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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-195954(P2020-195954A)
(43)【公開日】2020年12月10日
(54)【発明の名称】電気集塵装置
(51)【国際特許分類】
   B03C 3/40 20060101AFI20201113BHJP
   B03C 3/06 20060101ALI20201113BHJP
   B03C 3/08 20060101ALI20201113BHJP
   B03C 3/49 20060101ALI20201113BHJP
   B03C 3/019 20060101ALI20201113BHJP
   B03C 3/15 20060101ALI20201113BHJP
【FI】
   B03C3/40 A
   B03C3/06
   B03C3/08
   B03C3/49
   B03C3/019
   B03C3/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2019-103149(P2019-103149)
(22)【出願日】2019年5月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000120249
【氏名又は名称】臼井国際産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】古堅 宗勝
(72)【発明者】
【氏名】滝川 一儀
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 優
【テーマコード(参考)】
4D054
【Fターム(参考)】
4D054AA02
4D054AA03
4D054AA07
4D054AA13
4D054BA01
4D054BA06
4D054BA08
4D054BC06
4D054BC31
4D054EA25
(57)【要約】
【課題】 大排気量ディーゼルエンジン用排ガス処理用電気集塵装置であっても、当該集塵装置の小型化を実現して設置スペースを容易に確保できる、容積効率の優れた電気集塵装置の提供。
【解決手段】 ディーゼルエンジン排ガス中のPM、室内粉塵、排煙、ヒューム、塵埃等のダストを含有する汚濁ガスが流入する導入管の後流に、放電電極及び集塵電極よりなる静電気式の電気集塵機構を内蔵する集塵部を備えた電気集塵装置において、内面を捕集壁面とする捕集管を矩形筒状体で構成し、該矩形筒状体の平坦な4壁面を集塵電極とすると共に該集塵電極と放電間隔を保持して放電電極を配置して構成することを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジン排ガス中のPM、室内粉塵、排煙、ヒューム、塵埃等のダストを含有する汚濁ガスが流入する導入管の後流に、放電電極及び集塵電極よりなる静電気式の電気集塵機構を内蔵する集塵部を備えた電気集塵装置において、前記集塵部は、前記放電電極及び前記集塵電極を内蔵し汚濁ガスの流れ方向に直角な断面が矩形をなすとともに汚濁ガスの流れ方向に所定長さを有する矩形筒状体を少なくとも1個有し、前記矩形筒状体の平坦な4壁面を集塵電極とすると共に該集塵電極と放電間隔を保持して前記放電電極を前記矩形筒状体の中央付近に前記汚濁ガスの流れ方向及び該流れ直角方向に各々所定の間隔を保持して配置し、前記集塵電極に沿って流れるダスト等を高濃度に含有する高濃度汚濁ガス流を集合し排出する高濃度汚濁ガス導出部と、前記放電電極に沿って流れるダスト等を低濃度に含有する低濃度汚濁ガス流を集合し排出する低濃度汚濁ガス導出部を前記矩形筒状体の後部に各々設けると共に、前記高濃度汚濁ガス導出部の後流に高濃度汚濁ガス導出配管を設け、さらに前記高濃度汚濁ガス導出配管の後流に高濃度汚濁ガス流からダスト等を除去する分別集塵部を設けると共に該分別集塵部の後流に排出管を配設し、前記低濃度汚濁ガス導出部の後流に配設した低濃度汚濁ガス導出配管より低濃度汚濁ガスを放出ガス流として放出させる構成となしたことを特徴とする電気集塵装置。
【請求項2】
前記集塵部は、前記矩形筒状体を並列に複数積層した筒状体群よりなるモジュールにより構成され、かつ各々の前記矩形筒状体に前記高濃度汚濁ガス導出部及び前記低濃度汚濁ガス導出部が集合配管状に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の電気集塵装置。
【請求項3】
ディーゼルエンジン排ガス、PM、室内粉塵、排煙、ヒューム、塵埃等のダストを含有する汚濁ガスが流入する導入管の後流に、放電電極及び集塵電極よりなる静電気式の電気集塵機構を内蔵する集塵部を複数備えた電気集塵装置において、前記各集塵部は、前記放電電極及び前記集塵電極を内蔵し汚濁ガスの流れ方向に直角な断面が矩形をなすとともに汚濁ガスの流れ方向に所望の長さを有する少なくとも一個の矩形筒状体を汚濁ガスの流れ方向に複数段配設し、前記矩形筒状体の平坦な4壁面を集塵電極とするとともに該集塵電極と放電間隔を保持して前記放電電極を前記矩形筒状体の中央付近に前記汚濁ガスの流れ方向及び該流れ直角方向に各々所定の間隔を保持して配置し、前記集塵電極に沿って流れるダスト等を高濃度に含有する高濃度汚濁ガス流を集合し排出する高濃度汚濁ガス導出部と、前記放電電極に沿って流れるダスト等を低濃度に含有する低濃度汚濁ガス流を集合し排出する低濃度汚濁ガス導出部を前記矩形筒状体の後部に各々設け、さらに前記高濃度汚濁ガス導出部の後流に高濃度汚濁ガス導出配管を接続するとともに、該高濃度汚濁ガス導出配管には排出管を有する分別集塵部を設けて高濃度汚濁ガス流からダスト等を除去せしめて放出させるように構成され、かつ前記低濃度汚濁ガス導出部を後段の矩形筒状体を有する集塵部に接続させて再浄化処理もしくは低濃度汚濁ガス導出管に接続させて低濃度汚濁ガス流を放出ガス流として放出させる構成となしたことを特徴とする電気集塵装置。
【請求項4】
前記集塵部は、前記矩形筒状体を並列に複数積層した筒状体群よりなるモジュールにより各々構成され、かつ各々の前記矩形筒状体に前記高濃度汚濁ガス導出部及び前記低濃度汚濁ガス導出部が集合配管状に配設されていることを特徴とする請求項3に記載の電気集塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用、発電用、産業用等のディーゼルエンジンの排気ガスや、室内粉塵、ボイラ、焼却炉、溶接装置、ろう付装置、塗装装置、溶接・ろう付・塗装等が実施される工場、高速道路や車両用道路のトンネル等から放出される排煙、ヒューム、塵埃等を含有する汚濁ガス(該汚濁ガスには微細な粒子が含まれており、この微細な粒子は粒径が小さいほど浮遊しやすく、例えば、PM10(粒子径10μm以下)は浮遊粒子状物質として知られ、大気中を浮遊し重力で地表に落ちることはほとんどない)中の前記PM(粒状物質)、煤塵、ヒューム、粉塵等のダストを除去するコロナ放電を利用した静電気式の電気集塵装置に係り、より詳しくは特にディーゼルエンジン排ガス中のPM、室内粉塵、排煙、ヒューム、塵埃等を含有する汚濁ガスの導入管の後流に放電電極及び集塵電極よりなる静電気式の電気集塵機構(以下、説明の便宜上「ESP」と称する)を内蔵する集塵部を備えた電気集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナ放電を利用して静電気的にディーゼルエンジン排気ガス中のPM、煤塵、ヒューム、粉塵等のダストを処理する方法としては、例えば本出願人が先に提案した特許文献1、2が知られている。
