【課題】画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の光硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置を製造する際に、インクジェットコート法を利用して塗布される光硬化性樹脂組成物として、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーの使用に由来する界面密着強度の低下や延伸性の低下といった問題を生じない光硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】光硬化性樹脂組成物は、水酸基価が120mgKOH/g以上であって、(メタ)アクリロイル基を有さない(メタ)アクリレートポリマーと、単官能(メタ)アクリレートモノマーと、水素引き抜き型光重合開始剤と、粘着付与剤とを含有する。粘着付与剤の光硬化性樹脂組成物中の含有量は、1〜9質量%である。光硬化性樹脂組成物は、25℃で10mPa・s以上であり且つ60℃で30mPa・s以下の粘度を有する。
画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の光硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置に適用され得る当該光硬化性樹脂組成物であって、以下の成分(A)〜(D):
<成分(A)>水酸基価が120mgKOH/g以上であって、(メタ)アクリロイル基を有さない(メタ)アクリレートポリマー;
<成分(B)>単官能(メタ)アクリレートモノマー;
<成分(C)>水素引き抜き型光重合開始剤;及び
<成分(D)>粘着付与剤;
を含有し、
成分(D)の粘着付与剤の光硬化性樹脂組成物中の含有量が1〜9質量%であり、
光硬化性樹脂組成物の粘度が25℃で10mPa・s以上であり且つ60℃で30mPa・s以下である、光硬化性樹脂組成物。
成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーが、2−ヒドロキシエチルアクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートとの共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
成分(B)の単官能(メタ)アクリレートモノマーが、成分(B1)水酸基含有単官能(メタ)アクリレートモノマーと成分(B2)水酸基非含有単官能(メタ)アクリレートモノマーとを含有する請求項1〜4のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
成分(B1)水酸基含有単官能(メタ)アクリレートモノマーが、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも一種である請求項5記載の光硬化性樹脂組成物。
成分(B2)の水酸基非含有単官能(メタ)アクリレートモノマーが、イソステアリル(メタ)アクリレート及びイソデシル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも一種である請求項5記載の光硬化性樹脂組成物。
画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の光硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置の製造方法であって、以下の工程(a)〜(c):
<工程(a)>
画像表示部材又は光透過性カバー部材のいずれか一方の部材表面に、請求項1記載の光硬化性樹脂組成物をインクジェットコート装置のノズルから吐出させて光硬化性樹脂組成物膜を形成する工程;
<工程(b)>
光硬化性樹脂組成物膜に他方の部材を積層し、画像表示部材と光透過性カバー部材とを貼り合わせる工程;及び
<工程(c)>
両パネルに挟持された光硬化性樹脂組成物膜に紫外線を照射して硬化させることにより、画像表示部材と光透過性カバー部材とを光硬化樹脂層で積層した画像表示装置を得る工程;
を有する製造方法。
画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の光硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置の製造方法であって、以下の工程(aa)〜(dd):
<工程(aa)>
画像表示部材又は光透過性カバー部材のいずれか一方の部材表面に、請求項1記載の光硬化性樹脂組成物をインクジェットコート装置のノズルから吐出させて光硬化性樹脂組成物膜を形成する工程;
<工程(bb)>
光硬化性樹脂組成物膜に紫外線を照射して、仮硬化樹脂層を形成する工程;
<工程(cc)>
仮硬化樹脂層に他方の部材を積層し、画像表示部材と光透過性カバー部材とを貼り合わせる工程:及び
<工程(dd)>
両パネルに挟持された仮硬化樹脂層に紫外線を照射して本硬化させることにより、画像表示部材と光透過性カバー部材とを光硬化樹脂層で積層した画像表示装置を得る工程
を有する製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で使用されている光硬化性樹脂組成物は、含有している(メタ)アクリレートオリゴマーが(メタ)アクリロイル基を有するために、光硬化の際に架橋反応を起こし硬化収縮するという問題があった。このため、そのような光硬化性樹脂組成物からなる光硬化樹脂層で光透過性カバー部材と画像表示部材とを積層した場合、光硬化樹脂層と光透過性カバー部材との界面及び/又は光硬化樹脂層と画像表示部材との界面に、光硬化樹脂層の硬化収縮による応力が生じ、界面密着強度が低下するという問題や、画像表示装置が変形した場合に界面に生ずる応力を緩和するための延伸性が低下するという問題があった。