特開2020-195273(P2020-195273A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大銀微系統股▲分▼有限公司の特許一覧

<>
  • 特開2020195273-回転電機のコイル絶縁構造 図000003
  • 特開2020195273-回転電機のコイル絶縁構造 図000004
  • 特開2020195273-回転電機のコイル絶縁構造 図000005
  • 特開2020195273-回転電機のコイル絶縁構造 図000006
  • 特開2020195273-回転電機のコイル絶縁構造 図000007
  • 特開2020195273-回転電機のコイル絶縁構造 図000008
  • 特開2020195273-回転電機のコイル絶縁構造 図000009
  • 特開2020195273-回転電機のコイル絶縁構造 図000010
  • 特開2020195273-回転電機のコイル絶縁構造 図000011
  • 特開2020195273-回転電機のコイル絶縁構造 図000012
  • 特開2020195273-回転電機のコイル絶縁構造 図000013
  • 特開2020195273-回転電機のコイル絶縁構造 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-195273(P2020-195273A)
(43)【公開日】2020年12月3日
(54)【発明の名称】回転電機のコイル絶縁構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20201106BHJP
   H02K 3/48 20060101ALI20201106BHJP
【FI】
   H02K3/34 C
   H02K3/48
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-101601(P2019-101601)
(22)【出願日】2019年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】514150181
【氏名又は名称】大銀微系統股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HIWIN MIKROSYSTEM CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】連家祥
(72)【発明者】
【氏名】潘承訓
(72)【発明者】
【氏名】頼明志
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC14
5H604DA15
5H604DB01
5H604DB15
5H604DB26
5H604PB03
5H604QC01
(57)【要約】
【課題】 本発明は回転電機のコイル絶縁構造を得ることにある。
【解決手段】 本発明が提供する回転電機のコイル絶縁構造は、従来の絶縁技術を基にした、特にコイル巻線が環装されるコアティース部が鍔部を持たないストレートティース構造であって、且つコイル巻線のあるスロット開口部の位置に絶縁効果を有する部材をさらに追加することで絶縁効果を高めると同時に、コイル巻線の封止時にモータのエアギャップの隣接部分に位置する内層の厚みのサイズを追加した絶縁部材が確保することで製品の品質を向上させている。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のヨーク部を有し、複数のティース部が前記ヨーク部の内周面から内側に向かって放射状を呈して突出しており、複数のスロットの各々は隣接する前記ティース部の間に位置し、且つ前記ティース部の自由端には鍔部を設けていない、コアと、
各々が各前記ティース部に環装され、且つ隣接するスロット中に位置しており、環形状を呈した複数のコイル巻線と、
各々が各前記スロット中に位置し、且つ各前記コイル巻線と各前記ヨーク部の間、及び各前記コイル巻線と各前記ティース部の間に位置している、片状を呈した複数の第1絶縁部材と、
各前記スロット中に注入され、前記コイル巻線をコア上に封止する、シール材と、を含み、
さらに、
各々が前記スロットのスロット開口部側に位置し、且つ片側が隣接する前記コイル巻線の片側に接着される、複数の第2絶縁部材を含み、さらに、
前記シール材は、各前記コイル巻線において前記ヨーク部の曲率中心に近い側に対応する内層の厚みが、前記ヨーク部の半径方向に対応する各前記第2絶縁部材の厚み以上であることを特徴とする、回転電機のコイル絶縁構造。
