特開2020-196431(P2020-196431A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-196431(P2020-196431A)
(43)【公開日】2020年12月10日
(54)【発明の名称】電動車両の下部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/00 20060101AFI20201113BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20201113BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20201113BHJP
【FI】
   B62D21/00 B
   B62D25/20 G
   B62D25/20 J
   B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-15967(P2020-15967)
(22)【出願日】2020年2月3日
(31)【優先権主張番号】特願2019-101160(P2019-101160)
(32)【優先日】2019年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山田 守英
(72)【発明者】
【氏名】松田 大和
(72)【発明者】
【氏名】中山 伸之
(72)【発明者】
【氏名】平川 太一
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA33
3D203BA16
3D203BA19
3D203BB06
3D203BB07
3D203BB25
3D203CA62
3D203CA73
3D203CB09
3D203CB19
3D203DA08
3D203DA73
3D203DA77
3D203DA83
3D203DB05
3D235AA01
3D235BB05
3D235CC15
3D235DD35
3D235EE64
3D235FF06
3D235FF07
3D235FF12
3D235FF34
3D235HH25
(57)【要約】
【課題】トーションビームとバッテリユニットとの干渉を回避することができる電動車両の下部車体構造を提供する。
【解決手段】フロントパネル2aとこのフロントパネル2aから上方に起立したキックアップパネル2cを介して車体前後方向後方に連なるリヤパネル2bとを有するフロアパネル2と、リヤパネネル2bの下方に配設されたトーションビーム式サスペンション20と、キックアップパネル22とサスペンション20との間に配置されたバッテリユニット30とを備えた電動車両Vの下部車体構造において、バッテリユニット30の後部を車体に対して固定するための左右1対の取付部55を設け、サスペンション20のトーションビーム22の車幅方向中間部22aに対応する高さ位置にて1対の取付部55を連結する連結部56を備えている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントパネルとこのフロントパネルから上方に起立したキックアップパネルを介して車体前後方向後方に連なるリヤパネルとを有するフロアパネルと、前記リヤパネルの下方に配設されたトーションビーム式サスペンションと、前記キックアップパネルと前記サスペンションとの間に配置されたバッテリユニットとを備えた電動車両の下部車体構造において、
前記バッテリユニットの後部を車体に対して固定するための左右1対の取付ブラケットを設け、
前記サスペンションのトーションビームの車幅方向中間部に対応する高さ位置にて前記1対の取付ブラケットを連結する連結部を備えたことを特徴とする電動車両の下部車体構造。
【請求項2】
前記1対の取付ブラケットは、前記バッテリユニットと前記サスペンションのトーションビームとの間に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の電動車両の下部車体構造。
【請求項3】
前記バッテリユニットが、バッテリモジュールを載置する底板部材と、前記底板部材を支持するバッテリフレームと、前記バッテリモジュールを前記底板部材と協働して密封する上部カバー部材とを有し、
前記連結部の強度が前記上部カバー部材の後端部の強度よりも高く設定されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動車両の下部車体構造。
【請求項4】