これらの問題は、画像表示装置に用いる透明光学材料として、高温環境下で変形し易いポリカーボネートを使用した場合に顕著に顕在化する傾向があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決しようとするものであり、画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の光硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置を製造する際に、インクジェットコート法を利用して塗布される光硬化性樹脂組成物として、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーの使用に由来する界面密着強度の低下や延伸性の低下といった問題を生じない光硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、光硬化性樹脂組成物を構成する(メタ)アクリレートモノマーに併用すべき高分子物質として、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーに代えて、水酸基価が所定数値以上であり且つ(メタ)アクリロイル基を有さない(メタ)アクリレートポリマーを使用し、しかも光重合開始剤として水素引き抜き型光重合開始剤を使用し、更に光硬化性樹脂組成物の粘度を25℃で10mPa・s以上、60℃で30mPa・s以下に調整した上で、粘着付与剤を併用することにより、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の光硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置に適用され得る当該光硬化性樹脂組成物であって、以下の成分(A)〜(D):
<成分(A)>水酸基価が120mgKOH/g以上であって、(メタ)アクリロイル基を有さない(メタ)アクリレートポリマー;
<成分(B)>単官能(メタ)アクリレートモノマー;
<成分(C)>水素引き抜き型光重合開始剤;及び
<成分(D)>粘着付与剤;
を含有し、
成分(D)の粘着付与剤の光硬化性樹脂組成物中の含有量が1〜9質量%であり、
光硬化性樹脂組成物の粘度が25℃で10mPa・s以上であり且つ60℃で30mPa・s以下である、光硬化性樹脂組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の光硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置の製造方法であって、以下の工程(a)〜(c):
<工程(a)>
画像表示部材又は光透過性カバー部材のいずれか一方の部材表面に、上述の本発明の光硬化性樹脂組成物をインクジェットコート装置のノズルから吐出させて光硬化性樹脂組成物膜を形成する工程;
<工程(b)>
光硬化性樹脂組成物膜に他方の部材を積層し、画像表示部材と光透過性カバー部材とを貼り合わせる工程;及び
<工程(c)>
両パネルに挟持された光硬化性樹脂組成物膜に紫外線を照射して硬化させることにより、画像表示部材と光透過性カバー部材とを光硬化樹脂層で積層した画像表示装置を得る工程;
を有する製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の光硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置の製造方法であって、以下の工程(aa)〜(dd):
<工程(aa)>
画像表示部材又は光透過性カバー部材のいずれか一方の部材表面に、前述した本発明の光硬化性樹脂組成物をインクジェットコート装置のノズルから吐出させて光硬化性樹脂組成物膜を形成する工程;
<工程(bb)>
光硬化性樹脂組成物膜に紫外線を照射して、仮硬化樹脂層を形成する工程;
<工程(cc)>
仮硬化樹脂層に他方の部材を積層し、画像表示部材と光透過性カバー部材とを貼り合わせる工程:及び
<工程(dd)>
両パネルに挟持された仮硬化樹脂層に紫外線を照射して本硬化させることにより、画像表示部材と光透過性カバー部材とを光硬化樹脂層で積層した画像表示装置を得る工程を有する製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の光硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置に適用され得る当該光硬化性樹脂組成物であり、主たる重合成分である単官能(メタ)アクリレートモノマーに併用すべき成分として、該モノマーと重合し得る(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーではなく、水酸基価が120mgKOH/g以上であって、(メタ)アクリロイル基を有さない(メタ)アクリレートポリマーを使用し、しかも光重合開始剤として水素引き抜き型光重合開始剤を使用する。このような(メタ)アクリレートポリマーは、(メタ)アクリロイル基に基づく光重合には寄与しないが、水素引き抜き型光重合開始剤により水素が引き抜かれてラジカルを生成し、その結果、(メタ)アクリレートモノマーから形成される重合鎖に、側鎖として組み込まれ若しくはポリマー架橋鎖として組み込まれ、光硬化性樹脂組成物に良好な可塑性、成膜性、接着性を付与することができる。
【0013】
更に、本発明の光硬化性樹脂組成物は、粘着付与剤を含有する。このため、本発明の光硬化性樹脂組成物の光硬化物について、ガラスやポリカーボネートなどの透明光学材料に対する界面密着強度を向上させることができ、また延伸性も向上させることができる。
【0014】
しかも、本発明の光硬化性樹脂組成物は、25℃で10mPa・s以上、60℃で30mPa・s以下の粘度を示すので、25℃、60℃という温度を含む広いインクジェットコート温度条件下で良好なインクジェットコート適性を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、まず、本発明の光硬化性樹脂組成物について説明し、その後に当該光硬化性樹脂組成物を利用して画像表示装置を製造する方法について説明する。
【0017】
<光硬化性樹脂組成物>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置に好ましく適用され得る当該光硬化性樹脂組成物であって、以下の成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を含有し、粘度が25℃で10mPa・s以上であり且つ60℃で30mPa・s以下のものである。
【0018】
