【解決手段】自走式ロボット10と、自走式ロボット10に搭載されている結束機20と、を有する自走式鉄筋結束機100であり、自走式ロボット10には、コントローラ50と、相互に交差する第一鉄筋102及び第二鉄筋120の交差部130と、交差部130におけるワイヤ結束に障害となる障害物とを撮像する撮像装置60とがさらに搭載されており、コントローラ50は、撮像装置60から撮像データを受信し、撮像データに基づいて障害物の有無を検知する。
前記撮像装置から前記コントローラに送信される画像データのうち、前記交差部が存在しないことを示す画像データ、もしくは前記自走式ロボットの走行に障害となる走行障害物が存在することを示す画像データがある場合に、前記コントローラにおいて、前記自走式ロボットを停止させる制御、もしくは、前記自走式ロボットの走行進路を変更する制御が実行されることを特徴とする、請求項2又は3に記載の自走式鉄筋結束機。
自走式ロボットと、該自走式ロボットに搭載されている結束機と、コントローラと、相互に交差する第一鉄筋及び第二鉄筋の交差部と、該交差部におけるワイヤ結束に障害となる障害物とを撮像する撮像装置と、を有する自走式鉄筋結束機において、前記コントローラに以下の処理を実行させる、自動鉄筋結束プログラムであって、
前記第一鉄筋もしくは前記第二鉄筋に沿って前記自走式ロボットを走行させ、
前記交差部を前記撮像装置に撮像させ、
前記撮像装置から撮像データを前記コントローラに送信させ、
前記交差部における前記障害物の有無を前記コントローラに検知させ、
前記コントローラが、前記障害物を検知しない場合は、前記結束機に対して前記交差部におけるワイヤ結束を実行させ、前記障害物を検知した場合は、前記結束機に対して前記交差部におけるワイヤ結束を実行させない、ことを特徴とする、自動鉄筋結束プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の自走式鉄筋結束機によれば、作業員の負担を軽減しながら、比較的安価に配筋作業を行うことが可能になる。
ところで、鉄筋トラス付きデッキプレートの主筋と当該主筋に上乗せされる配力筋の位置関係により、自走式鉄筋結束機に搭載されている自動結束機のクランプがデッキプレートのラチス材や吊材に接触して物理的にかみ合わず、結束不良を起こしてしまうといった課題が生じ得る。例えば、鉄筋トラス付きデッキプレートの例として、工場生産品で主筋間隔が200mmピッチに配列されている建設資材が多用されており、施工現場においては、このような鉄筋トラス付きデッキプレートに対して配力筋を上乗せして間配りする場合に、主筋と同様に200mmピッチにて間配りする配筋が一般に行われている。すなわち、床スラブ配筋の多くは、200mm×200mmの格子状(もち網状)に鉄筋を敷き並べることにより行われている。
一方、鉄筋トラス付きデッキプレートのラチス材の波形状や吊材のピッチは、例えば170mmピッチとなっている。この170mmピッチに対して上乗せの配力筋を200mmピッチで配列すると、配力筋の交差部がラチス材の波形状の頂部や吊材の山部近傍に接近する箇所が生じ得る。このような箇所において、自走式鉄筋結束機に搭載されている自動結束機が結束しようとすると、結束不良が生じる可能性がある。そして、このように予期せず結束不良を起こしてしまう事象が度々発生してしまうことになると、ロボット施工の信頼性が損なわれ、ロボット本体の緊急停止や自動結束機の故障に繋がる恐れもあり、施工効率の低下要因となりかねない。
また、鉄筋トラス付きデッキプレートに限らず、床スラブ配筋の主筋と配力筋の交差部近傍にスタッドボルトなどの障害物が存在する場合においても、自動結束機が鉄筋の交差部を結束しようとクランプを降下させた際に、当該クランプが障害物と干渉して結束作業ができなくなる恐れがある。
【0005】
本発明は、鉄筋の交差部におけるワイヤ結束に際して、結束機と障害物の干渉を解消することのできる、自走式鉄筋結束機及び自動鉄筋結束プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成すべく、本発明による自走式鉄筋結束機の一態様は、
自走式ロボットと、
前記自走式ロボットに搭載されている結束機と、を有する自走式鉄筋結束機であって、
前記自走式ロボットには、コントローラと、相互に交差する第一鉄筋及び第二鉄筋の交差部と、該交差部におけるワイヤ結束に障害となる障害物とを撮像する撮像装置とがさらに搭載されており、
前記コントローラは、前記撮像装置から撮像データを受信し、該撮像データに基づいて前記障害物の有無を検知することを特徴とする。
【0007】
本態様によれば、自走式ロボットに鉄筋の交差部を撮像する撮像装置が搭載され、コントローラにより、撮像データに基づいて、交差部における二方向の鉄筋以外のワイヤ結束に障害となる障害物の有無が検知されることにより、結束機と障害物の干渉を解消することができる。ここで、自走式ロボットは、モータ等のアクチュエータにより駆動する例えば二対で四つの車輪等により自走する走行台車等から形成され、例えば走行台車が相互に交差する二方向の鉄筋のうちの一方の(二列の)鉄筋上を走行することができる。また、この二対で四つの車輪に関して、一方の一対の車輪が床面を走行する際に他方の一対の車輪が床面から上昇した位置に移動し、これを交互に繰り返すことにより、進行方向に直交する方向に延設する鉄筋を跨ぎながら床面上を移動できる形態であってもよい。
