【解決手段】棒材Wを把持する把持手段と、棒材Wの加工条件を設定する加工条件設定手段と、把持手段で把持した棒材Wを加工条件設定手段で設定した加工条件で加工するように棒材Wの加工を制御する加工制御手段とを有する工作機械1であって、加工条件設定手段が、棒材Wが複数の材料の接合部80を有する場合に、接合部80に対する先端側部分を加工するときの加工負荷が接合部80に対する把持側部分を加工するときの加工負荷よりも小さくなるように加工条件を設定することを特徴とする工作機械1。
前記加工条件設定手段で設定する前記加工条件が、前記棒材を前記2つの主軸の一方で把持して回転させながら加工するときの前記2つの主軸の一方の回転速度又は前記棒材の送り速度を含む、請求項2〜4の何れか1項に記載の工作機械。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されるような工作機械では、接合後の棒材を加工する場合に、主軸による把持部分と工具による加工部分との間に接合部があることによって、接合部に対する先端側部分の加工時の負荷が接合部にかかり、接合部に対して悪影響を及ぼす可能性があった。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みて成されたものであり、その目的は、複数の材料の接合部を有する棒材の加工を接合部に対する悪影響を抑制して行うことができる工作機械及び加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の工作機械は、棒材を把持する把持手段と、前記棒材の加工条件を設定する加工条件設定手段と、前記把持手段で把持した前記棒材を前記加工条件設定手段で設定した前記加工条件で加工するように前記棒材の加工を制御する加工制御手段とを有する工作機械であって、前記加工条件設定手段が、前記棒材が複数の材料の接合部を有する場合に、前記接合部に対する先端側部分を加工するときの加工負荷が前記接合部に対する把持側部分を加工するときの加工負荷よりも小さくなるように前記加工条件を設定することを特徴とする。
【0007】
本発明の工作機械は、上記構成において、前記把持手段をそれぞれ備えるとともに互いに対向する2つの主軸と、前記2つの主軸でそれぞれ前記棒材を把持し、前記2つの主軸で把持した2つの前記棒材を接合するように前記2つの主軸を制御する接合制御手段とを有するのが好ましい。
【0008】
本発明の工作機械は、上記構成において、前記2つの主軸の一方で把持した前記棒材の前記把持手段からの突出長さを検出する検出手段と、前記検出手段で検出した接合前の前記棒材の突出長さと、前記検出手段で検出した接合後の前記棒材の突出長さとに基づいて、接合後の前記棒材における前記接合部に対する前記先端側部分の長さを算出する長さ算出手段とを有するのが好ましい。
【0009】
本発明の工作機械は、上記構成において、前記加工制御手段が、前記棒材から所定の長さの製品を連続して得るように前記棒材の加工を制御し、前記長さ算出手段で算出した前記接合部に対する前記先端側部分の長さと、前記加工制御手段によって連続して加工される前記製品の1個当たりの長さとに基づいて、前記接合部に対する前記先端側部分から得られる前記製品の個数を算出する個数算出手段を有し、前記加工条件設定手段が、前記個数算出手段で算出した個数の前記製品を前記接合部に対する前記先端側部分から得るまでの加工を、前記接合部に対する前記先端側部分の加工とみなすのが好ましい。
【0010】
本発明の工作機械は、上記構成において、前記加工条件設定手段で設定する前記加工条件が、前記棒材を前記2つの主軸の一方で把持して回転させながら加工するときの前記2つの主軸の一方の回転速度又は前記棒材の送り速度を含むのが好ましい。
【0011】
本発明の加工方法は、棒材を把持する把持手段と、加工条件設定手段と、加工制御手段とを有する工作機械を用いて前記棒材を加工する加工方法であって、前記加工条件設定手段が、前記棒材が複数の材料の接合部を有する場合に、前記接合部に対する先端側部分を加工するときの加工負荷が前記接合部に対する把持側部分を加工するときの加工負荷よりも小さくなるように前記棒材の加工条件を設定する加工条件設定ステップと、前記加工制御手段が、前記棒材の加工を制御して、前記把持手段で把持した前記棒材を前記加工条件設定手段で設定した前記加工条件で加工する加工制御ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の材料の接合部を有する棒材を加工する場合に、主軸による把持部分と工具による加工部分との間にある接合部に対する先端側部分を加工するときの接合部に対する悪影響を抑制して加工することができる工作機械及び加工方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明の一実施の形態である工作機械及び加工方法について詳細に例示説明する。
