【課題】ノズル孔が互いに対向するように配置された第1ノズル及び第2ノズルの位置ずれを、簡単且つ精度よく測定することが可能な測定治具及び部品実装装置、並びに前記測定治具を用いた測定方法を提供する。
【解決手段】測定治具10では、第1板体11に突設された第1挿入ピン111が第1ノズル4Nに挿入されると共に第2板体12に突設された第2挿入ピン121が第2ノズル6Nに挿入され、且つ、第2板体12に突設された係合ピン122が第1板体11の係合穴112と係合した状態において、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定が可能である。この状態において、第1板体11は、第2板体12に対する係合穴112に沿った移動と係合ピン122回りの回動とを含む変位が可能である。測定治具10は、第1板体11の第2板体12に対する前記変位に応じて位置ずれの測定が可能である。
前記第1板体及び前記第2板体の各々において、前記係合ピンから前記一端部の端縁までの距離は、前記第1挿入ピン及び前記第2挿入ピンから前記係合ピンまでの距離よりも長くなるように、設定されている、請求項2に記載の測定治具。
前記制御部は、前記位置ずれ認識部による前記位置ずれの認識時において、前記第1挿入ピンが前記第1ノズルに挿入され、前記第2挿入ピンが前記第2ノズルに挿入された状態で、前記第2ノズルに対して前記第1ノズルを移動させることにより、前記第1板体及び前記第2板体を回転させる治具回転制御を行い、
前記位置ずれ認識部は、前記治具回転制御によって生じる、前記第1板体の前記第2板体に対する前記変位に基づいて、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの前記位置ずれを認識する、請求項7に記載の部品実装装置。
ノズル孔が互いに対向するように配置された第1ノズル及び第2ノズルの、ノズル軸に直交する方向への位置ずれを、請求項1〜6のいずれか1項に記載の測定治具を用いて測定する測定方法であって、
前記第1ノズルと前記第2ノズルとの間において、互いの当接面同士が面接触した状態で重なり合うように前記第1板体及び前記第2板体を配置する配置ステップと、
前記係合ピンが前記係合穴と係合した状態において、前記第1挿入ピンを前記第1ノズルに挿入し、前記第2挿入ピンを前記第2ノズルに挿入する挿入ステップと、
前記第1板体の前記第2板体に対する、前記係合穴に沿った移動と前記係合ピン回りの回動とを含む変位に応じて、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの前記位置ずれを測定する測定ステップと、を含む、測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ノズル孔が互いに対向するように配置された第1ノズル及び第2ノズルの位置ずれを、簡単且つ精度よく測定することが可能な測定治具を提供することにあり、また部品実装装置並びに前記測定治具を用いた測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の局面に係る測定治具は、ノズル孔が互いに対向するように配置された第1ノズル及び第2ノズルの、ノズル軸に直交する方向への位置ずれを測定する治具である。この測定治具は、前記第1ノズルと前記第2ノズルとの間において、互いの当接面同士が面接触した状態で重なり合うように配置される平板状の第1板体及び第2板体と、前記第1板体の前記当接面とは反対側の面から垂直に延び、前記第1ノズルのノズル孔に挿入される第1挿入ピンと、前記第2板体の前記当接面とは反対側の面から垂直に延び、前記第2ノズルのノズル孔に挿入される第2挿入ピンと、前記第1板体において、前記ノズル軸に直交する一方向に延びる長穴状に開口する係合穴と、前記第2板体の前記当接面から垂直に延び、前記係合穴に挿入されて当該係合穴と係合する係合ピンと、を備える。前記第1板体は、前記第1挿入ピンが前記第1ノズルに挿入されると共に前記第2挿入ピンが前記第2ノズルに挿入され、且つ、前記係合ピンが前記係合穴と係合した状態において、前記第2板体に対する前記係合穴に沿った移動と前記係合ピン回りの回動とを含む変位が可能である。そして、測定治具は、前記第1板体の前記第2板体に対する前記変位に応じて、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの前記位置ずれの測定が可能に構成されている。
【0009】
この測定治具によれば、第1板体に突設された第1挿入ピンが第1ノズルに挿入されると共に第2板体に突設された第2挿入ピンが第2ノズルに挿入され、且つ、第2板体に突設された係合ピンが第1板体の係合穴と係合した状態において、第1ノズル及び第2ノズルの位置ずれの測定が可能である。この状態において、第1板体は、第2板体に対する係合穴に沿った移動と係合ピン回りの回動とを含む変位が可能である。そして、測定治具を用いた位置ずれの測定においては、第1板体の第2板体に対する前記変位を観測するという簡単な方法で、第1ノズル及び第2ノズルの位置ずれを精度よく測定することができる。
【0010】
上記の測定治具において、前記第1板体と前記第2板体とは、同一の形状及び大きさを有して前記係合穴に沿う方向に長手の平板状に形成され、前記第1板体及び前記第2板体の長手方向の一端部に、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの前記位置ずれを測定するための位置ずれ測定部が形成されている。
【0011】
この態様では、位置ずれ測定部が第1板体及び第2板体の長手方向の一端部に形成されているため、第1板体の第2板体に対する変位の観測が容易となる。
【0012】
上記の測定治具では、前記第1板体及び前記第2板体の各々において、前記係合ピンから前記一端部の端縁までの距離は、前記第1挿入ピン及び前記第2挿入ピンから前記係合ピンまでの距離よりも長くなるように、設定されている。
【0013】
この態様では、係合ピンを中心とした距離に関し、第1板体及び第2板体の一端部の端縁までの距離が、第1挿入ピン及び第2挿入ピンまでの距離よりも長くなるように設定されている。これにより、第1挿入ピンが第1ノズルに挿入されると共に第2挿入ピンが第2ノズルに挿入された状態において、第1板体が係合ピン回りに回動したときの、位置ずれ測定部における回動量を、比較的大きくすることができる。このため、第1板体の第2板体に対する変位に応じた、第1ノズル及び第2ノズルの位置ずれの測定精度の向上を図ることができる。
【0014】
上記の測定治具において、前記位置ずれ測定部は、前記第1板体の前記一端部の端面に形成された第1目盛部と、前記第2板体の前記一端部の端面に形成された第2目盛部と、を含み、前記第1板体の前記第2板体に対する前記変位に応じた、前記第1目盛部の前記第2目盛部に対する位置に基づき、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの前記位置ずれの測定が可能である。
