【実施例1】
【0020】
以下、本発明の実施例1について
図1〜
図14に基づいて説明する。
本実施例1に係る車両Vは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関(図示略)と車両駆動用の電動機(モータジェネレータ)(図示略)とを駆動源としたハイブリッド自動車である。
【0021】
図1,
図2に示すように、車両Vは、前後に延びる左右1対のサイドシル1と、フロアパネル2と、前後に延びる左右1対のフロアフレーム3と、バッテリユニット10等を備えている。以下、図において、矢印F方向を車体前後方向前方とし、矢印L方向を車幅方向左方とし、矢印U方向を車体上下方向上方として説明する。また、この車両Vは、略左右対称構造である。
【0022】
まず、車両Vの全体構成について説明する。
サイドシル1は、車幅方向外側壁部を構成する断面略ハット状のアウタパネルと、車幅方向内側壁部を構成する断面略ハット状のインナパネルとを備え、両パネルが協働して前後に延びる略矩形状の閉断面を形成している。このサイドシル1の前端側部分には、上下に延びるヒンジピラーが連結され、後端側部分には、上下に延びるリヤピラーが連結されている。尚、この車両Vは、フロントドアが前端部分に形成されたヒンジピラーのヒンジ中心に開閉され、リヤドアが後端部分に形成されたリヤピラーのヒンジ中心に開閉される、所謂観音開きタイプのドア構造であり、センターピラーが省略されている。
【0023】
フロアパネル2は、1対のサイドシル1の間に掛け渡されるようにフルフラット状に形成され、車室内に膨出するトンネル部は形成されていない。
図1,
図2,
図8に示すように、このフロアパネル2は、前席乗員用シート(図示略)が搭載されるフロントパネル2aと、このフロントパネル2aの後端から後方上り傾斜状に上方に起立したキックアップパネル2cを介して後方に連なり後席乗員用シート(図示略)が搭載されるリヤパネル2bとを備えている。
【0024】
1対のフロアフレーム3は、断面略ハット状に夫々形成され、これら1対のフロアフレーム3の間隔が後側程離隔している。それ故、サイドシル1と隣り合うフロアフレーム3との間隔は、後側程接近している。フロアフレーム3は、フロントパネル2aの下面と協働して前後に延びる断面略矩形状の閉断面を形成している。リヤサスペンション4は、キックアップパネル2cの後方で且つリヤパネル2bの下方に配設されている。このサスペンション4は、後端部に車輪(図示略)を回転可能に支持する左右1対のトレーリングアーム4aと、車幅方向両端部が1対のトレーリングアーム4aに夫々連結された左右に延びるトーションビーム4bを備えたトーションビーム式サスペンションである。
【0025】
次に、バッテリユニット10について説明する。
図1〜
図3に示すように、バッテリユニット10は、フロアパネル2の下方空間にレイアウトされている。このバッテリユニット10は、複数(例えば、16個)のバッテリモジュール11と、これら複数のバッテリモジュール11を収容するバッテリケース12によって構成されている。車両駆動用電動機に電力を供給するバッテリモジュール11は、規格電圧を有する直方体形状の複数のバッテリセル11a(
図8参照)を前後に積層状に整列させた直方体形状のバッテリ集合体に形成されている。バッテリセル11aは、例えば、2次電池の一種であるリチウムイオンバッテリである。
複数のバッテリモジュール11は、縦、横及び高さ寸法を含めて同一仕様に設定され、長手方向が前後方向と平行になる姿勢でバッテリケース12に夫々収容されている。
このバッテリモジュール11の重量は、例えば、約14kgであり、バッテリユニット10の総重量は、例えば、約300kgである。
【0026】
バッテリケース12は、バッテリモジュール11を直列接続した高電圧バッテリを収容するため、耐振性及び耐水性を確保するように構成されている。
