31,32に形成された導体パターンの形状が異なる点において、第1の実施形態によるICカード1と相違している。その他の構成は、第1の実施形態によるICカード1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0041】
図12は、第2の実施形態において基板30の一方の表面31に形成された導体パターンのパターン形状を示す略平面図である。また、
図13は、第2の実施形態において基板30の他方の表面32に形成された導体パターンのパターン形状を一方の表面31側から見た略透視平面図である。さらに、
図14は、第2の実施形態において基板30の一方の表面31に形成された導体パターンと基板30の他方の表面32に形成された導体パターンを重ねた状態を示す略透視平面図である。
【0042】
図12に示すように、基板30の一方の表面31に設けられた導体パターンは、アンテナコイルAC1、カップリングコイルCC1、キャパシタ電極パターンP13及び接続パターン102,103を含んでいる。アンテナコイルAC1は、矩形である基板30の辺に沿ってスパイラル状に例えば4ターン巻回された構成を有している。このように、アンテナコイルAC1は基板30の辺に沿って設けられていることから、基板30の大部分がアンテナコイルAC1の内径領域を構成する。但し、アンテナコイルAC1のターン数が複数ターンである点は必須でなく、1ターンのみからなるループ状であっても構わない。一方、カップリングコイルCC1は、アンテナコイルACの内径領域に設けられたより径の小さいコイルであり、スパイラル状に例えば5ターン巻回された構成を有している。但し、カップリングコイルCC1についてもターン数が複数ターンである点は必須でなく、1ターンのみからなるループ状であっても構わない。
【0043】
そして、アンテナコイルAC1の内周端とカップリングコイルCC1の外周端は、接続パターン102を介して短絡されている。また、アンテナコイルAC1の外周端は、キャパシタ電極パターンP13に接続されている。さらに、接続パターン103は、アンテナコイルAC1に沿って配置されており、その一端は接続ノード94に接続され、他端は接続ノード98に接続される。接続ノード94,98は、基板30を貫通して設けられたスルーホール導体T13,T14を介して、基板30の他方の表面32に設けられた接続ノード95,99にそれぞれ接続される。一方、カップリングコイルCC1の内周端96は、基板30を貫通して設けられたスルーホール導体T15を介して、基板30の他方の表面32に設けられた接続ノード97に接続される。
【0044】
図13に示すように、基板30の一方の表面32に設けられた導体パターンは、アンテナコイルAC2、キャパシタ電極パターンP14及び接続パターン104を含んでいる。アンテナコイルAC2は、矩形である基板30の辺に沿ってスパイラル状に例えば4ターン巻回された構成を有している。このように、アンテナコイルAC2は基板30の辺に沿って設けられていることから、基板30の大部分がアンテナコイルAC2の内径領域を構成する。但し、アンテナコイルAC2のターン数が複数ターンである点は必須でなく、1ターンのみからなるループ状であっても構わない。
【0045】
そして、アンテナコイルAC2の外周端は接続ノード95に接続され、アンテナコイルAC1の内周端は接続パターン104を介して接続ノード97に接続される。また、キャパシタ電極パターンP14は、接続ノード99に接続される。
【0046】
かかる構成により、アンテナコイルAC1、カップリングコイルCC1及びアンテナコイルAC2はこの順に直列に接続され、アンテナコイルAC1とアンテナコイルAC2は、キャパシタ電極パターンP13,P14からなるマッチング用キャパシタMCを介して接続される。このように、アンテナコイルAC1,AC2及びカップリングコイルCC1は、直流的な接続を行うための外部端子を備えておらず、直流的には完全に閉じた回路である。
【0047】
ここで、キャパシタ電極パターンP13,P14からなるマッチング用キャパシタMCは、基板30の+x方向、つまり、他方の短辺側にオフセットして配置されている。このように、カップリングコイルCC1とマッチング用キャパシタMCを互いに離れた位置に配置すれば、両者間における相互干渉を防止することが可能となる。
【0048】
図15は、第2の実施形態によるICカード2の等価回路図である。
【0049】
