【解決手段】防煙垂れ壁10は、一方面12aと対抗する他方面12bとを有する矩形の2枚の合わせガラスで構成された導光板11と、導光板11をその下端で長手方向に連続して保持するアルミ製の金具21と、を含み、導光11をその上端で長手方向に連続して保持するアルミ製の天井バー22で保持される。防煙垂れ壁10は、複数の導光板11が間に接続材を挟んで横方向に連続して一体的に構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の防炎機能を有する照明装置は、一般に、上記のようにアクリル板の導光板で構成されていた。導光板としてアクリル板のような基板を用いると、樹脂製のため、硬度が低く、吸水性があるため、傷が付きやすく、白濁が生じて導光板が異常発光したり、紫外線による品質の劣化が生じ長期間の使用ができないとか、照度低下が起こるという問題があった。また、導光板自体の問題以外に、防炎シートを用いる必要があるために手間やコストがかかるとともに、十分な防炎性能が維持できないという問題があった。
【0005】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、品質の劣化が生じることなく、十分な防炎性能を有するとともに、コストのかからない、防煙垂れ壁、および防煙垂れ壁の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る防煙垂れ壁は、ガラスで構成された導光板と、導光板を天井の所定位置に固定する固定装置と、を含む。
【0007】
好ましくは、導光板は照明装置として機能する。
【0008】
さらに好ましくは、ガラスは合わせガラスを含み、合わせガラスは中間層を含む。
【0009】
中間層はエチレンビニールアセテートを含んでもよい。
【0010】
この発明の1つの実施の形態によれば、ガラスは複層ガラスを含み、複層ガラスは間に不活性ガスを含む。
【0011】
複層ガラスはその間をブチルゴム系圧接材で離間してもよい。
【0012】
導光板は、所定の表示を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明においては、防煙垂れ壁は、ガラスで構成された導光板を用いるため、従来の樹脂製における、硬度が低く、吸水性があるため、傷が付きやすいとか、白濁が生じて導光板が異常発光したり、紫外線による品質の劣化が生じ長期間の使用ができないとか、照度低下といった問題が生じない。
【0014】
その結果、品質の劣化が生じることなく、十分な防炎性能を有するとともに、コストのかからない、防煙垂れ壁を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1はこの発明の一実施の形態に係る防煙垂れ壁10を示す図である。
図1(A)は防煙垂れ壁10の断面図(
図1(B)において矢印IA−IAで示す図)であり、
図1(B)は
図1(A)において矢印IB−IBで示す矢視図であり、
図1(C)は
図1(A)において矢印ICで示す部分の拡大図である。
【0017】
図1を参照して、防煙垂れ壁10は、天井24の下部に、天井から間隔を開けて設けられた天井仕上げ面23の下方に保持される。具体的には、防煙垂れ壁10はその上端を天井バー(固定装置)22で保持されている。
【0018】
天井バー22は、中央に導光板11の上端部を上端から一定の距離だけ挟んで保持するコの字状の保持部22aと、保持部22aの下端部から水平方向に所定の距離だけ伸び、その後上方向に伸びる形状のフランジ部22bと、を含む。フランジ部22bの上方向に伸びた部分の上端部は、天井仕上げ面23を下から支持するように構成されている。
【0019】
天井仕上げ面23は、一定の寸法を有する、複数の矩形の天井仕上げ面23a,23bが所定の間隔を開けて天井24から吊金具28で保持され、複数の矩形の天井仕上げ面23a,23bの間の空間に、天井バー22が挿入され、天井バー22は天井24の上部に設けられたアングル25に吊りボルト26および吊ナット27で保持される。なお、吊ナット27は、天井バー22のコの字状の保持部22aに接続されている。
【0020】
次に、防煙垂れ壁10について説明する。防煙垂れ壁10は、一方面12aと対向する他方面12bとを有する矩形の2枚の合わせガラス(42,43、詳細は