図3に示すように、バッテリケース12は、左右1対のサイドフレーム21と、左右に延びて1対のサイドフレーム21の前端部を連結するフロントフレーム22と、左右に延びて1対のサイドフレーム21の後端部を連結するリヤフレーム23と、各フレーム21〜23に支持されると共にバッテリケース12の底部を形成する桶状のバッテリトレイ24と、このバッテリトレイ24と協働して複数のバッテリモジュール11を収容可能な密閉空間を形成する合成樹脂製のカバー部材25等を備えている。サイドフレーム21の上下方向の曲げ剛性は、フロアフレーム3の上下方向の曲げ剛性よりも低くなるように設定されている。
【0027】
各フレーム21〜23は、略L字状のロアパネルと略L字状のアッパパネルが協働して略矩形状の閉断面を夫々構成している(
図7参照)。各フレーム21〜23が形成した閉断面は、環状に連なり、略ロ字状の閉断面構造体を構成している。
各フレーム21〜23は、取付部26〜29により車体に対して取り付けられている。
左右4対の取付部26及び左右1対の取付部27は、1対のサイドフレーム21のロアパネルから車幅方向外側に夫々延びている。これらの取付部26,27は、フロアフレーム3の下壁部にボルトbを介して夫々締結固定されている。左右1対の取付部28は、フロントフレーム22のロアパネルから前側に夫々延びている。これら取付部28は、フロントパネル2aの前側部分下面にボルトbを介して締結固定されている。取付部29は、リヤフレーム23のロアパネル中央部から上方に延び、上端部が、リヤパネル2bと協働して左右に延びる閉断面を形成するクロスメンバ(図示略)にボルトbを介して締結固定されている。
【0028】
図3〜
図5に示すように、バッテリトレイ24は、各フレーム21〜23の上壁部に載置された状態で強固に溶接固定されている。それ故、バッテリトレイ24の上下方向の曲げ挙動は、各フレーム21〜23の上下方向の曲げ挙動と略同じ挙動と見做すことができる。バッテリトレイ24とバッテリモジュール11との間には、冷却用配管(図示略)を間に介して板状のゴム部材(図示略)が配設されている。これにより、バッテリトレイ24とバッテリモジュール11との間隔が、相対変位可能に構成されている。
【0029】
バッテリトレイ24は、断面略ハット状の第1〜第3クロスフレーム31〜33によってバッテリモジュール11を収容する第1〜第3収容領域(バッテリ収容領域)S1〜S3を区分している。第3,第1クロスフレーム33,31が、フロントパネル2aの前部下方(前席乗員用シート)に対応した第1収容領域S1の前後範囲を区画し、第1,第2クロスフレーム31,32が、フロントパネル2aの後部下方に対応した第2収容領域S2の前後範囲を区画し、第2クロスフレーム32とリヤフレーム23が、キックアップパネル2c及びリヤパネル2bの下方に対応した第3収容領域S3の前後範囲を区画している。第1,第2収容領域S1,S2は、4個のバッテリモジュール11を左右に整列させて単層状態で夫々収容している。
【0030】
第3収容領域S3は、2段支持機構40を有し、4個のバッテリモジュール11を左右に整列すると共にこれらのバッテリモジュール11の上側に4個のバッテリモジュール11を左右に整列させた2層状態で8個のバッテリモジュール11を収容している。
図4〜
図6に示すように、2段支持機構40は、略π状の前支持部41と、略π状の後支持部42と、前支持部41の左右端部と後支持部42の左右端部とを夫々連結する左右1対の略T字状の側支持部43と、各支持部41〜43に掛け渡された底板部材44等を備え、上段の4個のバッテリモジュール11を支持している。前支持部41の左右1対の脚部は、第2クロスフレーム32の上壁部に締結固定され、後支持部42の左右1対の脚部は、左右に延びる後側支持部35の上壁部に締結固定されている。
【0031】
図6,
図8に示すように、後側支持部35は、断面略L字状に形成されている。この後側支持部35は、上壁部の後端部がリヤフレーム23の前壁部に接続されると共に前壁部の下端部がバッテリトレイ24に接続され、リヤフレーム23及びバッテリトレイ24と協働して左右に延びる閉断面を形成している。1対の側支持部43の脚部は、バッテリトレイ24上に締結固定されている。
【0032】
第1〜第3クロスフレーム31〜33は、バッテリトレイ24の上側にバッテリトレイ24と協働して左右に延びる閉断面を夫々形成している。これら第1〜第3クロスフレーム31〜33は、サイドフレーム21と略同じ上下方向の曲げ剛性になるよう構成され、前後方向に略等間隔になるように配設されている。