なお、本発明の光硬化性樹脂組成物が好ましく適用できる画像表示装置、及びそれを構成する画像表示部材や光透過性カバー部材については、本発明の画像表示装置の製造方法の説明において併せて説明する。
【0019】
<成分(A)>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、硬化物に可塑性を付与するとともに、良好な成膜性(膜性維持)と接着性とを確保するために、水酸基価が120mgKOH/g以上、好ましくは170mgKOH/g以上であって、(メタ)アクリロイル基を有さない(メタ)アクリレートポリマーを含有する。水酸基価を有することは分子内に水酸基を有していることを示しており、水酸基を有することで、後述する成分(D)の水素引き抜き型光重合開始剤と協働して重合鎖の側鎖に結合することが可能となる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとを包含する用語である。
【0020】
成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーに関し、水酸基価とは、ポリマー1g中の水酸基をアセチル化した後、アセチル基を加水分解して生じた酢酸を中和するのに要したKOHの質量(mg)である。従って、水酸基価が大きいほど水酸基が多いことを意味する。成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーの水酸基価を120mgKOH/g以上としたのは、120mgKOH/g未満であると、光硬化性樹脂組成物の硬化物の架橋密度が低く、特に高温下での弾性率低下が顕著になるという傾向があるからである。なお、その硬化物の架橋密度だけを単に増大させたのであれば、後述の成分(E)の多官能(メタ)アクリレートモノマーを多用すればよいが、光硬化性樹脂組成物の硬化物が脆くなることが懸念されるため、ある程度分子量の高いポリマーで架橋させることで、良好な柔軟性と凝集力とを硬化物に付与することが可能になる。従って、水酸基価が高すぎると光硬化性樹脂組成物の硬化物の架橋密度が高くなり過ぎ、柔軟性が失われる傾向があるので、400mgKOH/g以下、好ましくは350mgKOH/g以下である。
【0021】
また、成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーとして(メタ)アクリロイル基を有さないものを使用する理由は、(メタ)アクリロイル基を有すると、成分(B)及び成分(C)の(メタ)アクリレートモノマーから構成される重合鎖の主鎖に過度に組み込まれてしまう可能性が高まるので、それを防止するためである。
【0022】
成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーの重量平均分子量Mnは、小さ過ぎると水酸基が導入されていない分子が増え、ブリード等リスク上昇の傾向があるので、好ましくは5000以上、より好ましくは100000以上であり、大き過ぎると粘度上昇による吐出不良となる傾向があるので、好ましくは500000以下、より好ましくは300000以下である。なお、本明細書中、ポリマーの重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる(標準ポリスチレン分子量換算)。
【0023】
また、成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーの分散度(Mw/Mn)は、低過ぎると、ポリマーと未反応のモノマー類とが分離し易くなる傾向があるので、好ましくは3以上であり、高すぎると望まれない比較的低分子量のポリマー成分を混入させることになるので、好ましくは10以下である。
【0024】
このような成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーとしては、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーと水酸基非含有(メタ)アクリレートモノマーとのコポリマーを好ましく挙げることができる。常温で液状であることが好ましい。なお、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーのホモポリマーも例示できるが、ポリマーの極性が高くなり過ぎ、常温で高粘度液体もしくは固体となってしまう傾向があり、また他の成分との相溶性が低下することが懸念される。
【0025】
成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーを構成するモノマー単位である水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとは、分子中に1以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートであり、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシルジメタノールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることできる。中でも、極性コントロールや価格の点で2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを好ましく例示することができる。
【0026】
成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーを構成することができる水酸基非含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜18の直鎖又は分岐を有する単官能(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーの特に好ましい例としては、入手容易性や発明の効果の実現性等の観点から、2―ヒドロキシエチルアクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートとの共重合体を挙げることができる。イソボルニルアクリレートを更に共重合させてよい。
【0028】