【請求項2】
各前記第2絶縁部材は、各々が絶縁片を有し、2つの挿入片の各々が前記絶縁片の両側に突設され、且つ対応する前記スロット中に挿入されて、対応する前記コイル巻線とスロット壁の間に位置していることを特徴とする、請求項1に記載の回転電機のコイル絶縁構造。
【請求項3】
前記絶縁片の片体の厚みは前記内層の厚みを決定するのに用いられることを特徴とする、請求項2に記載の回転電機のコイル絶縁構造。
【請求項4】
前記内層の厚みは前記絶縁片の片体の厚み以上であることを特徴とする、請求項2に記載の回転電機のコイル絶縁構造。
【請求項5】
各々が各前記第2絶縁部材と各前記コイル巻線の間に位置する、片状の複数の第3絶縁部材をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の回転電機のコイル絶縁構造。
【請求項6】
前記ヨーク部の軸方向に沿った各前記第3絶縁部材の長さは各前記ティース部の高さよりも大きく、且つ各前記絶縁部材の長軸の両端は各前記ティース部の外側に突出していることを特徴とする、請求項5に記載の回転電機のコイル絶縁構造。
【請求項7】
各前記第3絶縁部材の長軸の両端の片体幅は、前記絶縁片の片体幅よりも大きいことを特徴とする、請求項6に記載の回転電機のコイル絶縁構造。
【請求項8】
前記シール材で注入封止を行う前に、各前記第2絶縁部材により各前記コイル巻線に対し半径方向に外力を加えて、各前記コイル巻線を前記ヨーク部の曲率中心から離れた別の側である前記ヨーク部の内周面に向かって変位させることで、スロット充填率を高めることを特徴とする、請求項1に記載の回転電機のコイル絶縁構造。
【請求項9】
前記半径方向の外力は前記コア中に穿伸される治具によって提供されるものであることを特徴とする、請求項8に記載の回転電機のコイル絶縁構造。
【請求項10】
前記治具は柱状を呈し、且つ柱の側面が各前記第2絶縁部材と接着されることを特徴とする、請求項9に記載の回転電機のコイル絶縁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転電機の絶縁技術に関し、特に回転電機のコイル絶縁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明が属する技術分野の当業者であれば公知であるが、回転電機のコギングトルク(Cogging Torque)の大きさとステータスロット開口部の大きさとの間には正の相関関係が存在しており、小さなコギングトルクを得るため、鍔を有するステータティースの鍔幅を増やすことでステータスロット開口部のサイズを小さくするが、ステータスロット開口部が小さすぎてステータコイルの卷回時に妨げとなるため、自動卷回機でエナメル線をステータティースに直接卷回するしかなかった。
【0003】
しかし、こうした自動卷回技術は、卷回機に十分な操作空間を提供しなければならず、スロット空間の利用という面で理想的ではなかったが、これに対して、外部で予め卷回を完了させたコイルを鍔のないステータティース構造に直接被せることも可能であり、そうすることでスロット空間を最大限利用することができ、鍔を有するステータティース構造よりも高いスロット充填率が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、絶縁効果を向上できるだけでなく、スロット充填率を向上させることもできる、回転電機のコイル絶縁構造を提供することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明が提供する回転電機のコイル絶縁構造は、従来の絶縁技術を基にした、特にコイル巻線が環装されるコアティース部が鍔部を持たないストレートティース構造であって、且つコイル巻線のあるスロット開口部の位置に絶縁効果を有する部材をさらに追加することで絶縁効果を高めると同時に、コイル巻線の封止時にモータのエアギャップの隣接部分に位置する内層の厚みのサイズを追加した絶縁部材が確保することで製品の品質を向上させている。
【0006】
具体的な技術内容として、回転電機のコイル絶縁構造は、コア、複数のコイル巻線、複数の第1絶縁部材、複数の第2絶縁部材及びシール材を含む。そのうち、コアは環状のヨーク部を有し、且つ長さが互いに等しい複数のティース部をヨーク部の内周面から内側に向かって放射状に突出させることで、隣接し合う各ティース部の間にコイル巻線の収容に供するスロットをそれぞれ形成しており、さらに各ティース部は構造において従来構造のような鍔部を有さず、これにより各スロットの開口幅をスロット自体の幅と似通わせて、外部で卷回済みのコイル巻線を容易に被せられるようにしている。
