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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-197168(P2020-197168A)
(43)【公開日】2020年12月10日
(54)【発明の名称】エンジンのクランクプーリ構造
(51)【国際特許分類】
   F02B 67/06 20060101AFI20201113BHJP
   F16H 55/36 20060101ALI20201113BHJP
【FI】
   F02B67/06 D
   F16H55/36 A
   F16H55/36 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-103785(P2019-103785)
(22)【出願日】2019年6月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 雅之
(72)【発明者】
【氏名】平田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】西坂 聡
(72)【発明者】
【氏名】徳島 和宏
(72)【発明者】
【氏名】藤野 勇三
【テーマコード(参考)】
3J031
【Fターム(参考)】
3J031AC10
3J031BA20
(57)【要約】
【課題】縦置きエンジンの前方に配置されたクランクプーリ構造において、前突に対して、十分なクラッシュスペースを確保する。
【解決手段】縦置きエンジンの車両前方に配置されたエンジンのクランクプーリ構造Aであって、ベルト7を介してクランク回転力をウォータポンプ8に伝達する前段プーリ34と、ベルト9を介してクランク回転力をコンプレッサ10に伝達する、前段プーリ34よりも車両後方に配置された後段プーリ38と、前段プーリ34と後段プーリ38とを連結する、車両後方への衝突荷重が加わることで車両前後方向に潰れ変形する連結部39と、を備え、前段プーリ34の外径は、後段プーリ38の内径よりも小さい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦置きエンジンの車両前方に配置されたエンジンのクランクプーリ構造であって、
ベルトを介してクランク回転力を第1補機に伝達する前段プーリと、
ベルトを介してクランク回転力を第2補機に伝達する、前記前段プーリよりも車両後方に配置された後段プーリと、
前記前段プーリと前記後段プーリとを連結する、車両後方への衝突荷重が加わることで車両前後方向に潰れ変形する連結部と、を備え、
前記前段プーリの外径は、前記後段プーリの内径よりも小さい、エンジンのクランクプーリ構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記連結部は、径方向内方に突出する、くの字形状である、エンジンのクランクプーリ構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記連結部は、貫通孔を有する、エンジンのクランクプーリ構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つにおいて、
前記前段プーリと前記後段プーリとの間には、イナーシャリングをさらに備え、
前記イナーシャリングの内径は、前記後段プーリの外径よりも大きい、エンジンのクランクプーリ構造。
【請求項5】
請求項4において、
前記イナーシャリングは、前記後段プーリに、該イナーシャリング及び該後段プーリよりも破壊強度の低い、スポーク又は孔の空いた連結板部で、連結される、エンジンのクランクプーリ構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つにおいて、
前記後段プーリより車両後方に延びて、エンジンのクランクシャフトに嵌合するボス部をさらに備え、
前記後段プーリは、前記ボス部に、該後段プーリ及び該ボス部よりも破壊強度の低い、スポーク又は孔の空いた連結板部で、連結され、
前記前段プーリ及び前記後段プーリの内径は、前記ボス部の外径よりも大きい、エンジンのクランクプーリ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのクランクプーリ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
