【解決手段】N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、5−メチル−3−ビニル−2−オキサゾリジノン、N−ビニルカルバゾール及びN−ビニルフタルイミドからなる群から選ばれるN−ビニル化合物(A)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(B1)及び/又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(B2)である化合物(B)と、(メタ)アクリル酸と炭素数2〜30のアルコールとのモノエステル化物(C1)及び/又は(メタ)アクリル酸と炭素数5〜30のモノアミンとのモノアミド化物(C2)である化合物(C)と、多官能アクリレート(D)と、光重合開始剤(E)とを含有する活性エネルギー線硬化性組成物。
N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、5−メチル−3−ビニル−2−オキサゾリジノン、N−ビニルカルバゾール及びN−ビニルフタルイミドからなる群から選ばれるN−ビニル化合物(A)と、
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(B1)及び/又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(B2)である化合物(B)と、
(メタ)アクリル酸と炭素数2〜30のアルコールとのモノエステル化物(C1)及び/又は(メタ)アクリル酸と炭素数5〜30のモノアミンとのモノアミド化物(C2)である化合物(C)と、
多官能アクリレート(D)と、
光重合開始剤(E)とを含有する活性エネルギー線硬化性組成物であって、
(A)〜(D)の合計重量に基づいて、(A)を2.5〜25重量%、(C)を10〜50重量%、及び(D)を25〜70重量%含有する活性エネルギー線硬化性組成物。
前記N−ビニル化合物(A)が、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド及び5−メチル−3−ビニル−2−オキサゾリジノンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の硬化性組成物。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードコート塗膜を保護層にしたプラスチックフィルムを表面に設けた液晶ディスプレイ(LCD)及びタッチパネルディスプレイ等の表示装置、並びにLCD中の偏光子、光ファイバ及び光ディスク等の電子素子が知られており、ハードコート塗膜が表面の傷付き防止及び粉塵付着防止等の表面保護目的に使用されている。近年、スマートフォン及びタブレット端末等、指及びペン等で画面に直接触れて操作するタッチパネルを備えた電子機器の普及が著しく、このような機器ではタッチパネル表面のさらなる硬度向上が求められている。
【0003】
また硬度向上の一方で、LED光源を用いた紫外線照射装置でも硬化できる硬化性組成物の需要が高まっている。LED光源を用いた紫外線照射装置は、低消費電力であり、かつオゾンの発生も少ない。よってランニングコスト及び自然環境への影響を小さくできる利点がある。
【0004】
しかし、LED光源は単一波長であることから、広域波長の紫外線を発する高圧水銀灯、超高圧水銀灯及びメタルハライドランプ等の紫外線ランプ光源と比較して紫外線エネルギーの総量が小さく、光重合開始剤から生成するラジカルの発生量が少ない為に従来の硬化性組成物では硬化性が低下し、硬化後の樹脂強度が低下してしまう。
そこで、硬化性組成物にはLED光源のようなエネルギーの総量が小さい場合でも、硬化性が発現できるような、高い硬化性が求められている。
【0005】
一般にハードコート塗膜の表面保護機能を高める方策として、硬度の高い無機フィラーを硬化性組成物中へ配合し、ハードコート層とする手法が知られている(例えば特許文献1)。しかしながらこの組成物ではLED光源を用いた場合に硬化性が不十分であり、硬度が低い場合がある。
また、硬化性を向上させる組成物としては、アクリレートを主成分とするモノマー又はオリゴマーとチオール基を2つ以上有するポリチオール化合物を5〜50重量%含有するハードコート塗液が知られている(例えば特許文献2)。しかしながらこの組成物では貯蔵安定性が不十分であるために室温で保管中に増粘してしまう場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の硬化性組成物は、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、5−メチル−3−ビニル−2−オキサゾリジノン、N−ビニルカルバゾール及びN−ビニルフタルイミドからなる群から選ばれるN−ビニル化合物(A)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(B1)及び/又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(B2)である化合物(B)と、(メタ)アクリル酸と炭素数2〜30のアルコールとのモノエステル化物(C1)及び/又は(メタ)アクリル酸と炭素数5〜30のモノアミンとのモノアミド化物(C2)である化合物(C)と、多官能アクリレート(D)と、光重合開始剤(E)とを含有する活性エネルギー線硬化性組成物である。
【0011】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート及び/又はメタクリレート」を、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基」を、「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは「アクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基」を意味する。
【0012】
本発明におけるN−ビニル化合物(A)としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、5−メチル−3−ビニル−2−オキサゾリジノン、N−ビニルカルバゾール及びN−ビニルフタルイミド等が挙げられる。
これらのうち、硬化性の観点から好ましくは、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド及び5−メチル−3−ビニル−2−オキサゾリジノンであり、更に好ましくはN−ビニルピロリドン、N−ビニル化プロラクトン及び5−メチル−3−ビニル−2−オキサゾリジノンである。
前記のN−ビニル化合物(A)は、1種を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0013】