撮像装置としては、例えば、CCDカメラやデジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等が挙げられ、撮像装置により、交差部と、交差部の近傍における障害物が撮像され、撮像データがコントローラに送信される。このように、撮像装置により交差部や障害物が撮像されることにより、例えばレーザー装置の場合と比較して、鉄筋の交差部とそれ以外の障害物とを明確に区別することが可能になる。
【0008】
コントローラには、自走式ロボットの進行方向において交差する二方向の配筋状態を予め画像認識させておく。配筋状態には、相互に直交もしくは様々な角度にて交差する様々な径の鉄筋同士の配筋状態が含まれる。例えば、D25とD29の鉄筋が直交する配筋状態、ともにD22の鉄筋が60度(もしくは120度)で交差する配筋状態などが挙げられる。ここで、交差部を形成する第一鉄筋と第二鉄筋は、鉄筋トラス付きデッキプレートの有する主筋と当該主筋に上乗せされる配力筋や、床スラブの主筋と配力筋の他、相互に交差する様々な鉄筋が含まれる。このように、コントローラには、鉄筋に関する画像データが格納されており、鉄筋以外の物体を障害物として検知することができる。あるいは、コントローラにおいて、鉄筋に関する画像データの他に、鉄筋以外の障害物となり得る様々な画像データ(ラチス材や吊材、スタッドボルト等に関する画像データ)が格納されており、これらの画像データに基づいて障害物を検知することもできる。
コントローラによる画像認識には、コントローラに入力されている様々な鉄筋の画像情報や障害物の画像情報に基づいてコントローラ自身が機械学習することにより、鉄筋の交差部や障害物を認識することが含まれる。
【0009】
また、本発明による自走式鉄筋結束機の他の態様において、前記コントローラには、前記交差部と前記障害物の間の離間距離に関して、前記ワイヤ結束が可能な該離間距離に関する閾値が格納されており、
前記コントローラにより、前記撮像データにおける前記離間距離が前記閾値未満であると特定された場合に、前記結束機に対して結束を行わせない制御が実行されることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、コントローラにより、交差部と障害物の間の離間距離に関する閾値と、撮像装置から送信される画像データにおける離間距離とが比較され、離間距離が閾値未満の場合に結束機に対して結束を行わせない制御が実行されることにより、結束機と障害物の干渉に起因する結束不良の発生や結束機の故障を解消することができる。ここで、「結束不良」とは、中途半端に結束されていることや、ワイヤ(結束線)が結束されることなく伸び切ってしまうこと等を意味する。
「離間距離の閾値」は、障害物の種類や交差部に対する障害物の配設位置によって変化し得る。従って、例えば、ラチス材が障害物の場合であって自走式ロボットの進行方向に対して交差部の左側にラチス材がある場合の閾値は10mmであり、交差部の右側にラチス材がある場合の閾値は20mmであるといった具合に、障害物の種類や交差部に対する障害物の配設位置等に応じた様々な閾値がコントローラに格納されているのがよい。さらに、適用される結束機の種類(製品種、型式等)が加味されて、離間距離の閾値が設定されるのが好ましい。このような離間距離の閾値に関しても、障害物の種類や交差部に対する障害物の配設位置、さらには結束機の種類ごとに、離間距離の閾値をコントローラに格納しておくことの他に、障害物の種類や交差部に対する障害物の配設位置、結束機の種類等に基づいてコントローラが機械学習することにより、コントローラが離間距離の閾値を決定することもできる。
コントローラにより、結束機に対して結束を行わせない制御が実行された場合、自走式ロボットは結束がなされていない交差部をそのまま通過し、次の交差部まで走行するように制御される。
【0011】
また、本発明による自走式鉄筋結束機の他の態様において、前記自走式ロボットにはマーカー装置が搭載されており、
前記コントローラにおいて、結束が行われていない前記交差部には、前記マーカー装置にマーキングを行わせる制御が実行されることを特徴とする。
本態様によれば、コントローラにより、マーカー装置に対して結束が行われていない交差部にマーキングを行わせる制御が実行されることにより、作業員がマーキングを目印として結束を行うことができ、結束されていない交差部の発生を解消することができる。すなわち、本態様によれば、結束不良の生じる可能性の高い交差部に対して、複雑な機構を結束機に適用して無理に自動結束を実行させることなく、その代わりにこのような公差部においては作業員が結束を行うことにより、作業員と自走式鉄筋結束機との協働作業に基づいて、結束機を損傷させることなく全ての交差部の結束を実現することが可能になる。
【0012】
また、本発明による自走式鉄筋結束機の他の態様において、前記撮像装置から前記コントローラに送信される画像データのうち、前記交差部が存在しないことを示す画像データ、もしくは前記自走式ロボットの走行に障害となる走行障害物が存在することを示す画像データがある場合に、前記コントローラにおいて、前記自走式ロボットを停止させる制御、もしくは、前記自走式ロボットの走行進路を変更する制御が実行されることを特徴とする。