前記バッテリユニットは、前記底板部材に載置された第1バッテリモジュールと、前記第1バッテリモジュールの上方に配置された第2バッテリモジュールとを有し、
前記トーションビームは、側面視にて前記第2バッテリモジュールの上端部よりも下方に配設されたことを特徴とする請求項3に記載の電動車両の下部車体構造。
【請求項5】
前記1対の取付ブラケットは、下端部が前記バッテリフレームの後壁部に接合され、上端部が前記リヤパネルに形成された車幅方向に延びる閉断面部材に接合されたことを特徴とする請求項3又は4に記載の電動車両の下部車体構造。
【請求項6】
前記1対の取付ブラケットと連結部とがパネル部材によって一体形成され、
前記パネル部材は、車体上下方向に延びる複数のビード部を備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の電動車両の下部車体構造。
【請求項7】
前記複数のビード部は、車体後方に突出した凸状に形成されたことを特徴とする請求項6に記載の電動車両の下部車体構造。
【請求項8】
前記サスペンションが、前端部が車体に枢支され且つ後端部に車輪を回転可能に支持する左右1対のトレーリングアームと、前記1対のトレーリングアームとトーションビームとの間に架設された左右1対のスプリング支持部材とを有し、
前記パネル部材は、前記1対のスプリング支持部材の間に対応する位置に形成されたことを特徴とする請求項6又は7に記載の電動車両の下部車体構造。
【請求項9】
前記トーションビームの後側に燃料タンクが配設されたことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の電動車両の下部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キックアップパネルとトーションビーム式サスペンションとの間にバッテリユニットを備えた電動車両の下部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハイブリッド車や電気自動車等の電動車両では、車輪を駆動する電動機(例えば、モータジェネレータ又はモータ)の動力源であるバッテリが大容量になるため、バッテリユニットを車体フロアの下方空間を利用して配置している。
通常、バッテリユニットは、リチウムイオン等のバッテリセルの集合体からなる複数のバッテリモジュールと、これら複数のバッテリモジュールを収容するアッパカバー及びロアカバーと、これらを車体に支持する支持部材等によって構成されている。
【0003】
特許文献1の電気自動車は、フロアパネルの下方で且つ左右1対のサイドメンバの間に配設されたバッテリユニットを有し、このバッテリユニットは、複数のバッテリモジュールを載置すると共に車幅方向に延びる複数の桁部材が固定されたトレイ部材とこのトレイ部材を覆うカバー部材とからなるバッテリケースとを備え、複数の桁部材の車幅方向両端部がバッテリユニット取付部を介して1対のサイドメンバ間に固定されている。
これにより、トレイ部材の一部である桁部材を車体のクロスメンバとして機能させることで、最低地上高を低くすることなく、車体剛性を確保している。
【0004】
車両のフロアパネルは、フロントパネルと、このフロントパネルから上方に起立したキックアップパネルを介して車体後方に連なるリヤパネルとから構成され、リヤパネルの下方には、リヤサスベンション等の各種車両部品が配設されている。
トーションビーム式サスペンションは、前端部が車体に枢支され且つ後端部に車輪を回転可能に支持する左右1対のトレーリングアームと、車幅方向両端部が左右1対のトレーリングアームに夫々連結されて車幅方向に延びるトーションビームとを備えている。
このトーションビーム式サスペンションは、長さ方向に延びる一側半部と他側半部とを備えた断面略U字状等の開断面部材からなるトーションビームが、トーションバーやスプリングの機能を果たし、構造が簡単で部品点数が少なく、コスト的及びスペース的に有利であることから、FF車のリヤサスペンションとして広く実用に供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−083597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、車両の航続距離を拡大するためには、フロントパネルの下方空間に加え、リヤパネルの下方空間を利用してバッテリユニットを配置することが望ましい。
つまり、リヤパネルの下方空間は、地上高が高いため、複数のバッテリモジュールを上下方向に積載することができ、大きいバッテリ容量を確保することが可能である。