【0015】
図1に示す工作機械1は、長尺の棒材Wをワークとして加工する自動旋盤(CNC旋盤)であり、互いに対向する2つの主軸として、正面主軸10と背面主軸20とを有している。
【0016】
正面主軸10と背面主軸20とは、正面主軸10の軸線と背面主軸20の軸線とが平行となるように、互いに対向して配置されている。以下、正面主軸10と背面主軸20の軸線に平行な方向をZ軸方向とし、Z軸方向に直交する方向をX軸方向とし、Z軸方向及びX軸方向に直交する方向をY軸方向とする。
【0017】
基台2上には、例えばボールネジ機構等の正面側移動機構3によってZ軸方向に移動自在に正面主軸台11が設置されている。正面主軸10は、正面主軸台11に棒材Wを把持して回転自在に支持され、主軸モータによって回転駆動される。主軸モータとしては、例えば、正面主軸台11の内部において、正面主軸台11と正面主軸10との間に構成されるビルトインモータを採用することができる。
【0018】
基台2上には、例えばボールネジ機構等の背面側移動機構4によってZ軸方向に移動自在に背面主軸台21が設置されている。背面主軸20は、背面主軸台21に棒材Wを把持して回転自在に支持され、主軸モータによって回転駆動される。主軸モータとしては、例えば、背面主軸台21の内部において、背面主軸台21と背面主軸20との間に構成されるビルトインモータを採用することができる。
【0019】
背面主軸移動機構4と背面主軸台21との間には、背面主軸20をY軸方向に移動させるY軸移動機構が設置されている。
【0020】
正面主軸10の先端には、棒材Wを把持する把持手段としての正面チャック12が開閉自在に設けられている。正面チャック12は、チャックスリーブ13の内側に収容されている。正面チャック12は、チャックスリーブ13が正面主軸10の先端側に向けてスライド移動すると閉じられ、チャックスリーブ13が正面主軸10の基端側に向けてスライド移動すると開かれる。なお、正面チャック12は、チャックスリーブ13が正面主軸10の先端側に向けてスライド移動すると開かれ、チャックスリーブ13が正面主軸10の基端側に向けてスライド移動すると閉じられるように構成してもよい。正面主軸10は、正面チャック12を開いた状態として棒材Wを挿入し、正面チャック12を閉じることによって棒材Wを把持することができる。
【0021】
背面主軸20の先端には、棒材Wを把持する把持手段としての背面チャック22が開閉自在に設けられている。背面チャック22は、チャックスリーブ23の内側に収容されている。背面チャック22は、チャックスリーブ23が背面主軸20の先端側に向けてスライド移動すると閉じられ、チャックスリーブ23が背面主軸20の基端側に向けてスライド移動すると開かれる。なお、背面チャック22は、チャックスリーブ23が背面主軸20の先端側に向けてスライド移動すると開かれ、チャックスリーブ23が背面主軸20の基端側に向けてスライド移動すると閉じられるように構成してもよい。背面主軸20は、背面チャック22を開いた状態として棒材Wを挿入し、背面チャック22を閉じることによって棒材Wを把持することができる。
【0022】
正面主軸10と背面主軸20との間には、ガイドブッシュ30が設けられている。ガイドブッシュ30は、基台2に設置されたガイドブッシュ支持台31に装着され、正面主軸10と同軸に配置されている。ガイドブッシュ30は、ガイドブッシュ支持台31に対して軸線方向に位置調節されることで、棒材Wの外径に対応した内径に調節される。ガイドブッシュ30は、棒材WをZ軸方向に移動自在にガイドすることができる。
【0023】
