【実施例】
【0014】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は上部車体構造を示し、
図1は当該上部車体構造を含む車両全体の車体構造を示す斜視図、
図2は
図1の車両右側の側面図、
図3は上部車体構造を示す平面図、
図4は
図2の要部拡大側面図、
図5は湾曲部と当該湾曲部に接合された補強部材を示す斜視図、
図6は
図5のA−A線矢視断面図、
図7は補強部材を示す斜視図である。
【0015】
なお、以下の実施例においては、車両走行用のエンジン等の内燃機関、排気管を含む排気系路、車両前後方向に長く延びるセンタトンネル部を有さない電気自動車の車体構造について例示するが、本発明は電気自動車の上部車体構造のみに限定されるものではない。
【0016】
まず、
図1、
図2、
図3を参照して車両全体の車体構造について説明する。
図1に示すように、車両前部のモータルームと、その後方の車室とを車両前後方向に仕切るダッシュパネル(詳しくは、ダッシュロアパネル)を設け、該ダッシュパネルの下部後端部には、略平坦形状のフロントフロアパネル1(以下、単にフロアパネルと略記する)を連設している。
【0017】
このフロアパネル1は車室の床面を形成するもので、該フロアパネル1の車幅方向左右両サイドには、車両の前後方向に延びる閉断面構造のサイドシル2を設けている。当該サイドシル2はサイドシルインナ2aとサイドシルアウタ2bとを接合固定して、車両前後方向に延びるサイドシル閉断面部を有する車体強度部材である。
【0018】
左右一対のサイドシル2,2の前部相互間を車幅方向に一直線状に連結する前部クロスメンバ3(いわゆるNo.2クロスメンバ)を設けている。この前部クロスメンバ3は断面ハット形状の部材にて形成され、その下部フランジをフロアパネル1上面に接合固定することで、フロアパネル1と前部クロスメンバ3との間には、車幅方向に一直線状に延びる閉断面部が形成されている。上述の前部クロスメンバ3は前席シートの前側下部と対応する位置に設けられるものである。
【0019】
上記前部クロスメンバ3の後方において、上述の左右一対のサイドシル2の車両前後方向の中間部相互間を、車幅方向に一直線状に連結する中間クロスメンバ4(いわゆるNo.2.5クロスメンバ)を設けている。この中間クロスメンバ4も断面ハット形状の部材にて形成され、その下部フランジをフロアパネル1上面に接合固定することで、フロアパネル1と中間クロスメンバ4との間には、車幅方向に一直線状に延びる閉断面部が形成されている。上述の中間クロスメンバ4は前席シートの後側下部と対応する位置に設けられるものである。
また、上述の中間クロスメンバ4と前部クロスメンバ3とは互いに平行に配置されている。
【0020】
上述の中間クロスメンバ4の後方には、上方に立上がった後に、その上端から後方に延びるキックアップ部5を形成し、このキックアップ部5の下方部には、車幅方向に延びるクロスメンバ(いわゆるNo.3クロスメンバ)を設け、当該クロスメンバと上記キックアップ部5との間には、車幅方向に延びる閉断面部が形成されている。
【0021】
上述のキックアップ部5の後方には後席シート搭載用のリヤシートパン6を設け、このリヤシートパン6のさらに後方には、荷室の床面を形成するリヤフロアパン7を連設している。このリヤフロアパン7の車幅方向中間部には荷室凹部が凹設形成されている。
【0022】
また、上述のリヤシートパン6の後端部とリヤフロアパン7の前端部とに跨がって車幅方向に延びる後部クロスメンバ8(いわゆるNo.4クロスメンバ)を設け、この後部クロスメンバ8と上述のリヤシートパン6およびリヤフロアパン7との間には、車幅方向に延びる閉断面部が形成されている。詳しくは、上述の後部クロスメンバ8は、後部クロスメンバアッパと後部クロスメンバロアとを備えており、これら後部クロスメンバアッパと後部クロスメンバロアとの間に、車幅方向に延びる閉断面部が形成されたものである。
【0023】
一方、
図1に示すように、フロアパネル1の前部車幅方向中央には、車室内へ突出する部分的なトンネル部9を、一体または一体的に形成している。このトンネル部9はダッシュパネル下部後端と前部クロスメンバ3直前部との間にのみ形成された部分的なものである。