本発明における化合物(B)は、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(B1)及び/又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(B2)である。
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(B1)としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのうち、貯蔵安定性の観点から好ましくはジアルキルアミノアルキル基の炭素数が3〜10であるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートであり、更に好ましくはジアルキルアミノアルキル基の炭素数が3〜10であるジアルキルアミノアルキルアクリレートであり、特に好ましくはジメチルアミノエチルアクリレートである。
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(B1)は、1種を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0014】
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(B2)としては、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド及びジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
これらのうち、硬化性の観点から好ましくはジアルキルアミノアルキル基の炭素数が3〜10であるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドであり、更に好ましくはジアルキルアミノアルキル基の炭素数が3〜10であるジアルキルアミノアルキルアクリルアミドあり、特に好ましくはジメチルアミノプロピルアクリルアミドである。
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(B2)は、1種を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0015】
本発明における化合物(C)は、(メタ)アクリル酸と炭素数2〜30のアルコールとのモノエステル化物(C1)及び/又は(メタ)アクリル酸と炭素数5〜30のモノアミンとのモノアミド化物(C2)である。
(メタ)アクリル酸と炭素数2〜30のアルコールとのモノエステル化物(C1)としては、(メタ)アクリル酸と炭素数2〜30のアルコールとのモノエステル化物[イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、o−、m−又はp−フェニルフェノールのモノ(メタ)アクリレート及び3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルのモノ(メタ)アクリレート等]及び炭素数2〜30のアルコールのアルキレンオキサイド(アルキレン基の炭素数2〜4)1〜30モル付加物と(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物[ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等]等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸と炭素数2〜30のアルコールとのモノエステル化物(C1)のうち、硬化性の観点から好ましくはイソボルニル(メタ)アクリレートである。
【0016】
(メタ)アクリル酸と炭素数5〜30のモノアミンとのモノアミド化物(C2)としては、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、1,1,3,3−テトラメチルブチルアクリルアミド等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸と炭素数5〜30のモノアミンとのモノアミド化物(C1)のうち、硬化性の観点から好ましいのは、(メタ)アクリロイルモルフォリン及びジメチルアクリルアミドである。
【0017】
多官能アクリレート(D)としては、2官能(メタ)アクリレート(D1)、3官能(メタ)アクリレート(D2)、4〜6官能(メタ)アクリレート(D3)等が挙げられる。
【0018】
2官能(メタ)アクリレート(D1)としては、炭素数2〜30の多価(好ましくは2〜8価)アルコールと(メタ)アクリル酸とのジエステル化物[1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等]及び炭素数2〜30の多価(好ましくは2〜8価)アルコールのアルキレンオキサイド(アルキレン基の炭素数2〜4)1〜30モル付加物と(メタ)アクリル酸とのジエステル化物[ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート及びビスフェノールフルオレンのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等]等が挙げられる。
【0019】
(D1)のうち、硬度の観点から好ましいのは炭素数4〜10の2価アルコールと(メタ)アクリル酸とのジエステル化物[1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等]である。
【0020】
3官能(メタ)アクリレート(D2)としては、炭素数3〜30の3価以上(好ましくは3〜8価)アルコールと(メタ)アクリル酸とのトリエステル化物[グリセリンのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート等]、及び炭素数3〜30の3価以上(好ましくは3〜8価)のアルコールのアルキレンオキサイド(アルキレン基の炭素数2〜4)1〜30モル付加物と(メタ)アクリル酸とのトリエステル化物[トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート等]等が挙げられる。
【0021】
4〜6官能(メタ)アクリレート(D3)としては、炭素数5〜30の4価以上(好ましくは4〜8価)アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物[ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート等]、及び炭素数5〜30の4価以上(好ましくは4〜8価)のアルコールのアルキレンオキサイド(アルキレン基の炭素数2〜4)1〜30モル付加物と(メタ)アクリル酸とのエステル化物[ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド付加物のペンタ(メタ)アクリレート等]等が挙げられる。
