【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による覆工用セントルの一態様は、
トンネルの覆工コンクリートを打設する際に適用される覆工用セントルであって、
前記覆工用セントルは、ガントリーと、該ガントリーに支持されるセントルフォームと、を有し、
前記セントルフォームは点検口を備え、該点検口の近傍にはスライドフレームが設けられ、該スライドフレームには検査窓がスライド自在に取り付けられており、
少なくともアンカーを有する埋め込み金具が前記検査窓に固定され、前記スライドフレームに沿った該検査窓の移動により、前記点検口に対して該埋め込み金具が設置されることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、セントルフォームの有する点検口の近傍に設けられたスライドフレームに検査窓がスライド自在に取り付けられ、スライドフレームに沿う検査窓の移動により検査窓に固定された埋め込み金具が移動して点検口に設置されることにより、所望位置にある点検口に対して埋め込み金具を精度よく、効率的に設置することができる。
ここで、トンネル内に敷設されたレールに沿ってトンネルの長手方向に移動するガントリー(門型の移動式架台)に対して、例えば、鉛直方向や水平方向、斜め上方や斜め下方に延設する支保部材を介してセントルフォームが支持される。セントルフォームには、その長手方向と周方向にそれぞれ間隔を置いて、複数の点検口が開設されている。各点検口には検査窓が着脱自在に設けられている。セントルフォームとトンネル掘削孔(もしくはトンネル掘削孔の表面の吹付けコンクリート層)との間の打設空間には、覆工用の鉄筋が配筋された後、コンクリートが打設されることになるが、トンネル内を延設する打設用ホースの筒先が点検口を介して打設空間に臨み、打設空間にコンクリートを打設することができる。また、別途の点検口を介してバイブレータを打設空間に挿入することができる。さらに、点検口を介してコンクリートの打設状況を確認することができる。
【0009】
本態様の覆工用セントルでは、セントルフォームに開設されている複数の点検口のうち、所望位置にある複数の点検口に対してそれぞれ埋め込み金具を設置するものである。セントルフォームの周方向に間隔を置いて開設されている複数の点検口のうち、例えば左右の肩部等にある点検口を介して埋め込み金具を設置する場合は、ガントリーにおいて対応する位置に複数のスライドフレームが取り付けられ、各スライドフレームに対して検査窓がスライド自在に取り付けられる。このように、埋め込み金具が設置される点検口に対応するスライドフレームがガントリーに取り付けられて、覆工用セントルが形成される。
尚、スライドフレームの近傍において、トンネルの長手方向に延設する吊りレールが設けられ、吊りレールにチェーンブロック等がスライド自在に吊り下げられているのが好ましい。チェーンブロックを用いて埋め込み金具を吊り下げ、検査窓に対して埋め込み金具を吊り下ろしながら設置することにより、埋め込み金具が重量物である場合においても、負荷なく、効率的に埋め込み金具を検査窓に設置することができる。
【0010】
検査窓に埋め込み金具が固定され、スライドフレームを移動して点検口に検査窓が位置決めされることにより、検査窓に固定されている埋め込み金具が点検口を介してコンクリートの打設空間に臨む。点検口に設置される埋め込み金具には様々な形態があるが、少なくともアンカーを有している。例えば、直線状のアンカーのみの形態(その一部もしくは全部が覆工コンクリートに埋設される形態)や、アンカーと吊り治具が一体とされている形態、鋼製のプレートの一方面にアンカーが取り付けられている形態などが挙げられる。後者の形態の埋め込み金具を覆工コンクリートに固定する場合は、鋼製のプレートが点検口に位置決めされ、プレートから突設する例えば複数のアンカーが、打設空間に配筋されている覆工用の鉄筋内に位置決めされる。ここで、埋め込み金具が固定された検査窓をスライドフレームに沿ってスライドさせる際には、検査窓の一部に取り付けたチェーンをレバーホイストやチェーンブロック等にて操作することにより、負荷なく検査窓のスライドを実現することができる。
【0011】
また、本発明による覆工用セントルの他の態様において、前記埋め込み金具は、プレートと、該プレートに取り付けられているアンカーと、を有し、
前記検査窓には取り付け用開口が開設されており、
前記検査窓に前記埋め込み金具が載置され、該検査窓のトンネル側の背面に配設されている固定治具により、前記取り付け用開口を介して前記埋め込み金具が該検査窓に固定されることを特徴とする。
本態様によれば、検査窓に対して埋め込み金具が固定治具にて固定されていることにより、検査窓に対して埋め込み金具を効率的かつ強固に固定することができ、例えば、打設空間に充填されたコンクリートからの側圧に起因する埋め込み金具のずれ等の問題は生じない。
【0012】
また、本発明による覆工用セントルの他の態様において、前記埋め込み金具には第一ボルト孔を有する引き込みブラケットが取り付けられており、
前記固定治具は、前記検査窓に対する前記埋め込み金具の上下位置を調整する上下位置調整金具と、該上下位置調整金具が収容される枠状の座金金具と、架け渡し片と、を少なくとも備えており、
