特開2020-196914(P2020-196914A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-196914(P2020-196914A)
(43)【公開日】2020年12月10日
(54)【発明の名称】めっき前処理方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/18 20060101AFI20201113BHJP
   C23C 18/34 20060101ALI20201113BHJP
   C23C 18/31 20060101ALI20201113BHJP
【FI】
   C23C18/18
   C23C18/34
   C23C18/31 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2019-102591(P2019-102591)
(22)【出願日】2019年5月31日
(71)【出願人】
【識別番号】591021028
【氏名又は名称】奥野製薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中里 純一
(72)【発明者】
【氏名】内藤 和久
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 典彦
(72)【発明者】
【氏名】岩松 克茂
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 佳
(72)【発明者】
【氏名】村田 俊也
【テーマコード(参考)】
4K022
【Fターム(参考)】
4K022AA02
4K022BA14
4K022BA36
4K022CA09
4K022CA15
4K022CA16
4K022CA17
4K022CA23
4K022DA01
4K022DA03
4K022DB07
4K022DB08
4K022DB26
4K022DB28
(57)【要約】
【課題】めっき均一性及びめっき平滑性により優れためっき技術を提供すること。
【解決手段】(工程1)界面活性剤を含有する酸性表面調整液でアルミニウム材を処理する工程、及び/又は(工程2)アルミニウム材を、酸性亜鉛置換処理液で処理した後、アルカリ性亜鉛置換処理液で処理する工程、を含む、アルミニウム材のめっき前処理方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(工程1)界面活性剤を含有する酸性表面調整液でアルミニウム材を処理する工程、及び/又は
(工程2)アルミニウム材を、酸性亜鉛置換処理液で処理した後、アルカリ性亜鉛置換処理液で処理する工程、
を含む、アルミニウム材のめっき前処理方法。
【請求項2】
前記工程1の後に前記工程2が行われる、請求項1に記載のめっき前処理方法。
【請求項3】
前記界面活性剤がノニオン系界面活性剤である、請求項1又は2に記載の前処理方法。
【請求項4】
前記酸性表面調整液のpHが4以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の前処理方法。
【請求項5】
前記酸性亜鉛置換処理液が亜鉛化合物及びフッ素化合物を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の前処理方法。
【請求項6】
前記酸性亜鉛置換処理液が水溶性ノニオン界面活性剤、並びに鉄、ニッケル、銅、銀、パラジウム、鉛、ビスマス、及びタリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属の水溶性塩類からなる群より選択される少なくとも1種の成分を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の前処理方法。
【請求項7】
前記酸性亜鉛置換処理液のpHが1〜7である、請求項1〜6のいずれかに記載の前処理方法。
【請求項8】
エッチング処理及び/又はデスマット処理を含まない、請求項1〜7のいずれかに記載の前処理方法。
【請求項9】
前記アルカリ性亜鉛置換処理液における亜鉛イオン源濃度が12g/L以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の前処理方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のめっき前処理方法により得られる、めっき処理用アルミニウム材。
【請求項11】
請求項10に記載のめっき処理用アルミニウム材をめっき処理する工程を含む、アルミニウム材のめっき方法。
【請求項12】
前記めっき処理が無電解ニッケルめっき処理である、請求項11に記載のめっき方法。
【請求項13】
前記アルミニウム材が、非アルミニウム材上にアルミニウム又はアルミニウム合金皮膜が形成されてなる物品である、請求項11又は12に記載のめっき方法。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれかに記載のめっき方法により得られる、アルミニウム材めっき物。
【請求項15】
界面活性剤を含有し且つ酸性である、アルミニウム材のめっき前処理液。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれかに記載の前処理方法に用いるための、請求項15に記載のめっき前処理液。
【請求項17】
