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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-195975(P2020-195975A)
(43)【公開日】2020年12月10日
(54)【発明の名称】成膜方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/02 20060101AFI20201113BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20201113BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20201113BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20201113BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20201113BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20201113BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20201113BHJP
【FI】
   B05D1/02 Z
   C23C26/00 C
   B05D3/00 D
   B05D3/02 B
   B05D1/02 G
   B05D7/00 H
   B05D7/24 302A
   B05D7/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-105115(P2019-105115)
(22)【出願日】2019年6月5日
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】平松 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】織田 容征
(72)【発明者】
【氏名】波戸 信義
(72)【発明者】
【氏名】宮本 典孝
【テーマコード(参考)】
4D075
4K044
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA82
4D075AE03
4D075BB22X
4D075BB23X
4D075BB92Y
4D075BB93Y
4D075DA06
4D075DA07
4D075DB01
4D075DC21
4D075EB01
4D075EC30
4K044AA01
4K044BA12
4K044BA18
4K044BA19
4K044BA20
4K044BB02
4K044BB11
4K044BC14
4K044CA24
4K044CA25
4K044CA53
4K044CA62
4K044CA71
(57)【要約】
【課題】成膜品質を落とすことなく、所望の膜厚を有する薄膜を基板上に成膜することができる成膜方法を提供する。
【解決手段】ステップS1で、上限温度TH、下限温度TL及び設定膜厚SFを含む処理パラメータを設定する。ステップS3で基板10の基板温度T10が上限温度THとなるように第iの加熱処理を実行する。ステップS4で基板温度T10が下限温度TL以上の基板温度条件を満足するように第iのミスト噴射処理を実行する。ステップS3及びステップS4の処理は、ステップS5で薄膜が設定膜厚SFに達したと判断されるまで、ステップS6でiの値を増加させながら繰り返し実行される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に薄膜を成膜する成膜方法であって、
(a) 加熱処理及び成膜処理に関する処理パラメータを設定するステップを備え、
前記ステップ(a) は、
(a-1) 許容温度範囲の上限温度を設定するステップと、
(a-2) 前記許容温度範囲の下限温度を設定するステップと、
(a-3) 薄膜の完成時の膜厚を設定膜厚として設定するステップとを含み、前記処理パラメータは前記上限温度、前記下限温度及び前記設定膜厚を含み、
(b) 前記基板の温度である基板温度が前記上限温度に達するように、前記基板を加熱する加熱処理を実行するステップと、
(c) 前記基板温度が前記下限温度以上となる基板温度条件を満足させつつ、前記基板に対し原料ミストを噴射して薄膜を成膜する成膜処理を実行するステップとをさらに備え、
前記ステップ(b)及び(c)は、前記薄膜の膜厚が前記設定膜厚に達するまで繰り返し実行されることを特徴する、
成膜方法。
【請求項2】
請求項1記載の成膜方法であって、
前記ステップ(a-1) は、基準成膜温度に“1”より大きい第1の乗数を乗算して前記上限温度を設定するステップを含み、
前記ステップ(a-2) は、前記基準成膜温度に“1”より小さい第2の乗数を乗算して前記下限温度を設定するステップを含む、
成膜方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の成膜方法であって、
前記ステップ(c) の前記成膜処理で用いられる原料ミストの溶媒は、水と比較して気化熱が低い溶媒である、
成膜方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうち、いずれか1項に記載の成膜方法であって、
前記ステップ(c) は、
(c-1) 前記成膜処理の実行に先がけて前記原料ミストを加熱する事前加熱処理を実行するステップを含む、
成膜方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうち、いずれか1項に記載の成膜方法であって、
前記基板は表面に凹凸形状を有する金属基材を含む、
成膜方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうち、いずれか1項に記載の成膜方法であって、
