特開2020-195963(P2020-195963A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-195963(P2020-195963A)
(43)【公開日】2020年12月10日
(54)【発明の名称】水素分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20201113BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20201113BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20201113BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20201113BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20201113BHJP
【FI】
   B01D53/22
   B01D69/10
   B01D69/12
   B01D71/02 500
   C01B3/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2019-103837(P2019-103837)
(22)【出願日】2019年6月3日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業CREST 研究課題名「バナジウム系合金膜による次世代エネルギーキャリアからの革新的水素分離・精製基盤技術の創出」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】391033517
【氏名又は名称】太陽鉱工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉永 英雄
(72)【発明者】
【氏名】中川 宏司
(72)【発明者】
【氏名】湯川 宏
(72)【発明者】
【氏名】湯川 伸樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 睦
(72)【発明者】
【氏名】松本 佳久
(72)【発明者】
【氏名】南部 智憲
【テーマコード(参考)】
4D006
4G140
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA41
4D006JA02A
4D006JA02B
4D006JA07A
4D006JA07C
4D006JA07Z
4D006JA23B
4D006JA23C
4D006KA52
4D006KA53
4D006KA54
4D006KA56
4D006MA03
4D006MA10
4D006MC02
4D006PA01
4D006PB66
4D006PC80
4G140FA06
4G140FC01
4G140FE01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水素透過膜の構成金属として非パラジウム金属を用い、水素透過膜表面の皺や、水素透過試験を行った際の水素分離膜端部の亀裂や破壊を抑制し、再利用することができる水素分離装置の提供。
【解決手段】表面が平坦状に形成された中央部と、表面に凹凸形状を有する外周部とを有している水素透過膜50を、一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42で挟持し、二次側ガスケット42の厚みを水素透過膜50の外周部が有する凹凸形状の最大高低差の2.2〜3.8倍とする。あるいは、表面が平坦状に形成された中央部と、表面に凹凸形状を有する外周部とを有している水素透過膜50を、一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42で挟持し、水素透過膜50の二次側に、表面が平坦状に形成された中央部と、表面に水素透過膜50の外周部が有する凹凸形状と嵌合するように形成された凹凸形状を有する外周部とを有する多孔質の支持体52を配置する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を透過する水素透過膜と、
前記水素透過膜を挟持するための一次側ガスケット及び二次側ガスケットとを備え、
前記水素透過膜は、その表面が平坦状に形成された中央部と、その表面に凹凸形状を有する外周部とを有しており、
前記二次側ガスケットの厚みが、前記水素透過膜の外周部が有する凹凸形状の最大高低差の2.2〜3.8倍である、水素分離装置。
【請求項2】
さらに、水素を含む原料気体を前記水素透過膜の一次側表面に供給するための原料気体供給流路と、
前記水素透過膜の二次側表面へ透過した水素を回収するための水素回収流路と、
前記水素透過膜と隣接又は隔離して、前記水素透過膜の二次側に配置された多孔質の支持体と、
を備える、請求項1に記載の水素分離装置。
【請求項3】
水素を透過する水素透過膜と、
前記水素透過膜を挟持するための一次側ガスケット及び二次側ガスケットと、
水素を含む原料気体を前記水素透過膜の一次側表面に供給するための原料気体供給流路と、
前記水素透過膜の二次側表面へ透過した水素を回収するための水素回収流路と、
前記水素透過膜と隣接するように二次側表面に配置された多孔質の支持体とを備え、
前記水素透過膜は、その表面が平坦状に形成された中央部と、その表面に凹凸形状を有する外周部とを有しており、
前記支持体は、その表面が平坦状に形成された中央部と、その表面に前記水素透過膜の外周部が有する凹凸形状と嵌合するように形成された凹凸形状を有する外周部とを有している、水素分離装置。
【請求項4】
前記水素透過膜の直径が60mm以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水素分離装置。
【請求項5】
前記水素透過膜における前記中央部の直径が、前記水素透過膜の直径の0.2〜0.8倍である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水素分離装置。
【請求項6】
前記水素透過膜が、非パラジウム金属又は非パラジウム金属を含む合金からなる膜を備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水素分離装置。
【請求項7】
前記水素透過膜が、さらに、表面にパラジウム又はパラジウムを含む合金からなる層を備える、請求項6に記載の水素分離装置。
【請求項8】
前記非パラジウム金属が、周期表第5族金属である、請求項6又は7に記載の水素分離装置。
【請求項9】
さらに、前記水素透過膜の一次側表面の上方に配置された流路形成部を更に備え、前記原料気体供給流路から供給された前記原料気体を前記水素透過膜の一次側表面に沿って分配するための流路を形成している、請求項1〜8のいずれか1項に記載の水素分離装置。
【請求項10】
前記水素透過膜と前記流路形成部との間の距離が4mm以下である、請求項9に記載の水素分離装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の水素分離装置の製造方法であって、
(1)前記水素透過膜の外周部にプレス加工を施して外周部の表面に凹凸形状を形成する工程、及び
(2)前記工程(1)の後、プレス加工を施した前記水素透過膜を一次側ガスケット及び二次側ガスケットで挟持する工程
を備える、製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の水素分離装置を複数備え、
上流側の前記水素分離装置において前記水素透過膜を透過しなかった気体が、下流側の前記水素分離装置の前記原料気体供給流路に供給される配管を備える、水素分離モジュール。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の水素分離装置又は請求項12に記載の水素分離モジュールを用いて、水素を含む原料気体から水素を精製する工程を備える、水素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素が様々な分野において注目され、重要な役割を果たしている。例えば、家庭用燃料電池型コージェネレーションシステムや燃料電池自動車などにおいて、新しいエネルギーとして水素が利用されている。また、気相エピタキシャル成長法を用いたシリコンウェハ半導体材料の結晶成長や加工におけるキャリアガスとして、高純度水素ガスが使用されている。
【0003】
固体高分子型燃料電池では、一酸化炭素等の不純物ガスによって負極触媒が被毒されるため、高純度の水素ガスを使用することが求められる。例えば、燃料電池自動車では、99.99%以上の高純度水素を供給する必要がある。また、半導体材料の結晶成長や加工におけるキャリアガスとして水素を使用する場合、不純物の混入によって半導体特性が低下することを避けるため、99.9999999%以上の超高純度水素ガスが必要とされる。さらに、アンモニアやメタノール等の薬品を製造する原料としても、高純度水素が必要とされている。なお、副生水素や水素キャリアからの分解ガスなど水素以外の気体成分を含む水素混合ガスからも高純度の水素ガスを分離回収する技術が要求されている。このように、高純度の水素の需要が益々高まっているため、高純度の水素を高効率かつ安定的に供給する技術が求められている。
【0004】