図4(A)参照)で形成された導光板11と、導光板11をその下端で長手方向に連続して保持するアルミ製の受け金具21と、を含み、導光板11をその上端で長手方向に連続して保持するアルミ製の天井バー22で保持される。防煙垂れ壁10は、複数の導光板11,11・・・が間に接続材16(例えば、シリコンシーラント)を挟んで横方向に連続して一体的に構成されている。
【0021】
具体的には、
図1(C)に示すように、2枚のガラス42,43の下端部は、例えば、鉄等で構成されたコの字状のガラス受け金具28aで保持され、その外部が受け金具21でカバーされる。受け金具21は対向して配置され、その上端部が相互に近接、離隔可能な鍔21a,21bを有し、この鍔21a,21bがガラス受け金具28aのコの字状の上端部に係合可能である。受け金具21は、高さ方向の略中央に対向する突起部21c,21dを有し、この突起部21c,21dに、例えばアルミ製のフラットなバー29を渡して、その上にLEDの光源20を配置する。受け金具21の底部21eと突起部21c,21dとの間の空間にLEDの光源20用の配線を配置する。
【0022】
なお、受け金具21やアルミ製のフラットなバー29は、ヒートシンクとして機能する。
【0023】
次に、導光板11について説明する。
図2(A)は
図1(A)に示した導光板11の断面を示す図(または、
図2(B)において、矢印IIA-IIAで示す方向から見た図)であり、
図2(B)はそれを
図1(B)(または、
図2(A)において、矢印IIB-IIB)で示す方向から見た平面図である。
【0024】
図2を参照して、導光板11は、導光板11の一方面12a側に設けられたセラミックインクで印刷されたドットパターン(ドット状の印刷パターン)13a・・・13dと、導光板11の一方面12a及び対向する他方面12bを接続する端面に導光板11に対向した位置に設けられたLED光源20と、を含む。
【0025】
ここで、ドットパターン13はそこに入射した光を外部へ散乱させるために設けられている。すなわち、LED光源20から導光板11に照射された光は導光板11の一方面および他方面で反射されて図中矢印に示す方向に光を伝播する。このとき、ドットパターン13に入射した光はその点で外部へ散乱される(図中点線aで示す)。したがって、このドットパターン13の設けられた位置から光が外部に放射される。また、ドットパターン13に入射した光の一部は図中点線bで示すように、他方面12bから外部へ照射される。
【0026】
なお、導光板11が光源20から離れた位置まで延在するときは、このドットパターン13を設ける間隔d1、d2,…はd1<d2<d3<…となるように配置される。このようにドットパターン13を設けることにより、光源20から離れた位置まで、導光板11の両面において均一な光量での照射が可能になる。
【0027】
また、ここでは、ドットパターン13を一方面12a側にのみ設けたが、他方面12b側にも設けてもよい。そうすれば、両面での光の照射量が増加するため、より明るい照明装置10が提供できる。
【0028】
なお、光源20は、光源20の長手方向(
図2(B)において左右方向)に複数のLEDが設けられている。
【0029】
また、ここでは、LEDの光源20は導光板11の1つの端面(下端部)に設けたが、これに限らず、上端部に設けてもよい。
【0030】
この実施の形態に係る防煙垂れ壁10は、光を照射する導光板11が透過性を有するガラスで形成され、その一方面12aのみにセラミックインクで印刷されたドットパターン13a,13b、…が設けられ、且つ、ドットパターン13a,13b,…が設けられた面自体が発光面として作用するため、一方面および他方面からの面発光が可能であるとともに、透過性を有する。
【0031】
その結果、透過性を有するとともに、照明装置として利用できる防煙垂れ壁10を提供できる。
【0032】
なお、導光板11として使用するガラスは、不純物が少なく、透過性に優れ、且つ透明度の高い、白ガラスを使用するのが好ましい。
【0033】
次に、導光板の種類について説明する。
図3は、導光板11の種類を示す図である。
図3を参照して、ここでは、導光板を、強化ガラスで製造した場合(
図3(A)および
図3(B))、合わせガラスで製造した場合(
図3(C)および
図3(D))、および複層ガラスで製造した場合(
図3(E)および