前記原料ミストに含まれる原料はスズであり、
前記薄膜は酸化スズ膜である、
成膜方法。
【請求項7】
請求項6記載の成膜方法であって、
前記ステップ(c) で実行される前記成膜処理は、
ドーパントを含むドーパントミストを噴射するドーパント噴射処理を含み、
前記ドーパントは、窒素、フッ素、燐、塩素、砒素、臭素、ニオブ、アンチモン、及びタングステンのうち、少なくとも一つを含む、
成膜方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のうち、いずれか1項に記載の成膜方法であって、
前記ステップ(b)及び前記ステップ(c)は、同一の処理空間内で実行されることを特徴とする、
成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池などの電子デバイスの製造に用いられ、基板上に膜を成膜する成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に膜を成膜する成膜方法として、化学気相成長(CVD(Chemical Vapor Deposition))法がある。しかしながら、化学気相成長法では真空下での成膜が必要な場合が多くなり、真空ポンプなどに加えて、大型の真空容器を用いる必要がある。さらに、化学気相成長法では、コスト等の観点から、成膜される基板として大面積のものを採用することが困難である、という問題があった。そこで、大気圧下における成膜処理が可能なミスト法が、注目されている。
【0003】
ミスト法を利用した成膜方法を実行する成膜装置に関する従来技術として、例えば特許文献1に係る技術が存在している。
【0004】
特許文献1に係る技術では、ミスト噴射用ノズル等を含むミスト噴射ヘッド部の底面に設けられる原料溶液噴出口及び反応材料噴出口から、大気中に配置されている基板に対してミスト化された原料溶液及び反応材料が噴射されている。当該噴射により、基板上には膜が成膜される。なお、反応材料は原料溶液との反応に寄与する材料を意味する。
【0005】
特許文献1で代表される従来の成膜装置を用いて、薄膜形成ノズルによるミスト噴射処理と加熱機構による加熱処理とを同時に実行して基板上に薄膜を成膜する成膜方法が採用されている。
【0006】
また、基板を上面上に載置する基板積載ステージの内部に加熱機構を設け、この基板積載ステージを平面型加熱手段として用いるのが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2017/068625号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来の成膜方法で用いられる成膜装置は、成膜対象物となる基材である基板を上面上に載置する基板積載ステージの内部に加熱機構を設け、基板積載ステージを平面型加熱手段として用いるのが一般的であった。
【0009】
基板積載ステージのような平面型加熱手段を用いる場合、基板積載ステージの上面と基板の下面とを接触させ、基板積載ステージ,基板間を伝熱させて基板の加熱処理を実行することになる。
【0010】
しかし、基板が平板形状ではなく、その下面が湾曲したものや、下面に凹凸がある構造を呈する場合、平面型加熱手段では、基板積載ステージの上面と基板の裏面との接触が局所的になる。このため、加熱機構による加熱処理の実行時に基板の加熱が不均一になったり、基板に反りが発生して変形したりする等の問題点があった。
【0011】
この発明では、上記のような問題点を解決し、成膜品質を落とすことなく、所望の膜厚を有する薄膜を基板上に成膜することができる成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る請求項1記載の成膜方法は、基板上に薄膜を成膜する成膜方法であって、(a) 加熱処理及び成膜処理に関する処理パラメータを設定するステップを備え、前記ステップ(a) は、(a-1) 許容温度範囲の上限温度を設定するステップと、(a-2) 前記許容温度範囲の下限温度を設定するステップと、(a-3) 薄膜の完成時の膜厚を設定膜厚として設定するステップとを含み、前記処理パラメータは前記上限温度、前記下限温度及び前記設定膜厚を含み、(b) 前記基板の温度である基板温度が前記上限温度に達するように、前記基板を加熱する加熱処理を実行するステップと、(c) 前記基板温度が前記下限温度以上となる基板温度条件を満足させつつ、前記基板に対し原料ミストを噴射して薄膜を成膜する成膜処理を実行するステップとをさらに備え、前記ステップ(b)及び(c)は、前記薄膜の膜厚が前記設定膜厚に達するまで繰り返し実行されることを特徴する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の本願発明である成膜方法は、以下の特徴(1)〜特徴(3)を有している。
(1) ステップ(b)で実行される加熱処理は、基板温度が上限温度に達するように実行される。
(2) ステップ(c)で実行される成膜処理は、基板温度が下限温度以上の基板温度条件を満足して実行される。
(3) ステップ(b)及び(c)は、薄膜の膜厚が設定膜厚に達するまで繰り返し実行される。
【0014】
請求項1記載の本願発明は、上記特徴(1)及び特徴(2)を有することにより、ステップ(c) で実行される成膜処理は、許容温度範囲を満足する温度環境下で必ず実行されるため、許容温度範囲を適切に設定することにより、要求される性能を発揮できる品質の優れた薄膜を成膜することができる。
【0015】
加えて、請求項1記載の本願発明は上記特徴(3)を有するため、膜厚が設定膜厚の薄膜を成膜することができる。
【0016】
したがって、請求項1記載の本願発明である成膜方法は、所望の膜厚を有し、かつ、要求された性能を満足する品質の優れた薄膜を成膜することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の実施の形態である成膜方法を実現するために用いられる成膜装置の概略構成を示す説明図である。