即ち、特許文献1には、図10にその概略を示すように、重油以下の低質燃料を使用する大排気量ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる粒状物質に帯電させる放電電極101−2、及び帯電された前記粒状物質を捕集する集塵電極を構成する所定長さの管状捕集部101を有し、かつ前記放電電極101−2は前記管状捕集部101を構成する捕集管101−1内に管軸方向に配設された主電極101−2aと該主電極に間隔配設された放射状に突出する複数本の電極針101−2bとによって構成された電気集塵手段と、前記管状捕集部101から剥離した粒状物質を分別して捕集するサイクロン方式の分別捕集手段102を備えたディーゼルエンジン用排ガス処理装置において、前記管状捕集部101の下流側の軸心付近に粒状物質の低濃度排ガス導出管103を、同管状捕集部の下流側の内周面付近に高濃度排ガス導出部101−1bをそれぞれ設け、粒状物質の高濃度排ガス導出部101−1bに前記粒状物質を捕集するサイクロン捕集手段102−1を連設するとともに、該サイクロン捕集手段を接線式サイクロン102−1aで構成し、前記低濃度排ガス導出管103に配設したダンパー107の開度を制御することにより前記接線式サイクロン102−1aへの排ガス流入速度を制御する仕組みとなし、さらに前記捕集管101−1の長さをL、該捕集管の内径をDとした場合、その関係が5D≦L≦15Dの条件を満たすことを特徴とする重油以下の低質燃料を使用する大排気量ディーゼルエンジン用排ガス処理装置が提案されている。
【0003】
又、特許文献2には、例えば図11にその概略を示すように、所定長さの主捕集管201よりなる管状捕集部に、重油を使用するディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる粒状物質に帯電させる放電電極201−1A−1、201−2A−1、201−3A−1、及び帯電された前記粒状物質を捕集する集塵電極を構成する所定長さの管状捕集部201−1、201−2、201−3を有し、かつ前記放電電極は管状捕集部内に管軸方向に配設された主電極202と該主電極に配設された放射状に突出する電極とによって構成された電気集塵手段を備え、前記放電電極及び集塵電極である単一径で所定長さの主捕集管よりなる管状捕集部201−1、201−2、201−3に、軸方向に短寸で径の異なる管状捕集モジュールを複数段に配置したディーゼルエンジン排ガス処理装置の放電電極であって、前記複数段に配置した管状捕集モジュールの少なくとも一つの管状捕集モジュールの放電電極が主電極202の外周にステー201−1A−1e、201−2A−1e、201−3A−1eを介して取着された同主電極と同心円筒状の放電電極支持筒201−1A−1d、201−2A−1d、201−3A−1dと、該放電電極支持筒の表面に周方向及び管軸方向に所望の間隔を隔てて放射状に配置された短尺の放電電極針201−1A−1c、201−2A−1c、201−3A−1cあるいは低高さ鋸刃状放電電極板とで構成され、かつ前記短尺の放電電極針あるいは低高さ鋸刃状放電電極板の径方向長さが10〜30mm、当該放電電極針あるいは低高さ鋸刃状放電電極板の先端と捕集壁面との間隔が30〜70mmとなし、前記管状捕集部の最上流の管状捕集モジュールの前記放電電極支持筒の上流側開口端部が円錐状蓋部201−1A−1d´、201−2A−1d´、201−3A−1d´により閉塞されていることを特徴とするディーゼルエンジン排ガス処理用電気集塵装置の放電電極が本出願人により提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5863087号
【特許文献2】特開2017−952号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の静電気式の電気集塵装置には、以下に記載する課題がある。
即ち、前記特許文献1、2に記載された重油以下の低質燃料を使用する大排気量ディーゼルエンジン用排ガス処理装置にあっては、管状捕集部101、201−1、201−2、201−3を構成する内面を捕集壁面とする捕集管は、断面が円形であってその内径Dに対する長さLの比率はL=5D〜15Dの長尺を必要としており、かつ前記管状捕集部の断面が円形であるが故に断面が矩形(正方形)のものに比べて断面の面積効率が悪く(辺の長さDの矩形(正方形)断面と直径Dの円径断面を比較するとD:1/4・πDであり“1/4・π≒0.7853”即ち約21%相当の面積が小さい)、そのため円形断面の捕集管を用いた集塵装置は長尺で大径の大型な装置とならざるを得ず、集塵装置の設置に際し設置スペースの確保に困難を要するという課題を有していた。
【0006】
本発明は、上記した従来技術の課題を解消するためになされたもので、特にディーゼルエンジン排ガス中のPM、室内粉塵、排煙、ヒューム、塵埃等のダストを含有する汚濁ガスが流入する導入管の後流に放電電極及び集塵電極よりなる静電気式の電気集塵機構を内蔵する集塵部を備えた電気集塵装置であって、前記管状捕集部を構成する内面を捕集壁面とする捕集管を、従来の円形断面の捕集管に替えて矩形断面の捕集管を採用することにより、装置の小型化を実現して設置スペースにおける容積効率の優れた電気集塵装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の電気集塵装置は、ディーゼルエンジン排ガス中のPM、室内粉塵、排煙、ヒューム、塵埃等のダストを含有する汚濁ガスが流入する導入管の後流に放電電極及び集塵電極よりなる静電気式の電気集塵機構を内蔵する集塵部を備えた電気集塵装置において、前記集塵部は、前記放電電極及び前記集塵電極を内蔵し汚濁ガスの流れ方向に直角な断面が矩形をなすとともに汚濁ガスの流れ方向に所定長さを有する矩形筒状体を少なくとも1個有し、前記矩形筒状体の平坦な4壁面を集塵電極とすると共に該集塵電極と放電間隔を保持して前記放電電極を前記矩形筒状体の中央付近に前記汚濁ガスの流れ方向及び該流れ直角方向に各々所定の間隔を保持して配置し、前記集塵電極に沿って流れるダスト等を高濃度に含有する高濃度汚濁ガス流を集合し排出する高濃度汚濁ガス導出部と、前記放電電極に沿って流れるダスト等を低濃度に含有する低濃度汚濁ガス流を集合し排出する低濃度汚濁ガス導出部を前記矩形筒状体の後部に各々設けると共に、前記高濃度汚濁ガス導出部の後流に高濃度汚濁ガス導出配管を設け、さらに前記高濃度汚濁ガス導出配管の後流に高濃度排ガス流からダスト等を除去する分別集塵部を設けると共に該分別集塵部の後流に排出管を配設し、前記低濃度汚濁ガス導出部の後流に配設した低濃度汚濁ガス導出配管より低濃度汚濁ガスを放出ガス流として放出させる構成となしたことを特徴とするものである。
前記第1の電気集塵装置における前記集塵部は、前記矩形筒状体を並列に複数積層した筒状体群よりなるモジュールにより構成され、かつ各々の前記矩形筒状体に前記高濃度汚濁ガス導出部及び前記低濃度汚濁ガス導出部が集合配管状に配設されていることを好ましい態様とするものである。
【0008】
又、本発明に係る第2の電気集塵装置は、ディーゼルエンジン排ガス、PM、室内粉塵、排煙、ヒューム、塵埃等のダストを含有する汚濁ガスが流入する導入管の後流に放電電極及び集塵電極よりなる静電気式の電気集塵機構を内蔵する集塵部を複数備えた電気集塵装置において、前記各集塵部は、前記放電電極及び前記集塵電極を内蔵し汚濁ガスの流れ方向に直角な断面が矩形をなすとともに汚濁ガスの流れ方向に所望の長さを有する少なくとも一個の矩形筒状体を汚濁ガスの流れ方向に複数段配設し、前記矩形筒状体の平坦な4壁面を集塵電極とするとともに該集塵電極と放電間隔を保持して前記放電電極を前記矩形筒状体の中央付近に前記汚濁ガスの流れ方向及び該流れ直角方向に各々所定の間隔を保持して配置し、前記集塵電極に沿って流れるダスト等を高濃度に含有する高濃度汚濁ガス流を集合し排出する高濃度汚濁ガス導出部と、前記放電電極に沿って流れるダスト等を低濃度に含有する低濃度汚濁ガス流を集合し排出する低濃度汚濁ガス導出部を前記矩形筒状体の後部に各々設け、さらに前記高濃度汚濁ガス導出部の後流に高濃度汚濁ガス導出配管を接続するとともに、該高濃度汚濁ガス導出配管には排出管を有する分別集塵部を設けて高濃度汚濁ガス流からダスト等を除去せしめて放出させるように構成され、かつ前記低濃度汚濁ガス導出部を後段の矩形筒状体を有する集塵部に接続させて再浄化処理もしくは低濃度汚濁ガス導出管に接続させて低濃度汚濁ガス流を放出ガス流として放出させる構成となしたことを特徴とするものである。