亜鉛化合物及びフッ素化合物を含有し且つ酸性である、請求項1〜9のいずれかに記載の前処理方法に用いるための亜鉛置換処理液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム材のめっき前処理方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム材をめっき処理する方法としては、めっき前処理として脱脂処理、エッチング処理、デスマット処理、亜鉛置換処理等を行った後、めっきを行なう方法が採られている。しかしながら、アルミニウム種の合金組成の違いにより、同じ前処理では処理が難しく、めっきの不均一性の発生や密着に乏しいめっきとなり、エッチング、デスマット、亜鉛置換をアルミニウム種に合わせて変える必要があった。特に、純度高いアルミニウム素材は、数μmの減膜がともなうエッチングが必要であり、めっきの平滑性が損なわれる場合があった。また、パワーデバイスに搭載されるシリコンウエハ上のアルミニウム電極は、スパッタや蒸着により純度の高いアルミニウムが数μmオーダーで形成されている。このため、減膜の少ない処理が提案されているが(特許文献1)、一般のアルミニウム合金にこの処理を行なっても密着に乏しいめっきとなる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−256864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、めっき均一性及びめっき平滑性により優れためっき技術を提供することを課題とする。好ましくは、さらに、素材の減膜がより抑制されためっき技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意研究を進めた結果、(工程1)界面活性剤を含有する酸性表面調整液でアルミニウム材を処理する工程、及び/又は(工程2)アルミニウム材を、酸性亜鉛置換処理液で処理した後、アルカリ性亜鉛置換処理液で処理する工程、を含む、アルミニウム材のめっき前処理方法の後、めっき処理することにより、上記課題を解決できることを見出した。この知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0006】
項1. (工程1)界面活性剤を含有する酸性表面調整液でアルミニウム材を処理する工程、及び/又は
(工程2)アルミニウム材を、酸性亜鉛置換処理液で処理した後、アルカリ性亜鉛置換処理液で処理する工程、
を含む、アルミニウム材のめっき前処理方法。
【0007】
項2. 前記工程1の後に前記工程2が行われる、項1に記載のめっき前処理方法。
【0008】
項3. 前記界面活性剤がノニオン系界面活性剤である、項1又は2に記載の前処理方法。
【0009】
項4. 前記酸性表面調整液のpHが1以下である、項1〜3のいずれかに記載の前処理方法。
【0010】
項5. 前記酸性亜鉛置換処理液が亜鉛化合物及びフッ素化合物を含有する、項1〜4のいずれかに記載の前処理方法。
【0011】
項6. 前記酸性亜鉛置換処理液が水溶性ノニオン界面活性剤、並びに鉄、ニッケル、銅、銀、パラジウム、鉛、ビスマス、及びタリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属の水溶性塩類からなる群より選択される少なくとも1種の成分を含有する、項1〜5のいずれかに記載の前処理方法。
【0012】
項7. 前記酸性亜鉛置換処理液のpHが1〜7である、項1〜6のいずれかに記載の前処理方法。
【0013】
項8. エッチング処理及び/又はデスマット処理を含まない、項1〜7のいずれかに記載の前処理方法。
【0014】
項9. 前記アルカリ性亜鉛置換処理液における亜鉛イオン源濃度が12g/L以下である、項1〜8のいずれかに記載の前処理方法。
【0015】
項10. 項1〜9のいずれかに記載のめっき前処理方法により得られる、めっき処理用アルミニウム材。
【0016】
項11. 項10に記載のめっき対象アルミニウム材をめっき処理する工程を含む、アルミニウム材のめっき方法。
【0017】
項12. 前記めっき処理が無電解ニッケルめっき処理である、項11に記載のめっき方法。
【0018】
項13. 前記アルミニウム材が、非アルミニウム材上にアルミニウム又はアルミニウム合金皮膜が形成されてなる物品である、項11又は12に記載のめっき方法。
【0019】
項14. 項11〜13のいずれかに記載のめっき方法により得られる、アルミニウム材めっき物。
【0020】
項15. 界面活性剤を含有し且つ酸性である、アルミニウム材のめっき前処理液。
【0021】
項16. 項1〜9のいずれかに記載の前処理方法に用いるための、項15に記載のめっき前処理液。
【0022】
項17. 亜鉛化合物及びフッ素化合物を含有し且つ酸性である、項1〜9のいずれかに記載の前処理方法に用いるための亜鉛置換処理液。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、めっき均一性及びめっき平滑性により優れためっき技術を提供することができる。さらには、上記に加えて、素材の減膜がより抑制されためっき技術を提供することも可能である。またさらに、本発明の好ましい一態様においては、上記特性を発揮しながらもめっき密着性に優れためっき技術を提供することが可能である。また、本発明のめっき技術は、種々のアルミニウム材に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0025】
1.めっき前処理方法
