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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-196413(P2020-196413A)
(43)【公開日】2020年12月10日
(54)【発明の名称】上部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/06 20060101AFI20201113BHJP
   B62D 25/04 20060101ALI20201113BHJP
【FI】
   B62D25/06 A
   B62D25/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-105578(P2019-105578)
(22)【出願日】2019年6月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】銭谷 恒明
(72)【発明者】
【氏名】森本 誠
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA31
3D203BB06
3D203BB08
3D203BB12
3D203BB22
3D203BB25
3D203BB54
3D203BB56
3D203BB62
3D203BB63
3D203BC10
3D203CA22
3D203CA25
3D203CA29
3D203CA53
3D203CA54
3D203CA57
3D203CA73
3D203CB04
3D203CB39
3D203DA73
3D203DA77
(57)【要約】
【課題】軽量化を図りつつ、車両走行時に生ずるルーフレインフォースメントのよじれ挙動を抑制することができる上部車体構造の提供を目的とする。
【解決手段】車体上部の車幅方向左右両側において車両前後方向に沿って延びる一対のルーフサイドレール21が設けられ、車両前後方向に幅を有し、かつ、上記一対のルーフサイドレール21,21間を車幅方向に橋渡しするルーフレインフォースメント28が設けられた上部車体構造であって、上記ルーフレインフォースメント28には、車両前後方向に斜交い状に延び、その車両前後方向の前端部と後端部とが互いに車幅方向にオフセットする位置で当該ルーフレインフォースメント28に接合された補強部材(51または52のうち少なくとも何れか一方)を備えたことを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上部の車幅方向左右両側において車両前後方向に沿って延びる一対のルーフサイドレールが設けられ、
車両前後方向に幅を有し、かつ、上記一対のルーフサイドレール間を車幅方向に橋渡しするルーフレインフォースメントが設けられた上部車体構造であって、
上記ルーフレインフォースメントには、車両前後方向に斜交い状に延び、その車両前後方向の前端部と後端部とが互いに車幅方向にオフセットする位置で当該ルーフレインフォースメントに接合された補強部材を備えた
上部車体構造。
【請求項2】
上記補強部材は長尺部材で形成された
請求項1に記載の上部車体構造。
【請求項3】
上記長尺部材から成る補強部材が複数設けられ、複数の補強部材により平面視で略X字形状に構成された
請求項2に記載の上部車体構造。
【請求項4】
上記ルーフレインフォースメントが設けられた上記ルーフサイドレールにより、車両側部にセンタピラーレスのドア開口部が形成された
請求項1〜3の何れか一項に記載の上部車体構造。
【請求項5】
上記ドア開口部の後部には、車両の略上下方向に延びる構造体が設けられ、
上記構造体の下端部近傍に、車両のリヤサスペンション部材が設けられた
請求項4に記載の上部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体上部の車幅方向左右両側において車両前後方向に沿って延びる一対のルーフサイドレールが設けられ、車両前後方向に幅を有し、かつ、上記一対のルーフサイドレール間を車幅方向に橋渡しするルーフレインフォースメントが設けられた上部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体上部には車幅方向の左右両側において車両前後方向に延びるルーフサイドレールが設けられており、車体剛性の向上や、上方からの荷重入力、または、万一の車両横転に備えて、上述のルーフサイドレール間を、車幅方向に橋渡しするルーフレインフォースメントを設けるのが一般的である。