縦置きエンジンは、複数のシリンダが車両前後方向に並んで配置されるので、横置きエンジンに比べて、車両前後方向に長い。すなわち、車室より車両前方のエンジンルームに縦置きエンジンを収容する場合、エンジンルームの空間は、狭くなる場合が多い。
【0003】
また、縦置きエンジンは、車両前方にクランクプーリ、車両後方にトランスミッションが配置される。
【0004】
ここで、車両前方からの衝突(以下、「前突」という)があったとき、クランクプーリに対して車両後方への衝突荷重が加わるので、クランクプーリは、エンジンを車両後方へ押そうとする。すなわち、エンジンの車両後方端部がエンジンルームと車室とを区画するダッシュパネルに接触したり、エンジンが車室内に侵入したりするおそれがある。これを防ぐためには、クラッシュスペース(潰れ変形量)を確保して、前突による衝撃を吸収する必要がある。
【0005】
例えば、特許文献1では、自動車用エンジンのクランクプーリ構造に関する発明を開示する。このクランクプーリ構造は、エンジンの前端部に前方へ突出して設けられたクランクプーリに、衝突時の荷重により破損する肉薄等の脆弱部が設けられる。脆弱部は、クランクプーリにおける前方プーリ部と後方プーリ部との中間部付近に設けられる。かかる構成によれば、前突時、脆弱部が破損することにより、前方プーリ部が破壊脱落し、当該破壊脱落分だけ、クラッシュストローク(クラッシュスペース)が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−29175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1のクランクプーリは、前突時、脆弱部で破損するものの、車両後方へ押された前方プーリ部が、後方プーリ部に接触してしまい、十分なクラッシュスペースを確保することができない可能性がある。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的とするところは、縦置きエンジンの車両前方に配置されたクランクプーリ構造において、前突に対して、十分なクラッシュスペースを確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここに開示するエンジンのクランクプーリ構造は、縦置きエンジンの車両前方に配置されたエンジンのクランクプーリ構造であって、ベルトを介してクランク回転力を第1補機に伝達する前段プーリと、ベルトを介してクランク回転力を第2補機に伝達する、上記前段プーリよりも車両後方に配置された後段プーリと、上記前段プーリと上記後段プーリとを連結する、車両後方への衝突荷重が加わることで車両前後方向に潰れ変形する連結部と、を備え、上記前段プーリの外径は、上記後段プーリの内径よりも小さい。
【0010】
かかる構成によれば、前突時、前段プーリに対して車両後方への衝突荷重が加わることで、前段プーリは、車両後方へ押される。そして、連結部に車両後方への衝突荷重が加わると、連結部は、車両前後方向に潰れ変形する。これにより、前段プーリは、車両後方へ移動する。ここで、前段プーリの外径は後段プーリの内径よりも小さいので、前段プーリは、車両後方へ移動して、後段プーリの内側に収容される。すなわち、前段プーリは、後段プーリの内側に収容される位置まで、車両後方へ移動することができる。
【0011】
したがって、縦置きエンジンの車両前方に配置されたクランクプーリ構造において、前突に対して、十分なクラッシュスペースを確保することができる。
【0012】
一実施形態では、上記連結部は、径方向内方に突出する、くの字形状である。
【0013】
かかる構成によれば、連結部は、くの字形状の頂点が後段プーリの内径よりも径方向内方に位置する。これにより、連結部は、前突時、後段プーリの内側に収容されるので、後段プーリに干渉にくい。
【0014】
一実施形態では、上記連結部は、貫通孔を有する。
【0015】
かかる構成によれば、連結部は、剛性が低いので、潰れ変形しやすい。
【0016】
一実施形態では、上記前段プーリと上記後段プーリとの間には、イナーシャリングをさらに備え、上記イナーシャリングの内径は、上記後段プーリの外径よりも大きい。
【0017】
かかる構成によれば、エンジンのクランクシャフトのねじり振動を低減することができる。また、前突時、前段プーリがイナーシャリングの内側に収容される位置まで、車両後方へ移動することができるとともに、イナーシャリングがその内側に後段プーリを収容する位置まで車両後方へ移動することができるので、イナーシャリングを備えた場合でも、十分なクラッシュペースを確保することができる。