しかし、リヤパネルの下方空間にバッテリユニットを配置する場合、バッテリユニットと他の車両部品との干渉に起因したバッテリユニットの損傷が懸念される。
【0007】
前述したように、リヤパネルの下方には、リヤサスベンション、燃料タンク、サイレンサ等の多くの車両部品が設けられ、各々の部品が近接して配置されている。
トーションビーム式サスペンションを搭載した車両では、キックアップパネルの後方に配置されたトーションビームが車幅方向全域に亙って延設されているため、車体後部への側突の際、車幅方向内側に向かう衝突荷重によりトーションビームが圧縮湾曲変形して車幅方向中間部が前方に進出する可能性がある。そして、トーションビームが前方に進出した場合、キックアップパネルとトーションビームとの間に配置されたバッテリユニットの後端部にトーションビームの中間部前端部分が干渉する虞がある。
特に、複数のバッテリモジュールを上下方向に積載したバッテリユニットの場合には、バッテリユニットの後端部領域の表面積(対向面積)が増加するため、変形したトーションビームと干渉するリスクが更に増加する。
【0008】
本発明の目的は、キックアップパネルとトーションビーム式サスペンションとの間にバッテリユニットを備えた電動車両において、トーションビームとバッテリユニットとの干渉を回避可能な電動車両の下部車体構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の電動車両の下部車体構造は、フロントパネルとこのフロントパネルから上方に起立したキックアップパネルを介して車体前後方向後方に連なるリヤパネルとを有するフロアパネルと、前記リヤパネルの下方に配設されたトーションビーム式サスペンションと、前記キックアップパネルと前記サスペンションとの間に配置されたバッテリユニットとを備えた電動車両の下部車体構造において、前記バッテリユニットの後部を車体に対して固定するための左右1対の取付ブラケットを設け、前記サスペンションのトーションビームの車幅方向中間部に対応する高さ位置にて前記1対の取付ブラケットを連結する連結部を備えたことを特徴としている。
【0010】
この電動車両の下部車体構造では、前記バッテリユニットの後部を車体に対して固定するための左右1対の取付ブラケットを設けたため、バッテリユニットの後部を車体に対して強固に支持させることができる。
前記サスペンションのトーションビームの車幅方向中間部に対応する高さ位置にて前記1対の取付ブラケットを連結する連結部を備えているため、車体後部への側突の際にトーションビームが圧縮湾曲変形して車幅方向中間部が前方に進出しても、連結部がトーションビームの中間部前端部分の前進を阻止することができ、トーションビームの中間部前端部分とバッテリユニットとの直接的な干渉を回避することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記1対の取付ブラケットは、前記バッテリユニットと前記サスペンションのトーションビームとの間に配置されたことを特徴としている。
この構成によれば、連結部を小型化できると共に、車両後突時、1対の取付ブラケットによってトーションビームの前進を抑制することができ、トーションビームとバッテリユニットとの直接的な干渉を回避することができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記バッテリユニットが、バッテリモジュールを載置する底板部材と、前記底板部材を支持するバッテリフレームと、前記バッテリモジュールを前記底板部材と協働して密封する上部カバー部材とを有し、前記連結部の強度が前記上部カバー部材の後端部の強度よりも高く設定されたことを特徴としている。
この構成によれば、上部カバー部材を軽量化することができ、バッテリのケース全体の重量を軽減することができる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記バッテリユニットは、前記底板部材に載置された第1バッテリモジュールと、前記第1バッテリモジュールの上方に配置された第2バッテリモジュールとを有し、前記トーションビームは、側面視にて前記第2バッテリモジュールの上端部よりも下方に配設されたことを特徴としている。
この構成によれば、車両の航続距離を確保しつつ前進するトーションビームを1対の取付ブラケットの存在領域に誘導して、確実に当接させることができる。
【0014】
請求項5の発明は、請求項3又は4の発明において、前記1対の取付ブラケットは、下端部が前記バッテリフレームの後壁部に接合され、上端部が前記リヤパネルに形成された車幅方向に延びる閉断面部材に接合されたことを特徴としている。
