【解決手段】無線読取装置は、リーダライタ装置と、指向性調整装置とを備える。リーダライタ装置は、外部の無線応答器に応答信号を要求する要求信号を、アンテナから複数回送信する。指向性調整装置は、アンテナの放射指向性に影響する位置に配置された無給電の可動金属体を有し、アンテナに対する可動金属体の相対位置を変更してアンテナの放射指向性を調整する。指向性調整装置は、リーダライタ装置が要求信号を連続して2度送信する間に、アンテナが送受信する電磁波に由来する定在波の、電界強度が所定の閾値より低い不通領域の分布を変更するように、可動金属体を移動する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明による無線読取装置および無線読取方法を実施するための形態を以下に説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
本実施形態による無線読取装置をより良く理解するために、まず、
図1Aおよび
図1Bを参照して関連技術によるリーダライタ装置2について説明する。
図1Aは、関連技術によるリーダライタ装置2の一構成例を示すブロック回路図である。
図1Bは、関連技術による通信制御部21の一構成例を示すブロック回路図である。
【0020】
図1Aのリーダライタ装置2の構成要素について説明する。リーダライタ装置2は、通信制御部21と、送受信部22と、送受信アンテナ23、24とを備える。ここで、リーダライタ装置2は、後述する送受信アンテナ23および送受信アンテナ24のうち、どちらか一方を選択的に用いても良い。以降、送受信アンテナ23および送受信アンテナ24を区別する必要が無い場合には、送受信アンテナ23、24と表記する。
【0021】
図1Aのリーダライタ装置2の構成要素の接続関係について説明する。通信制御部21は、送受信部22に、電気的に接続されている。通信制御部21は、さらに、図示しない任意の外部機器に、電気的に接続されていても良い。送受信部22は、送受信アンテナ23、24に、電気的に接続されている。また、送受信アンテナ23、24と、通信制御部21および送受信部22とは、同じ場所に置かれていても良い。反対に、通信制御部21および送受信部22は、送受信アンテナ23、24とは異なる離れた場所に設置され、送受信アンテナ23、24に高周波ケーブルで接続されていても良い。
【0022】
図1Aのリーダライタ装置2の構成要素の動作について説明する。通信制御部21は、外部の無線応答器に応答信号を要求するための要求信号を生成して送受信部22に向けて出力する。通信制御部21は、外部機器の制御下でこの要求信号を生成しても良い。送受信部22は、通信制御部21から受信した要求信号に対応する高周波電流を生成して送受信アンテナ23、24を給電する。送受信アンテナ23、24は、給電された高周波電流に対応する電磁波を、すなわち無線信号に変換された要求信号を、外部の無線応答器としてのRF−IDタグ4に向けて放射する。この電磁波のうち、一部は直接波として、別の一部は反射波として、それぞれRF−IDタグ4に届いても良い。以降、これらの直接波および反射波のそれぞれをまとめて素波と表記する。RF−IDタグ4に届く複数の素波は、マルチパス合成されて多重波となり、周囲の電波環境によっては定在波を発生させる。本実施形態では、リーダライタ装置2の通信相手である無線応答器がRF−IDタグ4である場合について説明するが、これはあくまでも一例にすぎず、本実施形態を限定しない。
【0023】
図1Aの通信制御部21は、例えば、
図1Bに示すように、プログラムを実行して所定の機能を実現するコンピュータであっても良い。
図1Bに示された例では、通信制御部21は、バス211と、インタフェース212と、演算装置213と、記憶装置214と、外部記憶装置215とを備えている。インタフェース212、演算装置213、記憶装置214および外部記憶装置215は、バス211を介して相互に電気的に通信可能に接続されている。インタフェース212は、任意の外部機器との間で通信を行う。演算装置213は、記憶装置214に格納されているプログラムを実行して対応する機能を実現する。記憶装置214は、演算装置213から読み出し可能にプログラムを格納し、演算装置213が出力するデータを格納する。外部記憶装置215は、記録媒体216からプログラムおよび/またはデータを読み出し、または書き込む。記録媒体216は、非一時的なコンピュータ可読媒体であっても良い。
【0024】
図2および
図3を参照して、金属棚などの内側に設置されたリーダライタ装置2が、この金属棚に載置されたRF−IDタグ4から任意のデータを読み取ろうとするときに、定在波が発生することについて説明する。
図2は、関連技術によるリーダライタ装置2または送受信アンテナ23、24の棚5への一配置例を示す部分透過俯瞰図である。
図3は、関連技術によるリーダライタ装置2または送受信アンテナ23、24を棚5に配置した場合に発生する定在波の谷の分布の一例を示すグラフである。なお、定在波の谷は、定在波の節とも呼ばれる。
【0025】