【0003】
特許文献1には、左右一対のルーフサイドレール間を、閉断面構造をもったルーフレインフォースメント(クロスビーム参照)で車幅方向に橋渡しすることにより、車体剛性の向上を図ったものが開示されている。
【0004】
しかしながら、燃費向上や車両の運動性能の向上の観点から、車体の軽量化が望まれており、上記車体の強化をより軽量な構造にて実現するニーズがあるが、上記特許文献1に開示された従来構造においては、閉断面構造のルーフレインフォースメントが車幅方向の全幅にわたって設けられている関係上、重量が大となるものである。
【0005】
また、車体の構造(例えば、センタピラーレスで比較的大きいドア開口部を備えた車両の構造)によっては、車両走行時にルーフレインフォースメントそれ自体が、車両の左右の挙動差によってよじれる挙動を示す場合がある。特に、車両のコーナリング時においては、ルーフレインフォースメントの左右に入力される荷重の大きさが異なることに起因して、ルーフレインフォースメントがよじれるので、その抑制の観点で改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−112656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、軽量化を図りつつ、車両走行時に生ずるルーフレインフォースメントのよじれ挙動を抑制することができる上部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による上部車体構造は、車体上部の車幅方向左右両側において車両前後方向に沿って延びる一対のルーフサイドレールが設けられ、車両前後方向に幅を有し、かつ、上記一対のルーフサイドレール間を車幅方向に橋渡しするルーフレインフォースメントが設けられた上部車体構造であって、上記ルーフレインフォースメントには、車両前後方向に斜交い状に延び、その車両前後方向の前端部と後端部とが互いに車幅方向にオフセットする位置で当該ルーフレインフォースメントに接合された補強部材を備えたものである。
【0009】
上記構成によれば、上述のルーフレインフォースメントに、車両前後方向に斜交い状に延びる補強部材を接合したので、軽量でありながら、車両走行時に生ずる当該ルーフレインフォースメントのよじれ挙動を抑制することができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記補強部材は長尺部材で形成されたものである。
上記構成によれば、補強部材を長尺部材にて形成することにより、ルーフレインフォースメントの上部全体を一枚の長方形状板で覆う構造と比較して、その軽量化を図ることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記長尺部材から成る補強部材が複数設けられ、複数の補強部材により平面視で略X字形状に構成されたものである。
上記構成によれば、長尺部材から成る補強部材を平面視で略X字形状に組合せたので、ルーフレインフォースメントのよじれ防止効果を高めることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記ルーフレインフォースメントが設けられた上記ルーフサイドレールにより、車両側部にセンタピラーレスのドア開口部が形成されたものである。
上記構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、車両側部にセンタピラーレスのドア開口部が形成されると、センタピラーが存在しないことに起因して、ルーフレインフォースメントに対してよじれ挙動が生じやすくなるが、上記補強部材にて当該ルーフレインフォースメントのよじれ挙動を抑制することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記ドア開口部の後部には、車両の略上下方向に延びる構造体が設けられ、上記構造体の下端部近傍に、車両のリヤサスペンション部材が設けられたものである。
上述のリヤサスペンション部材は、トーションビーム式リヤサスペンションのトレーリングアームに設定してもよく、または他の型式のリヤサスペンション部材に設定してもよい。
【0014】