工作機械1は、棒材Wを加工する工具41を備える加工部40を有している。工具41は、正面主軸10に把持され回転させられた棒材Wに対し、X軸方向への移動により切り込み、正面主軸10(正面主軸台11)のZ軸方向への移動により送られる。すなわち、X軸方向が切り込み方向となり、Z軸方向が送り方向となる。工具41は刃物台42に保持されている。刃物台42は、工具41がガイドブッシュ30の前方に配置され、ガイドブッシュ支持台31にX軸方向及びY軸方向に移動自在に支持されている。刃物台42のZ軸方向の位置は一定である。刃物台42には、工具41として、例えば外径切削バイトや突っ切りバイトなどが搭載されており、これらは、刃物台42の例えばY軸方向への移動により、加工内容に応じて適宜切り替えられる。
【0024】
工作機械1は、正面主軸10の後方に配置される棒材供給部(バーフィーダー)50を有している。棒材供給部50は、棒材Wの後端を把持するフィンガー51と、フィンガー51をZ軸方向に駆動する駆動ロッド52とを有している。棒材供給部50は、正面主軸10に新材としての棒材Wを、順次供給することができる。また、棒材供給部50は、所定の加工及び突っ切り加工が行われる毎に、棒材Wを繰り出すことができる。さらに、棒材供給部50は、正面主軸10から背面主軸20の側に突出する棒材Wを、正面主軸10の側に引き込むことができる。
【0025】
工作機械1は、制御部60を有している。制御部60は、例えばCPU(中央演算処理装置)等のプロセッサとメモリとを有するコンピュータで構成することができる。制御部60は、正面主軸10(正面主軸台11、正面チャック12を含む)、背面主軸20(背面主軸台21、背面チャック22を含む)、ガイドブッシュ30、加工部40及び棒材供給部50の各作動を統合制御することができる。
【0026】
より具体的には、制御部60は、棒材Wの加工条件を設定する加工条件設定手段としての機能と、正面チャック12で把持した棒材Wを加工条件設定手段で設定した加工条件で加工するように棒材Wの加工を制御する加工制御手段としての機能とを有している。そして、制御部60は、加工条件設定手段としての機能により、棒材Wが複数の材料の接合部80を有する場合に、接合部80に対する先端側部分を加工する場合の加工負荷が接合部80に対する把持側部分を加工する場合の加工負荷よりも小さくなるように加工条件を設定するようになっている。
【0027】
また、制御部60は、加工制御手段としての機能により、加工条件設定手段としての機能で設定した加工条件で正面チャック12で把持した棒材Wを回転させて所定の加工(切削加工)及び突っ切り加工を連続的に行い、棒材Wから所定の長さ(つまり、
図2(b)に示す製品Pの1個当たりの長さPL)の製品Pを連続して得るように棒材Wの加工を制御するようになっている。また、制御部60は、加工制御手段としての機能により、
図2(a)、(b)に示すように、所定の加工を行った後、正面主軸10で把持した棒材Wの先端を背面主軸20で把持し、この状態で棒材Wを突っ切り加工することで、突っ切った棒材Wを正面主軸10から背面主軸20に受け渡し、背面主軸20で把持して回転させた棒材Wに対して図示しない加工部によってさらに加工を行うこともできる。なお、
図2〜
図5においては、正面主軸10及び背面主軸20の全体は図示せずに、正面チャック12及び背面チャック22のみを示している。
【0028】
また、制御部60は、正面主軸10及び背面主軸20でそれぞれ棒材Wを把持し、正面主軸10及び背面主軸20で把持した2つの棒材Wを互いに接合するように正面主軸10及び背面主軸20を制御する接合制御手段としての機能を有している。
【0029】
より具体的には、制御部60は、接合制御手段としての機能により、
図3(a)、(b)に示すように、加工が完了した棒材Wを正面主軸10から旧材W1として脱抜して背面主軸20に受け渡し、
図4(a)に示すように、旧材W1が脱抜された正面主軸10に棒材供給部50から新材W2としての棒材Wを供給して正面チャック12に把持させ、
図4(b)に示すように、背面チャック22に把持された旧材W1と正面チャック12に把持された新材W2との互いに対向する端部を摩擦圧接により接合して接合部80を有する棒材Wとし、
図5(a)に示すように、背面主軸20による把持を解除して正面主軸10又は棒材供給部50の動作によって棒材Wの旧材W1の部分を背面主軸20から脱抜するようになっている。なお、摩擦圧接とは、正面主軸10と背面主軸20とを相対回転させることで旧材W1の端面と新材W2の端面との間に生じさせた摩擦熱によって旧材W1の端面と新材W2の端面とを互いに接合する従来公知の技術であるため、詳細な説明は割愛する。
【0030】