本態様によれば、自走式鉄筋結束機が鉄筋の端部に到達して交差部が存在しない場合であって、かつ横の列に鉄筋が存在する場合は、横の列の鉄筋に移動し、進行方向を変えて交差部の結束を自動的に継続することができる。また、走行障害物が存在する場合は、自走式鉄筋結束機が自動停止することにより、走行障害物との干渉を回避することができる。尚、自走式鉄筋結束機が警報装置をさらに備えていて、自動停止した際には、自動停止していることを作業員に告知するブザーや点灯表示等を発するのがよい。
【0013】
また、本発明による自動鉄筋結束プログラムの一態様は、
自走式ロボットと、該自走式ロボットに搭載されている結束機と、コントローラと、相互に交差する第一鉄筋及び第二鉄筋の交差部と、該交差部におけるワイヤ結束に障害となる障害物とを撮像する撮像装置と、を有する自走式鉄筋結束機において、前記コントローラに以下の処理を実行させる、自動鉄筋結束プログラムであって、
前記第一鉄筋もしくは前記第二鉄筋に沿って前記自走式ロボットを走行させ、
前記交差部を前記撮像装置に撮像させ、
前記撮像装置から撮像データを前記コントローラに送信させ、
前記交差部における前記障害物の有無を前記コントローラに検知させ、
前記コントローラが、前記障害物を検知しない場合は、前記結束機に対して前記交差部におけるワイヤ結束を実行させ、前記障害物を検知した場合は、前記結束機に対して前記交差部におけるワイヤ結束を実行させない、ことを特徴とする。
本態様によれば、結束機と障害物の干渉の生じない自走式鉄筋結束機を実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から理解できるように、本発明の自走式鉄筋結束機及び自動鉄筋結束プログラムによれば、鉄筋の交差部におけるワイヤ結束に際して、結束機と障害物の干渉を解消することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態に係る自走式鉄筋結束機について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0017】
[実施形態]
<自走式鉄筋結束機の全体構成>
はじめに、
図1を参照して、実施形態に係る自走式鉄筋結束機の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る自走式鉄筋結束機の一例を示す側面図であって、その一部を破断してその内部構成を視認可能とした図である。尚、図示例は、工場生産された鉄筋トラス(ラチス材)付きデッキプレートの有する主筋(上端主筋)に対して、施工現場にて配力筋が交差するようにして上乗せされ、主筋と配力筋により形成される交差部に対して結束する施工例を取り上げて説明するが、実施形態に係る自走式鉄筋結束機は、床スラブの主筋と配力筋の交差部や、相互に交差する様々な鉄筋の交差部における結束作業に適用される。
【0018】
自走式鉄筋結束機100は、自走式ロボット10と、自走式ロボット10に搭載されている結束機20、撮像装置60、マーカー装置70、及びコントローラ50により形成されている。自走式ロボット10は、例えば筐体からなるロボット本体11と、ロボット本体11に回転自在に装着されている二対で四つの車輪12(各対の二つの車輪12は不図示の駆動シャフトに取り付けられている)とを有する。少なくとも一対の車輪12を繋ぐ駆動シャフトは、サーボモータ等により形成される不図示の駆動輪用アクチュエータにて駆動されるようになっており、アクチュエータには不図示のバッテリーから電力が供給されるようになっている。尚、駆動輪用アクチュエータとバッテリーはいずれも、自走式ロボット10に搭載されている。
【0019】
コントローラ50は、駆動輪用アクチュエータのON/OFF制御をはじめ、以下で詳説する自走式鉄筋結束機100の有する各機器の動作を制御するコンピュータであり、各機器とは、有線もしくは無線で制御信号を送受信できるように構成されている。
【0020】
図2には、実施形態に係る自走式鉄筋結束機が適用される、鉄筋トラス付きデッキプレートの一例を示している。鉄筋トラス付きデッキプレート110は、溶融亜鉛メッキ鋼板等により形成される波板101と、波板101上に間隔を置いて配設された複数条の鉄線等からなるラチス材104(障害物の一例)と、ラチス材104に対して直交する態様で間隔を置いて配設された複数条の鉄線等からなる吊材103(障害物の一例)と、ラチス材104や吊材103により支持されている複数の上端主筋及び下端主筋(以下、いずれも、主筋102とする)と、端部材105とを有している。端部材105は鉄筋トラス付きデッキプレート110の端部に設けられる鉄筋である。
図2に示す鉄筋トラス付きデッキプレート110の主筋102(上端主筋、「第一鉄筋」の一例)の上に、当該主筋102に直交するように所定のピッチで配力筋120(第二鉄筋の一例)が配筋されることにより、
図1に示すように相互に直交する主筋102と配力筋120の交差部130が形成される。そして、
図2に示す端部材105よりも端には、交差部130は存在しない。
【0021】
例えば、一対の車輪12の間隔は配力筋120のピッチとなるように設定されており、各対の左右の車輪12がピッチを隔てて隣接する配力筋120の上に載置され、自走式ロボット10が配力筋120の上を移動できるようになっている。尚、一対の車輪12の間隔が、配力筋120の二倍のピッチ等に設定されていてもよい。
