【解決手段】制御部(ECU10)は、調節部(グリルシャッター65)の開度77と車速76とから、排気管(排気マニホールド20)の周囲の風速78を算出し、風速とエンジンルーム90内に導入される空気の温度79と排気管の外表面温度710とに基づいて、排気管の周囲の雰囲気温度Tdを算出し、風速と雰囲気温度と排気管の外表面温度Tcとに基づいて、排気管から外部への熱伝達による第1放熱量Q1を算出し、少なくとも第1放熱量に基づいて排気管の温度(本体温度Tb)を推定すると共に、推定した排気管の温度と、排気ガスの温度71及び流量72とに基づいて、浄化装置22の入口における排気ガスの温度70を推定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排気管には、エンジンから排出される排気ガス中の有害物質を減らす浄化装置が取り付けられている。浄化装置は、触媒装置及び/又はフィルタ装置を含む。触媒装置は、活性温度未満の場合、排気ガスの浄化率が低くなるため、触媒装置の温度は、活性温度以上に維持することが好ましい。
【0005】
自動車の走行中は、例えばエンジンの負荷が高くなることに伴い排気ガスの温度が高くなる。排気ガスの温度が高くなると触媒装置の温度が過剰に高くなる恐れがある。触媒装置の温度が過剰に高くなると、触媒装置の信頼性が低下してしまう。制御装置は、エンジンの運転中に、浄化装置に導入される排気ガスの温度を精度良く把握する必要がある。
【0006】
例えば特許文献1に記載されている技術を応用し、制御装置が、エンジンの運転状態や排気管の放熱等に基づいて、浄化装置の入口における排気ガスの温度を推定することが考えられる。
【0007】
ここで、本願出願人は、SI(Spark Ignition)燃焼とCI(Compression Ignition)燃焼とを組み合わせたSPCCI(SPark Controlled Compression Ignition)燃焼を提案している。SPCCI燃焼は、エンジンが一部の運転状態にある場合は、理論空燃比よりも大幅に燃料リーンにした混合気を、安定的に燃焼させることが可能である。燃料リーンな混合気を燃焼させることによって、エンジンは熱効率が高まる。エンジンの熱効率が高まると、自動車の燃費性能が向上する。
【0008】
エンジンがリーン混合気を安定的に燃焼させるためには、エンジンルーム内の温度は比較的高い方が有利である。そこで、エンジンルーム内へ走行風を導入する走行風導入口に、走行風導入口の開度を変更する調節部を設けることが考えられる。エンジンがリーン混合気を燃焼させる場合に、調節部が走行風導入口を閉じると、エンジンルーム内への空気の導入を抑制することができる。
【0009】
走行風導入口の開閉によって、エンジンルーム内の温度や風速が変化する。特許文献1に記載されている技術は、走行風導入口の開閉の影響を考慮していないため、浄化装置の入口における排気ガスの温度を精度良く推定することができない。
【0010】
ここに開示する技術は、浄化装置の入口における排気ガスの温度を、精度良く推定する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
具体的にここに開示する技術は、エンジンの制御装置に関する。
【0012】
このエンジンの制御装置は、
エンジンルーム内に配設されたエンジンと、
走行風導入口から前記エンジンルーム内へ空気を導入する開状態と、前記空気の導入を抑制する閉状態とに、前記走行風導入口の開度を変更する調節部と、
前記エンジンの排気ガス中の有害物質を減らす浄化装置と、
前記エンジンと前記浄化装置とをつなぐと共に、前記エンジンルーム内に配設された排気管と、
前記浄化装置の入口における排気ガスの温度を推定すると共に、推定した温度に応じて前記エンジンを制御する制御部と、を備える。
【0013】
そして、前記制御部は、
前記走行風導入口の開度と、車速とから、前記排気管の周囲の空気の風速を算出し、
前記風速と、前記エンジンルーム内に導入される空気の温度と、前記排気管の外表面温度とに基づいて、前記排気管の周囲の雰囲気温度を算出し、
前記風速と、前記雰囲気温度と、前記排気管の外表面温度とに基づいて、前記排気管から外部への熱伝達による第1放熱量を算出し、
少なくとも前記第1放熱量に基づいて前記排気管の温度を推定すると共に、推定した排気管の温度と、前記エンジンから前記排気管へ導入する排気ガスの温度及び流量とに基づいて、前記浄化装置の入口における排気ガスの温度を推定する。
【0014】
エンジンから排気管へ導入された排気ガスは、排気管を通じて放熱をしながら排気管内を流れて、触媒装置の入口へと至る。制御部は、エンジンから排気管へ導入する排気ガスの温度及び流量と、排気管の温度とに基づいて、排気ガスの放熱量を算出すると共に、その放熱量に基づいて浄化装置の入口における排気ガスの温度を推定する。
【0015】
エンジンルーム内に走行風を導入する走行風導入口には、調節部が設けられている。調節部が走行風導入口を開状態にした場合は、走行風導入口からエンジンルーム内へ空気が導入される。調節部が走行風導入口を閉状態にした場合は、走行風導入口からエンジンルーム内への空気の導入が抑制される。走行風導入口の開度に応じて、エンジンルーム内へ導入される空気の流量が変化する。尚、調節部は、走行風導入口を全開と全閉とに切り替わるよう構成してもよい。調節部は、走行風導入口を全開と全閉との中間開度に調整可能に構成してもよい。
