【解決手段】アクチュエータ1は、可動体6および支持体2に接続された接続体9と、可動体6を支持体2に対して振動させる磁気駆動回路10を備える。アクチュエータ1は、可動体6が支持体2に対して第1方向Zに交差する第2方向Xに振動する際の共振周波数fAと、可動体6が支持体2に対して第2方向Xに直交する第3方向Yに振動する際の共振周波数fBとが異なる。例えば、接続体9の一部(第2接続体92)は、可動体6が第2方向Xに振動する際に、せん断方向に変形し、可動体6が第3方向Yに振動する際に、伸縮方向に変形する。これにより、粘弾性体のせん断方向のばね定数と伸縮方向のばね定数が相違することを利用して、振動方向による共振周波数の違いを作り出す。
前記接続体は、前記可動体と前記支持体とが、前記第2方向もしくは前記第3方向のいずれかの方向で対向する位置に配置される粘弾性体であることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可動体と固定体とを接続体によって接続したアクチュエータでは、可動体の質量と接続体のばね定数によって決まる共振周波数と、コイルへ流す駆動電流の周波数(駆動周波数)とが一致した際に可動体の加速度が最も大きくなるという振動特性を有する。そのため、大きな振動を出力できる周波数は共振周波数に限定され、様々な周波数の振動を出力できない。
【0006】
特許文献1の振動発生装置は、可動ベースに対して錘が振動する際の共振周波数と、筐体に対して可動ベースおよび錘が振動する際の共振周波数が異なるように、第1の弾性変形部と第2の弾性変形部の曲げ弾性係数を設定している。従って、共振周波数が1つではなく複数存在するので、複数の周波数の振動を出力できる。
【0007】
しかしながら、特許文献1の振動発生装置は、第1の共振周波数で振動する際と、第2の共振周波数で振動する際に、異なる弾性変形部が弾性変形する。従って、共振周波数ごとに異なる弾性変形部を設ける必要があるため、振動系の構成が複雑化する。また、第1の共振周波数で振動する際は、錘体が振動し、第2の共振周波数で振動する際は、可動ベースおよび錘体が振動しており、振動部分の範囲まで変わってしまう。従って、筐体に対して可動ベースが振動する場合と、可動ベースに対して錘が振動する場合があるため、さらに構成が複雑になっている。
【0008】
また、特許文献1の振動発生装置は、磁気駆動部が錘を振動させる方向は1方向のみであるため、互いに異なる複数の方向の振動を発生させることができない。従来、複数の方向の振動を発生させるアクチュエータには、振動方向毎に磁気駆動部を設ける必要がある。従って、複数の磁気駆動部を設ける必要があるため、構成が複雑化し、制御も複雑化してしまう。
【0009】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、アクチュエータの構成を複雑化させることな
く、複数の共振周波数の振動および複数の方向の振動を出力できる構成を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のアクチュエータは、支持体と、可動体と、前記可動体および前記支持体に接続された接続体と、コイルおよび前記コイルに第1方向で対向する磁石を備え、前記可動体を前記支持体に対して前記第1方向に交差する方向に相対的に振動させる磁気駆動回路と、を有し、前記接続体は、前記可動体が前記支持体に対して前記第1方向に交差する第2方向に振動する第1振動系を構成し、且つ、前記可動体が前記支持体に対して前記第2方向に直交する第3方向に振動する第2振動系を構成し、前記第1振動系の共振周波数と、前記第2振動系の共振周波数とが異なることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、可動体、支持体、および接続体は、可動体が互いに直交する2方向に振動可能となっており、2方向のうちのいずれか一方側の方向(第2方向)に振動する際と、2方向のうちの他方側の方向(第3方向)に振動する際とでは、可動体を振動させる振動系の共振周波数が異なる。従って、共通の接続体によって、共振周波数が異なる複数の振動系を構成できる。また、共振周波数だけでなく、振動の方向も異なる。従って、簡素な構成で、2種類の共振周波数および2種類の方向の振動を出力することができる。
【0012】