【0033】
図4〜
図6に示すように、第1クロスフレーム31は、上壁部の左右両端部から車幅方向外側に夫々延びる上壁連結部31aと、前壁部及び後壁部の左右両端部から前方及び後方に夫々延びる前後1対の側壁連結部31bとが形成されている。上壁連結部31aは、サイドフレーム21の上壁部に接続され、1対の側壁連結部31bは、サイドフレーム21の内側壁部に夫々接続されている。これら上壁連結部31aと1対の側壁連結部31bは、一体的に連なるように連続形成されている。第3クロスフレーム33は、上壁部の左右両端部から車幅方向外側に夫々延びる上壁連結部33aと、前壁部及び後壁部の左右両端部から前方及び後方に夫々延びる前後1対の側壁連結部33bとが形成されている。上壁連結部33aは、サイドフレーム21の上壁部に接続され、1対の側壁連結部33bは、サイドフレーム21の内側壁部に夫々接続されている。これら上壁連結部33aと1対の側壁連結部33bは、独立して分離形成されている。
【0034】
第2クロスフレーム32は、上壁部の左右両端部から車幅方向外側に夫々延びる上壁連結部32aと、前壁部及び後壁部の左右両端部から前方及び後方に夫々延びる前後1対の側壁連結部32bとが形成されている。上壁連結部32aは、サイドフレーム21の上壁部に接続され、1対の側壁連結部32bは、サイドフレーム21の内側壁部に夫々接続されている。これら上壁連結部33aと1対の側壁連結部33bは、一体的に連なるように連続形成されている。
図1,
図6〜
図8に示すように、バッテリトレイ24の下面に左右に延びる下側クロスフレーム34が設けられている。下側クロスフレーム34は、バッテリトレイ24の下側にバッテリトレイ24と協働して左右に延びる閉断面を夫々形成している。下側クロスフレーム34が形成する閉断面は、第2クロスフレーム32が形成する閉断面とバッテリトレイ24を挟んで上下に隣接している。
【0035】
各バッテリモジュール11は、板金製の前後1対の取付ブラケット51〜53を介して第1〜第3クロスフレーム31〜33及び後側支持部35に夫々取り付けられている。
取付ブラケット51〜53の上下方向の曲げ剛性は、バッテリトレイ24の上下方向の曲げ剛性よりも高く且つ第1〜第3クロスフレーム31〜33及び後側支持部35の上下方向の曲げ剛性よりも低くなるように設定されている。
【0036】
図9に示すように、取付ブラケット51〜53は、上下に延びてバッテリモジュール11に連結される連結壁部51a〜53aと、前後に延びて締結部材を介して締結される固定壁部51b〜53bとを備え、断面略L字状に形成されている。バッテリモジュール11の前側に取り付けられる取付ブラケットの連結壁部51a,53aが、左右に隣り合う2つのバッテリモジュール11の前壁部に4本のボルトを介して夫々連結され、バッテリモジュール11の後側に取り付けられる取付ブラケットの連結壁部52a,53aが、左右に隣り合う2つのバッテリモジュール11の後壁部に4本のボルトを介して夫々連結される。
【0037】
図4,
図5,
図8に示すように、取付ブラケットの連結壁部51a〜53aは、第1,第2収容領域S1,S2及び第3収容領域S3に収容された下段のバッテリモジュール11の重心Gが前後に延びる延長線L1上に位置するように夫々支持している。
また、
図8に示すように、第1〜第3クロスフレーム31〜33及び後側支持部35の上壁部は、側面視にて延長線L2上に位置するように形成されている。延長線L1と延長線L2は、側面視にて略同じ高さ位置になるように構成されている。
【0038】
第1収容領域S1には、第3クロスフレーム33に固定された左右1対の第1取付ブラケット51と、第1クロスフレーム31に固定された左右1対の第2取付ブラケット52とが配置されている。
図9(a)に示すように、第1取付ブラケット51は、例えば、1.6mmの鋼板をプレス加工して成形され、連結壁部51aと、固定壁部51bとを備えている。固定壁部51bは、左側端部に前方(屈曲部と反対方向)に延びる締結部51sが形成され、固定壁部51bの中央部と左側端部との中間よりも僅かに中央部寄り部分に前方に延びる位置決め部51pが形成され、固定壁部51bの中央部に対して位置決め部51pと対称部分に前方に延びる締結部51tが形成されている。