前記第2の電気集塵装置における前記集塵部は、前記矩形筒状体を並列に複数積層した筒状体群よりなるモジュールにより各々構成され、かつ各々の前記矩形筒状体に前記高濃度汚濁ガス導出部及び前記低濃度汚濁ガス導出部が集合配管状に配設されていることを好ましい態様とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電気集塵装置は、基本的に集塵部に搭載される静電気式の電気集塵機構により前記特許文献2の静電集塵機構と同様にダスト等が集塵される。従来技術の問題点と本発明の効果を図8a、図8b、図9a、図9bに基づいて以下に説明する。なお、下記(イ)、(ロの1)、(ロの2)は図8a、図8bと対応している。
【0010】
(イ).本発明に係る電気集塵装置は、図8aに示すように集塵捕集部の断面が矩形であることにより、従来の円形断面のESPと比較し、矩形の四隅部分に存在する無駄なスペース(捕集に寄与しないデッドスペース)が無く、矩形断面の面積効率は段落0005に記載の通り約21%優れ、その結果、設置スペースにおける容積効率に優れる。
【0011】
(ロの1).従来技術の円形断面ESPでは、径の異なる捕集管(小径捕集管〜大径捕集管)の円筒状捕集壁の外側を通過するダストへのコロナ放電+クーロン力発生+捕集面付着を発生させることのできない無駄なスペースが存在したが、本発明の矩形断面ESPではこの無駄なスペースが存在しないので設置スペースにおける容積効率に優れる。
【0012】
(ロの2).従来技術の円形断面ESPでは、円筒状の放電電極支持筒内面側を通過するダストへのコロナ放電+クーロン力発生+捕集面付着を発生させることのできない無駄なスペースが存在したが、本発明の矩形断面ESPではこの無駄なスペースが存在しないので設置スペースにおける容積効率に優れる。
【0013】
(ハ).加えて、本発明の矩形断面ESPを直列に複数段連結させた装置(実施例2、図4図5に対応)と従来技術の円形断面ESP(図11に対応)の装置の主寸法を示し、本発明の効果を定量的に比較する。
まず、矩形断面ESPを直列に複数段連結させた場合の集塵効率に対する効果を示す。矩形断面ESPを直列に例えば3段連結させた集塵装置の概略説明図を図6に、集塵効率を図7に示す。
【0014】
矩形断面ESPを直列に複数段連結させた場合の集塵率
<検証条件>
集塵率η(%);50%、60%、70%
トータル集塵率;ηT (%)[ηT =1−(1−η)n]
連結段数n;3段
<結果>
(1).集塵率50%の集塵捕集部を直列に3段連結させた場合のトータル集塵率は88%。
(2).集塵率60%の集塵捕集部を直列に3段連結させた場合のトータル集塵率は94%。
(3).集塵率70%の集塵捕集部を直列に3段連結させた場合のトータル集塵効率98%。
【0015】
上記の結果より、矩形断面ESPを複数段連結させるとトータル集塵率は上記の通り上昇することが明らかである。従って、実用設備においては、集塵装置の規模、製造、設置、操業等の観点からは、1台当たりのESPの長さを短尺にして、短尺のESPを複数段連結させることでトータル集塵率の向上をはかることが実用的である。
【0016】
(ニ).本発明と従来技術のESPの大きさの概念的な比較を以下に示す。
図8a、図8bは前記したように従来技術(特許文献2)の円形断面ESPに無駄スペースが存在することを示す概念的な説明図であり、図9a、図9bは本発明の矩形断面ESPの1モジュールの寸法の概念的な説明図である。両図を比較すると、矩形断面ESPでは無駄スペースが減少していることが見られる。
本発明の優位性については、後述の[実施例検証結果]において、実施例1及び実施例2の検証結果を示し、本発明の矩形断面ESPは従来技術の円形断面ESPに比べ、装置の大幅な小型化がはかられることを詳述している。船舶のように限られたスペースにESPを設置する場合には、本発明の矩形断面ESPは特に効果がある。
【0017】
(ホ).本発明に係る電気集塵装置の矩形断面ESPは、矩形の集塵電極よりなる矩形筒状体が複数積層された断面矩形の捕集部に、電極支持棒に前記矩形筒状体に各々対応して配置された放電電極を挿入することにより電気集塵装置の主要部であるESPの集塵部を容易に組み立てることができるので、組み立て作業性にも優れ、電気集塵装置の製造コストの低減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施例装置の全体構成の要部を示す概略縦断面図である。
図2図1A−A線上の拡大縦断面図である。
図3図1B−B線上の拡大縦断面図である。
図4】本発明の第2実施例装置の全体構成の要部を示す概略縦断面図である。
図5図4C−C線上の拡大縦断面図である。
図6】本発明のESPによる実施例として、ESPを直列に3段連結させた電気集塵装置を示す概略説明図である。
図7図6に示す電気集塵装置の集塵率の計算例を示す図である。
図8a】従来の円形断面電気集塵装置の概念を示す概略側面図である。
図8b】従来の円形断面電気集塵装置の概念を示す概略軸断面図である。
図9a】本発明の矩形断面の電気集塵装置の概念を示す概略側面である。
図9b】本発明の矩形断面の電気集塵装置の概念を示す概略軸断面図である。
図10】従来の電気集塵装置の一例を示す概略図である。
図11】従来の電気集塵装置の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
I.第1実施例装置(ESP1段方式):
図1図3に示す本発明の第1実施例装置は、船舶用、発電用、産業用等のディーゼルエンジンの排気ガスや、室内粉塵やボイラ、焼却炉、溶接装置、ろう付装置、塗装装置、溶接・ろう付・塗装等が実施される工場、高速道路や車両用道路のトンネル等から放出される排煙、ヒューム、塵埃等を含有する汚濁ガス中の煤塵や粉塵等のダストを除去するコロナ放電を利用したもので(集塵メカニズムは特許文献1及び2と同様)、その電気集塵装置1の構造は前記汚濁ガスが流入する導入管1−1に連設した継管1−2の後流に、外部に設置された高圧電源装置(図示せず)により制御される高圧電源の供給を受けている放電電極2−5及び集塵電極2−6を内蔵した9個の矩形筒状体(以下、説明の便宜上「矩形シェル」と称する)4−1〜4−9のシェル群よりなるモジュールが1段のESP2を内蔵する集塵部1−3が配置されている。
【0020】
前記集塵部1−3には、前記各矩形シェル4−1〜4−9の内周面を構成する前記集塵電極2−6に沿って排出される高濃度汚濁ガス流G−3に含有されている前記煤塵や粉塵等のダストやPMを除去するため、集合配管状の高濃度汚濁ガス導出部1−4が連設され、該高濃度汚濁ガス導出部1−4に各々設けられかつ集合させた高濃度汚濁ガス導出配管1−6を介して該高濃度汚濁ガス流G−3が分別集塵部3のサイクロン3−1に供給されるように構成され、高濃度汚濁ガス流G−3に含有されている前記煤塵や粉塵等のダストやPMをブロアー3−3にて運動エネルギーを付与して高効率に分離集塵除去して排出管3−2よりサイクロン汚濁ガス流G−4として後述する導出管1−9へ排出される構成となしている。
【0021】
一方、前記各矩形シェル4−1〜4−9の中央付近を前記汚濁ガスの流れ方向及び該流れ直角方向に各々所望の間隔を保持して複数配設されている前記放電電極2−5に沿って排出される低濃度汚濁ガス流G−2は、集合配管状の低濃度汚濁ガス導出部1−5をその後部に各々設けかつ集合させた低濃度汚濁ガス導出配管1−7、及び前記低濃度汚濁ガス導出配管の後方に連設した徐々に縮径する継管1−8を介して導出管1−9より煤塵や粉塵等のダストやPMが集塵除去された清浄な放出ガス流G−5となって大気等に放出されるように構成されている。
【0022】
又、前記集塵部1−3は図2に示すように、前記ESP2を構成する放電電極2−5及び集塵電極2−6を各々内蔵した各矩形シェル4−1〜4−9より構成されており、前記放電電極2−5と前記各矩形シェル4−1〜4−9を構成する前記集塵電極2−6との間隔は特に限定するものではないが50mm程度が、前記各矩形シェル4−1〜4−9を構成する前記集塵電極2−6と高濃度汚濁ガス導出部1−4の内面との間隔は10mm程度が各々好ましい。
【0023】