図2】基板温度の経時変化を示すグラフである。
図3】ミスト噴射処理時間に対する基板の基板低下温度を示すグラフである。
図4】実施の形態の成膜方法による処理手順を示すフローチャートである。
図5】実施の形態の成膜方法で成膜される薄膜が酸化スズ膜である場合の成膜温度と膜性能との関係を示すグラフである。
図6】実施の形態の第3の変形例で用いる成膜環境を模式的に示す説明図である。
図7】実施の形態の第4の変形例において成膜対象となる基板の構造を示す斜視図である。
図8】実施の形態の第6の変形例である成膜環境を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<成膜装置>
実施の形態の成膜方法に用いる成膜装置の加熱機構として、従来の平面型加熱手段に変えて赤外光照射器を用いることが考えられる。赤外光照射器を用いることにより、基板に接触することなく電磁波である赤外線で直接加熱できるため、基板の形状に関わらず均一に加熱することが可能となる。
【0019】
しかし、原料溶液をミスト化して得られる原料ミストが赤外光を吸収し、原料ミストが加熱されて蒸発するため、基板上に形成される薄膜の成膜品質や、成膜処理における成膜速度が低下する問題があった。また、原料ミストを噴射するミスト噴射処理自体が基板の加熱の妨げになることも問題であった。
【0020】
これらの問題を解決するため、加熱工程と成膜工程(ミスト噴射工程)とを分離しそれぞれ別の空間で行う改良製法が考えられる。この改良製法を用いることにより、基板の形状に関わらず、薄膜の成膜品質や成膜処理における成膜速度を落とすことなく成膜することを可能となる。
【0021】
しかし、基板が加熱工程を終えた直後から、急激に基板の温度が低下するため、加熱工程と成膜工程を繰り返す必要がある。このため、加熱処理を行う加熱機構とミスト噴射処理を行うミスト噴射機構とをそれぞれ複数準備し、複数の加熱機構と複数のミスト噴射機構とを交互に多数並べる装置構成が考えられる。
【0022】
図1はこの発明の実施の形態である成膜方法を実現するために用いる成膜装置の概略構成を示す説明図である。図1にXYZ直交座標系を記している。
【0023】
図1に示すように、実施の形態で用いられる成膜装置100は、n(n≧2)室の加熱室801〜80n、n室の成膜室901〜90n、n組の薄膜形成ノズル1H及び1Lの組合せ、n組の赤外光照射器2及び4の組合せ並びにコンベア53を主要構成要素として含んでいる。そして、成膜装置100は平板形状の基板10の表面及び裏面を成膜対象としている。
【0024】
赤外光照射器2はランプ載置台21及び複数の赤外光ランプ22から構成され、ランプ載置台21の上部に複数の赤外光ランプ22が取り付けられる。したがって、赤外光照射器2は複数の赤外光ランプ22から上方(+Z方向)に向けて赤外光を照射することができる。赤外光照射器2による上述した赤外光照射によってベルト52の上面に載置した複数の基板10の裏面に対する加熱処理(第1方向加熱処理)を実行することができる。
【0025】
赤外光照射器4はランプ載置台41及び複数の赤外光ランプ42から構成され、ランプ載置台41の下部に複数の赤外光ランプ42が取り付けられる。したがって、赤外光照射器4は複数の赤外光ランプ42から下方(−Z方向)に向けて赤外光を照射することができる。赤外光照射器4による上述した赤外光照射によってベルト52の上面に載置した複数の基板10の表面に対する加熱処理(第2方向加熱処理)を実行することができる。
【0026】
基板搬送部であるコンベア53はベルト52の上面に複数の基板10を載置しつつ、複数の基板10を搬送方向(X方向)に搬送している。コンベア53は左右両端に設けられた搬送用の二対のローラ51と、二対のローラ51に架け渡された無端状の搬送用のベルト52とを備えている。
【0027】
コンベア53は、二対のローラ51の回転駆動によって、上方側(+Z方向側)のベルト52を搬送方向(X方向)に沿って移動させることができる。
【0028】
コンベア53の二対のローラ51のうち、一方側の2つのローラ51は加熱室801外の左方(−X方向)に設けられ、他方側の2つのローラ51は成膜室90nの右方(+X方向)に設けられる。また、ベルト52の中央部は、加熱室801〜80n及び成膜室901〜90nのうちいずれかの内部に設けられる。
【0029】
したがって、ベルト52は二対のローラ51の回転駆動により、加熱室801〜80nそれぞれの左右(−X方向,+X方向)の側面の一部に設けられる一対の開口部88、及び成膜室901〜90nそれぞれの左右の側面の一部に設けられる一対の開口部98を介して、加熱室801〜80nの内部、成膜室901〜90nの内部並びに外部との間を移動することができる。
【0030】
加熱室801〜80nと成膜室901〜90nとは、加熱室801、成膜室901、加熱室802、成膜室902、…、加熱室80n、及び成膜室90nの順で左方から右方にかけて、すなわち、基板10の搬送方向であるX方向に沿って隣接して設けられる。また、加熱室801の右側の開口部88と成膜室901の左側の開口部98とが共用され、成膜室901の右側の開口部98と加熱室802の左側の開口部88とが共用され、加熱室802の右側の開口部88と成膜室902の左側の開口部98とが共用される。
【0031】
すなわち、加熱室80i(i=1〜nのいずれか)の右側の開口部88と成膜室90iの左側の開口部98とが共用され、成膜室90j(j=1〜(n−1))の右側の開口部98と加熱室80(j+1)の左側の開口部88とが共用される。
【0032】
コンベア53の一部は加熱室801〜80nに収納される。加熱室801〜80nの内部及び周辺の構成は同じであるため、以下では加熱室801を中心に説明する。
【0033】