上記構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、車両のリヤサスペンション部材から構造体の下端部近傍を介して、略上下方向に延びる当該構造体に荷重が入力され、この荷重がルーフサイドレールを介してルーフレインフォースメントに伝達されるが、上述の補強部材にて当該ルーフレインフォースメントのよじれ挙動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、軽量化を図りつつ、車両走行時に生ずるルーフレインフォースメントのよじれ挙動を抑制することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の上部車体構造を含む車両全体の車体構造を示す斜視図
図2図1の車両右側の側面図
図3】上部車体構造を示す平面図
図4図3の要部拡大平面図
図5図3から補強部材を取外した状態で示す要部の拡大平面図
図6図3のA−A線矢視断面図
図7】ルーフレインフォースメントと補強部材の分解斜視図
図8】(a)〜(d)は補強部材の他の実施例を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
軽量化を図りつつ、車両走行時に生ずるルーフレインフォースメントのよじれ挙動を抑制するという目的を、車体上部の車幅方向左右両側において車両前後方向に沿って延びる一対のルーフサイドレールが設けられ、車両前後方向に幅を有し、かつ、上記一対のルーフサイドレール間を車幅方向に橋渡しするルーフレインフォースメントが設けられた上部車体構造であって、上記ルーフレインフォースメントには、車両前後方向に斜交い状に延び、その車両前後方向の前端部と後端部とが互いに車幅方向にオフセットする位置で当該ルーフレインフォースメントに接合された補強部材を備えるという構成にて実現した。
【実施例】
【0018】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は上部車体構造を示し、図1は当該上部車体構造を含む車両全体の車体構造を示す斜視図、図2図1の車両右側の側面図、図3は上部車体構造を示す平面図、図4図3の要部拡大平面図、図5図3から補強部材を取外した状態で示す要部の拡大平面図、図6図3のA−A線矢視断面図、図7はルーフレインフォースメントと補強部材の分解斜視図、図8の(a)〜(d)は補強部材の他の実施例を示す平面図である。
【0019】
なお、以下の実施例においては、車両走行用のエンジン等の内燃機関、排気管を含む排気系路、車両前後方向に長く延びるセンタトンネル部を有さない電気自動車の車体構造について例示するが、本発明は電気自動車の上部車体構造のみに限定されるものではない。
【0020】
まず、図1図2図3を参照して車両全体の車体構造について説明する。
図1に示すように、車両前部のモータルームと、その後方の車室とを車両前後方向に仕切るダッシュパネル(詳しくは、ダッシュロアパネル)を設け、該ダッシュパネルの下部後端部には、略平坦形状のフロントフロアパネル1(以下、単にフロアパネルと略記する)を連設している。
【0021】
このフロアパネル1は車室の床面を形成するもので、該フロアパネル1の車幅方向左右両サイドには、車両の前後方向に延びる閉断面構造のサイドシル2を設けている。当該サイドシル2はサイドシルインナ2aとサイドシルアウタ2bとを接合固定して、車両前後方向に延びるサイドシル閉断面部を有する車体強度部材である。
【0022】
左右一対のサイドシル2,2の前部相互間を車幅方向に一直線状に連結する前部クロスメンバ3(いわゆるNo.2クロスメンバ)を設けている。この前部クロスメンバ3は断面ハット形状の部材にて形成され、その下部フランジをフロアパネル1上面に接合固定することで、フロアパネル1と前部クロスメンバ3との間には、車幅方向に一直線状に延びる閉断面部が形成されている。上述の前部クロスメンバ3は前席シートの前側下部と対応する位置に設けられるものである。
【0023】
上記前部クロスメンバ3の後方において、上述の左右一対のサイドシル2の車両前後方向の中間部相互間を、車幅方向に一直線状に連結する中間クロスメンバ4(いわゆるNo.2.5クロスメンバ)を設けている。この中間クロスメンバ4も断面ハット形状の部材にて形成され、その下部フランジをフロアパネル1上面に接合固定することで、フロアパネル1と中間クロスメンバ4との間には、車幅方向に一直線状に延びる閉断面部が形成されている。上述の中間クロスメンバ4は前席シートの後側下部と対応する位置に設けられるものである。
また、上述の中間クロスメンバ4と前部クロスメンバ3とは互いに平行に配置されている。
【0024】