【0015】
この態様では、第1板体の一端部の端面に形成された第1目盛部の、第2板体の一端部の端面に形成された第2目盛部に対する位置を観測することにより、第1ノズル及び第2ノズルの位置ずれを精度よく測定することができる。
【0016】
上記の測定治具において、前記位置ずれ測定部は、前記第1板体の前記一端部において開口する第1測定開口部と、前記第2板体の前記一端部において開口する第2測定開口部と、を含み、前記第1板体の前記第2板体に対する前記変位に応じた、前記第1測定開口部と前記第2測定開口部との位置関係に基づき、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの前記位置ずれの測定が可能である。
【0017】
この態様では、第1板体の一端部に形成された第1測定開口部と、第2板体の一端部に形成された第2測定開口部との位置関係を観測することにより、第1ノズル及び第2ノズルの位置ずれを精度よく測定することができる。
【0018】
上記の測定治具において、前記位置ずれ測定部は、前記第1板体の前記一端部に形成された開口を塞ぐように設けられ、光透過性の基材に遮光性の格子状の第1模様が形成されてなる第1パターン部と、前記第2板体の前記一端部に形成され、前記第1模様とは格子ピッチが異なる格子状の第2模様によって構成される第2パターン部と、を含み、前記第1板体の前記第2板体に対する前記変位に応じた、前記第1パターン部と前記第2パターン部とによるモアレ模様の発生状況に基づいて、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの前記位置ずれの測定が可能である。
【0019】
この態様では、第1板体の一端部に形成された第1パターン部と、第2板体の一端部に形成された第2パターン部とによるモアレ模様の発生状況を観測することにより、第1ノズル及び第2ノズルの位置ずれを精度よく測定することができる。
【0020】
本発明の他の局面に係る部品実装装置は、実装対象物の被実装面上に所定の部品を搭載する装置である。この部品実装装置は、前記部品の吸着保持が可能な第1ノズル及び第2ノズルであって、前記被実装面上に前記部品を搭載する際に、前記第1ノズルと前記第2ノズルとの間での前記部品の受け渡しが可能となるように、ノズル孔が互いに対向するように配置される第1ノズル及び第2ノズルと、前記第2ノズルに対する前記第1ノズルの、ノズル軸に直交する方向への移動を制御する制御部と、前記第1ノズル及び前記第2ノズルによる前記部品の吸着保持の前において、上記の測定治具を用いて、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの、前記ノズル軸に直交する方向への位置ずれを認識する位置ずれ認識部と、を備える。前記位置ずれ認識部は、前記第1板体の前記第2板体に対する、前記係合穴に沿った移動と前記係合ピン回りの回動とを含む変位に基づいて、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの前記位置ずれを認識する。前記制御部は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルによる前記部品の吸着保持において、前記位置ずれ認識部による認識結果に基づいて、前記第2ノズルに対して前記第1ノズルを移動させることにより、前記第1ノズルと前記第2ノズルとの位置関係を調整する調整制御を行う。
【0021】
この部品実装装置によれば、第1ノズル及び第2ノズルの位置ずれは、上記の測定治具を用いて位置ずれ認識部によって認識される。測定治具は、上記の通り、第1ノズル及び第2ノズルの位置ずれを精度よく測定することができる治具である。このため、位置ずれ認識部は、第1ノズル及び第2ノズルの位置ずれを、高精度に認識することができる。このような高精度な位置ずれの認識結果に基づいて、第1ノズルと第2ノズルとの位置関係が調整されるので、第1ノズル及び第2ノズルによる適切な部品の吸着保持が可能となる。
【0022】
上記の部品実装装置において、前記制御部は、前記位置ずれ認識部による前記位置ずれの認識時において、前記第1挿入ピンが前記第1ノズルに挿入され、前記第2挿入ピンが前記第2ノズルに挿入された状態で、前記第2ノズルに対して前記第1ノズルを移動させることにより、前記第1板体及び前記第2板体を回転させる治具回転制御を行う。そして、前記位置ずれ認識部は、前記治具回転制御によって生じる、前記第1板体の前記第2板体に対する前記変位に基づいて、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの前記位置ずれを認識する。
【0023】
この態様では、第1挿入ピンが第1ノズルに挿入され、第2挿入ピンが第2ノズルに挿入された状態で、第2ノズルに対して第1ノズルが移動される。測定治具においては、第1ノズルの移動に応じて第1板体及び第2板体が回転することとなる。第1板体及び第2板体が回転すると、第1ノズルと第2ノズルとの間に係合穴に沿った方向への位置ずれが生じている場合、又は位置ずれが生じていない場合には、第1板体は、第2板体に対して平行な姿勢を取る。一方、第1ノズルと第2ノズルとの間に係合穴に対して交差する方向への位置ずれが生じている場合には、第1板体は、係合ピン回りに回動し、第2板体に対して回動方向にずれた姿勢を取る。このような第1板体の第2板体に対する変位に基づいて、第1ノズル及び第2ノズルの位置ずれを認識することができる。
【0024】
本発明の他の局面に係る測定方法は、ノズル孔が互いに対向するように配置された第1ノズル及び第2ノズルの、ノズル軸に直交する方向への位置ずれを、上記の測定治具を用いて測定する方法である。この測定方法は、前記第1ノズルと前記第2ノズルとの間において、互いの当接面同士が面接触した状態で重なり合うように前記第1板体及び前記第2板体を配置する配置ステップと、前記係合ピンが前記係合穴と係合した状態において、前記第1挿入ピンを前記第1ノズルに挿入し、前記第2挿入ピンを前記第2ノズルに挿入する挿入ステップと、前記第1板体の前記第2板体に対する、前記係合穴に沿った移動と前記係合ピン回りの回動とを含む変位に応じて、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの前記位置ずれを測定する測定ステップと、を含む。
【0025】
この測定方法によれば、第1板体に突設された第1挿入ピンが第1ノズルに挿入されると共に第2板体に突設された第2挿入ピンが第2ノズルに挿入され、且つ、第2板体に突設された係合ピンが第1板体の係合穴と係合した状態において、第1ノズル及び第2ノズルの位置ずれの測定が可能である(配置ステップ及び挿入ステップ)。この状態において、測定ステップでは、第1板体の第2板体に対する変位を観測するという簡単な方法で、第1ノズル及び第2ノズルの位置ずれを精度よく測定することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、ノズル孔が互いに対向するように配置された第1ノズル及び第2ノズルの位置ずれを、簡単且つ精度よく測定することが可能な測定治具及び部品実装装置、並びに前記測定治具を用いた測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る測定治具及び部品実装装置、並びに測定方法について、図面に基づいて説明する。