加熱室801は、上部容器83、下部容器84及び一対の開口部88により構成される。Z方向である高さ方向において上部容器83と下部容器84との間に一対の開口部88が位置する。したがって、加熱室801内の開口部88,88間に配置されるコンベア53のベルト52は下部容器84より高く、上部容器83より低い位置に配置される。
【0034】
加熱室801の周辺において、第1方向加熱部である赤外光照射器2は下部容器84外の下方(−Z方向)側のコンベア53から離れた位置に、図示しない固定手段より固定される。
【0035】
加熱室801の周辺において、第2方向加熱部であるである赤外光照射器4は上部容器83外の上方(+Z方向)側のコンベア53から離れた位置に、図示しない固定手段より固定される。赤外光照射器2及び赤外光照射器4により加熱機構が構成される。
【0036】
なお、赤外光照射器2及び4は共に、加熱室801内のベルト52の上面領域(線状の一対のコンベアチェーンに挟まれる領域)と平面視して重複する位置に配置される。
【0037】
加熱室801〜80nはそれぞれ、赤外光照射器2及び4から照射される赤外光を吸収することなく、透過性に優れた赤外光透過材料を構成材料としている。具体的には、加熱室801〜80nはそれぞれ構成材料として石英ガラスを採用している。
【0038】
第1方向加熱部である赤外光照射器2は、基板10の裏面側(他方主面側)から+Z方向(第1の方向)に向けて赤外光を照射して基板10を裏面側から加熱する第1方向加熱処理を行っている。
【0039】
第2方向加熱部である赤外光照射器4は、基板10の表面側(一方主面側)から、+Z方向と反対方向となる−Z方向(第2の方向)に向けて赤外光を照射して基板10を表面側から加熱する第2方向加熱処理を行っている。
【0040】
また、加熱室801は、赤外光照射器2及び4の加熱処理(第1方向加熱処理及び第2方向加熱処理)の実行時に、基板10を内部に収容している。
【0041】
加熱室801は、加熱処理を行う際、エアカーテン7により上部容器83,下部容器84間の開口部88を塞ぐことにより、ベルト52上に載置された複数の基板10を外部から遮断することができる。
【0042】
このように、実施の形態で用いられる成膜装置100は、第1〜第nの加熱機構として加熱室801〜加熱室80nの外部周辺に設けられた赤外光照射器2及び4を有している。
【0043】
そして、加熱室80i(i=1〜nのいずれか)内の複数の基板10に対し赤外光照射器2及び4により第iの加熱処理を実行している。第iの加熱処理が上述した第1方向加熱処理及び第2方向加熱処理を含んでいる。
【0044】
成膜室901〜90nはそれぞれ薄膜形成ノズル1H及び1L並びにコンベア53の一部を収納する。成膜室901〜90nの内部構成は同じであるため、以下では成膜室901を中心に説明する。
【0045】
成膜室901は、上部容器91、下部容器92及び一対の開口部98により構成される。Z方向である高さ方向において上部容器91と下部容器92との間に一対の開口部98が位置する。したがって、成膜室901内の開口部98,98間に配置されるコンベア53のベルト52は下部容器92より高く、上部容器91より低い位置に配置される。
【0046】
成膜室901において、ミスト噴射機構である薄膜形成ノズル1Hは上部容器91内に図示しない固定手段により固定配置される。同様にミスト噴射機構である薄膜形成ノズル1Lは下部容器92内に図示しない固定手段により固定配置される。この際、薄膜形成ノズル1Hは、噴射面とベルト52の上面とが対向する位置関係で配置され、薄膜形成ノズル1Lは、噴射面とベルト52の下面とが対向する位置関係で配置される。
【0047】
成膜室901において、薄膜形成ノズル1Hは、噴射面に設けられた噴射口から下方(−Z方向)に原料ミストMTを噴射する第2の方向ミスト噴射処理を実行する。成膜室901において、薄膜形成ノズル1Lは、噴射面に設けられた噴射口から上方(+Z方向)に原料ミストMTを噴射する第1方向ミスト噴射処理を実行する。
【0048】
このように、実施の形態で用いられる成膜装置100は、第1〜第nのミスト噴射機構として成膜室901〜成膜室90n内に設けられた薄膜形成ノズル1H及び1Lを有している。
【0049】
そして、成膜室90i(i=1〜nのいずれか)内に設けられた薄膜形成ノズル1H及び1Lにより第iのミスト噴射処理を実行している。第iのミスト噴射処理が上述した第1方向ミスト噴射処理及び第2方向ミスト噴射処理を含んでいる。
【0050】
成膜室901〜90nはそれぞれ、ミスト噴射処理を行う際、エアカーテン7により上部容器91,下部容器92間の開口部98を塞ぐことにより、薄膜形成ノズル1H及び1L、並びにベルト52上に載置された複数の基板10を外部から遮断することができる。
【0051】
したがって、成膜装置100は、エアカーテン7によって加熱室801〜80nそれぞれの一対の開口部88並びに成膜室901〜90nそれぞれの一対の開口部98を全て閉状態にし、コンベア53のベルト52を搬送方向(X方向)に沿って移動させることにより、成膜環境を設定することができる。
【0052】
成膜装置100は、上記成膜環境下で、加熱室801〜80n内の基板10に対して行う第1〜第n加熱処理と成膜室901〜90n内の基板10に対して行う第1〜第nのミスト噴射処理とが互いに影響を受けないように、赤外光照射器2及び4の組合せと薄膜形成ノズル1H及び1Lの組合せとをそれぞれ分離して配置している。
【0053】
そして、実施の形態で用いる成膜装置100は、上記成膜環境下で、加熱室80i内の複数の基板10に対し赤外光照射器2及び4の赤外光照射による第iの加熱処理を実行した後、成膜室901内で薄膜形成ノズル1H及び1Lによる第iのミスト噴射処理を実行する。この際、第1〜第nの加熱処理と第1〜第nのミスト噴射処理とが交互に行われる。
【0054】