前記上下位置調整金具は、固定ボルトが螺合するとともに第二ボルト孔を備えた被引き込み片と、該被引き込み片に対して交差した状態で固定されている螺子棒と、該螺子棒に螺合しているナットと、を備えており、
前記架け渡し片は、前記座金金具の有する対向する一対の側面に開設されている差し込み開口に差し込まれて該一対の側面間に架け渡されるようになっており、
枠状の前記座金金具に前記上下位置調整金具が収容され、その際に、前記被引き込み片の一部が前記座金金具から前記引き込みブラケット側に張り出すとともに、前記螺子棒が前記座金金具の頂面に開設されている収容溝に嵌るようになっており、
前記第一ボルト孔と前記第二ボルト孔が位置合わせされ、ボルトが挿通されてボルト接合されるとともに、前記上下位置調整金具の有する前記固定ボルトが捻じ込まれて前記架け渡し片が押し込まれることにより、前記検査窓に対して前記埋め込み金具が固定されることを特徴とする。
本態様によれば、固定治具が、上下位置調整金具と、座金金具と、架け渡し片とを少なくとも備え、座金金具に収容された上下位置調整金具が埋め込み金具に固定され、座金金具に差し込まれた架け渡し片を上下位置調整金具の有する固定ボルトが押し込むことにより、固定治具にて検査窓に対して埋め込み金具を強固に固定することができる。
【0013】
また、本発明による覆工用セントルの他の態様において、前記埋め込み金具の有する前記プレートのトンネル側の背面には、位置調整用マーキングが施され、
前記検査窓には、位置調整用開口が開設され、
前記埋め込み金具が前記検査窓に載置された際に、前記位置調整用開口を介して前記位置調整用マーキングがトンネルの内側から視認されるようになっており、
前記位置調整用開口に対する前記位置調整用マーキングの相対位置に基づいて、前記検査窓に対する前記埋め込み金具の設置位置が特定されることを特徴とする。
本態様によれば、埋め込み金具の有するプレートの背面に設けられた位置調整用マーキングと、検査窓に開設された位置調整用開口との相対位置を視認することにより、検査窓に対する埋め込み金具の二次元的な位置ずれを特定することができる。
例えば、位置調整用マーキングの一例として、プレートの中心C1と、この中心C1を交点とする水平線と鉛直線を挙げることができる。一方、位置調整用開口の一例として、菱形の開口を挙げることができ、菱形の二つの対角線(水平対角線と鉛直対角線)の交点を検査窓の中心C2とすることができる。この例によれば、プレートの中心C1のずれ量、より具体的には、検査窓の中心C2からの高さ方向のずれ量と横方向のずれ量の双方を精度よく特定することができる。
【0014】
また、本発明による覆工用セントルの他の態様は、前記検査窓に対する前記埋め込み金具の位置調整の際に、前記ナットの締付けが調整されて前記螺子棒に対する該ナットの相対位置が変更されることにより、前記検査窓に対する前記埋め込み金具の上下位置が調整されることを特徴とする。
本態様によれば、上下位置調整金具を形成する螺子棒に対して、座金金具の頂面に当接しているナットを締め付けたり緩めたりすることにより、検査窓に対する埋め込み金具の上下位置の調整を容易に行うことができる。尚、検査窓に対する埋め込み金具の水平位置の調整は、例えば作業員が手動にて埋め込み金具を水平方向に移動させることにより、行うことができる。
【0015】
また、本発明による覆工用セントルの他の態様において、前記取り付け用開口に対して前記座金金具が設置された際に、該取り付け用開口の一部は前記プレートにて閉塞されない余開口が形成され、
前記固定治具は、前記余開口を閉塞する穴埋め金具をさらに備えており、
前記座金金具の前記側面から側方に張り出し片が張り出しており、該張り出し片に対して前記穴埋め金具が固定されることを特徴とする。
本態様によれば、取り付け用開口に対して座金金具が設置された際に形成される、プレートにて閉塞されない余開口を閉塞する穴埋め金具を固定治具がさらに有することにより、打設空間に充填されたコンクリートが余開口からセントルフォームの内側に漏れることを防止できる。尚、例えば、検査窓に対する埋め込み金具のずれ量を調整できない場合は、ずれ量に応じて余開口の平面寸法は変化する。そのため、想定される複数の平面寸法の余開口を閉塞できる穴埋め金具を用意しておくのが好ましい。
【0016】
また、本発明による覆工用セントルの他の態様において、前記埋め込み金具の有する前記プレートは平坦なプレートであり、
前記セントルフォームのうち、前記点検口は平坦面の中に形成されており、
前記点検口に対して前記プレートの一部が面接触することを特徴とする。
本態様によれば、埋め込み金具の有するプレートが平坦なプレートである場合に、このプレートが設置されるセントルフォームの有する点検口を平坦面の中に形成しておくことにより、セントルフォーム(の点検口)に対して埋め込み金具を隙間なく精緻に設置することができる。尚、内空面が湾曲しているトンネルを施工する場合に、セントルフォーム(のスキンプレート)も、原則的にはその全面がトンネルの内空面に対応する湾曲面を有しているが、本態様では、湾曲したセントルフォームの点検口の箇所を平坦面としておくものである。