【0007】
各第1絶縁部材のそれぞれは各スロット中に位置し、且つ各コイル巻線と各ヨーク部の間、及び各コイル巻線と各ティース部の間に位置している。
【0008】
各第2絶縁部材のそれぞれはスロットのスロット開口部側に位置し、且つ片側を隣接するコイル巻線の片側に接着する。
【0009】
シール材は、各スロット中に注入してコイル巻線をコア上に封止し、且つ各コイル巻線においてヨーク部の曲率中心に近い側に位置する内層の厚みを第2絶縁部材の個々の厚みによって決定させるものである。
【0010】
さらに、各第2絶縁部材は、各々が絶縁片を有し、2つの挿入片の各々が絶縁片の両側に突設され、且つ対応するスロット中に挿入されて、対応するコイル巻線とスロット壁の間に位置している。そのうち、絶縁片の片体の厚みは、内層の厚みを決定するためのものである。
【0011】
また、スロット充填率を高め、且つ内層に適当な厚みを持たせるため、スロット中に位置する第1絶縁部材の片体の厚みを絶縁片の片体の厚みよりも小さくすることができる。
【0012】
また、絶縁効果をより高めるため、各第2絶縁部材と各コイル巻線の間に第3絶縁部材をそれぞれ増設することができる。
【0013】
そのうち、ヨーク部の軸方向に沿った各第3絶縁部材の長さは各ティース部の高さよりも大きく、且つ各絶縁部材の長軸の両端は各ティース部の外側に突出している。また、各第3絶縁部材の長軸の両端の片体幅は、絶縁片の片体幅よりも大きくすることができる。
【0014】
組立加工の実施においては、シール材で注入封止を行う前に、各第2絶縁部材により各コイル巻線に対し半径方向に外力を加えて、各コイル巻線をヨーク部の曲率中心から離れた別の側であるヨーク部の内周面に向かって変位させることで、スロット充填率を高める。
そのうち、半径方向の外力はコア中に穿伸される治具によって提供されるものである。
【0015】
そのうち、治具は柱状を呈し、且つ柱の側面が各第2絶縁部材と接着される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の好ましい実施例1の立体図である。
図2】本発明の好ましい実施例1の分解図である。
図3】本発明の好ましい実施例1中の第1絶縁部材の立体図である。
図4】本発明の好ましい実施例1中の第2絶縁部材の立体図である。
図5】本発明の好ましい実施例1中のコイル巻線と第1絶縁部材及び第2絶縁部材の組み合わせの概略斜視図である。
図6】本発明の好ましい実施例1の部分断面図であり、治具でシール材を注入する前の状態を示している。
図7】本発明の好ましい実施例1の部分断面図であり、治具でコアを挿入し、且つコイル巻線を内押しすることを示している。
図8】本発明の好ましい実施例1の部分断面図であり、治具でシール材を注入した状態を示している。
図9】本発明の好ましい実施例2中の第1絶縁部材、第2絶縁部材及び第3絶縁部材の部材を組み立てた立体図である。
図10】本発明の好ましい実施例2中の第1絶縁部材、第2絶縁部材及び第3絶縁部材の部材を分解した立体図である。
図11】本発明の好ましい実施例3中の第1絶縁部材、第2絶縁部材及び第3絶縁部材の部材を組み立てた立体図である。
図12】本発明の好ましい実施例3中の第1絶縁部材、第2絶縁部材及び第3絶縁部材の部材を分解した立体図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
始めに図1図5を参照して、本発明の好ましい実施例1中で提供する回転電機のコイル絶縁構造(10)は、主にコア(20)、複数のコイル巻線(30)、複数の第1絶縁部材(40)及び複数の第2絶縁部材(50)を含む。
【0018】
コア(20)は従来技術の珪素鋼板を積層して構成するコアと同様、円筒状を呈するヨーク部(21)を有し、複数のティース部(22)がヨーク部(21)の内周面から中心に向かって放射状を呈して適当な長さに伸びており、且つ構造上、伸びた先端に鍔部を設けた構成を有さないことで、隣接するティース部(22)の間にそれぞれ形成されるスロット(23)の開口幅をスロット自体の幅と似通わせており、コイル巻線(30)の卷回をコア(20)の外で事前に完成させた上で各々を各ティース部(22)に環装することを可能とし、且つ両側のスロット空間によって収容させている。
【0019】
各コイル巻線(30)は、各ティース部(22)のサイズに基づき、自動化機器又は手作業による方法によって事前にエナメル線の卷回を完成させたものである。
【0020】