成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーの光硬化性樹脂組成物中の含有量は、少なすぎると脆くなる傾向があるので、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、多すぎると粘度上昇による吐出不良となる傾向があるので、好ましくは55質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
【0029】
<成分(B)>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、重合成分として単官能(メタ)アクリレートモノマーを含有する。単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、公知の単官能(メタ)アクリレートモノマーの中から、光硬化性樹脂組成物の使用目的や実現すべき物性等を考慮して適宜選択することができる。成分(B)の単官能(メタ)アクリレートモノマーの光硬化性樹脂組成物中の含有量は、その種類にもよるが、少なすぎると界面密着強度の不足が生じることが懸念され、多すぎると延伸性の低下が懸念されるので、好ましくは30質量%以上、より好ましくは60質量%以上、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0030】
なお、成分(B)の単官能(メタ)アクリレートモノマーは、種類により、その硬化後に、成分(A)の水酸基価が120mgKOH/g以上であって、(メタ)アクリロイル基を有さない(メタ)アクリレートポリマーへの相溶性が低下して光硬化樹脂層の白濁化を招く場合がある。このため、成分(B)の単官能(メタ)アクリレートモノマーとして、水酸基を含有する成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーとの親和性が高く、また、高温高湿環境における信頼性向上を期待できることから、水酸基を1個以上、好ましくは1個の水酸基を含有する水酸基含有単官能(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物の硬化物の接着性や粘度をそれぞれ良好な範囲に設定するために、水酸基非含有(メタ)アクリレートを併用することが好ましい。つまり、成分(B)の単官能(メタ)アクリレートモノマーを、成分(B1)の水酸基含有単官能(メタ)アクリレートモノマーと成分(B2)の水酸基非含有単官能(メタ)アクリレートモノマーとから構成することが好ましい。
【0031】
成分(B1)の水酸基含有単官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーを構成することができる水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーと同様のモノマーを例示することができる。中でも、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも一種が好ましいが、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0032】
成分(B1)の水酸基含有単官能(メタ)アクリレートモノマーの光硬化性樹脂組成物中の含有量は、少なすぎると高温高湿環境における光硬化性樹脂組成物の硬化物に求められる特性の信頼性が不足する傾向があるので、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、多すぎると硬化前もしくは硬化後の樹脂の極性のバランスが崩れ、不透明となる傾向があるので、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0033】
なお、成分(B1)の水酸基含有単官能(メタ)アクリレートモノマーの光硬化性樹脂組成物中の含有量は、成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーとの関係では、成分(A)の(メタ)アクリレートポリマー100質量部に対し、好ましくは1〜3000質量部である。この範囲内であれば、様々な環境下で高い透明性が維持できるという効果が得られる。
【0034】
成分(B2)の水酸基非含有単官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーを構成することができる水酸基非含有(メタ)アクリレートモノマーと同様のモノマーを例示することができる。中でも、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、及びオクチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも一種が好ましい。特に、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0035】
成分(B2)の水酸基非含有単官能(メタ)アクリレートモノマーの光硬化性樹脂組成物中の含有量は、少なすぎると高粘度となる傾向があるので、好ましくは30質量%以上、より好ましくは65質量%以上であり、多すぎると脆くなる傾向があるので、好ましくは90質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。
【0036】
なお、成分(B2)の水酸基非含有単官能(メタ)アクリレートモノマーの光硬化性樹脂組成物中の含有量は、成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーとの関係では、成分(A)の(メタ)アクリレートポリマー100質量部に対し、好ましくは54〜9000質量部である。この範囲内であれば、様々な環境下で高い透明性を維持しつつ、接着剤として高いパフォーマンスを発揮できるという効果が得られる。
【0037】
<成分(C)>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤として、ベンゾイン誘導体のような分子内開裂型光重合開始剤ではなく、水素引き抜き型光重合開始剤、好ましくは分子内水素引き抜き型光重合開始剤を含有する。成分(A)の水酸基を含有する(メタ)アクリレートポリマーを、重合鎖の側鎖に結合させるためである。
【0038】