また、制御部60は、正面主軸10で把持した棒材Wの正面チャック12からの突出長さを検出する検出手段としての機能を有している。制御部60は、検出手段としての機能により、正面主軸10で把持した棒材Wの先端面を、工具41(
図4(a)参照)、測定棒61(
図5(b)参照)又はその他の部分に当接させることで棒材Wの正面チャック12からの突出長さを検出することができる。工具41はガイドブッシュ支持台31に支持されてZ軸方向の位置(Z1−0)が決まっているため、正面チャック12を位置制御する制御部60は、新材W2の端面を工具41に当接させた状態で正面チャック12のZ軸位置(Z1−1)を検出することによって、工具41及び正面チャック12のZ軸方向の位置に基づいて、正面チャック12からの新材W2の突出長さAを算出することができる。所定の長さの測定棒61が背面主軸台21の所定の位置に固定して設けられており、制御部60は、棒材Wが背面主軸20から脱抜されて正面主軸10側に引き込まれた状態で、ガイドブッシュ30の先端から突出した接合後の棒材Wの端面に測定棒61が当接するように背面主軸20を位置制御して背面主軸台21のZ軸方向の位置を検出する。また、制御部60は、測定棒61が棒材Wの端面に当接した際の正面チャック12のZ軸方向の位置を検出し、背面主軸台21と正面チャック12のZ軸方向の位置に基づいて、接合後の棒材Wの正面チャック12からの突出長さBを算出することができる。なお、制御部60の検出手段としての機能は、これに限らず、例えば、正面主軸10で把持した棒材Wをカメラで撮影し、当該撮影画像を画像認識処理することによるものであってもよく、光学的な位置検出センサによるものであってもよく、制御部60の加工プログラムに基づくものであってもよい。
【0031】
さらに、制御部60は、検出手段としての機能で検出した接合前の棒材Wの突出長さA(
図4(a)参照)と、検出手段としての機能で検出した接合後の棒材Wの突出長さB(
図5(b)参照)とに基づいて、接合後の棒材Wにおける接合部80に対する先端側部分(つまり、旧材W1の部分)の長さL(
図5(b)参照)を算出する長さ算出手段としての機能を有している。接合後の棒材Wにおける旧材W1の部分の長さLは、例えば、L=B−A+α/2で算出することができる。ここで、αは、棒材Wを構成する旧材W1の部分と新材W2の部分とが摩擦圧接時に接合部分において押し潰された長さである。その潰れ長さαは、摩擦圧接時における正面主軸10と背面主軸20とのZ軸方向への相対的な移動量等から算出することができる。なお、制御部60の長さ算出手段としての機能は、これに限らず、例えば、正面主軸10で把持した棒材Wをカメラで撮影し、当該撮影画像を画像認識処理することによるものであってもよく、光学的な位置検出センサによるものであってもよく、制御部60の加工プログラムに基づくものであってもよい。
【0032】
さらに、制御部60は、長さ算出手段としての機能で算出した接合部80に対する先端側部分の長さL(
図5(b)参照)と、加工制御手段としての機能によって連続して加工される製品Pの1個当たりの長さPL(
図2(b)参照)とに基づいて、接合部80に対する先端側部分から得られる製品Pの個数を算出する個数算出手段としての機能を有している。
【0033】
さらに、制御部60は、加工条件設定手段としての機能により、個数算出手段としての機能で算出した個数の製品Pを接合部80に対する先端側部分から得るまでの加工を、接合部80に対する先端側部分の加工とみなすようになっている。
【0034】
制御部60が加工条件設定手段としての機能で設定する加工条件は、棒材Wを正面主軸10で把持して回転させながら加工するときの棒材Wの送り速度(工具41と棒材Wとの送り方向の相対移動速度)を含んでもよい。棒材Wの送り速度を減少させることにより、加工時の工具41と棒材Wとの間の切削抵抗、つまり加工時の棒材Wに対する加工負荷を減少させることができるので、接合部80にかかる負荷を減少させることができ、もって、接合部80に対する悪影響を抑制して棒材Wの加工を行うことができる。制御部60が加工条件設定手段としての機能で設定する加工条件は、棒材Wを正面主軸10で把持して回転させながら加工するときの正面主軸10の回転速度を含んでもよい。正面主軸10の回転速度を減少させることにより、加工時の工具41と棒材Wとの間の切削抵抗、つまり加工時の棒材Wに対する加工負荷を減少させることができるので、接合部80にかかる負荷を減少させることができ、もって、接合部80に対する悪影響を抑制して棒材Wの加工を行うことができる。制御部60が設定する上記の加工条件は、正面主軸10の回転速度と棒材W3の送り速度との両方を含んでもよい。加工条件(加工負荷をどの程度変化させるか等)は、予め定めておくことの他、機械学習、人工知能等に基づき自動的に定められるようにしてもよい。