【0022】
自走式ロボット10の内部には、結束機20が自走式ロボット10の下面から下方に突没自在に内蔵されている。結束機20としては、市販される携帯式の鉄筋結束機(例えば、マックス株式会社製のリバータイア)が適用でき、結束機本体21と、グリップ22、バッテリー26が一体とされた構成を有している。結束機本体21の先端(図示例では下端)には、一対のクランプ25が相互に回動自在に装着されており、結束機本体21に内蔵されるワイヤリール24から送出されたワイヤWを、一対のクランプ25にて交差部130に巻装するようになっている。結束機本体21におけるグリップ22の根元位置にはクランプ25の駆動を制御するトリガー23が装着されており、トリガー23を操作することにより、一対のクランプ25の駆動がON/OFF制御される。一対のクランプ25がON制御されると、ワイヤリール24から送出された所定長さのワイヤWを一対のクランプ25が交差部130に巻装し、さらにワイヤWの両端を捩じることにより、交差部130における結束が行われる。
【0023】
グリップ22は、昇降シリンダ30を構成するピストンロッド32に固定されており、昇降シリンダ30を構成するシリンダ31に対してピストンロッド32がX4方向に昇降することにより、結束機20が自走式ロボット10の下面から下方に突没自在となる。具体的には、交差部130における結束時には、結束機20が自走式ロボット10の下面から下方に突出し、自走式ロボット10が配力筋120上を走行する際は、結束機20が自走式ロボット10の内部に収容されるように結束機20の位置制御が行われる。
【0024】
ピストンロッド32の先端にはトリガー操作装置40が装着されており、コントローラ50からのON信号により、トリガー23を押し込むX5方向に変位し、一対のクランプ25を駆動させて自動結束を行うようになっている。
【0025】
自走式ロボット10の進行方向であるX1方向の前面には、撮像装置60とマーカー装置70が装着されている。撮像装置60は、棒状の保持器61により保持されており、撮像方向であるX2方向に位置する交差部130とその周辺を撮像するように構成されている。尚、保持器61は、その長さが一定の部材であってもよいし、X1方向に伸縮自在に長さ調整できる部材であってもよい。図示例は、長さが一定の保持器61に撮像装置60が取り付けられている形態であり、結束機20の有する一対のクランプ25が進行方向後方の交差部130Aにて自動結束している際に、主筋102の2ピッチ前方の交差部130B及びその周囲を撮像できるように設定されている。
【0026】
撮像装置60は、CCDカメラやデジタルカメラ(一眼レフ、ハイビジョンを含む)、デジタルビデオカメラ等により形成され、撮像データはコントローラ50に送信されるようになっている。
【0027】
マーカー装置70は、撮像装置60の撮像範囲tと干渉しない位置に取り付けられており、コントローラ50からの制御信号により、結束の障害となる障害物が近傍に存在する交差部130において自動結束ができない場合に、当該交差部130にマーキングを実行する装置である。結束できていない交差部130にマーキングが施されていることにより、作業員がマーキングを目印として未結束な交差部130に対して確実に結束を行うことができ、未結束な交差部130の発生を解消することができる。
【0028】
詳細な図示を省略するが、マーカー装置70には様々な形態がある。例えば、コントローラ50から制御信号を受信することにより制御スイッチがON制御され、その電気信号により塗料を下方のX3方向に噴射してマーキングする形態や、粉チョーク等の紛体を下方のX3方向に自重落下させてマーキングする形態、さらには、マーカーペンを下方のX3方向に降下させてマーキングする形態等がある。紛体を自重落下させる形態では、ミニホッパーの下方のノズルに電磁弁を取り付けておき、電磁弁の開制御により紛体を落下させることができる。また、マーカーペンを降下させる形態では、昇降自在な電動アクチュエータの先端にマーカーペンを装着しておき、電動アクチュエータの降下に伴いマーカーペンを降下させることができる。
【0029】
鉄筋トラス付きデッキプレート110の主筋102と当該主筋102に上乗せされる配力筋120の位置関係により、自走式鉄筋結束機100に搭載されている自動結束機20のクランプ25が、ラチス材104や吊材103に接触して物理的にかみ合わず、結束不良を起こしてしまうといった課題が生じ得る。例えば、
図2に示すトラス付きデッキプレート110において、主筋102の間隔が200mmピッチに配列され、主筋102に上乗せされる配力筋120も同様に200mmピッチにて間配りして配筋されている場合において、ラチス材104や吊材103のピッチが例えば170mmピッチとなっている場合があり得る。このようにラチス材104や吊材103のピッチが170mmピッチであるのに対して配力筋を200mmピッチで配列すると、主筋102と配力筋120の交差部130がラチス材104と吊材103の山部(頂部)に接近する箇所が生じ得る。このような箇所において、自走式鉄筋結束機100に搭載されている自動結束機20が結束しようとすると、結束不良が生じる可能性がある。
【0030】
例えば、
図3(a)は、結束可能な公差部の一例を示す写真図である。