【0018】
一実施形態では、上記イナーシャリングは、上記後段プーリに、上記イナーシャリング及び上記後段プーリよりも破壊強度の低い、スポーク又は孔の空いた連結板部で、連結される。
【0019】
かかる構成によれば、スポーク又は孔の空いた連結板部は、前突時、車両後方への衝突荷重が加わることで、破断する。これにより、イナーシャリングは、車両後方へ移動する。
【0020】
一実施形態では、上記後段プーリより車両後方に延びて、エンジンのクランクシャフトに嵌合するボス部をさらに備え、上記後段プーリは、上記ボス部に、上記後段プーリ及び上記ボス部よりも破壊強度の低い、スポーク又は孔の空いた連結板部で、連結され、上記前段プーリ及び上記後段プーリの内径は、上記ボス部の外径よりも大きい。
【0021】
かかる構成によれば、スポーク又は孔の空いた連結板部は、前突時、車両後方への衝突荷重が加わることで、破断する。また、前段プーリ及び後段プーリは、それらの内側にボス部を収容する位置まで、車両後方へ移動することができるので、十分なクラッシュペースを確保することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、縦置きエンジンの車両前方に配置されたクランクプーリ構造において、前突に対して、十分なクラッシュスペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施形態に係るエンジンのクランクプーリ構造を車両左側から見た状態で模式的に示す概略構成図である。
図2図2は、エンジンのクランクプーリ構造を車両前側から見た正面図である。
図3図3は、エンジンのクランクプーリ構造の縦断面図である。
図4図4は、エンジンのクランクプーリ構造の分解斜視図である。
図5A図5Aは、エンジンのクランクプーリ構造の前突による破壊の態様(前突前)を示す図である。
図5B図5Bは、エンジンのクランクプーリ構造の前突による破壊の態様(主に連結部の潰れ変形)を示す図である。
図5C図5Cは、エンジンのクランクプーリ構造の前突による破壊の態様(主にスポークの破断)を示す図である。
図5D図5Dは、エンジンのクランクプーリ構造の前突による破壊の態様(主に連結板部の破断)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。なお、本明細書において、車両の前進後退方向を「前後方向」とし、前進側を「前側」、後退側を「後側」とする。車幅方向を「左右方向」とし、車両後側から見て、右側を「右側」、左側を「左側」とする。図1,2において、エンジン1及びエンジンのクランクプーリ構造Aを実線で示し、それ以外を二点鎖線で図示し又は図示省略する。図3,4において、エンジンのクランクプーリ構造Aを実線で示し、それ以外を二点鎖線で図示し又は図示省略する。
【0025】
図1に示すように、車両前方には、エンジン1が備えられる。エンジン1は、複数のシリンダが車両前後方向に並ぶ縦置き多気筒エンジンであり、クランクシャフト2の軸方向が車両前後方向に一致する。エンジン1は、車両前方のエンジンルーム3に収容される。エンジン1の車両前方には、クランクプーリ20が配置される。一方、エンジン1の車両後方には、トランスミッション4が配置される。クランクプーリ20の詳細については後述する。トランスミッション4は、複数のギアを有する変速機であり、エンジン1が発生する動力を駆動輪(図示せず)に伝達する。エンジンルーム3の車両後方には、乗員を収容する車室5が設けられる。なお、車室5におけるフロア5aの車幅方向中央部には、車両上方に突出するフロアトンネル5bが形成されており、トランスミッション4及び排気装置(図示せず)は、フロアトンネル5bに収容される。エンジンルーム3と車室5とは、ダッシュパネル6によって仕切られる。なお、図1に示すL1は、エンジン1の車両後方端部とダッシュパネル6との隙間である。エンジン1は車両前後方向に長い縦置きエンジンであるので、車幅方向に長く車両前後方向に短い横置きエンジンに比べて、隙間L1は、小さいことが多い。
【0026】