【0029】
[部品実装装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る測定治具10,20,30が適用される部品実装装置1の構成を概略的に示す図である。なお、
図1では、XYZ直交座標軸を用いて方向関係が示されている。X軸及びY軸は水平面上に配置される軸であり、Z軸はX軸及びY軸と直交する軸である。X軸方向の一方向側を「+X側」と称し、X軸方向の一方向側とは反対の他方向側を「−X側」と称する。また、Y軸方向の一方向側を「+Y側」と称し、Y軸方向の一方向側とは反対の他方向側を「−Y側」と称する。また、Z軸方向の一方向側を「+Z側」と称し、Z軸方向の一方向側とは反対の他方向側を「−Z側」と称する。
【0030】
部品実装装置1は、ダイシングされたウエハからベアチップ(部品)を取り出して実装対象物の被実装面上に搭載(実装)する部品実装装置である。前記実装対象物は、例えばベアチップを搭載したパッケージ部品を製造するためのリードフレームやインターポーザなど、又は、ベアチップ及びパッケージ部品などを直接搭載するためのプリント基板などである。
【0031】
部品実装装置1は、ベアチップ(以下、単に「部品」という)の吸着保持が可能な第1ノズル4N及び第2ノズル6Nを備え、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間で部品を受け渡すように構成されている。部品実装装置1は、第1ノズル4Nにより部品を吸着保持して実装対象物の被実装面上に搭載するように構成されている。第1ノズル4Nによる部品の吸着保持に際しては、下向きの第2ノズル6Nにより部品を吸着して取り出し、反転装置としての駆動モーター9によって第2ノズル6Nを180度回転し、部品を反転(フリップ)させて、第1ノズル4Nに部品を受け渡す。第2ノズル6Nから第1ノズル4Nへと部品を受け渡すときには、第1ノズル4Nのノズル孔4N1と第2ノズル6Nのノズル孔6N1とが対向するように、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nが配置される。
【0032】
部品実装装置1は、装置本体2と、フレーム3と、第1ノズル4Nが取り付けられたヘッドユニット4と、第2ノズル6Nが載置されるノズル保持ステージ5と、撮像カメラ7と、制御部8と、を備える。フレーム3は、図示しない移動機構によってX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動し、且つ、図示しない反転機構によって例えば180度毎に反転する。ヘッドユニット4は、図示しない移動機構によってX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動する。
【0033】
装置本体2は部品実装装置1を構成する各部が配置される構造体であり、この装置本体2にヘッドユニット4が配置されている。ヘッドユニット4は、第1ノズル4Nが取り付けられた状態において、X軸方向及びY軸方向に移動可能であると共に、Z軸方向に移動可能である。このヘッドユニット4の移動に応じて、第1ノズル4Nが移動される。第1ノズル4Nは、そのノズル孔4N1が−Z側(下方側)に向けられた姿勢でヘッドユニット4に取り付けられる。
【0034】
フレーム3は部品実装装置1の底面部を構成し、このフレーム3上にノズル保持ステージ5が配置されている。ノズル保持ステージ5は、第2ノズル6Nが載置された状態において、ネジ部材5Sによってフレーム3に対して位置決めされて固定される。これにより、第2ノズル6Nは、ノズル保持ステージ5上において位置決めされる。第2ノズル6Nは、部品を吸着保持した状態において、そのノズル孔6N1が+Z側(上方側)に向けられた姿勢でノズル保持ステージ5に載置される。
【0035】
上記の通り、第2ノズル6Nから第1ノズル4Nへと部品を受け渡すときには、第1ノズル4Nのノズル孔4N1と第2ノズル6Nのノズル孔6N1とが対向するように、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nが配置される。第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間で部品を正確に受け渡すためには、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの、Z軸方向に延びるノズル軸NAに直交する方向(X軸方向及びY軸方向)への位置ずれがないように、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの位置関係が調整されている必要がある。このため、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定が測定治具10,20,30を用いて実施され、その測定結果に基づき第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの位置関係が調整される。
【0036】
測定治具10,20,30を用いた第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定は、オペレーターによって実施され、又は、部品実装装置1が自動的に実施するようにしてもよい。なお、測定治具10,20,30の配置場所は、特に限定されるものではなく、例えばノズル保持ステージ5が挙げられる。例えばノズル保持ステージ5の収納部に配置された測定治具10,20,30は、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれが測定されるときに、オペレーター又はヘッドユニット4の移動に伴う第1ノズル4Nによって取り出される。測定治具10,20,30の詳細については、後述する。
【0037】