本発明において、前記接続体の少なくとも一部は、粘弾性体であり、前記粘弾性体は、前記可動体が前記第2方向と前記第3方向のうちの一方側の方向に振動する際に、せん断方向に変形し、前記可動体が前記第2方向と前記第3方向のうちの他方側の方向に振動する際に、伸縮方向に変形する位置に配置されることが好ましい。このようにすると、同一の粘弾性体が、可動体が一方側の方向へ振動する際は、せん断方向のばね定数を持つ部材として利用され、可動体が他方側の方向へ振動する際は、伸縮方向のばね定数を持つ部材として利用される。従って、粘弾性体のせん断方向のばね定数と伸縮方向のばね定数が相違することを利用して、振動方向によって接続体のばね定数の強弱を変えることができる。よって、簡素な構成で、第1振動系と第2振動系の共振周波数を変えることができる。
【0013】
本発明において、前記接続体は、第1接続体と、前記第1接続体とは異なる位置に配置される第2接続体を備え、前記第2接続体は、前記可動体と前記支持体とが、前記第2方向もしくは前記第3方向のいずれかの方向で対向する位置に配置される粘弾性体であることが好ましい。このようにすると、第1接続体は、可動体が第2方向と第3方向のいずれの方向に振動してもせん断変形し、第2接続体は、可動体が第2方向と第3方向のいずれか一方側に振動する際にはせん断変形し、可動体が第2方向と第3方向の他方側に振動する際には伸縮方向に変形する。従って、可動体が第2方向と第3方向のいずれか一方側に振動する際には、第1接続体のせん断方向のばね定数と、粘弾性体(第2接続体)のせん断方向のばね定数の合成値が接続体全体としてのばね定数となり、可動体が第2方向と第3方向の他方側に振動する際には、第1接続体のせん断方向のばね定数と、粘弾性体の伸縮方向のばね定数の合成値が接続体全体としてのばね定数となる。従って、可動体の振動方向によって、接続体全体としてのばね定数が変わるので、振動方向による共振周波数の違いを作り出すことができる。
【0014】
本発明において、前記第1接続体は、前記可動体と前記支持体とが、前記第1方向で対向する位置に配置される粘弾性体であることが好ましい。このようにすると、第1接続体によって、第2方向および第3方向へ振動可能な状態で可動体を支持できる。また、第1接続体は、第2方向および第3方向のいずれの方向へ振動する際もせん断変形するので、第1接続体のばね定数は変化しない。従って、第1接続体および第2接続体として同じ部材を用いた構成でありながら、振動方向によってばね定数が変化する構成を実現できる。
【0015】
本発明において、前記接続体は、前記可動体と前記支持体とが、前記第2方向もしくは前記第3方向のいずれかの方向で対向する位置に配置される粘弾性体であることが好ましい。このように、接続体を第2方向もしくは第3方向に配置し、第1方向には配置しない構成であっても、振動方向によってばね定数が変化する構成を実現できる。また、接続体の数を少なくすることができる。
【0016】
本発明において、前記磁気駆動回路は、前記第2方向および前記第3方向を含む面内方向であって、且つ、前記第2方向および前記第3方向とは異なる第4方向の駆動力を発生させることが好ましい。このように、2つの振動方向に対して斜めの方向を駆動方向とすることにより、駆動方向が1方向であっても、第2方向および第3方向の2方向に可動体を励振することができる。従って、駆動方向毎に異なる磁気駆動回路を設ける必要がなく、共通の磁気駆動回路の駆動周波数の制御によって、可動体の振動の方向および振動の周波数を変えることができる。よって、アクチュエータ1の構成および制御を簡素化できる。
【0017】
本発明において、前記磁石は、前記第4方向に分極しており、前記コイルの中心は、前記磁石の着磁分極線上に位置することが好ましい。このようにすると、単純な構成で、第4方向の駆動力を発生させることができる。
【0018】
本発明において、前記第1方向で対向する前記磁石および前記コイルの組を複数備え、前記複数組の前記磁石および前記コイルは、前記第2方向または前記第3方向に並んでいることが好ましい。このようにすると、アクチュエータが第2方向に長い平面形状である場合に、アクチュエータ内のスペースを有効利用して、多くの磁石とコイルの対を配置できる。これにより、大きな駆動力で可動体を振動させることができるので、大きな振動を出力することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、可動体、支持体、および接続体は、可動体が互いに直交する2方向に振動可能となっており、2方向のうちのいずれか一方側の方向(第2方向)に振動する際と、2方向のうちの他方側の方向(第3方向)に振動する際とでは、可動体を振動させる振動系の共振周波数が異なる。従って、共通の接続体によって、共振周波数が異なる複数の振動系を構成できる。また、共振周波数だけでなく、振動の方向も異なる。従って、簡素な構成で、2種類の共振周波数および2種類の方向の振動を出力することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明において、互いに直交する3つの方向を各々、第1方向Z、第2方向Xおよび第3方向Yとして説明する。また、第2方向Xの一方側にX1を付し、第2方向Xの他方側にX2を付し、第3方向Yの一方側にY1を付し、第3方向Yの他方側にY2を付し、第1方向Zの一方側に