図15に示すように、第2の実施形態においては、アンテナコイルAC1の一端とアンテナコイルAC2の一端の間にカップリングコイルCC1が接続され、アンテナコイルAC1の他端とアンテナコイルAC2の他端の間にマッチング用キャパシタMCが接続されることにより、ダイポール型の主アンテナANT3が構成される。主アンテナANT3に含まれるアンテナコイルAC1,AC2は、
図1に示すカードリーダー4との間の通信を行う。主アンテナANT3に含まれるカップリングコイルCC1は、ICモジュール50に含まれるカップリングコイルCC2と電磁界結合する。
【0050】
本実施形態が例示するように、本発明においてアンテナコイルがループアンテナであることは必須でなく、ダイポールアンテナであっても構わない。
【0051】
<第3の実施形態>
図16は、第3の実施形態によるICカード3を裏面b側から見た略透視斜視図である。また、
図17はICカード3の略分解斜視図である。
【0052】
図16及び
図17に示すように、第3の実施形態によるICカード3は、基板30の表面31,32に形成された導体パターンの形状が異なる点において、第1の実施形態によるICカード1と相違している。その他の構成は、第1の実施形態によるICカード1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0053】
図18は、第3の実施形態において基板30の一方の表面31に形成された導体パターンのパターン形状を示す略平面図である。また、
図19は、第3の実施形態において基板30の他方の表面32に形成された導体パターンのパターン形状を一方の表面31側から見た略透視平面図である。さらに、
図20は、第3の実施形態において基板30の一方の表面31に形成された導体パターンと基板30の他方の表面32に形成された導体パターンを重ねた状態を示す略透視平面図である。
【0054】
図18に示すように、基板30の一方の表面31に設けられた導体パターンは、アンテナコイルAC、カップリングコイルCC1、キャパシタ電極パターンP1,P3及び接続パターン71,74を含んでいる。アンテナコイルACは、矩形である基板30の辺に沿ってスパイラル状に例えば4ターン巻回された構成を有している。このように、アンテナコイルACは基板30の辺に沿って設けられていることから、基板30の大部分がアンテナコイルACの内径領域を構成する。但し、アンテナコイルACのターン数が複数ターンである点は必須でなく、1ターンのみからなるループ状であっても構わない。一方、カップリングコイルCC1は、アンテナコイルACの内径領域に設けられたより径の小さいコイルであり、スパイラル状に例えば5ターン巻回された構成を有している。但し、カップリングコイルCC1についてもターン数が複数ターンである点は必須でなく、1ターンのみからなるループ状であっても構わない。
【0055】
そして、アンテナコイルACの内周端とカップリングコイルCC1の外周端は、接続パターン71を介して短絡されている。接続パターン71には、キャパシタ電極パターンP1が接続されている。また、アンテナコイルACの外周端60は、基板30を貫通して設けられたスルーホール導体T1を介して、基板30の他方の表面32に設けられた接続ノード61に接続される。一方、カップリングコイルCC1の内周端62は、基板30を貫通して設けられたスルーホール導体T2を介して、基板30の他方の表面32に設けられた接続ノード63に接続される。
図19に示すように、接続ノード61と接続ノード63は、接続パターン72を介して短絡される。接続パターン72は、平面視でキャパシタ電極パターンP1と重なる位置に設けられたキャパシタ電極パターンP2に接続される。
【0056】
かかる構成により、アンテナコイルACとカップリングコイルCC1は直列に接続され、その接続部分にはキャパシタ電極パターンP1,P2からなるマッチング用キャパシタMCが挿入されることになる。このように、アンテナコイルAC及びカップリングコイルCC1は、直流的な接続を行うための外部端子を備えておらず、直流的には完全に閉じた回路である。
【0057】
図19に示すように、基板30の他方の表面32に設けられた導体パターンは、ブースターコイルBC、キャパシタ電極パターンP2,P4及び接続パターン72,73を含んでいる。ブースターコイルBCは、矩形である基板30の辺に沿ってスパイラル状に例えば8ターン巻回された構成を有している。このように、ブースターコイルBCは基板30の辺に沿って設けられていることから、基板30の大部分がブースターコイルBCの内径領域を構成する。そして、ブースターコイルBCとアンテナコイルACは、平面視で互いに重なるように設けられていることから、両者は電磁界結合する。