撮像カメラ7は、ヘッドユニット4の−Z側の面に取り付けられたカメラである。撮像カメラ7は、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間で部品の受け渡しが行われて、当該第1ノズル4Nにより吸着保持された部品を実装対象物の被実装面上に搭載する際に定常動作を実行し、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定が行われる際に非定常動作を実行する。前記定常動作において、撮像カメラ7は、例えば部品が搭載される実装対象物を撮像し、その実装対象物を認識する。一方、前記非定常動作において、撮像カメラ7は、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間に配置された測定治具10,20,30を撮像し、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを認識する位置ずれ認識部として機能する。撮像カメラ7の位置ずれ認識部としての機能の詳細については、後述する。なお、測定治具10,20,30を用いた第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定がオペレーターによって実施される場合には、撮像カメラ7は、前記非定常動作を実行しない。
【0038】
制御部8は、ヘッドユニット4の移動を制御することにより、第2ノズル6Nに対する第1ノズル4Nの、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の移動を制御する。制御部8は、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間で部品の受け渡しが行われる際に定常制御を実行し、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定が行われる際に非定常制御を実行する。前記定常制御において、制御部8は、予め決められた目標座標に基づいて位置決め制御と部品取り出し制御とを順次実行する。前記位置決め制御において制御部8は、部品を吸着保持した第2ノズル6Nに対して第1ノズル4NをX軸方向及びY軸方向に移動させることにより、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの水平面上の位置関係を一致させる。前記部品取り出し制御において制御部8は、第2ノズル6Nに吸着保持された部品の第1ノズル4Nによる取り出しが可能となるように、第1ノズル4NをZ軸方向に移動させる。なお、撮像カメラ7が前記非定常動作を実行して第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを認識した場合、制御部8は、当該撮像カメラ7による認識結果に基づいて、位置決めの目標座標の修正を行う調整制御を実行する。前記調整制御において、制御部8は、修正後の目標座標に基づいて第2ノズル6Nに対して第1ノズル4Nを、X軸方向又はY軸方向に移動させることにより、或いはX軸方向及びY軸方向に移動させることにより、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの水平面上の位置関係が一致するように、両ノズルの位置関係を調整することができる。
【0039】
一方、前記非定常制御において、制御部8は、治具取り出し制御と治具回転制御とを順次実行する。治具取り出し制御において制御部8は、ノズル保持ステージ5の収納部に配置された測定治具10,20,30の第1ノズル4Nによる取り出しが可能となるように、第1ノズル4NをX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動させる。具体的には、治具取り出し制御において制御部8は、測定治具10,20,30の後記の第1挿入ピン111,211,311を撮像カメラ7により撮像し、認識して得た第1挿入ピン111,211,311の位置に第1ノズル4NをX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動させる。第1ノズル4Nによって測定治具10,20,30が吸着保持されると、制御部8は、第1ノズル4Nと第2ノズル6NとをX軸方向、Y軸方向に移動させ、それぞれのノズルの目標座標に位置させる。この結果、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間に測定治具10,20,30が配置された状態となると、制御部8は、前記治具回転制御を実行する。前記治具回転制御において制御部8は、第2ノズル6Nに対して第1ノズル4NをX軸方向及びY軸方向に移動させることにより、測定治具10,20,30を回転させる。制御部8の前記治具回転制御の詳細については、後述する。なお、測定治具10,20,30を用いた第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定がオペレーターによって実施される場合には、制御部8は、前記非定常制御を実行しない。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る部品実装装置1では、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれは、撮像カメラ7の測定治具10,20,30を用いた前記非定常動作によって認識される。測定治具10,20,30は、詳細については後述するが、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを精度よく測定することができる治具である。このため、撮像カメラ7は、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを、高精度に認識することができる。このような高精度な位置ずれの認識結果に基づいて、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの水平面上での位置関係が、制御部8の前記調整制御において調整される。これにより、制御部8の前記部品取り出し制御が実行されたときに、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間の適切な部品の受け渡しが可能となる。
【0041】
[測定治具について]
測定治具10,20,30は、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの、ノズル軸NAに直交する方向(X軸方向及びY軸方向)への位置ずれを測定する治具である。また、測定治具10,20,30を用いて前記位置ずれを測定する測定方法が実施される。
【0042】
<第1実施形態>
図2〜
図6を参照して、第1実施形態に係る測定治具10を説明する。
図2は測定治具10の斜視図であり、
図3は測定治具10の分解斜視図である。また、
図4は、測定治具10と第1ノズル4N及び第2ノズル6Nとの位置関係を示す斜視図である。
図5は、測定治具10において、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nに対して第1挿入ピン111及び第2挿入ピン121が挿入された状態での断面図である。
図6は、測定治具10において第1板体11と第2板体12との位置関係を説明する図である。
【0043】
測定治具10は、第1板体11と、第2板体12と、第1挿入ピン111と、係合穴112と、第2挿入ピン121と、係合ピン122と、を備える。
【0044】