【0039】
固定壁部51bは、屈曲部から前方に延設され、締結部51sと締結部51tがボルトを介して第3クロスフレーム33の上壁部に固定されている。連結壁部51aは、第3クロスフレーム33の上壁部から張り出した片持ち状態で支持されている。尚、助手席下方に対応した左側第1取付ブラケット51では、車幅方向外側の締結部51sにて位置決めし、車幅方向内側の位置決め部51pにて締結固定している(
図4参照)。
【0040】
図9(b)に示すように、第2取付ブラケット52は、例えば、1.6mmの鋼板をプレス加工して成形され、連結壁部52aと、固定壁部52bとを備えている。固定壁部52bは、右側端部に後方に延びる締結部52sが形成され、左側端部に後方に延びる締結部52tが形成され、固定壁部52bの中央部分に後方に延びる締結部52uが形成され、締結部52sと締結部52uとの中央部分に後方に延びる位置決め部52pが形成されている。固定壁部52bは、屈曲部から後方に延設され、締結部52sと締結部52tと締結部52uがボルトを介して第1クロスフレーム31の上壁部に固定されている。連結壁部52aは、第1クロスフレーム31の上壁部から張り出した片持ち状態で支持されている。
【0041】
第2収容領域S2には、第1クロスフレーム31に固定された左右1対の第3取付ブラケット53と、第2クロスフレーム32に固定された左右1対の第3取付ブラケット53とが配置されている。
図9(c)に示すように、第1クロスフレーム31に固定された右側の第3取付ブラケット53は、例えば、2.0mmの鋼板をプレス加工して成形され、連結壁部53aと、固定壁部53bとを備えている。固定壁部53bは、左側端部に前方に延びる位置決め部53pが形成され、固定壁部53bの中央部と左側端部との中央部分に前方に延びる締結部53sが形成され、左側端部に前方に延びる締結部53tが形成されている。
【0042】
固定壁部53bは、屈曲部から前方に延設され、ボルトを介して第1クロスフレーム31の上壁部に固定されている。連結壁部53aは、第1クロスフレーム31の上壁部から張り出した片持ち状態で支持されている。第1クロスフレーム31に片持ち状態で固定された左側の第3取付ブラケット53及び第2クロスフレーム32に片持ち状態で固定された左右1対の第3取付ブラケット53も配置位置を除き同様に構成されている。
【0043】
第3収容領域S3の下段には、第2クロスフレーム32に片持ち状態で固定された左右1対の第3取付ブラケット53と、後側支持部35に片持ち状態で固定された左右1対の第3取付ブラケット53とが第2収容領域S2と同様に配置されている。更に、第3収容領域S3の上段には、前支持部41に片持ち状態で固定された左右1対の第3取付ブラケット53と、後支持部42に片持ち状態で固定された左右1対の第3取付ブラケット53とが下段と同様に配置されている。第1〜第3取付ブラケット51〜53は、板厚、締結部位置、及び位置決め部位置を除いて略同様の仕様に設定されている。
【0044】
ここで、走行騒音に関して、フレーム剛性とモジュール支持剛性との関係について説明する。本発明者は、車両Vのバッテリケース12に係る評価モデルを作成した上で、フレーム剛性とモジュール支持剛性との剛性比率を変化させながら基準騒音レベルに対する走行騒音についてCAE解析を行った。尚、フレーム剛性は、フロアフレーム3と同じ挙動を示すサイドフレーム21の上下方向の曲げ剛性と見做し、モジュール支持剛性は、第3クロスフレーム33の上下方向の曲げ剛性と取付ブラケットの上下方向の曲げ剛性との総和の剛性と見做している。
【0045】
図10(a)に示すように、この解析の評価モデルは、1対のサイドフレーム21の前端部及び後端部の各々の下側四隅を支持している。
