【実施例1】
【0021】
以下、本発明の実施例1について
図1〜
図12に基づいて説明する。
本実施例1に係る車両Vは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関(図示略)と車両駆動用の電動機(モータジェネレータ)(図示略)とを駆動源としたハイブリッド自動車である。
【0022】
図1,
図2に示すように、車両Vは、前後に延びる左右1対のサイドシル1と、フロアパネル2と、前後に延びる左右1対のフロアフレーム3と、バッテリユニット10等を備えている。以下、図において、矢印F方向を車体前後方向前方とし、矢印L方向を車幅方向左方とし、矢印U方向を車体上下方向上方として説明する。また、この車両Vは、略左右対称構造である。
【0023】
まず、車両Vの全体構成について説明する。
サイドシル1は、車幅方向外側壁部を構成する断面略ハット状のアウタパネルと、車幅方向内側壁部を構成する断面略ハット状のインナパネルとを備え、両パネルが協働して前後に延びる略矩形状の閉断面を形成している。このサイドシル1の前端側部分には、上下に延びるヒンジピラーが連結され、後端側部分には、上下に延びるリヤピラーが連結されている。尚、この車両Vは、フロントドアが前端部分に形成されたヒンジピラーのヒンジ中心に開閉され、リヤドアが後端部分に形成されたリヤピラーのヒンジ中心に開閉される、所謂観音開きタイプのドア構造であり、センターピラーが省略されている。
【0024】
フロアパネル2は、1対のサイドシル1の間に掛け渡されるようにフルフラット状に形成され、車室内に膨出するトンネル部は形成されていない。
図1,
図2,
図8に示すように、このフロアパネル2は、前席乗員用シート(図示略)が搭載されるフロントパネル2aと、このフロントパネル2aの後端から後方上り傾斜状に上方に起立したキックアップパネル2cを介して後方に連なり後席乗員用シート(図示略)が搭載されるリヤパネル2bとを備えている。尚、前席右側シートがドライバシートとされている。
【0025】
1対のフロアフレーム3は、断面略ハット状に夫々形成され、これら1対のフロアフレーム3の間隔が後側程離隔している。それ故、サイドシル1と隣り合うフロアフレーム3との間隔は、後側程接近している。フロアフレーム3は、フロントパネル2aの下面と協働して前後に延びる断面略矩形状の閉断面を形成している。リヤサスペンション4は、キックアップパネル2cの後方で且つリヤパネル2bの下方に配設されている。このサスペンション4は、後端部に車輪(図示略)を回転可能に支持する左右1対のトレーリングアーム4aと、車幅方向両端部が1対のトレーリングアーム4aに夫々連結された左右に延びるトーションビーム4bを備えたトーションビーム式サスペンションである。
【0026】
次に、バッテリユニット10について説明する。
図1〜
図3に示すように、バッテリユニット10は、フロアパネル2の下方空間にレイアウトされている。このバッテリユニット10は、複数(例えば、16個)のバッテリモジュール11と、これら複数のバッテリモジュール11を収容するバッテリケース12によって構成されている。車両駆動用電動機に電力を供給するバッテリモジュール11は、規格電圧を有する直方体形状の複数のバッテリセル11a(
図8参照)を前後に積層状に整列させた直方体形状のバッテリ集合体に形成されている。バッテリセル11aは、例えば、2次電池の一種であるリチウムイオンバッテリである。
複数のバッテリモジュール11は、縦、横及び高さ寸法を含めて同一仕様に設定され、長手方向が前後方向と平行になる姿勢でバッテリケース12に夫々収容されている。
このバッテリモジュール11の重量は、例えば、約14kgであり、バッテリユニット10の総重量は、例えば、約300kgである。
【0027】
バッテリケース12は、バッテリモジュール11を直列接続した高電圧バッテリを収容するため、耐振性及び耐水性を確保するように構成されている。
図3に示すように、バッテリケース12は、左右1対のサイドフレーム21と、左右に延びて1対のサイドフレーム21の前端部を連結するフロントフレーム22と、左右に延びて1対のサイドフレーム21の後端部を連結するリヤフレーム23と、各フレーム21〜23に支持されると共にバッテリケース12の底部を形成する桶状のバッテリトレイ24と、このバッテリトレイ24と協働して複数のバッテリモジュール11を収容可能な密閉空間を形成する合成樹脂製のカバー部材25等を備えている。サイドフレーム21の上下方向の曲げ剛性は、フロアフレーム3の上下方向の曲げ剛性よりも低くなるように設定されている。