成分(C)の水素引き抜き型光重合開始剤としては、公知の水素引き抜き型光重合開始剤を使用することができ、例えば、ベンフェノン等のジアリールケトン類、メチルベンゾイルフォルメート等のフェニルグリオキシレート類が挙げられる。好ましい例としては、無黄変かつ高い水素引き抜き能力の点からメチルベンゾイルフォルメートを挙げることができる。
【0039】
成分(C)の水素引き抜き型光重合開始剤の光硬化性樹脂組成物中の含有量は、少なすぎると架橋不足となる傾向があるので、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、多すぎると環境信頼性悪化の原因となる傾向があるので、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0040】
<成分(D)>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、硬化物の界面密着強度や延伸性を向上させるために、粘着付与剤を含有する。粘着付与剤としては、公知の粘着付与剤、例えば、ロジン系粘着付与剤、水添ロジンエステル系粘着付与剤、テルペン樹脂系粘着付与剤、芳香族変性テルペン樹脂系粘着付与剤、水添テルペン樹脂系粘着付与剤、テルペンフェノール樹脂系粘着付与剤、脂肪族石油樹脂系粘着付与剤、芳香族石油樹脂系粘着付与剤、脂環族(水添)石油樹脂系粘着付与剤等の中から、使用目的に応じて適宜選択することができる。好ましい粘着付与剤としては、無色透明性、無味無臭性、耐熱性、耐候性、及び電気特性(絶縁性)のいずれの特性にも優れた脂環族(水添)石油樹脂系粘着付与剤を好ましく挙げることができる。特に好ましい具体的な粘着付与剤としては、ARKON(登録商標)P90、M100又はM115(荒川化学工業(株))というトレードマークで上市されている粘着付与剤を挙げることができる。
【0041】
成分(D)の粘着付与剤の光硬化性樹脂組成物中の含有量は、少なすぎると光硬化性樹脂組成物の硬化物のガラスやポリカーボネートに対する界面密着強度が不十分となる傾向があるので、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、多すぎると硬化物が白濁する傾向があるので、9質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。
【0042】
<成分(E)>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、反応速度向上や高温弾性率維持のために、多官能(メタ)アクリレートモノマーを含有することができる。多官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどの2官能以上の(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらは、発明の効果を損なわない限り、水酸基などの他の官能基を有することができる。中でも、多官能(メタ)アクリレートモノマーの好ましい具体例として、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、及びヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートから選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0043】
成分(E)の多官能(メタ)アクリレートモノマーの光硬化性樹脂組成物中の含有量は、少なすぎると低架橋密度となる傾向があるので、好ましくは0.1%以上、より好ましくは1質量%以上であり、多すぎると脆くなる傾向があるので、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0044】
<その他の成分>
本発明の光硬化性樹脂組成物には、上述した成分(A)〜(D)、更に必要に応じて(E)に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で種々の添加剤を配合することができる。例えば、硬化収縮率を低減させるための液状可塑成分として、ポリブタジエン系可塑剤、ポリイソプレン系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤などを配合することができる。また、硬化物の分子量の調整のために連鎖移動剤として、2−メルカプトエタノール、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノール、α−メチルスチレンダイマーなどを配合することができる。更に、必要に応じて、シランカップリング剤等の接着改善剤、酸化防止剤等の一般的な添加剤を含有することができる。
【0045】
<光硬化性樹脂組成物の硬化前の粘度特性>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、以上説明した成分を含有するものであるが、通常のインクジェット吐出条件で良好なインクジェット適性を実現するために、25℃で、10mPa・s以上、好ましくは15mPa・s以上、且つ60℃で30mPa・s以下、好ましくは20mPa・s以下に調整されている。ここで、25℃で10mPa・s未満であると、インクジェットノズルからの液だれが生じやすくなり、60℃で30mPa・sを超えると、不吐出が発生しやすくなる。なお、光硬化性樹脂組成物の粘度は、一般的な粘弾性測定装置で測定することができる。具体例としては、レオメータ(Haake RheoStress600、Thermo Scientific社; 測定条件、コーンローター、φ=35mm、ローター角度2°、剪断速度120/s)を用いて測定することができる。
【0046】
本発明の光硬化性樹脂組成物の粘度の調整は、各構成成分の種類、含有量等を調整することにより行うことができる。
【0047】
<光硬化性樹脂組成物の硬化後の種々の特性>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、硬化後に、光学材料としての基本的光学特性、界面密着強度の低下や延伸性の低下といった問題を評価するために、特にことわりがなければ、100μm厚のフィルム形状に成形したものについて、以下の特性を観察・測定することが好ましい。
【0048】