さらに、前記集塵部1−3の上流側には、図1に示すようにシールエアー導入管部2−1に垂設した電極支持棒2−2に多数の電極ステー2−3を介して多数の電極ホルダー2−4が取付けられ、前記電極ホルダー2−4により前記各矩形シェル4−1〜4−9に内蔵された各々の前記放電電極2−5が前記汚濁ガスの流れ方向及び該流れ直角方向に複数設けられている。又、前記放電電極2−5は汚濁ガス中に直線状の針金、三角形状もしくは鋸刃状の板材等で造られており、汚濁ガス流に対する流過抵抗が可及的に小さくなるよう配慮したうえで多数突出した形状を呈した金属製の構造物を用いることができる。
【0024】
なお、集塵部1−3の汚濁ガスの上流及び下流の両側にシールエアー導入管部2−1を設け、かつ集塵電極2−6を両側に設けたシールエアー導入管部2−1を貫通させて放電電極を両持ち状態の構造としてもよい。又、ここでは、9個の矩形シェルを積層させた矩形シェル群より成るモジュールを例示したが、モジュールは単一のシェルにより構成されたものでもよいことはいうまでもない。さらに、各矩形シェルが垂設した電極支持棒2−2と平行に配置された縦長の矩形断面形状の構成例を示したが、電極支持棒2−2と直交して配置された横長の矩形断面形状の構成であってもよく、矩形シェルの配設方向は方向性を問わないことはいうまでもない。
【0025】
II.第2実施例装置(ESPn段方式):
前記第1実施例装置と同様に、船舶用、発電用、産業用等のディーゼルエンジンの排気ガスや、室内粉塵やボイラ、焼却炉、溶接装置、ろう付装置、塗装装置、溶接・ろう付・塗装等が実施される工場、高速道路や車両用道路のトンネル等から放出される排煙、ヒューム、塵埃等を含有する汚濁ガス中の煤塵や粉塵等のダストを除去するコロナ放電を利用した本発明の第2実施例装置は図4及び図5に示すように、汚濁ガス流が流入する導入管に連接した継管の後流に、外部に設置された高圧電源装置に配線されて制御された高圧電源の供給を受けている放電電極12−5a及び集塵電極12−6aを内蔵した9個の第1矩形シェル14−1a〜14−9aのシェル群よりなるモジュールが第1段のESP12aを内蔵する集塵部11−3a、放電電極12−5b及び集塵電極12−6bを内蔵した9個の第2矩形シェル14−1b〜14−9bのシェル群よりなるモジュールが第2段のESP12bを内蔵する集塵部11−3b、放電電極12−5n及び集塵電極12−6nを内蔵したn個の第1矩形シェル14−1n〜14−9nのシェル群よりなるモジュールが第n段のESP12nを内蔵する集塵部11−3nがそれぞれ直列に配置されている。
【0026】
前記集塵部11−3aには、前記第1矩形シェル14−1a〜14−9aの内周面を構成する前記集塵電極12−6aに沿って排出される高濃度汚濁ガス流G−13aに含有されている前記煤塵や粉塵等のダストやPMを除去するため、集合配管状の高濃度汚濁ガス導出部11−4aをその後部に各々設けられかつ集合させた高濃度汚濁ガス導出配管11−6を介して該高濃度汚濁ガス流G−13aが図示しない分別集塵部のサイクロンに供給されるように構成され、前記サイクロンにて前記煤塵や粉塵等のダストやPMをブロアーにて運動エネルギーを付与して高効率に分離集塵除去して図示しない導出管へ排出される構成となしている。
【0027】
一方、前記各第1矩形シェル14−1a〜14−9aの中央付近を前記汚濁ガスの流れ方向及び該流れ直角方向に各々所望の間隔を保持して複数配設されている前記放電電極12−5aに沿って排出される低濃度汚濁ガス流G−12aが流入する第2段目の集塵部11−3bは、集合配管状の低濃度汚濁ガス導出部11−5aをその後部に各々設けかつ集合させた構成となしており、その集塵部11−3bは、汚濁ガスの流量が高濃度汚濁ガスG−13aの流出により減少しているが、第1段のモジュールである前記各第1矩形シェル14−1a〜14−9aのシェル群と同数のシェル数であり第2段のモジュールである第2矩形シェル14−1b〜14−9bのシェル群を内蔵している。
【0028】
前記第2矩形シェル14−1b〜14−9bでは、内周面を構成する集塵電極12−6bに沿って流れる高濃度汚濁ガス流G−13bが排出されてくるので、集合配管状の低濃度汚濁ガス導出部11−4bをその後部に各々設けかつ集合させた高濃度汚濁ガス導出配管11−6に流入させる構成となすとともに、前記各第2矩形シェル14−1b〜14−9bの中央付近を前記汚濁ガスの流れ方向及び該流れ直角方向に各々所望の間隔を保持して複数配設されている前記放電電極12−5bに沿って流れる低濃度汚濁ガス流G−12bが排出されてくるので、集合配管状の低濃度汚濁ガス導出部11−5bをその後部に各々設けかつ集合させて順次最終の段であるn段目の集塵部11−3nに流入させる構成となしている。前記n段目の集塵部11−3nは、汚濁ガスの流量が高濃度汚濁ガスG−13bの流出により減少しているが、第2段のモジュールである前記各第2矩形シェル14−1b〜14−9bのシェル群と同数のシェル数であり第n段のモジュールである第n矩形シェル14−1n〜14−9nのシェル群を内蔵している。
【0029】
前記第n矩形シェル14−1n〜14−9nでも前記第2矩形シェル14−1b〜14−9bと同様に、内周面を構成する集塵電極12−6nに沿って流れる高濃度汚濁ガス流G−13nが排出されてくるので、集合配管状の低濃度汚濁ガス導出部11−4nをその後部に各々設けかつ集合させた高濃度汚濁ガス導出配管11−6に流入させる構成となすとともに、図示しない分別集塵部のサイクロンにて前記煤塵や粉塵等のダストやPMをブロアにて運動エネルギーを付与して高効率に分離集塵除去して図示しない導出管へ排出される構成となしている。
【0030】
一方、前記各第n矩形シェル14−1n〜14−9nの中央付近を前記汚濁ガスの流れ方向及び該流れ直角方向に各々所望の間隔を保持して複数配設されている前記放電電極12−5nに沿って排出される低濃度汚濁ガス流G−12nは、集合配管状の低濃度汚濁ガス導出部11−5nをその後部に各々設けかつ集合させてその後方に連設した徐々に縮径する継管(図面省略)を介して流出管(図面省略)より煤塵や粉塵等のダストやPMが分離集塵除去された清浄な放出ガス流G−5となって大気等に放出されるように構成されている。
【0031】
又、前記各集塵部11−3a、11−3b、11−3nは、前記各段のESP12a、12b、12nを構成する放電電極12−5a、12−5b、12−5n及び集塵電極12−6a、12−6b、12−6nを各々内蔵した各第1矩形シェル14−1a〜14−9a、第2矩形シェル14−1b〜14−9b、第n矩形シェル14−1n〜14−9nを構成する前記集塵電極12−6a、12−6b、12−6nとの間隔は50mm程度が、又、前記各第1矩形シェル14−1a〜14−9a、第2矩形シェル14−1b〜14−9b、第n矩形シェル14−1n〜14−9nを構成する前記集塵電極12−6a、12−6b、12−6n内面と高濃度汚濁ガス導出部11−4a、11−4b、11−4nとの各々の間隔は10mm程度が各々好ましい。
【0032】
又、前記各集塵部11−3a、11−3b、11−3nには、その上流側に設けたシールエアー導入管部12−1a、12−1b、12−1nに垂設した電極支持棒12−2a、12−2b、12−2n、該電極支持棒に設けた多数の電極ステー12−3a、12−3b、12−3nを介して多数の電極ホルダー12−4a、12−4b、12−4nにより、前記各第1矩形シェル14−1a〜14−9a、第2矩形シェル14−1b〜14−9b、第n矩形シェル14−1n〜14−9nに内蔵された各々の前記汚濁ガスの流れ方向及び該流れ直角方向に複数の放電電極12−5a、12−5b、12−5nが設けられている。さらに、前記放電電極12−5a、12−5b、12−5nも、前記第1実施例装置の放電電極2−5と同様に、汚濁ガス中に直線状の針金、三角形状もしくは鋸刃状の板材等で造られており、汚濁ガス流に対する流過抵抗が可及的に小さくなるよう配慮したうえで多数突出した形状を呈した金属製の構造物を用いることができる。
【0033】
なお、各シェルから高濃度汚濁流が分岐流下することにより低濃度汚濁ガス流の流量は順次減少するので、第2段以降の集塵部では当該集塵部を順次小型化して流路断面積の減少やシェル数の減少等を行って集塵装置の小型化及び低廉化をはかってもよい。又、実施例では各モジュールがそれぞれ9個の矩形シェル群よりなる集塵装置を例示したが、モジュールを構成する矩形シェルの個数は特に限定するものではなく、集塵装置の規模に応じて適宜設定すればよい。
【0034】