上述の中間クロスメンバ4の後方には、上方に立上がった後に、その上端から後方に延びるキックアップ部5を形成し、このキックアップ部5の下方部には、車幅方向に延びるクロスメンバ(いわゆるNo.3クロスメンバ)を設け、当該クロスメンバと上記キックアップ部5との間には、車幅方向に延びる閉断面部が形成されている。
【0025】
上述のキックアップ部5の後方には後席シート搭載用のリヤシートパン6を設け、このリヤシートパン6のさらに後方には、荷室の床面を形成するリヤフロアパン7を連設している。このリヤフロアパン7の車幅方向中間部には荷室凹部が凹設形成されている。
【0026】
また、上述のリヤシートパン6の後端部とリヤフロアパン7の前端部とに跨がって車幅方向に延びる後部クロスメンバ8(いわゆるNo.4クロスメンバ)を設け、この後部クロスメンバ8と上述のリヤシートパン6およびリヤフロアパン7との間には、車幅方向に延びる閉断面部が形成されている。詳しくは、上述の後部クロスメンバ8は、後部クロスメンバアッパと後部クロスメンバロアとを備えており、これら後部クロスメンバアッパと後部クロスメンバロアとの間に、車幅方向に延びる閉断面部が形成されたものである。
【0027】
一方、図1に示すように、フロアパネル1の前部車幅方向中央には、車室内へ突出する部分的なトンネル部9を、一体または一体的に形成している。このトンネル部9はダッシュパネル下部後端と前部クロスメンバ3直前部との間にのみ形成された部分的なものである。
【0028】
また、同図に示すように、車幅方向中央部に位置するトンネル部9と、車幅方向側部に位置するサイドシル2との車幅方向中間部には、フロアフレーム10(詳しくは、フロアフレームアッパ)を接合固定している。このフロアフレーム10はハット断面形状を有しており、その下部フランジをフロアパネル1とダッシュパネル下部とに跨がって接合することで、当該フロアフレーム10とフロアパネル1およびダッシュパネル下部との間には、車両の前後方向に延びる閉断面部が形成されている。
さらに、図1に示すように、前部クロスメンバ3と中間クロスメンバ4との車両前後方向の中間部で、かつ車幅方向中央位置には、車両正面視で略M字形状の立設ブラケット11を立設固定している。
【0029】
加えて、図1に示すように、上述のキックアップ部5の車幅方向中央直前部には、上壁と、左右の側壁と、前壁とを備えたキックアップ部補強部材12を設け、当該キックアップ部補強部材12の下部フランジを、フロアパネル1とキックアップ部5とに接合固定することで、キックアップ部5を補強すべく構成している。
【0030】
図1図3に示すように、フロントウインドシールド(いわゆるフロントウインドガラス)の車幅方向左右両側部に位置すると共に、後述するルーフサイドレール21の前端部から前下がり状に延びる閉断面構造のフロントピラー部13を設けている。
このフロントピラー部13は、フロントピラーアウタとフロントピラーインナとを接合固定して、その長手方向に沿うフロントピラー閉断面部を有する車体強度部材である。
【0031】
左右一対のフロントピラー部13,13の前端部から下方に延びてドアヒンジ部材を支持する閉断面構造のヒンジピラー部16を設けている。このヒンジピラー部16は、ヒンジピラーインナアッパ17とヒンジピラーインナロア18とに上下2分割したヒンジピラーインナ19と、ヒンジピラーアウタ20とを接合固定して車両の上下方向に延びる車体強度部材であって、上述のヒンジピラーインナ19とヒンジピラーアウタ20との間には、車両の上下方向に延びるヒンジピラー閉断面部が形成されている。また、このヒンジピラー部16は、サイドシル2の前端と、フロントピラー部13の傾斜下端部とを上下方向に連結する車体強度部材である。
【0032】
図1図3に示すように、上述のフロントピラー部13から車両後方に連続すると共に、フロントピラー部13よりも水平に近い状態で車両前後方向に延びてその上部にルーフパネルが接合される左右一対のルーフサイドレール21,21を設けている。つまり、該ルーフサイドレール21は車体上部の車幅方向左右両側において車両前後方向に沿って延びる車体強度部材であって、このルーフサイドレール21はルーフサイドレールインナとルーフサイドレールアウタとを接合固定して、車両の前後方向に延びるルーフサイドレール閉断面部を形成した車体強度部材である。
【0033】
また、図1図3に示すように、上述のルーフサイドレール21から車両後方に連続すると共に、前高後底状に湾曲して後方に延びる閉断面構造のリヤピラー部24を設けている。