(a)「硬化物の外観」
光学材料の基本的光学特性として硬化物の外観を目視観察する。画像表示装置用の光学材料としては、透明であることが求められているからである。
【0049】
(b)「25℃、85℃における引っ張り貯蔵弾性率[Pa]」
動的粘弾性特性の一面である「引っ張り貯蔵弾性率」は、その数値が大きい程、より強い弾性体であることを示し、画像表示部材と光透過性カバー部材との貼合性を判断する際の指標の一つとなる。後述の損失正接tanδとの兼ね合いもあるが、一般に、「引っ張り貯蔵弾性率」が低くなると低弾性体になり、限度があるものの、それに連れて貼合性が良好になる傾向にある。「引っ張り貯蔵弾性率」は、市販の動的粘弾性測定装置(例えば、レオメータ(Haake Mars II、Thermo Scientific社; 測定条件、コーンローター、φ=8mm、周波数1Hz)で計測することができる。ここで、25℃で測定する理由は、貼合後の常温環境下での凝集力を判断するためである。この場合は、数値が大きいほうが良いとされる。また、85℃で測定する理由は、高温環境下を想定した際の樹脂の凝集力を判断するためである。
【0050】
(c)「25℃における損失正接tanδ(=損失弾性率/貯蔵弾性率)」
「損失正接tanδ」は、その数値が大きい程、より強い粘性体であることを示し、より良好な衝撃吸収性を示し、前述した市販の動的粘弾性測定装置を用いて計測することができる。ここで、25℃で測定する理由は、画像表示部材と光透過性カバー部材との貼合性を判断するためである。
【0051】
(d)「ガラス転移温度[℃]」
「ガラス転移温度」は、前述した市販の動的粘弾性測定装置で測定できる引っ張り損失弾性率の測定曲線のピーク温度であり、硬化物の使用温度帯域よりも高いと硬化物が脆くなる傾向があり、低いと流動する傾向がある。
【0052】
(e)「伸び率[%]」
「伸び率」は、長さL
0のフィルムサンプルを、公知の引っ張り試験機(一定の速度で引っ張り、破断させた時の長さL
1の前記L
0に対する割合である。上記(b)の引っ張り弾性率が所定の範囲である限り、この数値が大きい程、変形に対する追随性が良好であることを示す。
【0053】
(f)「界面密着強度[N/cm
2]」
界面密着強度は、この数値が大きい程密着性が良好であることを示す。その測定は、以下の条件で行うことができる。即ち、2枚のスライドガラスの一方の中央に、光硬化性樹脂組成物を、例えば直径5mm、平均100μmの厚みで塗布し、光硬化性樹脂組成物膜を形成した後、他方のスライドガラスを直交させるように載置し、2枚のスライドガラスに挟持されている光硬化性樹脂組成物膜に対して、紫外線を照射することにより光硬化性樹脂組成物膜を硬化させることにより、光透過性の光仮硬化樹脂層を界面密着強度試験用サンプルとして取得し、得られたこのサンプルの界面密着強度を、市販の引張試験機(例えば、Autograph AGS−X、(株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
【0054】
<光硬化性樹脂組成物の調製>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、成分(A)〜(D)及び必要に応じて配合される他の成分とを常法に従って均一に混合することにより調製することができる。
【0055】
<画像表示装置の製造方法>
次に、以下、工程(a)〜(c)を有する本発明の画像表示装置の製造方法を、図面を参照しながら工程毎に詳細に説明する。なお、図面において、同じ図番は同一又は類似の構成要素を表している。
【0056】
<工程(a)(塗布工程)>
まず、
図1に示すように、光透過性カバー部材1を用意し、
図2に示すように、光透過性カバー部材1の表面1aに、光硬化性樹脂組成物2をインクジェットノズル3から塗布し、光硬化性樹脂組成物膜4を形成する。この場合の塗布厚は、光透過性カバー部材1や画像表示部材の表面状態、必要とする硬化樹脂層の膜物性等に応じて適宜設定することができる。
【0057】
なお、この光硬化性樹脂組成物2の塗布は、必要な厚みが得られるように複数回行ってもよい。
【0058】
光透過性カバー部材1としては、画像表示部材に形成された画像が視認可能となるような光透過性があればよく、ガラス、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等の板状材料やシート状材料が挙げられる。これらの材料には、片面又は両面ハードコート処理、反射防止処理などを施すことができる。光透過性カバー部材1の厚さや弾性などの物性は、使用目的に応じて適宜決定することができる。
【0059】
また、光透過性カバー部材1には、上述の板状材料やシート状材料にタッチパッドなどのような位置入力素子を公知の接着剤や本発明の光硬化性樹脂組成物の仮硬化樹脂層や硬化樹脂層を介して一体化したものも含まれる。
【0060】
本工程で使用する光硬化性樹脂組成物2の性状はインクジェット条件下で液状である。液状のものを使用するので、光透過性カバー部材1の表面形状や画像表示部材の表面形状に歪みがあってもその歪みをキャンセルできる。
【0061】
<工程(b)(貼り合わせ工程)>
次に、
図3に示すように、画像表示部材5を、光透過性カバー部材1の光硬化性樹脂組成物膜4側から貼り合わせる。貼り合わせは、公知の圧着装置を用いて、10℃〜80℃で加圧することにより行うことができる。
【0062】
画像表示部材5としては、液晶表示パネル、有機EL表示パネル、プラズマ表示パネル、タッチパネル等を挙げることができる。ここで、タッチパネルとは、液晶表示パネルのような表示素子とタッチパッドのような位置入力素子とを、公知の接着剤や本発明の光硬化性樹脂組成物の仮硬化樹脂層や硬化樹脂層を介して一体化したものである。なお、タッチパッドが光透過性カバー部材1にすでに一体化されている場合には、画像表示部材5としてタッチパネルを採用しなくてもよい。
【0063】
<工程(c)(硬化工程)>
次に、
図4に示すように、工程(b)で形成された光硬化性樹脂組成物膜4に対し、光透過性カバー部材1側から紫外線UVを照射し硬化させ、