第1板体11は、平面視で略長方形の平板状の板体である。第1板体11は、第2板体12に当接する当接面11Sを有する。第2板体12は、第1板体11と同一の形状及び大きさを有し、平面視で略長方形の平板状の板体である。第2板体12は、第1板体11に当接する当接面12Sを有する。なお、第1板体11及び第2板体12は、長穴状に形成される後述の係合穴112の長手方向に沿う方向に長手の平板状に形成される。第1板体11及び第2板体12は、互いの当接面11S,12S同士が面接触した状態で重なり合うように、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間に配置される。
【0045】
第1挿入ピン111は、第1板体11の当接面11Sとは反対側の面から垂直に延びるピン部材である。第1挿入ピン111は、第1板体11の当接面11Sとは反対側の面の中心位置において突設される。第1挿入ピン111は、第1ノズル4Nのノズル孔4N1に挿入される。第1挿入ピン111は、円柱状に形成される。第1挿入ピン111の外径は、第1挿入ピン111がノズル孔4N1に回転可能な状態で挿入可能な寸法であって、ノズル孔4N1に挿入された状態において第1挿入ピン111の変位が規制される程度の大きさに設定される。
【0046】
第2挿入ピン121は、第2板体12の当接面12Sとは反対側の面から垂直に延びるピン部材である。第2挿入ピン121は、第2板体12の当接面12Sとは反対側の面の中心位置において突設される。第2挿入ピン121は、第2ノズル6Nのノズル孔6N1に挿入される。第2挿入ピン121は、円筒状に形成される。第2挿入ピン121の外径は、ノズル孔6N1に挿入可能であって、ノズル孔6N1に挿入された状態において第2挿入ピン121の変位が規制される程度の大きさに設定される。また、円筒状の第2挿入ピン121の内部には、
図5に示すように、吸引経路部121Hが形成されている。この吸引経路部121Hは、第2挿入ピン121が第2ノズル6Nに挿入された状態において、第2ノズル6Nの吸引ノズル経路6NHと連通する。第2ノズル6Nに吸引力が働いたときには、その吸引力が吸引経路部121Hを介して第1板体11に作用する。これにより、第1板体11の第2板体12に対する位置が固定される。
【0047】
係合穴112は、第1板体11において、ノズル軸NAに直交する一方向(第1板体11の長手方向)に延びる長穴状に開口する穴部である。係合穴112は、第1板体11の長手方向において、第1挿入ピン111に対して一端部11E側に設けられている。
【0048】
係合ピン122は、第2板体12の当接面12Sから垂直に延びる円柱状のピン部材である。係合ピン122は、第2板体12の長手方向において、第2挿入ピン121に対して一端部12E側に設けられている。係合ピン122は、係合穴112に挿入されて当該係合穴112と係合する。
【0049】
第1板体11は、第1挿入ピン111が第1ノズル4Nに挿入されると共に、第2板体12の第2挿入ピン121が第2ノズル6Nに挿入され、且つ、係合ピン122が係合穴112と係合した状態において、第2板体12に対する変位が可能である。第1板体11の第2板体12に対する前記変位には、第1板体11の係合穴112に沿った移動と係合ピン122回りの回動とが含まれる。すなわち、第1板体11は、係合ピン122が係合穴112と係合した状態において、その係合位置を基点とした第2板体12上の変位が許容されている。
【0050】
また、第1板体11の長手方向において一端部11Eとは反対の他端部にはネジ挿通開口部113が形成され、第2板体12の長手方向において一端部12Eとは反対の他端部にはネジ受部123が形成されている(
図3参照)。ネジ挿通開口部113は、第1板体11の係合ピン122回りの回動に対応した円弧状に延びる開口である。ネジ挿入開口部113には、連結ネジ部材13が挿通される。ネジ受部123は、連結ネジ部材13の雄ネジと螺合する雌ネジが形成されたネジ穴を構成する。係合ピン122が係合穴112と係合した状態において、連結ネジ部材13は、第1板体11の第2板体12に対する前記変位が可能な範囲で、第1板体11と第2板体12とを連結する。連結ネジ部材13の雄ネジは、ネジ受部123のネジ穴と螺合する。このため、第1板体11は連結ネジ部材13の頭部と、第2板体12との間に挟まれ、第1板体11の第2板体12に対する前記変位が可能な範囲で、且つ、分離しない状態に第1板体11と第2板体12との連結が維持される。
【0051】
以上のように構成された測定治具10は、第1板体11の第2板体12に対する前記変位に応じて、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定が可能である。第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間に、係合穴112に沿った方向への位置ずれが生じている場合を想定する。この場合、第1板体11は、第2板体12に対して平行な姿勢を取り、係合穴112に沿った移動が可能である(
図6(A),(B),(C)参照)。なお、
図6(A)は、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間に位置ずれが生じていない場合を示し、第1板体11と第2板体12との間に係合穴112に沿った方向へのずれがなく、係合ピン122が係合穴112の中央に位置している。
図6(B)は、第1ノズル4Nの第2ノズル6Nに対する図中の下方側への位置ずれが生じている場合を示し、第1板体11が第2板体12に対して図中の下方側へずれて、係合ピン122が係合穴112の上部に位置している。
図6(C)は、第1ノズル4Nの第2ノズル6Nに対する図中の上方側への位置ずれが生じている場合を示し、第1板体11が第2板体12に対して図中の上方側へずれて、係合ピン122が係合穴112の下部に位置している。一方、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間に、係合穴112に対して交差する方向への位置ずれが生じている場合を想定する。この場合、第1板体11は、係合ピン122回りに回動し、第2板体12に対して回動方向にずれた姿勢を取る(
図6(D)参照)。
【0052】
測定治具10を用いた位置ずれの測定においては、第1板体11の第2板体12に対する前記変位を観測するという簡単な方法で、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを精度よく測定することができる。
【0053】
また、測定治具10においては、