図3(a)の丸の内部に存在する交差部130の近傍には、自動結束機20による結束の際に障害となり得るラチス材104と吊材103が存在しておらず、従って自動結束機20による結束が可能となる。
【0031】
一方、
図3(b)は、結束不可能な公差部の一例を示す写真図である。
図3(b)の丸の内部に存在する交差部130の近傍には、自動結束機20による結束の際に障害となり得るラチス材104と吊材103が存在しており、従って自動結束機20が結束しようとすると、ラチス材104や吊材103と干渉して結束不良が生じる可能性がある。
【0032】
尚、その他、
図4は、結束不可能な公差部の他例を示す写真図である。
図4の丸の内部に存在する交差部130の近傍には、スタッドボルト108(障害物の一例)が存在しており、従って自動結束機20が結束しようとすると、スタッドボルト108と干渉して結束不良が生じる可能性がある。
【0033】
そこで、図示する自走式鉄筋結束機100は、交差部130における二方向の鉄筋以外のワイヤ結束に障害となる障害物の有無を検知することにより、結束機20と障害物の干渉を解消することを可能とし、当該干渉に起因する結束不良の発生や、当該干渉に起因するロボット本体の緊急停止や自動結束機の故障を解消することを実現可能とした自走式鉄筋結束機である。
【0034】
<コントローラのハードウェア構成>
次に、
図5を参照して、自走式鉄筋結束機100の備えるコントローラ50のハードウェア構成について説明する。ここで、
図5は、コントローラ50のハードウェア構成の一例を周辺の機器とともに示す図である。
図5に示すように、コントローラ50は、CPU(Central Processing Unit)51、RAM(Random Access Memory)52、ROM(Read Only Memory)53、HDD(Hard Disc Drive)54、及びNVRAM(Non-Volatile RAM)55等を有する。尚、制御装置50の各部は、不図示のバスを介して相互に接続されている。
【0035】
ROM53には、各種のプログラムやプログラムによって利用されるデータ等が記憶されている。RAM52は、プログラムをロードするための記憶領域や、ロードされたプログラムのワーク領域として用いられる。CPU51は、RAM52にロードされたプログラムを処理することにより、各種の機能を実現する。HDD54には、プログラムやプログラムが利用する各種のデータ等が記憶される。NVRAM55には、各種の設定情報等が記憶される。
【0036】
コントローラ50に対して、駆動輪用アクチュエータ15、横方向移動用アクチュエータ18、結束機のトリガー操作装置40、結束機の昇降シリンダ30、撮像装置60、及びマーカー装置70が制御信号を送受信可能に接続されている。
【0037】
駆動輪用アクチュエータ15はサーボモータ等により形成されており、コントローラ50からの制御信号に基づいて例えば一対の車輪12を繋ぐ駆動シャフトを駆動させ、自走式ロボット10を走行させる。自走式ロボット10が配力筋120上を走行する過程で撮像装置60が鉄筋の交差部130を撮像すると、撮像データがコントローラ50に送信され、コントローラ50が撮像データ中にある交差部130を特定すると、
図1に示すように、例えば交差部130Bの直上に撮像装置60が位置した段階で、コントローラ50から駆動輪用アクチュエータ15に対して停止信号が送信される。交差部130Bの直上に撮像装置60が位置した段階で自走式ロボット10が停止すると、
図1に示すように、後方にある別途の交差部130Aの直上には結束機20が位置決めされる。
【0038】
図5に戻り、横方向移動用アクチュエータ18は、例えば、自走式鉄筋結束機100が鉄筋の端部に到達して進行方向に交差部が存在しない場合であって、かつ横の列に鉄筋が存在する場合に、自走式鉄筋結束機100を横の列の鉄筋(二本の配力筋120)の上に移動させるアクチュエータである。具体的には、自走式鉄筋結束機100を持ち上げて横移動するための回転リンク機構とクランクを組わせたアクチュエータや、昇降するクローラ機構によるアクチュエータ等である。
【0039】
図1からも明らかなように、後方の交差部130Aに結束機20が位置決めされる段階では、既に撮像装置60により交差部130Aの撮像データが取得され、コントローラ50に送信され、格納されている。コントローラ50では、交差部130Aの近傍において結束機20による結束の際に障害となり得る障害物の有無、言い換えると交差部130Aにおいて結束機20による結束が可能か否かが既に判定されている。
【0040】
コントローラ50により、交差部130Aにおける結束機20による結束が可能であると判定されている場合は、
図1に示す状態において、コントローラ50から昇降シリンダ30に制御信号が送信され、ピストンロッド32を降下させて結束機20を交差部130Aに近接させる。次いで、コントローラ50からトリガー操作装置40に制御信号が送信され、トリガー操作装置40がトリガー23を押し込むように変位することにより、一対のクランプ25を駆動させて交差部130Aにおける自動結束が実行される。
【0041】
一方、コントローラ50により、交差部130Aの近傍に障害物が検知され、結束機20による結束が不可能であると判定されている場合は、