【0058】
そして、ブースターコイルBCの外周端64は、基板30を貫通して設けられたスルーホール導体T3を介して、基板30の一方の表面31に設けられた接続ノード65に接続される。また、ブースターコイルBCの内周端66は、基板30を貫通して設けられたスルーホール導体T4を介して、基板30の一方の表面31に設けられた接続ノード67に接続される。接続ノード67は、キャパシタ電極パターンP3に接続される。基板30の他方の表面32には、キャパシタ電極パターンP3と重なる位置にキャパシタ電極パターンP4が設けられており、キャパシタ電極パターンP3,P4によって共振用キャパシタRCが構成される。そして、キャパシタ電極パターンP4は、接続パターン73を介して接続ノード68に接続される。接続ノード68は、基板30を貫通して設けられたスルーホール導体T5を介して、基板30の一方の表面31に設けられた接続ノード69に接続される。接続ノード65と接続ノード69は、接続パターン74を介して短絡される。
【0059】
かかる構成により、ブースターコイルBCと共振用キャパシタRCは直列に接続されることになる。このように、ブースターコイルBCは、直流的な接続を行うための外部端子を備えておらず、直流的には完全に閉じた回路である。
【0060】
ここで、キャパシタ電極パターンP3,P4からなる共振用キャパシタRCは、基板30の+x方向、つまり、他方の短辺側にオフセットして配置されている。このように、共振用キャパシタRCをカップリングコイルCC1やマッチング用キャパシタMCから離れた位置に配置すれば、両者間における相互干渉を防止することが可能となる。
【0061】
図21は、第3の実施形態によるICカード3の等価回路図である。
【0062】
図21に示すように、第3の実施形態においては、アンテナコイルACの一端とカップリングコイルCC1の一端が接続され、アンテナコイルACの他端とカップリングコイルCC1の他端が接続され、これらの接続点にマッチング用キャパシタMCが接続されることにより、主アンテナANT1が構成される。主アンテナANT1に含まれるカップリングコイルCC1は、ICモジュール50に含まれるカップリングコイルCC2と電磁界結合する。
【0063】
さらに、主アンテナANT1に含まれるアンテナコイルACは、
図1に示すカードリーダー4との間の通信を行うだけでなく、ブースターコイルBCと電磁界結合する。ブースターコイルBCと共振用キャパシタRCは、補助アンテナANT2を構成する。これにより、本実施形態によるICカード1は、主アンテナANT1と補助アンテナANT2によってカードリーダー4と通信することから、通信距離を拡大することができる。
【0064】
尚、通信距離を拡大する方法としては、ブースターコイルBCを用いるのではなく、アンテナコイルACのターン数をより増やす方法が考えられるが、アンテナコイルACのターン数を増やすと、アンテナコイルACの抵抗成分が増大するため、損失が大きくなる。特に、本実施形態においては、アンテナコイルACとカップリングコイルCC1が直列に接続されており、2つのコイルの抵抗成分が加算されることから、抵抗成分による損失を抑えつつ、アンテナコイルACのターン数を増やすことは困難である。
【0065】
これに対し、本実施形態においては、アンテナコイルACのターン数を増やすのではなく、アンテナコイルACと電磁界結合するブースターコイルBCを用いていることから、抵抗成分を増やすことなく、通信距離を拡大することが可能となる。しかも、本実施形態においては、アンテナコイルACのターン数よりもブースターコイルBCのターン数が多いことから、アンテナコイルACの抵抗成分がより小さく抑えられるとともに、ブースターコイルBCを用いた補助アンテナANT2の特性を高めることが可能となる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によるICカード3は、アンテナコイルACと電磁界結合するブースターコイルBCを備えていることから、アンテナコイルACの抵抗成分を抑えつつ、十分な通信距離を確保することが可能となる。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0068】
例えば、上記各実施形態においては、基板30の両面に形成されたキャパシタ電極パターンによってマッチング用キャパシタMCや共振用キャパシタRCを形成しているが、これらの一方又は両方がチップ型のキャパシタ部品であっても構わない。