【0016】
制御部は、走行風導入口の開度と、車速とから、エンジンルーム内に配設された排気管の周囲の空気の風速を算出する。例えば、走行風導入口の開度と車速とを変更しながら、排気管の周囲において風速を計測すると共に、その統計データに基づいて風速マップを作成してもよい。制御部は、作成した風速マップに基づいて風速を算出することができる。
【0017】
また、制御部は、前記風速と、エンジンルーム内に導入される空気の温度と、排気管の外表面温度とに基づいて、排気管の周囲の雰囲気温度を算出する。前記と同様に、各パラメータを変更しながら、排気管の周囲において雰囲気温度を計測すると共に、その統計データに基づいて温度マップを作成してもよい。制御部は、作成した温度マップに基づいて雰囲気温度を算出することができる。
【0018】
排気管の周囲の風速及び雰囲気温度が定まると、制御部は、排気管の外表面温度に基づいて、排気管から外部への熱伝達による第1放熱量を算出することができる。排気管から外部への第1放熱量が定まれば、制御部は、排気管の温度を算出することができる。排気管から外部への第1放熱量を算出するに際し走行風導入口の開度が考慮されているため、制御部は、排気管の温度を精度良く算出することができる。
【0019】
そして、制御部は、算出した排気管の温度と、エンジンから排気管へ導入する排気ガスの温度及び流量と、に基づいて、エンジンルーム内の浄化装置の入口における排気ガスの温度を、精度良く推定することができる。
【0020】
前記制御部は、前記排気管の外表面温度と、前記排気管の周囲の壁の温度とに基づいて、前記排気管から外部への輻射による第2放熱量を算出し、
前記制御部は、少なくとも前記第1放熱量と前記第2放熱量とに基づいて、前記排気管の温度を推定する、としてもよい。
【0021】
エンジンルーム内に配設された排気管は、様々な部品等に囲まれている。排気管から外部への放熱は、熱伝達による放熱の他にも、輻射による放熱がある。制御部は、排気管の外表面温度と、排気管の周囲の壁の温度とに基づいて、排気管から外部への輻射による第2放熱量を算出する。排気管の周囲の壁は、排気管の周囲に存在するエンジン関連の部品や、エンジンルームを構成する部品の外表面を意味する。排気管の周囲の壁の温度は、例えば、前記で算出した排気管の周囲の雰囲気温度と等しい、としてもよい。排気管の周囲の雰囲気温度を算出するに際し、走行風導入口の開度が考慮されているため、制御部は、輻射による第2放熱量を精度良く算出することができる。
【0022】
制御部は、少なくとも第1放熱量と第2放熱量とに基づいて排気管の温度を推定することにより、排気管の温度を、より精度良く推定することができる。その結果、制御部は、エンジンルーム内の浄化装置の入口における排気ガスの温度を、より精度良く推定することができる。
【0023】
前記制御部は、前記排気管内の排気ガスの温度と、前記排気ガスの流量と、前記排気管の温度とに基づいて、前記排気ガスから前記排気管への熱伝達による第3放熱量を算出し、
前記制御部は、少なくとも前記第1放熱量と前記第3放熱量とに基づいて、前記排気管の温度を推定する、としてもよい。
【0024】
排気管は、外部へ放熱する他に、排気管内の排気ガスから受熱する。制御部は、排気管内の排気ガスの温度と、排気ガスの流量と、排気管の温度とに基づいて、排気ガスから排気管への熱伝達による第3放熱量、つまり、排気管の受熱量を算出する。制御部は、少なくとも第1放熱量と第3放熱量とに基づいて、排気管の温度を推定することにより、排気管の温度を、より精度良く推定することができる。その結果、制御部は、エンジンルーム内の浄化装置の入口における排気ガスの温度を、より精度良く推定することができる。
【0025】
前記排気管は、本体と、前記本体を覆う断熱材と、前記断熱材を囲む外皮と、を有し、
前記制御部は、前記本体の温度と、前記外皮の温度とに基づいて、前記排気管の熱伝導による第4放熱量を算出し、
前記制御部は、少なくとも前記第1放熱量と前記第4放熱量とに基づいて、前記排気管の温度を推定する、としてもよい。
【0026】
排気管が断熱材を有している場合、制御部が排気管の温度を算出する際には、断熱材の熱伝導による放熱を考慮する必要がある。制御部は、本体の温度と、外皮の温度とに基づいて、排気管の熱伝導による第4放熱量を算出する。
【0027】
制御部は、少なくとも第1放熱量と第4放熱量とに基づいて、排気管の温度、正確には、排気ガスに接する本体の温度をより精度良く推定することができる。その結果、制御部は、エンジンルーム内の浄化装置の入口における排気ガスの温度を、より精度良く推定することができる。
【0028】
前記制御部は、前記走行風導入口の開度が大きい場合の方が、小さい場合よりも前記風速を高く算出する、としてもよい。
【0029】
走行風導入口の開度が大きいと、走行風導入口からエンジンルーム内へ導入される空気の流量が増えるため、排気管の周囲の風速が高まる。制御部は、走行風導入口の開度に応じた風速を正確に算出することができる。
【0030】
車速の上昇に対する前記風速の上昇率は、前記走行風導入口の開度が大きい場合の方が、小さい場合よりも高い、としてもよい。
【0031】
前述したように走行風導入口の開度が大きいと、走行風導入口からエンジンルーム内へ導入される空気の流量が増えるため、車速が上昇したときに風速が大きく上昇する。制御部は、走行風導入口の開度と車速とに応じた風速を正確に算出することができる。