図1に示す状態において、コントローラ50から昇降シリンダ30には制御信号が送信されず、従って、結束機20はロボット本体11の内部に格納された状態を維持する。
【0042】
尚、撮像装置60により交差部130Aの撮像データが取得され、撮像データを受信したコントローラ50により、交差部130Aにおいて結束機20による結束が不可能であると判定された場合に、コントローラ50からマーカー装置70に対して制御信号が送信される。制御信号を受信したマーカー装置70は、交差部130Aに対してマーキングを実行する。従って、
図1に示す状態において、交差部130Aが結束不可能であると判定されている交差部の場合には、交差部130Aにはマーキングが施されている。
【0043】
このように、結束機20が交差部130に到達する前に、既にコントローラ50により、当該交差部130が結束機20による結束が可能な交差部であるか否かが判定されていることから、連続的かつスムーズな結束機20による結束の実行もしくは不実行が実現される。そして、結束機20による結束が不可能であると判定されている交差部130に対しては結束機20による無理な結束が実行されないことから、結束機20と障害物の干渉を解消することができ、当該干渉に起因する結束不良の発生や、当該干渉に起因する結束機20の故障等の問題は生じない。
【0044】
<コントローラの機能構成>
次に、
図6を参照して、自走式鉄筋結束機100の備えるコントローラ50の機能構成の一例について説明する。ここで、
図6は、コントローラの機能構成の一例を示す図である。
図6に示すように、コントローラ50は、駆動制御部202、撮像データ入力部204、交差部・障害物判定部206、結束可否判定部208、マーカー制御部210、警報部212、格納部214、及び機械学習部216を有する。
【0045】
駆動制御部202は、駆動輪用アクチュエータ15や横方向移動用アクチュエータ18、昇降シリンダ30、トリガー操作装置40といった各種アクチュエータの駆動制御を実行する。
【0046】
撮像データ入力部204には、撮像装置60から送信される撮像データが随時入力され、格納部214に画像データが随時格納される。
【0047】
格納部214には、撮像データが格納される他にも、様々なデータが格納される。例えば、自走式ロボット10の進行方向において交差する二方向の配筋状態を示す画像データが格納される。この配筋状態には、相互に直交もしくは様々な角度(60度等)にて交差する様々な径の鉄筋同士の配筋状態が含まれる。また、格納部214には、ラチス材104や吊材103、スタッドボルト108等の障害物に関する画像データが格納される。
【0048】
さらに、格納部214には、交差部130と障害物の間の離間距離に関して、結束機20によるワイヤ結束が可能な離間距離に関する閾値が格納される。この離間距離の閾値は、障害物の種類や交差部130に対する障害物の配設位置、さらには、適用される結束機20の種類(製品種、型式等)等によって変化し得る。従って、例えば、障害物がラチス材104であり、自走式ロボット10の進行方向に対して交差部130の左側にラチス材104があり、結束機20が商品名:リバータイアで型式:RB−399A−B2Cの場合は閾値が10mmであるといった具合に、障害物の種類や交差部130に対する障害物の配設位置、適用される結束機20の種類に応じた様々な閾値が格納部214に格納される。
【0049】
ここで、
図7(a),(b)を参照して、閾値の格納例について説明する。
図7(a)は、自走式鉄筋結束機100の進行方向であるX1方向に対して、鉄筋の交差部の左側(図では右側)に吊材が存在している状態を示している。この場合、ある型式のリバータイアを適用して自動結束する際に、離間距離が10mm(図では+10mm)では結束不可であり、離間距離が15mm以上では結束可であるとする情報が格納される。従って、このケースでは、例えば15mmが離間距離の閾値とされる。
【0050】
一方、
図7(b)は、自走式鉄筋結束機100の進行方向であるX1方向に対して、鉄筋の交差部の右側(図では左側)に吊材が存在している状態を示している。この場合、ある型式のリバータイアを適用して自動結束する際に、離間距離が20mmまで(図では−20mm)は結束不可であり、離間距離が25mm以上では結束可であるとする情報が格納される。従って、このケースでは、例えば25mmが離間距離の閾値とされる。
【0051】
機械学習部216では、格納部214に格納されている様々な鉄筋に関する画像データや障害物に関する画像データに基づいて、格納されていない鉄筋の交差部や障害物に関して機械学習し、交差部130や障害物に関する情報を増大させる。また、障害物の種類や交差部に対する障害物の配設位置、結束機の種類等に基づいてコントローラが機械学習することにより、機械学習部216が離間距離の閾値を決定することもできる。機械学習部216は、鉄筋、障害物、結束機20等に関する様々なノウハウ情報を機械学習させた関数等を作成する。ノウハウ情報を機械学習させた関数は、例えばニューラルネットワークを用いた教師付きの学習等、既存の技術を用いて作成することができるが、その作成手法は特に限定されない。
【0052】
交差部・障害物判定部206は、格納部214から撮像データを取り込み、撮像データ中に交差部130が存在するか否かを判定し、交差部130が存在する場合に当該交差部130の近傍に障害物が存在するか否かを判定する。