図10(b)の矢印に示すように、フレーム剛性を測定するに当たり、サイドフレーム21の最大振幅位置に所定の測定荷重を上方から付与した。以上を踏まえ、フレーム剛性は、フロアフレーム3と略同じ挙動を示すサイドフレーム21の上下方向の曲げ剛性(N/mm)と定義している。また、第3収容領域S3は、2層で8個のバッテリモジュール11を収容している高剛性の2段支持機構40が配設されているため、単層2列で8個のバッテリモジュール11を収容する第1,第2収容領域S1,S2に比べて剛性が高い。それ故、この評価モデルでは、車両Vの走行騒音に与える影響が大きい第1,第2収容領域S1,S2の中間地点(サイドフレーム21と第1クロスフレーム31との連結位置)がサイドフレーム21の最大振幅位置に相当している。
【0046】
モジュール支持剛性は、正面視にて、取付ブラケット51の上下方向の曲げ剛性(N/mm)と定義している。第1,第2収容領域S1,S2では、単層で8個のバッテリモジュール11が、取付ブラケット51〜53を介して第1〜第3クロスフレーム31〜33に支持されている。第1〜第3クロスフレーム31〜33は、取付ブラケット51〜53に比べて高剛性部材であるため、モジュール支持剛性は、取付ブラケット51の上下方向の曲げ剛性と見做すことができる。
図11(a)に示すように、取付ブラケット51に連結される連結壁部51aは、第3クロスフレーム33の上壁部から張り出した片持ち状態で支持されているため、
図11(b)の矢印に示すように、連結壁部51aの上下方向の変位量を用いて取付ブラケット51の上下方向の曲げ剛性、換言すれば、モジュール支持剛性が求められる。尚、取付ブラケット52,53についても同様である。
【0047】
解析結果を
図12に示す。横軸は、フレーム剛性、縦軸は、モジュール支持剛性である。
図12に示すように、この解析結果から、モジュール支持剛性が略1000N/mmよりも低い領域において、騒音性能が良い領域(基準騒音レベルよりも騒音レベルが低い領域)と騒音性能が悪い領域(基準騒音レベルよりも騒音レベルが高い領域)の境界線が1次関数特性を示すこと、略4000N/mmの境界線よりも高いフレーム剛性領域において、騒音性能が悪くなることが知見された。即ち、フレーム剛性が高い程、騒音レベルは改善されるが、サイドフレーム21の板厚が増加し、車体重量増加の点において問題があるため、フレーム剛性が略4000N/mm以下且つモジュール支持剛性が略1000N/mm以下の領域、換言すれば、フレーム剛性が略4000N/mm以下で且つ上下方向のモジュール支持剛性(取付ブラケット51の上下方向の曲げ剛性)がサイドフレーム21の上下方向の曲げ剛性に対して25%以下の領域に各々の剛性を調整することで、車体重量を増加することなく走行騒音を良好にできることが確認された。
【0048】
つまり、上下方向のモジュール支持剛性が高い場合、
図13の点線に示すように、バッテリモジュール11の上下運動とサイドフレーム21の上下運動とが共振してドラミングノイズ等の走行騒音の発生原因となる。これに対して、上下方向のモジュール支持剛性がサイドフレーム21の上下方向の曲げ剛性に対して25%以下の場合、
図13の一点鎖線に示すように、バッテリモジュール11の運動量(振動周期)が、サイドフレーム21の運動量から独立して大きくなり、所謂二重防振機構(二重ばね)を構成している。
これにより、バッテリモジュール11の上下運動と第3クロスフレーム33の上下運動との共振を回避することができる。サイドフレーム21に連なる第3クロスフレーム33(バッテリトレイ24)の上下運動とバッテリモジュール11の上下運動とを分離して、バッテリモジュール11の運動に指向性(上下移動を許容し且つ左右移動を規制する)をもたせることにより車体とバッテリユニット10との上下方向の共振を抑制している。
【0049】
以上のことから、本実施例においては、各取付ブラケット51〜53の固定壁部51b〜53bが固定対象となるバッテリモジュール11と反対方向に夫々延設され、この固定壁部51b〜53bから屈曲部と反対方向に延設された各々の締結部にて固定されているため、各々の締結部を支点として各取付ブラケット51〜53の上下運動のみが許容されている。それ故、クロスフレーム31〜33の上下方向の曲げ剛性の低下を必要とすることなく、クロスフレームの上下方向の曲げ剛性と取付ブラケットの上下方向の曲げ剛性とからなるモジュール支持剛性を低下させている。
