【課題】断熱や結露の防止機能を保持した上で、直射日光や外気温による熱変形を抑制でき、建具の構造的な不具合を防止すると共に、良好なデザインを長期にわたって維持できる建具を提供する。
【解決手段】建具Aは、枠1と、樹脂製の押縁2と、パネルPと、金属製のカバー材3とを備え、押縁は、枠に支持されたパネルの屋外側の見付面P3と対面するように枠の屋外側に配置され、カバー材は、押縁の屋外側の見付面20およびパネル側の見込面P2を覆うように配置されていることを特徴とする。
枠と、樹脂製の押縁と、パネルと、金属製のカバー材とを備え、押縁は、枠に支持されたパネルの屋外側の見付面と対面するように枠の屋外側に配置され、カバー材は、押縁の屋外側の見付面およびパネル側の見込面を覆うように配置されていることを特徴とする建具。
框と、樹脂製の押縁と、パネルと、金属製のカバー材とを備え、押縁は、框に支持されたパネルの屋外側の見付面と対面するように框の屋外側に配置され、カバー材は、押縁の屋外側の見付面およびパネル側の見込面を覆うように配置されていることを特徴とする建具。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態の建具Aを説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。本発明でいう「枠」とは、躯体の開口に対して直接固定される部材を意味する。
【0010】
この「枠」を用いた建具として、例えば、FIX窓やサッシ、更にはドア等が挙げられる。また、「框」とは、サッシのように「枠」に対して開閉自在に配される障子を構成する部材を意味する。
【0011】
本明細書では、建具について「枠」を用いたFIX窓として説明するが、「枠」を用いた建具と「框」を用いた障子等の建具とは、「枠(竪枠、横枠)」と「押縁(竪押縁、横押縁)」とで「パネル」を支持する構造および「框(竪框、横框)」と「押縁(竪押縁、横押縁)」とで「パネル」を支持する構造という、基本的な構造について共通するものであるので、「框」を用いた建具の説明については省略する。
【0012】
[建具の構成]
本実施形態で示す建具Aは、
図1〜
図3に示すように躯体Bの開口B1に設けられるFIX窓であり、ガラス製のパネルPを樹脂製の枠1および押縁2で支持したものである。建具Aは、屋外側に押縁2を装着した外押縁タイプのものであり、この押縁2の屋外側の面を覆う金属製のカバー材3が装着されている。
【0013】
[枠の構成]
枠1は、
図1〜
図3に示すように、パネルPの左右を支持する竪枠1aと、パネルPの上下を支持する横枠1bとを連結して構成されており、屋外側に水切り部1cを有すると共に、屋外側から嵌め込まれるパネルPの屋内側の見付面P1を、ビード100を介して支持する支持面部1dと、パネルPの見込面P2をセッティングブロック101を介して支持する支持縁部1eを備えている。竪枠1aと横枠1bとは、同じ構成として形成されたものであり、それぞれに、水切り部1cおよび支持面部1d並びに支持縁部1eを有し、両端がコーナー部A1において留切り構造として突き合わさるように斜めに切断して形成されている。
【0014】
[押縁の構成]
押縁2は、
図3に示すように、同じ断面構造として形成された竪押縁2aと横押縁2bとで構成されており、竪押縁2aを竪枠1aに嵌め込むと共に、横押縁2bを横枠1bに嵌め込むことで装着され、パネルPの屋外側の見付面P3を支持するように配置されている。
【0015】
竪押縁2aと横押縁2bは、
図3に示すように、竪枠1aおよび横枠1bの屋外側に形成された嵌合凹部1fに嵌合される嵌合凸部2cを竪押縁2aと横押縁2bの外周側に備えていると共に、パネルPの屋外側の見付面P3に密着するように設けられたヒレ部2dを備えている。また、竪押縁2aおよび横押縁2bは、
図1および
図2に示すように、両端がコーナー部A1において留切り構造として突き合わさるように斜めに切断して形成されている。ヒレ部2dは、竪押縁2aおよび横押縁2bよりも軟質な樹脂材を用いて形成されており、見付面P3に接触したときに弾性変形し、変形から復帰するときの反発力が作用することによって、見付面P3への密着力を高めるようにされている。
【0016】
[カバー材の構成]
カバー材3は、
図1〜
図3に示すように、押縁2の竪押縁2aに配される竪カバー材3aおよび横押縁2bに配される横カバー材3bとで構成されている。
【0017】
竪カバー材3aおよび横カバー材3bは、
図1〜