そして、成膜室901〜90nのうち、成膜室90x(1≦x≦n)を最終製造室として設定し、加熱処理とミスト噴射処理とがx回繰り返された後、最終的に成膜室90xにおいてベルト52の上面に載置された基板10の表面上及び下面上にそれぞれ薄膜を成膜することができる。この場合、加熱室80(x+1)〜加熱室80nでは加熱処理が行われず、及び成膜室90(x+1)〜成膜室90nでは成膜処理であるミスト噴射処理が行われない。
【0055】
このように、実施の形態で用いられる成膜装置100は、基板10と接触関係をもたせることなく、最大n組の赤外光照射器2及び4の組合せによって基板10を加熱することができるため、基板10の形状に関わらず均一な加熱を、基板10を変形させることなく行うことができる。
【0056】
さらに、成膜装置100は、加熱処理とミスト噴射処理とが互いに影響を受けないようにn組の赤外光照射器2及び4とn組の薄膜形成ノズル1H及び1Lとをそれぞれ分離して配置している。このため、成膜装置100は、第1〜第nの加熱処理及び第1〜第nのミスト噴射処理それぞれの実行時に、原料ミストが蒸発する現象を確実に回避することができる。
【0057】
その結果、成膜装置100は、成膜品質や成膜速度を落とすことなく、基板10の表面上及び下面上それぞれに薄膜を成膜することができる。
【0058】
成膜装置100は、上述したように、第1〜第nの加熱処理及び第1〜第nのミスト噴射処理間で影響を受けないように、第1〜第nの加熱機構及び第1〜第nのミスト噴射機構は、第1の加熱機構、第1のミスト噴射機構、第2、…第nの順で交互に配置されている。
【0059】
そして、成膜装置100は、第1〜第nの加熱処理と第1〜第nのミスト噴射処理とを第1の加熱処理,第1のミスト噴射処理、第2、…第nの順で交互に実行することを特徴としている。
【0060】
したがって、成膜装置100は、最大n回交互に繰り返される加熱処理及びミスト噴射処理を実行することにより、成膜される薄膜の膜厚を厚くしたり、膜質が異なる最大n種類の膜による積層構造で薄膜を形成したりすることができる。
【0061】
加えて、成膜装置100は、加熱室801〜80n内の基板10に対して行う第1〜第nの加熱処理として、赤外光照射器2による第1方向加熱処理と赤外光照射器4による第2方向加熱処理とを同時に行っている。
【0062】
その結果、成膜装置100は、加熱室801〜80nそれぞれ内において基板10をより均一に加熱することができる。
【0063】
加えて、成膜装置100は、成膜室901〜90n内の基板10に対して行う第1〜第nのミスト噴射処理として、薄膜形成ノズル1Lによる第1方向ミスト噴射処理と薄膜形成ノズル1Hによる第2方向ミスト噴射処理とを同時に行っている。
【0064】
その結果、成膜装置100は、基板10の表面に第1の薄膜を成膜し、かつ基板10の裏面に第2の薄膜を成膜することができる。
【0065】
(薄膜の品質)
しかしながら、成膜装置100を用いて単純に基板10の表面及び裏面に薄膜を成膜するだけでは、基板10の表面及び裏面に所望の膜厚を有し、かつ、要求された性能を満足する品質の優れた薄膜を成膜することは困難である。
【0066】
図2は基板温度の経時変化を示すグラフである。図2の横軸はミスト噴射処理時間(規格化値)を示し、図2の縦軸は基板低下温度(℃)を示している。図2では図1で示した成膜装置100を用いて加熱処理とミスト噴射処理とを交互に行う際の基板温度変化L1示している。
【0067】
同図に示すように、加熱機構による加熱処理が実行される加熱期間T1中に基板10は500度程度の加熱温度に達するように加熱されている。
【0068】
しかしながら、ミスト噴射機構によるミスト噴射処理が実行される成膜期間T2中に基板10の温度は急速に低下し、加熱処理が行われる前の150℃に低下していまう。
【0069】
図3はミスト噴射処理時間に対する基板10の基板低下温度を示すグラフである。同図では、加熱処理によって500度に加熱された基板10におけるミスト噴射処理の開始直後からの温度変化を基板温度変化L2として示している。
【0070】
同図に示すように、ミスト噴射処理が2秒実施されると、基板10の基板温度は約150℃程度低下ししてしまう。
【0071】
一方、基板10の表面あるいは裏面に品質の優れた薄膜を成膜するには、成膜期間T2中において成膜温度範囲内に設定することが重要となる。ここで、成膜温度範囲とは、「薄膜に要求される性能を発揮するために、成膜処理時に満足させる必要がある基板の温度範囲」を意味する。
【0072】
以下に述べる実施の形態の成膜方法は、ミスト噴射処理が実行される成膜期間中における基板10の温度低下を考慮し、加熱処理及びミスト噴射処理を繰り返し行いつつ、所望の膜厚の薄膜を精度よく成膜することを目的としている。
【0073】
<実施の形態>
図4は実施の形態の成膜方法による処理手順を示すフローチャートである。なお、実施の形態の成膜方法では図1で示した成膜装置100を用いることを前提としている。
【0074】
以下、同図を参照して、実施の形態の成膜方法の成膜処理内容を説明する。なお、以下では、説明の都合上、赤外光照射器2及び4には共に同一条件で第1方向及び第2方向加熱処理を実行し、薄膜形成ノズル1H及び1Lは同一の原料ミストMTを同一条件で噴射する第2方向及び第1方向ミスト噴射処理を実行し、基板10の表面及び裏面に膜厚及び膜種が同一の薄膜を成膜する場合の処理内容を説明する。
【0075】
まず、ステップS1において、加熱処理及びミスト噴射処理(成膜処理)に関する処理パラメータの設定を行う。具体的には、以下のS1−1〜S1−4の処理を行う。
【0076】
ステップS1−1:基準成膜温度TFを設定する。
ステップS1−2:基準成膜温度TFの上限温度THを設定する。
ステップS1−3:基準成膜温度TFの下限温度TLを設定する。
ステップS1−4:薄膜の完成時の膜厚を設定膜厚SFとして設定する。
【0077】
上述した上限温度TH、下限温度TL及び設定膜厚SFが加熱処理及びミスト噴射処理に関する処理パラメータとなる。
【0078】
