【実施例】
【0033】
実施例1
(単層カーボンナノチューブの水性分散液の調製)
単層カーボンナノチューブ(「Tuball」(商品名)、OCSiAL社製)を準備した。このCNTは半導体型CNT及び金属型CNTを含有し、両者の含有割合は、重量比で約5/3である。
水100mLに対して、0.05gの単層カーボンナノチューブと、0.25gのデオキシコール酸ナトリウム(関東化学社製)とを添加した混合物を調製した。この混合物を高圧ホモゲナイザー(型番ナノベーターNanoVater、吉田機械興業社製)に投入し、均質化したCNTの水性分散液(CNT水分散液)を調製した。
【0034】
(均質化CNT水分散液からの半導体型CNTの液−液分離)
250mLのメスシリンダー(直径4cm)に、15重量/容量%のデオキシコール酸ナトリウム(関東化学社製)を水に溶かして調製した分散媒を180ml充填した。
分散媒を撹拌しないように、先に調製したCNT水分散液を分散媒の水面上に載置し、アルミホイルで開口に蓋をして、室温で24時間静置した。右から左に向かって、時系列で並べた、液−液分離の過程を
図2に示す。一番右側のメスシリンダーは、水性分散液を載置した直後の写真であり、分散媒は透明であり、沈降層はまだ存在しない。一番左が、水性分散液の載置から24時間後の写真であり、浮上層と沈降層とが分離されていた。
このときに形成された浮上層をデカンテーションにより取り出し、10重量/容量%のデオキシコール酸ナトリウムの水性分散媒の水面上に載置し、24時間静置後、浮上層を得た。
同様にして、このときに形成された浮上層を、5重量/容量%のデオキシコール酸ナトリウムの水性分散媒の水面上に載置し、24時間静置後、浮上層を得た。
この実施例では、浮上層を取り出してから新たな水性分散媒に投入したが、浮上層、分散媒層および沈降層の3層の状態で、浮上層と沈降層とが混和しないように分散媒層のみを交換する手法を用いることができる。
【0035】
3回の液−液分離後に得られた最終的な浮上層の一部をスパチュラでひとかき分取出し、スライドガラスの上に載せ、自然乾燥させた。乾固したCNT結晶につき、室温にてUV-Vis-NRI分光分析測定を行った。
【0036】
UV-Vis-NRI分光分析測定を
図3aに示す。浮上層から取り出した混合物のスペクトルは1000nmに主ピークを有する。このことから、浮上層には半導体型CNTが含まれていることが分かった。
【0037】
UV-Vis-NRI分光分析測定により、浮上層における半導体型CNTの純度が90%を超えていなければ、再度液−液分離を行うか、または、CNT水性分散液の調製工程にリサイクルする。
また、沈降層は、別途、CNT水性分散液の調製工程にリサイクルする。
【0038】
(半導体型CNTの精製)
3度の液−液分離工程を経て得られた浮上層には半導体型CNTとデオキシコール酸ナトリウムとが混在しているため、デオキシコール酸ナトリウムを除去して、半導体型CNTを精製する。
【0039】
UV-Vis-NRI分光分析測定および抵抗値測定により、半導体型CNTの純度が90%以上になったことを確認して、浮上層を取り出して、吸引ビンに取り付けたガラスフィルター上に移した。洗浄や回収の作業性を考慮して、ガラスフィルター上にろ紙を搭載してもよい。
【0040】
まず、半導体型CNTを含有する浮上層にエチルアルコールを添加して、凝集させたあと、吸引ろ過した。残渣をエタノール/水の混合溶媒にて3回洗浄した。各洗浄後のろ液を真空乾燥して、ガラス面にデオキシコール酸ナトリウムの結晶が析出しないことを確認する。析出が目視できなくなった時点で、半導体型CNTが精製されたとみなした。
【0041】
最終的に、エタノールを添加して完全に溶媒置換する。溶媒置換後、1時間静置し、ガラスフィルターにて、CNTをろ取し、その後、風乾して、半導体型CNTを得た。
【0042】
抵抗値の温度依存性を測定する手法の概略図を
図4に示す。深さ1mmの浅い溝が長手方向に沿って形成された溝付きガラスプレート(26mm×76mm)に、測定対象(ガラスフィルター上で洗浄されたCNT水分散液)を滴下し、乾燥させる。前記溝付きガラスプレートの上に溝のないフラットなガラスプレートを重ねる。そして、2枚重ねのガラスプレートを電熱器上に搭載し、20℃から80℃までの温度範囲で、加熱する。2枚のガラスプレートの端部から露出するCNT水分散液の乾燥体の両端に抵抗測定器の端子を接触させて、抵抗値を測定する。
【0043】
得られた高純度の半導体型CNTの各温度における抵抗値を表1にまとめ、抵抗値の温度依存性を示すグラフを
図5aに示す。温度が上昇するに従って抵抗値が低下することが示され、本発明の分離精製方法により、高純度の半導体型CNTが得られたことが確認された。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例2〜4