[実施例検証結果]
次に、本発明の矩形断面ESPと従来技術の円形断面ESPの装置の大きさの比較を示し、本発明の優位性について説明する。
以下に、船舶用ディーゼルエンジン向けに検証した結果の比較を示す。
<エンジン条件>
・エンジン出力:2,500kW
・排ガス流量(ガス温度300℃):30,000m/Hr
【実施例1】
【0035】
1.ESP検証条件
・目標ESP集塵率:50%
・ESP内排ガス流速:10m/s
2.検証結果
・検証した結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【実施例2】
【0037】
1.ESP検証条件
・目標ESP集塵率:88%
・ESP内排ガス流速:10m/s
2.検証結果
・検証した結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
上記の実施例1及び実施例2の検証結果から明らかのように、本発明の矩形断面ESPは従来の円形断面ESPに比べ装置の全長が減少するのみならず、全体容積も減少しており、本発明により装置の大幅な小型化がはかられることが明白である。従って、船舶のように限られたスペースにESPを設置する場合には、本発明の矩形断面ESPは特に優れた効果を発揮する。
【符号の説明】
【0040】
1、11a、11b、11n 電気集塵装置
1−1 導入管
1−2、1−8 継管
1−3、11−3、11−3a、11−3b、11−3n 集塵部
1−4、11−4a、11−4b、11−4n 高濃度汚濁ガス導出部
1−5、11−5a、11−5b、11−5n 低濃度汚濁ガス導出部
1−6、11−6 高濃度汚濁ガス導出配管
1−7、11−7 低濃度汚濁ガス導出配管
1−9 導出管
2、12a、12b、12n 電気集塵機構(ESP)
2−1、12−1a、12−1b、12−1n シールエアー導入管部
2−2、12−2a、12−2b、12−2n 電極支持棒
2−3、12−3a、12−3b、12−3n 電極ステー
2−4、12−4a、12−4b、12−4n 電極ホルダー
2−5、12−5a、12−5b、12−5n 放電電極
2−6、12−6a、12−6b、12−6n 集塵電極
3 分別集塵部
3−1 サイクロン
3−2 排出管
3−3 ブロアー
4−1、4−2、4−3、4−4、4−5、4−6、4−7、4−8、4−9 矩形シェル
14−1a、14−2a、14−3a、14−4a、14−5a、14−6a、14−7a、14−8a、14−9a 第1矩形シェル
14−1b、14−2b、14−3b、14−4b、14−5b、14−6b、14−7b、14−8b、14−9b 第2矩形シェル
14−1n、14−2n、14−3n、14−4n、14−5n、14−6n、14−7n、14−8n、14−9n 第n矩形シェル
G−1 汚濁ガス流
G−2、G−12a、G−12b、G−12n 低濃度汚濁ガス流
G−3、G−13a、G−13b、G−13n 高濃度汚濁ガス流
G−4 サイクロン汚濁ガス流
G−5 放出ガス流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2020年6月3日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用、発電用、産業用等のディーゼルエンジンの排気ガスや、室内粉塵、ボイラ、焼却炉、溶接装置、ろう付装置、塗装装置、溶接・ろう付・塗装等が実施される工場、高速道路や車両用道路のトンネル等から放出される排煙、ヒューム、塵埃等を含有する汚濁ガス(該汚濁ガスには微細な粒子が含まれており、この微細な粒子は粒径が小さいほど浮遊しやすく、例えば、PM10(粒子径10μm以下)は浮遊粒子状物質として知られ、大気中を浮遊し重力で地表に落ちることはほとんどない)中の前記PM(粒状物質)、煤塵、ヒューム、粉塵等のダストを除去するコロナ放電を利用した静電気式の電気集塵装置に係り、より詳しくは特にディーゼルエンジン排ガス中のPM、室内粉塵、排煙、ヒューム、塵埃等を含有する汚濁ガスの導入管の後流に放電電極及び集塵電極よりなる静電気式の電気集塵機構(以下、説明の便宜上「ESP」と称する)を内蔵する集塵部を備えた電気集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナ放電を利用して静電気的にディーゼルエンジン排気ガス中のPM、煤塵、ヒューム、粉塵等のダストを処理する方法としては、例えば本出願人が先に提案した特許文献1、2が知られている。
即ち、特許文献1には、図10にその概略を示すように、重油以下の低質燃料を使用する大排気量ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる粒状物質に帯電させる放電電極101−2、及び帯電された前記粒状物質を捕集する集塵電極を構成する所定長さの管状捕集部101を有し、かつ前記放電電極101−2は前記管状捕集部101を構成する捕集管101−1内に管軸方向に配設された主電極101−2aと該主電極に間隔配設された放射状に突出する複数本の電極針101−2bとによって構成された電気集塵手段と、前記管状捕集部101から剥離した粒状物質を分別して捕集するサイクロン方式の分別捕集手段102を備えたディーゼルエンジン用排ガス処理装置において、前記管状捕集部101の下流側の軸心付近に粒状物質の低濃度排ガス導出管103を、同管状捕集部の下流側の内周面付近に高濃度排ガス導出部101−1bをそれぞれ設け、粒状物質の高濃度排ガス導出部101−1bに前記粒状物質を捕集するサイクロン捕集手段102−1を連設するとともに、該サイクロン捕集手段を接線式サイクロン102−1aで構成し、前記低濃度排ガス導出管103に配設したダンパー107の開度を制御することにより前記接線式サイクロン102−1aへの排ガス流入速度を制御する仕組みとなし、さらに前記捕集管101−1の長さをL、該捕集管の内径をDとした場合、その関係が5D≦L≦15Dの条件を満たすことを特徴とする重油以下の低質燃料を使用する大排気量ディーゼルエンジン用排ガス処理装置が提案されている。
【0003】
又、特許文献2には、例えば図11にその概略を示すように、所定長さの主捕集管201よりなる管状捕集部に、重油を使用するディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる粒状物質に帯電させる放電電極201−1A−1、201−2A−1、201−3A−1、及び帯電された前記粒状物質を捕集する集塵電極を構成する所定長さの管状捕集部201−1、201−2、201−3を有し、かつ前記放電電極は管状捕集部内に管軸方向に配設された主電極202と該主電極に配設された放射状に突出する電極とによって構成された電気集塵手段を備え、前記放電電極及び集塵電極である単一径で所定長さの主捕集管よりなる管状捕集部201−1、201−2、201−3に、軸方向に短寸で径の異なる管状捕集モジュールを複数段に配置したディーゼルエンジン排ガス処理装置の放電電極であって、前記複数段に配置した管状捕集モジュールの少なくとも一つの管状捕集モジュールの放電電極が主電極202の外周にステー201−1A−1e、201−2A−1e、201−3A−1eを介して取着された同主電極と同心円筒状の放電電極支持筒201−1A−1d、201−2A−1d、201−3A−1dと、該放電電極支持筒の表面に周方向及び管軸方向に所望の間隔を隔てて放射状に配置された短尺の放電電極針201−1A−1c、201−2A−1c、201−3A−1cあるいは低高さ鋸刃状放電電極板とで構成され、かつ前記短尺の放電電極針あるいは低高さ鋸刃状放電電極板の径方向長さが10〜30mm、当該放電電極針あるいは低高さ鋸刃状放電電極板の先端と捕集壁面との間隔が30〜70mmとなし、前記管状捕集部の最上流の管状捕集モジュールの前記放電電極支持筒の上流側開口端部が円錐状蓋部201−1A−1d´、201−2A−1d´、201−3A−1d´により閉塞されていることを特徴とするディーゼルエンジン排ガス処理用電気集塵装置の放電電極が本出願人により提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5863087号