【0032】
前記制御部は、推定した排気ガスの温度が、所定値よりも高い場合は、前記エンジンから前記排気管へ導入する排気ガスの温度が低くなるよう、前記エンジンを制御する、としてもよい。
【0033】
制御部は、推定された排気ガスの温度が所定値よりも高い場合、例えばエンジンに供給する燃料量を増やしてもよい。燃料量が増えると、燃料の気化潜熱によりエンジンから排出される排気ガスの温度が下がる。排気ガスの温度が下がると、浄化装置の温度が高くなりすぎることが抑制される。浄化装置は、信頼性を維持することができる。
【0034】
前記走行風導入口は、エンジンルーム前部に設けられたグリルであり、
前記調節部は、前記グリルに設けられたグリルシャッターである、としてもよい。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、前記のエンジンの制御装置は、エンジンルーム内の浄化装置の入口における排気ガスの温度を、精度良く推定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、エンジンの制御装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで説明するエンジンの制御装置は例示である。
【0038】
(エンジンの構成)
図1は、エンジン、浄化装置及びセンサの配置を例示する自動車前部の断面図であり、
図2は、エンジン及び浄化装置の配置を例示する自動車前部の平面図である。
【0039】
自動車の前部のエンジンルーム90内には、エンジン1と、エンジン1に連結された変速機93とが配設されている。図例のエンジン1は、複数の気筒18(図例では、4つの気筒18)が一列に配設された直列エンジンである。エンジン1は、その気筒列の方向が、自動車の車幅方向に一致するように配置されている。エンジン1は、いわゆる横置きである。
【0040】
エンジン1は、気筒18が吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程を繰り返すことにより運転する4ストロークエンジンである。エンジン1の燃料は、この構成例においては、ガソリンである。燃料は、少なくともガソリンを含む液体燃料であればよい。エンジン1はまた、点火プラグ82(
図4参照)が気筒18内の混合気に点火をする火花点火式エンジンである。
【0041】
エンジン1は、シリンダヘッド11、シリンダブロック12及びオイルパン13を有している。シリンダヘッド11はシリンダブロック12の上に連結され、オイルパン13はシリンダブロック12の下に取り付けられている。
【0042】
シリンダヘッド11には、
図1に示すように、気筒18内に吸気を導入するための吸気ポート111が形成されていると共に、気筒18内から排気ガスを導出するための排気ポート112が形成されている。吸気ポート111には、図示を省略するが、クランクシャフトの回転に同期して開閉する吸気弁が配設されている。排気ポート112には、クランクシャフトの回転に同期して開閉する排気弁が配設されている。
【0043】
エンジン1の前側には、吸気マニホールド14が取り付けられている。吸気マニホールド14は、各吸気ポート111と連通している。吸気マニホールド14は、各気筒18内へ吸気を導入する。吸気マニホールド14には、吸気管15が接続されている。吸気管15の上流端には、自動車の前方に向かって開口した吸気取込口16が形成されている。吸気管15の途中にはエアクリーナー17が設けられている。
【0044】
エンジン1の後側には、排気マニホールド(つまり、独立排気管)20が取り付けられている。排気マニホールド20は、各排気ポート112と連通している。排気マニホールド20は、各気筒18から排気ガスを導出する。排気マニホールド20には、浄化装置22が接続されている。浄化装置22は、排気ガス中の有害物質を減らす。浄化装置22は、詳細な図示は省略するが、三元触媒とGPF(Gasoline Particulate Filter)とを有している。
【0045】
浄化装置22には、排気管21が接続されている。排気管21は、浄化装置22から後方に向かって延びている。排気管21は、トンネル91内に配設されている。トンネル91は、ダッシュパネル92に接続されている。ダッシュパネル92は、エンジンルーム90の後部を形成する。トンネル91内の空間は、エンジンルーム90につながっている。トンネル91の下部は、開放されている。
【0046】
トンネル91内の排気管21には、センサケース26が介設している。センサケース26は、後述するNOxセンサSW10を有している。NOxセンサSW10は、浄化装置22の下流に位置している。
【0047】
エンジン1には、EGR装置が設けられている。EGR装置は、排気ガスの一部を、EGRガスとして吸気に還流する。EGR装置は、EGR通路23と、EGRクーラー24と、EGR弁25とを有している。EGR通路23は、排気管21(より詳細には浄化装置22の下流端部)と吸気管15とを連結する。EGRクーラー24は、EGR通路23の途中に設けられかつ、EGRガスを冷却する。EGR弁25は、吸気に還流するEGRガス量を調節する。
【0048】