Z1を付し、第1方向Zの他方側にZ2を付して説明する。
【0022】
本発明を適用したアクチュエータ1は、可動体6を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動回路10を備える。磁気駆動回路10は、磁石7と、磁石7に対向するコイル5を備える。磁気駆動回路10は、コイル5が支持体2の側に設けられ、磁石7が可動体6の側に設けられた態様、および、磁石7が支持体2の側に設けられ、コイル5が可動体6の側に設けられた態様を採用することができる。以下に説明する実施形態は、コイル5が支持体2に設けられ、磁石7が可動体6に設けられている。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係るアクチュエータ1の外観斜視図である。
図2は、
図1のアクチュエータ1の分解斜視図である。
図3は、外装ケース3および給電基板30を取り外したアクチュエータ1を第1方向Zの他方側Z2から見た分解斜視図である。
図4は、外装ケース3および給電基板30を取り外したアクチュエータ1を第1方向の他方側から見た分解斜視図である。
図5は、外装ケース3および給電基板30を取り外した支持体2の分解斜視図である。
図6は、コイルホルダ4、接続体9、および磁気駆動回路10の平面図である。
【0024】
(全体構成)
図1に示すように、実施形態1のアクチュエータ1は、第3方向Yに長手方向を向けた直方体形状である。
図2に示すように、アクチュエータ1は、角形の外装ケース3を含む支持体2と、外装ケース3の内部において、支持体2に対して第2方向Xおよび第3方向Yに相対的に移動可能に支持された可動体6とを有する。支持体2は、外装ケース3、コイルホルダ4、コイル5(
図5参照)、および給電基板30を備える。可動体6は、磁石7(
図3、
図4参照)およびヨーク8を備える。
【0025】
コイル5と磁石7は第1方向Zで対向しており、可動体6を第2方向Xおよび第3方向Yに振動させる磁気駆動回路10(
図6参照)を構成している。本形態では、磁気駆動回路10が第3方向Yに2組並んでいる。
【0026】
可動体6は、可動体6と支持体2との間に配置された接続体9を介して支持体2に支持される。
図2〜
図4に示すように、接続体9は、可動体6と支持体2とが第1方向Zで対向する位置に配置される第1接続体91と、可動体6と支持体2とが第2方向Xで対向する位置に配置される第2接続体92とを備える。本形態では、接続体9は、粘弾性体からなる。
【0027】
アクチュエータ1は、可動体6が第2方向Xまたは第3方向Yに振動することにより、アクチュエータ1や、アクチュエータ1を取り付けた機器等を利用する者に触覚を与える振動デバイスとして使用することができる。例えば、アクチュエータ1は、ゲーム機の操作部材、操作パネル、自動車のハンドルや座席等に組み込んで使用することができる。アクチュエータ1を触覚デバイスとして使用する際、可動体6が第2方向Xに振動する際の共振周波数fA(
図7参照)と、可動体6が第3方向Yに振動する際の共振周波数fB(
図7参照)とが異なるため、コイル5に印加する交流波形の周波数を調整して、可動体6を2種類の方向および周波数で振動させることができる。従って、利用者に2種類の異なる振動を体感させることができる。また、コイル5に印加する交流波形を調整して、可動体6が一方側に移動する加速度と、可動体6が他方側に移動する加速度とを相違させれば、利用者は、方向性を有する振動を体感することができる。
【0028】
(可動体)
図3、
図4に示すように、可動体6において、磁石7は、第1永久磁石71および第2永久磁石72を備える。第1永久磁石71は、コイル5に第1方向Zの一方側Z1で対向
し、第2永久磁石72は、コイル5に第1方向Zの他方側Z2で対向する。第1永久磁石71および第2永久磁石72は各々、第2方向Xおよび第3方向Yと交差する方向(後述する第4方向F)の一方側と他方側が異なる極に着磁されている。本形態では、第2方向Xの一方側X1および第3方向Yの他方側Y2と、第2方向Xの他方側X2および第3方向Yの一方側Y1とが異なる極に着磁されている。上記のように、本形態では、磁気駆動回路10を2組備えているため、第1永久磁石71および第2永久磁石72は、それぞれ、第2方向Xに2個並んでいる。
【0029】
ヨーク8は磁性板からなり、磁石7を保持している。