【0022】
(D2)及び(D3)のうち、硬度の観点から好ましいのはトリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレートである。
【0023】
本発明におけるN−ビニル化合物(A)の含有量は、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、2.5〜25重量%であり、好ましくは5〜20重量%である。N−ビニル化合物(A)の含有量が、2.5重量%未満であると硬化性が不足するという問題があり、25重量%を超えるとホモ重合が遅いため硬化性が不足するという問題がある。
【0024】
本発明における化合物(B)の含有量は、貯蔵安定性の観点から、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、好ましくは0.01〜10重量%であり、更に好ましくは0.01〜5重量%であり、特に好ましくは0.01〜2重量%である。
【0025】
本発明における化合物(C)の含有量は、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、10〜50重量%であり、好ましくは20〜50重量%であり、更に好ましくは25〜45重量%である。化合物(C)の含有量が、10重量%未満であると密着性が不足し50重量%を超えると硬度が不足するという問題がある。
【0026】
本発明における多官能アクリレート(D)の含有量は、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、25〜70重量%であり、好ましくは30〜65重量%であり、更に好ましくは35〜60重量%である。多官能アクリレート(D)の含有量が、25重量%未満であると硬度が不足するという問題があり、70重量%を超えると密着性が不足するという問題がある。
【0027】
光重合開始剤(E)としては、ラジカル重合型の光重合開始剤が挙げられる。
具体的には、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン)、ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン及び2−イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
硬化性の観点から好ましくは2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン及び2−イソプロピルチオキサントンであり、更に好ましくは2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン及びビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドが挙げられる。
上記の光重合開始剤(E)は、1種を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
本発明における光重合開始剤(E)の含有量は、硬度の観点から、硬化性組成物の重量に基づいて、好ましくは3〜15重量%であり、更に好ましくは4〜13重量%であり、特に好ましくは5〜12重量%である。
【0029】
本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により種々の添加剤を含有させてもよい。
添加剤としては、可塑剤、有機溶剤、分散剤、消泡剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、スリップ性向上剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤及び紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0030】
本発明の硬化性組成物は、例えば、各発明の必須成分及び任意成分を、20〜80℃の温度範囲で、公知の機械的混合方法(例えばメカニカルスターラーやマグネティックスターラーを用いる方法)を用いることによって均一混合することで、製造することができる。
【0031】
本発明の硬化性組成物は、必要により溶剤(メチルエチルケトン等)で希釈して、基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布し、必要により乾燥させた後、活性エネルギー線(紫外線、電子線及びX線等)を照射して硬化させることにより、硬化膜を有するハードコート被覆物を得ることができる。
塗工に際しては、塗工機[バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(サイズプレスロールコーター及びゲートロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーター及びブレードコーター等]等が使用できる。
塗工膜厚は、硬化乾燥後の膜厚として、0.5〜300μmであることが好ましい。乾燥性、硬化性の観点から更に好ましい上限は250μmであり、硬度の観点から更に好ましい下限は1μmである。
【0032】
上記の基材としては、ガラス基材並びにメチルメタクリレート(共)重合物、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリトリアセチルセルロース及びポリシクロオレフィン等の樹脂を用いて構成されたもの等が挙げられる。
【0033】
本発明の硬化性組成物を溶剤で希釈して使用する場合は、塗工後に乾燥するのが好ましい。乾燥方法としては、熱風乾燥(ドライヤー等)等が挙げられる。
乾燥温度は、10〜200℃であることが好ましく、塗膜の平滑性及び外観の観点から更に好ましい上限は150℃であり、乾燥速度の観点から更に好ましい下限は30℃である。
【0034】
本発明における活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線及び可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のうち、硬化性及び樹脂劣化抑制の観点から好ましいのは紫外線及び電子線である。
【0035】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を紫外線により硬化させる場合は、LED光源紫外線照射装置[例えば、LED光源紫外線照射装置「FJ100 150×20 365、phoseon TECHNOLOGY(株)製」]が使用できる。