この構成によれば、取付ブラケットの取付強度を高くすることができ、取付ブラケットとトーションビームとの干渉又は連結部とトーションビームとの干渉が生じた際、バッテリユニットの変位を抑制することができる。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1〜5の何れか1項の発明において、前記1対の取付ブラケットと連結部とがパネル部材によって一体形成され、前記パネル部材は、車体上下方向に延びる複数のビード部を備えたことを特徴としている。
この構成によれば、取付ブラケットと連結部の全体的な軽量化を図りつつパネル部材の強度を増加することができる。
【0016】
請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記複数のビード部は、車体後方に突出した凸状に形成されたことを特徴としている。
この構成によれば、取付ブラケットとトーションビームとの干渉又は連結部とトーションビームとの干渉が生じた際、トーションビームと上部カバー部材との離隔距離を確保することができる。
【0017】
請求項8の発明は、請求項6又は7の発明において、前記サスペンションが、前端部が車体に枢支され且つ後端部に車輪を回転可能に支持する左右1対のトレーリングアームと、前記1対のトレーリングアームとトーションビームとの間に架設された左右1対のスプリング支持部材とを有し、前記パネル部材は、前記1対のスプリング支持部材の間に対応する位置に形成されたことを特徴としている。
この構成によれば、パネル部材を必要最小限の大きさで形成することができ、軽量化を図ることができる。
【0018】
請求項9の発明は、請求項1〜8の何れか1項の発明において、前記トーションビームの後側に燃料タンクが配設されたことを特徴としている。
この構成によれば、車両後突時、燃料タンクに押されたトーションビームの前進を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電動車両の下部車体構造によれば、バッテリユニットの後部を車体に固定する取付ブラケットを用いてトーションビームとバッテリユニットとの干渉を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1に係る電動車両の下部車体の底面図である。
図2】後側下方から視た斜視図である。
図3】バッテリユニットとリヤサスペンションの背面図である。
図4図3の要部斜視図である。
図5図3のV-V線断面図である。
図6】バッテリユニットの分解斜視図である。
図7図5のVII- VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【実施例1】
【0022】
以下、本発明の実施例1について図1図7に基づいて説明する。
本実施例1に係る車両Vは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関(図示略)と車両駆動用の電動機(モータジェネレータ)(図示略)とを駆動源としたハイブリッド自動車である。
【0023】
図1図2に示すように、車両Vは、前後に延びる左右1対のサイドシル1と、フロアパネル2と、前後に延びる左右1対のフロアフレーム3と、前後に延びる左右1対のリヤサイドフレーム4と、リヤサスペンション20と、バッテリユニット30等を備えている。
以下、図において、矢印F方向を車体前後方向前方とし、矢印L方向を車幅方向左方とし、矢印U方向を車体上下方向上方として説明する。また、この車両Vは、略左右対称構造である。
【0024】
まず、1対のサイドシル1について説明する。
サイドシル1は、車幅方向外側壁部を構成する断面略ハット状のアウタパネルと、車幅方向内側壁部を構成する断面略ハット状のインナパネルとを備え、両パネルが協働して前後に延びる略矩形状の閉断面を形成している。このサイドシル1の前端側部分には、上下に延びるヒンジピラーが連結され、後端側部分には、上下に延びるリヤピラーが連結されている。尚、この車両Vは、フロントドアが前端部分に形成されたヒンジピラーのヒンジ中心に開閉され、リヤドアが後端部分に形成されたヒンジ中心に開閉される、所謂観音開きタイプのドア構造であり、センターピラーが省略されている。
【0025】
次に、フロアパネル2について説明する。
フロアパネル2は、1対のサイドシル1の間に掛け渡されるように形成されている。