エンジンルーム90の前部には、走行風導入口としてのグリル60が形成されている。グリル60の後方に、ラジエータ40と、冷却ファン42とが配設されている。ラジエータ40は、エンジン1の前方に位置し、冷却ファン42は、ラジエータ40とエンジン1との間に位置している。ラジエータ40は、エンジン1の冷却液を冷却する。冷却ファン42が作動すると、グリル60からエンジンルーム90内への空気の導入が促進される。
【0049】
ここで、エンジン1は、一部の運転領域において、SI燃焼とCI燃焼とを組み合わせたSPCCI燃焼を行う。その他の運転領域において、エンジン1は、SI燃焼を行う。SPCCI燃焼は、SI燃焼による発熱と圧力上昇とを利用して、CI燃焼をコントロールする。CI燃焼を含むSPCCI燃焼は、燃費の向上及び排出ガス性能の向上に有利である。エンジン1は、SPCCI燃焼を行う場合は、混合気の空燃比を、理論空燃比にする場合(つまり、ストイキSPCCI)と、理論空燃比よりもリーンにする場合(つまり、リーンSPCCI)と、がある。エンジン1は、SI燃焼を行う場合は、混合気の空燃比を、理論空燃比にする。
【0050】
エンジン1がリーンSPCCI燃焼を行う場合、エンジン1及びエンジンルーム90内の温度を比較的高く維持した方が、燃焼の安定に有利である。そこで、この自動車は、エンジンルーム90内への空気の導入量を調節するグリルシャッター65を備えている。グリルシャッター65は調節部の一例である。
【0051】
グリルシャッター65は、グリル60に設けられている。グリルシャッター65は、上下方向に並んだ複数のフィン66を有している。各フィン66は、回動可能に構成されている。グリルシャッター65は、フィン66の向きが自動車の走行方向に対して垂直な場合に開度が最小(つまり、閉)になり、フィン66の向きが自動車の走行方向に対して平行な場合に開度が最大(つまり、全開)になる。
図1は、グリルシャッター65の開度が最大の状態を例示している。グリルシャッター65は、その開度を、最小と最大との間の中間開度にすることも可能である。グリルシャッター65の開度が大きいほど、グリル60の開度が大きいから、エンジンルーム90内へ導入される空気の流量が多くなる。グリルシャッター65を閉じると、グリル60の開度が小さくなってエンジンルーム90内への空気の導入を制限される。エンジンルーム90内への空気の導入を制限すると、エンジンルーム90内の温度が高くなる。グリルシャッター65を開けて、エンジンルーム90内へ空気を導入すると、エンジンルーム90内の温度が低下する。エンジンルーム90内へ導入された空気により、ラジエータ40は、エンジン1の冷却液を冷却する。グリルシャッター65を開けかつ、冷却ファン42を作動させると、エンジンルーム90内へ導入される空気の流量が増えるため、エンジンルーム90内の温度がさらに低下する。ラジエータ40は、エンジン1の冷却液の温度をさらに低下させる。
【0052】
この自動車はまた、エンジンルーム90内に、保温カバー50を設けている。尚、
図2は、保温カバー50を取り外したエンジンルーム90を図示している。保温カバー50は、エンジン1のシリンダヘッド11の上面全体と、左右両側面と、後面とを覆っている。保温カバー50がエンジン1を覆うことによって、エンジン1が保温されると共に、エンジン1音の拡散が抑制される。
【0053】
エンジン1がリーンSPCCI燃焼を行う場合、燃焼温度が低いため、エンジン1から排出される排気ガスの温度が低い。排気ガスの温度が低いと、浄化装置22の温度が、三元触媒の活性温度よりも下がってしまう。そこで、このエンジン1は、浄化装置22に導入される排気ガスの温度を高く維持するために、排気マニホールド20を断熱材によって覆っている。
図3は、
図2のIII−III線端面図を示している。排気マニホールド20は、独立排気管を構成する4つの本体201と、4つの本体201の周囲を覆う断熱材202と、断熱材202を囲む一対の外皮203とによって構成されている。一対の外皮203は、断熱材202を挟んで、断熱材202を保持する。排気マニホールド20の断熱構造は、排気ガス温度の維持の他に、エンジン音の低減にも寄与する。
【0054】
(エンジンの制御装置)
図4は、エンジン1の制御装置の構成を例示するブロック図である。エンジンの制御装置は、ECU(Engine Control Unit)10を備えている。ECU10は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラーであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)101と、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)により構成されてプログラム及びデータを格納するメモリ102と、電気信号の入出力をする入出力バス103と、を備えている。ECU10は、制御部の一例である。
【0055】
ECU10には、各種のセンサSW1〜SW11が接続されている。センサSW1〜SW11は、信号をECU10に出力する。センサには、以下のセンサが含まれる。
【0056】
エアフローセンサSW1:吸気管15におけるエアクリーナー17の下流に配置されかつ、吸気管15を流れる空気の流量を計測する
吸気温度センサSW2:吸気管15におけるエアクリーナー17の下流に配置されかつ、吸気管15を流れる空気の温度を計測する
筒内圧センサSW3:各気筒18に対応してシリンダヘッド11に取り付けられかつ、気筒18内の圧力を計測する