図3、
図4に示すように、ヨーク8は、第1ヨーク81と、第1ヨーク81の第1方向Zの他方側Z2に位置する第2ヨーク82の2部材を組み立てて構成される。第1ヨーク81は、平板状の第1板部811を備える。第2ヨーク82は、第1板部811と第1方向Zで対向する第2板部821を備える。第1板部811および第2板部821は、第3方向Yを長手方向とする略長方形である。
図3に示すように、第1永久磁石71は、第1板部811の第1方向Zの他方側Z2の面に保持される。また、
図4に示すように、第2永久磁石72は、第2板部821の第1方向Zの一方側Z1の面に保持される。
【0030】
第1ヨーク81は、第1板部811の第3方向Yの中央部分から第2方向Xの一方側X1および他方側X2へ張り出した一対の張り出し部812と、第1板部811の第3方向Yの両端から第1方向Zの他方側Z2へ突出する第1接続部813を備える。また、第2ヨーク82は、第2板部821の第3方向Yの中央部分から第2方向Xの一方側X1および他方側X2へ張り出した一対の張り出し部822と、第2板部821の第3方向Yの両端から第1方向Zの一方側Z1へ突出する第2接続部823を備える。第1ヨーク81と第2ヨーク82は、第1接続部813の先端部分と第2接続部823の先端部分とが溶接等の方法で連結されている。
【0031】
(支持体)
図1、
図2に示すように、支持体2において、外装ケース3は、第1ケース部材31および第2ケース部材32を備える。第1ケース部材31と第2ケース部材32との間には、コイルホルダ4、コイル5および可動体6が収容される。外装ケース3は、第1ケース部材31の第2方向Xの両側に設けられた一対の側板部311に、第2ケース部材32の第2方向Xの両側に設けられた一対の側板部321が被さった状態に組み立てられる。外装ケース3の第3方向Yの両端は開口部になっており、第3方向Yの一方側Y1の開口部に給電基板30が配置される。
【0032】
第1ケース部材31の一対の側板部311には、第3方向Yの両端部に切欠き33が形成されている。第2ケース部材32の一対の側板部321には、第3方向Yの両端部に切欠き34が形成されている。また、第2ケース部材32の側板部321において第3方向Yで離間する2箇所には、係合穴35が形成されている。
【0033】
コイルホルダ4は、第1方向Zから見て第3方向Yの長さが第2方向Xの幅より長い長方形である。
図2に示すように、コイルホルダ4の第2方向Xの他方側X2の側面には、第3方向Yの両端の2箇所に凸部401が形成されるとともに、第3方向Yで離間する2箇所に係合凸部402が形成されている。
【0034】
図1に示すように、外装ケース3は、コイルホルダ4の凸部401が、第1ケース部材31の切欠き33および第2ケース部材32の切欠き34に嵌まるとともに、コイルホルダ4の係合凸部402が、第2ケース部材32の係合穴35に係合されるように組み立てられる。コイルホルダ4の第2方向Xの一方側X1の側面にも、同様に、第1ケース部材31の切欠き33および第2ケース部材32の切欠き34に嵌まる凸部が形成されるとと
もに、第2ケース部材32の係合穴35に係合される係合突部が形成されている。
【0035】
コイルホルダ4は、第1方向Zから見て第3方向Yの長さが第2方向Xの幅より長い長方形である。コイルホルダ4は、第2方向Xの中央において第3方向Yに延びる板部41を備える。
図5に示すように、板部41には、コイル配置穴410が第1方向Zで開口している。コイル配置穴410は、コイル5が内側に配置される円形の貫通穴であり、第3方向Yに2箇所並んでいる。コイル5は、円環状の平面形状を有する空芯コイルであり、コイルホルダ4に保持される。コイル5は、第3方向Yに2個並んで配置される。各コイル5には、第1方向Zの一方側Z1で第1永久磁石71が対向し、第1方向Zの他方側Z2で第2永久磁石72が対向する。
【0036】
コイルホルダ4は、板部41の第2方向Xの両側の縁を内側へ切り欠いた切欠き部42、43を備える。切欠き部42、43は、板部41の第3方向Yの中間部分に設けられている。コイルホルダ4は、切欠き部42、43の第3方向Yの一方側Y1において、板部41の第3方向Yの一方側Y1の縁から第1方向Zの一方側Z1に向けて突出する側板部413を備えるとともに、板部41の第2方向Xの一方側X1の縁、および第2方向Xの他方側X2の縁からは、第1方向Zの一方側Z1、および他方側Z2に向けて側板部414、415が突出している。また、切欠き部42、43の第3方向Yの他方側Y2において、板部41の第3方向Yの他方側Y2の縁、第2方向Xの一方側X1の縁、および第2方向Xの他方側X2の縁からは、第1方向Zの一方側Z1、および他方側Z2に向けて側板部417、418、419が突出している。