【0024】
また、同図に示すように、車幅方向中央部に位置するトンネル部9と、車幅方向側部に位置するサイドシル2との車幅方向中間部には、フロアフレーム10(詳しくは、フロアフレームアッパ)を接合固定している。このフロアフレーム10はハット断面形状を有しており、その下部フランジをフロアパネル1とダッシュパネル下部とに跨がって接合することで、当該フロアフレーム10とフロアパネル1およびダッシュパネル下部との間には、車両の前後方向に延びる閉断面部が形成されている。
【0025】
さらに、
図1に示すように、前部クロスメンバ3と中間クロスメンバ4との車両前後方向の中間部で、かつ車幅方向中央位置には、車両正面視で略M字形状の立設ブラケット11を立設固定している。この立設ブラケット11は、図示しないセンタコンソールを支えるためのコンソール支持ブラケットを支持するものである。
【0026】
加えて、
図1に示すように、上述のキックアップ部5の車幅方向中央直前部には、上壁と、左右の側壁と、前壁とを備えたキックアップ部補強部材12を設け、当該キックアップ部補強部材12の下部フランジを、フロアパネル1とキックアップ部5とに接合固定することで、キックアップ部5を補強すべく構成している。
【0027】
図1、
図3に示すように、フロントウインドシールド(いわゆるフロントウインドガラス)の車幅方向左右両側部に位置すると共に、後述するルーフサイドレール21の前端部から前下がり状に延びる閉断面構造のフロントピラー部13を設けている。
このフロントピラー部13は、フロントピラーアウタとフロントピラーインナとを接合固定して、その長手方向に沿うフロントピラー閉断面部を有する車体強度部材である。
【0028】
図1に示すように、左右一対のフロントピラー部13,13の前端部から下方に延びてドアヒンジ部材を支持する閉断面構造のヒンジピラー部16を設けている。このヒンジピラー部16は、ヒンジピラーインナアッパ17とヒンジピラーインナロア18とに上下2分割したヒンジピラーインナ19と、ヒンジピラーアウタ20とを接合固定して車両の上下方向に延びる車体強度部材であって、上述のヒンジピラーインナ19とヒンジピラーアウタ20との間には、車両の上下方向に延びるヒンジピラー閉断面部が形成されている。また、このヒンジピラー部16は、サイドシル2の前端部と、フロントピラー部13の傾斜下端部とを上下方向に連結する車体強度部材である。
【0029】
図1、
図3に示すように、上述のフロントピラー部13から車両後方に連続すると共に、フロントピラー部13よりも水平に近い状態で車両前後方向に延びてその上部にルーフパネルが接合される左右一対のルーフサイドレール21,21を設けている。つまり、該ルーフサイドレール21は車体上部の車幅方向左右両側において車両前後方向に沿って延びる車体強度部材であって、
図6に示すように、このルーフサイドレール21はルーフサイドレールインナ22とルーフサイドレールアウタ23とを接合固定して、車両の前後方向に延びるルーフサイドレール閉断面部S1を形成した車体強度部材である。
【0030】
また、
図1、
図3に示すように、上述のルーフサイドレール21から車両後方に連続すると共に、前高後底状に湾曲して後方に延びる閉断面構造のリヤピラー部24を設けている。
上述のリヤピラー部24は、リヤピラーインナとリヤピラーアウタとを接合固定して、リヤピラー部24の長手方向に沿うリヤピラー閉断面部を形成した車体強度部材である。
【0031】
図1、
図3に示すように、上述のルーフサイドレール21の前端部相互間を車幅方向に延びて当該ルーフサイドレール21にその左右両端部が固定されたフロントヘッダ25を設けている。
また、
図1、
図3に示すように、上述のリヤピラー部24の上端部相互間を車幅方向に延びて当該リヤピラー部24にその左右両端部が固定されたリヤヘッダ26を設けている。
【0032】
そして、
図1、