【0028】
各フレーム21〜23は、略L字状のロアパネルと略L字状のアッパパネルが協働して略矩形状の閉断面を夫々構成している(
図7参照)。各フレーム21〜23が形成した閉断面は、環状に連なり、略ロ字状の閉断面構造体を構成している。
各フレーム21〜23は、取付部26〜29により車体に対して取り付けられている。
左右4対の取付部26及び左右1対の取付部27は、1対のサイドフレーム21のロアパネルから車幅方向外側に夫々延びている。これらの取付部26,27は、フロアフレーム3の下壁部にボルトbを介して夫々締結固定されている。左右1対の取付部28は、フロントフレーム22のロアパネルから前側に夫々延びている。これら取付部28は、フロントパネル2aの前側部分下面にボルトbを介して締結固定されている。取付部29は、リヤフレーム23のロアパネル中央部から上方に延び、上端部が、リヤパネル2bと協働して左右に延びる閉断面を形成するクロスメンバ(図示略)にボルトbを介して締結固定されている。
【0029】
図3〜
図5に示すように、バッテリトレイ24は、各フレーム21〜23の上壁部に載置された状態で強固に溶接固定されている。バッテリトレイ24とバッテリモジュール11との間には、冷却用配管(図示略)を間に介して板状のゴム部材(図示略)が配設されている。これにより、バッテリトレイ24とバッテリモジュール11との間隔が、相対変位可能に構成されている。
【0030】
バッテリトレイ24は、断面略ハット状の第1〜第3クロスフレーム31〜33によってバッテリモジュール11を収容する第1〜第3収容領域(バッテリ収容領域)S1〜S3を区分している。第3,第1クロスフレーム33,31が、フロントパネル2aの前部(前席乗員用シート)下方に対応した第1収容領域S1の前後範囲を区画し、第1,第2クロスフレーム31,32が、フロントパネル2aの後部下方に対応した第2収容領域S2の前後範囲を区画し、第2クロスフレーム32とリヤフレーム23が、キックアップパネル2c及びリヤパネル2bの下方に対応した第3収容領域S3の前後範囲を区画している。第1,第2収容領域S1,S2は、各列に4個のバッテリモジュール11を左右に整列させた上で単層状態にて夫々収容している。
【0031】
第3収容領域S3は、2段支持機構40を有し、下段の列に4個のバッテリモジュール11を左右に整列すると共にこれらの上段の列に4個のバッテリモジュール11を左右に整列させた2層状態にて8個のバッテリモジュール11を収容している。
図4〜
図6に示すように、2段支持機構40は、略π状の前支持部41と、略π状の後支持部42と、前支持部41の左右端部と後支持部42の左右端部とを夫々連結する左右1対の略T字状の側支持部43と、各支持部41〜43に掛け渡された底板部材44等を備え、上段の4個のバッテリモジュール11を支持している。前支持部41の左右1対の脚部は、第2クロスフレーム32の上壁部に締結固定され、後支持部42の左右1対の脚部は、リヤフレーム23の上壁部に締結固定されている。1対の側支持部43の脚部は、バッテリトレイ24上に締結固定されている。
【0032】
第1〜第3クロスフレーム31〜33は、バッテリトレイ24の上側にバッテリトレイ24と協働して左右に延びる閉断面を夫々形成している。これら第1〜第3クロスフレーム31〜33は、サイドフレーム21と略同じ上下方向の曲げ剛性になるよう構成され、前後方向に略等間隔になるように配設されている。
【0033】
図4〜
図6に示すように、第1クロスフレーム31は、上壁部の左右両端部から車幅方向外側に夫々延びる上壁連結部31aと、前壁部及び後壁部の左右両端部から前方及び後方に夫々延びる前後1対の側壁連結部31bとが形成されている。上壁連結部31aは、サイドフレーム21の上壁部に接続され、1対の側壁連結部31bは、サイドフレーム21の内側壁部に夫々接続されている。これら上壁連結部31aと1対の側壁連結部31bは、一体的に連なるように連続形成されている。第3クロスフレーム33は、上壁部の左右両端部から車幅方向外側に夫々延びる上壁連結部33aと、前壁部及び後壁部の左右両端部から前方及び後方に夫々延びる前後1対の側壁連結部33bとが形成されている。上壁連結部33aは、サイドフレーム21の上壁部に接続され、1対の側壁連結部33bは、サイドフレーム21の内側壁部に夫々接続されている。これら上壁連結部33aと1対の側壁連結部33bは、独立して分離形成されている。