図1に示すように、クランクプーリ20は、クランクシャフト2に固定され一体回転する。クランクプーリ20は、詳細は後述するが、大小2つのプーリを有する二段プーリであり、車両前方側に配置された小径の前段プーリ34と、前段プーリ34よりも車両後方側に配置された大径の後段プーリ38と、を有する。なお、後段プーリ38は、後述するイナーシャリング37に隠れて車両前側から見えないため図2では図示しない。図2に示すように、前段プーリ34は、クランクシャフト2から伝達されるクランク回転力を、ベルト7を介して、第1補機としてのウォータポンプ8に伝達する。具体的には、ウォータポンプ8の回転軸には、プーリ8aが回転一体に固定されており、ベルト7は、前段プーリ34及びプーリ8aに巻回される。ベルト7の内周面には、リブ7a(図3参照)が設けられる。ウォータポンプ8が駆動することで、エンジン1内部に冷却液が循環される。
【0027】
後段プーリ38は、クランクシャフト2から伝達されるクランク回転力を、ベルト9を介して、第2補機としてのエアコンディショナ用コンプレッサ10に伝達する。コンプレッサ10の回転軸には、プーリ10aが回転一体に固定される。ベルト9は、後段プーリ38及びコンプレッサ10のプーリ10a並びに後述するテンショナープーリ11aに巻回される。ベルト9の内周面には、リブ9a(図3参照)が設けられる。コンプレッサ10が駆動することで、エアコンディショナが作動し、車室5内における空気の温度や湿度が調整される。テンショナープーリ11aは、テンショナーアーム11bを介してテンショナー11cに連結される。テンショナー11cは、ベルト9における緩み側の張力の変動を抑制するものである。テンショナープーリ11aで受けたベルト9の張力の変動は、テンショナーアーム11bを介して、テンショナー11cによって抑制される。詳細は後述するが、クランクプーリ20とクランシャフト2との固定には、クランクプーリボルト14が用いられる。
【0028】
図1,2に示すように、前段プーリ34よりも車両前方には、ラジエータ12が配置される。ラジエータ12は、ウォータポンプ8の駆動によってエンジン1内部を循環する冷却液を冷却する装置である。ラジエータ12内部を流れる冷却液は、車両走行風等によって冷却される。図1に示すように、ラジエータ12よりも車両前方には、バンパーレインフォースメント13が配置される。バンパーレインフォースメント13は、車両の前方端部に固定される耐衝突部材であり、前突による衝撃を吸収して乗員へのダメージを軽減する。
【0029】
次に、図3,4を参照しながら、クランクプーリ20の構造について、詳細に説明する。クランクプーリ20は、図4に示すように、基本部材21、第1リング部材28,第2リング部材30及び突出部材33の4つの部材から構成される。詳細は後述するが、クランクプーリ20は、図3に示すように、基本部材21に対して、第1リング部材28,第2リング部材30及び突出部材33を嵌め込むことで、組立てられる。以下、クランクプーリ20を構成する各要素について、詳細に説明する。
【0030】
基本部材21は、図3,4に示すように、車両前方側に位置するリング状の前方リング部22と、前方リング部22よりも車両後方側に位置するリング状の後方リング部23と、後方リング部23より車両後方に延びる円筒状のボス部25と、を有する。後方リング部23の外径は、前方リング部22の内径よりも小さい。前方リング部22の内周面における車両後方端部と、後方リング部23の外周面における車両前方端部は、周方向に間隔を空けて設けられた複数のスポーク24,24,…で連結される。スポーク24は、前方リング部22及び後方リング部23よりも破壊強度が低い。
【0031】
図3,4に示すように、ボス部25の外径は、前方リング部22及び後方リング部23の内径よりも小さい。後方リング部23の内周面における車両後方端部と、ボス部25の外周面における車両前方端部は、全周に亘って板状の連結板部26で連結される。連結板部26は、貫通孔27,27,…が設けられることで、後方リング部23及びボス部25よりも破壊強度が低い。
【0032】
図3に示すように、ボス部25の内径はエンジン1のクランクシャフト2(図3において二点鎖線で図示)の外径に略一致しており、ボス部25は、クランクシャフト2に嵌合する。上述したように、クランクプーリ20は、クランクシャフト2に対して、クランクプーリボルト14で固定される。ここで、クランクプーリボルト14は、図3に示すように、頭部14a、フランジ部14b及びねじ部(図示せず)で構成される。フランジ部14bの外径は、ボス部25の外径に略一致する。クランクシャフト2の車両前方端部には、ねじ穴(図示せず)が設けられており、当該ねじ穴に対して、クランクプーリボルト14のねじ部が螺合する。このとき、図3に示すように、フランジ部14bは、ボス部25の車両前方端部に当接し、頭部14aは、ボス部25に対して車両前方に突出する。フランジ部14bとボス部25との間には、座金を介してもよい。