【特許文献2】特開2017−952号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の静電気式の電気集塵装置には、以下に記載する課題がある。
即ち、前記特許文献1、2に記載された重油以下の低質燃料を使用する大排気量ディーゼルエンジン用排ガス処理装置にあっては、管状捕集部101、201−1、201−2、201−3を構成する内面を捕集壁面とする捕集管は、断面が円形であってその内径Dに対する長さLの比率はL=5D〜15Dの長尺を必要としており、かつ前記管状捕集部の断面が円形であるが故に断面が矩形(正方形)のものに比べて断面の面積効率が悪く(辺の長さDの矩形(正方形)断面と直径Dの円径断面を比較するとD:1/4・πDであり“1/4・π≒0.7853”即ち約21%相当の面積が小さい)、そのため円形断面の捕集管を用いた集塵装置は長尺で大径の大型な装置とならざるを得ず、集塵装置の設置に際し設置スペースの確保に困難を要するという課題を有していた。
【0006】
本発明は、上記した従来技術の課題を解消するためになされたもので、特にディーゼルエンジン排ガス中のPM、室内粉塵、排煙、ヒューム、塵埃等のダストを含有する汚濁ガスが流入する導入管の後流に放電電極及び集塵電極よりなる静電気式の電気集塵機構を内蔵する集塵部を備えた電気集塵装置であって、前記管状捕集部を構成する内面を捕集壁面とする捕集管を、従来の円形断面の捕集管に替えて矩形断面の捕集管を採用することにより、装置の小型化を実現して設置スペースにおける容積効率の優れた電気集塵装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の電気集塵装置は、ディーゼルエンジン排ガス中のPM、室内粉塵、排煙、ヒューム、塵埃等のダストを含有する汚濁ガスが流入する導入管の後流に放電電極及び集塵電極よりなる静電気式の電気集塵機構を内蔵する集塵部を備えた電気集塵装置において、前記集塵部は、前記放電電極及び前記集塵電極を内蔵し汚濁ガスの流れ方向に直角な断面が矩形をなすとともに汚濁ガスの流れ方向に所定長さを有する矩形筒状体を少なくとも1個有し、前記矩形筒状体の平坦な4壁面を集塵電極とすると共に該集塵電極と放電間隔を保持して前記放電電極を前記矩形筒状体の中央付近に前記汚濁ガスの流れ方向及び該流れ直角方向に各々所定の間隔を保持して配置し、前記集塵電極に沿って流れるダスト等を高濃度に含有する高濃度汚濁ガス流を集合し排出する高濃度汚濁ガス導出部と、前記放電電極に沿って流れるダスト等を低濃度に含有する低濃度汚濁ガス流を集合し排出する低濃度汚濁ガス導出部を前記矩形筒状体の後部に各々設けると共に、前記高濃度汚濁ガス導出部の後流に高濃度汚濁ガス導出配管を設け、さらに前記高濃度汚濁ガス導出配管の後流に高濃度排ガス流からダスト等を除去する分別集塵部を設けると共に該分別集塵部の後流に排出管を配設し、前記低濃度汚濁ガス導出部の後流に配設した低濃度汚濁ガス導出配管より低濃度汚濁ガスを放出ガス流として放出させる構成となしたことを特徴とするものである。
前記第1の電気集塵装置における前記集塵部は、前記矩形筒状体を並列に複数積層した筒状体群よりなるモジュールにより構成され、かつ各々の前記矩形筒状体に前記高濃度汚濁ガス導出部及び前記低濃度汚濁ガス導出部が集合配管状に配設されていることを好ましい態様とするものである。
【0008】
又、本発明に係る第2の電気集塵装置は、ディーゼルエンジン排ガス、PM、室内粉塵、排煙、ヒューム、塵埃等のダストを含有する汚濁ガスが流入する導入管の後流に放電電極及び集塵電極よりなる静電気式の電気集塵機構を内蔵する集塵部を複数備えた電気集塵装置において、前記各集塵部は、前記放電電極及び前記集塵電極を内蔵し汚濁ガスの流れ方向に直角な断面が矩形をなすとともに汚濁ガスの流れ方向に所望の長さを有する少なくとも一個の矩形筒状体を汚濁ガスの流れ方向に複数段配設し、前記矩形筒状体の平坦な4壁面を集塵電極とするとともに該集塵電極と放電間隔を保持して前記放電電極を前記矩形筒状体の中央付近に前記汚濁ガスの流れ方向及び該流れ直角方向に各々所定の間隔を保持して配置し、前記集塵電極に沿って流れるダスト等を高濃度に含有する高濃度汚濁ガス流を集合し排出する高濃度汚濁ガス導出部と、前記放電電極に沿って流れるダスト等を低濃度に含有する低濃度汚濁ガス流を集合し排出する低濃度汚濁ガス導出部を前記矩形筒状体の後部に各々設け、さらに前記高濃度汚濁ガス導出部の後流に高濃度汚濁ガス導出配管を接続するとともに、該高濃度汚濁ガス導出配管には排出管を有する分別集塵部を設けて高濃度汚濁ガス流からダスト等を除去せしめて放出させるように構成され、かつ前記低濃度汚濁ガス導出部を後段の矩形筒状体を有する集塵部に接続させて再浄化処理もしくは低濃度汚濁ガス導出管に接続させて低濃度汚濁ガス流を放出ガス流として放出させる構成となしたことを特徴とするものである。
前記第2の電気集塵装置における前記集塵部は、前記矩形筒状体を並列に複数積層した筒状体群よりなるモジュールにより各々構成され、かつ各々の前記矩形筒状体に前記高濃度汚濁ガス導出部及び前記低濃度汚濁ガス導出部が集合配管状に配設されていることを好ましい態様とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電気集塵装置は、基本的に集塵部に搭載される静電気式の電気集塵機構により前記特許文献2の静電集塵機構と同様にダスト等が集塵される。従来技術の問題点と本発明の効果を図8a、図8b、図9a、図9bに基づいて以下に説明する。なお、下記(イ)、(ロの1)、(ロの2)は図8a、図8bと対応している。
【0010】
(イ).本発明に係る電気集塵装置は、図8aに示すように集塵捕集部の断面が矩形であることにより、従来の円形断面のESPと比較し、矩形の四隅部分に存在する無駄なスペース(捕集に寄与しないデッドスペース)が無く、矩形断面の面積効率は段落0005に記載の通り約21%優れ、その結果、設置スペースにおける容積効率に優れる。
【0011】
(ロの1).従来技術の円形断面ESPでは、径の異なる捕集管(小径捕集管〜大径捕集管)の円筒状捕集壁の外側を通過するダストへのコロナ放電+クーロン力発生+捕集面付着を発生させることのできない無駄なスペースが存在したが、本発明の矩形断面ESPではこの無駄なスペースが存在しないので設置スペースにおける容積効率に優れる。
【0012】
(ロの2).従来技術の円形断面ESPでは、円筒状の放電電極支持筒内面側を通過するダストへのコロナ放電+クーロン力発生+捕集面付着を発生させることのできない無駄なスペースが存在したが、本発明の矩形断面ESPではこの無駄なスペースが存在しないので設置スペースにおける容積効率に優れる。
【0013】
(ハ).加えて、本発明の矩形断面ESPを直列に複数段連結させた装置(実施例2、図4図5に対応)と従来技術の円形断面ESP(図11に対応)の装置の主寸法を示し、本発明の効果を定量的に比較する。
まず、矩形断面ESPを直列に複数段連結させた場合の集塵効率に対する効果を示す。矩形断面ESPを直列に例えば3段連結させた集塵装置の概略説明図を図6に、集塵効率を図7に示す。
【0014】
矩形断面ESPを直列に複数段連結させた場合の集塵率
<検証条件>
集塵率η(%);50%、60%、70%
トータル集塵率;ηT (%)[ηT =1−(1−η)n]
連結段数n;3段
<結果>
(1).集塵率50%の集塵捕集部を直列に3段連結させた場合のトータル集塵率は88%。
(2).集塵率60%の集塵捕集部を直列に3段連結させた場合のトータル集塵率は94%。
(3).集塵率70%の集塵捕集部を直列に3段連結させた場合のトータル集塵効率98%。
【0015】
上記の結果より、矩形断面ESPを複数段連結させるとトータル集塵率は上記の通り上昇することが明らかである。従って、実用設備においては、集塵装置の規模、製造、設置、操業等の観点からは、1台当たりのESPの長さを短尺にして、短尺のESPを複数段連結させることでトータル集塵率の向上をはかることが実用的である。
【0016】
(ニ).本発明と従来技術のESPの大きさの概念的な比較を以下に示す。
図8a、図8bは前記したように従来技術(特許文献2)の円形断面ESPに無駄スペースが存在することを示す概念的な説明図であり、図9a、図9bは本発明の矩形断面ESPの1モジュールの寸法の概念的な説明図である。両図を比較すると、矩形断面ESPでは無駄スペースが減少していることが見られる。