本発明は、その一態様において、(工程1)界面活性剤を含有する酸性表面調整液でアルミニウム材を処理する工程、及び/又は(工程2)アルミニウム材を、酸性亜鉛置換処理液で処理した後、アルカリ性亜鉛置換処理液で処理する工程、を含む、アルミニウム材のめっき前処理方法(本明細書において、「本発明のめっき前処理方法」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。
【0026】
1−1.工程1
工程1の処理対象のアルミニウム材としては、処理対象となる表面部分がアルミニウム又はアルミニウム合金によって形成されている物品であれば特に制限されない。例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金を材質とする各種の物品のほか、非アルミニウム材(例えば、セラミックス、ウェハ等の各種の基材)上にアルミニウム又はアルミニウム合金皮膜が形成されてなる物品、溶融アルミニウムめっき処理を施した物品、鋳物、ダイキャスト等を使用することができる。また、アルミニウム材の形状も特に限定されるものではなく、通常の板状物(フィルム、シート等の薄膜状物を含む)や各種の形状に成形された成型品のいずれでもよい。また、上記板状物には、アルミニウム又はアルミニウム合金単独の板状物に限らず、例えばセラミックスやウェハ等の基板上にスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の常法に従って成形されたアルミニウム皮膜(基板と一体化されたもの)も包含される。
【0027】
アルミニウム合金としては特に限定されず、アルミニウムを主要金属成分とする各種合金を用いることができる。例えば、A1000系の準アルミニウム、A2000系の銅及びマンガンを含むアルミニウム合金、A3000系のアルミニウム−マンガン合金、A4000系のアルミニウム−シリコン合金、A5000系のアルミニウム−マグネシウム合金、A6000系のアルミニウム−マグネシウム−シリコン合金、A7000系のアルミニウム−亜鉛−マグネシウム合金、A8000系のアルミニウム−リチウム系合金等を適用対象とすることができる。
【0028】
アルミニウム又はアルミニウム合金のアルミニウム純度は、めっき平滑性の観点から、好ましくは98%以上、より好ましくは98.5%以上、さらに好ましくは99%以上である。
【0029】
工程1で使用される酸性表面調整液は、従来のエッチングにより表面凹凸を形成することで濡れ性を得ていた工程と異なり、実質的にアルミニウムがエッチングされず、減膜がない状態で濡れ性を付与する工程である。酸性表面調整液を使用することで、エッチングによる減膜が実質的に無いことにより、めっき均一性、めっき平滑性に優れた無電解ニッケルめっき処理が提供できる。
【0030】
酸性表面調整液が含有する界面活性剤としては、特に制限されず、例えばノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはノニオン系界面活性剤が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンナフチルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。界面活性剤は、1種のみを使用することができるし、又は2種以上を組合せて使用することもできる。
【0031】
酸性表面調整液中の界面活性剤の濃度は、めっき均一性、めっき平滑性、めっき密着性等の観点から、例えば0.01〜100g/L、好ましくは0.05〜50g/L、より好ましくは0.1〜10g/L、さらに好ましくは0.5〜8g/L、特に好ましくは1〜5g/Lである。
【0032】
酸性表面調整液のpHは、めっき均一性、めっき平滑性、めっき密着性等の観点から、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、よりさらに好ましくは1以下である。
【0033】
酸性表面調整液は、pHを上記範囲に調整するために、酸を含有する。酸としては、例えば硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、葉酸、蓚酸、メタンスルフォン酸等が挙げられる。
【0034】
酸性表面調整液には、本発明の効果が著しく阻害されない限りにおいて、上記以外の他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、例えばギ酸、酢酸等のモノカルボン酸又はこれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等);マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸又はこれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等);リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸又はこれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等);エチレンジアミンジ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸又はこれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等);アラニン、アルギニン等のアミノ酸等が挙げられる。
【0035】
他の成分の含有量は、酸性表面調整液100質量%に対して、例えば0〜90質量%、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜25質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、よりさらに好ましくは0〜1質量%である。