EGR差圧センサSW4:EGR通路23に配設されかつ、EGR弁25の上流及び下流の圧力差を計測する
車速センサSW5:自動車の車速を計測する
液温センサSW6:エンジン1の冷却液の液温を検出する
クランク角センサSW7:エンジン1に取り付けられかつ、クランクシャフトの回転角を計測する
アクセル開度センサSW8:アクセルペダル機構(図示省略)に取り付けられかつ、アクセルペダルの操作量に対応したアクセル開度を計測する
燃圧センサSW9:燃料供給システム85に取り付けられかつ、インジェクタ81へ供給する燃料の圧力を計測する
NOxセンサSW10:浄化装置22よりも下流の排気管21に取り付けられかつ、排気ガス中のNOx濃度を計測する
外気温センサSW11:自動車が走行している環境下の外気温を計測する。
【0057】
ECU10は、これらのセンサSW1〜SW11の信号に基づいて、エンジン1の運転状態を判断すると共に、予め定められている制御ロジックに従って、後述する各デバイス81〜86、25、65、42の制御量を演算する。制御ロジックは、メモリ102に記憶されている。制御ロジックは、メモリ102に記憶している運転マップを用いて、目標量及び/又は制御量を演算することを含む。
【0058】
ECU10は、演算をした制御量に係る電気信号を、インジェクタ81、点火プラグ82、吸気電動S−VT83、排気電動S−VT84、燃料供給システム85、スロットル弁86、EGR弁25、グリルシャッター65、及び、冷却ファン42に出力する。
【0059】
インジェクタ81は、シリンダヘッド11に取り付けられかつ、気筒18内に燃料を直接噴射する。点火プラグ82は、シリンダヘッド11に取り付けられかつ、気筒18内の混合気に強制的に点火をする。吸気電動S−VT83は、シリンダヘッド11に取り付けられかつ、図示を省略する吸気カムシャフトの回転位相を、所定の角度範囲内で連続的に変更する。吸気カムシャフトは、図示を省略する吸気弁を開閉する。排気電動S−VT84は、シリンダヘッド11に取り付けられかつ、図示を省略する排気カムシャフトの回転位相を、所定の角度範囲内で連続的に変更する。排気カムシャフトは、図示を省略する排気弁を開閉する。燃料供給システム85は、インジェクタ81に燃料を供給する。スロットル弁86は、エアクリーナー17よりも下流の吸気管15に取り付けられ、気筒18内への空気の導入量を調節する。
【0060】
図5は、ECU10が実行するグリルシャッター65、及び、冷却ファン42の制御例を示している。ECU10は、冷却液温度、及び/又は、エンジンルーム90内の温度に応じて、グリルシャッター65を開閉すると共に、冷却ファン42をオンオフする。具体的に、ECU10は、冷却液温度、及び/又は、エンジンルーム90内の温度が低いと、グリルシャッター65を閉じると共に、冷却ファン42をオフにする。これにより、エンジン1及びエンジンルーム90内の温度が高く維持される。エンジン1は、リーンSPCCI燃焼を安定的に実行することができる。
【0061】
エンジン1が、ストイキSPCCI燃焼又はSI燃焼を実行すると、冷却液温度、及び/又は、エンジンルーム90内の温度が高くなる。ECU10は、冷却液温度、及び/又は、エンジンルーム90内の温度が高くなると、グリルシャッター65を開ける。これにより、グリル60からエンジンルーム90内へ空気が導入されるため、エンジン1の冷却液及びエンジンルーム90内の温度が下がる。
【0062】
冷却液温度、及び/又は、エンジンルーム90内の温度がさらに高くなると、ECU10は、グリルシャッター65を開けると共に、冷却ファン42をオンにする。これにより、グリル60からエンジンルーム90内へ導入される空気の流量が多くなるため、エンジン1の冷却液及びエンジンルーム90内の温度をさらに低下させることが可能になる。
【0063】
(排気ガス温度の推定)
三元触媒を含む浄化装置22は、活性温度未満の場合は、排気ガスの浄化率が低くなるため、エンジン1の運転中、浄化装置22は、活性温度以上の温度に維持することが好ましい。その一方で、自動車の走行中は、例えばエンジン1の負荷が高くなることに伴い、排気ガスの温度が高くなって、浄化装置22の温度が過剰に高くなる恐れがある。浄化装置22の温度が過剰に高くなると、浄化装置22の信頼性が低下してしまう。そこで、ECU10は、エンジン1の運転中に、浄化装置22に導入される排気ガスの温度を精度良く把握する必要がある。
【0064】
ここに開示するエンジンの制御装置は、浄化装置22に導入される排気ガスの温度を、温度センサによって検出するのではなく、演算によって推定する。エンジンの制御装置は、温度センサを省略することができる。温度センサの省略は、コストの低減の他に、温度センサの劣化や故障に起因する温度センサの修理や交換が不要になるという利点もある。
【0065】
図6は、浄化装置22の入口における排気ガス温度を推定するロジックを説明するための図である。エンジン1及び浄化装置22は、前述したように、エンジンルーム90内に配設されている。エンジン1と浄化装置22とは、排気マニホールド20を介して接続されている。エンジン1の気筒18から排出された排気ガスは、排気ポート112を介して排気マニホールド20に導入される。排気ガスは、排気マニホールド20を通過している間に放熱する(
図6の矢印参照)。浄化装置22の入口において、排気ガスの温度は、エンジン1の排気ポート112における排気ガスの温度よりも低い。