【0034】
第2クロスフレーム32は、上壁部の左右両端部から車幅方向外側に夫々延びる上壁連結部32aと、前壁部及び後壁部の左右両端部から前方及び後方に夫々延びる前後1対の側壁連結部32bとが形成されている。上壁連結部32aは、サイドフレーム21の上壁部に接続され、1対の側壁連結部32bは、サイドフレーム21の内側壁部に夫々接続されている。これら上壁連結部33aと1対の側壁連結部33bは、一体的に連なるように連続形成されている。
図1,
図6〜
図8に示すように、バッテリトレイ24の下面に左右に延びる下側クロスフレーム34が設けられている。下側クロスフレーム34は、バッテリトレイ24の下側にバッテリトレイ24と協働して左右に延びる閉断面を夫々形成している。下側クロスフレーム34が形成する閉断面は、第2クロスフレーム32が形成する閉断面とバッテリトレイ24を挟んで上下に隣接している。
【0035】
各バッテリモジュール11は、板金製の取付ブラケット51R,51L,52,53を介して第1〜第3クロスフレーム31〜33及びリヤフレーム23に夫々取り付けられている。尚、取付ブラケット51R,51Lは、左右対称構造であるため、特に両者を区別する必要がない場合、総称して第1取付ブラケット51として説明する。
取付ブラケット51〜53の上下方向の曲げ剛性は、バッテリトレイ24の上下方向の曲げ剛性よりも高く且つ第1〜第3クロスフレーム31〜33の上下方向の曲げ剛性よりも低くなるように設定されている。
【0036】
図9に示すように、取付ブラケット51R,52,53は、上下に延びてバッテリモジュール11に連結される連結壁部51a〜53aと、前後に延びて締結部材を介して締結される固定壁部51b〜53bとを備え、断面略L字状に形成されている。バッテリモジュール11の前側に取り付けられる取付ブラケットの連結壁部51a,53aが、左右に隣り合う2つのバッテリモジュール11の前壁部に4本のボルトを介して夫々連結され、バッテリモジュール11の後側に取り付けられる取付ブラケットの連結壁部52a,53aが、左右に隣り合う2つのバッテリモジュール11の後壁部に4本のボルトを介して夫々連結される。また、
図8に示すように、取付ブラケット51〜53の連結壁部51a〜53aは、バッテリモジュール11の重心(回転軸線G)の高さ位置が第1〜第3クロスフレーム31〜33及びリヤフレーム23の上壁部の高さ位置と略同じ高さ位置になるようにバッテリモジュール11に連結されている。
【0037】
第1収容領域S1には、第3クロスフレーム33に固定された第1取付ブラケット51L,51Rと、第1クロスフレーム31に固定された左右1対の第2取付ブラケット52とが配置されている。
【0038】
図9(a)に示すように、右側第1取付ブラケット51Rは、例えば、1.6mmの鋼板をプレス加工して成形され、連結壁部51aと、固定壁部51bとを備えている。固定壁部51bは、左側端部から前方(屈曲部と反対方向)に延びる締結部51sが形成され、固定壁部51bの中央部と左側端部との中間よりも僅かに左側部分から前方に延びる位置決め部51pが形成され、固定壁部51bの中央部に対して位置決め部51pと対称位置よりも左側部分から前方に延びる締結部51tが形成されている。固定壁部51bは、屈曲部から前方に延設され、締結部51sと締結部51tがボルトを介して第3クロスフレーム33の上壁部に固定されている。尚、助手席下方に対応した左側第1取付ブラケット51Lは、右側第1取付ブラケット51Rを左右対称にした構造である(
図4参照)。
【0039】
図9(b)に示すように、第2取付ブラケット52は、例えば、1.6mmの鋼板をプレス加工して成形され、連結壁部52aと、固定壁部52bとを備えている。固定壁部52bは、右側端部から後方に延びる締結部52sが形成され、固定壁部52bの中央部から後方に延びる締結部52uが形成され、締結部52sと締結部52uとの中間よりも僅かに右側部分から後方に延びる位置決め部52pと、締結部52uに対して位置決め部52pと対称位置から後方に延びる締結部52tが形成されている。固定壁部52bは、屈曲部から後方に延設され、締結部52sと締結部52tと締結部52uがボルトを介して第1クロスフレーム31の上壁部に固定されている。