本発明の優位性については、後述の[実施例検証結果]において、実施例1及び実施例2の検証結果を示し、本発明の矩形断面ESPは従来技術の円形断面ESPに比べ、装置の大幅な小型化がはかられることを詳述している。船舶のように限られたスペースにESPを設置する場合には、本発明の矩形断面ESPは特に効果がある。
【0017】
(ホ).本発明に係る電気集塵装置の矩形断面ESPは、矩形の集塵電極よりなる矩形筒状体が複数積層された断面矩形の捕集部に、電極支持棒に前記矩形筒状体に各々対応して配置された放電電極を挿入することにより電気集塵装置の主要部であるESPの集塵部を容易に組み立てることができるので、組み立て作業性にも優れ、電気集塵装置の製造コストの低減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施例装置の全体構成の要部を示す概略縦断面図である。
図2図1A−A線上の拡大縦断面図である。
図3図1B−B線上の拡大縦断面図である。
図4】本発明の第2実施例装置の全体構成の要部を示す概略縦断面図である。
図5図4C−C線上の拡大縦断面図である。
図6】本発明のESPによる実施例として、ESPを直列に3段連結させた電気集塵装置を示す概略説明図である。
図7図6に示す電気集塵装置の集塵率の計算例を示す図である。
図8a】従来の円形断面電気集塵装置の概念を示す概略側面図である。
図8b】従来の円形断面電気集塵装置の概念を示す概略軸断面図である。
図9a】本発明の矩形断面の電気集塵装置の概念を示す概略側面である。
図9b】本発明の矩形断面の電気集塵装置の概念を示す概略軸断面図である。
図10】従来の電気集塵装置の一例を示す概略図である。
図11】従来の電気集塵装置の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
I.第1実施例装置(ESP1段方式):
図1図3に示す本発明の第1実施例装置は、船舶用、発電用、産業用等のディーゼルエンジンの排気ガスや、室内粉塵やボイラ、焼却炉、溶接装置、ろう付装置、塗装装置、溶接・ろう付・塗装等が実施される工場、高速道路や車両用道路のトンネル等から放出される排煙、ヒューム、塵埃等を含有する汚濁ガス中の煤塵や粉塵等のダストを除去するコロナ放電を利用したもので(集塵メカニズムは特許文献1及び2と同様)、その電気集塵装置1の構造は前記汚濁ガスが流入する導入管1−1に連設した継管1−2の後流に、外部に設置された高圧電源装置(図示せず)により制御される高圧電源の供給を受けている放電電極2−5及び集塵電極2−6を内蔵した9個の矩形筒状体(以下、説明の便宜上「矩形シェル」と称する)4−1〜4−9のシェル群よりなるモジュールが1段のESP2を内蔵する集塵部1−3が配置されている。
【0020】
前記集塵部1−3には、前記各矩形シェル4−1〜4−9の内周面を構成する前記集塵電極2−6に沿って排出される高濃度汚濁ガス流G−3に含有されている前記煤塵や粉塵等のダストやPMを除去するため、集合配管状の高濃度汚濁ガス導出部1−4が連設され、該高濃度汚濁ガス導出部1−4に各々設けられかつ集合させた高濃度汚濁ガス導出配管1−6を介して該高濃度汚濁ガス流G−3が分別集塵部3のサイクロン3−1に供給されるように構成され、高濃度汚濁ガス流G−3に含有されている前記煤塵や粉塵等のダストやPMをブロアー3−3にて運動エネルギーを付与して高効率に分離集塵除去して排出管3−2よりサイクロン汚濁ガス流G−4として後述する導出管1−9へ排出される構成となしている。
【0021】
一方、前記各矩形シェル4−1〜4−9の中央付近を前記汚濁ガスの流れ方向及び該流れ直角方向に各々所望の間隔を保持して複数配設されている前記放電電極2−5に沿って排出される低濃度汚濁ガス流G−2は、集合配管状の低濃度汚濁ガス導出部1−5をその後部に各々設けかつ集合させた低濃度汚濁ガス導出配管1−7、及び前記低濃度汚濁ガス導出配管の後方に連設した徐々に縮径する継管1−8を介して導出管1−9より煤塵や粉塵等のダストやPMが集塵除去された清浄な放出ガス流G−5となって大気等に放出されるように構成されている。
【0022】
又、前記集塵部1−3は図2に示すように、前記ESP2を構成する放電電極2−5及び集塵電極2−6を各々内蔵した各矩形シェル4−1〜4−9より構成されており、前記放電電極2−5と前記各矩形シェル4−1〜4−9を構成する前記集塵電極2−6との間隔は特に限定するものではないが50mm程度が、前記各矩形シェル4−1〜4−9を構成する前記集塵電極2−6と高濃度汚濁ガス導出部1−4の内面との間隔は10mm程度が各々好ましい。
【0023】
さらに、前記集塵部1−3の上流側には、図1に示すようにシールエアー導入管部2−1に垂設した電極支持棒2−2に多数の電極ステー2−3を介して多数の電極ホルダー2−4が取付けられ、前記電極ホルダー2−4により前記各矩形シェル4−1〜4−9に内蔵された各々の前記放電電極2−5が前記汚濁ガスの流れ方向及び該流れ直角方向に複数設けられている。又、前記放電電極2−5は汚濁ガス中に直線状の針金、三角形状もしくは鋸刃状の板材等で造られており、汚濁ガス流に対する流過抵抗が可及的に小さくなるよう配慮したうえで多数突出した形状を呈した金属製の構造物を用いることができる。
【0024】
なお、集塵部1−3の汚濁ガスの上流及び下流の両側にシールエアー導入管部2−1を設け、かつ集塵電極2−6を両側に設けたシールエアー導入管部2−1を貫通させて放電電極を両持ち状態の構造としてもよい。又、ここでは、9個の矩形シェルを積層させた矩形シェル群より成るモジュールを例示したが、モジュールは単一のシェルにより構成されたものでもよいことはいうまでもない。さらに、各矩形シェルが垂設した電極支持棒2−2と平行に配置された縦長の矩形断面形状の構成例を示したが、電極支持棒2−2と直交して配置された横長の矩形断面形状の構成であってもよく、矩形シェルの配設方向は方向性を問わないことはいうまでもない。
【0025】
II.第2実施例装置(ESPn段方式):
前記第1実施例装置と同様に、船舶用、発電用、産業用等のディーゼルエンジンの排気ガスや、室内粉塵やボイラ、焼却炉、溶接装置、ろう付装置、塗装装置、溶接・ろう付・塗装等が実施される工場、高速道路や車両用道路のトンネル等から放出される排煙、ヒューム、塵埃等を含有する汚濁ガス中の煤塵や粉塵等のダストを除去するコロナ放電を利用した本発明の第2実施例装置は図4及び図5に示すように、汚濁ガス流が流入する導入管に連接した継管の後流に、外部に設置された高圧電源装置に配線されて制御された高圧電源の供給を受けている放電電極12−5a及び集塵電極12−6aを内蔵した9個の第1矩形シェル14−1a〜14−9aのシェル群よりなるモジュールが第1段のESP12aを内蔵する集塵部11−3a、放電電極12−5b及び集塵電極12−6bを内蔵した9個の第2矩形シェル14−1b〜14−9bのシェル群よりなるモジュールが第2段のESP12bを内蔵する集塵部11−3b、放電電極12−5n及び集塵電極12−6nを内蔵したn個の第1矩形シェル14−1n〜14−9nのシェル群よりなるモジュールが第n段のESP12nを内蔵する集塵部11−3nがそれぞれ直列に配置されている。
【0026】
前記集塵部11−3aには、前記第1矩形シェル14−1a〜14−9aの内周面を構成する前記集塵電極12−6aに沿って排出される高濃度汚濁ガス流G−13aに含有されている前記煤塵や粉塵等のダストやPMを除去するため、集合配管状の高濃度汚濁ガス導出部11−4aをその後部に各々設けられかつ集合させた高濃度汚濁ガス導出配管11−6を介して該高濃度汚濁ガス流G−13aが図示しない分別集塵部のサイクロンに供給されるように構成され、前記サイクロンにて前記煤塵や粉塵等のダストやPMをブロアーにて運動エネルギーを付与して高効率に分離集塵除去して図示しない導出管へ排出される構成となしている。
【0027】