上述のリヤピラー部24は、リヤピラーインナとリヤピラーアウタとを接合固定して、リヤピラー部24の長手方向に沿うリヤピラー閉断面部を形成した車体強度部材である。
【0034】
図1図3に示すように、上述のルーフサイドレール21の前端部相互間を車幅方向に延びて当該ルーフサイドレール21にその左右両端部が固定されたフロントヘッダ25を設けている。
また、図1図3に示すように、上述のリヤピラー部24の上端部相互間を車幅方向に延びて当該リヤピラー部24にその左右両端部が固定されたリヤヘッダ26を設けている。
【0035】
そして、図1図3に示すように、上述のフロントヘッダ25とリヤヘッダ26との間には、車両前後方向に間隔を隔てて複数のルーフレインフォースメント27,28,29,30が設けられている。これらの各ルーフレインフォースメント27〜30は、左右一対のルーフサイドレール21,21間を車幅方向に延び当該ルーフサイドレール21にその左右両端部が固定されるものである。また、これらの各ルーフレインフォースメント27〜30は、車両前後方向に幅(前後幅)を有し、かつ、上記左右一対のルーフサイドレール21,21間を車幅方向に橋渡しするレインフォースメントである。
【0036】
なお、左右一対のルーフサイドレール21、フロントヘッダ25、リヤヘッダ26、およびルーフレインフォースメント27〜30の上部にはルーフパネル(図示せず)が設けられる。
【0037】
ところで、図1に示すように、上述のリヤフロアパン7の車幅方向両サイドには、車両前後方向に延びる閉断面構造のリヤサイドフレーム31が設けられており、該リヤサイドフレーム31の前端部は、サイドシル2の後端部とオーバラップする位置まで前方に延設されている。
【0038】
上述のリヤサイドフレーム31の車幅方向外側には、サイドパネルインナ32およびリヤホイールハウス33が設けられており、該リヤホイールハウス33上端部のダンパ支持部と、上述のリヤピラー部24とを略水平状で車両前後方向に連結するガセット部材34が設けられている。
【0039】
さらに、図1に示すように、上述の後部クロスメンバ8の車幅方向端部から車両上方に連続するようにブレース部材35を設けている。このブレース部材35はサイドパネルインナ32およびリヤホイールハウス33の内面に接合固定されており、当該ブレース部材35とサイドパネルインナ32およびリヤホイールハウス33との間には、車両上下方向に延びる閉断面部が形成されている。
【0040】
図1に示すように、複数のルーフレインフォースメント27〜30のうちの最も車両後方に位置するルーフレインフォースメント30と対応するルーフサイドレール21の後部と、その下方のサイドシル2後端部とを車両の略上下方向に連結する閉断面形状の構造体36を設けている。この構造体36はリヤ側のヒンジピラーを兼ねるものである。
【0041】
図1図2に示すように、閉断面構造の上壁部を形成するルーフサイドレール21と、閉断面構造の斜壁部を形成するフロントピラー部13と、閉断面構造の前壁部を形成するヒンジピラー部16と、閉断面構造の下壁部を形成するサイドシル2と、閉断面構造の後壁部を形成する構造体36とで、車両側面視にて環状に連続する環状構造体LSが形成されると共に、これらの各要素21,13,16,2,36にて、車両側部にセンタピラーレスのドア開口部37が形成されている。このドア開口部37は、例えば、観音開き構造のフロントドアおよびリヤドアにて開閉されるものであり、当該観音開き構造のフロントドアの前端はフロントドアヒンジ部材を介してヒンジピラー部16に開閉可能に取付けられ、リヤドアの後端はリヤドアヒンジ部材を介して上記構造体36に開閉可能に取付けられる。
【0042】
図2に示すように、上述の構造体36は上記ドア開口部37の後部において車両の略上下方向に延びる車体強度部材であって、該構造体36の下端部近傍には、車両のリヤサスペンション部材としてのトーションビーム式のリヤサスペンション38におけるトレーリングアーム39の前端枢支部40が設けられている。
【0043】
上記トレーリングアーム39の前端枢支部40は、上述のリヤサイドフレーム31の車幅方向外側部に、支持ブラケットを介して取付けられるものである。この実施例においてはリヤサスペンション部材としてトーションビーム式リヤサスペンションのトレーリングアーム39を例示したが、他の型式のリヤサスペンションにおけるサスペンション部材であってもよい。
【0044】