【0037】
コイルホルダ4において、板部41の第3方向Yの一方側Y1の縁に設けられた側板部413の内側(Y2側)には、板部41を第1方向Zに貫通する開口部44が設けられている。また、板部41の第3方向Yの他方側Y2の縁に設けられた側板部417の内側(Y1側)には、板部41を第1方向Zに貫通する開口部45が設けられている。開口部44、45には、第1ヨーク81と第2ヨーク82の接続部(第1接続部813の先端部分と第2接続部823の先端部分とが連結された部分)および第2接続体92が配置される。第2接続体92は、第1ヨーク81と第2ヨーク82の接続部と、コイルホルダ4の側板部413、417とが第3方向Yで対向する位置に配置される。
【0038】
側板部414、415の内面414s、415s、および、側板部418、419の内面418s、419sは、可動体6が第2方向Xに移動する際の可動範囲を規定する度当たり部として機能する。すなわち、板部41の第1方向Zの一方側Z1では、第1ヨーク81と内面414s、415s、418s、419sとが第2方向Xで対向する。また、板部41の第1方向Zの他方側Z2では、第2ヨーク82と内面414s、415s、418s、419sとが第2方向Xで対向する。
【0039】
また、コイルホルダ4において第3方向Yで離間する側板部414と側板部418との間、および、側板部415と側板部419との間には、第2ヨーク82の張り出し部822が配置される。従って、側板部414と側板部418、および、側板部415と側板部419は、可動体6が第3方向Yに移動する際の可動範囲を規定する度当たり部として機能する。
【0040】
コイルホルダ4には、板部41に対して第1方向Zの一方側Z1および他方側Z2から重なるように第1プレート47および第2プレート48が取り付けられる。第1プレート47および第2プレート48は、非磁性材料からなる。本形態では、第1プレート47および第2プレート48は、非磁性のステンレンス板からなる。
【0041】
第1プレート47は、第3方向Yの両端縁の中央を矩形に切り欠いた切欠き部471と
、第2方向Xの両側から第1方向Zの一方側Z1に斜めに突出した爪部472を有する。同様に、第2プレート48は、第3方向Yの両端縁の中央を矩形に切り欠いた切欠き部481と、第2方向Xの両側から第1方向Zの他方側Z2に斜めに突出した爪部482を有する。切欠き部471、481は、コイルホルダ4の板部41に設けられた開口部44、45と第1方向Zで重なっている。また、爪部472、482は、側板部414、415、418、419の内面414s、415s、418s、419sに形成された溝状の凹部内部に弾性をもって当接する。これにより、第1プレート47および第2プレート48は、コイルホルダ4に保持されている。
【0042】
コイル5は、接着剤により、コイルホルダ4に固定される。接着剤は、コイル5の空芯部50に充填されて、コイル5とコイルホルダ4との間に流れ込んで硬化する。また、接着剤は、コイル5と第1プレート47との間、第1プレート47とコイルホルダ4との間、コイル5と第2プレート48との間、および、第2プレート48とコイルホルダ4との間に流れ込んで硬化する。従って、コイル5、第1プレート47、第2プレート48、およびコイルホルダ4は、接着剤が流れ込んで硬化した接着剤層によって固定される。コイル5をコイルホルダ4に固定する方法は、接着剤による方法以外にも、インサート一体成形等であってもよい。
【0043】
アクチュエータ1は、給電基板30を介して外部(上位の機器)からコイル5に給電する。
図1、
図2に示すように、給電基板30は、コイルホルダ4のうち、第3方向Yの一方側で側板部413、414、415に囲まれた開口部に保持されている。コイル5から引き出されるコイル線(図示省略)は、コイルホルダ4の板部41に沿って給電基板30の第3方向Yの一方側Y1へ引き出され、第1方向Zの他方側Z2へ曲げられて給電基板30に接続される。
【0044】
(接続体)
可動体6は、可動体6および支持体2に接続された第1接続体91および第2接続体92によって、支持体2に対して第2方向Xおよび第3方向Yに相対移動可能に支持される。第1接続体91は、可動体6と支持体2とが第1方向Zで対向する位置に配置される。また、第2接続体92は、可動体6と支持体2とが第3方向Yで対向する位置に配置される。
【0045】
第1接続体91は、コイルホルダ4の第1方向Zの一方側Z1および第1方向Zの他方側Z2のそれぞれの位置において、第3方向Yで離間する2箇所に配置される。より詳細には、第1接続体91は、