このような高純度の水素を提供する方法としては、例えば、パラジウム膜又はパラジウム合金膜で構成される水素透過膜を用いて、高水素圧側(以下、「一次側」と言うことがある)から低水素圧側(以下、「二次側」と言うことがある)にかけて水素を拡散させて高純度の水素を得る方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上記のように、パラジウム膜又はパラジウム合金膜で構成される水素透過膜は実用化されているものの、パラジウムは高価であるため、非パラジウム金属を主な構成金属とする水素透過膜の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−059902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水素透過膜の構成金属としては、パラジウムと比較しても水素の透過速度の早いニオブ、バナジウム、タンタル等の周期表第5族金属が有望である。周期表第5族金属膜は水素のみを透過する機能を利用して水素を含む混合ガスから水素のみを分離及び精製することができる。膜表面での水素分子の解離、溶解、溶出及び再結合反応を促進するための触媒として、あるいは水素以外のガス成分による被毒を防止する目的で、膜表面にはパラジウム又はパラジウム合金触媒がコーティングされていることが多い。これらの周期表第5族金属は、安価であり水素の透過速度が早いために有望な金属ではあるが、水素の透過速度が速いゆえに、水素が透過する際に水素の吸蔵により体積膨張しやすく、結果的に水素脆化しやすい。このため、水素膨張応力(水素透過膜両面の圧力差)により水素透過膜が破断してしまう。水素透過膜を当該水素透過膜の二次側に設置した支持体上に配置することによれば、上記の破断は抑制できるものの、水素分離装置の大型化のために、水素透過膜を大型化する際には、水素吸蔵による体積膨張によって水素透過膜表面に多数の皺が発生してしまう。また、水素透過試験を行うと、水素透過膜の端部において亀裂が発生するとともに水素透過膜が破壊される。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決しようとするものであり、水素透過膜の構成金属として非パラジウム金属を主として用い、大型化した場合であっても、水素透過膜表面の皺や、水素透過試験を行った際の水素分離膜端部の亀裂や破壊を抑制し、再利用することができる水素分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するため、鋭意研究した結果、本発明者らは、その表面が平坦状に形成された中央部と、その表面に凹凸形状を有する外周部とを有している水素透過膜を、一次側ガスケット及び二次側ガスケットで挟持し、二次側ガスケットの厚みを水素透過膜の外周部が有する凹凸形状の最大高低差の2.2〜3.8倍とすることで、上記課題を解決することができることを見出した。また、本発明者らは、その表面が平坦状に形成された中央部と、その表面に凹凸形状を有する外周部とを有している水素透過膜を、一次側ガスケット及び二次側ガスケットで挟持し、水素透過膜と隣接するように二次側表面に、その表面が平坦状に形成された中央部と、その表面に前記水素透過膜の外周部が有する凹凸形状と嵌合するように形成された凹凸形状を有する外周部とを有する多孔質の支持体を配置することによっても、上記課題を解決することができることを見出した。本発明者らは、さらに研究を重ね、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下の構成を包含する。
項1.水素を透過する水素透過膜と、
前記水素透過膜を挟持するための一次側ガスケット及び二次側ガスケットとを備え、
前記水素透過膜は、その表面が平坦状に形成された中央部と、その表面に凹凸形状を有する外周部とを有しており、
前記二次側ガスケットの厚みが、前記水素透過膜の外周部が有する凹凸形状の最大高低差の2.2〜3.8倍である、水素分離装置。
項2.さらに、水素を含む原料気体を前記水素透過膜の一次側表面に供給するための原料気体供給流路と、
前記水素透過膜の二次側表面へ透過した水素を回収するための水素回収流路と、
前記水素透過膜と隣接又は隔離して、前記水素透過膜の二次側に配置された多孔質の支持体と、
を備える、項1に記載の水素分離装置。
項3.水素を透過する水素透過膜と、
前記水素透過膜を挟持するための一次側ガスケット及び二次側ガスケットと、
水素を含む原料気体を前記水素透過膜の一次側表面に供給するための原料気体供給流路と、
前記水素透過膜の二次側表面へ透過した水素を回収するための水素回収流路と、
前記水素透過膜と隣接するように二次側表面に配置された多孔質の支持体とを備え、
前記水素透過膜は、その表面が平坦状に形成された中央部と、その表面に凹凸形状を有する外周部とを有しており、
前記支持体は、その表面が平坦状に形成された中央部と、その表面に前記水素透過膜の外周部が有する凹凸形状と嵌合するように形成された凹凸形状を有する外周部とを有している、水素分離装置。
項4.前記水素透過膜の直径が60mm以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水素分離装置。
項5.前記水素透過膜における前記中央部の直径が、前記水素透過膜の直径の0.2〜0.8倍である、項1〜4のいずれか1項に記載の水素分離装置。
項6.前記水素透過膜が、非パラジウム金属又は非パラジウム金属を含む合金からなる膜を備える、項1〜5のいずれか1項に記載の水素分離装置。
項7.前記水素透過膜が、さらに、表面にパラジウム又はパラジウムを含む合金からなる層を備える、項6に記載の水素分離装置。
項8.前記非パラジウム金属が、周期表第5族金属である、項6又は7に記載の水素分離装置。
項9.さらに、前記水素透過膜の一次側表面の上方に配置された流路形成部を更に備え、前記原料気体供給流路から供給された前記原料気体を前記水素透過膜の一次側表面に沿って分配するための流路を形成している、項1〜8のいずれか1項に記載の水素分離装置。
項10.前記水素透過膜と前記流路形成部との間の距離が4mm以下である、項9に記載の水素分離装置。
項11.項1〜10のいずれか1項に記載の水素分離装置の製造方法であって、
(1)前記水素透過膜の外周部にプレス加工を施して外周部の表面に凹凸形状を形成する工程、及び
(2)前記工程(1)の後、プレス加工を施した前記水素透過膜を一次側ガスケット及び二次側ガスケットで挟持する工程
を備える、製造方法。
項12.項1〜10のいずれか1項に記載の水素分離装置を複数備え、
上流側の前記水素分離装置において前記水素透過膜を透過しなかった気体が、下流側の前記水素分離装置の前記原料気体供給流路に供給される配管を備える、水素分離モジュール。
項13.項1〜10のいずれか1項に記載の水素分離装置又は項12に記載の水素分離モジュールを用いて、水素を含む原料気体から水素を精製する工程を備える、水素の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水素透過膜の構成金属として非パラジウム金属を主として用い、大型化した場合であっても、水素透過膜表面の皺や、水素透過試験を行った際の水素分離膜端部の亀裂や破壊を抑制し、再利用することができる水素分離装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の水素分離装置の構成の一例を示す概略図である。
図2】本発明の水素分離装置の水素透過膜及び一次側ガスケットの上面を概略的に示す概略図である。
図3】比較例1による試験終了後の破断した水素透過膜を示す写真である。
図4】第1の実施の形態に係る本発明の水素分離装置の構成の一例を示す図である。
図5】第1の実施の形態に係る本発明の水素分離装置に備えられた支持体の斜視図を示す。
図6】第1の実施の形態に係る本発明の水素分離装置に備えられた、外周部に凹凸形状が形成された支持体の斜視図を示す。
図7】第1の実施の形態に係る本発明の水素分離装置の別の例を示す図である。
図8】第2の実施の形態に係る本発明の水素分離装置の構成を概略的に示す図である。
図9】第2の実施の形態に係る本発明の水素分離装置の流配フランジの上面を概略的に示す図である。
図10】第3の実施の形態に係る水素分離システムの構成を概略的に示す図である。
図11】参考例3において使用した水素分離装置の構成を概略的に示す図である。
図12】参考例4の結果を示すグラフである。
図13】参考例5の結果を示すグラフである。
図14】参考例5の透過試験後の水素透過膜50に皺が多数発生したことを示す写真である。
図15】参考例5の透過試験後の水素透過膜50の端部に亀裂が発生したことを示す写真である。
図16】参考例6で水素透過膜50のプレス加工に使用した金型のイメージ図及びプレス加工後の水素透過膜50の外観写真である。
図17】参考例6の透過試験前後における水素透過膜50の外観写真である。水素透過試験後には、やはり多数の皺が発生し、水素透過膜50が破壊された。
図18】一次側ガスケット及び二次側ガスケットと支持体(ステンレス鋼繊維フィルター及びステンレス鋼製金網)は不動のものとして、水素透過膜の熱による膨張と、水素吸蔵による膨張を計算した応力解析の結果を示す。
図19】実施例1及び参考例7〜8で水素透過膜50のプレス加工に使用した金型のイメージ図である。
図20】実施例1の透過試験前後における水素透過膜50の外観写真である。水素透過試験後にも皺が発生しなかった。
図21】参考例7の透過試験後における水素透過膜50の端部の外観写真及び形状分析の結果である。水素透過試験後にも皺が発生しなかったが、端部において水素透過膜50が破壊していた。
図22】参考例8の透過試験後における水素透過膜50の端部の形状分析の結果である。水素透過試験後にも皺が発生せず、破壊もしなかったため一度の水素透過試験には耐えたが、最外周の加工部が消失するほど変形していたことから再利用は困難であった。
図23】実施例1の透過試験後における水素透過膜50の端部の形状分析の結果である。水素透過試験後にも皺が発生せず、破壊もしないために応力分散できており、最外周の加工部も消失していないことから再利用可能であった。
図24】実施例1及び参考例7〜8の透過試験後における水素透過膜50の端部の形状分析の結果をまとめて示す。
図25】実施例2において、4回の水素透過試験を繰り返した後の水素透過膜50の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。また、本明細書において、数値範囲を「A〜B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0013】
なお、本明細書においては、水素分離装置を構成する水素透過膜、一次側ガスケット及び二次側ガスケットからなる積層体を、特に、水素分離デバイスと表記することがある。
【0014】
また、本明細書において、「凹凸部の最大高低差」とは、凹凸部における最も低い位置から、凹凸部における最も高い位置までの鉛直方向の高さを意味する。
【0015】
1.第1の態様
本発明の第1の態様に係る水素分離装置は、水素を透過する水素透過膜と、前記水素透過膜を挟持するための一次側ガスケット及び二次側ガスケットとを備え、前記水素透過膜は、その表面が平坦状に形成された中央部と、その表面に凹凸形状を有する外周部とを有しており、前記二次側ガスケットの厚みが、前記水素透過膜の外周部が有する凹凸形状の最大高低差の2.2〜3.8倍である。また、本発明の水素分離装置は、さらに、水素を含む原料気体を前記水素透過膜の一次側表面に供給するための原料気体供給流路と、前記水素透過膜の二次側表面へ透過した水素を回収するための水素回収流路と、前記水素透過膜と隣接又は隔離して、前記水素透過膜の二次側に配置された多孔質の支持体と、を備えることが好ましい。
【0016】
図1は、本発明の水素分離装置の構成の一例を示す。図1は、水素分離装置10の断面を概略的に示している。水素分離装置10は、水素を選択的に透過する非パラジウム金属又は非パラジウム金属を含む合金からなる膜を備える水素透過膜50と、水素を含む原料気体を水素透過膜50の一次側の表面に供給するための原料気体供給流路26と水素透過膜50を透過しなかった原料気体を排出するための原料気体排出流路28とが形成された一次側配管20と、水素透過膜50の二次側の表面へ透過した水素を回収するための水素回収流路32が形成された二次側配管30と、水素透過膜50を一次側配管20と二次側配管30との間に気密に挟持するための一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42とを備えることが好ましい。一次側配管20は、同軸に配置された外管22と内管24の二重構造になっており、内管24の内側が原料気体供給流路26として機能し、外管22と内管24の間が原料気体排出流路28として機能することが好ましい。