図2の棚5の構成について説明する。棚5は、天板51と、底板52と、左右2枚の壁板53と、棚板54とを備えている。棚5は、例えば、水平な床の上などに設置されており、天板51、底板52および棚板54は、水平方向に対して平行に配置されている。ここで、直交座標XYZを定義する。すなわち、Z軸は鉛直方向に対して平行である。天板51、底板52および棚板54の形状は長方形であり、それぞれの長方形における長辺に対してX軸は平行であり、短辺に対してY軸は平行である。2枚の壁板53は、YZ平面に対して平行に配置されている。
【0026】
図2の例では、リーダライタ装置2または送受信アンテナ23、24は、天板51の、棚板54に対向する表面の中央付近に固定されている。RF−IDタグ4は、物品6の表面に取り付けられており、この物品6は、棚板54の、天板51に対向する表面の中央付近に載置されている。
【0027】
棚5に含まれる天板51、底板52および棚板54は、金属製であり、電波を反射する。また、棚5に含まれる2枚の棚板54は、金属製の板であっても良いし、代わりに金属製の角柱で構成されていても良いが、いずれの場合にも電波を反射する。言い換えれば、棚5の内側の空間のうち、天板51および棚板54の間に挟まれた上側空間は、そのX軸方向およびZ軸方向の四方が、導電体で囲まれている。そのため、この上側空間において、リーダライタ装置2の送受信アンテナ23、24から放射される電磁波は天板51、2枚の壁板53および棚板54で反射し、
図3に示すような定在波が発生する。より正確には、
図3のグラフは、定在波の谷の周辺で無線通信ができない不通領域を黒色で示し、その他の無線通信が可能な通信可能領域を白色で示している。言い換えれば、RF−IDタグ4が不通領域に配置されている場合には、リーダライタ装置2が出力する電磁波の電界強度が低いため、リーダライタ装置2およびRF−IDタグ4の間で無線通信を行うことができない。反対に、RF−IDタグ4が不通領域以外の通信可能領域に配置されている場合には、電界強度が十分に高いため、リーダライタ装置2との間で無線通信を行うことができる。
図3の例では、リーダライタ装置2から出力される電磁波に由来する定在波の電界強度が−30dBV/mより低い領域を不通領域と定義している。
【0028】
図1のRF−IDタグ4の動作について説明する。RF−IDタグ4は、受信した電磁波の電力によって駆動する。RF−IDタグ4は、リーダライタ装置2から受信した電磁波に含まれる要求信号に応じて、RF−IDタグ4の内部に記憶されたデータを含む応答信号を生成してリーダライタ装置2に向けて無線送信する。具体的には、この応答信号を含む電磁波を送受信アンテナ23、24に向けて放射する。このデータは、例えば、RF−IDタグ4に設定された認識番号を表す96ビットのバイナリデータであっても良い。また、RF−IDタグ4は、例えば、リーダライタ装置2から届く電磁波を反射または吸収する動作を繰り返すことで、バイナリデータを符号化した電磁波を放射しても良い。
【0029】
リーダライタ装置2は、RF−IDタグ4から放射された電磁波を受信して、RF−IDタグ4のデータを読み取る。リーダライタ装置2は、RF−IDタグ4のデータの読み取りに成功するまで、要求信号の出力を繰り返しても良い。また、リーダライタ装置2は、繰り返し回数が所定の閾値に達したら、要求信号の出力を終了しても良い。
【0030】
次に、
図4を参照して、一実施形態による無線読取装置1の構成について説明する。
図4は、一実施形態による無線読取装置1の一構成例を示すブロック回路図である。
【0031】
図4の無線読取装置1は、
図1のリーダライタ装置2に、指向性調整装置3を追加したものである。言い換えれば、
図4の無線読取装置1は、リーダライタ装置2と、指向性調整装置3とを備える。
【0032】
図4の指向性調整装置3の構成要素について説明する。指向性調整装置3は、移動装置31と、可動金属体32、33とを備える。ここで、指向性調整装置3は、後述する可動金属体32および可動金属体33のうち、どちらか一方を選択的に用いても良い。以降、可動金属体32および可動金属体33を区別する必要が無い場合には、可動金属体32、33と表記する。
【0033】
移動装置31は、モータ制御部311と、モータ312と、伝達機構313とを備える。モータ制御部311は、モータ312の動作を制御する任意の回路である。伝達機構313は、モータ312が出力する動力を、可動金属体32、33を移動させる動力に変換する任意の機構である。
【0034】
モータ制御部311は、図示しない電源から供給される電力をモータ312に供給してモータ312の動作を制御する。より具体的には、モータ制御部311は、モータ312の動作を開始または停止しても良い。モータ制御部311は、さらに、モータ312の回転数、回転方向などの諸パラメータを制御しても良い。
【0035】
伝達機構313は、例えば、各種の歯車、回転シャフト、軸受け、プーリー、動力伝達ベルト、各種のリンク機構などの一部または全ての組み合わせとして構成されても良い。
【0036】
ここで、モータ312は、動力源の一例にすぎず、本実施形態を限定しない。言い換えれば、モータ312は、アクチュエータなど、その他の動力源に変更可能である。その場合は、モータ制御部311および伝達機構313についても、その動力源に対応するように適宜に変更することが好ましい。
【0037】