図3(F))について説明する。なお、ここでは、光源20の位置は、
図2とは逆転している。
【0034】
図3(A)(平面図)および
図3(B)(
図3(A)の矢印IIIA-IIIAで示した断面図)を参照して、強化ガラスで製造した導光板11aの上部の点はLEDの光源20を示し、導光板11aの内部の点はドットパターン13を示す。ここでは、導光板11は強化ガラス41で製造されている。導光板11を強化ガラスで製造する場合は、約800度の高温処理を行い、堅牢なドットを生成する、強化ガラスのため安全性が高く、一般的なフロート板ガラスに比べ3〜5倍程度の強度を持つガラスである。
【0035】
導光板11としては、上記の3つの種類が存在するが、防煙垂れ壁10として使用可能な導光板11は、合わせガラスか、または複層ガラスで製造する必要がある。これは、防煙垂れ壁は、消防法上、破損時にばらばらになるガラスは使用できないためである。
【0036】
そこで、以下では、防煙垂れ壁を合わせガラス、または複層ガラスで製造する場合について説明する。
【0037】
図3(C)(平面図)および
図3(D)(
図3(C)の矢印IIIC-IIICで示した断面図)を参照して、導光板11の上部の点はLEDの光源20を示し、導光板11の内部の点はドットパターン13を示す。ここでは、導光板11は合わせガラスで製造されている。この場合、2枚のガラス42,43の間に中間層44が設けられ、ドットパターンは一方のガラス42の中間層44側に形成されているが、他方のガラス43の中間層44側に設けても良い。
【0038】
次に複層ガラスを用いた場合について説明する。
図3(E)(平面図)および
図3(F)(
図3(E)の矢印IIIE-IIIEで示した断面図)を参照して、導光板11の上部の点はLEDの光源20を示し、導光板11の内部の点はドットパターン13を示す。ここでは、導光板11は2枚のガラス46、47の間にスペーサ50で間隔を保持するように製造されている。この場合、2枚のガラス46,47の間にはガス48が充填される。
【0039】
また、ここでは、ドットパターンは一方のガラス46の内側に形成されているが、他方のガラス47の内側に設けても良い。
【0040】
次に、
図3(C)〜(F)で説明した、防煙垂れ壁10を合わせガラスか、または複層ガラスで製造した場合の詳細について説明する。
【0041】
図4は、防煙垂れ壁を合わせガラス、および複層ガラスで構成した場合の詳細を示す図である。
図4(A)は、合わせガラスで構成した場合の図であり、
図4(B)は複層ガラスで構成した場合の図であり、それぞれ、
図3(D)および
図3(F)に対する。
【0042】
図4(A)を参照して、合わせガラスで構成された防煙垂れ壁10aは、対向して配置された2枚のガラス42,43と、その間に設けられた中間層44と、一方のガラス42の下端部に設けられたLEDの光源20と、を含む。
【0043】
ここで、中間層としては、EVA(エチレンビニールアセテート)が使用されている。この場合、合わせガラスとするために、約100℃の低温接着が可能であり、かつ、内部の空気の残りが少ない透明性の高い中間層を形成でき、LEDの光の変色を抑え、自然な発光色を提供できるという効果がある。
【0044】
また、合わせガラスを用いた場合、ガラスの内部にシルク印刷を施してあるため、特殊インクが剥がれたり経年変化することがない。
【0045】
次に、複層ガラスについて説明する。
図4(B)を参照して、複層ガラスで構成された防煙垂れ壁10bは、対向して配置された2枚のガラス46,47と、2枚のガラス46,47の間の空間を維持するために、導光板11の上下の端部に設けられたスペーサ50と、2枚のガラス46,47の間の空間に充填されたガス48と、一方のガラス46の下端部に設けられたLEDの光源20と、を含む。
【0046】
ここで、スペーサ50は、枠フレーム51と、枠フレーム51の周囲を覆うように設けられたブチルゴム系圧接材を含む。ブチルゴム素材で枠フレーム51を覆うことで、LEDの反射による枠フレーム51の発光を抑えることができる。
【0047】
ここで、ガス48としては、不活性ガスが充填される。不活性ガスを充填することで、内部の結露や素材の化学変化を抑えることが可能になる。
【0048】
また、複層ガラスを用いた場合、ガラスの内部にシルク印刷を施してあるため、特殊インクが剥がれたり経年変化することがない。