【0050】
次に、上記バッテリユニット取付構造の作用、効果について説明する。
作用、効果の説明に当り、CAE(Computer Aided Engineering)によるシミュレーション解析を行った。バッテリユニットを搭載していない車両モデルA(評価基準モデル)と、本実施例の車両モデルCとを作成し、モデルA,Cについて各周波数帯域における車体振動を夫々算出した。尚、車両モデルAと車両モデルCは、バッテリユニットを除いて略同一仕様である。また、車体振動の評価指標として、放射される音響パワーに対応する等価放射エネルギ(ERP:Equivalent Radiation Energy)を各々のモデルの各節点の変位から算出している。
【0051】
図14に、解析結果を示す。横軸は、周波数、縦軸は、車体振動を示している。
図14に示すように、一点鎖線で示すモデルCは、低周波領域において、実線で示すモデルAよりも車体振動が低いことが確認された。特に、モデルCは、ドラミングノイズの原因となる約40Hz前後の周波数帯域において、車体振動を抑えることができ、ドラミングノイズ性能を格段に向上している。
【0052】
実施例1に係るバッテリユニット取付構造によれば、バッテリユニット10が、バッテリモジュール11と、1対のフロアフレーム3に対する取付部26,27を有すると共に前後に延びる左右1対のサイドフレーム21と、少なくとも1対のサイドフレーム21に支持されると共にバッテリユニット10の底部を形成するバッテリトレイ24と、1対のサイドフレーム21の間を連結する第1〜第3クロスフレーム31〜33とを備えたため、バッテリユニット10の軽量化を図りつつ、バッテリユニット10の1対のサイドフレーム21を1対のフロアフレーム3に対して強固に連結することができる。
バッテリモジュール10をバッテリトレイ24に対して上下方向変位可能に第1〜第3クロスフレーム31〜33に取り付けたため、サイドフレーム21に支持されたバッテリトレイ24の上下運動とバッテリモジュール11の上下運動とを分離する、所謂バッテリモジュール10の運動に指向性をもたせることができ、車体とバッテリユニット10との上下方向の共振を抑制することができる。
【0053】
第1〜第3クロスフレーム31〜33が、バッテリトレイ24の上側にバッテリトレイ24と協働して閉断面を形成するように構成され、上下方向に延びてバッテリモジュール10に連結される連結壁部51a〜53aと、連結壁部51a〜53aの下端部からバッテリモジュール11と反対方向に延びると共に第1〜第3クロスフレーム31〜33の上壁部に固定される固定壁部51b〜53bとを有する第1〜第3取付ブラケット51〜53を設け、第1〜第3取付ブラケット51〜53が、バッテリモジュール11の重心Gの高さ位置(L1)と第1〜第3クロスフレーム31〜33及び後側支持部35の上壁部の高さ位置(L2)が略同じ高さ位置になるようにバッテリモジュール11に連結されている。これにより、簡単な構成でバッテリモジュール11の取付剛性を確保できると共に、第1〜第3クロスフレーム31〜33の車幅方向運動とバッテリモジュール11の車幅方向運動を同期させつつ第1〜第3クロスフレーム31〜33の上下運動とバッテリモジュール11の上下運動とを分離することができる。
【0054】
バッテリユニット10が、バッテリモジュール11の長軸がサイドフレーム21に沿うようにバッテリモジュール11を収容すると共に第1〜第3クロスフレーム31〜33によって区切られた3つの第1〜第3収容領域S1〜S3を有し、第1,第2クロスフレーム31,32が、第1,第2クロスフレーム31,32を間に挟む第1〜第3収容領域S1〜S3に配置されたバッテリモジュール11が取り付けられている。これにより、第1,第2クロスフレーム31,32を異なる第1〜第3収容領域S1〜S3に配置されたバッテリモジュール11の支持に共用することができ、クロスフレームの数を低減することができる。
【0055】