【0040】
第2収容領域S2には、第1クロスフレーム31に固定された左右1対の第3取付ブラケット53と、第2クロスフレーム32に固定された左右1対の第3取付ブラケット53とが配置されている。
【0041】
図9(c)に示すように、第1クロスフレーム31に固定された右側の第3取付ブラケット53は、例えば、2.0mmの鋼板をプレス加工して成形され、連結壁部53aと、固定壁部53bとを備えている。固定壁部53bは、左側端部から前方に延びる位置決め部53pが形成され、固定壁部53bの中央部と左側端部との中間よりも僅かに左側部分から前方に延びる締結部53sが形成され、固定壁部53bの中央部に対して締結部53sと対称位置から前方に延びる締結部53tが形成されている。固定壁部53bは、屈曲部から前方に延設されている。尚、第1クロスフレーム31に固定された左側の第3取付ブラケット53及び第2クロスフレーム32に固定された左右1対の第3取付ブラケット53も配置位置を除き同様に構成されている。
【0042】
第3収容領域S3の下段には、第2クロスフレーム32に固定された左右1対の第3取付ブラケット53と、リヤフレーム23に固定された左右1対の第3取付ブラケット53とが第2収容領域S2と同様に配置されている。更に、第3収容領域S3の上段には、前支持部41に固定された左右1対の第3取付ブラケット53と、後支持部42に固定された左右1対の第3取付ブラケット53とが下段と同様に配置されている。
第2,第3収容領域S2,S3に収容された12個のバッテリモジュール11は、6組の前後1対の第3取付ブラケット53によってクロスフレーム31,32及びリヤフレーム23に取り付けられているため、全て同じ取付剛性である。
【0043】
ここで、バッテリモジュール11の取付剛性の考え方について説明する。
バッテリモジュール11の取付剛性とは、バッテリモジュール11を第1〜第3取付ブラケット51〜53を介して取り付けるときの取付剛性である。
それ故、本実施形態では、バッテリモジュール11の取付剛性を、第1〜第3取付ブラケット51〜53の板厚及び固定形態によって設定している。
第1〜第3取付ブラケット51〜53の板厚を厚くすることにより、バッテリモジュール11の取付剛性を増加し、また、第1〜第3取付ブラケット51〜53の固定形態の変更により、バッテリモジュール11の取付剛性を調整している。
【0044】
固定形態の変更として、締結部位置を変更する例について説明する。
第1取付ブラケット51の締結部51s,51tを、第3クロスフレーム33に対して車幅方向内側に相対移動する場合である。
図10に示すように、第1取付ブラケット51L,51Rの締結部51s,51tを仮想線の位置から実線の位置に変更した場合、締結部51tが車幅方向内側方向に移動したため、バッテリモジュール11の車幅方向外側部分の見掛け上の取付剛性が低下する。また、締結部51sが車幅方向内側方向に移動したため、バッテリモジュール11の車幅方向内側部分の見掛け上の取付剛性が上昇する。
尚、第1〜第3取付ブラケット51〜53は、板厚、締結部位置、及び位置決め部位置を除いて略同様の仕様に設定されている。また、符号Rは、左側バッテリモジュール11(BL)と右側バッテリモジュール11(BR)の中間に設定された前後に延びるロール軸線、符号Gは、第1取付ブラケット51L,51Rが夫々連結する隣接したバッテリモジュール11を一塊としたときの重心を通る回転軸線である。
【0045】
右側第1取付ブラケット51Rは、右側第2取付ブラケット52と同じ板厚であり、左端部から締結部51sまでの距離が、右側第2取付ブラケット52の締結部52tから左端部までの距離よりも小さい。また、右端部から締結部51tまでの距離が、右側第2取付ブラケット52の締結部52sから右端部までの距離よりも大きいため、第1取付ブラケット51は、第2取付ブラケット52よりもバッテリモジュール11の取付剛性が低く、
図11(a)の取付剛性モデルで表される。
【0046】