【0036】
酸性表面調整液は、溶媒として水を含有する。酸性表面調整液は、水を用いて、各成分を適宜混合することにより製造することができる。溶媒としては水のみならず、本発明の効果が著しく阻害されない限りにおいて、水に加えて他の溶媒を追加してもよい。
【0037】
工程1の処理の態様は、アルミニウム材の表面上に酸性表面調整液が接触可能な態様である限り特に制限されない。該接触方法としては、例えば、浸漬、塗布、スプレー等の方法を採用することができる。
【0038】
処理時の温度は、特に制限されないが、例えば5〜80℃、好ましくは10〜60℃、より好ましくは30〜50℃である。
【0039】
処理時間は、処理温度に応じて異なるが、例えば1〜15分間、好ましくは1.5〜8分間である。
【0040】
1−2.工程2
1−2−1.酸性亜鉛置換処理
工程2の処理対象のアルミニウム材としては、工程1の処理対象と同様である。めっき均一性、めっき平滑性、めっき密着性等の観点から、好ましくは、工程2の処理対象は、工程1の処理後のアルミニウム材である。この観点から、本発明のめっき前処理方法においては、工程1の後に工程2が行われることが好ましい。
【0041】
工程2で使用される酸性亜鉛置換処理液は、亜鉛化合物を含有する酸性pHの亜鉛置換処理液である限り特に制限されない。
【0042】
亜鉛化合物は、特に制限されない。その具体例としては、例えば硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、酸化亜鉛等を例示できる。之等の内では、酸性域における陰イオンのアルミニウムに対する溶解速度に影響の少ない、例えば硫酸亜鉛が好適である。之等の亜鉛化合物は、金属亜鉛(Zn)濃度として、亜鉛置換速度、亜鉛粒子の密着力等の観点から好ましくは、1〜50g/Lとなる範囲から選択されるのがよい。
【0043】
酸性亜鉛置換処理液は、アルミニウムを溶解してその亜鉛との置換をスムーズに進行させるという観点から、フッ素化合物を含有することが好ましい。フッ素化合物は、の代表例としては、比較的少量の使用で適度の速度でしかも均一にアルミニウムを溶解させ得るものとして、例えばフッ酸や二フッ化水素アンモニウムを例示できる。上記二フッ化水素アンモニウムを利用する場合、得られる液は何らpH調整を行なわずとも所望の適当なpHを有するものとなる。本発明ではまた、上記例示のフッ素化合物の代わりに、例えばフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等のフッ化物塩も上記フッ素化合物として使用することができる。之等のフッ化物塩を用いる場合、得られる液のpHは所望の酸性域とならない場合があり、その場合は、別個にpH調整剤として、例えば塩酸、硫酸、硝酸等の強酸を添加したり、上記フッ酸、二フッ化水素アンモニウムを併用して、所望のpH範囲とすることができる。之等フッ素化合物は、酸性亜鉛置換処理液中に、亜鉛置換速度の観点から好ましくは、フッ素として0.1〜20g/Lとなる量範囲で添加配合される。
【0044】
酸性亜鉛置換処理液は、亜鉛置換効率等の観点から、pHが1〜7であることが好ましい。このpHの調整は上記必須成分である亜鉛化合物及びフッ素化合物の種類の選択により行なうことができ、また必要に応じて、通常のアルカリ成分の添加により行なうことができる。ここで用いられるpH調整のためのアルカリ成分は、特に限定されるものではないが、液中の塩濃度を上昇させないためには、少量の添加で所望のpH調整が可能な強アルカリ水溶液、例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水等であるのが好ましい。
【0045】
酸性亜鉛置換処理液には、本発明の効果が著しく阻害されない限りにおいて、上記以外の他の成分が含まれていてもよい。酸性亜鉛置換処理液は、上記以外にも、アルミニウム材表面への亜鉛の置換速度をコントロール(通常促進)するためや、亜鉛置換皮膜の緻密性、均一性、平滑性等を改善するための、各種の添加剤成分を適宜追加配合することができる。かかる亜鉛の置換速度を促進するための成分には、例えば鉄、ニッケル、銅、銀、パラジウム、鉛、ビスマス、及びタリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の水溶性塩類が含まれる。その例としては、例えば上記金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩等が挙げられる。特に好ましい具体例には、塩化第一鉄、塩化ニッケル、塩化第一銅、硝酸銀、塩化パラジウム等が包含される。之等は、通常入手される水和物形態であってもよく、1種単独で用いても、また2種以上併用することもできる。之等金属の水溶性塩類は、金属元素として0.05mg/L以上の濃度となる量で添加することにより、その添加による所望の効果、即ち亜鉛置換速度の促進効果を発揮し得る。特に、アルミニウムよりも貴な金属程、少量の使用で上記効果を奏することができる。一般には、例えば金属元素換算で銀、パラジウム、鉛、タリウム、ビスマスは0.05〜100mg/L程度、銅は0.5〜500mg/L程度、鉄、ニッケルは10〜10000mg/L程度の濃度範囲となる量から選ばれるのが好ましい。
【0046】