図3に示すように、上述のフロントヘッダ25とリヤヘッダ26との間には、車両前後方向に間隔を隔てて複数のルーフレインフォースメント27,28,29,30が設けられている。これらの各ルーフレインフォースメント27〜30は、左右一対のルーフサイドレール21,21間を車幅方向に延び当該ルーフサイドレール21にその左右両端部が固定されるものである。また、これらの各ルーフレインフォースメント27〜30は、車両前後方向に幅(前後幅)を有し、かつ、上記左右一対のルーフサイドレール21,21間を車幅方向に橋渡しするレインフォースメントである。
なお、左右一対のルーフサイドレール21、フロントヘッダ25、リヤヘッダ26、およびルーフレインフォースメント27〜30の上部にはルーフパネル(図示せず)が設けられる。
【0033】
ところで、
図1に示すように、上述のリヤフロアパン7の車幅方向両サイドには、車両前後方向に延びる閉断面構造のリヤサイドフレーム31が設けられており、該リヤサイドフレーム31の前端部は、サイドシル2の後端部とオーバラップする位置まで前方に延設されている。
【0034】
上述のリヤフロアパン7の下部において、左右一対のリヤサイドフレーム31,31を車幅方向に連結する後端部クロスメンバ(いわゆるNo.4.5クロスメンバ)を設け、当該後端部クロスメンバ(図示せず)と上述のリヤフロアパン7との間には、車幅方向に延びる閉断面部が形成されている。
【0035】
上述のリヤサイドフレーム31の車幅方向外側には、サイドパネルインナ32およびリヤホイールハウス33が設けられており、該リヤホイールハウス33上端部のダンパ支持部と、上述のリヤピラー部24とを略水平状で車両前後方向に連結するガセット部材34が設けられている。
【0036】
さらに、
図1に示すように、上述の後部クロスメンバ8の車幅方向端部から車両上方に連続するようにブレース部材35を設けている。このブレース部材35はサイドパネルインナ32およびリヤホイールハウス33の内面に接合固定されており、当該ブレース部材35とサイドパネルインナ32およびリヤホイールハウス33との間には、車両上下方向に延びる閉断面部が形成されている。
【0037】
図1に示すように、複数のルーフレインフォースメント27〜30のうちの最も車両後方に位置するルーフレインフォースメント30と対応するルーフサイドレール21の後部と、その下方のサイドシル2後端部とを車両の略上下方向に連結する閉断面形状の構造体36を設けている。この構造体36はリヤ側のヒンジピラーを兼ねるものである。
【0038】
図1、
図2に示すように、車両側面視にて環状に連続する環状構造体LSを形成している。
この環状構造体LSは、閉断面構造の上壁部を形成するルーフサイドレール21と、閉断面構造の斜壁部を形成するフロントピラー部13と、閉断面構造の前壁部を形成するヒンジピラー部16と、閉断面構造の下壁部を形成するサイドシル2と、閉断面構造の後壁部を形成する構造体36とで、車両側面視にて環状に連続すると共に、これらの各要素21,13,16,2,36にて、車両側部にセンタピラーレスのドア開口部37が形成されている。このドア開口部37は、例えば、観音開き構造のフロントドアおよびリヤドアにて開閉されるものであり、当該観音開き構造のフロントドアの前端はフロントドアヒンジ部材を介してヒンジピラー部16に開閉可能に取付けられ、リヤドアの後端はリヤドアヒンジ部材を介して上記構造体36に開閉可能に取付けられる。
【0039】
図2に示すように、上述の構造体36は上記ドア開口部37の後部において車両の略上下方向に延びる車体強度部材であって、該構造体36の下端部近傍には、車両のリヤサスペンション部材としてのトーションビーム式のリヤサスペンション38におけるトレーリングアーム39の前端枢支部40が設けられている。
【0040】
上記トレーリングアーム39の前端枢支部40は、上述のリヤサイドフレーム31の車幅方向外側部に、支持ブラケットを介して取付けられるものである。この実施例においては、リヤサスペンション部材としてトーションビーム式リヤサスペンションのトレーリングアーム39を例示したが、他の型式のリヤサスペンションにおけるサスペンション部材であってもよい。
【0041】
図1、