【0049】
次に、この実施の形態に係るガラスで構成された導光板を用いた防煙垂れ壁10の製造方法について説明する。ここでは、まず、合わせガラスを用いた場合について説明する。
【0050】
図5はこの実施の形態に係る合わせガラスで構成された導光板の製造工程をステップごとに示す図である。
図5を参照して、まず、導光板用のガラスを準備する(ステップS11、以下、ステップを省略する)。次に、ガラスの所定の位置に、セラミックインクを用いてドットを印刷する。このセラミックインクはチタンのような無機顔料を含むのが好ましい(S12)。次に、セラミックのインクで印刷されたガラスを700〜800℃に加熱してインクとガラスとを一体化させる(S13)。次に、ガラスの合わせ処理を行う(S14)。具体的には、2枚のガラス42,43の間に中間層44としてEVAを挟む。この場合、約100℃の低温で接着できる。
【0051】
このようにして、合わせガラスを用いた導光板11aで防煙垂れ壁10aが製造できる(S15)。
【0052】
同様に、複層ガラスで構成された導光板の製造工程を説明する。
図5を参照して、導光板用のガラスを準備するステップS11や、ガラスの所定の位置に、セラミックインクを用いてドットを印刷するステップや、インクで印刷されたガラスを700〜800℃に加熱してインクとガラスとを一体化させるステップ(S13)は同様である。次に、ガラスの合わせ処理の代わりにブチルゴム系圧接材で枠フレーム51を覆ったスペーサ50で2枚のガラスを接着し、そのスペースにアルゴンガスを充填する(S14)。
【0053】
このようにして、複層ガラスを用いた導光板11bで防煙垂れ壁10bが製造できる(S15)。
【0054】
次に、この発明の他の実施の形態について説明する。
図6はこの発明の他の実施の形態に係る導光板11aを示す図である。
図6(A)および
図6(B)は、先の実施の形態における
図1(A)および
図1(B)に対応する。
【0055】
図6(A)および
図6(B)を参照して、この実施の形態においては、
図1の実施の形態とドットパターン13が設けられる照明領域14が異なる点が異なる。すなわち、先の実施の形態においては、照明装置10全体が照明領域であったが、この実施の形態においては、照明装置10aの中央部のみに照明領域14が設けられ、照明領域14を囲んで透明領域15が設けられている。それ以外の点については先の実施の形態と同様であるので、
図1に対応する部分に
図1と同じ参照符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
導光板11aをこのような構成とすることにより、防煙垂れ壁10の全体を照明装置とすることなく、ドットパターンを設けた照明領域14のみを照明可能な領域とし、それ以外の部分を透明な領域として残すことが可能になる。なお、照明領域14は導光板11の中央部に限らず、その任意の一部に設けてもよい。
【0057】
また、照明領域14の形状を特定の文字や特定の形状とすることによって、防煙垂れ壁10自体を広告装置や、防煙垂れ壁10が設けられる場所の表示としても利用可能である。
図7は、防煙垂れ壁10を病院等に使用した場合の表示例を示す図である。
図7を参照して、この実施の形態においては、照明領域14に特定の文字17を表示している。「ナースステーション」等の病院の部門や、「14F(階)」等階数表示や、「避難方向」の表示18等が防煙垂れ壁10に可能になり、消防法で設置が義務づけられている防煙垂れ壁でありながら、デザイン性の優れた、照明を兼ねた装置が提供できる。
【0058】
その結果、単に照明装置を含むだけでなく、近くに居る人にとって、その場所や、行き先等の有用なガイド表示が可能な防煙垂れ壁を提供できる。
【0059】
上記実施の形態においては、光源としてLEDを用いた場合について説明したが、これに限らず、蛍光灯や、冷陰極線管等を光源として用いてもよい。
【0060】
なお、上記した実施の形態においては、防煙垂れ壁について説明したが、これに限らず、防煙垂れ壁に用いた導光板を複数連続して設け、耐火性のある照明装置付の建物の手摺りとしたり、大型の照明装着としたり、所望の広告を表示した照明装着としてもよい。
【0061】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。