右側第2取付ブラケット52は、右側第3取付ブラケット53よりも板厚が薄く形成され、左端部から締結部52tまでの距離が、右側第3取付ブラケット53の締結部53sから左端部までの距離と同じである。また、右端部から締結部52sまでの距離が、右側第3取付ブラケット53の締結部53tから右端部までの距離よりも小さいものの、第3取付ブラケット53よりも板厚が薄いため、第2取付ブラケット52は、第3取付ブラケット53と略同等のバッテリモジュール11の取付剛性であり、
図11(b)の取付剛性モデルで表される。第3取付ブラケット53は、締結部53sから左端部までの距離と締結部53tから右端部までの距離が等しく、第1,第2取付ブラケット51,52よりも板厚が厚いため、
図11(c)の取付剛性モデルで表される。
【0047】
第1収容領域S1に収容された4個のバッテリモジュール11は、2組の前後1対の第1,第2取付ブラケット51,52によって第3,第1クロスフレーム33,31に取り付けられている。そして、第1,第2取付ブラケット51,52は、第3取付ブラケット53と板厚、固定形態が異なっているため、第1収容領域S1に収容されたバッテリモジュール11の取付剛性は、第2,第3収容領域S2,S3に収容されたバッテリモジュール11の取付剛性と異なり、第1収容領域S1に収容されたバッテリモジュール11の固有振動数と第2,第3収容領域S2,S3に収容されたバッテリモジュール11の固有振動数も異なる。これにより、全てのバッテリモジュール11が同一姿勢でバッテリケース12に夫々収容された場合であっても、バッテリユニット10の振動と中周波帯域の車体振動との共振を抑制している。
【0048】
また、第1取付ブラケット51が配設された第1収容領域S1の前側領域は、前席乗員の足元に相当している。そして、第1取付ブラケット51において、車幅方向外側端部と締結部51tとの距離が、車幅方向内側端部と締結部51sとの距離よりも長く設定され、第1取付ブラケット51の車幅方向外側部分のバッテリモジュール11の取付剛性が相対的に低下されている。即ち、第1取付ブラケット51L,51Rが夫々連結する隣接したバッテリモジュール11を一塊としたとき、バッテリモジュール11によるロール軸線R回りのロール運動が助長されて前席乗員が知覚する振動減衰性を高くしている。
尚、締結部51tは、第2,第3取付ブラケット52,53の車幅方向外側に配設された締結部52s,52t,53s,53tよりも車幅方向外側端部から車幅方向内側に離隔していることから、最小限のバッテリモジュール11の取付剛性低下で前席乗員の乗り心地を改善している。
【0049】
次に、上記バッテリユニット取付構造の作用、効果について説明する。
作用、効果の説明に当り、CAE(Computer Aided Engineering)によるシミュレーション解析を行った。第1〜第3収容領域S1〜S3に収容された全てのバッテリモジュール11を第3取付ブラケット53を用いて取り付けた車両モデルA(評価基準モデル)と、本実施例の車両モデルBとを作成し、フロントパネル2aの振動減衰性(イナータンス)について解析を行った。
【0050】
図12に、解析結果を示す。
図12に示すように、車両モデルBの振動減衰性は、全領域において車両モデルAの振動減衰性を下回り、前席乗員が知覚する振動減衰性(乗り心地)が改善されたことが確認された。特に、ドラミングノイズに関連する40〜50Hz領域において、車両モデルBの振動振幅のピーク値を大幅に低下され、前席乗員が知覚する振動減衰性の改善が顕著であった。尚、本実施形態において、20〜50Hzの低周波音をドラミングノイズ、100〜400Hzの中周波音をロードノイズとしている。
【0051】
実施例1に係るバッテリユニット取付構造によれば、バッテリユニット10が、バッテリモジュール11と、複数のバッテリモジュール11を収容すると共に1対のフロアフレーム3に取り付けられるバッテリケース12を有するため、バッテリモジュール11を車体側のフロアフレーム3に対してバッテリケース12を介して強固に連結することができる。フロアパネル2が20〜50Hzの周波数で振動すると共にバッテリモジュール11が車幅方向中央部を前後に延びるロール軸線R回りにロール運動する際、バッテリモジュール11の車幅方向端部の上下方向の振れ幅を振動振幅としたとき、バッテリケース12に取り付けられる第1収容領域S1に収容されたバッテリモジュール11の取付剛性を振動振幅のピーク値を低下させるようにバッテリケース12に取り付けられる第2,第3容領域S2,S3に収容されたバッテリモジュール11の取付剛性に対して低下させているため、一部のバッテリモジュール11の取付剛性を用いて車両Vの振動減衰性を高くすることができ、他のバッテリモジュール11の取付剛性を用いて車両Vのロードノイズを抑制することができる。