図2に示すように、上述の構造体36の上部後方には、クオータウインド配設用の開口部41が開口形成されている。この開口部41およびドア開口部37を除いて、上述の各要素、すなわち、構造体36、ルーフサイドレール21、リヤピラー部24、サイドパネルインナ32、サイドシル2、フロントピラー部13、ヒンジピラー部16を含む車体側面の略全体は、車体外板としてのボディサイドアウタパネル42にて覆われている。
なお、
図1、
図2において、43はホイールアーチ部である。
【0042】
図1に示すように、フロントヘッダ25の前縁よりも前側がフロントピラー部13であり、フロントヘッダ25の前縁よりも後側がルーフサイドレール21である。
図2、
図4、
図5に示すように、フロントピラー部13の傾斜上端部、換言すれば、フロントピラー部13の後端部からルーフサイドレール21の前端部にかけて、これら両者13,21の接続部としての湾曲部49が形成されている。当該湾曲部49は他の部分に対して曲率が大きく(曲率半径が小さく)形成されている。
【0043】
図6は
図5のA−A線矢視断面図、すなわち、上記湾曲部49におけるルーフサイドレール21の断面図であって、ルーフサイドレールインナ22は、上下方向に延びる内壁部22aと、この内壁部22aの上端から車幅方向内方に延びる上側の接合フランジ部22bと、上述の内壁部22aの下端から車幅方向外方に延びる下壁部22cと、この下壁部22cの車幅方向外端から下方かつ外方に傾斜方向に延びる下側の接合フランジ部22dと、を一体形成したものである。
【0044】
また、同図に示すように、ルーフサイドレールアウタ23は、上下方向に延びる外壁部23aと、この外壁部23aの上端から車幅方向内方に延びる上側の接合フランジ部23bと、上述の外壁部23aの下端から下方かつ車幅方向内方に延びる傾斜壁23cと、この傾斜壁23cの傾斜下端から下方かつ外方に傾斜方向に延びる下側の接合フランジ部23dと、を一体形成したものである。
【0045】
上述のルーフサイドレールアウタ23において、外壁部23aと上側の接合フランジ部23bとの間には上部稜線X1が形成されると共に、上記外壁部23aと傾斜壁23cとの間には下部稜線X2が形成されている。
【0046】
図6に示すように、ルーフサイドレールインナ22の上側の接合フランジ部22bとルーフサイドレールアウタ23の上側の接合フランジ部23bとは、スポット溶接等の接合手段にて接合固定されており、同様に、ルーフサイドレールインナ22の下側の接合フランジ部22dとルーフサイドレールアウタ23の下側の接合フランジ部23dとは、スポット溶接等の接合手段にて接合固定されていて、これら両者22,23の接合により、ルーフサイドレールインナ22とルーフサイドレールアウタ23との間には、その長手方向に沿うルーフサイドレール閉断面部S1が形成されたものである。
図6においては、ルーフサイドレール21側の断面構造についてのみ示したが、フロントピラー部13側もルーフサイドレール21側と類似する断面構造に形成されている。
【0047】
図1、
図4、
図5に示すように、上述の上部稜線X1および下部稜線X2は、湾曲部49を含んでフロントピラー部13からルーフサイドレール21にかけて連続して形成されている。すなわち、上述の稜線X1,X2は、少なくとも湾曲部49に対して上下方向に離関して2本形成されている。
【0048】
図1、
図2、
図4、
図5に示すように、フロントピラー部13からルーフサイドレール21にかけての湾曲部49には補強部材50を接合固定するが、該補強部材50は上部稜線X1と下部稜線X2とのうちの最も下方に位置するもの、つまり、下部稜線X2のみを覆うよう接合固定されている。
【0049】
詳しくは、上述の補強部材50は、
図6に示すように、ルーフサイドレールアウタ23の外壁部23a外面に沿設される上壁部50aと、ルーフサイドレールアウタ23の傾斜壁23c外面に沿設される下壁部50bと、を一体形成したもので、補強部材50の上壁部50aをルーフサイドレールアウタ23の外壁部23aに接合固定し、補強部材50の下壁部50bをルーフサイドレールアウタ23の傾斜壁23cに接合固定することにより、当該補強部材50にて上下の稜線X1,X2のうち下部稜線X2のみを覆うよう構成したものである。