【0017】
一次側配管20の原料気体排出流路28の内径も、二次側配管30の水素回収流路32の内径も、水素透過膜50から遠い部分においては、一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42の内径より細くされているが、一次側配管20と二次側配管30が水素透過膜50を介して接続される開口部分においては、一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42の内径と同じ内径まで拡張されていることが好ましい。すなわち、一次側配管20の開口にも、二次側配管30の開口にも、一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42の内径と同じ内径を有する凹部が形成されていることが好ましい。これにより、水素透過膜50の全体を効率良く利用して水素を分離することができる。
【0018】
原料気体供給流路26は、図示しないレギュレーターを介して、水素を含む原料気体を生成する水素発生装置又は水素を含む原料気体を貯蔵する貯蔵タンク等に接続されることが好ましい。水素を含む原料気体は、レギュレーターにより所定の圧力に調整されて、原料気体供給流路26から水素透過膜50の一次側の表面に供給されることが好ましい。水素回収流路32は、水素透過膜50を透過して水素回収流路32に到達した水素を回収するための構成に接続されることが好ましい。
【0019】
図1に示した水素分離装置10においては、原料気体供給流路26及び水素回収流路32が水素透過膜50に対して垂直に設けられるが、別の例では、原料気体供給流路26又は水素回収流路32が水素透過膜50に平行に設けられてもよいし、任意の方向に設けられてもよい。また、図1に示した水素分離装置10においては、原料気体排出流路28も水素透過膜50に対して垂直に設けられるが、別の例では、水素透過膜50を透過しなかった原料気体は、水素透過膜50の外周の近傍に設けられた排出口から排出されてもよい。
【0020】
水素透過膜50
水素透過膜50の一次側には、水素を含む原料気体が所定の圧力で供給されるので、一次側と二次側の圧力差により水素透過膜50に応力が発生する。また、熱膨張や水素の溶解による格子の膨張によっても応力が発生する。後述の一次側ガスケット及び二次側ガスケットと支持体(多孔質フィルター及び金網)は不動のものとして、水素透過膜50の熱による膨張と水素吸蔵による膨張とを計算し、水素透過試験時における応力を解析したところ、中央部には大きな応力は印加されておらず、外周部に大きな応力が印加されることが分かった。この傾向は、水素透過膜50の直径によっても変化し、水素透過膜50の直径が小さい場合には、外周部にも極端に高い応力は印加されず、圧力差、膨張等による応力が生じても耐性を維持することができるが、直径が大きくなると外周部に非常に高い応力が印加されるため、耐性を維持できずに水素透過膜50が破断してしまう場合があることが、本発明者らの実験により明らかになった。この際、後述の一次側ガスケット、二次側ガスケット及び二次側の支持体を配置した場合であっても、水素透過膜50表面に多数の皺が発生してしまうだけでなく、水素透過時に水素透過膜50の端部において亀裂が発生するとともに水素透過膜50が破壊してしまう。一方、水素透過膜50の全面が凹凸形状を有している場合は、外周部に特に印加される水素膨張応力を分散することができず、やはり水素透過膜50表面に多数の皺が発生してしまうだけでなく、水素透過時に水素透過膜50の端部において亀裂が発生するとともに水素透過膜50が破壊してしまう。後述するように、周期表第5族金属は多量の水素が固溶することで水素脆化を起こすので、周期表第5族金属又はその合金により形成された水素透過膜を使用する場合には、パラジウム系水素透過膜を使用する場合よりも、破断を防ぐための対策が更に重要となる。
【0021】
このため、水素透過膜50は、その表面が平坦状に形成された中央部と、その表面に凹凸形状を有する外周部とを有している。このような構成を採用する場合には、外周部に特に印加される水素膨張応力を分散することができ、水素透過膜50表面に皺が発生することを抑制し、水素透過時に水素透過膜50の端部において亀裂が発生することを避けることができる。
【0022】
この際、外周部に形成される凹凸形状の大きさは特に制限されるわけではないが、外周部に特に印加される水素膨張応力を分散することができ、水素透過膜50表面に皺が発生することを抑制し、水素透過時に水素透過膜50の端部において亀裂が発生することを避ける観点からは、最大高低差を0.1〜4mm、特に0.5〜2.0mmとすることが好ましい。
【0023】
また、外周部において、隣り合う凸部同士の間隔は特に制限されるわけではないが、外周部に特に印加される水素膨張応力を分散することができ、水素透過膜50表面に皺が発生することを抑制し、水素透過時に水素透過膜50の端部において亀裂が発生することを避ける観点からは、3〜20mm、特に3〜15mmとすることが好ましい。
【0024】
このような中央部と外周部との比率については特に制限されるわけではないが、上記した外周部に特に印加される水素膨張応力を分散することができ、水素透過膜50表面に皺が発生することを抑制し、水素透過時に水素透過膜50の端部において亀裂が発生することを避けることができる観点からは、中央部の直径が、水素透過膜50の直径の0.2〜0.8倍であることが好ましく、0.3〜0.7倍であることがより好ましい。
【0025】
この水素透過膜50は、非パラジウム金属又は非パラジウム金属を含む合金からなる膜を備えることが好ましい。このような非パラジウム金属としては、例えば、バナジウム、ニオブ、タンタル等の周期表第5族金属が挙げられる。水素透過膜50は、これらの周期表第5族金属の純金属、又は、周期表第5族金属に鉄、ニッケル等の元素が添加された合金からなる膜を備えることが好ましい。より詳細には、上記した周期表第5族金属の純金属、又は、周期表第5族金属に鉄、ニッケル等の元素が添加された合金からなる膜により主として形成されることが好ましい。従来、パラジウム又はパラジウム合金により形成されたパラジウム系の水素透過膜の研究開発が広く行われてきたが、パラジウムは希少且つ高価な金属であることから、本発明者らは、その代替材料として、周期表第5族金属等の非パラジウム金属又は非パラジウム合金により形成された水素透過膜の設計開発を行ってきた。
【0026】
面心立方(fcc)格子構造をもつパラジウムと比較して、体心立方(bcc)格子構造をもつバナジウム、ニオブ、タンタル等の周期表第5族金属は、水素の拡散の活性化エネルギーが小さいため、低温における水素の拡散係数が大きいという特徴がある。したがって、これらの金属又は合金により形成された水素透過膜を使用することにより、比較的低温においても高い水素透過速度が得られ得る。特に、バナジウムは、水素の拡散の活性化エネルギーが小さく、水素透過膜の材料として好適である。また、これらの金属及び合金は、パラジウム及びパラジウム合金と比較して十分に安価であるため、製造コストの観点からも好適である。
【0027】
しかしながら、バナジウム、ニオブ等の周期表第5族金属は、多量の水素が固溶することで機械的性質が著しく劣化する水素脆化を起こすことが知られている。具体的には、水素濃度が約0.2(H/M)を超えると、延性−脆性遷移が起こることが知られている(例えば、J. Hydrogen Energy, Elsevier, 39 (2014), 7919.、Metall. J LXIII (2010), 74.等参照)。したがって、水素透過膜の水素脆性破壊を回避するためには、固溶水素濃度を0.2(H/M)以下に制御することが好ましい。本発明者らの知見によれば、周期表第5族金属よりも水素との親和性が小さい元素、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、銅、クロム、モリブデン、タングステン等を周期表第5族金属に添加することにより、固溶水素濃度を抑制することが可能である。したがって、周期表第5族金属に上記の元素を添加した合金により水素透過膜50を形成することにより、水素分離装置10の使用中に水素透過膜50が水素脆化して破断してしまうことをより効率的に避けることができる。
【0028】
他方で、金属中に異種元素を固溶させると、固溶強化によって強度が増すうえ、水素透過膜50を形成するために金属を圧延すると、加工硬化によっても強度が増すので、合金を圧延して水素透過膜50を形成しやすさの観点からは、周期表第5族金属に添加する異種元素の量を多くし過ぎないことが好ましい。したがって、原料気体の種類及び水素の含有量、原料気体の圧力及び温度、必要な水素の純度、単位時間当たりの水素の回収量、水素分離装置10の耐用期間、水素分離装置10の製造コスト等の条件に応じて、水素分離装置10を使用する際の温度、一次側の圧力、二次側の圧力等の運転条件が決定されると、決定された運転条件に適した合金の組成を決定し、決定した組成の合金により水素透過膜50を形成することができる。水素透過膜50を形成する合金の組成は、合金の水素溶解特性を表す圧力−組成−等温線(Pressure-composition-isotherm、PCT曲線)に基づいて決定することもできる。例えば、水素透過膜50は、原子百分率で0〜15%の異種元素(特に鉄)を含むバナジウムの合金により形成することもできる。異種元素(特に鉄)の含有量を上記の範囲とすることにより、合金の強度を圧延加工が可能な程度にし、加工性を向上させることができる。温間圧延(熱間圧延)により水素透過膜50を形成する場合には、異種元素(特に鉄)の含有量を原子百分率で0〜15%とするのが好適であり、冷間圧延により水素透過膜50を形成する場合には、異種元素(特に鉄)の含有量を原子百分率で0〜12%とするのが好適である。圧延加工をより容易にする観点から、異種元素(特に鉄)の含有量を原子百分率で0〜10%とするのが更に好適である。
【0029】
なお、水素透過膜50の両表面には、一次側の表面における水素分子から水素原子への解離反応、及び二次側の表面における水素原子から水素分子への再結合反応を促進するための触媒層として、パラジウム又はパラジウム合金が被覆されることが好ましい。これにより、水素透過速度をさらに向上させることができる。パラジウム又はパラジウム合金の被覆に代えて、水素透過膜50の両表面に酸化処理を施すこともできる。
【0030】