一方、前記各第1矩形シェル14−1a〜14−9aの中央付近を前記汚濁ガスの流れ方向及び該流れ直角方向に各々所望の間隔を保持して複数配設されている前記放電電極12−5aに沿って排出される低濃度汚濁ガス流G−12aが流入する第2段目の集塵部11−3bは、集合配管状の低濃度汚濁ガス導出部11−5aをその後部に各々設けかつ集合させた構成となしており、その集塵部11−3bは、汚濁ガスの流量が高濃度汚濁ガスG−13aの流出により減少しているが、第1段のモジュールである前記各第1矩形シェル14−1a〜14−9aのシェル群と同数のシェル数であり第2段のモジュールである第2矩形シェル14−1b〜14−9bのシェル群を内蔵している。
【0028】
前記第2矩形シェル14−1b〜14−9bでは、内周面を構成する集塵電極12−6bに沿って流れる高濃度汚濁ガス流G−13bが排出されてくるので、集合配管状の低濃度汚濁ガス導出部11−4bをその後部に各々設けかつ集合させた高濃度汚濁ガス導出配管11−6に流入させる構成となすとともに、前記各第2矩形シェル14−1b〜14−9bの中央付近を前記汚濁ガスの流れ方向及び該流れ直角方向に各々所望の間隔を保持して複数配設されている前記放電電極12−5bに沿って流れる低濃度汚濁ガス流G−12bが排出されてくるので、集合配管状の低濃度汚濁ガス導出部11−5bをその後部に各々設けかつ集合させて順次最終の段であるn段目の集塵部11−3nに流入させる構成となしている。前記n段目の集塵部11−3nは、汚濁ガスの流量が高濃度汚濁ガスG−13bの流出により減少しているが、第2段のモジュールである前記各第2矩形シェル14−1b〜14−9bのシェル群と同数のシェル数であり第n段のモジュールである第n矩形シェル14−1n〜14−9nのシェル群を内蔵している。
【0029】
前記第n矩形シェル14−1n〜14−9nでも前記第2矩形シェル14−1b〜14−9bと同様に、内周面を構成する集塵電極12−6nに沿って流れる高濃度汚濁ガス流G−13nが排出されてくるので、集合配管状の低濃度汚濁ガス導出部11−4nをその後部に各々設けかつ集合させた高濃度汚濁ガス導出配管11−6に流入させる構成となすとともに、図示しない分別集塵部のサイクロンにて前記煤塵や粉塵等のダストやPMをブロアにて運動エネルギーを付与して高効率に分離集塵除去して図示しない導出管へ排出される構成となしている。
【0030】
一方、前記各第n矩形シェル14−1n〜14−9nの中央付近を前記汚濁ガスの流れ方向及び該流れ直角方向に各々所望の間隔を保持して複数配設されている前記放電電極12−5nに沿って排出される低濃度汚濁ガス流G−12nは、集合配管状の低濃度汚濁ガス導出部11−5nをその後部に各々設けかつ集合させてその後方に連設した徐々に縮径する継管(図面省略)を介して流出管(図面省略)より煤塵や粉塵等のダストやPMが分離集塵除去された清浄な放出ガス流G−15となって大気等に放出されるように構成されている。
【0031】
又、前記各集塵部11−3a、11−3b、11−3nは、前記各段のESP12a、12b、12nを構成する放電電極12−5a、12−5b、12−5n及び集塵電極12−6a、12−6b、12−6nを各々内蔵した各第1矩形シェル14−1a〜14−9a、第2矩形シェル14−1b〜14−9b、第n矩形シェル14−1n〜14−9nを構成する前記集塵電極12−6a、12−6b、12−6nとの間隔は50mm程度が、又、前記各第1矩形シェル14−1a〜14−9a、第2矩形シェル14−1b〜14−9b、第n矩形シェル14−1n〜14−9nを構成する前記集塵電極12−6a、12−6b、12−6n内面と高濃度汚濁ガス導出部11−4a、11−4b、11−4nとの各々の間隔は10mm程度が各々好ましい。
【0032】
又、前記各集塵部11−3a、11−3b、11−3nには、その上流側に設けたシールエアー導入管部12−1a、12−1b、12−1nに垂設した電極支持棒12−2a、12−2b、12−2n、該電極支持棒に設けた多数の電極ステー12−3a、12−3b、12−3nを介して多数の電極ホルダー12−4a、12−4b、12−4nにより、前記各第1矩形シェル14−1a〜14−9a、第2矩形シェル14−1b〜14−9b、第n矩形シェル14−1n〜14−9nに内蔵された各々の前記汚濁ガスの流れ方向及び該流れ直角方向に複数の放電電極12−5a、12−5b、12−5nが設けられている。さらに、前記放電電極12−5a、12−5b、12−5nも、前記第1実施例装置の放電電極2−5と同様に、汚濁ガス中に直線状の針金、三角形状もしくは鋸刃状の板材等で造られており、汚濁ガス流に対する流過抵抗が可及的に小さくなるよう配慮したうえで多数突出した形状を呈した金属製の構造物を用いることができる。
【0033】
なお、各シェルから高濃度汚濁流が分岐流下することにより低濃度汚濁ガス流の流量は順次減少するので、第2段以降の集塵部では当該集塵部を順次小型化して流路断面積の減少やシェル数の減少等を行って集塵装置の小型化及び低廉化をはかってもよい。又、実施例では各モジュールがそれぞれ9個の矩形シェル群よりなる集塵装置を例示したが、モジュールを構成する矩形シェルの個数は特に限定するものではなく、集塵装置の規模に応じて適宜設定すればよい。
【0034】
[実施例検証結果]
次に、本発明の矩形断面ESPと従来技術の円形断面ESPの装置の大きさの比較を示し、本発明の優位性について説明する。
以下に、船舶用ディーゼルエンジン向けに検証した結果の比較を示す。
<エンジン条件>
・エンジン出力:2,500kW
・排ガス流量(ガス温度300℃):30,000m/Hr
【実施例1】
【0035】
1.ESP検証条件
●目標ESP集塵率:50%
●ESP内排ガス流速:10m/s
2.検証結果
●検証した結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【実施例2】
【0037】
1.ESP検証条件
●目標ESP集塵率:88%
●ESP内排ガス流速:10m/s
2.検証結果
●検証した結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
上記の実施例1及び実施例2の検証結果から明らかのように、本発明の矩形断面ESPは従来の円形断面ESPに比べ装置の全長が減少するのみならず、全体容積も減少しており、本発明により装置の大幅な小型化がはかられることが明白である。従って、船舶のように限られたスペースにESPを設置する場合には、本発明の矩形断面ESPは特に優れた効果を発揮する。
【符号の説明】
【0040】
1、11a、11b、11n 電気集塵装置
1−1 導入管
1−2、1−8 継管
1−3、11−3、11−3a、11−3b、11−3n 集塵部
1−4、11−4a、11−4b、11−4n 高濃度汚濁ガス導出部
1−5、11−5a、11−5b、11−5n 低濃度汚濁ガス導出部
1−6、11−6 高濃度汚濁ガス導出配管
1−7、11−7 低濃度汚濁ガス導出配管
1−9 導出管
2、12a、12b、12n 電気集塵機構(ESP)
2−1、12−1a、12−1b、12−1n シールエアー導入管部
2−2、12−2a、12−2b、12−2n 電極支持棒
2−3、12−3a、12−3b、12−3n 電極ステー
2−4、12−4a、12−4b、12−4n 電極ホルダー
2−5、12−5a、12−5b、12−5n 放電電極
2−6、12−6a、12−6b、12−6n 集塵電極
3 分別集塵部
3−1 サイクロン
3−2 排出管
3−3 ブロアー
4−1、4−2、4−3、4−4、4−5、4−6、4−7、4−8、4−9 矩形シェル
14−1a、14−2a、14−3a、14−4a、14−5a、14−6a、14−7a、14−8a、14−9a 第1矩形シェル
14−1b、14−2b、14−3b、14−4b、14−5b、14−6b、14−7b、14−8b、14−9b 第2矩形シェル
14−1n、14−2n、14−3n、14−4n、14−5n、14−6n、14−7n、14−8n、14−9n 第n矩形シェル
G−1 汚濁ガス流
G−2、G−12a、G−12b、G−12n 低濃度汚濁ガス流
G−3、G−13a、G−13b、G−13n 高濃度汚濁ガス流
G−4 サイクロン汚濁ガス流
G−5、G−15 放出ガス流
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図10
図11