図2に示すように、第1板体11及び第2板体12の長手方向の一端部11E,12Eに、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを測定するための位置ずれ測定部14が形成されている。更に、第1板体11及び第2板体12の各々において、係合ピン122から一端部11E,12Eの端縁までの距離L1は、第1挿入ピン111及び第2挿入ピン121から係合ピン122までの距離L2よりも長くなるように、設定されている。例えば、距離L1は、距離L1に対する距離L2の比率(距離L1/距離L2)が「2」以上となるように設定される。これにより、第1挿入ピン111が第1ノズル4Nに挿入されると共に第2挿入ピン121が第2ノズル6Nに挿入された状態において、第1板体11が係合ピン122回りに回動したときの、位置ずれ測定部14における回動量を、第1挿入ピン111の回動量の2倍以上である比較的大きくすることができる。このため、第1板体11の第2板体12に対する変位に応じた、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定精度の向上を図ることができる。なお、位置ずれ測定部14は、第1板体11及び第2板体12の長手方向において、一端部11E,12Eとは反対の他端部に形成されていてもよい。
【0054】
(測定治具を用いた位置ずれの測定方法)
次に、測定治具10を用いた第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定方法について、説明する。既述の通り、測定治具10を用いた第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定は、オペレーター又は部品実装装置1によって実施される。
【0055】
まず、
図4に示すように、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間において、互いの当接面11S,12Sが面接触した状態で重なり合うように、第1板体11及び第2板体12を配置する(配置ステップ)。次に、
図5に示すように、係合ピン122が係合穴112と係合した状態において、第1挿入ピン111を第1ノズル4Nに挿入し、第2挿入ピン121を第2ノズル6Nに挿入する(挿入ステップ)。なお、測定治具10においては、第1板体11の第2板体12に対する変位が可能である。このため、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間に位置ずれが生じている場合であっても、第1挿入ピン111の第1ノズル4Nに対する挿入時、並びに、第2挿入ピン121の第2ノズル6Nに対する挿入時において、第1ノズル4N、或いは、第2挿入ピン121等に加わる挿入負荷を低減することができる。
【0056】
上記の配置ステップ及び挿入ステップが部品実装装置1によって実行される場合を想定する。この場合、部品実装装置1の制御部8は、前記非定常制御の治具取り出し制御を実行する。具体的には、制御部8は、第1挿入ピン111がノズル孔4N1に挿入されるように、ノズル保持ステージ5の収納部に配置された測定治具10の第1挿入ピン111を撮像カメラ7により撮像し、認識して得た第1挿入ピン111の位置に第1ノズル4Nを移動させて下降させる。これにより、制御部8は、測定治具10を第1ノズル4Nによって吸着保持して取り出させる。第1ノズル4Nによって測定治具10が吸着保持されると、制御部8は、第1ノズル4Nが第2ノズル6Nの直上付近に位置するように、第1ノズル4Nを移動させる。そして、制御部8は、第2挿入ピン121が第2ノズル6Nに挿入されるように、第1ノズル4Nを第2ノズル6Nに向かう方向に下降させる。
【0057】
上記の配置ステップ及び挿入ステップが完了すると、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを測定する測定ステップに移行する。この測定ステップでは、第1挿入ピン111が第1ノズル4Nに挿入され、第2挿入ピン121が第2ノズル6Nに挿入された状態の測定治具10を、
図5に示す矢印H1方向に回転させる。測定治具10が回転されると、第1板体11が第2板体12に対して変位し、その変位に応じて第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定が可能となる。
【0058】
具体的には、測定治具10が回転されると、第1板体11は、第2板体12に対して平行な姿勢と第2板体12に対して回動方向にずれた姿勢との間で、姿勢変更を繰り返すように振る舞う。第1板体11は、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間の位置ずれの方向が係合穴112の延びる方向と一致した角度位置となった場合、又は位置ずれが生じていない場合には、第2板体12に対して平行な姿勢を取る。一方、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間の位置ずれの方向が係合穴112に対して交差する方向となる角度位置となった場合、第1板体11は、係合ピン122回りに回動し、第2板体12に対して回動方向にずれた姿勢を取る。このような第1板体11の第2板体12に対する変位に基づいて、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを測定することができる。
【0059】
また、第1板体11が第2板体12に対して回動方向にずれた姿勢を取ったときの「ずれ角度」が最大となった状態を把握することにより、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間の位置ずれの方向と位置ずれ量とを認識することができる。なお、前記「ずれ角度」は、第1板体11が第2板体12に対して回動方向にずれた姿勢を取った状態において、第1板体11の係合ピン122を通る長手方向に沿った中心線と、第2板体12の係合ピン122を通る長手方向に沿った中心線とが成す角度である。
【0060】
上記の測定ステップが部品実装装置1によって実行される場合を想定する。この場合、部品実装装置1の制御部8は、前記非定常制御の治具回転制御を実行する。具体的には、制御部8は、第1挿入ピン111が第1ノズル4Nに挿入され、第2挿入ピン121が第2ノズル6Nに挿入された状態で、第2ノズル6Nに対して第1ノズル4NをX軸方向及びY軸方向に移動させる。これにより、制御部8は、測定治具10を回転させる。測定治具10が回転されると、撮像カメラ7は、前記非定常動作を実行し、測定治具10の回転によって生じる第1板体11の第2板体12に対する変位に基づいて、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを認識する。このようにして、第1ノズル及び第2ノズルの位置ずれを測定することができる。そして、測定された位置ずれの量に基づいて、位置ずれを修正することもできる。
【0061】
<第2実施形態>
図7〜
図12を参照して、第2実施形態に係る測定治具20を説明する。
図7は測定治具20の斜視図であり、
図8は測定治具20の断面図であり、
図9は測定治具20の平面図である。また、
図10は、測定治具20と第1ノズル4N及び第2ノズル6Nとの位置関係を示す図である。
図11及び