図1図2に示すように、上述の構造体36の上部後方には、クオータウインド配設用の開口部41が開口形成されている。この開口部41およびドア開口部37を除いて、上述の各要素、すなわち、構造体36、ルーフサイドレール21、リヤピラー部24、サイドパネルインナ32、サイドシル2を含む車体側面の略全体は、車体外板としてのボディサイドアウタパネル42にて覆われている。
【0045】
図3で示した複数のルーフレインフォースメント27,28,29,30のうちの車両前側から2番目のルーフレインフォースメント28は、その車両前後方向の断面形状が略W字形状に形成されている。
上述の略W字形状のルーフレインフォースメント28は、詳しくは、図6図7に示すように形成されている。
【0046】
すなわち、車両前後方向中間の上壁28aと、該上壁28aの前後両端から下方に延びる前後一対の縦壁28b,28cと、前側の縦壁28bの下端から前方に延びる下壁28dと、後側の縦壁28cの下端から後方に延びる下壁28eと、前側の下壁28dの前端から上方に延びる立設壁28fと、後側の下壁28eの後端から上方に延びる立設壁28gと、前側の立設壁28fの上端から前方に延びるフランジ部28hと、後側の立設壁28gの上端から後方に延びるフランジ部28iと、を一体形成して略W字形状に構成されている。
【0047】
また、ルーフレインフォースメント28は、上述の上壁28aと、前後の各フランジ部28h,28iとの高さを略同一高さに形成すると共に、前後の下壁28d,28eの高さも略同一高さに形成している(図6参照)。
【0048】
さらに、上述のルーフレインフォースメント28は、図5図7に示すように、前側のフランジ部28hの車幅方向両端部から車幅方向外方へ突出する舌片状の突出部28j,28jを一体形成すると共に、後側のフランジ部28iの車幅方向両端部からも車幅方向外方へ突出する舌片状の突出部28k,28kを一体形成しており、これらの各突出部28j,28kを、ルーフサイドレール21に対してスポット溶接手段等の接合手段にて接合固定することで、ルーフレインフォースメント28が左右一対のルーフサイドレール21,21間に車幅方向に架設されている。
【0049】
図3に示すように、上述のルーフレインフォースメント28には、補強構造体50が接合固定されている。
図3図4図7に示すように、上述の補強構造体50は、車幅方向右側前部から車幅方向左側後部に向けて車両前後方向に斜交い状に延び、その車両前後方向の前端部51aと後端部51bとが互いに車幅方向にオフセットする位置でルーフレインフォースメント28の上壁28a、フランジ部28h,28iに接合固定された第1傾斜補強部材51と、車幅方向左側前部から車幅方向右側後部に向けて車両前後方向に斜交い状に延び、その車両前後方向の前端部52aと後端部52bとが互いに車幅方向にオフセットする位置でルーフレインフォースメント28の上壁28a、フランジ部28h,28iに接合固定された第2傾斜補強部材52と、第1および第2の各傾斜補強部材51,52の前端部51a,52a相互間を車幅方向に連結する前壁部53と、第1および第2の各傾斜補強部材51,52の後端部51b,52b相互間を車幅方向に連結する後壁部54と、第1および第2の各傾斜補強部材51,52の車両左側の端部52a,51bを車両前後方向に連結する左側壁部55と、第1および第2の各傾斜補強部材51,52の車両右側の端部51a,52bを車両前後方向に連結する右側壁部56と、車幅方向中央において、各傾斜補強部材51,52のクロス部分を介して、前壁部53と後壁部54とを車両前後方向に連結する中央壁部57と、を一体形成したものである。
ここで、上述の第1傾斜補強部材51および第2傾斜補強部材52は何れも長尺部材にて形成されている。
【0050】
図4に示すように、この実施例においては、長尺部材から成る第1傾斜補強部材51と第2傾斜補強部材52との2つの補強部材を設け、同図に示すように、これらの各傾斜補強部材51,52を平面視で略X字形状に構成している。
【0051】
このように、上述のルーフレインフォースメント28に、車両前後方向に斜交い状に延びる補強部材(第1傾斜補強部材51と第2傾斜補強部材52との少なくとも何れか一方)を接合することで、車両走行時に生ずる当該ルーフレインフォースメント28のよじれ挙動を抑制すべく構成したものである。
【0052】