図3に示すように、第1ヨーク81の第1板部811と第1プレート47の第3方向Yの一方側Y1の端部との間、および、第1板部811と第1プレート47の第3方向Yの他方側Y2の端部との間の2箇所に配置される。また、第1接続体91は、
図4に示すように、第2ヨーク82の第2板部821と第2プレート48の第3方向Yの一方側Y1の端部との間、および、第2板部821と第2プレート48の第3方向Yの他方側Y2の端部との間の2箇所に配置される。第1接続体91は、第1方向Zの両面が各々、可動体6(第1板部811、第2板部821)および支持体(第1プレート47、第2プレート48)に接着等の方法で固定される。また、第1接続体91は、可動体6と支持体2の間で、第1方向Zに圧縮された状態にある。
【0046】
図3、
図4に示すように、第2接続体92は、コイルホルダ4の第3方向Yの両端部に設けられた開口部44、45に配置される。開口部44に配置される第2接続体92は、第3方向Yの一方側Y1の面がコイルホルダ4の側板部413に接着等により固定され、第3方向Yの他方側Y2の面は、ヨーク8の第3方向Yの一方側Y1の端部に配置される第1接続部813および第2接続部823に接着等により固定される。また、開口部45に配置される第2接続体92は、第3方向Yの他方側Y2の面がコイルホルダ4の側板部
417に接着等により固定され、第3方向Yの一方側Y1の面は、ヨーク8の第3方向Yの他方側Y2の端部に配置される第1接続部813および第2接続部823に接着等により固定される。第2接続体92は、可動体6と支持体2の間で、第3方向Yに圧縮された状態にある。
【0047】
可動体6が第2方向Xに振動する際、アクチュエータ1は、第1接続体91がせん断方向に変形し、且つ、第2接続体92もせん断方向に変形する第1振動系を構成する。従って、第1振動系における接続体9全体としてのばね定数は、第1接続体91のせん断方向のばね定数と、第2接続体92のせん断方向のばね定数とを合成した合成値となる。一方、可動体6が第3方向Yに振動する際、アクチュエータ1は、第1接続体91がせん断方向に変形し、且つ、第2接続体92は伸縮方向に変形する第2振動系を構成する。従って、第2振動系における接続体9全体としてのばね定数は、第1接続体91のせん断方向のばね定数と、第2接続体92の伸縮方向のばね定数とを合成した合成値となる。
【0048】
第1接続体91および第2接続体92は、せん断方向に変形する際のばね定数と、伸縮方向に変形する際のばね定数が異なる。本形態では、第1接続体91および第2接続体92は粘弾性体である。例えば、第1接続体91および第2接続体92は、シリコーンゲル等からなるゲル状部材である。シリコーンゲルは、伸縮方向に変形する際のばね定数が、せん断方向に変形する際のばね定数の3倍程度になる粘弾性体である。粘弾性体は、厚さ方向と交差する方向(せん断方向)に変形する場合、引っ張られて伸びる方向の変形であるため、非線形の成分よりも線形の成分が大きい変形特性を備える。また、厚さ方向に押圧されて圧縮変形する際は、線形の成分よりも非線形の成分が大きい伸縮特性を備える一方、厚さ方向に引っ張られて伸びる場合は、非線形の成分よりも線形の成分が大きい伸縮特性を備える。
【0049】
第1接続体91および第2接続体92として、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いてもよい。
【0050】
(磁気駆動回路)
図6に示すように、アクチュエータ1は、円環状のコイル5と磁石7の対からなる磁気駆動回路10を2組備える。各磁気駆動回路10は、第2方向Xおよび第3方向Yを含む面内方向であって、且つ、第2方向Xおよび第3方向Yとは異なる第4方向Fの駆動力を発生させる。例えば、第4方向Fは、第2方向Xおよび第3方向Yに対して45°傾いた方向である。各磁気駆動回路10において、磁石7は、コイル5と対向する面がN極とS極に着磁されており、その着磁分極線70は、第4方向Fに対して直交する方向に延びている。本形態では、第4方向Fが第2方向Xおよび第3方向Yに対して45°傾いた方向となるように、磁石7が着磁されている。上記のように、本形態では、磁石7として、コイル5に第1方向Zの一方側Z1から対向する第1永久磁石71と、コイル5に第1方向Zの他方側Z2から対向する第2永久磁石72を備えており、第1永久磁石71および第2永久磁石72は、コイル5に第1方向Zで対向する面が、第4方向Fと直交する着磁分極線70を持つように着磁されている。
【0051】
(アクチュエータの駆動方法)
図7は、アクチュエータ1の振動特性を模式的に示す説明図である。
図7の横軸は磁気駆動回路10の駆動周波数fであり、コイル5へ流す駆動電流の周波数である。また、