可動金属体32、33は、送受信アンテナ23、24の放射指向性を調整するように、送受信アンテナ23、24の近傍に配置される。可動金属体32、33は、無給電であっても良いし、接地されていなくても良い。言い換えれば、可動金属体32、33は、例えば、八木・宇田アンテナにおける導波器と同様に振る舞うように構成されることが好ましい。
【0038】
なお、
図4のリーダライタ装置2の構成については、
図1のリーダライタ装置2の場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0039】
図5を参照して、リーダライタ装置2および指向性調整装置3の位置関係について説明する。
図5は、一実施形態による無線読取装置1の棚5への一配置例を示す正面図である。
【0040】
図5の棚5は、
図2の棚5と同様に構成されているので、さらなる詳細な説明を省略する。同様に、
図5の物品6およびRF−IDタグ4についても、
図2の場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。また、
図5の直交座標XYZも、
図2の直交座標XYZと同様に定義されている。
【0041】
図5の無線読取装置1は、棚5の天板51の、棚板54に対向する表面に、
図2のリーダライタ装置2の代わりに設置されている。言い換えれば、
図5の無線読取装置1は、
図2のリーダライタ装置2に指向性調整装置3を追加したものである。ここで、指向性調整装置3に含まれる可動金属体32、33は、送受信アンテナ23、24の放射指向性に影響するように、送受信アンテナ23、24の近傍に配置されることが好ましい。また、可動金属体32、33は、送受信アンテナ23、24と、RF−IDタグ4との間に配置されるように設置されることが好ましい。
【0042】
図6を参照して、送受信アンテナ23および可動金属体32の構成について説明する。
図6は、一実施形態による送受信アンテナ23および可動金属体32の一構成例を示す俯瞰図である。
【0043】
図6の送受信アンテナ23の構成要素について説明する。送受信アンテナ23は逆F型アンテナであり、地板231と、放射器232と、接地線233と、給電線234とを備えている。地板231は、平面状に形成された導体であり、好ましくは給電線234が貫通するための穴が設けられている。放射器232は、直線状に形成された導体であり、好ましくは使用される周波数に対応する波長の4分の1にほぼ等しい長さLrを有している。接地線233および給電線234のそれぞれは、導体である。
【0044】
図6の送受信アンテナ23の構成要素の接続関係について説明する。
図6の直交座標XYZは、
図5の直交座標XYZに対応している。地板231は、XY平面に対して平行に配置されている。放射器232は、その長手方向がX軸に対して平行になるように配置されている。放射器232の一方の端部は、接地線233の一方の端部に、電気的に接続されている。放射器232の他方の端部は、解放されている。接地線233の他方の端部は、地板231に電気的に接続されている。接地線233は、その長手方向がZ軸に対して平行になるように配置されていても良い。給電線234の一方の端部は、放射器232の、接地線233との接続部から所定の距離だけ離れた位置に、電気的に接続されている。給電線234の他方の端部は、送受信部22の出力に、電気的に接続されている。給電線234は、その長手方向がZ軸に対して平行になるように配置されていても良い。また、給電線234は、地板231と導通しないように、地板231に設けられた穴を貫通していても良い。送受信アンテナ23は、例えば、誘電体基板の一方の表面に地板231が形成され、他方の表面に放射器232が形成されたマイクロストリップアンテナとして構成されていても良い。
【0045】
図6の送受信アンテナ23の動作については、一般的な逆F型アンテナの動作と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0046】
図6の可動金属体32について説明する。可動金属体32は、直線状に形成された導体である。可動金属体32の長さLmは、例えば、使用する周波数に対応する波長の2分の1弱であっても良い。可動金属体32は、無給電状態であり、送受信アンテナ23を含むリーダライタ装置2にも、移動装置31にも、電気的に導通しておらず、さらに接地もされていないことが好ましい。可動金属体32は、例えば、誘電体基板上に形成された金属膜であっても良く、マイクロストリップアンテナと同様に形成されても良い。
【0047】
可動金属体32は、その長手方向が放射器232の長手方向に対して平行になるように配置されている。可動金属体32は、例えば、放射器232を含むXZ平面に含まれるように配置されていても良い。このとき、放射器232の中心点を通り、かつ、Z軸に対して平行である仮想的な直線を、基準線と呼ぶ。また、この基準線が延在する方向を、基準方向と呼ぶ。
【0048】
可動金属体32は、伝達機構313によって、X軸方向に対して平行に移動する。このとき、可動金属体32と、放射器232との間の距離Dは、一定に保たれても良い。この距離Dは、例えば、使用される周波数に対応する波長の約4分の1であっても良い。
【0049】