図3に示すように、軽量、かつ錆びにくいアルミニウム材を用いて、竪押縁2aおよび横押縁2bの屋外側の見付面20の全域およびパネルP側(内周側)の見込面21の全域にわたる範囲を覆う形状として形成されている。具体的には、互いに、両端を竪押縁2aおよび横押縁2bの両端と同じ角度で斜めに切断して形成されていると共に、竪押縁2aおよび横押縁2bと同じ長さおよび同じ幅とし、且つ同じ断面L型に形成されている。このような、竪カバー材3aおよび横カバー材3bは、それぞれ対応する竪押縁2aおよび横押縁2bの見付面20と正対させて、この見付面20に対して複数のビス2eによって固定して配置されている。また、竪カバー材3aおよび横カバー材3bは、見付面20との間に隙間Sを設けて固定されており、竪カバー材3aおよび横カバー材3bの熱を直接見付面20に伝達させないようにできると共に、隙間Sを放熱空間として機能させることができる。
【0018】
すなわち、アルミニウム製のカバー材3で押縁2の見付面20の全域および見込面21の全域を覆っているので、熱変形しようとする押縁2をカバー材3で抑えることによって、押縁2の熱変形を抑制することができる。さらに、カバー材3が高い放熱性を有するアルミニウム製であるので、その放熱性による押縁2自体の温度上昇を抑制することができ、これによって押縁2の熱変形を抑制することができる。しかも、隙間Sによって直接的な熱伝達を防ぐことができると共に、カバー材3の熱を放熱することができる。
【0019】
したがって、本実施形態による建具Aは、断熱や結露の防止機能を保持した上で、直射日光や外気温によって熱変形しやすい押縁2の熱変形を抑制できる。そして、押縁2の熱変形を抑制することによって、建具Aの構造的な不具合を防止することができると共に、良好なデザインを長期にわたって維持できる。
【0020】
[カバー材の第1の変形例]
次に、カバー材3の第1の変形例について、
図4に基づいて説明する。本変形例のカバー材3は、押縁2の見込面21から見付面20を経て枠1との境部A2を跨いで枠1の見付面10の中途にわたる範囲を覆うように形成されている。
【0021】
第1の変形例のカバー材3によると、アルミニウム製のカバー材3で、押縁2の見付面20の全域および見込面21の全域、並びに枠1の見付面10の中途にわたる範囲を覆っているため、押縁2の見付面20および見込面21ばかりでなく、枠1の見付面10の一部を含んだより広い範囲で放熱することができる。
【0022】
すなわち、カバー材3で覆われていない見付面10の温度が上昇した場合でも、広い放熱範囲によって、枠1の温度上昇を抑制することができると共に、枠1から押縁2への熱伝導を抑制することができる。したがって、より高い放熱性の向上が期待できると共に、押縁2および枠1の温度上昇の抑制および押縁2および枠1の熱変形の抑制についてより高い効果が期待できる。
【0023】
[カバー材の第2の変形例]
次に、カバー材の第2の変形例について、
図5に基づいて説明する。本変形例のカバー材3は、押縁2の見込面21から見付面20を経て枠1との境部A2を跨いで枠1の見付面10の全域にわたる範囲を覆うように形成され、枠1の見付面10に対して複数のビス2eによって固定されている。
【0024】
第2の変形例のカバー材3によると、アルミニウム製のカバー材3で、押縁2の見付面20の全域および見込面21の全域、並びに枠1の見付面10の全域を覆っているため、押縁2の見付面20および見込面21ばかりでなく、枠1の見付面10の全域を含んだより広い範囲で放熱することができる。
【0025】
すなわち、カバー材3で覆われていない水切り部1cの温度が上昇した場合でも、広い放熱範囲によって、枠1の温度上昇を抑制することができると共に、枠1から押縁2への熱伝導を抑制することができる。したがって、より高い放熱性の向上が期待できると共に、押縁2および枠1の温度上昇の抑制および押縁2および枠1の熱変形の抑制についてより高い効果が期待できる。しかも、枠1とカバー材3との境目が目立たず、屋外側から視覚される建具Aのデザイン性の向上についても期待できる。
【0026】
[カバー材の第3の変形例]
次に、カバー材の第3の変形例について、
図6に基づいて説明する。本変形例のカバー材3は、押縁2の見込面21から見付面20を経て枠1との境部A2を跨いで水切り部1cの見付面11にわたる範囲を覆うように形成されており、見付面11および水切り面12に対して複数のビス2eによって固定されている。すなわち、変形例3のカバー材3は、建具Aにおける屋外側に露出する枠1の面の全域および押縁2の面の全域を覆っている。
【0027】
第3の変形例のカバー材3によると、アルミニウム製のカバー材3で、建具Aにおける屋外側に露出する枠1の面の全域および押縁2の面の全域を覆っているため、押縁2の見付面20および見込面21ばかりでなく、枠1の見付面10および水切り部1cの全域を含んだより広い範囲で放熱することができる。すなわち、より高い放熱性が期待できると共に、枠1および押縁2とカバー材3との境目がないため、屋外側から視覚される建具Aのデザイン性の向上についても効果的である。
【0028】
[建具の変形例]
次に、建具Aの変形例について
図7〜