上記した水素透過膜50の直径は、本発明の水素分離装置の大型化の観点からは、60mm以上が好ましく、70〜100mmがより好ましい。このように大型化された水素透過膜50は、その表面が平坦状に形成された中央部と、その表面に凹凸形状を有する外周部とを有していない場合には、一次側ガスケット、二次側ガスケット及び二次側の支持体を配置した場合であっても、水素透過膜50表面に多数の皺が発生してしまうだけでなく、水素透過時に水素透過膜50の端部において亀裂が発生するとともに水素透過膜50が破壊してしまう。このため、上記した水素透過膜の直径の範囲においては、本発明において、その表面が平坦状に形成された中央部と、その表面に凹凸形状を有する外周部とを有している場合に、外周部に特に印加される水素膨張応力を分散することができ、水素透過膜50表面に皺が発生することを抑制し、水素透過時に水素透過膜50の端部において亀裂が発生することを避けることができる効果が特に顕著に見られる。
【0031】
このような水素透過膜50は、加工前の水素透過膜50の外周部にプレス加工を施して外周部の表面に凹凸形状を形成することで得ることができる。この際のプレス圧は、水素透過膜50の大きさ、凹凸加工を施す面積等によって変化し得るが、通常2〜10MPaが好ましく、5〜9MPaがより好ましい。
【0032】
次に、図2は、実施の形態に係る水素分離装置の水素透過膜及び一次側ガスケットの上面を概略的に示す。水素透過膜50は、円形状に形成され、一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42は、リング状に形成されることが好ましい。後述するように、水素透過膜50には一次側と二次側の圧力差等に起因する応力がかかるが、水素透過膜50を円形状に形成することにより、水素透過膜50の一部に応力が集中することを防ぎ、水素透過膜50の破断を防ぐことができる。
【0033】
一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42
水素透過膜50の応力解析をしたところ、一次側と二次側の圧力差に伴って、水素透過膜50の中央部において二次側に向けて大きな応力が発生することが分かった。したがって、本発明の水素分離装置においては、水素透過膜50の破断を防ぐために、水素透過膜50の二次側に、好ましくは水素透過膜50の表面との間の距離が所定の距離以下となるように配置された平板状の二次側ガスケット42を設ける。これにより、水素透過膜50の面外変形の変位量が所定の距離以下となるように水素透過膜50を支持することができるので、水素透過膜50の破断を防ぐことができ、長期間継続して使用可能な水素分離装置10を提供することができる。
【0034】
なお、上記では、水素透過膜50の二次側に二次側ガスケット42を設けることを説明したが、水素透過膜50の径が大きい場合は、圧力差により二次側に大きな応力がかかり、水素透過膜50が二次側に面外変形するが、水素を透過させる初期段階においては、熱膨張や水素の溶解による格子膨張に起因して、水素透過膜50が一次側に面外変形する場合もある。このため、本発明では、水素透過膜50の一次側にも一次側ガスケット40も設けている。これにより、水素透過膜50が破断する可能性を特に低減させることができる。
【0035】
一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42の材質は、特に制限されるわけではないが、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0036】
なお、一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42は、水素透過膜50の支持体としても機能するため、一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42の大きさ(面積)は、水素透過膜50の大きさにあわせて設定することが好ましい。このため、一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42の外径は、60mm以上が好ましく、70〜110mmがより好ましい。
【0037】
一方、一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42の内径については、上記したとおり、一次側ガスケット40の内径は一次側配管20の内径及び二次側配管30の内径と同様とすることが好ましい。ただし、二次側ガスケット42の内径については、後述する支持体(多孔質フィルター52及び金網54)を配置する場合は、二次側配管30の内径より若干小さくすることが好ましい。具体的には、一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42の内径は、60mm以上が好ましく、70〜100mmがより好ましい。なお、二次側ガスケット42の内径は、水素透過膜50と支持体(多孔質フィルター52)との密着を防ぎやすい観点からは、一次側ガスケット40の内径よりも若干小さくすることが好ましいが、同一とすることもできる。
【0038】
一次側ガスケット40の形状については、特に制限されるわけではないが、厚さが薄いほうがより高い水素透過性能が得られる。つまり、後述する流配フランジ60により形成される原料気体の流路の幅が狭い方が、より高い水素透過性能が得られる。したがって、流配フランジ60により形成される原料気体の流路の幅は、4mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましい。なお、一次側ガスケット40の厚さの下限値は、特に制限はないが、後述の流配フランジ60と水素透過膜50との接着を抑制して水素透過性能を維持しやすい範囲とすることが好ましく、流配フランジ60は水素透過膜50に接着しない程度に水素透過膜50から離隔して設けられるのが好ましく、一次側ガスケット40の厚さの下限値は通常1.0mm程度である。
【0039】
また、本発明の水素分離デバイスにおける水素透過膜50の応力解析をしたところ、二次側ガスケット42の内端面の部分に応力が集中することが分かった。実際、二次側ガスケット42として厚さが大きいガスケットを用いた場合、二次側ガスケット42の内端面において割れが生じた。したがって、二次側ガスケット42の内端面の割れの観点からは、二次側ガスケット42の厚さは薄い方が好ましい。
【0040】
一方、本発明の水素分離デバイスにおける水素透過膜50の外周部が有する凹凸部の最大高低差に対して、二次側ガスケット42の厚さが小さい場合は、水素透過膜50の外側端部において座屈し割れてしまう。一方、本発明の水素分離デバイスにおける水素透過膜50の外周部が有する凹凸部の最大高低差に対して、二次側ガスケット42の厚さが大きい場合は、水素透過によって外周部が有する凹凸部が消失するほど変形してしまう。
【0041】
以上のような観点から、二次側ガスケット42の厚みについては、バランスを取って調整することが好ましく、水素透過膜50の外周部が有する凹凸形状の最大高低差の2.2〜3.8倍、好ましくは2.2〜3.0倍である。また、二次側ガスケット42の厚みは、1.0〜3.0mmが好ましく、1.2〜1.8mmがより好ましい。
【0042】
その他の構成
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る水素分離装置の構成の一例を示す。本図に示す水素分離装置10は、図1に示した水素分離装置10の構成に加えて、支持体として機能する多孔質フィルター52及び金網54を備えている。その他の構成は、図1と同様である。
【0043】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る水素分離装置に備えられた支持体の斜視図の一例を示す。この例では、二次側配管30に形成された水素回収流路32の開口に、支持体として機能する多孔質フィルター52及び金網54が設けられている。多孔質フィルター52及び金網54の表面の面積は、水素透過膜50の表面の面積と同じ、又は、水素透過膜50の表面の面積よりも広く調整されることが好ましい。これにより、水素透過膜50の全体を支持体により支持することができるので、水素透過膜50にかかる応力が一部に集中するような場合であっても、水素透過膜50の破断をより防ぐことができる。
【0044】
多孔質フィルター52及び金網54は、水素透過膜50を透過した水素を効率良く水素回収流路32へ導くために二次側配管30の開口に設けられた凹部を埋めるように設けられることが好ましい。すなわち、多孔質フィルター52及び金網54は、高さの合計が凹部の高さと同程度であり、底面の直径が凹部の内径と同程度である略円筒形の形状を有することが好ましい。二次側ガスケット42の内径は、凹部の内径よりも若干小さく調整されていることが好ましいので、多孔質フィルター52と水素透過膜50とは二次側ガスケット42の厚み分の距離だけ離隔して配置されることが好ましい。これにより、水素透過膜50が面外変形して多孔質フィルター52に押し付けられたとしても、水素透過膜50と多孔質フィルター52とが溶着してしまうのをより防ぐことができる。
【0045】
多孔質フィルター52は、弾力性、柔軟性、クッション性を有するものであることが好ましい。例えば、多孔質フィルター52は、金属繊維を焼結した多孔質焼結体とすることができる。これにより、水素透過膜50にかかる応力をより吸収し、水素透過膜50の破断をより効果的に防ぐことができる。
【0046】
多孔質フィルター52及び金網54は、本発明の水素分離装置10の使用中に気体を発生せず、水素と化学反応しない材質により形成されることが好ましい。水素透過膜50の二次側には、高純度の水素が高濃度で存在することになり、強い還元雰囲気に晒されるので、そのような環境においても還元反応を起こさない材質により多孔質フィルター52及び金網54が形成されるのが好ましい。また、多孔質フィルター52は、水素透過膜50と直接接触する可能性があるので、水素透過膜50を形成する金属又は合金との間で合金を形成したり化学反応を起こしたりしない材質により形成されるのが好ましい。多孔質フィルター52及び金網54は、例えば、ステンレス鋼、二酸化ケイ素、アルミナ等により形成されることが好ましい。水素透過膜50と直接接触する可能性がある多孔質フィルター52及び金網54を、水素透過膜50を形成する金属又は合金、又は、水素透過膜50の表面に被覆されたパラジウム又はパラジウム合金等との間で合金を形成したり、化学反応を起こしたりするような物質により形成する場合には、多孔質フィルター52及び金網54と水素透過膜50との間に、水素透過膜50との間で合金を形成したり化学反応を起こしたりしないような物質により形成された膜又は層を配置することもできる。これにより、多孔質フィルター52及び金網54が水素や水素透過膜50との間で化学反応を起こすなどして、水素透過膜50の水素透過性能や回収される水素の純度等に悪影響を及ぼすことをより効果的に避けることができる。
【0047】
多孔質フィルター52及び金網54は、水素透過膜50を透過した水素ガスが十分な流速で通過することが可能な程度の濾過径及びポロシティ(多孔度、空隙率、気孔率)を有するのが好ましい。