特に、車両側部に観音開き構造のフロントドアおよびリヤドアを配設するために、センタピラーレスのドア開口部37が形成され、該ドア開口部37の後部に車両の略上下方向に延びる構造体36が設けられ、かつ、当該構造体36の下端部近傍にリヤサスペンション部材としてのトーションビーム式リヤサスペンション38におけるトレーリングアーム39が枢支された場合には、トレーリングアーム39から構造体36を介してルーフサイドレール21にサスペンション荷重が入力され、この荷重がルーフレインフォースメント28に伝達される。特に、車両コーナリング時にはルーフレインフォースメント28の車幅方向左右に入力される荷重の大きさが異なることに起因して、該ルーフレインフォースメント28がよじれようとするが、傾斜補強部材51,52にて斯るよじれ挙動を抑制するものである。
【0053】
上述の各要素51〜57から成る補強構造体50は、金属平板をプレス装置にて打抜き加工することで形成したものであり、補強構造体50がルーフレインフォースメント28の上壁28a、および各フランジ部28h,28iと対応する部分の複数箇所は、スポット溶接手段等の接合手段にてルーフレインフォースメント28に接合固定したものである。
【0054】
また、上述の補強構造体50の車幅方向の長さは、ルーフレインフォースメント28の車幅方向の長さに対して、70〜75%の範囲に設定されており、当該補強構造体50は左右に片寄ることなく、ルーフレインフォースメント28の車幅方向中央部分に接合固定されている。なお、上記長さの数値に限定されるものではない。
【0055】
さらに、上記第1傾斜補強部材51は、車両中央を車両の前後方向に延びる仮想中心線CLに対して、平面視で時計回り方向に約78〜81度の傾斜角θ1を有し、上記第2傾斜補強部材52も同様に、車両中央を車両の前後方向に延びる仮想中心線CLに対して、平面視で反時計回り方向に約78〜81度の傾斜角θ2を有しているが、この数値に限定されるものではない。
【0056】
加えて、第1傾斜補強部材51と第2傾斜補強部材52とを平面視で略X字形状に組合せた略X字構造体に加えて、前壁部53、後壁部54、左側壁部55、右側壁部56を一体形成し、補強構造体50の運搬時に、当該補強構造体50を積みやすく、その取扱い性の向上を図るよう構成したものである。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0057】
このように、上記実施例の上部車体構造は、車体上部の車幅方向左右両側において車両前後方向に沿って延びる一対のルーフサイドレール21が設けられ、車両前後方向に幅を有し、かつ、上記一対のルーフサイドレール21,21間を車幅方向に橋渡しするルーフレインフォースメント28が設けられた上部車体構造であって、上記ルーフレインフォースメント28には、車両前後方向に斜交い状に延び、その車両前後方向の前端部と後端部とが互いに車幅方向にオフセットする位置で当該ルーフレインフォースメント28に接合された補強部材(第1傾斜補強部材51と第2傾斜補強部材52とのうちの少なくとも何れか一方の補強部材)を備えたものである(図3図4図7参照)。
【0058】
この構成によれば、上述のルーフレインフォースメント28に、車両前後方向に斜交い状に延びる補強部材(第1傾斜補強部材51、第2傾斜補強部材52の少なくとも何れか一方)を接合したので、軽量でありながら、車両走行時に生ずる当該ルーフレインフォースメント28のよじれ挙動を抑制することができる。
【0059】
また、この発明の一実施形態においては、上記補強部材(第1傾斜補強部材51、第2傾斜補強部材52)は長尺部材で形成されたものである(図4図7参照)。
この構成によれば、補強部材(第1傾斜補強部材51、第2傾斜補強部材52)を長尺部材にて形成することにより、ルーフレインフォースメント28の上部全体を一枚の長方形状板で覆う構造と比較して、その軽量化を図ることができる。
【0060】
さらに、この発明の一実施形態においては、上記長尺部材から成る補強部材(第1傾斜補強部材51、第2傾斜補強部材52)が複数設けられ、複数の補強部材(第1傾斜補強部材51、第2傾斜補強部材52)により平面視で略X字形状に構成されたものである(図4図7参照)。
この構成によれば、長尺部材から成る補強部材(第1傾斜補強部材51、第2傾斜補強部材52)を平面視で略X字形状に組合せたので、ルーフレインフォースメント28のよじれ防止効果を高めることができる。
【0061】
さらにまた、この発明の一実施形態においては、上記ルーフレインフォースメント28が設けられた上記ルーフサイドレール21により、車両側部にセンタピラーレスのドア開口部37が形成されたものである(図1図2参照)。
【0062】