実施例1において、デオキシコール酸ナトリウムの代わりに、n−オクチル−β−D−グルコピラノシド、n−ドデシル−β−D−マルトピラノシドまたはトリトンXを用いる以外は、実施例1と同様にして、半導体型CNTの分離を行った。
【0046】
デオキシコール酸ナトリウム、n−オクチル−β−D−グルコピラノシド、n−ドデシル−β−D−マルトピラノシドまたはトリトンXよりなる群から選択される第1の分子を用いて液−液分離を行ったところ、いずれも、高い純度で半導体型CNTを得ることができた。
【0047】
実施例5
(単層カーボンナノチューブの水性分散液の調製)
単層カーボンナノチューブ(「Tuball」(商品名)、OCSiAL社製)を準備した。このCNTは半導体型CNT及び金属型CNTを含有し、両者の含有割合は、重量比で約5/3である。
水100mLに対して、0.05gの単層カーボンナノチューブと、0.25gのデオキシコール酸ナトリウム(関東化学社製)とを添加した混合物を調製した。この混合物を高圧ホモゲナイザー(型番ナノベーターNanoVater、吉田機械興業社製)に投入し、均質化したCNTの水性分散液(CNT水分散液)を調製した。
【0048】
(均質化CNTからの金属型CNTの液−液分離)
250mLのメスシリンダー(直径4cm)に、15重量/容量%のコール酸ナトリウム(関東化学社製)を水に溶かして調製した水性分散媒を180ml充填した。
分散媒を撹拌しないように、先に調製したCNT水性分散液を分散媒の水面上に載置し、アルミホイルで開口に蓋をして、室温で24時間静置した。水性分散液の載置から24時間後、浮上層と沈降層とが分離されていた。
このときに形成された沈降層を取り出し、10重量/容量%のコール酸ナトリウムの水性分散媒の水面上に載置し、24時間静置後、沈降層を得た。
同様にして、このときに形成された沈降層を、5重量/容量%のコール酸ナトリウムの水性分散媒の水面上に載置し、24時間静置後、沈降層を得た。
この実施例では、沈降層を取り出してから新たな分散媒に投入したが、浮上層、分散媒層および沈降層の3層の状態で、浮上層と沈降層とが混和しないように分散媒層のみを交換する手法を用いることができる。
【0049】
3回の液−液分離後に得られた最終的な沈降層の一部をスパチュラでひとかき分ずつ取出し、スライドガラスの上に載せ、自然乾燥させた。乾固したCNT結晶につき、室温にてUV-Vis-NRI分光分析測定を行った。
【0050】
実施例1と同様に、UV-Vis-NRI分光分析測定を
図3bに示す。沈降層から取り出した混合物のスペクトル(700nmに主ピークを有する。このことから、沈降層には、金属型CNTが含まれていることが分かった。
【0051】
UV-Vis-NRI分光分析測定により、沈降層における金属型CNTの純度が90%を超えていなければ、再度液−液分離を行うか、または、CNT水性分散液の調製工程にリサイクルする。
また、浮上層は、別途、CNT水性分散液の調製工程にリサイクルする。
【0052】
(金属型CNTの精製)
3度の液−液分離工程を経て得られた沈降層には金属型CNTとコール酸ナトリウムと混在しているため、コール酸ナトリウムを除去して、金属型CNTを精製する。
【0053】
UV-Vis-NRI分光分析測定および抵抗値測定により、金属型CNTの純度が90%以上になったことを確認して、沈降層を取り出して、吸引ビンに取り付けたガラスフィルター上に移した。洗浄や回収の作業性を考慮して、ガラスフィルター上にろ紙を搭載してもよい。
【0054】
実施例1と同様にして、エタノール/水の混合溶媒にて3回洗浄し、ろ液からコール酸ナトリウムの結晶が析出しないことを確認し、析出が目視できなくなった時点で、半導体型CNTが精製されたとみなした。
【0055】
最終的に、エタノールを添加して完全に溶媒置換する。溶媒置換後、1時間静置し、ガラスフィルターにて、CNTをろ取し、その後、風乾して、金属型CNTを得た。
【0056】
得られた高純度の金属型CNTの各温度における抵抗値を表2にまとめ、抵抗値の温度依存性を示すグラフを
図5bに示す。温度が上昇するに従って抵抗値が上昇することが示され、本発明の分離精製方法により、高純度の金属型CNTが得られたことが確認された。
【0057】
実施例1と同様にして、得られた高純度の金属型CNTの各温度における抵抗値を表2にまとめ、抵抗値の温度依存性を示すグラフを
図5bに示す。温度が上昇するに従って抵抗値が上昇することが示され、本発明の分離精製方法により、高純度の金属型CNTが得られたことが確認された。
【0058】
【表2】
【0059】
実施例6〜8
実施例5において、コール酸ナトリウムの代わりに、キチナーゼ、リゾチームまたはリパーゼを用いる以外は、実施例5と同様にして、金属型CNTの分離を行った。
【0060】
コール酸ナトリウム、キチナーゼ、リゾチームまたはリパーゼよりなる群から選択される第2の分子を用いて液−液分離を行ったところ、いずれも、高い純度で金属型CNTを得ることができた。