【0048】
なお、本発明においては、支持体(多孔質フィルター52及び金網54)は、図5に示されるように、その全面が平坦である構成とすることもできるが、図6に示されるように、その表面が平坦状に形成された中央部と、その表面に凹凸形状を有する外周部とを有することもできる。後者の場合は、特に、支持体(多孔質フィルター52及び金網54)が水素透過膜50と隣接する場合には、水素透過膜50の外周部にも凹凸形状が形成されていることから、支持体(多孔質フィルター52及び金網54)の外周部が有する凹凸形状は、水素透過膜50の外周部が有する凹凸形状と嵌合するように形成されることが好ましい。
【0049】
支持体(多孔質フィルター52及び金網54)の外周部表面に凹凸部が形成されている場合、その最大高低差は、水素透過膜50の外周部に特に印加される水素膨張応力を分散することができ、水素透過膜50表面に皺が発生することを抑制し、水素透過時に水素透過膜50の端部において亀裂が発生することを避ける観点からは、0.2〜1.5mmが好ましく、0.3〜1.0mmがより好ましい。
【0050】
また、支持体(多孔質フィルター52及び金網54)の表面に凹凸部が形成されている場合(特に、水素透過膜50の外周部が有する凹凸部と嵌合するように凹凸部が形成されている場合)、隣り合う凸部同士の間隔は特に制限されるわけではないが、水素透過膜50の水素固溶膨張による破損を特に抑制することができる観点からは、3〜10mm、特に3〜7mmとすることが好ましい。
【0051】
このような中央部と外周部との比率については特に制限されるわけではないが、水素透過膜50の水素固溶膨張による破損を特に抑制することができる観点からは、中央部の直径が、支持体(多孔質フィルター52及び金網54)の直径の0.2〜0.8倍であることが好ましく、0.3〜0.7倍であることがより好ましい。
【0052】
このような支持体(多孔質フィルター52及び金網54)の表面に凹凸部を形成する場合(特に、水素透過膜の外周部が有する凹凸部と嵌合するように凹凸部を形成する場合)は、加工前の支持体(多孔質フィルター52及び金網54)の外周部の表面にプレス加工を施して表面に凹凸形状を形成することで得ることができる。この際のプレス圧は、支持体(多孔質フィルター52及び金網54)の大きさ、凹凸加工を施す面積等によって変化し得るが、通常2〜10MPaが好ましく、5〜9MPaがより好ましい。
【0053】
図7は、第1の実施の形態に係る本発明の水素分離装置の別の例を示す。本図では、説明の簡略化のために、二次側の構成のみを示している。図7(a)の例では、二次側ガスケット42の内径が凹部の内径と同じにされており、金網54が、二次側配管30の開口に設けられた凹部を埋めるように設けられ、多孔質フィルター52が、二次側ガスケット42の厚み分の隙間を埋めるように設けられている。すなわち、金網54は、高さが凹部の高さと同程度であり、底面の直径が凹部の内径と同程度である略円筒形の形状を有し、多孔質フィルター52は、厚さが二次側ガスケット42の厚さと同程度であり、底面の直径が二次側ガスケット42の内径と同程度である円板状の形状を有している。上述したように、多孔質フィルター52は、弾力性、柔軟性、クッション性を有する材質により形成されることが好ましいので、多孔質フィルター52が水素透過膜50と接するように設けられた場合であっても、水素透過膜50にかかる応力を吸収し、水素透過膜50の破断をより効果的に防ぐことができる。
【0054】
図7(b)の例では、二次側配管30の開口に金網54が固定され、多孔質フィルター52が省略されている。このように、水素透過膜50が面外変形により破断に至る程度の変位量よりも短い距離であれば、水素透過膜50の二次側の表面と支持体の表面とが離隔して配置されてもよい。二次側配管30の開口に多孔質フィルター52のみが設けられ、金網54が省略されてもよい。また、水素透過膜50の二次側の表面から所定の変位量以下の距離を隔てて、多孔質フィルター52と金網54が設けられてもよい。二次側ガスケット42の厚さが所定の変位量よりも薄い場合は、二次側配管30の端面と同じ高さに表面が位置するように支持体が設けられ、二次側ガスケット42の厚み分だけ水素透過膜50から離隔されてもよい。二次側ガスケット42の厚さが所定の変位量よりも厚い場合は、二次側配管30の端面から突出するように支持体が設けられてもよい。
【0055】
第1の実施の形態の本発明の水素分離装置によれば、水素透過膜50が所定の距離を超えて面外変形しないように支持することができるので、水素透過膜の破断をより効果的に防ぐことができる。したがって、長期間継続して使用可能な水素分離装置を提供することができる。また、水素脆化を起こしうる周期表第5族元素又はその合金により形成された水素透過膜を水素分離装置に使用することができるので、パラジウム系金属又はその合金により水素透過膜を形成する場合に比べて、水素透過性能を向上させることができるとともに、水素分離装置の製造コストを低減させることができる。
【0056】
なお、水素分離装置の一部の応用においては、水素を含む原料気体として、水素キャリアとなるアンモニアを分解した気体を利用することが想定されている。この場合、純水素の場合と比較すると水素透過性が損なわれる可能性がある。このため、第2の実施の形態に係る本発明の水素分離装置10は、原料気体供給流路から供給された原料気体を水素透過膜50の一次側の表面に沿って分配するための所定の幅の流路を形成するために、水素透過膜50の一次側の表面から所定の幅だけ離隔して配置された流路形成部を備えることが好ましい。
【0057】
図8は、第2の実施の形態に係る本発明の水素分離装置の構成を概略的に示す。本図では、説明の簡略化のため、一次側の構成のみを示す。第2の実施の形態に係る本発明の水素分離装置10は、図1又は図4に示した水素分離装置10の構成に加えて、流路形成部として機能する流配フランジ60を備えている。その他の構成は、図1又は図4に示した水素分離装置10と同様である。
【0058】
図9は、第2の実施の形態に係る本発明の水素分離装置の流配フランジの上面を概略的に示す。図9(a)に示すように、流配フランジ60は、ドーナツ状の形状を有し、一次側配管20の内管24の開口から外周方向へ垂直に突出するように設けられることが好ましい。図8に示すように、流配フランジ60は、水素透過膜50に略平行となるように設けられ、水素透過膜50の一次側の表面と流配フランジ60の水素透過膜50側の表面の間に、原料気体供給流路26から供給される原料気体を水素透過膜50の一次側の表面に沿って水素透過膜50全体に分配するための流路が形成されることが好ましい。流配フランジ60は、一次側配管20の開口に設けられた凹部の内径よりも小さい外径を有していることが好ましく、水素透過膜50を透過しなかった原料気体は、流配フランジ60の外周の外側の隙間から原料気体排出流路28に導かれ得る。
【0059】
図9(b)に示すように、流配フランジ60の水素透過膜50に面する表面には、溝62が形成されてもよい。図9(b)の例では、螺旋状の溝62が形成されるが、別の例では、直線、曲線、格子等の形状の溝が形成されてもよい。これにより、原料気体が溝62に沿って流れやすくすることができるので、水素を含む原料気体を水素透過膜50の全体に速やかに分配することができる。更に別の例では、流配フランジ60の水素透過膜50に面する表面に、溝に代えて凹凸が形成されてもよい。流配フランジ60の水素透過膜50に面する表面に溝や凹凸等を形成することにより、原料気体が水素透過膜表面で乱流をおこし、水素透過膜50の一次側の表面に滞留した窒素等の不純物気体成分を速やかに排出させることができる。これにより、水素透過膜50の一次側の表面における水素濃度を高めることができ、濃度分極を低減させることができるので、水素透過膜50の水素透過性能を向上させることができる。
【0060】
第2の実施の形態に係る本発明の水素分離装置によれば、水素透過膜の全体に速やかに原料気体を分配することができるとともに、水素透過膜の一次側の表面に滞留しうる水素以外の気体を速やかに排出することができるので、濃度分極に起因する水素透過性能の低下をより効果的に防ぐことができ、水素を分離する効率をより向上させることができる。
【0061】
第2の実施の形態において説明したように、原料気体に含まれる水素を水素分離装置10により分離する際に、原料気体の流速を速くすると水素透過膜による水素透過性能が改善されてより効率よく水素を分離回収することができるが、一部の水素は水素透過膜の表面に接触することなく原料気体排出流路28から排出され得る。
【0062】
図10は、第3の実施の形態に係る本発明の水素分離システムの構成を概略的に示す。水素分離システムは、複数の水素分離装置10を備える。本図の例では、水素分離システムは、4つの水素分離装置を備えている。水素を含む原料気体は、それぞれの水素分離装置の原料気体供給流路に供給される。水素分離装置において水素透過膜50を透過した水素は、水素回収流路から配管を介してまとめて回収される。水素分離装置において水素透過膜50を透過しなかった原料気体は、原料気体排出流路から配管を介して排出される。
【0063】
このように、水素透過膜50を形成する非パラジウム合金の水素脆化に起因する水素透過膜の破断を防ぎつつ、複数の水素分離装置を使用してより多くの水素を効率良く分離回収することができる。また、一次側に供給される原料気体の水素分圧が低い場合には、二次側をポンプなどにより吸引してもよい。下流側の水素分離装置10の水素透過膜50は、パラジウム又はパラジウム合金により形成されてもよい。
【0064】
2.第2の態様
本発明の第2の態様に係る水素分離装置は、水素を透過する水素透過膜と、前記水素透過膜を挟持するための一次側ガスケット及び二次側ガスケットと、水素を含む原料気体を前記水素透過膜の一次側表面に供給するための原料気体供給流路と、前記水素透過膜の二次側表面へ透過した水素を回収するための水素回収流路と、前記水素透過膜と隣接するように二次側表面に配置された多孔質の支持体とを備え、
前記水素透過膜は、その表面が平坦状に形成された中央部と、その表面に凹凸形状を有する外周部とを有しており、前記支持体は、その表面が平坦状に形成された中央部と、その表面に前記水素透過膜の外周部が有する凹凸形状と嵌合するように形成された凹凸形状を有する外周部とを有している。
【0065】
図1は、本発明の水素分離装置の構成の一例を示す。図1は、水素分離装置10の断面を概略的に示している。水素分離装置10は、水素を選択的に透過する非パラジウム金属又は非パラジウム金属を含む合金からなる膜を備える水素透過膜50と、水素を含む原料気体を水素透過膜50の一次側の表面に供給するための原料気体供給流路26と水素透過膜50を透過しなかった原料気体を排出するための原料気体排出流路28とが形成された一次側配管20と、水素透過膜50の二次側の表面へ透過した水素を回収するための水素回収流路32が形成された二次側配管30と、水素透過膜50を一次側配管20と二次側配管30との間に気密に挟持するための一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42とを備えることが好ましい。