図1図7に示すように、フロアパネル2は、前席乗員用シート(図示略)が搭載されるフロントパネル2aと、このフロントパネル2aの後端から後方上り傾斜状に上方に起立したキックアップパネル2cを介して後方に連なり後席乗員用シート(図示略)が搭載されるリヤパネル2bとを備えている。フロントパネル2aの左右両端部分は、1対のサイドシル1の内側壁部に夫々接合されて前側車室床面を形成し、リヤパネル2bの左右両端部分は、1対のリヤサイドフレーム4に夫々接合されて後側車室床面を形成している。
【0026】
図7に示すように、キックアップパネル2cの頂部(上端部)には、キックアップパネル2cの下面と協働して左右に延びる断面略矩形状の閉断面を形成する第1クロスメンバ5が配設されている。この第1クロスメンバ5の両端部は、1対のリヤサイドフレーム4の前側部分を連結している。第1クロスメンバ5の後方には、左右に延びる断面略ハット状の第2,3クロスメンバ6,7が配設されている。第2クロスメンバ6は、リヤパネル2bの下面と協働して左右に延びる断面略矩形状の閉断面を形成し、第3クロスメンバ7は、リヤパネル2bの上面と協働して左右に延びる断面略矩形状の閉断面を形成している。また、これら第2,3クロスメンバ6,7は、協働してリヤパネル2bを節部材として間に挟んだ状態で左右に延びる閉断面構造体を構成すると共に1対のリヤサイドフレーム4の途中部を連結している。
【0027】
次に、フロアフレーム3及び1対のリヤサイドフレーム4について説明する。
図1に示すように、1対のフロアフレーム3は、断面略ハット状に夫々形成され、これら1対のフロアフレーム3の間隔が後側程離隔している。それ故、サイドシル1と隣り合うフロアフレーム3との間隔は、後側程接近している。フロアフレーム3は、フロントパネル2aの下面と協働して前後に延びる断面略矩形状の閉断面を形成している。
【0028】
図1図2に示すように、1対のリヤサイドフレーム4は、1対のフロアフレーム3の後端からキックアップパネル2c及びリヤパネル2bに沿って夫々後方に延設されている。
リヤサイドフレーム4は、車幅方向外側壁部を構成するアウタパネルと、車幅方向内側壁部を構成するインナパネルとを備え、両パネルが協働して前後に延びる略矩形状の閉断面を形成している。1対のリヤサイドフレーム4の後端部は、左右に延びる第4クロスメンバ8によって連結されている。
【0029】
図1図2図5に示すように、第4クロスメンバ8の途中部には、前後に延びる左右1対のタンク支持メンバ10が夫々連結されている。1対のタンク支持メンバ10は、下方に向けて緩湾曲する閉断面に夫々形成され、燃料タンク9の左右両端部分を下方から夫々支持するように構成されている。タンク支持メンバ10は、前端部がボルト(図示略)を介して後述するバッテリフレーム40の下端部に締結固定され、後端部が締結部材を介して第4クロスメンバ8の下端部に締結固定されている。
【0030】
次に、リヤサスペンション20について説明する。
サスペンション20は、キックアップパネル2cの後方で且つリヤパネル2bの下方に配設されている。図1図3図5に示すように、サスペンション20は、後端部に車輪(図示略)を回転可能に支持する左右1対のトレーリングアーム21と、車幅方向両端部が1対のトレーリングアーム21に夫々連結された左右に延びるトーションビーム22を備えたトーションビーム式サスペンションである。
【0031】
1対のトレーリングアーム21は、後側程車幅方向の間隔が離隔するように平面視にて略ハ字状に配設され、前端部が車幅方向に延びる枢軸とゴムブッシュとからなるジョイント23を介して1対のリヤサイドフレーム4の前端下部に夫々枢支されている。トレーリングアーム21の後端部には、キャリアが設けられ、このキャリアが車輪を回転自在に支持している。キャリアの近傍位置には、車体側とトレーリングアーム21の後端部とを衝撃吸収可能に連結するショックアブソーバ(図示略)が設けられている。
【0032】
トレーリングアーム21の途中部から後端部に亙る車幅方向内側部分にはトーションビーム22の車幅方向外側部分とトレーリングアーム21の途中部とに架設するように溶接接合された左右1対のガセット24(スプリング支持部材)が設けられている。これらガセット24と車体との間には、ショックアブソーバと協働して車両Vの振動吸収機構を構成する圧縮コイルスプリング(図示略)が弾装され、ガセット24によって圧縮コイルスプリングの下端部が支持されている。
【0033】
