(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-19739(P2020-19739A)
(43)【公開日】2020年2月6日
(54)【発明の名称】ナチュラルキラー細胞活性化剤
(51)【国際特許分類】
A61K 33/24 20190101AFI20200110BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20200110BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20200110BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20200110BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20200110BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20200110BHJP
【FI】
A61K33/24
A61P43/00 107
A61P43/00 121
A61P37/04
A61P35/00
A61P31/12
A61K9/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-144106(P2018-144106)
(22)【出願日】2018年7月31日
(11)【特許番号】特許第6635319号(P6635319)
(45)【特許公報発行日】2020年1月22日
(71)【出願人】
【識別番号】397046397
【氏名又は名称】株式会社東洋厚生製薬所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】輪嶋 将一
(72)【発明者】
【氏名】坂部 貢
(72)【発明者】
【氏名】川上 智史
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076BB01
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC35
4C076FF11
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA10
4C086HA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA23
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB02
4C086ZB09
4C086ZB22
4C086ZB26
4C086ZB33
(57)【要約】
【課題】新規なナチュラルキラー細胞活性化剤の提供。
【解決手段】白金コロイドとパラジウムコロイドとを含有する、ナチュラルキラー細胞活性化剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金コロイドとパラジウムコロイドとを含有する、ナチュラルキラー細胞活性化剤。
【請求項2】
白金コロイドの濃度が0.08〜16mMの液剤である、請求項1に記載のナチュラルキラー細胞活性化剤。
【請求項3】
パラジウムコロイドに対する白金コロイドのモル比が、1/30〜10/1であり、請求項1又は2に記載のナチュラルキラー細胞活性化剤。
【請求項4】
パラジウムコロイドの濃度が0.1〜30mMの液剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のナチュラルキラー細胞活性化剤。
【請求項5】
固形癌又はウィルス感染症の予防剤、治療剤又は再発予防剤である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のナチュラルキラー細胞活性化剤。
【請求項6】
免疫賦活作用を高める、請求項1〜5のいずれか1項に記載のナチュラルキラー細胞活性化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナチュラルキラー細胞活性化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、大型リンパ球の一種であり、自己以外の腫瘍細胞、ウィルス感染細胞等を障害する細胞として知られている。NK細胞を活性化させることにより、NK細胞の癌細胞に対する傷害活性が高まることから、NK細胞活性化剤は、癌の予防剤又は治療剤等としての用途が期待される。例えば、特許文献1には、選択的にがん細胞及び感染細胞を阻害又は抑制する技術手段として、所定の構造を有するポリメトキシフラボン類を有効成分とすることを特徴とするナチュラルキラー細胞活性化剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−180307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規なナチュラルキラー細胞活性化剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、白金コロイドとパラジウムコロイドとを共に用いることでナチュラルキラー細胞を活性化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の各発明に関する。
[1]白金コロイドとパラジウムコロイドとを含有する、ナチュラルキラー細胞活性化剤。
[2]白金コロイドの濃度が0.08〜16mMの液剤である、[1]に記載のナチュラルキラー細胞活性化剤。
[3]パラジウムコロイドに対する白金コロイドのモル比が、1/30〜10/1であり、[1]又は[2]に記載のナチュラルキラー細胞活性化剤。
[4]パラジウムコロイドの濃度が0.1〜30mMの液剤である、[1]〜[3]のいずれかに記載のナチュラルキラー細胞活性化剤。
[5]固形癌又はウィルス感染症の予防剤、治療剤又は再発予防剤である、[1]〜[4]のいずれかに記載のナチュラルキラー細胞活性化剤。
[6]免疫賦活作用を高める、[1]〜[5]のいずれかに記載のナチュラルキラー細胞活性化剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新規なナチュラルキラー細胞活性化剤の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0009】