【0066】
一次側配管20、外管22、内管24、原料気体供給流路26、原料気体排出流路28、二次側配管30及び水素回収流路32については、上記説明したものを採用することができる。原料気体排出流路28及び水素回収流路32の内径も同様である。
【0067】
また、水素透過膜50については、上記説明したものを採用することができる。外周部表面に形成される凹凸形状についても同様である。
【0068】
次に、図2は、実施の形態に係る水素分離装置の水素透過膜及び一次側ガスケットの上面を概略的に示す。水素透過膜50は、円形状に形成され、一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42は、リング状に形成されることが好ましい。上記したように、水素透過膜50には一次側と二次側の圧力差等に起因する応力がかかるが、水素透過膜50を円形状に形成することにより、水素透過膜50の一部に応力が集中することを防ぎ、水素透過膜50の破断を防ぐことができる。
【0069】
一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42
水素透過膜50の応力解析をしたところ、一次側と二次側の圧力差に伴って、水素透過膜50の中央部において二次側に向けて大きな応力が発生することが分かった。したがって、本発明の水素分離装置においては、水素透過膜50の破断を防ぐために、水素透過膜50の二次側に、好ましくは水素透過膜50の表面との間の距離が所定の距離以下となるように配置された平板状の二次側ガスケット42を設ける。これにより、水素透過膜50の面外変形の変位量が所定の距離以下となるように水素透過膜50を支持することができるので、水素透過膜50の破断を防ぐことができ、長期間継続して使用可能な水素分離装置10を提供することができる。
【0070】
なお、上記では、水素透過膜50の二次側に二次側ガスケット42を設けることを説明したが、水素透過膜50の径が大きい場合は、圧力差により二次側に大きな応力がかかり、水素透過膜50が二次側に面外変形するが、水素を透過させる初期段階においては、熱膨張や水素の溶解による格子膨張に起因して、水素透過膜50が一次側に面外変形する場合もある。このため、本発明では、水素透過膜50の一次側にも一次側ガスケット40も設けている。これにより、水素透過膜50が破断する可能性を特に低減させることができる。
【0071】
一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42の材質は、特に制限されるわけではないが、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0072】
なお、一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42は、水素透過膜50の支持体としても機能するため、一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42の大きさ(面積)は、水素透過膜50の大きさにあわせて設定することが好ましい。このため、一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42の外径は、60mm以上が好ましく、70〜110mmがより好ましい。
【0073】
一方、一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42の内径については、上記したとおり、一次側ガスケット40の内径は一次側配管20の内径及び二次側配管30の内径と同様とすることが好ましい。ただし、二次側ガスケット42の内径については、後述する支持体(多孔質フィルター52及び金網54)を配置する場合は、二次側配管30の内径より若干小さくすることが好ましい。具体的には、一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42の内径は、60mm以上が好ましく、70〜100mmがより好ましい。なお、二次側ガスケット42の内径は、水素透過膜50と支持体(多孔質フィルター52)との密着を防ぎやすい観点からは、一次側ガスケット40の内径よりも若干小さくすることが好ましいが、同一とすることもできる。
【0074】
一次側ガスケット40の形状については、特に制限されるわけではないが、厚さが薄いほうがより高い水素透過性能が得られる。つまり、後述する流配フランジ60により形成される原料気体の流路の幅が狭い方が、より高い水素透過性能が得られる。したがって、流配フランジ60により形成される原料気体の流路の幅は、4mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましい。なお、一次側ガスケット40の厚さの下限値は、特に制限はないが、後述の流配フランジ60と水素透過膜50との接着を抑制して水素透過性能を維持しやすい範囲とすることが好ましく、流配フランジ60は水素透過膜50に接着しない程度に水素透過膜50から離隔して設けられるのが好ましく、一次側ガスケット40の厚さの下限値は通常1.0mm程度である。
【0075】
また、本発明の水素分離デバイスにおける水素透過膜50の応力解析をしたところ、二次側ガスケット42の内端面の部分に応力が集中することが分かった。実際、二次側ガスケット42として厚さが大きいガスケットを用いた場合、二次側ガスケット42の内端面において割れが生じた。したがって、二次側ガスケット42の内端面の割れの観点からは、二次側ガスケット42の厚さは薄い方が好ましい。
【0076】
一方、本発明の水素分離デバイスにおける水素透過膜50の外周部が有する凹凸部の最大高低差に対して、二次側ガスケット42の厚さが小さい場合は、水素透過膜50の外側端部において座屈し割れてしまう。一方、本発明の水素分離デバイスにおける水素透過膜50の外周部が有する凹凸部の最大高低差に対して、二次側ガスケット42の厚さが大きい場合は、水素透過によって外周部が有する凹凸部が消失するほど変形してしまう。
【0077】
以上のような観点から、二次側ガスケット42の厚みについては、バランスを取って調整することが好ましく、水素透過膜50の外周部が有する凹凸形状の最大高低差の1.0〜3.8倍が好ましく、1.0〜3.0倍がより好ましい。また、二次側ガスケット42の厚みは、0.5〜2.0mmが好ましく、0.5〜1.5mmがより好ましい。
【0078】
支持体
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る水素分離装置の構成の一例を示す。本図に示す水素分離装置10は、図1に示した水素分離装置10の構成に加えて、支持体として機能する多孔質フィルター52及び金網54を備えている。その他の構成は、図1と同様である。
【0079】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る水素分離装置に備えられた支持体の斜視図の一例を示す。この例では、二次側配管30に形成された水素回収流路32の開口に、支持体として機能する多孔質フィルター52及び金網54が設けられている。多孔質フィルター52及び金網54の表面の面積は、水素透過膜50の表面の面積と同じ、又は、水素透過膜50の表面の面積よりも広く調整されることが好ましい。これにより、水素透過膜50の全体を支持体により支持することができるので、水素透過膜50にかかる応力が一部に集中するような場合であっても、水素透過膜50の破断をより防ぐことができる。
【0080】
多孔質フィルター52及び金網54は、水素透過膜50を透過した水素を効率良く水素回収流路32へ導くために二次側配管30の開口に設けられた凹部を埋めるように設けられることが好ましい。すなわち、多孔質フィルター52及び金網54は、高さの合計が凹部の高さと同程度であり、底面の直径が凹部の内径と同程度である略円筒形の形状を有することが好ましい。二次側ガスケット42の内径は、凹部の内径よりも若干小さく調整されていることが好ましいので、多孔質フィルター52と水素透過膜50とは二次側ガスケット42の厚み分の距離だけ離隔して配置されることが好ましい。これにより、水素透過膜50が面外変形して多孔質フィルター52に押し付けられたとしても、水素透過膜50と多孔質フィルター52とが溶着してしまうのをより防ぐことができる。
【0081】
多孔質フィルター52は、弾力性、柔軟性、クッション性を有するものであることが好ましい。例えば、多孔質フィルター52は、金属繊維を焼結した多孔質焼結体とすることができる。これにより、水素透過膜50にかかる応力をより吸収し、水素透過膜50の破断をより効果的に防ぐことができる。
【0082】
多孔質フィルター52及び金網54は、本発明の水素分離装置10の使用中に気体を発生せず、水素と化学反応しない材質により形成されることが好ましい。水素透過膜50の二次側には、高純度の水素が高濃度で存在することになり、強い還元雰囲気に晒されるので、そのような環境においても還元反応を起こさない材質により多孔質フィルター52及び金網54が形成されるのが好ましい。また、多孔質フィルター52は、水素透過膜50と直接接触する可能性があるので、水素透過膜50を形成する金属又は合金との間で合金を形成したり化学反応を起こしたりしない材質により形成されるのが好ましい。多孔質フィルター52及び金網54は、例えば、ステンレス鋼、二酸化ケイ素、アルミナ等により形成されることが好ましい。水素透過膜50と直接接触する可能性がある多孔質フィルター52及び金網54を、水素透過膜50を形成する金属又は合金、又は、水素透過膜50の表面に被覆されたパラジウム又はパラジウム合金等との間で合金を形成したり、化学反応を起こしたりするような物質により形成する場合には、多孔質フィルター52及び金網54と水素透過膜50との間に、水素透過膜50との間で合金を形成したり化学反応を起こしたりしないような物質により形成された膜又は層を配置することもできる。これにより、多孔質フィルター52及び金網54が水素や水素透過膜50との間で化学反応を起こすなどして、水素透過膜50の水素透過性能や回収される水素の純度等に悪影響を及ぼすことをより効果的に避けることができる。
【0083】
多孔質フィルター52及び金網54は、水素透過膜50を透過した水素ガスが十分な流速で通過することが可能な程度の濾過径及びポロシティ(多孔度、空隙率、気孔率)を有するのが好ましい。
【0084】
なお、本発明においては、支持体(多孔質フィルター52及び金網54)は、図6に示されるように、その表面が平坦状に形成された中央部と、その表面に凹凸形状を有する外周部とを有する。支持体(多孔質フィルター52及び金網54)が水素透過膜50と隣接しており、水素透過膜50の外周部にも凹凸形状が形成されていることから、支持体(多孔質フィルター52及び金網54)の外周部が有する凹凸形状は、水素透過膜50の外周部が有する凹凸形状と嵌合するように形成されることが好ましい。