図1図5図7に示すように、トーションビーム22は、側面視にてキックアップパネル2cと燃料タンク9との間で且つタンク支持メンバ10と第2クロスメンバ6との間に相当する位置に対応するように配置されている。このトーションビーム22は、円筒状のパイプ部材を軸心直交方向から長さ方向に亙って押し潰すことによって、一側半部と他側半部とにより形成され且つ開口が下方に指向する断面略V字状の開断面部材で構成されている。一方の車輪に外力が作用して他方の車輪が逆位相に変位したとき、これらの外力をトーションビーム22の全体形状の撓み及び一側半部と他側半部とによって形成された開断面の口閉じ変形によって吸収している。
【0034】
次に、バッテリユニット30について説明する。
図1図2図6図7に示すように、バッテリユニット30は、複数(例えば、16個)の第1,第2バッテリモジュール31,32を直列接続した高電圧バッテリを収容した状態でフロアパネル2の下方空間にレイアウトされている。それ故、バッテリユニット30は、耐振性及び耐水性を確保するように構成されている。車両駆動用電動機に電力を供給する第1,第2バッテリモジュール31,32は、規格電圧を有する直方体形状の複数のバッテリセルCを積層状に整列させた直方体形状のバッテリ集合体である。バッテリセルCは、例えば、2次電池の一種であるリチウムイオンバッテリである。
【0035】
図6に示すように、バッテリユニット30は、第1,第2バッテリモジュール31,32と、12個の第1バッテリモジュール31を載置する第1底板部材33と、この第1底板部材33と協働して第1,第2バッテリモジュール31,32を収容する密封空間を形成する上部カバー部材34と、第1底板部材33を支持するバッテリフレーム40を主要な構成要素としている。第1底板部材33とバッテリフレーム40とが、下部カバー部材に相当している。
【0036】
第1底板部材33は、金属製板材、例えば、アルミ合金製板材によって構成され、矩形桶状に形成されている。この第1底板部材33は、前から順に、前側領域、中間領域、後側領域の3領域に区分されている。
第1バッテリモジュール31は、長手方向が前後方向と平行になる姿勢で左右方向に4個ずつ各領域に載置されている。後側領域の4個の第1バッテリモジュール31の上方には第2バッテリモジュール32が4個配置されている。尚、第1バッテリモジュール31の上端部の高さ位置は、フロントパネル2aの高さ位置よりも低くなるように配置され、また、第1バッテリモジュール31と第2バッテリモジュール32は、縦、横及び高さ寸法を含めて同一仕様、つまり同一形状に設定されている。
【0037】
上部カバー部材34は、例えば、合成樹脂材料により形成されている。この上部カバー部材34は、第1底板部材33の前側領域及び中間領域を覆う部分の高さ寸法よりも後側領域を覆う部分の高さ寸法が大きくなるように構成されている。上部カバー部材34の外縁部は、シール用のガスケット(図示略)を間に介して複数の締結部材により第1底板部材33の外縁部に締結固定されている。
【0038】
バッテリフレーム40は、前後に延びる左右1対の第1フレームと、左右に延びる前後1対の第2フレームとを備えている。具体的には、図6に示すように、バッテリフレーム40は、略ロ字状のロアフレーム41と、このロアフレーム41と協働して断面略矩形状の閉断面を形成する略ロ字状のアッパフレーム42とを有し、略ロ字状の閉断面構造体によって形成されている。更に、このバッテリフレーム40は、1対の第1フレームの間に第1底板部材33の上面と協働して左右に延びる断面略矩形状の閉断面を形成するクロスメンバ部材43〜45を有している。第1底板部材33は、前側領域をクロスメンバ部材43,44により区画され、中間領域をクロスメンバ部材44,45により区画され、後側領域をクロスメンバ部材45とバッテリフレーム40の後端部分に相当する後側第2フレーム46(図7参照)により区画されている。
【0039】
バッテリフレーム40は、複数(例えば、13個)のブラケット51〜54を用いて車体に対して取り付けられている。図6に示すように、ロアフレーム41には、左右1対の前部ブラケット51と、左右4対の第1側部ブラケット52と、左右1対の第2側部ブラケット53と、後部ブラケット54(パネル部材)が設けられている。
【0040】
1対の前部ブラケット51は、前側第2フレームの前壁部から前方に突出するように設けられ、ボルトb2を用いてフロントパネル2aの前側部分下面に締結固定されている。
各第1側部ブラケット52は、第1フレームの車幅方向外側壁部から車幅方向外側に突出するように設けられ、ボルトb3を用いてフロアフレーム3の下壁部に夫々締結固定されている。1対の第2側部ブラケット53は、第1フレームの後端部に夫々設けられている。図2図6に示すように、第2側部ブラケット53は、上下に延びる縦壁部が第1フレームの車幅方向外側壁部に固着され、縦壁部の上端部から車幅方向外側に延びる横壁部がボルトb4を用いてフロアフレーム3の下壁部に締結固定されている。