【0050】
上記補強部材50は湾曲部49より前方のフロントピラー部13から湾曲部49より後方のルーフサイドレール21にかけて設けられるもので、フロントピラー部13側においてもルーフサイドレール21側と同様に、補強部材50の上壁部50a、下壁部50bがフロントピラーアウタの対応部に接合固定されるものである。
また、補強部材50それ自体には、
図4〜
図7に示すように、上述の上壁部50aと下壁部50bとの間に稜線X3が形成されている。
【0051】
このように、上記湾曲部49(具体的には、フロントピラー部13からルーフサイドレール21にかけての湾曲部49)の2本の稜線X1,X2のうち最も下方に位置する下部稜線X2のみを上述の補強部材50で覆うことにより、必要最小限の補強にて軽量化を図りつつ、車両前突時(スモールオーバラップ衝突を含む)に、上記フロントピラー部13からルーフサイドレール21にかけての湾曲部49が、車両側面視で逆V字状に折れるのを、上記補強部材50にて抑制すべく構成したものである。
【0052】
特に、スモールオーバラップ衝突時には、ヒンジピラー部16が後退し、この荷重がフロントピラー部13に伝達されることで、フロントピラー部13からルーフサイドレール21にかけての湾曲部49が、車両側面視で逆V字状に折れ変形しようとするが、斯る折れ曲がりを、上述の補強部材50にて抑制するものである。
【0053】
図4〜
図7に示すように、上述の補強部材50には、その上壁部50aと下壁部50bとの間に上述の下部稜線X2と対応する稜線X3が形成されているので、車両前突時における上記湾曲部49の逆V字状の折れを、より一層効率的に抑制することができるものである。
【0054】
図4、
図5に示すように、上述の補強部材50は、上記湾曲部49の車体外側(詳しくは、ルーフサイドレールアウタ23の外面と、フロントピラーアウタの外面)において、フロントピラー部13およびルーフサイドレール21の長手方向に沿って複数列のスポット溶接箇所SW1〜SW9,SW11〜SW18にて接合固定されている。
【0055】
この実施例では、フロントピラー部13、ルーフサイドレール21の長手方向に沿う上側列(上壁部50a側)のスポット溶接箇所SW1〜SW9と、フロントピラー部13、ルーフサイドレール21の長手方向に沿う下側列(下壁部50b側)のスポット溶接箇所SW11〜SW18にて、補強部材50が湾曲部49の車体外側に接合固定されている。
【0056】
図4、
図5に示すように、上側列のスポット溶接箇所SW1〜SW9のうち溶接箇所SW1〜SW7と、下側列のスポット溶接箇所SW11〜SW18のうち溶接箇所SW11〜SW16とは、当該スポット溶接箇所が長手方向に対して千鳥状に配置されている。上記スポット溶接箇所SW1〜SW7,SW11〜SW16の千鳥状配置により、スポット溶接箇所の上側列と下側列との列間距離を挟めることができる。
【0057】
すなわち、上側列の車両前後方向に隣設する前後一対のスポット溶接箇所SW1,SW2間に、下側列の1つのスポット溶接箇所SW11が位置し、同様に、上側列の車両前後方向に隣設する前後一対のスポット溶接箇所SW2,SW3間に、下側列の1つのスポット溶接箇所SW12が位置し、以下同様に斯る状態を長手方向に繰返す千鳥状の配置と成したものである。
【0058】
このように、上述の補強部材50を湾曲部49(この実施例では、湾曲部49の車両前方から湾曲部49の車両後方までの湾曲部49よりも前後方向に長い範囲)に対し、複数列のスポット溶接箇所SW1〜SW9,SW11〜SW18にて接合することで、高い補強効果を確保すると共に、上述のスポット溶接箇所SW1〜SW9,SW11〜SW18のうちのスポット溶接箇所SW1〜SW7,SW11〜SW16を上記千鳥状の配置とすることで、補強部材50の幅を小さいものとし、フロントピラー部13を車両デザインの関係上、および、前方視界拡大の関係上、比較的細く形成しても、確実の補強部材50の効果を発揮し得るよう構成したものである。
【0059】
さらに、
図4、
図5、
