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特開2020-197478カレントトランス及びこれを用いた電磁誘導型発電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-197478(P2020-197478A)
(43)【公開日】2020年12月10日
(54)【発明の名称】カレントトランス及びこれを用いた電磁誘導型発電装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20201113BHJP
   H01F 38/30 20060101ALI20201113BHJP
【FI】
   G01R15/18 D
   H01F38/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-104642(P2019-104642)
(22)【出願日】2019年6月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 三紀夫
【テーマコード(参考)】
2G025
5E081
【Fターム(参考)】
2G025AA03
2G025AA05
2G025AB14
2G025AC01
5E081AA20
5E081BB06
5E081CC12
5E081DD06
5E081EE20
5E081GG01
5E081GG05
(57)【要約】
【課題】送電線への取り付けが容易で小型軽量化が可能なカレントトランス及びこれを用いた電磁誘導型発電装置を提供する。
【解決手段】カレントトランス10は、絶縁被覆された送電線2に取り付け可能な磁性コア11と、磁性コア11に巻回されたコイル15とを備えている。磁性コア11は、送電線2を略U字状に取り囲む第1コア部12と、送電線2の延在方向である第1方向と直交する第2方向に延在して第1コア部12の一方の端部12cと他方の端部12cとを接続する第2コア部13とを有し、コイル15は第2コア部13に巻回されている。第1方向から見た第1コア部12の延在方向と直交する方向における第1コア部12の厚さtは、第1方向及び第2方向と直交する第3方向における第2コア部13の厚さtよりも薄い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被覆された送電線に取り付け可能な磁性コアと、
前記磁性コアに巻回されたコイルとを備え、
前記磁性コアは、
前記送電線を略U字状に取り囲む第1コア部と、
前記送電線の延在方向である第1方向と直交する第2方向に延在して前記第1コア部の一方の端部と他方の端部とを接続する第2コア部とを有し、
前記コイルは前記第2コア部に巻回されており、
前記第1方向から見た前記第1コア部の延在方向と直交する方向における前記第1コア部の厚さは、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向における前記第2コア部の厚さよりも薄いことを特徴とするカレントトランス。
【請求項2】
前記第2方向から見た前記第1方向における前記第1コア部の最大幅は、
前記第2方向から見た前記第1方向における前記第2コア部の最大幅よりも広い、請求項1に記載のカレントトランス。
【請求項3】
前記第2コア部は前記第1コア部に対して着脱自在に構成されている、請求項1又は2に記載のカレントトランス。
【請求項4】
前記第2コア部の透磁率は前記第1コア部の透磁率よりも高い、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカレントトランス。
【請求項5】
前記第1コア部がニッケルからなる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のカレントトランス。
【請求項6】
前記第2コア部がフェライトからなる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のカレントトランス。
【請求項7】
前記第2コア部の長さは、前記送電線の導線部の直径よりも大きい、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のカレントトランス。
【請求項8】
前記第1コア部は弾性を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のカレントトランス。
【請求項9】
前記第1コア部の内径面積は前記送電線の太さに合わせて変化する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のカレントトランス。
【請求項10】
前記コイルに接続されたコンデンサをさらに備え、前記コイル及び前記コンデンサは共振回路を構成している、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のカレントトランス。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のカレントトランスと、
前記カレントトランスに接続された電源回路とを備えることを特徴とする電磁誘導型発電装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電磁誘導型発電装置と、
前記電磁誘導型発電装置から電力の供給を受けて前記送電線の監視動作を行うIoTデバイスと、
前記IoTデバイスが取得した監視データを無線通信又は有線通信により送信するデータ通信部とを備えることを特徴とする送電線監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線に取り付けられるカレントトランス及びこれを用いた電磁誘導型発電装置及び送電線監視システムに関し、特に、カレントトランスの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線に取り付けられてその状態を常時監視するIoTデバイスが知られている。例えば、特許文献1には、電磁誘導方式の電源装置を用いた監視カメラシステムが記載されている。この監視カメラシステムは、送・配電線路に着脱可能に設けられ、電磁誘導方式で電力を生成する発電用CTコアと、発電用CTコアから発生した交流電力を直流電力に変換する電力変換部と、動画を撮影するカメラモジュールと、カメラモジュールの出力データを外部に伝送する無線通信モジュールとを備えている。
【0003】
送電線に取り付けられるカレントトランスに関し、例えば特許文献2には、一対の分割コアを開閉して既設の電線やケーブル周囲に配置して使用できるクランプ型のカレントトランスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2016−517261号公報
【特許文献2】国際公開第2017/146256号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで、地中送電線の保守管理は定期点検が主流であり、常時監視は行われていなかった。しかし、地中送電線の増加と共に常時監視の必要性が高まっている。
【0006】
地中送電線の保守管理に用いられるカレントトランスとしては、特許文献2に記載された分割型の磁性コアを用いたものが一般的である。