本実施形態に係るナチュラルキラー細胞活性化剤は、白金コロイドとパラジウムコロイドとを含有する。当該ナチュラルキラー細胞活性化剤は、白金コロイドとパラジウムコロイドとを含有する液剤であってよい。
【0010】
白金コロイドは、水にコロイド状に分散する白金粒子である。白金コロイドは、公知の方法(例えば、特公昭57−43125号公報、特公昭59−120249号公報、特公平2−43801号公報、特開平9−225317号公報、特開平10−176207号公報等に記載の方法)により製造することができる。白金コロイドの製造方法としては、薬理学的又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、例えば、沈殿法又は金属塩還元反応法として知られる化学的な方法、あるいは燃焼法として知られる物理的な方法等を利用することができる。白金コロイドの製造方法としては、ナチュラルキラー細胞活性化作用をより有効に奏するという観点から、燃焼法を用いることが好ましい。
【0011】
燃焼法としては、例えば、塩化白金酸溶液及び低級アルコールの混合溶液、並びに、水素ガスを、それぞれ別の供給系から送出し、燃焼させた水素ガス炎と、上記混合溶液とを混合させ830〜870℃で燃焼させ、燃焼火炎をコロイド生成槽中の槽底近くに達する渦流を生じさせた液体分散媒中に吹き込むこと等によって、白金コロイドを製造する方法が挙げられる。
【0012】
ナチュラルキラー細胞活性化剤が液剤である場合において、白金コロイドの濃度は特に限定されず、使用される白金コロイドの種類、ナチュラルキラー細胞活性化剤の用途、製剤形態、使用方法等によって適宜設定される。液剤における白金コロイドの濃度は、ナチュラルキラー細胞活性化作用をより有効に奏するという観点から、液剤全量に対して、0.08〜16mMであることが好ましく、0.1〜10mMであることが好ましく、0.4〜8mMであることがさらに好ましい。
【0013】
パラジウムコロイドは、水にコロイド状に分散するパラジウム粒子である。パラジウムコロイドは、公知の方法(例えば、特公昭57−43125号公報、特公昭59−120249号公報、特公平2−43801号公報、特開平9−225317号公報、特開平10−176207号公報等に記載の方法)により製造することができる。パラジウムコロイドの製造方法としては、薬理学的又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、例えば、沈殿法又は金属塩還元反応法として知られる化学的な方法、あるいは燃焼法として知られる物理的な方法等を利用することができる。パラジウムコロイドの製造方法として、白金の酸化による劣化を防止するという観点から、燃焼法を用いることが好ましい。
【0014】
燃焼法としては、例えば、塩化パラジウム溶液及び低級アルコールの混合溶液、並びに、水素ガスを、それぞれ別の供給系から送出し、燃焼させた水素ガス炎と、上記混合溶液とを混合させ630〜670℃で燃焼させ、燃焼火炎をコロイド生成槽中の槽底近くに達する渦流を生じさせた液体分散媒中に吹き込むこと等によって、パラジウムコロイドを製造する方法が挙げられる。
【0015】
ナチュラルキラー細胞活性化剤が液剤である場合において、パラジウムコロイドの濃度は特に限定されず、使用されるパラジウムコロイドの種類、併用される白金コロイドの種類及び濃度、ナチュラルキラー細胞活性化剤の用途、製剤形態、使用方法等によって適宜設定される。液剤におけるパラジウムコロイドの濃度は、白金の酸化による劣化を防止し、かつ継続投与した場合にも副作用を起こりにくくするという観点から、液剤全量に対して、0.1〜30mMであることが好ましく、0.4〜16mMであることがより好ましく、0.8〜12mMであることがさらに好ましい。
【0016】
パラジウムコロイドに対する白金コロイドのモル比(パラジウムに対する白金のモル比(Pt/Pd))は、特に制限されず、使用される白金コロイド及びパラジウムコロイドの種類及び濃度、該NK細胞活性化剤の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。パラジウムコロイドに対する白金コロイドのモル比は、ナチュラルキラー細胞活性化作用をより有効に奏するという観点から、好ましくは1/30〜10/1であり、より好ましくは1/9〜3/1である。
【0017】
本実施形態に係るナチュラルキラー細胞活性化剤は、界面活性剤をさらに含有していてもよい。界面活性剤としては、薬理学的又は生理学的に許容されるものであれば特に制限されず、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。本実施形態に係るナチュラルキラー細胞活性化剤は、ナチュラルキラー細胞活性化作用をより有効に奏するという観点から、界面活性剤として、非イオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
【0018】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPEOソルビタン脂肪酸エステル;POE(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)、POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE−POPアルキルエーテル;POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニックF127)、POE(200)POP(70)グリコール等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;ポリオキシエチレンヒマシ油35、ポリオキシエチレンヒマシ油40、ポリオキシエチレンヒマシ油50、ポリオキシエチレンヒマシ油60等の酸化エチレンの平均付加モル数が30を上回るポリオキシエチレンヒマシ油等が挙げられる。本実施形態に係るナチュラルキラー細胞活性化剤において、上記非イオン性界面活性剤を、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