図12は、測定治具20において、第1板体21の第2板体22に対する変位の様子を示す図である。
【0062】
測定治具20は、第1板体21と、第2板体22と、第1挿入ピン211と、係合穴212と、第2挿入ピン221と、係合ピン222と、を備える。第1板体21、第2板体22、第1挿入ピン211、係合穴212、第2挿入ピン221、及び係合ピン222は、上記の測定治具10の場合と同様に構成されているので、詳細な説明は省略する。
【0063】
測定治具20では、第1板体21に突設された第1挿入ピン211が第1ノズル4Nに挿入されると共に第2板体22に突設された第2挿入ピン221が第2ノズル6Nに挿入され、且つ、第2板体22に突設された係合ピン222が第1板体21の係合穴212と係合した状態において、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定が可能である。この状態において、第1板体21は、第2板体22に対する係合穴212に沿った移動と係合ピン221回りの回動とを含む変位が可能である。そして、測定治具20を用いた位置ずれの測定においては、第1板体21の第2板体22に対する前記変位を観測するという簡単な方法で、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを精度よく測定することができる。
【0064】
また、測定治具10の場合と同様に、測定治具20においては、第1板体21の第2板体22に対する前記変位が可能な範囲で、第1板体21と第2板体22とが連結ネジ部材23によって連結されている。
【0065】
測定治具20においては、第1板体21及び第2板体22の長手方向の一端部に、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを測定するための位置ずれ測定部24が形成されている。測定治具20は、この位置ずれ測定部24の構成において、測定治具10とは異なる。
【0066】
位置ずれ測定部24は、第1目盛部215と、第2目盛部225と、第1測定開口部214と、第2測定開口部224と、を含む。
【0067】
第1目盛部215は、第1板体21の長手方向の一端部の端面に形成された目盛である。第1目盛部215は、所定の間隔を隔てた複数本の目盛によって構成される。なお、第1目盛部215が形成される第1板体21の端面は、第1板体21の係合ピン222回りの回動に対応した円弧状とされている。第2目盛部225は、第2板体22の長手方向の一端部の端面に形成された目盛である。第2目盛部225は、所定の間隔を隔てた複数本の目盛によって構成される。なお、第2目盛部225が形成される第2板体22の端面は、第1板体21の係合ピン222回りの回動に対応した円弧状とされている。測定治具20は、第1板体21の第2板体22に対する前記変位に応じた、第1目盛部215の第2目盛部225に対する位置に基づき、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定が可能である。
【0068】
第1測定開口部214は、第1板体21の長手方向の一端部において開口する開口部である。第2測定開口部224は、第2板体22の長手方向の一端部において開口する開口部である。第1測定開口部214及び第2測定開口部224の開口形状は、特に限定されるものではなく、例えば円形である。測定治具20は、第1板体21の第2板体22に対する前記変位に応じた、第1測定開口部214と第2測定開口部224との位置関係に基づき、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定が可能である。
【0069】
以上のように構成された測定治具20は、第1挿入ピン211が第1ノズル4Nに挿入され、第2挿入ピン221が第2ノズル6Nに挿入された状態において、
図10(B)に示す矢印H1方向に回転される。測定治具20が回転されると、第1板体21が第2板体22に対して変位し、その変位に応じて第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定が可能となる。
【0070】
具体的には、測定治具20が回転されると、
図11及び
図12に示すように、第1板体21は、第2板体22に対して平行な姿勢と第2板体22に対して回動方向にずれた姿勢との間で、姿勢変更を繰り返すように振る舞う。第1板体21は、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間の位置ずれの方向が係合穴212の延びる方向と一致した角度位置となった場合、又は位置ずれが生じていない場合には、第2板体22に対して平行な姿勢を取る。一方、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間の位置ずれの方向が係合穴212に対して交差する方向となる角度位置となった場合、第1板体21は、係合ピン222回りに回動し、第2板体22に対して回動方向にずれた姿勢を取る。このような第1板体21の第2板体22に対する変位に基づいて、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを測定することができる。
【0071】
また、第1板体21が第2板体22に対して回動方向にずれた姿勢を取ったときの「ずれ角度」が最大となった状態(
図12(F)の状態)を把握することにより、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間の位置ずれの方向(H2)と位置ずれ量とを認識することができる。このとき、測定治具20においては、第1板体21に形成された第1目盛部215の、第2板体22に形成された第2目盛部225に対する位置を観測することにより、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを精度よく測定することができる。また、第1板体21に形成された第1測定開口部214と、第2板体22に形成された第2測定開口部224との位置関係を観測することによっても、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを精度よく測定することができる。
【0072】
なお、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定が部品実装装置1によって実施される場合、撮像カメラ7は、測定治具20の回転によって生じる、第1板体21に形成された第1測定開口部214と、第2板体22に形成された第2測定開口部224との位置関係の変化に基づいて、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを認識することができる。
【0073】
<第3実施形態>
図13〜
図16を参照して、第3実施形態に係る測定治具30を説明する。
図13は、測定治具30の斜視図である。