【0033】
第1リング部材28は、図4に示すように、リング状の部材であり、その内周面には、ダンパゴム29が貼着される。また、第1リング部材28の内径は、前方リング部22の外径に略一致する。図3に示すように、第1リング部材28は、基本部材21の前方リング部22に対して、外側から嵌め込まれることで、ダンパゴム29を介して、回転一体に固定される。
【0034】
第2リング部材30は、図4に示すように、リング状の部材であり、係合部30aと、鍔部30bと、を有する。係合部30aは、第2リング部材30の車両後方端部以外の部分を構成しており、その外周面には、リブ溝32が設けられる。リブ溝32は、ベルト9内周面のリブ9aに係合する。鍔部30bは、第2リング部材30の車両後方端部を構成しており、その外径が係合部30aの外径よりも大きい。ここで、図3,4に示すように、基本部材21の後方リング部23の外周面には、ダンパゴム31が貼着される。また、第2リング部材30の内径は、後方リング部23の外径に略一致する。図3に示すように、第2リング部材30は、基本部材21の後方リング部23に対して、外側から嵌め込まれることで、ダンパゴム31を介して、回転一体に固定される。このとき、図3に示すように、前方リング部22の内径は、係合部30aの外径よりも大きい一方、鍔部30bの外径よりも小さい。鍔部30bは、係合部30aよりも破壊強度を低くしてもよい。
【0035】
突出部材33は、図4に示すように、車両前方側に位置するリング状の前段プーリ34と、前段プーリ34よりも車両後方側に位置するリング状の嵌合部35と、前段プーリ34と嵌合部35とを連結する連結部39と、を有する。前段プーリ34の外周面にはリブ溝36が設けられる。リブ溝36は、ベルト7内周面のリブ7aに係合する。前段プーリ34の外径は、嵌合部35の内径よりも小さい。
【0036】
図3,4に示すように、連結部39は、前段プーリ34の内周面における車両後方端部と、嵌合部35の内周面における車両前方端部と、を連結する。また、連結部39は、図3,4に示すように、径方向内方に突出する「くの字」形状であり、前段プーリ34及び嵌合部35の内径よりも内側に、折り返し部(頂点)40を有する。また、連結部39は、前段プーリ34と嵌合部35との間を、全周に亘って隙間なく設けられるのではない。具体的には、連結部39には、図4に示すように、周方向に間隔を空けて、複数の貫通孔41,41,…が設けられる。なお、連結部39は、例えば薄肉鋼板等の変形しやすい材料で形成される。
【0037】
連結部39は、車両後方へ所定値以上の衝突荷重が加わることで、車両前後方向に潰れ変形する。なお、「車両前後方向に潰れ変形する」とは、連結部39の車両前後方向の寸法が小さくなることを意味する。なお、連結部39は、単に車両後方へ押しただけのような小さな荷重では潰れ変形しないが、前突のような大きな荷重では潰れ変形するように設計する必要がある。このためには、例えば、連結部39の材料、板厚、貫通孔41の大きさ、数量、配置等を、適宜調整すればよい。
【0038】
嵌合部35の外径は、後方リング部23の内径に略一致する。図3に示すように、嵌合部35は、基本部材21の後方リング部23に対して、内側から嵌め込まれることで、回転一体に固定される。図3に示すように、突出部材33の嵌合部35が基本部材21の後方リング部23に嵌め込まれたとき、車両前後方向において、嵌合部35の車両後方端の位置と、ボス部25の車両前方端の位置とは、略一致する。また、このとき、前段プーリ34は、その車両前方端が、クランクプーリ20のうち最も車両前方側に位置する。また、連結部39は、前方リング部22の内側に収容される。なお、前段プーリ34及び嵌合部35の内径は、ボス部25の外径よりも大きい。
【0039】
ここで、図3に示すように、第1リング部材28、ダンパゴム29、及び前方リング部22を一体として、イナーシャリング37(図3において二点鎖線で囲まれた部分)が構成される。すなわち、イナーシャリング37は、その外径が第1リング部材28の外径に略一致し、その内径が前方リング部22の内径に略一致する。なお、イナーシャリング37は、クランクシャフト2のねじり振動を低減するものである。