【0053】
結束可否判定部208は、交差部・障害物判定部206において交差部130の近傍において障害物が存在することが判定されている場合に、交差部130と障害物の間の離間距離と離間距離の閾値との比較を行い、離間距離が閾値未満であるか否かを判定する。この際、交差部130の態様(交差角度、交差する各鉄筋の径等)と、障害物の種類や大きさ、結束機20の種類等が結束可否判定部208において特定され、特定されたこれらの組み合わせ要素に応じた離間距離に関する閾値が格納部214から読み出され、結束可否判定部208において格納部214から読み出した閾値と離間距離の比較が実行される。結束可否判定部208において、結束可と判定された場合は、駆動制御部202により、昇降シリンダ30やトリガー操作装置40が駆動制御され、交差部130における自動結束が実行される。
【0054】
マーカー制御部210は、結束可否判定部208にて交差部130における結束が不可であると判定された場合に、マーカー装置70を制御して当該交差部130に対してマーキングを実行する。
【0055】
撮像装置60や不図示の進行方向前方を撮像する別途の撮像装置等により、自走式鉄筋結束機100の進行方向に走行障害物が存在することが特定された場合、その撮像データ等がコントローラ50に送信され、コントローラ50は駆動輪用アクチュエータ15の作動を停止する制御を実行する。このように、自走式鉄筋結束機100が走行障害物の手前にて自動停止することにより、自走式鉄筋結束機100と走行障害物との干渉を回避することができる。そして、この際、警報部212が作動し、自動停止していることを作業員に告知するブザーや点灯表示等を発する。
【0056】
<コントローラによる自走式鉄筋結束機の制御フロー>
次に、
図8乃至
図10を参照して、コントローラによる自走式鉄筋結束機の制御フローについて説明する。ここで、
図8は、コントローラによる自走式鉄筋結束機の制御フローのうち、交差部における結束可否判断と結束可否判断に基づく処理の一例に関するフローチャートである。また、
図9は、コントローラによる自走式鉄筋結束機の制御フローのうち、自走式鉄筋結束機の走行可否判断と走行可否判断に基づく処理の一例に関するフローチャートである。さらに、
図10は、コントローラによる自走式鉄筋結束機の制御フローのうち、画像処理の一例に関するフローチャートである。
【0057】
まず、
図8を参照して、交差部における結束可否判断と結束可否判断に基づく処理の一例について説明する。
【0058】
ステップS300において、コントローラ50により、鉄筋トラス付きデッキプレート110の有する主筋102に上乗せされる配力筋120に沿って、自走式鉄筋結束機100の走行制御が実行される。
【0059】
ステップS302において、撮像装置60から送信される撮像データをコントローラ50が受信し、コントローラ50において、撮像データ中に交差部130が存在することが認定された際に、自走式鉄筋結束機100の走行停止制御が実行される。
【0060】
自走式鉄筋結束機100が停止した後、ステップS304において、撮像装置60による交差部130とその周辺の撮像が実行され、送信された撮像データがコントローラ50に送信される。
【0061】
コントローラ50は、受信した撮影データ中の交差部130の近傍において、自動結束の障害となり得る障害物の有無を判定する。そして、障害物が存在すると判定された場合、ステップS306において、交差部130と障害物までの離間距離を特定し、この離間距離と、格納部214に格納されている交差部130と障害物の間の離間距離に関する閾値(結束機20によるワイヤ結束が可能な離間距離に関する閾値)を比較し、離間距離が閾値以上であるか否か、すなわち、結束可能であるか否かが判定される。
【0062】
判定の結果、自動結束が可能であると認定された場合は、ステップS308において、当該交差部130が結束可能である旨の情報を格納部214に格納する。一方、判定の結果、自動結束が不可能であると認定された場合は、ステップS310において、コントローラ50からマーカー装置70に制御信号が送信され、当該交差部130にマーキングを実行する。以上、ステップS304乃至S310は、
図1において、自走式鉄筋結束機100の前方にある撮像装置60及びマーカー装置70とコントローラ50の間の制御信号の送受信に基づいて実行される処理である。コントローラ50による制御とは異なるが、マーキングが施された交差部130に対しては、ステップS320において、作業員による結束が実施される。尚、
図8において、ステップS320はコントローラ50による制御内容でないことから、点線で示している。
【0063】
一方、自走式鉄筋結束機100が停止した後、ステップS312において、コントローラ50の格納部214に格納されている情報であって、既に得られている結束可否判定結果を参照する。そして、対象の交差部130が結束可能であると判定されている場合は、ステップS314において、コントローラ50による制御により、昇降シリンダ30、トリガー操作装置40、及び結束機20を作動させて交差部130における自動結束が実行される。一方、対象の交差部130が結束不可能であると判定されている場合は、ステップS316において、コントローラ50による結束機20の作動制御は実行せず、交差部130における自動結束を実行しない(結束不実行)。以上、ステップS312乃至S316は、