指向性調整装置3は、移動装置31によって可動金属体32を移動することによって、送受信アンテナ23の放射指向性を調整することができる。より具体的には、移動装置31が、可動金属体32の、送受信アンテナ23に対する相対的な位置関係を変更することによって、送受信アンテナ23の放射指向性を調整することができる。その結果、送受信アンテナ23から放射される電磁波に由来する定在波の谷の分布を変更することができる。
【0050】
なお、上記に説明した可動金属体32の形状、可動金属体32の放射器232に対する位置関係、ならびに、可動金属体32の移動方向および移動距離は、あくまでも一例であり、本実施形態を限定しない。これらのパラメータは、送受信アンテナ23の放射指向性に所望の調整を行えるように、適宜に設定することが好ましい。
【0051】
ここまで、
図6を参照して、送受信アンテナ23が逆F型アンテナである場合の可動金属体32について説明したが、この構成はあくまでも一例であり、本実施形態を限定しない。言い換えれば、送受信アンテナ23は逆F型アンテナ以外の別のアンテナに変更しても良いし、可動金属体32は別のアンテナに対応する別の可動金属体に変更しても良い。
【0052】
図7を参照して、本実施形態による無線読取装置1の動作、すなわち本実施形態による無線読取方法について説明する。
図7は、一実施形態による無線読取方法の一構成例を示すフローチャートである。
【0053】
図7のフローチャートは、第1ステップS11から第8ステップS18までの、合計8のステップを含んでいる。
図7のフローチャートが開始すると、次に、第1ステップS11が実行される。
【0054】
第1ステップS11では、可動金属体32の移動を開始する。すなわち、移動装置31が可動金属体32を移動させる動作を開始する。言い換えれば、移動装置31が、可動金属体32の、送受信アンテナ23に対する相対位置を変更する動作を開始する。ここで、可動金属体32の移動は、リーダライタ装置2が動作しているか否かに関わらずに、継続的に行われることに注目されたい。第1ステップS11の次には、第2ステップS12が実行される。
【0055】
第2ステップS12では、試行回数の初期化を行う。すなわち、通信制御部21の演算装置213が、試行回数をゼロに設定して記憶装置214に書き込む。ここで、試行回数とは、無線読取装置1のリーダライタ装置2が、RF−IDタグ4との間で無線通信を試みる回数である。言い換えれば、無線読取装置1は、たとえRF−IDタグ4との無線通信が成功しなくても、所定の回数までは試行を繰り返す。この回数を、以降、閾値とも呼ぶ。第2ステップS12の次には、第3ステップS13が実行される。なお、第1ステップS11および第2ステップS12を実行する順序は、逆であっても良い。
【0056】
第3ステップS13では、リーダライタ装置2がRF−IDタグ4に向けて要求信号の送信を行う。第3ステップS13の次には、第4ステップS14が実行される。
【0057】
第4ステップS14では、リーダライタ装置2の通信制御部21が、リーダライタ装置2およびRF−IDタグ4の間で通信が成功したか否かを判定する。ここで、RF−IDタグ4が要求信号を受信し、この要求信号に対する応答信号をリーダライタ装置2に向けて送信し、かつ、要求信号の送信から所定の時間が経過するまでの間にリーダライタ装置2がこの応答信号を正しく受信したとき、通信が成功したと判定される。反対に、要求信号の送信から所定の時間が経過するまでに応答信号を正しく受信できなかったときは、通信が成功しなかったと判定される。通信が成功しなかったと判定された場合(NO)は、第4ステップS14の次には第5ステップS15が実行される。通信が成功したと判定された場合(YES)は、第4ステップS14の次には第8ステップS18が実行される。
【0058】
第5ステップS15では、通信制御部21の演算装置213が、試行回数を増加する。言い換えれば、演算装置213が記憶装置214から試行回数を読み出し、1だけインクリメントし、記憶装置214に書き込む。第5ステップS15の次には、第6ステップS16が実行される。
【0059】
第6ステップS16では、通信制御部21の演算装置213が、試行回数が所定の閾値に達したかどうかを判定する。試行回数が閾値未満である場合(YES)は、第6ステップS16の次に第3ステップS13から第6ステップS16までが再度実行される。言い換えれば、リーダライタ装置2は、RF−IDタグ4との通信に成功するまで、または、試行回数が所定の閾値に達するまで、RF−IDタグ4に応答信号を要求する要求信号を、送受信アンテナ23、24から複数回送信する。反対に、試行回数が閾値に達している場合(NO)は、第6ステップS16の次に第7ステップS17が実行される。
【0060】
第7ステップS17では、通信が失敗したと判定し、その後の処理を行う。第7ステップS17が終了すると、
図7のフローチャートも終了する。
【0061】
第8ステップS18では、通信が成功したと判定し、その後の処理を行う。第8ステップS18が終了すると、
図7のフローチャートも終了する。
【0062】