【0040】
また、図3に示すように、第2リング部材30の係合部30a(リブ溝32を含む)、ダンパゴム31、後方リング部23、及び嵌合部35を一体として、後段プーリ38(図3において二点鎖線で囲まれた部分)が構成される。すなわち、後段プーリ38は、その外径が係合部30aの外径に略一致し、その内径が嵌合部35の内径に略一致する。
【0041】
以上小括すると、クランクプーリ20は、前段プーリ34と、前段プーリ34よりも車両後方側に配置された後段プーリ38と、を有する。連結部39は、前段プーリ34と後段プーリ38(嵌合部35)とを、連結する。前段プーリ34の外径は、後段プーリ38(嵌合部35)の内径よりも小さい。
【0042】
イナーシャリング37(前方リング部22)は、前段プーリ34と後段プーリ38(後方リング部23)との間に設けられ、その内側に、連結部39を収容する。イナーシャリング37(前方リング部22)の内径は、前段プーリ34及び後段プーリ38(係合部30a)の外径よりも大きく、鍔部30bの外径よりも小さい。イナーシャリング37(前方リング部22)は、後段プーリ38(後方リング部23)に、イナーシャリング37(前方リング部22)及び後段プーリ38(後方リング部23)よりも破壊強度の低い、スポーク24で連結される。
【0043】
ボス部25は、後段プーリ38(後方リング部23)より車両後方に延びる。後段プーリ38(後方リング部23)は、ボス部25に、後段プーリ38(後方リング部23)及びボス部25よりも破壊強度の低い、複数の貫通孔27,27,…の空いた連結板部26で、連結される。前段プーリ34及び後段プーリ38(嵌合部35)の内径は、ボス部25の外径よりも大きい。
【0044】
以下、図5A図5Dを参照しながら、前突によるクランクプーリ20の破壊の態様について詳細に説明する。
【0045】
上述したが、図5Aに示すように、前段プーリ34よりも車両前方には、ラジータ12が配置される。また、前段プーリ34の車両前方端は、クランクプーリ20のうち最も車両前方側に位置する。したがって、前突時、ラジエータ12は、車両後方へ押されて、先ず、前段プーリ34に接触する。
【0046】
ラジエータ12は、前段プーリ34に接触した後、前段プーリ34を車両後方へ押す。ここで、図5Bに示すように、連結部39は、径方向内方に突出する「くの字」形状なので、車両後方への衝突荷重が加えられたとき、くの字のなす角度が小さくなるように潰れ変形する。これにより、前段プーリ34は、車両後方へ移動する。ここで、前段プーリ34の外径はイナーシャリング37(前方リング部22)の内径よりも小さいので、前段プーリ34は、車両後方へ移動して、イナーシャリング37(前方リング部22)の内側に収容される。ラジエータ12は、前段プーリ34を車両後方へ押しながら車両後方へ移動して、イナーシャリング37の車両前方端部に接触する。
【0047】
上述したように、スポーク24は、イナーシャリング37(前方リング部22)及び後段プーリ38(後方リング部23)よりも破壊強度が低いので、車両後方への衝突荷重により破断しやすい。したがって、図5Cに示すように、イナーシャリング37がラジエータ12によって、車両後方へ押されて、スポーク24に車両後方への衝突荷重が加わることで、スポーク24が破断する。また、前段プーリ34がラジエータ12によって、車両後方へさらに押されて、連結部39に車両後方への衝突荷重がさらに加わることで、連結部39は、車両前後方向にさらに潰れ変形する。これにより、前段プーリ34は、イナーシャリング37とともに、車両後方へさらに移動する。ここで、前段プーリ34の外径は、後段プーリ38(嵌合部35)の内径よりも小さいので、前段プーリ34は、車両後方へ移動して、後段プーリ38(嵌合部35)の内側に収容される。一方、イナーシャリング37(前方リング部22)の内径は、後段プーリ38(係合部30a)の外径よりも大きいので、イナーシャリング37は、車両後方へ移動して、後段プーリ38を内側に収容する。ラジエータ12は、前段プーリ34及びイナーシャリング37を車両後方へ押しながら車両後方へ移動して、後段プーリ38の車両前方端部に接触する。
【0048】
なお、このとき、図5Cに示すように、イナーシャリング37は、鍔部30bに接触する。鍔部30bに車両後方への衝突荷重が加わることで、鍔部30bは、破断する。これにより、鍔部30bは、イナーシャリング37の車両後方への移動の妨げとならなくなる。また、連結部39は、くの字形状の頂点(折り返し部)40が後段プーリ38(嵌合部35)の内径よりも径方向内方に位置するので、前突時、後段プーリ38に干渉せずに、後段プーリ38の内側に収容される。