また、置換速度をコントロールし得る添加剤成分には、脂肪族オキシカルボン酸類が包含される。その例としては、例えばグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸等を例示でき、之等は1種単独でも、2種以上でも利用できる。その添加量は、通常酸性亜鉛置換処理液中に1〜50g/L程度の範囲から選ばれるのがよく、これによって、上記亜鉛の置換速度を適度にコントロールし得、また析出亜鉛金属粒子をより緻密なものとすることができる。
【0047】
更に、亜鉛置換皮膜の均一性、平滑性等を向上し得る添加剤成分としては、界面活性剤を例示することができる。金属イオンその他のイオン類との反応による沈殿物の析出や耐酸性等を考慮すると、上記界面活性剤の内では、水溶性ノニオン系界面活性剤が好ましい。かかる水溶性ノニオン系界面活性剤には、例えばアルキルポリオキシエチレンエーテル型、アルキルポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル型のものが含まれる。之等の内では、特にアルキルフェノールや高級アルコールのエチレンオキサイド付加物及び/又はプロピレンオキサイド付加物等が好適であり、その曇点は40℃以上であるのが好ましい。之等はその1種を単独でも2種以上を併用しても利用することができ、通常、酸性亜鉛置換処理液中に0.1〜3g/L程度の範囲で添加配合することにより、所望の効果、特にアルミニウム金属表面に対する濡れ性を改善して、置換亜鉛皮膜の均一性を向上させ、該置換亜鉛皮膜の緻密化や該皮膜表面の平滑化に寄与し得る。
【0048】
酸性亜鉛置換処理液は、溶媒として水を含有する。酸性亜鉛置換処理液は、水を用いて、各成分を適宜混合することにより製造することができる。溶媒としては水のみならず、本発明の効果が著しく阻害されない限りにおいて、水に加えて他の溶媒を追加してもよい。
【0049】
酸性亜鉛置換処理の処理態様は、アルミニウム材の表面上に酸性亜鉛置換処理液が接触可能な態様である限り特に制限されない。該接触方法としては、例えば、浸漬、塗布、スプレー等の方法を採用することができる。
【0050】
酸性亜鉛置換処理の処理温度及び処理時間は、液組成等に応じて適宜決定することができる。一般には、液組成に応じて、液温は5〜80℃の範囲から選択され、所望の膜厚に応じて浸漬時間を5秒〜10分程度の範囲から選ばれるのが適当である。特に、作業性のよい液温としては、常温又はその付近の温度である20〜40℃程度の範囲が好ましく、この範囲の温度条件を採用する場合には、一般に約5秒〜3分程度の浸漬時間を採用するのが好ましい。
【0051】
酸性亜鉛置換処理の後は、後述のアルカリ性亜鉛置換処理が行われる。この際、酸性亜鉛置換処理の後、後述のアルカリ性亜鉛置換処理の前に、他の処理を介在させることができる。本発明の一態様において、好ましくは、酸性亜鉛置換処理の後、後述のアルカリ性亜鉛置換処理の前に、硝酸水溶液で表面を洗浄することができる。酸洗することにより、粗雑な亜鉛置換膜が除去され、アルミニウム表面電位をシフトして、次のアルカリ性亜鉛置換処理で薄く均一で緻密な置換膜を得ることができる。
【0052】
1−2−2.アルカリ性亜鉛置換処理
工程2で使用されるアルカリ性亜鉛置換処理液は、亜鉛イオン源を含有するアルカリ性pHの亜鉛置換処理液である限り特に制限されない。
【0053】
亜鉛イオン源、その他の成分については、公知の成分、組合せ、濃度等を採用することができる。アルカリ性亜鉛置換処理液は、水を用いて、各成分を適宜混合することにより製造することができる。溶媒としては水のみならず、本発明の効果が著しく阻害されない限りにおいて、水に加えて他の溶媒を追加してもよい。
【0054】
アルカリ性亜鉛置換処理液は、めっき均一性をより向上させることができるという観点から、好ましくは、亜鉛イオン源濃度がより低いものが好ましく、例えば12g/L以下、好ましくは10g/L以下、より好ましくは7g/L以下である。該濃度の下限は、例えば0.1g/L、0.5g/L、1g/L、1.5g/Lである。
【0055】
また、アルカリ性亜鉛置換処理液は、好ましくは、アルカリ、亜鉛イオン源、カルボン酸源、及び金属塩を含有する。
【0056】
アルカリとしては、特に制限されないが、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等); マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物(例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアルカリ金属の水酸化物が挙げられ、より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられ、さらに好ましくは水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0057】
アルカリは、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0058】
アルカリ性亜鉛置換処理液におけるアルカリの濃度は、特に制限されない。該濃度は、例えば5〜300g/L、好ましくは10〜200g/L、より好ましくは20〜100g/L、さらに好ましくは30〜70g/Lである。
【0059】