図7のフローチャートの例では、可動金属体32が移動し続けているので、第3ステップS13を繰り返し実行する度に、棚5における定在波の谷の分布は異なっていると期待できる。もしくは、第3ステップS13を繰り返し実行する度に定在波の谷の分布が異なるように、可動金属体32の移動に係る周期と、要求信号の送信を繰り返す周期とを、同期しないように制御することが好ましい。より好ましくは、所定の閾値まで繰り返して送信を行う度に、定在波の谷の分布がそれぞれ異なるように、リーダライタ装置2および指向性調整装置3の動作を調整しても良い。さらに好ましくは、定在波が発生する領域のどの場所においても、所定の閾値まで繰り返して送信を行う間に少なくとも1度は、定在波の谷が存在せずにRF−IDタグ4がリーダライタ装置2との間で無線通信が行えるように、リーダライタ装置2および指向性調整装置3の動作を調整しても良い。こうすることで、本実施形態による無線読取装置1は、RF−IDタグ4からデータを読み取る成功率を向上することができる。
【0063】
これまで、送受信アンテナ23が、その構成が比較的単純な逆F型アンテナである場合について説明した。逆F型アンテナは、放射器232が約4分の1波長の長さを有するため、他のアンテナよりも小型化が比較的容易である、という利点を有する一方で、その偏波が直線偏波であるという特徴を有する。この特徴は、RF−IDタグ4との間で無線通信を行うにあたって、必ずしも有利には働かない。これは、逆F型アンテナが棚5に固定されているときでも、すなわち、その偏波方向が固定されているときでも、RF−IDタグ4が棚5に載置されたときにその偏波方向はランダムになってしまう可能性があるからである。そして、送受信アンテナ23およびRF−IDタグ4の偏波方向が異なれば、両者の間の無線通信における伝搬損失が発生するからである。このような意味において、送受信アンテナ23、24の偏波は円偏波であることが好ましいと考えられる。
【0064】
図8Aを参照して、送受信アンテナ24が円偏波のアンテナである場合について説明する。
図8Aは、一実施形態による送受信アンテナ24および可動金属体33の別の構成例を示す俯瞰図である。
【0065】
図8Aの送受信アンテナ24の構成要素について説明する。送受信アンテナ24は、地板241と、放射器242と、接地線243と、第1給電線244と、第2給電線245と、位相差回路246とを備えている。地板241は、平面状に形成された導体であり、例えば、平面金属板であっても良い。地板241には、好ましくは第1給電線244および第2給電線245がそれぞれ貫通するための2つの穴が設けられている。放射器242は、円盤状に形成された導体であり、言い換えれば円盤形状を有する。放射器242は、好ましくは使用される周波数に対応する波長の2分の1にほぼ等しい直径Rrを有している。接地線243、第1給電線244および第2給電線245のそれぞれは、導体である。位相差回路246は、1つの入力と、2つの出力とを備えており、入出力には双方向性があるため、位相差合成器および同時に位相差分配器として働く。
【0066】
図8Aの送受信アンテナ24の構成要素の接続関係について説明する。
図8Aの直交座標XYZは、
図5の直交座標XYZに対応している。地板241および放射器242は、それぞれ、XY平面に対して平行に配置されている。放射器242の中心は、接地線243の一方の端部に、電気的に接続されている。接地線243の他方の端部は、地板241に電気的に接続されている。接地線243は、その長手方向がZ軸に対して平行になるように配置されていても良い。
【0067】
第1給電線244の一方の端部は、放射器242の中心からY軸方向に所定の距離だけ離れた位置に、電気的に接続されている。第1給電線244の他方の端部は、位相差回路246の第1出力に、電気的に接続されている。第1給電線244は、その長手方向がZ軸に対して平行になるように配置されていても良い。また、第1給電線244は、地板241と導通しないように、地板241に設けられた穴を貫通していても良い。
【0068】
第2給電線245の一方の端部は、放射器242の中心からX軸方向に所定の距離だけ離れた位置に、電気的に接続されている。第2給電線245の他方の端部は、位相差回路246の第2出力に、電気的に接続されている。第2給電線245は、その長手方向がZ軸に対して平行になるように配置されていても良い。また、第2給電線245は、地板241と導通しないように、地板241に設けられた穴を貫通していても良い。送受信アンテナ24は、例えば、誘電体基板の一方の表面に地板241が形成され、他方の表面に放射器242が形成されたマイクロストリップアンテナとして構成されていても良い。
【0069】
位相差回路246の入力は、送受信部22の出力に接続されている。
【0070】
図8Aの送受信アンテナ24の動作について説明する。位相差回路246が、送受信部22から高周波電流を入力する。位相差回路246は、入力した高周波電流を、一方ではそのまま第1出力から第1給電線244を介して放射器242に向けて出力し、他方では位相に90度の遅延を与えて第2出力から第2給電線245を介して放射器242に向けて出力する。
【0071】
ここで、円盤型の放射器242の中心は地板241に接地されている。そして、放射器242の中心と、放射器242の第1給電線244との第1接続部とを通る仮想的な第1半径と、放射器242の中心と、放射器242の第2給電線245との第2接続部とを通る仮想的な第2半径との間の角度は、直角である。その結果、放射器242は円偏波のアンテナとして動作する。言い換えれば、放射器242は円偏波の電磁波を−Z軸方向に放射する。