【0049】
上述したように、貫通孔27の空いた連結板部26は、後段プーリ38(後方リング部23)及びボス部25よりも破壊強度が低いので、車両後方への衝突荷重が加わることで破断しやすい。したがって、図5Dに示すように、後段プーリ38がラジエータ12によって、車両後方へ押されて、連結板部26に車両後方への衝突荷重が加わることで、連結板部26が破断する。これにより、前段プーリ34は、イナーシャリング37及び後段プーリ38とともに、車両後方へさらに移動する。ここで、前段プーリ34、イナーシャリング37(前方リング部22)及び後段プーリ38(嵌合部35)の内径は、ボス部25の外径よりも大きいので、前段プーリ34、イナーシャリング37及び後段プーリ38は、車両後方へさらに移動して、ボス部25を内側に収容する。
【0050】
図5Dにおいて、前突により車両後方へ移動する前の位置(図5Aでの位置)における前段プーリ34を二点鎖線で示す。連結部39(クランクプーリ20)は、前突により、例えば、ラジエータ12が前段プーリ34に接触してから、クランクプーリボルト14の頭部14aに接触するまで、車両前後方向に潰れ変形する。したがって、この場合、クラッシュスペース(潰れ変形量)L2は、前段プーリ34の車両前方端部から、クランクプーリボルト14の頭部14aの車両前方端部までの距離となる(図3図5D参照)。
【0051】
以上の通り、かかる構成によれば、前突時、前段プーリ34に対して車両後方への衝突荷重が加わることで、前段プーリ34は、車両後方へ押される。そして、連結部39に車両後方への衝突荷重が加わると、連結部39は、車両前後方向に潰れ変形する。これにより、前段プーリ34は、車両後方へ移動する。ここで、前段プーリ34の外径は後段プーリ38(嵌合部35)の内径よりも小さいので、前段プーリ34は、車両後方へ移動して、後段プーリ38(嵌合部35)の内側に収容される。すなわち、前段プーリ34は、少なくとも、後段プーリ38(嵌合部35)の内側に収容される位置まで、車両後方へ移動することができる。
【0052】
したがって、縦置きエンジンの前方に配置されたクランクプーリ構造Aにおいて、前突に対して、十分なクラッシュスペースL2を確保することができる。
【0053】
これにより、エンジン1の車両前方に配置されたクランクプーリ20において、前突によるエネルギーが十分に吸収されるので、前突時におけるエンジン1の車両後方への移動量を、小さくすることができる。すなわち、エンジン1の車両後方端部とダッシュパネル6との隙間L1(図1参照)を、小さくすることができる。したがって、エンジン1として車両前後方向に長い縦置きエンジンを採用しているにもかかわらず、エンジンルーム3が車両前後方向に大きくなることを抑制することができるので、車両を小型化することができる。
【0054】
連結部39は、くの字形状の頂点(折り返し部)40が後段プーリ38(嵌合部35)の内径よりも径方向内方に位置する。これにより、連結部39は、前突時、後段プーリ38の内側に収容されるので、後段プーリ38に干渉にくい。
【0055】
貫通孔41が設けられた連結部39は、剛性が低いので、潰れ変形しやすい。
【0056】
イナーシャリング37を備えることで、クランクシャフト2のねじり振動を低減することができる。また、前突時、前段プーリ34がイナーシャリング37(前方リング部22)の内側に収容される位置まで、車両後方へ移動することができるとともに、イナーシャリング37(前方リング部22)がその内側に後段プーリ38を収容する位置まで、車両後方へ移動することができるので、イナーシャリング37を備えた場合でも、十分なクラッシュペースL2を確保することができる。
【0057】
イナーシャリング37(前方リング部22)と後段プーリ38(後方リング部23)とを連結するスポーク24は、前突時、車両後方への衝突荷重が加わることで、破断する。これにより、イナーシャリング37は、車両後方へ移動する。
【0058】
後段プーリ38(後方リング部23)とボス部25とを連結する、貫通孔27の空いた連結板部26は、前突時、車両後方への衝突荷重が加わることで、破断する。また、ボス部25の外径よりも内径の大きな前段プーリ34、後段プーリ38(後方リング部23)及びイナーシャリング37(前方リング部22)は、それらの内側にボス部25を収容する位置まで、車両後方へ移動することができるので、十分なクラッシュペースL2を確保することができる。