そして、ステップS2で、「i=1」に初期設定する。
【0079】
その後、ステップS3で、加熱室801の赤外光照射器2及び4によって基板10を加熱する第1の加熱処理を実行する。第i(i=1)の加熱処理は、基板10基板の温度である基板温度T10が上限温度THに達するように実行される。
【0080】
ステップS3の実行後、ステップS4において、成膜室901の薄膜形成ノズル1H及び1Lによって原料ミストMTを基板10の表面及び裏面に噴射する第1のミスト噴射処理を実行する。
【0081】
第i(i=1)のミスト噴射処理は、基板温度T10が下限温度TL以上の基板温度条件を満足するように実行される。
【0082】
第i(i=1)のミスト噴射処理の具体的処理内容について説明する。まず、基板10の温度低下度合を考慮して、上限温度THに加熱された基板10の基板温度T10が下限温度TLに達する時間である温度低下限界時間TXを認識する。
【0083】
そして、ミスト噴射処理時間Tmが温度低下限界時間TX以内となるように、第i(i=1)のミスト噴射処理を実行する。
【0084】
その結果、第i(i=1)のミスト噴射処理は、基板温度T10が下限温度TL以上、上限温度TH以下の温度環境下で必ず実行されることになる。
【0085】
なお、ステップS4の実行時に基板10の表面及び裏面にドーパントを噴射するトーパント噴射処理が併せて実行されている。
【0086】
ステップS4の終了後、ステップS5において、基板10の表面及び裏面に形成された薄膜の膜厚が設定膜厚SFに達したか否かを判断する。
【0087】
ステップS5で薄膜が設定膜厚SFに達したと判断する(YES)と処理を終了し、ステップS5で薄膜が設定膜厚SFに達していないと判断する(NO)とステップS6に移行する。
【0088】
ステップS6において、「i=i+1」が実行された後、ステップS3に戻る。
【0089】
ステップS3で、加熱室802の赤外光照射器2及び4によって基板10を加熱する第2の加熱処理(図1のP1で示す処理)を実行する。第i(i=2)の加熱処理は、基板10の温度である基板温度T10が上限温度THに達するように実行される。
【0090】
ステップS3の実行後、ステップS4において、成膜室902の薄膜形成ノズル1H及び1Lによって原料ミストMTを基板10の表面及び裏面に噴射する第2のミスト噴射処理(図1のP2で示す処理)を実行する。
【0091】
第i(i=2)のミスト噴射処理は、基板温度T10が下限温度TL以上の基板温度条件を満足する温度環境下で実行される。
【0092】
ステップS4の終了後、ステップS5において、ステップS4の実行後の基板10の表面及び裏面に形成された薄膜の膜厚が設定膜厚SFに達したか否かを判断する。
【0093】
ステップS5で薄膜が設定膜厚SFに達したと判断する(YES)と処理を終了し、ステップS5で薄膜が設定膜厚SFに達していないと判断する(NO)と、ステップS6にて「i=i+1」が実行された後、ステップS3に戻る。
【0094】
以降、ステップS5でYESと判断されるまで、ステップS3〜S6の処理が繰り返される。
【0095】
ここで、i=x(1≦x<n)のとき、ステップS5でYESと判断されたとする。この場合、第(x+1)〜第nの加熱処理及び第(x+1)〜第nのミスト噴射処理は実行されない。
【0096】
したがって、成膜室90xによる第xのミスト噴射処理の実行を最後に基板10の表面及び裏面に設定膜厚SFを満足する薄膜の成膜が完了する。
【0097】
薄膜の成膜が完了した基板10は、コンベア53によって加熱室80(x+1)〜成膜室90nを通過し、最終的に成膜室90nの右側に移動させることにより、取り出すことができる。
【0098】
上述した実施の形態の成膜方法は、以下の特徴(1)〜特徴(3)を有している。
【0099】
(1) ステップS3で実行される第iの加熱処理は、基板10の温度である基板温度T10が上限温度THに達するように実行されている。
(2) ステップS4で実行される第iのミスト噴射処理(第iの成膜処理)は、基板温度T10が下限温度TL以上の基板温度条件を満足して実行される。
(3) ステップS3及びS4は、薄膜の膜厚が設定膜厚SFに達するまで繰り返し実行される。
【0100】
実施の形態の成膜方法は、上記特徴(1)及び特徴(2)を有することにより、第1〜第xのミスト噴射処理は、許容温度範囲を満足する温度環境下で必ず実行されるため、許容温度範囲を適切に設定することにより、要求される性能を発揮できる品質の優れた薄膜を成膜することができる。
【0101】
加えて、実施の形態の成膜方法は上記特徴(3)を有するため、膜厚が設定膜厚SFの薄膜を成膜することができる。
【0102】
したがって、実施の形態の成膜方法は、所望の膜厚を有し、かつ、要求された性能を満足する品質の優れた薄膜を成膜することができる効果を奏する。
【0103】
(第1の変形例)
図5は実施の形態の成膜方法で成膜される薄膜が酸化スズ膜である場合の成膜温度と膜性能との関係を示すグラフである。すなわち、成膜装置100の成膜室901〜90nそれぞれの薄膜形成ノズル1H及び1Lから噴射される原料ミストMTは原料をスズとした原料溶液をミスト化して得られる。
【0104】
酸化スズ膜の性能として接触抵抗及び貫通抵抗を示している。接触抵抗は酸化スズ膜の表面を流れる電流値から導かれる抵抗を意味し、貫通抵抗は酸化スズ膜を貫く電流値から導かれる抵抗を意味する。図5では接触抵抗R1を黒地の菱形で示し、貫通抵抗R2を黒地の正方形で示している。なお、図5ではドーパントとしてアンチモンを用いている。
【0105】
図5に示す例では、接触抵抗R1が20Ω・cm以下で、貫通抵抗R2が50Ω・cm以下となることが、酸化スズ膜に要求された性能となる。
【0106】
したがって、要求された性能を満足するように酸化スズ膜を成膜するためには、図4のステップS4で実行される第iのミスト噴射処理(第iの成膜処理)は、図5の許容温度範囲TPを満足した温度環境下で実行する必要がある。