【0066】
排気マニホールド20を通過している排気ガスの放熱量は、その排気ガスの温度と排気マニホールド20の温度との温度差に応じて定まる。排気マニホールド20の温度は、排気ガスの放熱量、言い替えると排気マニホールド20が排気ガスから受ける受熱量と、排気マニホールド20から外部へ放出する放熱量とに応じて定まる。排気マニホールド20から外部への放熱量は、排気マニホールド20の周囲の空気の風速と、排気マニホールド20の周囲の雰囲気温度と、排気マニホールド20の周囲に存在する壁(つまり、エンジンルーム内壁)の温度とに応じて定まる。
【0067】
図7は、ECU10が実行する、浄化装置22の入口における排気ガス温度を推定するロジックを示している。ECU10は、排気ポートのガス温度71と、排気ガス流量72とをインプットとし、浄化装置入口のガス温度70をアウトプットとする演算を行う。ECU10は、所定の時間間隔で演算を繰り返すことにより、時系列のガス温度70を観測する。
【0068】
ECU10は、排気ポートのガス温度71を演算によって求めてもよい。詳細な説明は省略するが、本願発明者らは、SPCCI燃焼及びSI燃焼を行うエンジン1において、燃焼進行度と排気ポートガス温度との間には線形となる相関関係が存在することを見出した。燃焼進行度は、燃焼が特定の程度まで進行したときのクランク角度である。質量燃焼割合が、例えば50%となるクランク角度(mfb50)は、燃焼進行度として用いることができる。ECU10は、筒内圧センサSW3の出力信号と、クランク角センサSW7の出力信号とに基づいてmfb50を演算することができる。燃焼進行度が遅角すると、排気ポートガス温度が高くなり、燃焼進行度が進角すると、排気ポートのガス温度が低くなる。燃焼進行度と排気ポートのガス温度との関係を表すモデル又はマップを用いて、ECU10は、排気ポートのガス温度71を演算することができる。
【0069】
尚、ECU10が排気ポートのガス温度71を演算する代わりに、排気ポートガス温度71を計測する温度センサを、エンジン1に取り付けてもよい。ECU10は、当該温度センサの出力信号に基づいて、排気ポートのガス温度71を取得することができる。
【0070】
ECU10は、エアフローセンサSW1の出力信号(つまり、エンジン1の空気量)と、ECU10が定めた燃料供給量と、EGR差圧センサSW15の出力信号(つまり、外部EGRガス量)とに基づいて、エンジン1から排出される排気ガス流量72を演算することができる。
【0071】
ECU10はまた、排気ポートガス温度71と排気ガス流量72とから、排気ガス熱エネルギ73と、排気ガス流速74とを演算する。
【0072】
ECU10は、排気マニホールド20から外部への放熱量を演算するために、排気マニホールド20の周囲の空気の風速を算出する。本願発明者等の検討によると、エンジン1の後側に配設された排気マニホールド20の周囲の空気の風速は、自動車の車速、及び、グリルシャッター65の開度と相関を有していることがわかった。そこで、車速とグリルシャッター65の開度とを変更しながら、排気マニホールド20の周囲において計測をした風速の統計データに基づき、風速マップ75を事前に作成しておく。ECU10は、風速マップ75と、車速センサSW5の信号から得られる自動車の車速76と、ECU10が定めるグリルシャッター65の開度77とに基づいて、排気マニホールド20の周囲の風速78を算出する。
【0073】
ここで、
図8は、風速マップ75を例示している。風速マップ75は、前述したように、車速とグリルシャッター65の開度と排気マニホールド20の周囲における空気の風速との関係を定めている。車速が高いと、グリル60や、その他の箇所を通じてエンジンルーム90内へ流入する空気の流量が増える。そのため、車速が高いほど、排気マニホールド20の周囲における空気の風速は高い。
【0074】
また、グリルシャッター65が開(つまり、全開)である場合、グリルシャッター65が閉(つまり、全閉)である場合よりも、グリル60を通じてエンジンルーム90内へ流入する空気の流量が増える。そのため、グリルシャッター65が開である場合は、閉である場合よりも、排気マニホールド20の周囲における空気の風速は高い。
【0075】
グリルシャッター65が開である場合の方が、閉である場合よりも、車速の上昇に対する風速の上昇率(つまり、
図8の直線の傾き)は高い。グリルシャッター65の開度が大きいと、グリル60からエンジンルーム90内へ導入される空気の流量が増えるため、車速が上昇したときに風速が大きく上昇するためである。
【0076】
尚、
図8の風速マップ75は、グリルシャッター65が全開である場合の直線と、グリルシャッター65が全閉である場合の直線との、二本の直線のみを含んでいる。風速マップ75は、グリルシャッター65が中間開度である場合の直線を、さらに含んでいてもよい。
【0077】
また、ECU10は、グリルシャッター65が中間開度である場合は、グリルシャッター65が全開である場合の直線と、グリルシャッター65が全閉である場合の直線との間を補完することにより、排気マニホールド20の周囲における空気の風速を算出してもよい。
【0078】
尚、ECU10は、風速マップ75に代えて、モデルを用いて排気マニホールド20の周囲における空気の風速を算出してもよい。
【0079】