図5に示すように光透過性の光硬化樹脂層6を形成する。これにより画像表示装置100が得られる。なお、光硬化性樹脂組成物膜4を硬化させるのは、光硬化性樹脂組成物2を液状から流動しない状態にし、更に光硬化樹脂層6に粘着性を付与し、また、天地逆転させても流れ落ちないようにして取り扱い性を向上させるためである。このような硬化のレベルは、光透過性の光硬化樹脂層6の硬化率(ゲル分率)が好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上となるようなレベルである。ここで、硬化率(ゲル分率)とは、紫外線照射前の光硬化性樹脂組成物2中の(メタ)アクリロイル基の存在量に対する紫外線照射後の(メタ)アクリロイル基の存在量の割合(消費量割合)と定義される数値であり、この数値が大きい程、硬化が進行していることを示す。なお、光硬化樹脂層6の光透過性の程度は、画像表示部材に形成された画像が視認可能となるような光透過性があればよい。
【0064】
なお、硬化率(ゲル分率)は、紫外線照射前の樹脂組成物層のFT−IR測定チャートにおけるベースラインからの1640〜1620cm
−1の吸収ピーク高さ(X)と、紫外線照射後の樹脂組成物層のFT−IR測定チャートにおけるベースラインからの1640〜1620cm
−1の吸収ピーク高さ(Y)とを、以下の数式(1)に代入することにより算出することができる。
【0066】
紫外線の照射に関し、硬化率(ゲル分率)が好ましくは95%以上となるように硬化させることができる限り、光源の種類、出力、累積光量などは特に制限はなく、公知の紫外線照射による(メタ)アクリレートの光ラジカル重合プロセス条件を採用することができる。
【0067】
なお、光透過性の光硬化樹脂層6の光透過性のレベルは、画像表示部材5に形成された画像が視認可能となるような光透過性であればよい。
【0068】
また、光硬化性樹脂組成物を一度に本硬化させずに、以下の工程(aa)〜(dd)のように、仮硬化させた後に貼り合わせ、更に本硬化させてもよい。
【0069】
<工程(aa)(塗布工程)>
まず、
図6に示すように、光透過性カバー部材10を用意し、
図7に示すように、光透過性カバー部材10の表面10aに、光硬化性樹脂組成物20をインクジェットノズル30から塗布し、光硬化性樹脂組成物膜40を形成する。この場合の塗布厚は、光透過性カバー部材10や画像表示部材の表面状態、必要とする硬化樹脂層の膜物性等に応じて適宜設定することができる。
【0070】
なお、この光硬化性樹脂組成物20の塗布は、必要な厚みが得られるように複数回行ってもよい。
【0071】
<工程(bb)(仮硬化工程)>
次に、
図8に示すように、工程(aa)で塗布された光硬化性樹脂組成物膜40に対し紫外線UVを照射して仮硬化させることにより
図9に示すように仮硬化樹脂層45を形成する。ここで、仮硬化させるのは、光硬化性樹脂組成物20を液状から著しく流動しない状態にし、天地逆転させても流れ落ちないようにして取り扱い性を向上させるためである。このような仮硬化のレベルは、仮硬化樹脂層45の硬化率(ゲル分率)が、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上である。上限は100%でもよいが、好ましくは100%未満である。より好ましくは95%未満である。
【0072】
<工程(cc)(貼り合わせ工程)>
次に、
図10に示すように、画像表示部材50に、光透過性カバー部材10をその仮硬化樹脂層45側から貼り合わせる。貼り合わせは、公知の圧着装置を用いて、10℃〜80℃で加圧することにより行うことができる。
【0073】
<工程(dd)(本硬化工程)>
次に、
図11に示すように、画像表示部材50と光透過性カバー部材10との間に挟持されている仮硬化樹脂層45に対し紫外線UVを照射して本硬化させる。これにより、画像表示部材50と光透過性カバー部材10とを光透過性の光硬化樹脂層60を介して積層して画像表示装置100を得る(
図12)。なお、仮硬化樹脂層の硬化率が100%である場合には、本工程(dd)を省いてもよいが、確実に本硬化させるために常に実施することが好ましい。
【0074】
また、本工程において本硬化させるのは、仮硬化樹脂層45を十分に硬化させて、画像表示部材50と光透過性カバー部材10とを接着し積層するためである。このような本硬化のレベルは、仮硬化樹脂層45の硬化率よりも低くならないように設定される。通常、光透過性の光硬化樹脂層60の硬化率(ゲル分率)を好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上となるように設定する。
【0075】
なお、光透過性の光硬化樹脂層60の光透過性のレベルは、画像表示部材50に形成された画像が視認可能となるような光透過性であればよい。なお、以上の工程(aa)〜(dd)では光硬化性樹脂組成物を光透過性カバー部材に塗布したが、画像表示部材に塗布し、その後に光透過性カバー部材を積層してもよい。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例で使用した成分は以下のとおりである。
【0077】
(メタ)アクリレートポリマー
ヒタロイド(登録商標)7927(日立化成(株));MW190,000、170mgKOH/g
【0078】
水酸基含有単官能(メタ)アクリレートモノマー
4−HBA(4−ヒドロキシブチルアクリレート)
【0079】
水酸基非含有単官能(メタ)アクリレートモノマー
ISTA(イソステアリルアクリレート
IDA(イソデシルアクリレート)
【0080】
多官能(メタ)アクリレートモノマー
PETIA(ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)アクリレート;ダイセル・オルネクス(株))
【0081】
水素引き抜き型光重合開始剤
Omnirad(登録商標)MBF(IGM Resins B.V.)、メチルベンゾイルフォルメート
【0082】
実施例1〜4、比較例1〜2
表1に示す配合成分を均一に混合することにより光硬化性樹脂組成物を調製した。得られた光硬化性樹脂組成物について、インクジェット塗布性に寄与する光硬化前の液状物性である「粘度[mPa・s]」を以下のように測定した。また、光硬化後の「硬化物の外観」、「25℃、85℃における引っ張り貯蔵弾性率[Pa]」、「25℃における損失正接tanδ(=損失弾性率/貯蔵弾性率)」、「ガラス転移温度[℃]」、「伸び率[%]」、及び「界面密着強度[N/cm