図1において、自走式鉄筋結束機100の中央にある昇降シリンダ30、トリガー操作装置40、及び結束機20とコントローラ50の間の制御信号の送受信に基づいて実行される処理である。
【0064】
自走式鉄筋結束機100の走行に応じて以上の処理フローが繰り返し実行されることにより、連続する交差部130に対して結束可能な交差部130には自動結束が実行され、結束不可能な交差部130にはマーキングが実行される。
【0065】
尚、
図8に示す一連の制御フローを含むプログラムがコンピュータであるコントローラ50にインストールされることにより、各処理が実行されてもよい。
【0066】
次に、
図9を参照して、自走式鉄筋結束機の走行可否判断と走行可否判断に基づく処理の一例について説明する。
【0067】
ステップS300において、コントローラ50により、鉄筋トラス付きデッキプレート110の有する主筋102に上乗せされる配力筋120に沿って、自走式鉄筋結束機100の走行制御が実行される。
【0068】
ステップS330において、撮像装置60から送信される撮像データをコントローラ50が受信し、コントローラ50において、撮像データ中に交差部130が存在するか否かが判定される。
【0069】
コントローラ50において、交差部130が存在すると判定された場合、次に、ステップS332において、撮像装置60、もしくは、進行方向前方を撮像する別途の撮像装置から送信される撮像データをコントローラ50が受信し、コントローラ50において、撮像データ等の中に走行障害物が存在しないか否かが判定される。
【0070】
走行進路の中に走行障害物が存在しないと判定された場合は、
図8に示すように交差部における結束可否判断と結束可否判断に基づく一連の処理が実行される。一方、走行進路の中に走行障害物が存在すると判定された場合は、ステップS342において、コントローラ50により、自走式鉄筋結束機100の走行停止が実行される。このように自走式鉄筋結束機100が自動停止することにより、走行障害物との干渉を回避することができる。そして、自走式鉄筋結束機100が自動停止した後、ステップS344において、自走式鉄筋結束機100は、自動停止していることを作業員に告知するブザーや点灯表示等の警報を実行する。
【0071】
ステップS330において、撮像データ中に交差部130が存在するか否かが判定され、コントローラ50において、交差部130が存在しないと判定された場合、ステップS334において、コントローラ50により、自走式鉄筋結束機100の走行停止が実行される。そして、自走式鉄筋結束機100が自動停止した後、撮像装置60、もしくは、360度方向を撮像可能な別途の撮像装置から送信される撮像データをコントローラ50が受信し、コントローラ50において、これまで走行してきた二列の配力筋120の横に別途の配力筋120が存在するか否かが判定される。
【0072】
コントローラ50において、横に別途の配力筋120が存在すると判定された場合、ステップS338において、コントローラ50により、横方向移動用アクチュエータ18が作動されて、自走式鉄筋結束機100がその向き(進行方向)を反転させ、二対の車輪12が横にある二列の配力筋120の上に載置される。その後、載置された新たな二列の配力筋120の上で、自走式鉄筋結束機100の走行が開始され、
図8に示すように交差部における結束可否判断と結束可否判断に基づく一連の処理が実行される。
【0073】
一方、コントローラ50において、横に別途の配力筋120が存在しないと判定された場合、自走式鉄筋結束機100は以後の進行を継続できないことから、ステップS340において、停止していることを作業員に告知するブザーや点灯表示等の警報を実行する。
【0074】
尚、
図8及び
図9に示す一連の制御フローを含むプログラムがコンピュータであるコントローラ50にインストールされることにより、各処理が実行されてもよい。
【0075】
次に、
図10を参照して、画像処理の一例について説明する。尚、
図10は、
図8におけるステップS304とステップS306の間の画像処理を詳細に説明したフロー図である。
【0076】
ステップS304において、撮像装置60による交差部130とその周辺の撮像が実行され、送信された撮像データがコントローラ50に送信される。
【0077】
コントローラ50は、ステップS362において、受信した撮像データを平滑化処理し、ステップS364において、収縮・膨張処理を繰り返すことにより、ノイズカットを行う。そして、ステップS366においてエッジ検出を行い、ステップS368において線分を検出し、ステップS370において直線のパラメータ化を実施し、ステップS372において画像データにおける線分の絞り込みを実施する。これらの一連の処理により、例えば、配力筋120の中心線と吊材103の中心線が特定される。そして、ステップS374において交点の計算を実施することにより、例えば配力筋120と吊材103の離間距離が算定される。算定された離間距離が閾値未満の場合は対象の交差部130が結束不可と判定され、離間距離が閾値以上の場合は対象の交差部130が結束可能と判定される。
【0078】
以上、本発明の実施の形態を、図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。