【0072】
図8Aの可動金属体33について説明する。可動金属体33は、円盤状の導体である。可動金属体33の直径Rmは、例えば、使用する周波数に対応する波長の2分の1弱であっても良い。可動金属体33は、無給電状態であり、送受信アンテナ24を含むリーダライタ装置2にも、移動装置31にも、電気的に導通しておらず、さらに接地もされていないことが好ましい。可動金属体33は、例えば、誘電体基板上に形成された金属膜であっても良く、マイクロストリップアンテナと同様に形成されても良い。
【0073】
可動金属体33は、放射器242に対して平行になるように配置されている。可動金属体33は、例えば、そのX軸方向に対して平行な直径が、放射器242のX軸方向に対して平行な直径を含むXZ平面に含まれるように配置されていても良い。このとき、放射器242の中心点を通り、かつ、Z軸に対して平行である仮想的な直線を、基準線と呼ぶ。また、この基準線が延在する方向を、基準方向と呼ぶ。
【0074】
可動金属体33は、伝達機構313によって、X軸方向に対して平行に移動する。このとき、可動金属体33と、放射器242との間の距離Dは、一定に保たれても良い。
【0075】
指向性調整装置3は、移動装置31によって可動金属体33を移動することによって、送受信アンテナ24の放射指向性を調整することができる。より具体的には、移動装置31が、可動金属体33の、送受信アンテナ24に対する相対的な位置関係を変更することによって、送受信アンテナ24の放射指向性を調整することができる。その結果、送受信アンテナ24から放射される電磁波に由来する定在波の谷の分布を変更することができる。
【0076】
なお、上記に説明した可動金属体33の形状、可動金属体33の放射器242に対する位置関係、ならびに、可動金属体33の移動方向および移動距離は、あくまでも一例であり、本実施形態を限定しない。これらのパラメータは、送受信アンテナ24の放射指向性に所望の調整を行えるように、適宜に設定することが好ましい。
【0077】
図8Bを参照して、可動金属体33の移動方向に係る変形例について説明する。
図8Bは、
図8Aの送受信アンテナ24および可動金属体33の移動の別の一例を示す図である。
【0078】
図8Bの送受信アンテナ24および可動金属体33の構成は、
図8Aの場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。その一方で、
図8Bの例では、可動金属体33の移動方向が、
図8Aの場合と異なる。すなわち、
図8Bの場合は、可動金属体33がXY平面に対して平行に、X軸に平行な方向に限らない任意の方向に直線的に移動しても良い。
【0079】
図8Cを参照して、可動金属体33の移動方向に係る別の変形例について説明する。
図8Cは、
図8Aの送受信アンテナ24および可動金属体33の移動のさらに別の一例を示す図である。
【0080】
図8Cの送受信アンテナ24および可動金属体33の構成は、
図8Aの場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。その一方で、
図8Cの例では、可動金属体33が、Z軸方向に平行な回転軸を中心とする偏心回転運動を行う。すなわち、この回転軸は、可動金属体33の中心から半径ΔRだけ離れた位置を通っている。また、この回転軸は、放射器242の中心を通っている。
【0081】
本実施形態による可動金属体33は、
図8A、
図8Bおよび
図8Cに示したいずれかの移動方法によって移動しても良いし、これらの移動方法を組み合わせた移動を行っても良い。さらに、この組み合わせにおいてはそれぞれの移動方法に所定の重み付けを行っても良い。
【0082】
図9を参照して、可動金属体33の送受信アンテナ24に対する相対位置の変化に応じて送受信アンテナ24の放射指向性が変化することについて説明する。
図9は、一実施形態による無線読取装置1の各状態における送受信アンテナ24の放射指向性の一例を示すグラフである。
【0083】
図9は、第1グラフG1、第2グラフG2および第3グラフG3を含んでいる。第1グラフG1は、可動金属体33が第1位置にあるときの、XZ平面に含まれる各方向における電界強度を示すレーダーチャートである。第2グラフG2は、可動金属体33が第2位置にあるときの、XZ平面に含まれる各方向における電界強度を示すレーダーチャートである。第3グラフG3は、可動金属体33が第3位置にあるときの、XZ平面に含まれる各方向における電界強度を示すレーダーチャートである。なお、
図9に示した直交座標XYZは、
図5などの直交座標XYZに対応している。
【0084】
第1グラフG1において、メインローブの中で電界強度が最も大きい部分は、0度の方向を向いている。ここで、0度の方向は、−Z軸の方向に対して平行である。第2グラフG2において、メインローブの中で電界強度が最も大きい部分は、約15度の方向を向いている。ここで、約15度の方向は、例えば、+X軸方向ベクトルおよび−Z軸方向ベクトルのそれぞれに正の係数で重み付けして合成して得られるベクトルの方向である。第3グラフG3において、メインローブの中で電界強度が最も大きい部分は、約345度の方向を向いている。ここで、約345度の方向は、例えば、−X軸方向ベクトルおよび−Z軸方向ベクトルのそれぞれに正の係数で重み付けして合成して得られるベクトルの方向である。