図7の縦軸は、可動体6が振動する際の加速度である。上記のように、アクチュエータ1は
、可動体6が第2方向Xに振動する第1振動系を構成する場合と、可動体6が第3方向Yに振動する第2振動系を構成する場合とで、接続体9が全体として異なるばね定数で変形するように構成されている。そのため、アクチュエータ1は、第1振動系の共振周波数fAと、第2振動系の共振周波数fBとが異なり、
図7に示すように、2つの共振周波数fA、fBで可動体6の加速度最大周波数が大きくなっている。
【0052】
磁気駆動回路10が発生させる駆動力は、第2方向Xの成分と第3方向Yの成分を含む第4方向Fの駆動力である。従って、磁気駆動回路10の駆動周波数を変化させると、共振周波数fAと一致あるいは共振周波数fAに近い値の駆動周波数にしたとき、可動体6が第2方向Xに大きく振動する。従って、アクチュエータ1は、共振周波数fAの第2方向Xの振動を出力することができる。また、磁気駆動回路10の駆動周波数を共振周波数fBと一致あるいは共振周波数fBに近い値にしたとき、可動体6が第3方向Yに大きく振動する、従って、アクチュエータ1は、共振周波数fBの第3方向Yの振動を出力することができる。従って、アクチュエータ1は、共通の磁気駆動回路10の駆動周波数を調節するだけで、異なる振動方向で、且つ、異なる周波数の振動を出力することができる。
【0053】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態のアクチュエータ1は、支持体2と、可動体6と、可動体6および支持体2に接続された接続体9と、コイル5およびコイル5に第1方向Zで対向する磁石7を備え、可動体6を支持体2に対して第1方向Zに交差する方向に振動させる磁気駆動回路10と、を有する。そして、接続体9は、可動体6が支持体2に対して第1方向Zに交差する第2方向Xに振動する第1振動系を構成し、且つ、可動体6が支持体2に対して第2方向Xに直交する第3方向Yに振動する第2振動系を構成し、第1振動系の共振周波数fAと、第2振動系の共振周波数fBとが異なる。
【0054】
本形態によれば、可動体6、支持体2、および接続体9は、可動体6が互いに直交する2方向に振動可能となっており、2方向のうちのいずれか一方側の方向(第2方向X)に振動する際と、2方向のうちの他方側の方向(第3方向Y)に振動する際とでは、共振周波数が異なる。従って、共通の接続体によって、共振周波数が異なる複数の振動系を構成できる。また、振動するのはいずれも可動体6であり、振動方向によって振動する部位が異なることはない。さらに、共振周波数だけでなく、振動の方向も異なる。従って、簡素な構成で、2種類の共振周波数の振動を出力することができる。これにより、本形態のアクチュエータ1を触覚デバイスとして使用した場合に、1つの触覚デバイスから複数の振動を出力でき、複数の触覚を利用者に与えることができる。また、共振する周波数がピンポイントでなくなるため、幅広い駆動周波数で大きな振動感を得ることができる。
【0055】
本形態において、接続体9の少なくとも一部は、粘弾性体であり、接続体9の一部(第2接続体92)は、可動体6が第2方向Xに振動する際に、せん断方向に変形し、可動体6が第3方向Yに振動する際に、伸縮方向に変形する位置に配置される。このような配置によって、同一の粘弾性体(第2接続体92)が、可動体6が第2方向Xへ振動する際は、せん断方向のばね定数を持つ部材として利用され、可動体6が第3方向Yへ振動する際は、伸縮方向のばね定数を持つ部材として利用される。従って、粘弾性体のせん断方向のばね定数と伸縮方向のばね定数が相違することを利用して、振動方向によって接続体9のばね定数の強弱を変えることができる。よって、簡素な構成で、振動方向による共振周波数の違いを作り出すことができる。
【0056】
本形態の接続体9は、第1接続体91と、第1接続体91とは異なる位置に配置される第2接続体92を備え、第2接続体92は、可動体6と支持体2とが、第3方向Yで対向する位置に配置される粘弾性体である。このようにすると、可動体6が第2方向Xに振動する際には、第1接続体91のせん断方向のばね定数と、粘弾性体(第2接続体92)の
せん断方向のばね定数の合成値が接続体9全体のばね定数となり、可動体6が第3方向Yの他方側に振動する際には、第1接続体91のせん断方向のばね定数と、粘弾性体の伸縮方向のばね定数の合成値が接続体9全体のばね定数となる。従って、可動体6の振動方向によって、接続体9ばね定数が変わるので、第1振動系の共振周波数fAと第2振動系の共振周波数fBを変えることができる。
【0057】