【0052】
複数のバッテリモジュールは11、同一姿勢で支持されると共に車幅方向に延びる列が3列以上に配置され、前端側の列(第1収容領域S1)のバッテリモジュール11の取付剛性を他の列(第2,第3容領域S2,S3)のバッテリモジュール11の取付剛性に対して低下させたため、車体振動に対して影響の大きい前端側の列のバッテリモジュール11の取付剛性を変更することにより、振動減衰性を高くすることができる。
【0053】
複数のバッテリモジュール11は、同一姿勢で支持されると共に車幅方向に延びる列が複数列に配置され、最前列のバッテリモジュール11は、列方向に複数の取付部(締結部51s,51t)を有すると共に列の端部側の取付部(締結部51t)の取付剛性が列の内側の取付部(締結部51s)の取付剛性よりも低下されたため、同一のバッテリモジュール11の取付部のうち乗り心地性能に対して影響の大きい端部側の取付部のバッテリモジュール11の取付剛性を低下させることにより、振動減衰性を高くすることができる。
【0054】
最前列である第1収容領域S1の車幅方向外側端部側の締結部51tを第2,第3収容領域S2,S3の車幅方向外側端部側の締結部52s,52t,53s,53tよりも車幅方向内側に形成したため、締結部の位置変更で振動減衰性を高くすることができる。
【0055】
第1収容領域S1の後側よりも前側のバッテリモジュール11の締結部の数を減少することによりバッテリモジュール11の取付剛性を低下させるため、締結部の数で振動減衰性を高くすることができる。
【0056】
バッテリユニット10が、フロントシート下方に対応する第1収容領域S1からフロントシートよりも後側の下方に対応する第2,第3収容領域S2,S3に亙って配設され、第1収容領域S1の前側部分に対応するバッテリモジュール11の取付剛性を第2,第3収容領域S2,S3に対応するバッテリモジュール11の取付剛性に対して低下させたため、前席乗員の乗り心地性能を集中的に改善することができる。
【0057】
第1収容領域S1に対応するバッテリモジュール11の前側取付剛性を第1収容領域S1に対応するバッテリモジュール10の後側取付剛性に対して低下させたため、前席乗員の乗り心地性能に対して影響が大きい前席乗員の足元の振動減衰性を高くすることができる。
【0058】
第1収容領域S1に対応するバッテリモジュール11の前側締結部の数は第1収容領域S1に対応するバッテリモジュール11の後側取付部の数よりも少なく設定され、列の端部側の前側取付部である締結部51tが列の端部側の後側取付部である締結部52s(52t)よりも車幅方向内側に配設されたため、簡単な構成で前席乗員の足元の振動減衰性を高くすることができる。
【0059】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、第1〜第3収容領域S1〜S3を形成した例を説明したが、収容領域を2つ形成しても良く、4つ以上形成しても良い。また、後端の第3収容領域S3に2段支持機構40を設けた例を説明したが、3段以上の支持機構を設けても良く、第2収容領域S2にも、2段支持機構又は3段以上の支持機構を設けても良い。
【0060】
2〕前記実施形態においては、第1収容領域S1において、前側に第1取付ブラケット51、後側に第2取付ブラケット52を設けた例を説明したが、前後共に第1取付ブラケット51にしても良い。この場合、第1収容領域S1の締結部の数を第2,第3収容領域S2,S3の締結部の数を少なくする、或いは、第1収容領域S1の取付ブラケットの板厚を第2,第3収容領域S2,S3の取付ブラケットの板厚を薄くして振動振幅のピーク値を低下させる。
【0061】
3〕前記実施形態においては、ドラミングノイズに関連する40〜50Hz領域において振動振幅のピーク値を大幅に低下した例を説明したが、ドラミングノイズに関連する20〜50Hz領域であれば、何れの領域であっても同様の効果を奏することができる。
【0062】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。