亜鉛イオン源としては、特に制限されず、水中で亜鉛イオンを電離可能なものを広く使用することができる。亜鉛イオン源としては、例えば酸化亜鉛、硝酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、臭化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、硫化亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは酸化亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛等が挙げられ、より好ましくは酸化亜鉛が挙げられる。
【0060】
亜鉛イオン源は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0061】
アルカリ性亜鉛置換処理液における亜鉛イオン源の濃度は、特に制限されない。該濃度は、例えば30g/L以下である。該濃度は、めっき均一性をより向上させることができるという観点から、より低いことが好ましく、例えば12g/L以下、好ましくは10g/L以下、より好ましくは7g/L以下である。該濃度の下限は、例えば0.1g/L、0.5g/L、1g/L、1.5g/Lである。
【0062】
カルボン酸源は、水中に溶解した際にカルボン酸を遊離可能なものである限り、特に制限されず、カルボン酸、その塩等を使用することができる。カルボン酸源としては、例えば酒石酸、グルコン酸、クエン酸、乳酸、サリチル酸、グリコール酸、リンゴ酸、マンデル酸等のヒドロキシカルボン酸; グリシン、アラニン、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、ニトリロ四酢酸、グルタミン酸-N,N-二酢酸、アスパラギン酸-N,N-二酢酸等のアミノカルボン酸等; 酢酸、しゅう酸、マロン酸等のその他のカルボン酸; 及びそれらの塩が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシカルボン酸、その塩が好ましく、酒石酸、グルコン酸、それらの塩がより好ましく、酒石酸、その塩がさらに好ましい。カルボン酸の塩としては、特に制限されないが、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩; カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。カルボン酸と共に塩を構成する元素は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。酒石酸の塩としては、カリウム及びナトリウムとの塩(酒石酸カリウムナトリウム、ロッシェル塩)が好ましい。
【0063】
カルボン酸源は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0064】
アルカリ性亜鉛置換処理液におけるカルボン酸源の濃度は、特に制限されない。該濃度は、例えば30g/L以下である。該濃度は、好ましくは0.5〜20g/L、より好ましくは1〜12g/L、さらに好ましくは2〜8g/Lである。
【0065】
金属塩としては、特に制限されないが、例えば亜鉛以外の遷移金属、例えば鉄、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、銀、スズ等の金属の塩が挙げられる。これらの中でも、鉄、銅等の塩が好ましく、鉄の塩がより好ましい。塩の種類は特に制限されず、例えば塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。金属塩として、好ましくは塩酸鉄、硝酸鉄、硫酸鉄等が挙げられる。
【0066】
金属塩は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0067】
アルカリ性亜鉛置換処理液における金属塩の濃度は、特に制限されない。該濃度は、例えば20g/L以下である。該濃度は、好ましくは0.1〜12g/L、より好ましくは0.2〜7g/L、さらに好ましくは0.5〜4g/Lである。 アルカリ性亜鉛置換処理液は、亜鉛置換効率等の観点から、pHが9以上であることが好ましい。該pHは、より好ましくは11以上、さらに好ましくは12以上、よりさらに好ましくは13以上、特に好ましくは13.5以上である。
【0068】
アルカリ性亜鉛置換処理の処理態様は、アルミニウム材の表面上にアルカリ性亜鉛置換処理液が接触可能な態様である限り特に制限されない。該接触方法としては、例えば、浸漬、塗布、スプレー等の方法を採用することができる。
【0069】
アルカリ性亜鉛置換処理の処理温度及び処理時間は、液組成等に応じて適宜決定することができる。一般には、液組成に応じて、液温は5〜60℃の範囲から選択され、所望の膜厚に応じて浸漬時間を5秒〜10分程度の範囲から選ばれるのが適当である。特に、作業性のよい液温としては、常温又はその付近の温度である20〜40℃程度の範囲が好ましく、この範囲の温度条件を採用する場合には、一般に約20秒〜3分程度の浸漬時間を採用するのが好ましい。
【0070】
1−3.他の前処理
本発明の前処理方法が、工程1を含み、且つ工程2を含まない場合は、工程1の後に、亜鉛置換処理を行うことが好ましい。亜鉛置換処理は2回以上繰り返して行ってもよい。亜鉛置換処理に使用する亜鉛置換処理液としては、特に制限されず、公知の処理液を使用することができる。
【0071】
本発明の前処理方法が、工程2を含み、且つ工程1を含まない場合は、工程2の前に、亜鉛置換処理の前に行う公知の前処理、例えば脱脂処理、エッチング処理、デスマット処理等を行うことができる。
【0072】