【0059】
さらに、外径の小さな前段プーリ34を、クランクシャフト2における振れの比較的大きな先端側(車両前方側)に配置することで、クランクシャフト2の振動によるクランクプーリ20の振幅を小さくすることができる。また、外径の小さな前段プーリ34を第1補機としてのウォータポンプ8にベルト7を介して連結する一方、外径の大きな後段プーリ38を第2補機としてのコンプレッサ10にベルト9を介して連結することで、ギア比を小さくしたい補機を第1補機とし、ギア比を大きくしたい補機を第2補機として使い分けることができる。
【0060】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0061】
本実施形態では、前段プーリ34と後段プーリ38との間にイナーシャリング37を備えたが、これに限定されず、イナーシャリング37を備えなくてもよい。
【0062】
連結部39は、径方向内方に突出する「くの字」形状としたが、これに限定されず、例えば、径方向外方に突出する「くの字」形状としてもよい。すなわち、車両後方への衝突荷重が加わることで車両前後方向に潰れ変形するのであれば、いかなる形状であってもよい。
【0063】
連結部39は、前段プーリ34と後段プーリ38(嵌合部35)とを、直接連結したが、これに限定されず、他の部材を介して、間接的に連結してもよい。
【0064】
連結部39は、前突時、車両後方への衝突荷重が加わることで、車両前後方向に潰れ変形した後に、破断してもよい。
【0065】
イナーシャリング37(前方リング部22)と後段プーリ38(後方リング部23)とをスポーク24で連結し、後段プーリ38(後方リング部23)とボス部25とを貫通孔27の空いた連結板部26連結したが、これに限定されない。例えば、イナーシャリング37(前方リング部22)と後段プーリ38(後方リング部23)とを孔の空いた連結板部で連結し、後段プーリ38(後方リング部23)とボス部25とをスポークで連結してもよい。
【0066】
クランクプーリ20とクランクシャフト2とをクランクプーリボルト14で回転一体に固定したが、これに限定されず、クランクプーリ20がクランクシャフト2に対して回転一体に固定されるのであれば、いかなる構成であってもよい。
【0067】
クラッシュスペース(潰れ変形量)L2は、前段プーリ34の車両前方端部から、クランクプーリボルト14の頭部14aの車両前方端部までの距離となる場合を例示したが、これに限定されない。例えば、クラッシュスペースL2は、前段プーリ34の車両前方端部からボス部25の車両前方端部まで等としてもよい。
【0068】
第1補機をウォータポンプ8、第2補機をコンプレッサ10としたが、これに限定されず、ベルト7,9を介してクランクプーリ20からクランク回転力を伝達されるのであれば、いかなる装置でもあってもよい。例えば、第2補機として、オルタネータが搭載される構成とし、オルタネータ及び後段プーリ38に券回されたベルト9によって、オルタネータが駆動するようにしてもよい。
【0069】
前段プーリ34は、前突時、ラジエータ12によって車両後方へ押されたが、これに限定されず、例えば、バンパーレインフォースメント13によって車両後方へ押されてもよい。
【0070】
トランスミッション4は、フロアトンネル5bに収容されたが、これに限定されず、例えば、エンジン1とともに、エンジンルーム3に収容されてもよい。この場合、L1は、トランスミッション4とダッシュパネル6との隙間となる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、エンジンのクランクプーリ構造に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0072】
A エンジンのクランクプーリ構造
1 エンジン
2 クランクシャフト
7 ベルト
8 ウォータポンプ(第1補機)
9 ベルト
10 コンプレッサ(第2補機)
20 クランクプーリ
24 スポーク
25 ボス部
26 連結板部
27 貫通孔(孔)
34 前段プーリ
37 イナーシャリング
38 後段プーリ
39 連結部
41 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D