本形態の第1接続体91は、可動体6と支持体2とが、第1方向Zで対向する位置に配置される粘弾性体である。このようにすると、第1接続体91によって、第2方向Xおよび第3方向Yへ振動可能な状態で可動体6を支持できる。また、第1接続体91は、第2方向Xおよび第3方向Yのいずれの方向へ振動する際もせん断変形するので、第1接続体91のばね定数は変化しない。従って、第1接続体91および第2接続体92として同じ部材を用いた構成でありながら、振動方向によってばね定数が変化する構成を実現できる。
【0058】
本形態の磁気駆動回路10は、第2方向Xおよび第3方向Yを含む面内方向であって、且つ、第2方向Xおよび第3方向Yとは異なる第4方向Fの駆動力を発生させる。このように、2つの振動方向に対して斜めの方向を駆動方向とすることにより、駆動方向が1方向であっても、第2方向Xおよび第3方向Yの2方向に可動体6を励振することができる。従って、駆動方向毎に異なる磁気駆動回路を設ける必要がなく、共通の磁気駆動回路10の駆動周波数の制御によって、可動体6の振動の方向および振動の周波数を変えることができる。よって、アクチュエータ1の構成および制御を簡素化できる。
【0059】
本形態の磁気駆動回路10は、第4方向Fに分極した磁石7と、円形のコイル5を備えており、コイル5の中心は、磁石7の着磁分極線上に位置する。このようにすると、単純な構成で、第4方向の駆動力を発生させることができる。
【0060】
本形態において、第1方向Zで対向する磁石7およびコイル5の組からなる磁気駆動回路10を複数備え、複数の磁気駆動回路10は、第3方向Yに並んでいる。このようにすると、第3方向Yに長いアクチュエータ1内のスペースを有効利用して、複数の磁石7とコイル5の組を配置できる。これにより、大きな駆動力で可動体6を振動させることができるので、大きな振動を出力することができる。なお、アクチュエータ1が第2方向Xに長い平面形状の場合は、複数の磁気駆動回路10を第2方向Xに並べればよい。
【0061】
(変形例)
(1)上記形態は、接続体9が全て粘弾性体であるが、接続体9の少なくとも一部(本形態では、第2接続体92)が粘弾性体であれば、せん断方向の変形と伸縮方向の変形におけるばね定数の違いを利用して、振動方向によるばね定数の強弱を出すことができ、複数の共振周波数を持たせることができる。例えば、上記形態において、第1接続体91は弾性体であってもよい。また、第1接続体91を使用しない構成であってもよい。
【0062】
(2)上記形態は、可動体6と支持体2とが第3方向Yで対向する位置に第2接続体92を配置するものであったが、第2接続体92の位置は、可動体6と支持体2とが第2方向Xで対向する位置であってもよい。この場合には、可動体6が第2方向Xに振動する際に、第2接続体92が伸縮方向に変形し、可動体6が第3方向Yに振動する際に、第2接続体92がせん断方向に変形する。従って、共振周波数と振動方向の組合せを上記形態とは逆にすることができる。また、第2接続体92を配置する位置を、可動体6と支持体2とが第2方向Xで対向する位置、および、可動体6と支持体2とが第3方向Yで対向する位置の両方としてもよい。
【0063】
(3)上記形態は、コイル5に対する第1方向Zの両側に磁石7(第1永久磁石71およ
び第2永久磁石72)を配置しているが、コイル5に対する第1方向Zの一方側Z1または他方側Z2のみに磁石7を配置してもよい。
【0064】
(4)上記形態では、コイルホルダ4およびコイル5を支持体2に設け、磁石7(第1永久磁石71および第2永久磁石72)およびヨーク8(第1ヨーク81および第2ヨーク82)を可動体6に設けたが、コイルホルダ4およびコイル5を可動体6に設け、磁石7(第1永久磁石71および第2永久磁石72)およびヨーク8(第1ヨーク81および第2ヨーク82)を支持体2に設けたアクチュエータに本発明を適用してもよい。
【0065】
(5)上記形態では、磁石7とコイル5の組を2組備えているが、1組もしくは3組以上であってもよい。また、磁石7とコイル5の組が3組以上である場合、第2方向Xおよび第3方向Yにそれぞれ複数並んでいてもよい。
【0066】
(6)コイル5の平面形状は、円形以外の形状とすることができる。例えば、長円形、楕円形、四角形、角丸四角形等であってもよい。なお、コイル5の大きさは磁石7とほぼ同等にすることが好ましい。例えば、円形のコイル5の場合、コイル5の直径を磁石7の1辺の長さとほぼ同じにすることが好ましい。
【0067】
(7)上記形態では、第1接続体91と第2接続体92は同じ種類(材質)の粘弾性体であるが、異なる種類の粘弾性体であってもよい。第1接続体91と第2接続体92の種類が異なる場合、第1接続体91のバネ定数が小さく、第2接続体92のバネ定数が大きくなるような組み合わせが好ましい。