【0085】
図10A、
図10Bおよび
図10Cを参照して、可動金属体33および送受信アンテナ24の間の相対的な位置関係の変動と、定在波の谷の分布の変化との関係について説明する。
図10Aは、一実施形態による無線読取装置1が第1状態にある場合における、定在波の谷の分布の一例を示すグラフである。
図10Bは、一実施形態による無線読取装置1が第2状態にある場合における、定在波の谷の分布の一例を示すグラフである。
図10Cは、一実施形態による無線読取装置1が第3状態にある場合における、定在波の谷の分布の一例を示すグラフである。
【0086】
図10Aが示す第1状態は、
図9の第1グラフG1に対応しており、また、
図8Aに示した可動金属体33および送受信アンテナ24の位置関係のとおりである。言い換えれば、第1状態において、可動金属体33の中心と、送受信アンテナ24の中心とを結ぶ仮想的な直線は、Z軸に対して平行である。
【0087】
図10Bが示す第2状態は、
図9の第2グラフG2に対応している。第2状態において、可動金属体33は、
図8Aに示した第1状態から、使用される周波数に対応する波長の約2分の1の距離だけ+X軸方向に移動されている。
【0088】
図10Cが示す第3状態は、
図9の第3グラフG3に対応している。第3状態において、可動金属体33は、
図8Aに示した第1状態から、使用される周波数に対応する波長の約2分の1の距離だけ−X軸方向に移動されている。
【0089】
図10A、
図10Bおよび
図10Cのそれぞれにおいて、黒い部分は送受信アンテナ24およびRF−IDタグ4の間で無線通信が行えない不通領域を表している。ここで、電界強度の閾値は−30dBV/mである。言い換えれば、黒い部分は定在波の谷およびその周辺の、電界強度が−30dBV/mより低い領域を表している。また、残る白い部分は、送受信アンテナ24およびRF−IDタグ4の間で無線通信が可能である通信可能領域を表している。
【0090】
図10A、
図10Bおよび
図10Cを比較すると、定在波の分布はそれぞれ異なる。より具体的には、定在波が存在する領域のどの点においても、
図10A、
図10Bおよび
図10Cの少なくともいずれか1つにおいては、通信可能領域に含まれている。したがって、
図7のフローチャートにおける第3ステップS13を、閾値までの回数だけ繰り返す間に、送受信アンテナ24および可動金属体33の位置関係がこれら3つの状態を巡れば、少なくとも1度は送受信アンテナ24および可動金属体33の間で通信が行われることを期待できる。
【0091】
このように、本実施形態によれば、定在波が発生し得る環境においても、送受信アンテナ23、24の近傍に可動金属体32、33を配置し、両者の間の無線通信の試行を、両者の位置関係を適宜に変更しながら複数回行うことで、無線通信の成功率を向上することができる。
【0092】
また、既存のリーダライタ装置2に、本実施形態による指向性調整装置3を追加することによって、同様の効果を得ることが可能であることにも注目されたい。
【0093】
(第2の実施形態)
図11を参照して、別の実施形態による無線読取装置1の構成について説明する。
図11は、一実施形態による無線読取装置1の一構成例を示すブロック回路図である。
【0094】
図11の無線読取装置1は、
図4の無線読取装置1に以下の変更を加えることで得られる。すなわち、リーダライタ装置2の通信制御部21と、指向性調整装置3のモータ制御部311とを、電気的に接続する。より具体的には、
図11の無線読取装置1において、モータ制御部311は通信制御部21の制御下で動作する。
図11の無線読取装置1のその他の構成については、
図4の場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0095】
本実施形態による無線読取装置1では、リーダライタ装置2がRF−IDタグ4との間で無線通信を行うときにだけ、指向性調整装置3が動作する。言い換えれば、リーダライタ装置2がRF−IDタグ4との間で無線通信を行わないときには、指向性調整装置3が動作しない。こうすることで、指向性調整装置3による電力消費を節約し、かつ、伝達機構313および可動金属体32、33の動作に伴う摩耗などの経時変化を抑制することができる。
【0096】
図12を参照して、本実施形態による無線読取装置1の動作、すなわち本実施形態による無線読取方法について説明する。
図12は、一実施形態による無線読取装置1の一動作例を示すフローチャートである。
【0097】
図12のフローチャートは、第1ステップS21から第10ステップS30までの、合計10のステップを含んでいる。これら合計10のステップの一部は、
図7のフローチャートに含まれる第1ステップS11から第8ステップS18の何れかと同様である場合がある。そこで、以降、
図12の一部のステップについては、
図7のいずれかのステップと比較しながら説明する。
図12のフローチャートが開始すると、次に、第1ステップS21が実行される。
【0098】
第1ステップS21では、