ECU10は、機能ブロックとしての風速算出部31を有している。風速算出部31は、グリルシャッター65の開度と、車速とから、排気マニホールド20の周囲の空気の風速を算出する。
【0080】
ECU10はまた、排気マニホールド20の周囲の雰囲気温度を算出する。本願発明者等の検討によると、排気マニホールド20の周囲の温度は、前記で算出した風速78、エンジンルーム90に流入する空気の温度(エンジンルーム入口温度79)、及び、排気マニホールド20の外皮温度710と相関を有している。そこで、これらの各パラメータを変更しながら、排気マニホールド20の周囲において計測をした雰囲気温度の統計データに基づいて温度マップ711を事前に作成しておく。ECU10は、温度マップ711と、風速78と、エンジンルーム入口温度79と、外皮温度710とに基づいて、排気マニホールドの周囲における雰囲気温度Tdを算出する。
【0081】
ECU10は、例えば吸気温度センサSW2の信号を、エンジンルーム入口温度79に利用してもよい。吸気温度センサSW2は、
図2に示すように、エンジンルーム90の前部に配設された吸気取込口16から取り込んだ空気の温度に対応する信号を、ECU10に出力する。また、ECU10は、後述するように、外皮温度Tcを算出する。ECU10は、外皮温度Tcの前回値を、外皮温度710に用いる。
【0082】
尚、ECU10は、温度マップ711に代えて、モデルを用いて排気マニホールド20の周囲における雰囲気温度を算出してもよい。
【0083】
ECU10は、機能ブロックとしての雰囲気温度算出部32を有している。雰囲気温度算出部32は、風速と、エンジンルーム90内に導入される空気の温度と、排気マニホールド20の外皮温度とに基づいて、排気マニホールド20の周囲の雰囲気温度を算出する。
【0084】
ECU10は、前述した風速及び雰囲気温度Tdと、排気マニホールド20の外皮温度Tcとに基づいて、排気マニホールド20から外部への熱伝達による第1放熱量Q1を算出する。ECU10は、予め定めた熱伝達モデルに基づいて、第1放熱量Q1を算出すればよい。ECU10は、機能ブロックとしての第1放熱量算出部33を有している。第1放熱量算出部33は、排気マニホールド20から外部への熱伝達による第1放熱量Q1を算出する。
【0085】
エンジンルーム90内に配設された排気マニホールド20は、様々な部品等に囲まれている。排気マニホールド20から外部への放熱は、熱伝達による放熱の他にも、輻射による放熱がある。ECU10は、外皮温度Tcとエンジンルーム内壁温度Teとに基づいて、排気マニホールド20から外部への輻射による第2放熱量Q2を算出する。エンジンルーム内壁は、排気マニホールド20の周囲に存在するエンジン関連の部品や、エンジンルーム90を構成する部品の外表面を意味する。本願発明者等は、
図1及び
図2に示すエンジンルーム90の構成例においては、エンジンルーム内壁温度Teと、排気マニホールド20の周囲の雰囲気温度Tdとは、ほぼ一致することを確認した。エンジン内壁温度Teは、温度マップ711を用いて算出する雰囲気温度Tdと等しい、とすることができる。尚、自動車が、エンジンルーム内壁温度Teと、排気マニホールド20の周囲の雰囲気温度Tdとが一致しない構成であれば、ECU10は、雰囲気温度Tdとは別に、エンジン内壁温度Teを算出すればよい。
【0086】
ECU10は、予め定めた輻射モデルに基づいて、第2放熱量Q2を算出すればよい。ECU10は、機能ブロックとしての第2放熱量算出部34を有している。第2放熱量算出部34は、排気マニホールド20から外部への輻射による第2放熱量Q2を算出する。
【0087】
図3に示したように、排気マニホールド20は、本体201と、断熱材202と、外皮203とによって構成されている。ECU10は、本体の温度Tbと、外皮温度Tcとに基づいて、排気マニホールド20の熱伝導による第4放熱量Q4を算出する。ECU10は、予め定めた熱伝導モデルに基づいて、第4放熱量Q4を算出すればよい。ECU10は、機能ブロックとしての第4放熱量算出部35を有している。第4放熱量算出部35は、本体201の温度Tbと、外皮203の温度Tcとに基づいて、排気マニホールド20の熱伝導による第4放熱量Q4を算出する。
【0088】
排気マニホールド20は、外部へ放熱する他に、排気マニホールド20内の排気ガスから受熱する。ECU10は、排気マニホールド20内の排気ガス温度Taと、排気ガスの流量と、本体201の温度Tbとに基づいて、排気ガスから本体201への熱伝達による第3放熱量Q3を算出する。第3放熱量Q3は、本体201の受熱量である。ECU10は、予め定めた熱伝達モデルに基づいて、第3放熱量Q3を算出すればよい。ECU10は、機能ブロックとしての第3放熱量算出部36を有している。第3放熱量算出部36は、排気ガス温度Taと、排気ガスの流量72と、本体201の温度Tbとに基づいて、排気ガスから排気マニホールド20の本体201への熱伝達による第3放熱量Q3を算出する。
【0089】
ECU10は、算出した放熱量Q1、Q2、Q3及びQ4に基づいて本体201の温度Tbを算出する。より詳細に、ECU10は、排気マニホールド20の本体201の前回温度に対して、本体201から放熱される熱量Q1、Q2、Q4と、本体201が受熱する熱量Q3との差し引きに基づいて、本体201の温度Tbを推定する。
【0090】