図11に基づいて説明する。本変形例の建具Aは、建具Aのコーナー部A1を覆うコーナーカバー4を備えたものである。本変形例の建具Aにおける押縁2の竪押縁2aと横押縁2bは、左右のコーナー側端部20a、20bを直角に切断して形成され、竪押縁2aおよび横押縁2bを枠1に取り付けたときに、コーナー部A1における竪押縁2aのコーナー側端部20aと横押縁2bのコーナー側端部20bとの間に、コーナーカバー4が嵌合される嵌合空間A10を確保できる長さとして形成されている。嵌合空間A10は、
図8および
図10に示すように、押縁2の見付面20側が開放されており、この見付面側から見込方向にコーナーカバー4を嵌合できるようにされている。
【0029】
竪カバー材3aおよび横カバー材3bは、
図7および
図8に示すように、竪押縁2aおよび横押縁2bの屋外側の見付面20の全域およびパネルP側(内周側)の見込面21の全域にわたる範囲、並びに横枠1bの見付面10の中途に至る範囲を覆う同じ断面L型に形成されている。竪カバー材3aおよび横カバー材3bのコーナー側端部30a、30bは、竪押縁2aおよび横押縁2bのコーナー側端部20a、20bとともに、コーナーカバー4によって覆われている。
【0030】
コーナーカバー4は、
図11に示すように、覆い板4aと、係合体4bと、弾性体4cとを一体に備えて形成されている。覆い板4aは、
図8および
図10に示すように、嵌合空間A10の開放部A101を塞ぐように覆うと共に、竪カバー材3aおよび横カバー材3bのコーナー側端部30a、30bを見付面側から覆うことができる形状として形成されている。
【0031】
係合体4bは、
図8および
図9並びに
図11に示すように、竪枠1aと横枠1bの支持縁部1eに接触して支持される凸面部40bと凸面部41bとを有してL型状に形成されていると共に、見込方向に突設されており、嵌合空間A10内において支持縁部1eとパネルPの見込面P2の間に位置するようにされている。また、凸面部40bと凸面部41bの支持縁部1eの面のそれぞれには、コーナー部A1において枠1の嵌合凹部1fに嵌合する嵌合突起40が形成されている。
【0032】
弾性体4cは、
図8および
図9並びに
図11に示すように、竪枠1a側の凸面部40bの先端に設けられた板バネ40cと、横枠1b側の凸面部41bの先端に設けられた板バネ41cとから構成されている。板バネ40cおよび板バネ41cは、一端側が凸面部40bおよび凸面部41bの先端側に固定された片持ち構造のものであり、パネルPの見込面P2と対向して接触すると共に、見込面P2に対して押し付ける方向へ付勢力が作用するようにされている。
【0033】
弾性体4cは、板バネ構造に限らず、スポンジ材やゴム材等の弾性を有する樹脂を用いて構成してもよい。
【0034】
このようなコーナーカバー4は、枠1への押縁2およびカバー材3の取付け後に枠1に取り付けることができる。具体的には、
図10に示すように、係合体4bを、凸面部40bが竪枠1a側の支持縁部1eと対面すると共に、凸面部41bを横枠1b側の支持縁部1eと対面するように位置させて、開放部A101から見込方向に沿って嵌合空間A10に押し込む。
【0035】
係合体4bが押し込まれると、
図7および
図8並びに
図10に示すように、覆い板4aが嵌合空間A10の開放部A101を覆うと共に、竪カバー材3aおよび横カバー材3bのコーナー側端部30a、30bを覆い、これにより、コーナー部A1において嵌合空間A10およびコーナー側端部30a、30bを隠すことができる。
【0036】
また、係合体4bが押し込まれたときには、
図8および
図9に示すように、嵌合突起40が嵌合凹部1fに嵌合し、しかも、板バネ40cおよび板バネ41cが、付勢力によってパネルPの見込面P2に対して押し付られると共に、この付勢力の反力が凸面部40bおよび凸面部41bを、それぞれ対応する支持縁部1eに押し付ける力として作用することになる。すなわち、嵌合凹部1fに対する嵌合突起40の嵌合と、板バネ40cおよび板バネ41cの付勢力および付勢力の反力とによって、係合体4bの嵌合状態を保持することができるため、ビス等の固着手段を用いることなくコーナーカバー4を取り付けることができる。
【0037】
さらに、カバー材3によって押縁2を覆うと共に、コーナーカバー4によって開放されたコーナー部A1を覆っているので、枠1および押縁2の熱変形を抑制した上で、建具Aの外観品質を向上させることができる。
【0038】
したがって、本変形例による建具Aは、断熱や結露の防止機能を保持した上で、直射日光や外気温によって熱変形しやすい押縁2の熱変形を抑制できる。そして、押縁2の熱変形を抑制することによって、建具Aの構造的な不具合を防止することができると共に、良好なデザインを長期にわたって維持できる。
【0039】
以上、本発明に係る実施形態の建具を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0040】
また、前述の各実施形態は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。