図14は、測定治具30において、第1板体31の様子を示す斜視図である。
図15は、第2板体32の様子を示す斜視図である。
図16は、測定治具30において、第1パターン部316と第2パターン部324とによるモアレ模様の発生状況を説明する図である。
【0074】
測定治具30は、第1板体31と、第2板体32と、第1挿入ピン311と、係合穴312と、第2挿入ピン321と、係合ピン322と、を備える。第1板体31、第2板体32、第1挿入ピン311、係合穴312、第2挿入ピン321、及び係合ピン322は、上記の測定治具10の場合と同様に構成されているので、詳細な説明は省略する。
【0075】
測定治具30では、第1板体31の領域311Aに突設された第1挿入ピン311が第1ノズル4Nに挿入されると共に第2板体32の領域321Aに突設された第2挿入ピン321が第2ノズル6Nに挿入され、且つ、第2板体32の領域322Aに突設された係合ピン322が第1板体31の係合穴312と係合した状態において、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定が可能である。この状態において、第1板体31は、第2板体32に対する係合穴312に沿った移動と係合ピン321回りの回動とを含む変位が可能である。そして、測定治具30を用いた位置ずれの測定においては、第1板体31の第2板体32に対する前記変位を観測するという簡単な方法で、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを精度よく測定することができる。
【0076】
また、測定治具10の場合と同様に、測定治具30においては、第1板体31の第2板体32に対する前記変位が可能な範囲で、第1板体31と第2板体32とが連結ネジ部材33によって連結されている。
【0077】
測定治具30においては、第1板体31及び第2板体32の長手方向の一端部に、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを測定するための位置ずれ測定部34が形成されている。測定治具30は、この位置ずれ測定部34の構成において、測定治具10とは異なる。
【0078】
位置ずれ測定部34は、第1目盛部315と、第2目盛部325と、第1パターン部316と、第2パターン部324と、を含む。
【0079】
第1目盛部315は、第1板体31の長手方向の一端部の端面に形成された目盛である。第1目盛部315は、所定の間隔を隔てた複数本の目盛によって構成される。なお、第1目盛部315が形成される第1板体31の端面は、第1板体31の係合ピン322回りの回動に対応した円弧状とされている。第2目盛部325は、第2板体32の長手方向の一端部の端面に形成された目盛である。第2目盛部325は、所定の間隔を隔てた複数本の目盛によって構成される。なお、第2目盛部325が形成される第2板体32の端面は、第1板体31の係合ピン322回りの回動に対応した円弧状とされている。測定治具30は、第1板体31の第2板体32に対する前記変位に応じた、第1目盛部315の第2目盛部325に対する位置に基づき、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定が可能である。
【0080】
第1パターン部316は、第1板体31の長手方向の一端部に形成された開口314を塞ぐように設けられる。第1パターン部316は、光透過性の基材に遮光性の格子状の第1模様が形成されてなる。第2パターン部324は、第2板体32の長手方向の一端部に形成され、前記第1模様とは格子ピッチが異なる格子状の第2模様によって構成される。前記第1模様の格子ピッチを「p1」とし、前記第2模様の格子ピッチを「p2」としたとき、「p2=p1+d」で「0<d<p1」が成り立つように、第1模様及び第2模様の格子ピッチが設定される。第1パターン部316及び第2パターン部324の形状は、特に限定されるものではなく、例えば円形である。測定治具30は、第1板体31の第2板体32に対する前記変位に応じた、第1パターン部316と第2パターン部324とによるモアレ模様の発生状況に基づいて、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定が可能である。
【0081】
以上のように構成された測定治具30は、第1挿入ピン311が第1ノズル4Nに挿入され、第2挿入ピン321が第2ノズル6Nに挿入された状態において回転される。測定治具30が回転されると、第1板体31が第2板体32に対して変位し、その変位に応じて第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれの測定が可能となる。
【0082】
具体的には、測定治具30が回転されると、第1板体31は、第2板体32に対して平行な姿勢と第2板体32に対して回動方向にずれた姿勢との間で、姿勢変更を繰り返すように振る舞う。第1板体31は、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間の位置ずれの方向が係合穴312の延びる方向と一致した角度位置となった場合、又は位置ずれが生じていない場合には、第2板体32に対して平行な姿勢を取る。一方、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間の位置ずれの方向が係合穴312に対して交差する方向となる角度位置となった場合、第1板体31は、係合ピン322回りに回動し、第2板体32に対して回動方向にずれた姿勢を取る。このような第1板体31の第2板体32に対する変位に基づいて、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを測定することができる。
【0083】
また、第1板体31が第2板体32に対して回動方向にずれた姿勢を取ったときの「ずれ角度」が最大となった状態を把握することにより、第1ノズル4Nと第2ノズル6Nとの間の位置ずれの方向と位置ずれ量とを認識することができる。このとき、測定治具30においては、第1板体31に形成された第1目盛部315の、第2板体32に形成された第2目盛部325に対する位置を観測することにより、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを精度よく測定することができる。また、第1板体31に形成された第1パターン部316と、第2板体22に形成された第2パターン部324とによるモアレ模様の発生状況を観測することにより、第1ノズル4N及び第2ノズル6Nの位置ずれを精度よく測定することができる。第1板体31が第2板体32に対して平行な姿勢を取った状態では、
図16(A)に示すように、第1パターン部316と第2パターン部324とによるモアレ模様は発生しない。一方、第1板体31が第2板体32に対して回動方向にずれた姿勢を取った状態では、
図16(B)に示すように、第1パターン部316と第2パターン部324とによるモアレ模様が発生する。