本実施形態に係るナチュラルキラー細胞活性化剤は、固体(例えば、粉末)、液体、ペースト等のいずれの形状であってもよく、タブレット(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブル錠、トローチ剤等を含む。)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液剤(懸濁液、乳濁液、シロップ等を含む。)、ペースト等の形態であってもよい。これらの各種製剤は、薬理学的又は生理学的に許容されるものであれば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、懸濁化剤等の添加剤を混合し、周知の方法で製造することができる。
【0020】
本実施形態に係るナチュラルキラー細胞活性化剤は、医薬品、医薬部外品、食品組成物及び飼料組成物等の製品として、又はこれら製品の成分として使用することができる。当該食品組成物は、例えば、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品であってもよい。食品組成物の具体例としては、例えば、飲料等が挙げられる。上記製品は、ナチュラルキラー細胞活性化用であってよい。ナチュラルキラー細胞活性化用製品における白金コロイド及びパラジウムコロイドそれぞれの濃度は、上記例示したとおりであってよい。
【0021】
本実施形態に係るナチュラルキラー細胞活性化剤によれば、ナチュラルキラー細胞の活性化を介して、癌(例えば固形癌)、ウィルス感染症等の予防、治療、又は再発予防が可能となる。本実施形態に係るナチュラルキラー細胞活性化剤は、固形癌又はウィルス感染症の予防剤、治療剤、又は再発予防剤であってよい。
【0022】
固形癌とは、血液癌以外の癌である。固形癌としては、例えば、乳癌、胃癌、大腸癌、結腸直腸癌、卵巣癌、肺癌、口腔癌、食道癌、肝細胞癌、膵臓癌、胆管癌、前立腺癌、膀胱癌、肉腫、神経膠腫等が挙げられる。また、ウィルス感染症としては、風邪症候群、インフルエンザ、肝炎、黄熱、日本脳炎、流行性耳下腺炎、麻疹、風疹、水痘等が挙げられる。
【0023】
本実施形態に係るナチュラルキラー細胞活性化剤は、ナチュラルキラー細胞の活性化を介して、免疫賦活効果が発揮される。したがって、本実施形態に係るナチュラルキラー細胞活性化は、免疫賦活剤の用途に好適に使用できる。
【0024】
本実施形態に係るナチュラルキラー細胞活性化剤は、ヒトに投与又は摂取されても、非ヒト哺乳動物に投与又は摂取されてもよい。本実施形態に係るナチュラルキラー細胞活性化剤の投与量(摂取量)は、白金コロイドの質量に換算して、成人1日あたり、例えば、0.06〜6mgであることが好ましく、0.1〜4mgであることがより好ましく、0.3〜3mgであることがさらに好ましい。投与量は、個体の状態、年齢等に応じて適宜決定することができる。
【0025】
本実施形態に係るナチュラルキラー細胞活性化剤は、経口投与(摂取)されてもよく、非経口投与されてもよいが、経口投与されることが好ましい。ナチュラルキラー細胞活性化剤は、1日あたりの白金コロイドの質量に換算した値が上記範囲内にあれば、1日1回投与されてもよく、1日複数回に分けて投与されてもよい。
【0026】
本実施形態に係るナチュラルキラー細胞活性化剤は、1週間以上継続して投与されてよく、2週間以上継続して投与(摂取)されてよく、3週間以上継続して投与(摂取)されてよく、4週間以上継続して投与(摂取)されてよい。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0028】
検体として、株式会社東洋厚生製薬所製の白金パラジウムコロイド溶液(PAPLAL(登録商標)を準備した。当該白金パラジウムコロイド溶液は、6mlの水溶液(液剤)中、白金コロイドを1.2mg、パラジウムコロイドを1.8mg含む。
【0029】
検体によるNK細胞の細胞障害活性の測定試験は、公知文献(US EPAOPPTS (1997) Toxic Substances Control Act Test Guidelines; Final Rule. Fed.Reg., 62 (158), 43820-43864, Aug.15, 1997; 40 CFR 799.9780. US EPA OPPTS (1998)Health Effects Test Guidelines. OPPTS 870.7800 Immunotoxicity. EPA Pub. No.712-C-98-351. )に記載の方法により実施した。すなわち、被験者血液からリンパ球を分離し、これに
51Cr−標的細胞(K−562細胞)を加えて一定時間培養しNK細胞の細胞障害によって遊離する
51Crを測定してNK細胞活性とした。基準値は、18〜40%とした。
【0030】
試験は、白金パラジウムコロイド溶液(PAPLAL(登録商標))を飲用した経験のある、健康人20名(20歳〜60歳:男女)を対象に、口頭並びに文書による研究の内容を十分に説明した後、参加を申し出て、同意を得られた者(被験者)について施行した。白金パラジウムコロイド溶液の飲用者については、7日間以上、飲用するのを中止してもらい、非飲用前群として、採血を行った。その後、1日1バイアルの白金パラジウムコロイド溶液を7日間飲用してもらい、飲用後群として最終日に採血を行った。本試験は、実施期間における倫理審査承認の後に実施された。試験結果を表1に示す。
【0031】
本試験において得られた結果は、一元配置分散分析(one−way ANOVA)により統計処理を行った。P<0.05は統計学的に有意とし、平均値は、標準偏差とともに示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1に示すとおり、非飲用時(飲用前)に比して、白金パラジウムコロイド溶液の飲用後では、NK活性の有意な増加が認められた(P=0.046)。
【手続補正書】
【提出日】2018年12月3日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金コロイドとパラジウムコロイドとを含有し、
ウィルス感染症の予防剤、治療剤又は再発予防剤である、ナチュラルキラー細胞活性化剤。
【請求項2】
白金コロイドの濃度が0.08〜16mMの液剤である、請求項1に記載のナチュラルキラー細胞活性化剤。
【請求項3】
パラジウムコロイドに対する白金コロイドのモル比が、1/30〜10/1であり、請求項1又は2に記載のナチュラルキラー細胞活性化剤。
【請求項4】
パラジウムコロイドの濃度が0.1〜30mMの液剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のナチュラルキラー細胞活性化剤。
【請求項5】
免疫賦活作用を高める、請求項1〜4のいずれか1項に記載のナチュラルキラー細胞活性化剤。