そして、ECU10は、本体201の温度Tbを推定すれば、当該本体201の温度Tbと、排気マニホールド20に導入される排気ガスの熱エネルギ73とに基づいて、排気マニホールド20の入口から出口までにおいて排気ガスから本体201へ放熱する熱量を算出し、その放熱量に基づいて浄化装置22の入口における排気ガスの温度70を推定する。ECU10は、機能ブロックとしての温度推定部37を有している。
【0091】
ECU10は、車速とグリルシャッター65の開度とを考慮して算出した排気マニホールド20の温度に基づいて、エンジンルーム90内の浄化装置22の入口における排気ガスの温度を、精度良く推定することができる。
【0092】
図9は、ECU10が実行する、排気ガス温度の推定手順を例示するフローチャートである。尚、このフローチャートのステップS1〜S13は、その順番を、可能な範囲で入れ替えることも可能である。
【0093】
先ず、スタート後のステップS1において、ECU10は、各種センサSW1〜SW11の信号を読み込む。続くステップS2において、ECU10は、前述したように、冷却液温度、及び/又は、エンジンルーム90内の温度に応じて、グリルシャッター65の開度、及び、冷却ファン42の作動状態を設定する(
図5参照)。
【0094】
ステップS3においてECU10は、グリルシャッター開度77と車速76と風速マップ75とから、排気マニホールド20の周囲の風速78を算出する。また、ステップS4においてECU10は、風速78とエンジンルーム入口温度79と外皮温度710と温度マップ711とから、排気マニホールド20の周囲の雰囲気温度Tdを算出する。
【0095】
ステップS5において、ECU10は、外皮温度Tcと風速78と雰囲気温度Tdとから、熱伝達による第1放熱量Q1を算出する。また、ステップS6において、ECU10は、外皮温度Tcとエンジンルーム内壁温度Te(=Td)とから輻射による第2放熱量Q2を算出する。
【0096】
ステップS7において、ECU10は、本体温度Tbと外皮温度Tcとから、熱伝導による第4放熱量Q4を算出する。また、ステップS8において、ECU10は、排気ガス温度Taと本体温度Tbとから熱伝達による第3放熱量Q3を算出する。
【0097】
そして、ステップS9において、ECU10は、前回の本体温度と、ステップS5〜S8で算出した放熱量Q1〜Q4とに基づいて、今回の本体温度Tbを算出し、続くステップS10において、ECU10は、排気ポートガス温度71と排気ガス流量72とから算出した排気ガス熱エネルギ73と、本体温度Tbとから、排気ガスから排気マニホールド20への放熱量を算出し、浄化装置22の入口における排気ガスの温度70を算出(つまり、推定)する。
【0098】
浄化装置入口の排気ガスの温度70を算出すれば、ECU10は、続くステップS11で、算出した排気ガスの温度70が、予め定めた第1閾値未満であるか否かを判断する。第1閾値は、触媒の温度が過度に上昇しない温度として定めればよい。温度が第1閾値未満である場合は、プロセスはステップS11からステップS12に進む。温度が第1閾値以上の場合、つまり、浄化装置入口における排気ガスの温度が高い場合、プロセスはステップS11からステップS13に進む。ステップS13においてECU10は、気筒18内へ供給する燃料の噴射量を増量する。燃料が増えることによって、燃料の気化潜熱により燃焼温度が低下する。エンジン1から排出される排気ガスの温度が低下するため、浄化装置入口における排気ガスの温度が下がる。浄化装置22の温度が高くなりすぎることが抑制される。浄化装置22の信頼性が低下してしまうことが抑制される。
【0099】
ステップS12において、ECU10は、浄化装置22の触媒温度が、予め定めた第2閾値よりも低いか否かを判断する。第2閾値は、触媒の信頼性を維持することができる温度として定めればよい。ECU10は、浄化装置入口における排気ガスの温度に基づいて、触媒温度を推定すればよい。ステップS12の判断がYESの場合、つまり、触媒温度が高くない場合、プロセスはリターンする。ステップS12の判断がNOの場合、つまり、触媒温度が高い場合、プロセスはステップS13に進む。前述したように、ステップS13においてCU10は、気筒18内へ供給する燃料の噴射量を増量する。エンジン1から排出される排気ガスの温度が低下することにより、触媒の温度が低下する。浄化装置22の信頼性が低下してしまうことが抑制される。
【0100】
尚、前記の構成では、排気マニホールド20が断熱材202を有しているが、断熱材202及び外皮203は省略することも可能である。断熱材202及び外皮203を省略した場合、
図7のロジックにおいて、ECU10は、排気マニホールド20の熱伝導による第4放熱量Q4の算出を省略する。また、ECU10は、外皮温度Tcを排気マニホールド温度Tbに一致させて、放熱量Q1及びQ2を算出する。
【0101】
また、排気マニホールド20の温度の算出に係る放熱量Q1〜Q4の内、可能であれば、ECU10は、放熱量Q2、Q3及びQ4の算出を省略してもよい。
【0102】
さらに、ここに開示する技術は、SPCCI燃焼を行うエンジン1に適用することに限定されない。ここに開示する技術が適用可能なエンジン1は、特に制限はない。SI燃焼のみを行う、いわゆる火花点火式エンジン又はガソリンエンジンに、ここに開示する技術を適用してもよい。また、CI燃焼を行う、いわゆるディーゼルエンジンに、ここに開示する技術を適用してもよい。