【0041】
後部ブラケット54は、金属製板材、例えば、熱間圧延鋼板によりプレス成形された単一部品として構成されている。この後部ブラケット54は、少なくとも、上部カバー部材34の後端部よりも高い強度になるように構成されている。
本実施例では、上部カバー部材34が合成樹脂製であり、後部ブラケット54が金属製としたが、同じ材質であっても、板厚や構造によって後部ブラケット54の強度を上部カバー部材34の強度より高くしても良い。
【0042】
図1図3図5図7に示すように、後部ブラケット54は、バッテリユニット30とトーションビーム22との間に配置されている。また、この後部ブラケット54は、後側第2フレーム46の中間部分、具体的には、サスペンション20の左右1対のガセット24に挟まれた領域に対応するように設けられている。
図3図4に示すように、後部ブラケット54は、左右1対の取付部55(取付ブラケット)と、これら1対の取付部55の間を連結する連結部56を備えている。
【0043】
1対の取付部55は、略L字状に形成され、上下に延びる縦壁部55aと、この縦壁部55aの上端部から後方に延びる横壁部55bとを夫々有している。
図7に示すように、縦壁部55aの下部は、後側第2フレーム46の縦壁部46a、換言すれば、ロアフレーム41の後壁部に固定されたナットn1にボルトb5を介して締結固定されている。これにより、縦壁部55aは、上部カバー部材34の後端部から後側第2フレームの前後寸法分離隔している。横壁部55bは、第2クロスメンバ6の下壁部に固定された左右1対のナットn2に左右1対のボルトb6を介して締結固定されている。
【0044】
図3に示すように、連結部56は、トーションビーム22の左右方向中間部22aに対応した高さ位置を含む領域に亙って設けられている。具体的には、1対の取付部55の下端部からロアフレーム41の後壁部の下端部近傍位置までの領域を連結している。
連結部56の下部は、ロアフレーム41の後壁部に固定された左右1対のナット(図示略)に左右1対のボルトb5を介して締結固定されている。
【0045】
連結部56は、1対の取付部55との境界部分近傍に左右1対のビード部56aが形成されている。これら1対のビード部56aは、連結部56の上半部に配設されている。
図3図4に示すように、ビード部56aは、後方に突出した断面略コ字状に形成され、上下に延びるように構成されている。これにより、車体後部への側突時或いは車両後突時、トーションビーム22が前進してもトーションビーム22の左右方向中間部22aの前端部分と上部カバー部材34の後端部との離隔距離を確保している。
【0046】
次に、上記下部車体構造の作用、効果について説明する。
実施例1に係る下部車体構造によれば、バッテリユニット30の後部を車体に対して固定するための左右1対の取付部55を設けたため、バッテリユニット30の後部を車体に対して強固に支持させることができる。サスペンション20のトーションビーム22の左右方向中間部22aに対応する高さ位置にて1対の取付部55を連結する連結部56を備えているため、車体後部への側突の際にトーションビーム22が湾曲変形して中間部22aが前方に進出しても、連結部56がトーションビーム22の中間部22aの前進を阻止することができ、トーションビーム22の左右方向中間部22aの前端部分とバッテリユニット30との直接的な干渉を回避することができる。
【0047】
1対の取付部55は、バッテリユニット30とサスペンション20のトーションビーム22との間に配置されたため、連結部56を小型化できると共に、車両後突時、1対の取付部55によってトーションビーム22の前進を抑制することができ、トーションビーム22とバッテリユニット30との直接的な干渉を回避することができる。
【0048】
バッテリユニット30が、第1バッテリモジュール31を載置する第1底板部材33と、第1底板部材33を支持するバッテリフレーム40と、第1,第2バッテリモジュール31,32を第1底板部材33と協働して密封する上部カバー部材34とを有し、連結部56の強度が上部カバー部材34の後端部の強度よりも高く設定されたため、上部カバー部34材を軽量化することができ、バッテリのケース全体の重量を軽減することができる。
【0049】
バッテリユニット30は、第1底板部材33に載置された第1モジュール31と、第1モジュール31の上方に配置された第2モジュール32とを有し、トーションビーム22は、側面視にて第2モジュール32の上端部よりも下方に配設されたため、車両Vの航続距離を確保しつつ前進するトーションビーム22を1対の取付部55の存在領域に確実に当接させることができる。