【0035】
次に、上記構成を有する工作機械1を用いた棒材Wの加工方法の一例(すなわち、本発明の一実施の形態である加工方法)について説明する。当該加工方法は、上記の通り、工作機械1の各部が制御部60によって統合制御されることにより行われる。
【0036】
図2(a)に示すように、制御部60は、まず、加工制御手段としての機能により、棒材供給部50によって供給した棒材Wを正面チャック12に把持させ、正面主軸10で回転させ、回転する棒材Wに対して所定の加工(切削加工)及び突っ切り加工を連続的に行って、棒材Wから所定の長さの製品Pを連続して得るように棒材Wの加工を制御する。このとき、制御部60は、棒材Wが接合部80を有していないことを認識している。したがって、このときの加工は、制御部60が加工条件設定手段としての機能により適宜設定した加工条件で行うことができる。
【0037】
図3(a)に示すように、棒材Wから複数の製品Pが加工され、棒材Wが正面主軸10の正面チャック12によって把持された状態では加工を行うことができない長さとなると、棒材Wの加工が完了し、棒材Wは旧材W1となる。
【0038】
旧材W1が発生すると、制御部60は、接合制御手段としての機能により、
図3(b)に示すように、旧材W1を正面主軸10から背面主軸20に受け渡し、棒材供給部50によって新材W2を正面主軸10に供給して把持させる。
【0039】
次いで、制御部60は、検知手段としての機能により、
図4(a)に示すように、正面主軸10で把持した新材W2の先端面を工具41に当接させることで新材W2の正面チャック12からの突出長さAを検出する。
【0040】
次いで、制御部60は、接合制御手段としての機能により、
図4(b)に示すように、背面チャック22に把持された旧材W1と正面チャック12に把持された新材W2との互いに対向する端部を摩擦圧接により接合して接合部80を有する棒材Wとする。
【0041】
次いで、制御部60は、接合制御手段としての機能により、
図5(a)に示すように、背面主軸20による把持を解除して棒材Wの旧材W1の部分を背面主軸20から脱抜する。
【0042】
次いで、制御部60は、検知手段としての機能により、
図5(b)に示すように、正面主軸10で把持した接合後の棒材Wの先端面を、測定棒61に当接させることで棒材Wの正面チャック12からの突出長さBを検出する。
【0043】
次いで、制御部60は、長さ算出手段としての機能により、接合前の棒材Wの突出長さAと、接合後の棒材Wの突出長さBとに基づいて、接合後の棒材Wにおける接合部80に対する先端側部分(つまり、旧材W1の部分)の長さLを算出する。
【0044】
次いで、制御部60は、個数算出手段としての機能により、接合部80に対する先端側部分の長さLと、加工制御手段としての機能によって連続して加工される製品Pの1個当たりの長さPLとに基づいて、接合部80に対する先端側部分から得られる製品Pの個数を算出する。
【0045】
次いで、制御部60は、加工条件設定手段としての機能により、個数算出手段としての機能で算出した個数の製品Pを接合部80に対する先端側部分から得るまでの加工を、接合部80に対する先端側部分の加工とみなし、接合部80に対する先端側部分を加工する場合の加工負荷が接合部80に対する把持側部分を加工する場合の加工負荷よりも小さくなるように加工条件を設定する。ここで、接合部80に対する把持側部分を加工する場合の加工条件は、棒材Wの接合が行われる前の加工条件と同等であってよい。
【0046】
次いで、制御部60は、加工制御手段としての機能により、加工条件設定手段としての機能で設定した加工条件で正面チャック12で把持した棒材Wを回転させて所定の加工(切削加工)及び突っ切り加工を連続的に行い、複数の製品Pを得る。
【0047】
したがって、接合後の棒材Wを加工する場合に、旧材W1を加工するとき、すなわち正面主軸10による把持部分と工具41による加工部分との間に接合部80があるときには、新材W2を加工するとき、すなわち正面主軸10による把持部分と工具41による加工部分との間に接合部80がないときよりも加工負荷が減少した加工条件で加工を行うことができる。これにより、旧材W1を加工するときに接合部80に対する悪影響を抑制して加工することができる。