【0107】
したがって、図4で示すステップS1の処理として、以下のステップS1−1〜S1−3が実行される。
【0108】
ステップS1−1において、基準成膜温度TFを465℃に設定する。
ステップS1−2において、基準成膜温度TFを基準として、465℃から+7.5%の温度高さにある500℃を上限温度THに設定する。すなわち、基準成膜温度TFに“1”より大きい第1の乗数である「1.075」を乗算して上限温度THを設定している。
ステップS1−3:基準成膜温度TFを基準として、465℃からの−7.5%の温度高さにある430℃を下限温度TLに設定する。すなわち、ステップS1−3において、基準成膜温度TFに、“1”より小さい第2の乗数である「0.925」を乗算して下限温度TLを設定している。
【0109】
このように、実施の形態の第1の変形例では、基準成膜温度TF(=465℃)を基準として、基準成膜温度TFに“1”より大きい第1の乗数(=1.075)を乗算して上限温度THを設定し、基準成膜温度TFに“1”より小さい第2の乗数(=0.925)を乗算して下限温度TLを設定している。
【0110】
実施の形態の第1の変形例では、基準成膜温度TFを基準として許容温度範囲TPを適切に設定することにより、ミスト噴射処理(成膜処理)の実行中において、基板10は常時、基板温度T10が許容温度範囲TPを満足する適切な温度環境下に置かれるため、より精度の高い薄膜(酸化スズ膜)を成膜することができる。
【0111】
なお、基準成膜温度TFを設定することなく、図5で示すグラフ等の実験結果を参照して、許容温度範囲TPから上限温度THと下限温度TLとを直接求める態様も第1の変形例の他の態様として考えられる。
【0112】
(第2の変形例)
実施の形態の第2の変形例では、ミスト噴射処理(成膜処理)で用いられる原料ミストの溶媒として、水と比較して気化熱が低い溶媒を用いたことを特徴としている。
【0113】
具体的には、溶媒として、メタノール、エタノール、アセトン、ヘキサン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、1,2-ジエトキシエタン、メチルエチルケトン、ジブチルエーテル等が考えられる。
【0114】
実施の形態の第2の変形例では、溶媒の気化熱が水より低い分、第iのミスト噴射処理の実行中における基板10の基板温度T10の温度低下度合を緩やかにすることができる。
【0115】
したがって、実施の形態の第2の変形例では、基板温度T10が下限温度TLに達するまでの時間延長を図ることができるため、第iのミスト噴射処理(第iの成膜処理)の実行期間を長く設定し、その分、1単位の第iのミスト噴射処理によって成膜可能な膜厚を厚くすることができる。
【0116】
(第3の変形例)
図6は実施の形態の第3の変形例で用いる成膜環境を模式的に示す説明図である。同図に示すように、第3の変形例では、上部容器93、下部容器94及び扉95からなる成膜室900内において、基板10がコンベア56によって搬送される。コンベア56はローラ54及びベルト55から構成される。
【0117】
また、成膜室900内において、薄膜形成ノズル1から原料ミストMTが基板10の表面に向けて噴射される。原料ミストMTを発生して成膜室900内に供給する原料ミスト供給機構として、ミスト発生器72、ミスト搬送用配管73、配管加熱機構74及び薄膜形成ノズル1が構成される。
【0118】
ミスト発生器72として、例えば超音波霧化装置を採用できる。超音波霧化装置であるミスト化器16は、図示しない溶液容器内の原料溶液に対して超音波を印加することにより、溶液容器内の原料溶液をミスト化して原料ミストMTを得ることができる。
【0119】
ミスト発生器72から発生された原料ミストMTは、ミスト搬送用配管73を介して薄膜形成ノズル1に供給され、薄膜形成ノズル1にて成膜室900内で原料ミストMTが噴射される。この際、ミスト搬送用配管73の一部の外周に沿って設けられた配管加熱機構74によって原料ミストMTが薄膜形成ノズル1に達する前段階で加熱される。
【0120】
このように、図6で示したミスト供給機構は、配管加熱機構74によって原料ミストMTを所定温度に事前加熱した後、原料薄膜形成ノズル1から事前加熱された原料ミストMTを噴射することができる。
【0121】
実施の形態の第3の変形例は、図6で示したようミスト供給機構を、図1で示した成膜室901〜90nそれぞれの薄膜形成ノズル1H及び1Lのミスト供給機構として採用することを特徴としている。
【0122】
すなわち、実施の形態の第3の変形例では、図4のステップS4の第iのミスト噴射処理は、第iのミスト噴射処理の実行に先がけて原料ミストMTを加熱する事前加熱処理を実行するステップを含むことを特徴している。
【0123】
したがって、実施の形態の第3の変形例は、ステップS4において、ミスト噴射処理(成膜処理)の実行に先がけて原料ミストMTを加熱する事前加熱処理を実行することにより、ミスト噴射処理の実行時における成膜速度の向上を図ることができる。
【0124】
(第4の変形例)
図7は実施の形態の第4の変形例において成膜対象となる基板10Bの構造を示す斜視図である。図7にはXYZ直交座標系を記している。同図に示すように、基板10はX方向に沿って凹凸が繰り返し形成される凹凸構造を呈する金属基材である。なお、Y方向に沿って凹凸は形成されない。
【0125】
実施の形態の第4の変形例は、図7で示した凹凸形状の基板10Bの表面及び裏面を成膜対象としている。すなわち、第4の変形例では、図1で示した成膜装置100の成膜対象は基板10でなく基板10Bとなる。
【0126】
実施の形態の第4の変形例は、ステップS4で実行される第iのミスト噴射処理(第iの成膜処理)の実行時間は比較的短いため、表面に凹凸形状を有する金属基材である基板10Bの表面及び裏面上にも精度良く薄膜を成膜することができる。
【0127】
(第5の変形例)