【0050】
1対の取付部55は、下端部がバッテリフレーム40(ロアフレーム41)の後壁部に接合され、上端部がリヤパネル2bに形成された車幅方向に延びる第2クロスメンバ6に接合されたため、取付部55の取付強度を高くすることができ、取付部55とトーションビーム22との干渉又は連結部56とトーションビーム22との干渉が生じた際、バッテリユニット30の変位を抑制することができる。
【0051】
1対の取付部55と連結部56とがパネル部材である後部ブラケット54によって一体形成され、後部ブラケット54は、車体上下方向に延びる複数のビード部56aを備えたため、取付部55と連結部56の全体的な軽量化を図りつつパネル部材の強度を増加することができる。
【0052】
複数のビード部56aは、車体後方に突出した凸状に形成されたため、取付部55とトーションビーム22との干渉又は連結部56とトーションビーム22との干渉が生じた際、トーションビーム22と上部カバー部材34との離隔距離を確保することができる。
【0053】
サスペンション20が、前端部が車体に枢支され且つ後端部に車輪を回転可能に支持する左右1対のトレーリングアーム21と、1対のトレーリングアーム21とトーションビーム22との間に架設された左右1対のガセット24とを有し、パネル部材は、1対のガセット24の間に対応する位置に形成されたため、後部ブラケット54を必要最小限の大きさで形成することができ、軽量化を図ることができる。
【0054】
トーションビーム22の後側に燃料タンク9が配設されたため、車両後突時、燃料タンク9に押されたトーションビーム22の前進を抑制することができる。
【0055】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、エンジン等の内燃機関と電動機とを備えたハイブリッド自動車の例を説明したが、少なくともバッテリユニットを備えていれば良く、電動機のみを備えた電気自動車であっても良い。
【0056】
2〕前記実施形態においては、フロントパネル2aの下方に第1バッテリモジュール31、リヤパネル2bの下方に第1,第2バッテリモジュール31,32を収容するバッテリユニット30の例を説明したが、少なくとも、キックアップパネル2cとサスペンション20との間に単層複層に拘りなくバッテリユニット30が配設された配置構造であれば良く、上下に積層されたバッテリモジュールのみをキックアップパネル2cの後側に配置するバッテリユニット30であっても良い。
【0057】
3〕前記実施形態においては、後側第2フレーム46の縦壁部46aに1対の取付部55を締結した例を説明したが、1対の取付部55を1対の第1フレームの車幅方向外側壁部の後端に固定しても良い。この場合、第1フレームの車幅方向外側壁部の後端に固定された各々の取付部55を連結する連結部56は、車幅方向中央部分の面積を車幅方向外側部分の面積よりも大きく設定することが好ましい。
また、1対の取付部55と連結部56とが同一鋼板で一体成形された例を説明したが、1対の取付部55と連結部56とを別に成形し、後で組み合わせて後部ブラケット54を形成しても良い。
【0058】
4〕前記実施形態においては、中間部22aがトーションビーム22の長手方向略中央部分である例を説明したが、車体後部への側突の際、車幅方向内側に向かう衝突荷重により圧縮湾曲変形して前方に進出することにより、バッテリユニット30と干渉可能性のあるトーションビーム22の長手方向途中部は、トーションビーム22の中間部22aに相当し、本発明と同様の効果を奏することができる。また、中間部22aの前端部分は、側突によりトーションビーム22が捩れるため、側突前におけるトーションビーム22の前側下端部に限られるものではない。
【0059】
5〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0060】
2 フロアパネル
2a フロントパネル
2b リヤパネル
2c キックアップパネル
6 第2クロスメンバ
9 燃料タンク
20 リヤサスペンション
21 トレーリングアーム
22 トーションビーム
24 ガセット
30 バッテリユニット
31 第1バッテリモジュール
32 第2バッテリモジュール
33 第1底板部材
34 上部カバー部材
40 バッテリフレーム
54 後部ブラケット
55 取付部
56 連結部
56a ビード部
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7