なお、LED光源は、その他の一般的な紫外線光源と比較して、低消費電力でオゾンの発生も少なく、ランニングコストも低く、環境負荷が少ない。
紫外線の照射量は、硬化性組成物の硬化性及び硬化物の可撓性の観点から50〜10,000mJ/cm
2であることが好ましく、更に好ましくは200〜5,000mJ/cm
2である。
なお、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、LED光源より広域波長の紫外線を発する高圧水銀灯、超高圧水銀灯及びメタルハライドランプ等の紫外線照射装置ももちろん適用でき、性能を発揮する。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
実施例1〜10及び比較例1〜9
表1に示す配合組成(重量部)で均一混合して、実施例1〜10の硬化性組成物及び比較例1〜9の比較用の硬化性組成物を得た。
【0038】
【表1】
【0039】
なお、表1中で使用した原料は以下の通りである。
(A−1):N−ビニルピロリドン[東京化成工業(株)製]
(A−2):N−ビニルカプロラクタム[BASF社製]
(A−3):N−ビニルアセトアミド[東京化成工業(株)製]
(A−4):N−ビニルホルムアミド[東京化成工業(株)製]
(A−5):5−メチル−3−ビニル−2−オキサゾリジノン[商品名:ビニルメチルオキサゾリジノン(VMOX)、BASF社製]
(B2−1):ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド)[商品名:DMAPAA、KJケミカルズ(株)製]
(B1−1):ジメチルアミノエチルアクリレート(2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート)
(C1−1):イソボルニルアクリレート[商品名:IBXA、大阪有機化学工業(株)製]
(C2−1):アクリロイルモルフォリン[商品名:ACMO、KJケミカルズ(株)製](C2−2):ジメチルアクリルアミド[商品名:DMAA、KJケミカルズ(株)製]
(D−1):1,6−ヘキサンジオールジアクリレート[商品名:ビスコート#230、大阪有機化学工業(株)製]
(D−2):ジプロピレングリコールジアクリレート[商品名:NK−エステル APG100、 新中村化学(株)製]
(D−3):ペンタエリスリトールトリアクリレート[商品名:ライトアクリレートTMP−A、共栄社化学(株)製]
(D−4):ペンタエリスリトールテトラアクリレート[商品名:ネオマーEA−300、三洋化成工業(株)製]
(D−5):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[商品名:ネオマーDA−600、三洋化成工業(株)製]
(E−1):2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド[商品名:イルガキュアTPO、BASF(株)社製、アシルフォスフィンオキサイド重合開始剤]
(E−2):ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド[商品名:イルガキュア819、BASF社製、アシルフォスフィンオキサイド重合開始剤]
(E−3):2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン[商品名:イルガキュア379、BASF社製、アルキルフェノンラジカル重合開始剤]
添加剤:アルキレンオキサイド変性ポリジメチルシロキサン[商品名「BYK−302」、ビックケミー・ジャパン(株)製;スリップ性向上剤]
【0040】
実施例1〜10で得た硬化性組成物及び比較例1〜9で得た比較用の硬化性組成物について、硬化性、鉛筆硬度、硬化物の全光線透過率、硬化物の密着性及び貯蔵安定性の評価を行った。
【0041】
<硬化性の評価>
各硬化性組成物をガラス基板[コーニング社製イーグルXG(厚さ0.7mm)]にスピンコーターで、硬化後の膜厚が20μmになるように塗布し、LED光源紫外線照射装置[型番:FJ100 150×20 365、phoseon TECHNOLOGY(株)製、照射波長 365nm]により、紫外線を照射強度400mW/cm
2で照射し、硬化物の表面を指で触ってべた付きがなくなるまでの積算露光量(タックフリー必要露光量)を評価した。
【0042】
<鉛筆硬度の評価>
上記の硬化性の評価で得られた、表面を指で触ってべた付きがなくなった硬化物をJIS K 5600−5−4:1999に準じ、鉛筆硬度を測定した。なお、ハードコート用途に使用する場合、鉛筆硬度は2H以上であることが必要である。
【0043】
<全光線透過率の評価>
上記の硬化性の評価で得られた、表面を指で触ってべた付きがなくなった硬化物を、JIS K 7375:2008に準拠し、全光線透過率測定装置[商品名「haze−garddual」、BYK gardner(株)製]を用いて全光線透過率(%)を測定した。
なお、この試料作成条件で作成し、一般的なハードコート用途に使用する場合、全光線透過率は88%以上であることが必要である。
【0044】
<密着性の評価>
JIS K 5600−5−6:1999に準拠して行った。
上記の硬化性の評価で得られた、表面を指で触ってべた付きがなくなった硬化物を、23℃、相対湿度50%の環境下で24時間静置した後、1mm幅にカッターナイフで切込みを入れて碁盤目(5×5個)を作成した。
碁盤目上にセロハン粘着テープを貼り付け、90度剥離を行い、ガラス基材からの硬化物の剥離状態を目視で観察した。25マス中の剥離せずに密着しているマス目の個数を数えて評価した。
また、上記の密着性の評価において、23℃、相対湿度50%の環境下で24時間静置することに代えて、60℃、相対湿度90%の環境下で24時間静置したこと以外は、上記の密着性の評価と同様に実施し、更に厳しい条件での密着性の評価も実施した。
【0045】
<貯蔵安定性の評価>
各硬化性組成物を40℃環境下で貯蔵し、30日間経過後に取り出して、上記の硬化性の評価と同様にして30日間経過後の硬化性(40℃環境下での30日間経過後のタックフリー必要露光量)を測定し、初期の硬化性(40℃環境下での貯蔵を開始する前のタックフリー必要露光量)との変化率を算出し、下記の判定基準で評価した。
変化率(%)=(30日後タックフリー必要露光量−初期タックフリー必要露光量)/初期タックフリー必要露光量×100
○:10%未満
×:10%以上
【0046】
本発明の実施例1〜10の硬化性組成物は、表1に示す通り、LED光源による硬化性、鉛筆硬度、全光線透過率、密着性及び貯蔵安定性のすべての点で優れている。
一方、比較例の硬化性組成物は、LED光源による硬化性、鉛筆硬度、全光線透過率、密着性及び貯蔵安定性のうち、少なくとも1つ性能が劣る