2]」を以下に説明するように測定した。
【0083】
<光硬化前>
(光硬化性樹脂組成物の粘度)
光硬化性樹脂組成物の25℃と60℃における粘度を、レオメータ(Haake RheoStress600、Thermo Scientific社;測定条件、コーンローター、φ=35mm、ローター角度2°、剪断速度120/s)を用いて測定した。測定結果を表1に示す。光硬化性樹脂組成物のインクジェット塗布性については、25℃における粘度が10mPa・s以上、且つ60℃における粘度が30mPa・s以下であることが望まれる。
【0084】
<光硬化後>
光硬化性樹脂組成物の光硬化後の「硬化物の外観」、「25℃、85℃における引っ張り貯蔵弾性率[Pa]」、「25℃における損失正接tanδ(=損失弾性率/貯蔵弾性率)」、「ガラス転移温度[℃]」、「伸び率[%]」、「界面密着強度[N/cm
2]」を以下に説明するように観察もしくは測定した。
【0085】
(硬化物の外観)
光硬化性樹脂組成物に対して、紫外線照射装置(LC−8、浜松ホトニクス(株)製)を用いて、積算光量が5000mJ/cm
2となるように、200mW/cm
2強度の紫外線を照射することにより光硬化性樹脂組成物を硬化させた。得られた硬化物が透明であるか白濁しているかを、目視観察した。観察結果を表1に示す。画像表示装置用の光学材料としては、白濁しないことが求められる。
【0086】
(25℃、85℃における引っ張り貯蔵弾性率[Pa])
離型処理が施されたPETフィルム上に、光硬化性樹脂組成物を2mm厚となるように塗布し、紫外線照射装置(LC−8、浜松ホトニクス(株)製)を用いて、積算光量が5000mJ/cm
2となるように、200mW/cm
2強度の紫外線を照射することにより光硬化性樹脂組成物膜を硬化させ、PETフィルムから剥離することにより粘弾性試験用サンプルフィルムを作成した。得られたサンプルフィルムについて、25℃及び85℃における引っ張り貯蔵弾性率を、粘弾性測定装置(DMS6100、セイコーインスツルメンツ社製;測定条件、長さ=20mm、厚み=2mm、幅=10mm、周波数1Hz)を用いて測定した。画像表示装置用の光学材料としては、引っ張り貯蔵弾性率の数値が1.0E+05〜7.0E+05の範囲にあることが望ましい。
【0087】
(25℃における損失正接tanδ(=損失弾性率/貯蔵弾性率))
引っ張り貯蔵弾性率の測定と同様に粘弾性試験用サンプルフィルムを作成し、同じ粘弾性測定装置を用いて引っ張り損失弾性率を測定し、その数値の先に測定した引っ張り貯蔵弾性率に対する割合(%)を、損失正接tanδとして算出した。画像表示装置用の光学材料としては、損失正接tanδの数値が1〜2の範囲にあることが望ましい。
【0088】
(ガラス転移温度「℃」)
引っ張り貯蔵弾性率の測定と同様に粘弾性試験用サンプルフィルムを作成し、そのガラス転移温度を同じ粘弾性測定装置を用いて測定した。画像表示装置用の光学材料としては、ガラス転移温度の範囲が−60〜0℃の範囲であることが好ましい。
【0089】
(伸び率「%」)
光硬化性樹脂組成物を所定の厚さになるように剥離フィルム上に滴下し、ついで紫外線照射して硬化させ、所定の大きさ(例えば、1mm、10mm幅、30mm長)にカットして試料を作成し、その伸び率を引っ張り試験機(テンシロン、オリエンテック社)を用いて測定した。測定条件は、雰囲気温度25℃、引っ張り速度10mm/分であり、測定値を「伸び率(%)=L/L0×100」の数式に代入して伸び率を求めた。ここで、L0は基準長さ、Lは破断するまでの変位長さである。画像表示装置用の光学材料としては、上記の25℃における引っ張り貯蔵弾性率が、上記の範囲内の場合に、100〜200%の範囲が好ましい。これは、樹脂硬化物を画像表示部材の反りに追随させることができ、樹脂硬化物と貼合部材界面からの剥離を大きく抑制できるからである。
【0090】
(界面密着強度(割裂強度)[N/cm
2])
松浪硝子工業社製のスライドガラス(40(W)×70(L)×0.4(t)mm、型番S1112)を2枚用意し、一方のスライドガラスの中央に、光硬化性樹脂組成物を直径5mm、平均100μmの厚みで塗布し、まず、紫外線照射装置(LC−8、浜松ホトニクス(株)製)を用いて、積算光量が2000mJ/cm
2となるように、200mW/cm
2強度の紫外線を照射することにより光硬化性樹脂組成物膜を半硬化させ、得られた半硬化樹脂膜に他方のスライドガラスを直交させるように載置し、2枚のスライドガラスに挟持されている半硬化性樹脂膜に対して、積算光量が5000mJ/cm
2となるように、200mW/cm
2強度の紫外線を照射することにより光半硬化樹脂層を本硬化させ、光透過性の光硬化樹脂層を形成した。これにより、接着強度試験用サンプルが得られた。このサンプルの接着強度を、引張試験機(Autograph AGS−X,(株)島津製作所;試験速度5mm/min、試験温度85℃)を用いて測定した。得られた結果を表1及び
図13、14に示す。光学材料としては、界面密着強度の数値が、ガラスに対しては85〜100N/cm
2の範囲、ポリカーボネートに対しては 35〜45N/cm
2の範囲にあることが望ましい。
【0091】
【表1】
【0092】
(評価結果の考察)
実施例1〜4の光硬化性樹脂組成物は、水酸基価が120mgKOH/g以上であって、(メタ)アクリロイル基を有さない(メタ)アクリレートポリマーと、単官能(メタ)アクリレートモノマーと、水素引き抜き型光重合開始剤と、更に光硬化性樹脂組成物中に2.9〜4.7質量%の粘着付与剤とを含有し、その粘度が25℃で10mPa・s以上であり且つ60℃で30mPa・s以下であるので、表1や
図13、14から分かるように、硬化前にはインクジェット塗布性に優れ、硬化後には、界面密着強度だけでなく延伸性にも優れていた。
【0093】
他方、比較例1の光硬化性樹脂組成物の硬化物は、粘着付与剤を含有していないので、実施例1〜4の光硬化性樹脂組成物の硬化物に比べ、界面密着強度が不十分であった。特にポリカーボネートに対する界面密着強度は大きく低下し、しかも、伸び率も低下していた。このように、粘着付与剤を所定量範囲で含有することにより、界面密着強度と延伸性とが改善できることがわかった。
【0094】
なお、比較例2の場合、粘着付与剤を過度に含有していたため、硬化物が白濁してしまった。