実施の形態の第5の変形例では薄膜として金属酸化膜を成膜する場合の変形例である。第5の変形例はステップS4の第iのミスト噴射処理の実行時に、ドーパントを噴射する処理を併せて実行することを特徴としている。
【0128】
ドーパントとして、窒素、フッ素、燐、塩素、砒素、臭素、ニオブ、アンチモン、及びタングステンのうち、少なくとも一つが考えられる。
【0129】
なお、ドーパントを噴射する際、原料ミストMTと同様、ドーパントを含む溶液をミスト化して得られるドーパントミストを噴射しても良い。
【0130】
実施の形態の第5の変形例は、第iのミスト噴射処理(第iの成膜処理)の実行時に、ドーパントを噴射する処理を併せて実行することにより、成膜される金属酸化膜の導電率を効果的に高めることができる。
【0131】
(第6の変形例)
図8は実施の形態の第6の変形例である成膜環境を模式的に示す説明図である。図8にはXYZ直交座標系を記している。同図に示すように、同一の処理空間150に薄膜形成ノズル11〜15及び赤外光ランプ31〜35が共に設けられている。基板10は図示しないコンベア等の搬送機構によりX方向を搬送方向として搬送される。
【0132】
第6の変形例では、薄膜形成ノズル11〜15と赤外光ランプ31〜35とは交互に設けられ、薄膜形成ノズル11〜15及び赤外光ランプ31〜35の下方を基板10が搬送されるように構成している。赤外光ランプ31〜35の上方にはランプカバー61〜65が設けられる。ランプカバー61〜65は赤外光ランプ31〜35が効率的に下方を加熱すべく、赤外光ランプ31〜35に接触することなく赤外光ランプ31〜35の上半分を覆うように配置される。
【0133】
基板10の搬送方向であるX方向に沿って、薄膜形成ノズル11〜15は配置される。薄膜形成ノズル11〜15それぞれの形成幅(X方向)を狭くし、かつ、薄膜形成ノズル11〜15のうち隣接する薄膜形成ノズル間におけるX方向に沿ったノズル間隔も狭くしている。
【0134】
同様に、基板10の搬送方向であるX方向に沿って、赤外光ランプ31〜35が配置される。赤外光ランプ31〜35それぞれの形成幅(X方向)を狭くし、かつ、赤外光ランプ31〜35のうち隣接する赤外光ランプ間におけるX方向に沿ったランプ間隔も狭くしている。
【0135】
そして、基板10の搬送方向に沿って赤外光ランプ31,薄膜形成ノズル11、赤外光ランプ32,薄膜形成ノズル12、赤外光ランプ33、薄膜形成ノズル13、赤外光ランプ34、薄膜形成ノズル14、赤外光ランプ35及び薄膜形成ノズル15の順に、薄膜形成ノズル11〜15及び赤外光ランプ31〜35を配置している。
【0136】
このように、図8で示した装置環境では、ミスト噴射処理(成膜処理)用のミスト噴射機構を構成する薄膜形成ノズル11〜15と、加熱処理用の加熱機構を構成する赤外光ランプ31〜35とを必要最小限の装置サイズで構成している。そして、上記構成によって、図8で示した装置環境は、同一の処理空間150内で第i(i=1〜5のいずれか)の加熱処理と第iのミスト噴射処理(第iの成膜処理)とを交互に処理している。
【0137】
実施の形態の第6の変形例では、同一の処理空間150内で第iの加熱処理と第iのミスト噴射処理とを実行することにより、第iのミスト噴射処理の実行時間の短縮を図ることができるため、基板温度T10を下限温度TL以上にする基板温度条件を比較的簡単に満足させることができる。
【0138】
<その他>
実施の形態では、説明の都合上、赤外光照射器2及び4には共に同一条件で第1方向及び第2方向加熱処理を実行し、薄膜形成ノズル1H及び1Lは同一の原料ミストMTを同一条件で噴射する第2方向及び第1方向ミスト噴射処理を実行し、基板10の表面及び裏面に膜厚及び膜種が同一の薄膜を成膜する場合の処理内容を説明した。
【0139】
しかし、赤外光照射器2による第1方向加熱処理と赤外光照射器4による第2方向加熱処理とは互いに独立した加熱処理であり、薄膜形成ノズル1Lによる第1方向ミスト噴射処理と薄膜形成ノズル1Hによる第2方向ミスト噴射処理とは互いに独立処理であると考えることができる。
【0140】
上記考えの下、薄膜形成ノズル1Hから噴射される原料ミストMTと、薄膜形成ノズル1Lから噴射される原料ミストMTとの種類を変更し、かつ、赤外光照射器2による第1方向加熱処理と赤外光照射器4による第2方向加熱処理との間で加熱内容を変えても良い。
【0141】
さらに、基板10の表面に形成する第1の薄膜の膜厚である第1の膜厚と、基板10の裏面に形成する第2の薄膜の膜厚である第2の膜厚とを異なる値に設定しても良い。第1の膜厚が第2の膜厚より薄い場合、第1の薄膜が第2の薄膜に先がけて完成される可能性が高い。
【0142】
具体的に、第1の薄膜の完成が第p(1≦p<n)のミスト噴射処理の実行後であり、第2の薄膜の完成が第q(1<q≦n,q>p)のミスト噴射処理の実行後であった場合を考える。
【0143】
この場合、第(p+1)〜第qのミスト噴射処理は、薄膜形成ノズル1Hは原料ミストMTを噴射せず、薄膜形成ノズル1Lのみが原料ミストMTを噴射するようにする。同様に、第(p+1)〜第qの加熱処理は、赤外光照射器4による第2方向加熱処理は実行されず、赤外光照射器2による第1方向加熱処理のみ実行するようにする。
【0144】
そして、第(q+1)〜第nの加熱処理の第1方向及び第2方向加熱処理並びに第(q+1)〜第nのミスト噴射処理の第1方向及び第2方向ミスト噴射処理は全て実行されない。
【0145】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0146】
1,1H,1L,11〜15 薄膜形成ノズル
2,4 赤外光照射器
10,10B 基板
22,31〜35,42 赤外光ランプ
53 コンベア
74 配管加熱機構
150 処理空間
801〜80n 加熱室
901〜90n 成膜室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8