【0085】
支持体(多孔質フィルター52及び金網54)の外周部表面に形成される凹凸部の最大高低差は、水素透過膜50の外周部に特に印加される水素膨張応力を分散することができ、水素透過膜50表面に皺が発生することを抑制し、水素透過時に水素透過膜50の端部において亀裂が発生することを避ける観点からは、0.2〜1.5mmが好ましく、0.3〜1.0mmがより好ましい。
【0086】
また、支持体(多孔質フィルター52及び金網54)の表面に形成される凹凸部(特に、水素透過膜50の外周部が有する凹凸部と嵌合するように形成される凹凸部)において、隣り合う凸部同士の間隔は特に制限されるわけではないが、水素透過膜50の水素固溶膨張による破損を特に抑制することができる観点からは、3.0〜10mm、特に3〜7 mmとすることが好ましい。
【0087】
このような中央部と外周部との比率については特に制限されるわけではないが、水素透過膜50の水素固溶膨張による破損を特に抑制することができる観点からは、中央部の直径が、支持体(多孔質フィルター52及び金網54)の直径の0.2〜0.8倍であることが好ましく、0.3〜0.7倍であることがより好ましい。
【0088】
このような表面に形成される凹凸部(特に、水素透過膜の外周部が有する凹凸部と嵌合するように形成される凹凸部)を有する支持体(多孔質フィルター52及び金網54)は、加工前の支持体(多孔質フィルター52及び金網54)の外周部の表面にプレス加工を施して表面に凹凸形状を形成することで得ることができる。この際のプレス圧は、支持体(多孔質フィルター52及び金網54)の大きさ、凹凸加工を施す面積等によって変化し得るが、通常2〜10MPaが好ましく、5〜9MPaがより好ましい。
【0089】
その他の構成
図7は、第1の実施の形態に係る本発明の水素分離装置の別の例を示す。図7図7(a)及び(b))の構成については、上記したものを採用できる。
【0090】
第1の実施の形態の本発明の水素分離装置によれば、水素透過膜50が所定の距離を超えて面外変形しないように支持することができるので、水素透過膜の破断をより効果的に防ぐことができる。したがって、長期間継続して使用可能な水素分離装置を提供することができる。また、水素脆化を起こしうる周期表第5族元素又はその合金により形成された水素透過膜を水素分離装置に使用することができるので、パラジウム系金属又はその合金により水素透過膜を形成する場合に比べて、水素透過性能を向上させることができるとともに、水素分離装置の製造コストを低減させることができる。
【0091】
なお、水素分離装置の一部の応用においては、水素を含む原料気体として、水素キャリアとなるアンモニアを分解した気体を利用することが想定されている。この場合、純水素の場合と比較すると水素透過性が損なわれる可能性がある。このため、第2の実施の形態に係る本発明の水素分離装置10は、原料気体供給流路から供給された原料気体を水素透過膜50の一次側の表面に沿って分配するための所定の幅の流路を形成するために、水素透過膜50の一次側の表面から所定の幅だけ離隔して配置された流路形成部を備えることが好ましい。
【0092】
図8は、第2の実施の形態に係る本発明の水素分離装置の構成を概略的に示す。本図では、説明の簡略化のため、一次側の構成のみを示す。第2の実施の形態に係る本発明の水素分離装置10は、図1又は図4に示した水素分離装置10の構成に加えて、流路形成部として機能する流配フランジ60を備えている。その他の構成は、図1又は図4に示した水素分離装置10と同様である。
【0093】
図9は、第2の実施の形態に係る本発明の水素分離装置の流配フランジの上面を概略的に示す。図9図9(a)及び(b))の構成(流配フランジ60、溝62等)については、上記したものを採用できる。
【0094】
第2の実施の形態に係る本発明の水素分離装置によれば、水素透過膜の全体に速やかに原料気体を分配することができるとともに、水素透過膜の一次側の表面に滞留しうる水素以外の気体を速やかに排出することができるので、濃度分極に起因する水素透過性能の低下をより効果的に防ぐことができ、水素を分離する効率をより向上させることができる。
【0095】
第2の実施の形態において説明したように、原料気体に含まれる水素を水素分離装置10により分離する際に、原料気体の流速を速くすると水素透過膜による水素透過性能が改善されてより効率よく水素を分離回収することができるが、一部の水素は水素透過膜の表面に接触することなく原料気体排出流路28から排出され得る。
【0096】
図10は、第3の実施の形態に係る本発明の水素分離システムの構成を概略的に示す。図10の構成については、上記したものを採用できる。
【実施例】
【0097】
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されないことは言うまでもない。
【0098】
[比較例1]
鉄を原子百分率で10%含むバナジウムの合金(V−10%Fe)により形成された水素透過膜50(厚さ:100μm、直径:60mm)を、銅製の一次側ガスケット40(厚さ:2mm、外径:60mm、内径:52mm)と銅製の二次側ガスケット42(厚さ:0.6mm、外径:60mm、内径:50mm)で挟持し、比較例1の水素分離デバイスとした。この水素分離デバイスを350℃に昇温し、原料気体供給流路26から0.4MPaの圧力で純水素を供給し、水素回収流路32の圧力を0.1MPaに調整して水素透過試験を行ったところ、水素透過膜50が破断した。図3は、比較例1による試験終了後の破断した水素透過膜50を示す。
【0099】
[参考例1]
図4に示した水素分離装置10において、ステンレス鋼繊維フィルター(濾過径:30μm、厚さ:0.6mm)と、ステンレス鋼製金網(メッシュ幅355μm、厚さ0.6mm)を支持体として使用し、比較例1と同じ条件で水素透過試験を行ったところ、水素透過膜50は破断しなかった。
【0100】
この水素分離装置10における水素透過膜50の応力解析をしたところ、二次側ガスケット42の内端面の部分に応力が集中することが分かった。実際、二次側ガスケット42として一次側ガスケット40と同じ厚さ(2mm)のガスケットを用いた場合、二次側ガスケット42の内端面において割れが生じた。
【0101】
[参考例2及び比較例2]
流配フランジ60の効果を確認するために、比較例2として図4に示した流配フランジ60を備えない水素分離装置10と、参考例2として図8に示した流配フランジ60を備えた水素分離装置10を使用して水素透過試験を行った。なお、参考例2の水素分離装置10の二次側は、比較例2と同様に図4に示した支持体を備えた水素分離装置10の二次側の構成とした。
【0102】
鉄を原子百分率で10%含むバナジウムの合金(V−10%Fe)により形成された水素透過膜50(厚さ:100μm、直径:60mm)を、銅製の一次側ガスケット40(厚さ:2mm、外径:60mm、内径:52mm)と銅製の二次側ガスケット42(厚さ:0.6mm、外径:60mm、内径:50mm)で挟持し、参考例2及び比較例2において使用する水素分離装置10を構成した。この水素分離装置10を350℃に昇温し、原料気体供給流路26から水素窒素混合ガス(水素濃度:74.6%)を一次側圧力0.54MPa(水素分圧:0.4MPa)まで導入し、二次側圧力を0.1MPaに調整して水素透過試験を行った。なお、水素窒素混合ガスによる水素透過試験では、ブリード(Bleed)ガスの流量を変化させて評価を行った。
【0103】
流配フランジ60を備えた参考例2の水素分離装置10と、流配フランジ60を備えない比較例2の水素分離装置10のそれぞれについて、ブリードガスの流量と、その時の水素透過度をプロットすると、流配フランジ60を設けることにより、設けない場合よりも高い水素透過度が得られることが分かった。
【0104】
[参考例3]
流配フランジ60により形成される原料気体の流路の幅の効果を確認するために、図8に示した流配フランジ60を備えた水素分離装置10において、一次側ガスケット40の厚さを変えて水素透過度を測定した。図11は、参考例3において使用した水素分離装置10の構成を概略的に示す。図11(a)(b)(c)に示す水素分離装置10のいずれにおいても、一次側配管20の端面と同じ高さの位置に流配フランジ60が設けられるので、一次側ガスケット40の厚さが、流配フランジ60により形成される原料気体の流路の幅となる。一次側ガスケット40の厚さは、図11(a)の水素分離装置10では4mm、図11(b)の水素分離装置10では2mm、図11(c)の水素分離装置10では1mmである。
【0105】
鉄を原子百分率で10%含むバナジウムの合金(V−10%Fe)により形成された水素透過膜50(厚さ:100μm、直径:42mm)を、上記の厚さの銅製の一次側ガスケット40(外径:42mm、内径:36mm)と銅製の二次側ガスケット42(厚さ:0.6mm、外径:42mm、内径:34mm)で挟持し、参考例3において使用する水素分離装置10を構成した。この水素分離装置10を350℃に昇温し、原料気体供給流路26から水素窒素混合ガス(水素濃度:74.6%)を一次側圧力0.54MPa(水素分圧:0.4MPa)まで導入し、二次側圧力を0.1MPaに調整して水素透過試験を行った。ブリードガスの流量を毎分2Lとした時のそれぞれの水素分離装置10による水素透過度を測定したところ、一次側ガスケット40の厚さが薄い方がより高い水素透過性能が得られた。すなわち、流配フランジ60により形成される原料気体の流路の幅が狭い方が、より高い水素透過性能が得られた。
【0106】
[参考例4]
水素透過膜をさらに大型化しつつ、図10に示すような水素分離システム70(平膜積層型デバイス)を用いた水素透過試験を行った。
【0107】
具体的には、図8に示した流配フランジ60を備えた水素分離装置10において、図11(c)に示すように、一次側ガスケット40の厚さ(流配フランジ60により形成される原料気体の流路の幅)を1mmとした水素分離デバイスを使用した。
【0108】
鉄を原子百分率で10%含むバナジウムの合金(V−10%Fe)により形成された水素透過膜50(厚さ:100μm、直径:90mm)を、上記の厚さの銅製の一次側ガスケット40(外径:98mm、内径:90mm)と銅製の二次側ガスケット42(厚さ:0.6mm、外径:98mm、内径:90mm)で挟持し、図7(a)に示した水素分離装置10において、ステンレス鋼繊維フィルター(濾過径:30μm、厚さ:0.6mm)と、ステンレス鋼製金網(メッシュ幅355μm、厚さ0.6mm)を二次側の支持体として使用し、参考例4において使用する水素分離装置10を構成した。そのうえで、この水素分離装置10を1枚、2枚又は4枚使用して、図10に示すような水素分離システム(平膜積層型デバイス)を形成し、この水素分離システムを350℃に昇温し、原料気体供給流路26から純水素又は水素窒素混合ガス(水素濃度:74.6%)を、一次側圧力が純水素の場合は0.4MPa、水素窒素混合ガスの場合は0.54MPa(水素分圧:0.4MPa)まで導入し、二次側圧力を0.1MPaに調整して水素透過試験を行った。水素窒素混合ガスによる水素透過試験では、ブリードガスの流量を変化させてそれぞれの水素分離システム(平膜積層型デバイス)による水素透過度を測定した。