【0048】
このように、本実施の形態の加工方法は、棒材(棒材W)を把持する把持手段(正面チャック12、背面チャック22)をそれぞれ備えるとともに互いに対向する2つの主軸(正面主軸10、背面主軸20)と、加工条件設定手段と、加工制御手段と、接合制御手段と、検出手段と、長さ算出手段と、個数算出手段とを有する工作機械を用いて前記棒材を加工する加工方法であって、前記接合制御手段が、前記2つの主軸を制御して、前記2つの主軸でそれぞれ前記棒材を把持し、前記2つの主軸で把持した2つの前記棒材を接合する接合制御ステップと、前記検出手段が、前記接合制御ステップにおいて前記2つの主軸の一方(正面主軸10)で把持した接合前の前記棒材の前記把持手段からの突出長さ(突出長さA)を検出し、前記接合制御ステップの後に前記2つの主軸の前記一方で把持した接合後の前記棒材の前記把持手段からの突出長さ(突出長さB)を検出する検出ステップと、前記長さ算出手段が、前記検出手段で検出した接合前の前記棒材の突出長さと、前記検出手段で検出した接合後の前記棒材の突出長さとに基づいて、接合後の前記棒材における前記接合部(接合部80)に対する先端側部分(旧材W1の部分)の長さを算出する長さ算出ステップと、前記個数算出手段が、前記長さ算出手段で算出した前記接合部に対する先端側部分の長さと、前記加工制御手段によって連続して加工される所定の長さの製品(製品P)の1個当たりの長さ(長さPL)とに基づいて、前記接合部に対する前記先端側部分から得られる前記製品の個数を算出する個数算出ステップと、前記加工条件設定手段が、前記個数算出手段で算出した個数の前記製品を前記接合部に対する前記先端側部分から得るまでの加工を、前記接合部に対する前記先端側部分の加工とみなして、前記接合部に対する前記先端側部分を加工するときの加工負荷が前記接合部に対する把持側部分を加工するときの加工負荷よりも小さくなるように前記棒材の加工条件を設定する加工条件設定ステップと、前記加工制御手段が、前記加工条件設定手段で設定した前記加工条件で、前記2つの主軸の前記一方で把持した前記棒材から前記製品を連続して得るように前記棒材の加工を制御する加工制御ステップとを有することを特徴とする加工方法となっている。
【0049】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0050】
例えば、前記実施の形態では、検出手段、長さ検出手段及び個数算出手段により、接合部80に対する先端側部分を加工するときと接合部80に対する把持側部分を加工するときとを識別するようにしているが、これに限らず、上記以外の手段によって、これらを識別するようにしてもよい。そのような手段は、例えば、正面主軸10で把持した棒材Wをカメラで撮影し、当該撮影画像を画像認識処理することによるものであってもよく、光学的な位置検出センサによるものであってもよく、制御部60の加工プログラムに基づくものであってもよい。
【0051】
前記実施の形態では、旧材W1と新材W2とを摩擦圧接により接合するようにしているが、これに限らず、例えば旧材W1と新材W2との何れか一方の端部に凹部を設け、旧材W1と新材W2の何れか他方に凸部を設け、これらを嵌合させることで旧材W1と新材W2とを接合するなど、その接合の手段は種々変更可能である。
【0052】
前記実施の形態においては、複数の材料を正面主軸10及び背面主軸20によって接合した棒材Wを加工するようにしているが、これに限らず、複数の材料を正面主軸10及び背面主軸20以外の手段によって接合した棒材Wを加工するようにしてもよい。
【0053】
前記実施の形態においては、接合部80は1つだけの棒材Wで説明をしているが、棒材Wの中に複数の接合部80を有していても同様に適用可能である。その場合には、例えば、先端と正面チャック12による把持部分との間で最も把持部分に近い接合部80を基準とし、この接合部80に対する先端側部分を加工するときの加工負荷が接合部80に対する把持側部分を加工するときの加工負荷よりも小さくなるように加工条件を設定するようにしてもよい。
【0054】
前記実施の形態においては、工作機械1はガイドブッシュ30を備えているが、ガイドブッシュ30を備えない構成とすることもできる。