図3に示す通り、各第1絶縁部材(40)は、絶縁紙のカット加工を経てコの字型に成形した板状体であり、その形状及びサイズは各スロット(23)中に嵌め込むのに適しており、且つ各スロット(23)のスロット底側に当接し、スロット中に位置するコイル巻線(30)とヨーク部(21)の間、及びコイル巻線(30)と隣接するティース部(22)の間に位置させており、第1絶縁部材(40)によって絶縁が得られる。
【0021】
図4に示す通り、各第2絶縁部材(50)もまた絶縁紙のカット加工を経てコの字型に成形した板状体であり、各々は長さがティース部の高さと同程度且つ矩形板状の絶縁片(51)、及び絶縁片(51)の短軸の両端から突出した挿入片(52)を有しており、これらの構造は、各挿入片(52)によって各第2絶縁部材(50)のそれぞれを対応するスロット(23)中に容易に挿入可能にさせるとともに、各々をコイル巻線(30)と第1絶縁部材(40)の間に位置させるものであり、挿入して一時的な結合が得られたと同時に、絶縁片(51)がスロット開口部を閉鎖し、片側の片面(511)が向かい合うコイル巻線(30)と接着され、各第2絶縁部材(50)により、各コイル巻線(30)の回転電機のエアギャップがある側面部分に対する絶縁を形成することができる。
【0022】
図5を参照して、各コイル巻線(30)の各々をティース部(22)に環装し、且つ各第1絶縁部材(40)及び各第2絶縁部材(50)によって絶縁を提供した後に、柱状の治具(60)でコア(20)中に挿入し、且つ治具(60)の柱の側面を各絶縁片(51)のもう一方の片面(512)に接着させて、同時に各絶縁片(51)経由で半径方向位相推力を加え、各コイル巻線(30)をヨーク部(21)方向に向かって押し、スロット空間中に収容させることで、最も高いスロット充填率を得ている。
【0023】
次に、図8に示す通り、エポキシ樹脂などの従来物品のシール材(70)を各スロット(23)中に注入して各コイル巻線(30)を封止するが、これと同時に、各絶縁片(51)によって治具(60)と各コイル巻線(30)の間に間隔を形成することで、シール材(70)による封止完了後、それの各コイル巻線(30)においてヨーク部(21)の曲率中心に近い側に対応する内層(71)の厚みが、ヨーク部(21)の半径方向に対応する絶縁片(51)の厚み以上となるよう確保することができ、各コイル巻線(30)が受ける封止保護の効果を確実に強化できるようにしている。
【0024】
これについてさらに説明すると、スロット空間をコイル巻線の収容に最大限用いるため、第1絶縁部材(40)の紙の厚みを最小化することができる。また絶縁片(51)は、絶縁機能を提供するだけでなく、内層(71)の厚みを制御する目的も有しており、且つその厚みのスロット充填率に対する影響は比較的小さいため、例えば絶縁片(51)の厚みを第1絶縁部材(40)の厚みよりも大きくするなど、実際の必要に応じて厚みを設定することができる。
【0025】
絶縁効果をより高めるため、本発明の好ましい実施例2及び好ましい実施例3では、それぞれ第3絶縁部材(80a)(80b)を追加することでコイル巻線の絶縁効果を高めている。
【実施例2】
【0026】
図9及び図10に示す通り、本発明の好ましい実施例2中で追加する複数の第3絶縁部材(80a)は、各々の長さがティース部の高さよりも大きな板状体であり、且つ各々を対応する各絶縁片(51a)の片側の片面(511a)に接着することで、片側の片面(511a)が代わりに対応する各コイル巻線に接着され、同時に長軸の両端を各ティース部の外側に突出させることで、各コイル巻線に対してより大きな範囲の絶縁保護効果を提供している。
【実施例3】
【0027】
また図11及び図12に示す通り、本発明の好ましい実施例3中で追加する複数の第3絶縁部材(80b)の構造は上述の好ましい実施例2とほぼ一致しているが、相違点として、本実施例では、第3絶縁部材(80b)の長軸の両端(801b)の片体幅がそれぞれ各絶縁片(51b)の片体幅よりも大きく、これによりコイル巻線に対して提供可能な絶縁効果をいっそう強化させている。
【符号の説明】
【0028】
10 回転電機のコイル絶縁構造
20 コア
21 ヨーク部
22 ティース部
23 スロット
30 コイル巻線
40 第1絶縁部材
50 第2絶縁部材
51、51a、51b 絶縁片
511、511a 片側の片面
512 もう一方の片面
52 挿入片
60 治具
70 シール材
71 内層
80a、80b 第3絶縁部材
801b 長軸の両端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12