【0109】
図12(a)は、純水素ガスを原料ガスとして水素分離システムに供給した時の結果であり、水素透過膜50の枚数にほぼ比例して水素透過量が増えている。図12(b)は、水素窒素混合ガスを原料として水素分離システムに供給した結果を示す。この結果、面積当たりの水素透過流量を同一に設定すれば、面積当たり同じ流量の水素ガスを透過させることができ、水素分離装置10の枚数には無関係であることが示された。ただ、水素透過流量を増大させるとロスも大きくなった。
【0110】
[参考例5]
さらなる高容量化のため、参考例4において採用した水素分離装置10を4枚使用した水素分離システム(平膜積層型デバイス)において、水素窒素混合ガスを、二次側圧力を0.1MPaではなく0.01MPaとして流通させ、水素透過試験を行った。
【0111】
結果を図13に示す。二次側圧力を減圧することにより、さらに多くの水素透過流量が得られ、ロスは低減された。しかしながら、水素透過試験後の水素透過膜50は、図14に示すように、多数の皺が発生しており、耐久性に難があり再利用は困難であった。また、水素透過試験後の水素透過膜50の端部を確認すると、図15に示すように亀裂が発生しており損傷していた。このため、水素透過膜50の全面に均等に応力負荷があるのではなく、水素透過膜50の外周部に特に高い応力負荷があることが想定される。
【0112】
[参考例6]
参考例5において示された皺及び亀裂を解消することを目的として、水素透過膜50のプレス加工を行った。具体的には、鉄を原子百分率で10%含むバナジウムの合金(V−10%Fe)により形成された水素透過膜50(厚さ:100μm、直径:90mm)の上下から、図16に示すような形状の金型で挟持し、2MPaで30秒間プレス加工することにより、水素透過膜50の全面に凹凸部を形成した。この際、凹凸の数は2個、凹凸部の最大高低差は0.5mm、隣り合う凸部間の距離は9mmとした。この水素透過膜50を使用すること以外は参考例5と同様に水素透過試験を行った。
【0113】
この結果、中央部が特に加工され、参考例5において亀裂が発生し応力が集中すると考えられる外周部の加工度が低かったためか、図17に示すように、水素透過後にはやはり多数の皺が発生し、また、水素透過膜50が破壊された。
【0114】
この水素透過試験後の水素透過膜50には、外周部に設けた凹凸形状が消失し、多数の皺が発生していた。この皺の一部が亀裂しており水素透過膜50が損傷していた。
【0115】
[実施例1及び参考例7〜8]
上記の参考例4〜6の結果からは、水素透過膜50の外周部において応力が集中するものと考えられるが、この推測を明らかにするために応力解析を行った。水素透過膜50は水素を吸蔵することによって大きく変形するため、一次側ガスケット40及び二次側ガスケット42と支持体(ステンレス鋼繊維フィルター及びステンレス鋼製金網)は不動のものとして、水素透過膜50の熱による膨張と、水素吸蔵による膨張を計算し、水素透過試験時における応力を解析した結果を図18に示した。計算における各種条件も図18に示している。この応力解析図から、水素吸蔵による膨張によって水素透過膜50は、銅製ガスケットで挟持されている外周端部から10mm以内(直径に対して両端0.1倍以内)で最大の応力を受けることがわかる。また、逆に水素透過膜50の中央部は支持体により支えられているために外周部ほどの応力は受けていないことが分かった。
【0116】
そこで、参考例5及び6において示された皺及び亀裂を解消することを目的として、水素透過膜50の外周部にのみプレス加工を行った。具体的には、鉄を原子百分率で10%含むバナジウムの合金(V−10%Fe)により形成された水素透過膜50(厚さ:100μm、直径:90mm)の上下から、図19に示すような形状の金型で挟持し、9MPaで30秒間プレス加工することにより、水素透過膜50の直径の0.54倍に相当する直径48.6mmの中央部には加工せず、その他の外周部に加工することで、水素透過膜50の外周部のみに凹凸部を形成した。この際、凹凸の数は2個、凹凸部の最大高低差は0.5mm、隣り合う凸部間の距離は3〜7mmとした。
【0117】
得られた水素透過膜50を、銅製の一次側ガスケット40(厚さ:2mm、外径:98mm、内径:90mm)と銅製の二次側ガスケット42(厚さ:1mm(参考例7)、1.5mm(実施例1)、2mm(参考例8)、外径:98mm、内径:90mm)で挟持し、図7(a)に示した水素分離装置10において、ステンレス鋼繊維フィルター(濾過径:30μm、厚さ:0.6mm)と、ステンレス鋼製金網(メッシュ幅355μm、厚さ0.6mm)を二次側の支持体として使用し、水素分離装置10を構成した。そのうえで、この水素分離装置10を4枚使用して、図10に示すような水素分離システム(平膜積層型デバイス)を形成し、この水素分離システムを350℃に昇温し、原料気体供給流路から水素窒素混合ガス(水素濃度:74.6%)を、一次側圧力が0.54MPa(水素分圧:0.4MPa)まで導入し、二次側圧力を0.01MPaに調整して水素透過試験を行った。ブリードガスの流量を変化させてそれぞれの水素分離システム(平膜積層型デバイス)による水素透過度を測定した。
【0118】
二次側ガスケット42の厚みを1.5mmとした実施例1の場合は、水素分離システム70から3.66L/分の純水素ガスが得られた。凹凸加工を施さない参考例4の3.215L/分と比較してより多量の純水素ガスが得られた。これは、凹凸加工によって水素透過に有効な面積が増大した結果であると思われる。
【0119】
また、二次側ガスケット42の厚みには関係なく、水素透過試験後の水素透過膜50に皺は発生しなかった。具体例として、二次側ガスケット42の厚みを1.5mmとした場合の水素透過試験前後の外観写真を図20に示す。
【0120】
しかしながら、参考例7において、二次側ガスケット42の厚みを1mmとすると、水素透過試験中に水素透過膜50が外周部において二次側ガスケット42と隣接する支持体と接触したためか、図21に示すように、水素透過試験中に水素透過膜50が端部において破壊していた。
【0121】
また、参考例8において、二次側ガスケット42の厚みを2mmとすると、図22に示すように、水素透過試験後にも水素透過膜50が外周部において二次側ガスケット42と隣接する支持体と接触していないために応力分散できてはおり、一度の水素透過試験には耐えたものの、最外周の加工部が消失するほど変形していたことから再利用は困難であり、耐久性は低いものと考えられる。
【0122】
一方、実施例1において、二次側ガスケット42の厚みを1.5mmとすると、図23に示すように、水素透過試験後にも水素透過膜50が外周部において二次側ガスケット42と隣接する支持体と接触していないために応力分散できており、また、最外周の加工部も消失しておらず再利用可能であった。
【0123】
上記の実施例1及び参考例7〜8の結果をまとめて図24に示す。
【0124】
[実施例2]
プレス加工により凹凸形状を施した水素透過膜50の凹凸形状を維持する(耐久性を向上させる)手段として、水素透過膜50の二次側に接している支持体であるステンレス鋼繊維フィルター及びステンレス鋼製金網にも水素透過膜50と同様の凹凸形状を施した。
【0125】
鉄を原子百分率で10%含むバナジウムの合金(V−10%Fe)により形成された水素透過膜50(厚さ:100μm、直径:90mm)の上下から、図19に示すような形状の金型で挟持し、9MPaで30秒間プレス加工することにより、水素透過膜50の直径の0.54倍に相当する直径48.6mmの中央部には加工せず、その他の外周部に加工することで、水素透過膜50の外周部のみに凹凸部を形成した。この際、凹凸の数は2個、凹凸部の最大高低差は0.5mm、隣り合う凸部間の距離は3〜7mmとした。
【0126】
ステンレス鋼繊維フィルター(濾過径:30μm、厚さ:0.6mm)と、ステンレス鋼製金網(メッシュ幅355μm、厚さ0.6mm)にも同様に、上下から、図19に示すような形状の金型で挟持し、5MPaで30秒間プレス加工することにより、ステンレス鋼繊維フィルター及びステンレス鋼製金網の直径の0.54倍に相当する直径48.6mmの中央部には加工せず、その他の外周部に加工することで、ステンレス鋼繊維フィルター及びステンレス鋼製金網の外周部のみに凹凸部を形成した。この際、凹凸の数は2個、凹凸部の最大高低差は0.5mm、隣り合う凸部間の距離は3〜7mmとした。これにより、ステンレス鋼繊維フィルター及びステンレス鋼製金網に対して、水素透過膜50と嵌合するように凹凸形状を付与した。
【0127】
得られた水素透過膜50を、銅製の一次側ガスケット40(厚さ:2mm、外径:98mm、内径:90mm)と銅製の二次側ガスケット42(厚さ:1mm、外径:98mm、内径:90mm)で挟持し、図7(a)に示した水素分離装置10において、上記得られたステンレス鋼繊維フィルター及びステンレス鋼製金網を二次側の支持体として使用し、水素分離装置10を構成した。そのうえで、この水素分離装置10を4枚使用して、図10に示すような水素分離システム(平膜積層型デバイス)を形成し、この水素分離システムを350℃に昇温し、原料気体供給流路26から水素窒素混合ガス(水素濃度:74.6%)を、一次側圧力が0.54MPa(水素分圧:0.4MPa)まで導入し、二次側圧力を0.01MPaに調整して水素透過試験を行った。ブリードガスの流量を変化させてそれぞれの水素分離システム(平膜積層型デバイス)による水素透過度を測定した。
【0128】
上記の水素透過試験終了後、水素透過膜50の両側を真空状態にして、ヘリウムガスを大気圧まで導入し、室温まで放冷させた。再度、水素分離システムを350℃に昇温させてから、上記条件で水素透過試験を行った。この水素透過試験を4回繰り返したが、水素透過膜50の損傷は確認できなかった。また、4回の水素透過試験を繰り返して取り出した水素透過膜50の外観を図25に示す。この水素透過膜50には、水素吸蔵による膨張からの皺は確認できず、繰り返しの水素透過試験を行なっても、水素透過膜50の凹凸形状は維持されていた。
【符号の説明】
【0129】
10 水素分離装置
20 一次側配管
22 外管
24 内管
26 原料気体供給流路
28 原料気体排出流路
30 二次側配管
32 水素回収流路
40 一次側ガスケット
42 二次側ガスケット
50 水素透過膜
52 多孔質フィルター
54 金網
60 流配フランジ
62 溝
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
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図25