本発明のめっき前処理方法によれば、エッチング処理及びデスマット処理を含まなくとも、めっき均一性及びめっき平滑性により優れためっきが可能である。さらには、上記に加えて、素材の減膜がより抑制されためっきも可能である。このため、本発明のめっき前処理方法は、エッチング処理及びデスマット処理を含まないことが好ましい。さらに、本発明の一態様においては、エッチング処理及びデスマット処理に加えて、脱脂処理も含まない。
【0073】
1−4.めっき処理用アルミニウム材
本発明は、その一態様において、本発明のめっき前処理方法により得られるめっき処理用アルミニウム材に関する。該めっき処理用アルミニウム材は、めっき処理に供するために用いられる。
【0074】
2.めっき方法
本発明は、その一態様において、本発明のめっき前処理方法により得られるめっき処理用アルミニウム材をめっき処理する工程を含む、アルミニウム材のめっき方法(本明細書において、「本発明のめっき方法」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。
【0075】
めっき処理は、アルミニウム材の亜鉛置換処理後に行い得るものである限り特に制限されない。めっき処理は、無電解めっき処理、電気めっき処理のいずれでもよい。無電解めっきとしては、従来より知られている各種の無電解めっきでよく、その例としては酸性、アルカリ性の無電解ニッケルめっき、アルカリ性無電解銅めっき等を例示できる。上記酸性無電解ニッケルめっきにおいては、ホウ酸系、リン酸系等の還元剤を用いためっき浴の利用によっても良好に所望のニッケルめっきを行ない得る。また、電気めっきとしては、青化銅めっき、硫酸銅めっき等の銅めっきや、ワット浴等を用いた電気ニッケルめっき等を好ましく採用できる。かかる電気ニッケルめっきにより得られる皮膜上には、更に例えば電気クロムめっき等を施すことができる。
【0076】
めっき処理は、好ましくは無電解ニッケルめっき処理である。この好ましい態様において、無電解ニッケルリンめっき液としては、次亜リン酸塩を還元剤とする無電解ニッケルリンめっき液であれば、特に限定なく使用することができる。以下、この好ましい態様について詳細に説明する。
【0077】
無電解ニッケルリンめっき液として、例えば、ニッケル塩、次亜リン酸塩、及びオキシカルボン酸を含有する無電解ニッケルリンめっき液が挙げられる。ニッケル塩として、例えば、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、炭酸ニッケル等が挙げられる。次亜リン酸塩として、例えば、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等が挙げられる。オキシカルボン酸として、例えば、乳酸、リンゴ酸、これらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)等が挙げられる。前記めっき液中の各成分の濃度としては、ニッケル塩は、5〜60g/L程度が好ましく、15〜40g/L程度がより好ましい。次亜リン酸塩は、5〜60g/L程度が好ましく、20〜40g/L程度がより好ましい。オキシカルボン酸は、5〜50g/L程度が好ましく、10〜30g/L程度がより好ましい。
【0078】
めっき液のpHは、4以上であることが必要であり、5.0〜8程度が好ましい。pHは、水酸化ナトリウム、アンモニア水等で調整することができる。処理温度は、60〜100℃程度が好ましく、80〜90℃程度がより好ましい。処理時間は、必要とする厚みのめっき皮膜が形成されるまでの時間であり、めっき皮膜の厚みに応じて適宜調整すればよい。
【0079】
本発明は、その一態様において、本発明のめっき方法により得られる、アルミニウム材めっき物に関する。該アルミニウム材めっき物は、本発明のめっき前処理方法により得られるめっき処理用アルミニウム材の表面上にめっき膜が形成されてなる。該アルミニウム材めっき物は、めっき均一性及びめっき平滑性により優れている。さらには、素材の減膜がより低減されている。また、本発明の好ましい一態様においては、上記特性を発揮しながらも、めっき密着性にも優れる。
【0080】
めっき平滑性(算術平均粗さ(Ra))は、好ましくは0.65μm以下、より好ましくは0.6μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下、よりさらに好ましくは0.4μm以下、とりわけさらに好ましくは0.3μm以下、とりわけよりさらに好ましくは0.2μm以下、特に好ましくは0.1μm以下である。下限は特に制限されず、例えば0.001μm、0.01μmである。
【0081】
めっき平滑性(算術平均粗さ(Ra))は、形状測定レーザマイクロスコープ(キーエンス社製 VK−X100)で測定し、JIS B 0601:2001に基づく算術平均粗さ(Ra)を算出することにより、得られる。
【0082】
減膜量は、例えば1μm以下、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.4μm以下、さらに好ましくは0.3μm以下である。下限は特に制限されず、例えば0.0001、0.001μmである。
【0083】
減膜量は、未処理時の重量とめっき処理後にめっき膜を溶解(例えば無電解ニッケルめっきの場合であれば、62%硝酸500ml/Lで溶解)した後の重量を分析用電子天びん(株式会社エー・アンド・デイ製HR−120)で測り、その重量差、アルミニウムの比重を2.7g/cmとし、減膜量を算出して、得られる。
【実施例】
【0084】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0085】
試験例1