クロスフレームが、バッテリモジュール11を単層状態で収容する第1,第2収容領域S1,S2の間に挟まれた第1クロスフレーム31と、第2収容領域S2とバッテリモジュール11を上下2段配置した2層状態で収容する第3収容領域S3との間に挟まれた第2クロスフレーム32とを含み、第2クロスフレーム32とバッテリトレイ24とが協働して形成する閉断面とバッテリトレイ24を挟んで上下方向に隣接する閉断面をバッテリトレイ24と協働して形成する下側クロスフレーム34を設けている。これにより、大重量が入力する第2クロスフレーム32をバッテリトレイ24内部に影響を与えることなく補強することができる。
【0056】
クロスフレームが、第1クロスフレーム31に対して第2クロスフレーム32と反対側に形成され且つ第1クロスフレーム31との間のみに第1収容領域S1を形成する第3クロスフレーム33を含み、第2クロスフレーム32の上壁部をサイドフレーム21の上壁部に連結する第1上壁連結部32aと第2クロスフレーム32の側壁部をサイドフレーム21の側壁部に連結する第1側壁連結部31bとが一体的に連続形成され、第3クロスフレーム33の上壁部33aをサイドフレーム213の上壁部に連結する第2上壁連結部33aと第3クロスフレーム33の側壁部をサイドフレーム21の側壁部に連結する第2側壁連結部33bとが独立に分離形成されている。
これにより、大重量が入力する第2クロスフレーム32とサイドフレーム21との接続部分を強固にすると共に大重量が入力しない第3クロスフレーム33とサイドフレーム21との接続部分を簡易的にすることで、重量軽減と生産性向上を図ることができる。
【0057】
第1〜第3収容領域S1〜S3は、バッテリモジュール11を複数収容するように構成され、第1〜第3取付ブラケット51〜53は、左右1対のバッテリモジュール11を第1〜第3クロスフレーム31〜33に対して取り付けるため、第1〜第3取付ブラケット51〜53を複数のバッテリモジュール11の支持に共用することができ、第1〜第3取付ブラケット51〜53の数を低減することができる。
【0058】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、第1〜第3収容領域S1〜S3と第1〜第3クロスフレーム31〜33とを設けたバッテリケース12の例を説明したが、少なくともバッテリモジュール11に上下方向運動を許容し、左右方向の運動を制限する指向性を与えることができれば良く、単一の収容領域と単一のクロスフレームとを備えたバッテリケース12であっても良い。
【0059】
2〕前記実施形態においては、3種類の第1〜第3取付ブラケット51〜53の例を説明したが、単一の取付ブラケットでも良い。また、クロスフレームに左右1対の取付ブラケットを設けた例を説明したが、単一のクロスフレームに1或いは3以上の取付ブラケットを設けても良く、また、単一の取付ブラケットに1或いは3以上のバッテリモジュールを取り付けても良い。
【0060】
3〕前記実施形態においては、バッテリモジュール11の重心Gの高さ位置(L1)と第1〜第3クロスフレーム31〜33及び後側支持部35の上壁部の高さ位置(L2)が略同じ高さ位置に構成された例を説明したが、少なくとも、連結壁部51a〜53aがバッテリモジュール11に密着する密着部下端がバッテリモジュール11の重心Gの高さ位置と略同じ高さ位置に設定されれば、本発明の効果を奏することができる。即ち、本発明は、バッテリモジュール11の重心の高さ位置が、第1〜第3クロスフレーム31〜33の上壁部の高さ位置と連結壁部51a〜53aがバッテリモジュール11に密着する密着部下端との間に配設された構成を含むものである。
【0061】
4〕前記実施形態においては、バッテリモジュール11をクロスフレーム31〜33及び後側支持部35に取り付け、バッテリトレイ24に対して上下方向変位可能になるようにバッテリトレイ24とバッテリモジュール11の間に板状ゴム部材を配設した例を説明したが、少なくとも、バッテリモジュール11が上下方向変位可能であれば良く、バッテリトレイ24とバッテリモジュール11の間に所定の間隔を設けても良い。
【0062】
5〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。