図7の第2ステップS12の場合と同様に、試行回数の初期化を行う。第1ステップS21の次には、第2ステップS22が実行される。
【0099】
第2ステップS22では、可動金属体32の移動を開始する。ここで、例えば、リーダライタ装置2の通信制御部21が、可動金属体32の移動を開始するための制御信号を生成してモータ制御部311に向けて出力しても良い。この場合、モータ制御部311が通信制御部21からの制御信号に応じてモータ312を動作させることによって、移動装置31は可動金属体32、33の移動を開始しても良い。
【0100】
なお、
図7および
図12のフローチャートでは、可動金属体32の移動を開始することと、試行回数の初期化を行うこととの順序を入れ替えている。これは、本実施形態では送信の直前に可動金属体32の移動を開始することで、可動金属体32の移動時間を最短化するためである。言い換えれば、
図12のフローチャートにおいて第1ステップS21および第2ステップS22の順序を入れ替えても良い。第1ステップS21および第2ステップS22の次には、第3ステップS23が実行される。
【0101】
第3ステップS23では、
図7の第3ステップS13の場合と同様に、リーダライタ装置2がRF−IDタグ4に向けて要求信号の送信を行う。第3ステップS23の次には、第4ステップS24が実行される。
【0102】
第4ステップS24では、
図7の第4ステップS14の場合と同様に、リーダライタ装置2の通信制御部21が、RF−IDタグ4との間で通信が成功したか否かを判定する。通信が成功しなかったと判定された場合(NO)は、第4ステップS24の次には第5ステップS25が実行される。通信が成功したと判定された場合(YES)は、第4ステップS24の次には第9ステップS29が実行される。
【0103】
第5ステップS25では、
図7の第5ステップS15の場合と同様に、通信制御部21の演算装置213が、試行回数を増加する。第5ステップS25の次には、第6ステップS26が実行される。
【0104】
第6ステップS26では、
図7の第6ステップS16の場合と同様に、通信制御部21の演算装置213が、試行回数が所定の閾値に達したかどうかを判定する。試行回数が閾値未満である場合(YES)は、第6ステップS26の次に第3ステップS23から第6ステップS26までが再度実行される。反対に、試行回数が閾値に達している場合(NO)は、第6ステップS26の次に第7ステップS27が実行される。
【0105】
第7ステップS27では、可動金属体32、33の移動を停止する。ここで、通信制御部21が、RF−IDタグ4への要求信号を表す電磁波の送信を終了する際に、可動金属体32、33の移動を停止するための制御信号を生成してモータ制御部311に向けて出力しても良い。この場合、モータ制御部311が通信制御部21からの制御信号に応じてモータ312を動作させることによって、移動装置31は可動金属体32、33の移動を停止しても良い。第7ステップS27の次には、第8ステップS28が実行される。
【0106】
第8ステップS28では、
図7の第7ステップS17の場合と同様に、通信が失敗したと判定し、その後の処理を行う。第8ステップS28が終了すると、
図12のフローチャートも終了する。
【0107】
第9ステップS29では、第7ステップS27の場合と同様に、可動金属体32、33の移動を停止する。第9ステップS29の次には、第10ステップS30が実行される。
【0108】
第10ステップS30では、
図7の第8ステップS18の場合と同様に、通信が成功したと判定し、その後の処理を行う。第10ステップS30が終了すると、
図12のフローチャートも終了する。
【0109】
なお、
図12のフローチャートの第2ステップS22では、モータ制御部311は通信制御部21からの制御信号とは別の制御信号に応じてモータ312の制御を行っても良い。例えば、指向性調整装置3は、図示しないアンテナをさらに備えていても良い。このアンテナを用いて、送受信アンテナ23、24がRF−IDタグ4に向けた要求信号を示す電磁波を出力したことを検知し、この検知結果に基づいて、モータ制御部311はモータ312の制御を行っても良い。
【0110】
このように、本実施形態の場合も、定在波が発生し得る環境において、送受信アンテナ23、24の近傍に可動金属体32、33を配置し、両者の間の無線通信の試行を、両者の位置関係を適宜に変更しながら複数回行うことで、無線通信の成功率を向上することができる。さらに、本実施形態によれば、リーダライタ装置2が指向性調整装置3を制御することによって、可動金属体32、33が移動する時間を、リーダライタ装置2およびRF−IDタグ4の間で無線通信を行っている期間だけに限定することが可能となる。このことは、指向性調整装置3の消費電力を節約することに繋がり、また、指向性調整装置3の寿命を延ばすことに繋がる。
【0111】
また、本実施形態の場合も、既存のリーダライタ装置2に、本実施形態による指向性調整装置3を追加することによって、同様の効果を得ることが可能であることにも注目されたい。
【0112】
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、前記実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。