この構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、車両側部にセンタピラーレスのドア開口部37が形成されると、センタピラーが存在しないことに起因して、ルーフレインフォースメント28に対してよじれ挙動が生じやすくなるが、上記補強部材(第1傾斜補強部材51または/および第2傾斜補強部材52)にて当該ルーフレインフォースメント28のよじれ挙動を抑制することができる。
【0063】
加えて、この発明の一実施形態においては、上記ドア開口部37の後部には、車両の略上下方向に延びる構造体36が設けられ、上記構造体36の下端部近傍に、車両のリヤサスペンション部材(トーションビーム式リヤサスペンション38のトレーリングアーム39参照)が設けられたものである(図2参照)。
【0064】
この構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、車両のリヤサスペンション部材(トレーリングアーム39参照)から構造体36の下端部近傍を介して、略上下方向に延びる当該構造体36に荷重が入力され、この荷重がルーフサイドレール21を介してルーフレインフォースメント28に伝達されるが、上述の補強部材(第1傾斜補強部材51または/および第2傾斜補強部材52)にて当該ルーフレインフォースメント28のよじれ挙動を抑制することができる。
【0065】
図8の(a)〜(d)は補強部材の他の実施例を示す平面図であり、図8の(a)〜(d)の何れにおいても図面右側が車両前方であり、図面左側が車両後方である。
図8の(a)に示す構造は、第1傾斜補強部材51のみを用いて補強構造体50Aを構成したものであり、この構成により、軽量化を図りつつ、ルーフレインフォースメント28のよじれ挙動を抑制することができる。
【0066】
図8の(b)に示す構造は、第1傾斜補強部材51と第2傾斜補強部材52とを用いて、車両平面視で略X字形状の補強構造体50Bを構成したものであり、この構成により、軽量化を図りつつ、ルーフレインフォースメント28のよじれ挙動をさらに抑制することができる。
【0067】
図8の(c)に示す構造は、第1傾斜補強部材51と、第2傾斜補強部材52と、左側壁部55と、右側壁部56とを用いて、平面視略X字形状の構造部を有する補強構造体50Cを構成したものであり、この構成により、軽量化を図りつつ、ルーフレインフォースメント28のよじれ挙動をより一層抑制することができると共に、その取扱い性の向上を図ることができる。
【0068】
図8の(d)に示す構造は、第1傾斜補強部材51と、第2傾斜補強部材52と、前壁部53と、後壁部54とを用いて、平面視略X字形状の構造部を有する補強構造体50Dを構成したものであり、この構成により、軽量化を図りつつ、ルーフレインフォースメント28のよじれ挙動をさらに抑制することができると共に、その取扱い性の向上を図ることができる。
なお、図8の(a)〜(d)において、前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。
【0069】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の補強部材は、実施例の第1傾斜補強部材51と第2傾斜補強部材52とのうちの少なくとも何れか一方の補強部材に対応し、
以下同様に、
車両のリヤサスペンション部材は、トーションビーム式リヤサスペンション38のトレーリングアーム39に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0070】
例えば、この実施例においては、補強部材を車両前方から2番目のルーフレインフォースメント28に接合した場合について説明したが、この構造を他のルーフレインフォースメントにも採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本発明は、車体上部の車幅方向左右両側に車両前後方向に沿って延びる一対のルーフサイドレールが設けられ、車両前後方向に幅を有し、かつ上記一対のルーフサイドレール間を車幅方向に橋渡しするルーフレインフォースメントが設けられた上部車体構造について有用である。
【符号の説明】
【0072】
21…ルーフサイドレール
28…ルーフレインフォースメント
36…構造体
37…ドア開口部
39…トレーリングアーム(リヤサスペンション部材)
51…第1傾斜補強部材(補強部材)
51a,52a…前端部
51b,52b…後端部
52…第2傾斜補強部材(補強部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8