めっき前処理として、界面活性剤を含有する酸性表面調整液による処理を行った後、めっき処理を行った。具体的には、A1085板材(鏡面仕上げ)の50mm×100mmに、めっき前処理した後、無電解ニッケルめっきを3μm施工した。実施例及び比較例について、各種性質を評価した。具体的には以下のようにして行った。
【0086】
<試験例1−1.処理工程>
実施例は、以下の表に示す工程で処理した。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
比較例は、以下の表に示す工程で処理した。
【0092】
【表5】
【0093】
<試験例1−2.めっき評価>
無電解ニッケルめっき後の各種性質を評価した。
【0094】
(めっき均一性)
めっきの均一性は、目視評価でムラの有無を評価した。全面同じ光沢具合、さらに光沢良好の場合は◎、全面同じ光沢具合の場合は○、一部光沢ムラがある場合は△、全体に酷いムラがある場合は×とした。
【0095】
(めっき平滑性)
めっき平滑性は、形状測定レーザマイクロスコープ(キーエンス社製 VK−X100)で測定し、JIS B 0601:2001に基づく算術平均粗さ(Ra)で評価した。
【0096】
(めっき密着性)
めっき密着性は、90°折り曲げ試験により評価を実施した。めっきと素材の密着性が良好な場合は○、工業的に問題ないが一部剥がれが認められる場合は△、明らかな剥がれが認められる場合は×とした。なお、○及び△を合格の評価とした。
【0097】
<試験例1−3.前処理評価>
(素材表面の濡れ性)
素材表面の濡れ性は、表面調整処理後(実施例)又はデスマット処理後(比較例)に空気中で60秒放置し、十分濡れているか撥水が認められているかを評価した。十分濡れている場合は○、部分的に撥水が認められる場合は△、全体がほぼ撥水している場合には×とした。
【0098】
(素材減膜)
亜鉛置換処理の前処理(表面調整処理(実施例)、又はアルカリ脱脂+エッチング+デスマット(比較例)による素材の減膜は、重量法で評価した。前処理前後の重量を分析用電子天びん(株式会社エー・アンド・デイ製HR−120)で測り、その重量差、アルミニウムの比重を2.7g/cmとし、減膜量を算出した。
【0099】
<試験例1−4.結果>
結果を表6−1及び6−2に示す。アルミニウム材を表面調整液に浸漬することで、素材の減膜を抑制しながらも、従来のエッチングにより濡れ性を得ていた工程よりも、めっきの均一性及び平滑性向上に効果が認められた。
【0100】
【表6-1】
【0101】
【表6-2】
【0102】
試験例2
めっき前処理として、酸性亜鉛置換処理を行った後、めっき処理を行った。具体的には、素材にシリコンウェハ上の1μmアルミニウム系スパッタ膜4種((1)Al99.5%<、(2)Al−(0.5〜1%)Si、(3)Al−(0.5〜1%)Cu、(4)Al−(0.5〜1%)Si−(0.5〜1%)Cu)、ニラコ社製 アルミ箔Al99%<、山本鍍金試験器社製 ハルセル陰極アルミニウム板A1085、日本テストパネル社製A1050、A2024、A5052、A6061、A7075板を使用し、めっき前処理した後、無電解ニッケルめっきを3μm施工した。実施例及び比較例について、各種性質を評価した。具体的には以下のようにして行った。
【0103】
<試験例2−1.処理工程>
実施例は、以下の表に示す工程で処理した。
【0104】
【表7】
【0105】
【表8】
【0106】
【表9】
【0107】
比較例は、上記の表5に示す工程で処理した。
【0108】
<試験例2−2.めっき評価>
(めっき均一性)
試験例1−2と同様。
【0109】
(めっき平滑性)
試験例1−2と同様。素材ごとに表面凹凸が異なるため、素材の表面粗さも測定。
【0110】
(めっき密着性)
試験例1−2と同様。
【0111】
(アルミ素材の減膜)
アルミ箔、アルミ板は、50mm×100mmを使用し、未処理時の重量と無電解ニッケルめっき処理後に62%硝酸500ml/Lにめっき膜を溶解した後の重量を分析用電子天びん(株式会社エー・アンド・デイ製HR−120)で測り、その重量差から、アルミニウムの比重を2.7g/cmとし、減膜量を算出した。スパッタAl系膜は、断面観察により、残存しているスパッタAl系膜の厚みを測定し、1μmからの差を減膜量とした。
【0112】
<試験例2−3.結果>
結果を表11−1及び11−2に示す。酸性亜鉛置換を実施することで、めっきの平滑性が大幅に向上することが分かった。
【0113】
【表10-1】
【0114】
【表10-2】
【0115】
試験例3
めっき前処理として、酸性亜鉛置換処理を行った後、アルカリ性亜鉛置換処理し、その後、めっき処理を行った。実施例及び比較例について、各種性質を評価した。具体的には、第2亜鉛置換において以下のアルカリ亜鉛置換液を使用する以外は、試験例2の実施例と同様にして行った。
【0116】
【表11】
【0117】
結果を表12に示す。酸性亜鉛置換後にアルカリ亜鉛置換を実施することで、密着性がさらに向上することが分かった。
【0118】
【表12】
【0119】
試験例4
めっき前処理として、酸性亜鉛置換処理を行った後、アルカリ性亜鉛置換処理し、その後、めっき処理を行った。実施例及び参考例について、めっき均一性を試験例1と同様にして評価した。処理は、表13に示す工程で行った。また、条件及び結果を表14−1及び表14−2に示す。
【0120】
酸性亜鉛置換後のアルカリ亜鉛置換を、低濃度亜鉛アルカリ亜鉛置換処理液で行うことにより、めっき均一性をより向上することが分かった。
【0121】
【表13】
【0122】
【表14-1】
【0123】
【表14-2】