図7に示すように、上述の補強部材50の長手方向前側端部において、上述のスポット溶接箇所SW1〜SW9,SW11〜SW18が存在しない部位である下壁部50b前端が切欠かれて、切欠き部51が形成されている。これにより、補強部材50による補強効果を確保しつつ、当該切欠き部51にてさらなる軽量化を図るよう構成したものである。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0060】
このように、上記実施例の上部車体構造は、フロントウインドシールドの車幅方向左右両側部に位置すると共に前下がり状に延びるフロントピラー部13と、上記フロントピラー部13から車両後方に連続すると共にフロントピラー部13よりも水平に近い状態で車両前後方向に延びてルーフパネルが接合されるルーフサイドレール21と、上記フロントピラー部13から上記ルーフサイドレール21にかけての湾曲部49に接合された補強部材50と、を有する上部車体構造であって、上記湾曲部49には上下に離間して少なくとも2本の稜線(上部稜線X1、下部稜線X2参照)が形成されており、上記補強部材50は上記稜線X1,X2のうち最も下方に位置するもの(下部稜線X2)のみを覆うよう接合されたものである(
図1、
図5、
図6参照)。
【0061】
この構成によれば、少なくとも2本の稜線X1,X2のうち最も下方に位置する稜線(下部稜線X2)のみを上記補強部材50で覆ったので、必要最小限の補強にて軽量化を図りつつ、車両前突時(スモールオーバラップ衝突を含む)において、上記フロントピラー部13からルーフサイドレール21にかけての湾曲部49が、車両側面視で逆V字状に折れるのを、上述の補強部材50にて抑制することができる。
【0062】
また、この発明の一実施形態においては、上記補強部材50は、上記湾曲部49の車体外側において長手方向に沿って複数列のスポット溶接箇所SW1〜SW9,SW11〜SW18にて接合され、上記複数列のスポット溶接箇所SW1〜SW9,SW11〜SW18は、当該スポット溶接箇所(SW1〜SW9,SW11〜SW18のうちのSW1〜SW7,SW11〜SW16)が長手方向に対して千鳥状に配置されたものである(
図4、
図5参照)。
【0063】
上述の千鳥状の配置とは、一方の列の前後方向に隣設する前後一対のスポット溶接箇所間に、他方の列の1つのスポット溶接箇所が位置し、このような状態を長手方向に繰返す配置状態を意味する。
この構成によれば、補強部材50は湾曲部49に対し、複数列のスポット溶接箇所SW1〜SW9,SW11〜SW18にて接合されているので、高い補強効果が確保でき、また、スポット溶接箇所(SW1〜SW9,SW11〜SW18のうちのSW1〜SW7,SW11〜SW16)を千鳥状の配置とすることにより、補強部材50の幅を小さいものとすることができる。このため、フロントピラー部13が比較的細くても、確実に補強部材50の効果を発揮させることができる。
【0064】
さらに、この発明の一実施形態においては、上記補強部材50の長手方向端部において上記スポット溶接箇所SW1〜SW9,SW11〜SW18が存在しない部位が切欠かれて、切欠き部51が形成されたものである(
図4、
図5、
図7参照)。
この構成によれば、補強部材50による補強効果を確保しつつ、上記切欠き部51にてさらなる軽量化を図ることができる。
【0065】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の少なくとも2本の稜線は、実施例の上部稜線X1、下部稜線X2に対応し、
以下同様に、
稜線のうち最も下方に位置するものは、下部稜線X2に対応し、
千鳥状に配置されたスポット溶接箇所は、スポット溶接箇所SW1〜SW9,SW11〜SW18のうちのスポット溶接箇所SW1〜SW7,SW11〜SW16に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0066】
上記実施例においては、湾曲部49に2本の稜線X1,X2のみが形成された構造を例示したが、例えば、上下に離間して3本の稜線が形成された場合には、上記補強部材50にて上から3番目の稜線(最も下方に位置する稜線)のみを覆うよう構成すればよい。