【0007】
しかし、そのような従来のカレントトランスは、磁性コアが大型且つ大重量であり、送電線への取り付けが困難である。特に、地中送電線は洞道内に敷設されており、三相交流に対応する3本の送電線が束ねられた状態で敷設されていることが多いため、大型の磁性コアの取り付けは非常に困難である。
【0008】
したがって、本発明の目的は、送電線への取り付けが容易で小型軽量化が可能なカレントトランス及びこれを用いた電磁誘導型発電装置及び送電線監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明によるカレントトランスは、絶縁被覆された送電線に取り付け可能な磁性コアと、前記磁性コアに巻回されたコイルとを備え、前記磁性コアは、前記送電線を略U字状に取り囲む第1コア部と、前記送電線の延在方向である第1方向と直交する第2方向に延在して前記第1コア部の一方の端部と他方の端部とを接続する第2コア部とを有し、前記コイルは前記第2コア部に巻回されており、前記第1方向から見た前記第1コア部の延在方向と直交する方向における前記第1コア部の厚さは、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向における前記第2コア部の厚さよりも薄いことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、磁性コアの部分的な薄型化を図ることができる。したがって、小型且つ軽量で送電線への取り付けが容易なカレントトランスを実現することができる。
【0011】
本発明において、前記第2方向から見た前記第1方向における前記第1コア部の最大幅は、前記第2方向から見た前記第1方向における前記第2コア部の最大幅よりも広いことが好ましい。第1コア部を薄くすることにより小型軽量化及び送電線に対する取り付けを容易にすることができるが、第1コア部の断面積が小さくなるため発電効率が低下する。しかし第1コア部の最大幅を広げた場合には第1コア部の十分な断面積を確保して発電効率の低下を防止することができる。
【0012】
本発明において、前記第2コア部は前記第1コア部に対して着脱自在に構成されていることが好ましい。これにより、送電線に対してカレントトランスを容易に取り付けることができる。
【0013】
本発明において、前記第2コア部の透磁率は前記第1コア部の透磁率よりも高いことが好ましい。この構成によれば、第2コア部の断面積を小さくすることができ、第2コア部の小型化を図ることができる。これにより、磁性コア全体の透磁率を過度に低下させることなく小型軽量化を図ることができる。
【0014】
本発明において、前記第1コア部はニッケルからなることが好ましく、前記第2コア部はフェライトからなることが好ましい。第1コア部の材料にニッケルを用いた場合には、薄型で錆びにくい第1コア部を実現することができる。また第2コア部の材料にフェライトを用いた場合には、第1コア部よりも透磁率が高い第2コア部を実現することができる。
【0015】
前記第2コア部の長さは、前記送電線の導線部の直径よりも大きいことが好ましい。第2コア部の長さが送電線の導線部の直径よりも小さい場合には、カレントトランスの発電効率が大幅に低下する。しかし、第2コア部の長さが送電線の導線部の直径よりも小さい場合には、そのような発電効率の低下を防止することができる。
【0016】
本発明において、前記第1コア部は弾性を有することが好ましい。また、前記第1コア部の内径面積は前記送電線の太さに合わせて変化することが好ましい。これにより、送電線に対してカレントトランスを確実に取り付けることができ、さらに種々の送電線に対するカレントトランスの汎用性を高めることができる。
【0017】
本発明によるカレントトランスは、前記コイルに接続されたコンデンサをさらに備え、前記コイル及び前記コンデンサは共振回路を構成していることが好ましい。この構成によれば、カレントトランスの発電力を高めることができる。
【0018】
また、本発明による電磁誘導型発電装置は、上述した本発明の特徴を有するカレントトランスと、前記カレントトランスに接続された電源回路とを備えることを特徴とする。本発明によれば、送電線への取り付けが容易な小型で軽量なカレントトランスを備えた電磁誘導型発電装置を提供することができる。
【0019】
さらにまた、本発明による送電線監視システムは、上述した本発明による電磁誘導型発電装置と、前記電磁誘導型発電装置から電力の供給を受けて前記送電線の監視動作を行うIoTデバイスと、前記IoTデバイスが取得した監視データを無線通信又は有線通信により送信するデータ通信部とを備えることを特徴とする。本発明によれば、送電線への取り付けが容易であり、IoTデバイスへの過剰な電力供給を抑制することが可能な送電線監視システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、送電線への取り付けが容易で小型軽量化が可能な容易なカレントトランス及びこれを用いた電磁誘導型発電装置及び送電線監視システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施の形態による送電線監視システムの構成を概略的に示す図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態によるカレントトランス10の構成を示す断面図である。
図3図3は、カレントトランス10の構成を示す平面図である。
図4図4は、カレントトランス10の送電線2への取り付け方法の一例を示す図である。
図5図5は、3本一束の送電線の各々にカレントトランス10を1つずつ取り付けた状態を示す模式図である。
図6図6は、本発明の第2の実施の形態によるカレントトランス10の構成を示す断面図である。
図7図7(a)及び(b)は、本発明の第3の実施の形態によるカレントトランス10の構成を示す略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態による送電線監視システムの構成を概略的に示す図である。
【0024】
図1に示すように、送電線監視システム1は、送電線2に流れる電流Iによって発電する電磁誘導型発電装置3と、電磁誘導型発電装置3から電力の供給を受けて送電線2の監視動作を行うIoTデバイス4と、IoTデバイス4が取得した監視データを無線通信又は有線通信により送信するデータ通信部5とを備えている。電磁誘導型発電装置3はIoTデバイス4及びデータ通信部5の電源となるものであり、IoTデバイス4及びデータ通信部5は電磁誘導型発電装置3の出力端子に接続されている。IoTデバイス4の種類は特に限定されず、送電線2の物理的又は電気的な状態を計測する各種センサモジュールであってもよく、遠隔監視カメラなどであってもよい。データ通信部5は、IoTデバイス4が収集したデータをサーバに向けて送信する。
【0025】
送電線2は地中送電線であることが好ましく、送電電圧が66kV以上の高圧送電線であることがさらに好ましい。地中送電線は狭い洞道内に敷設されているため、作業環境が悪く、IoTデバイス4の設置やメンテナンスが困難である。送電線2には商用周波数(50Hz又は60Hz)の交流電流が流れており、送電線2の周囲には交番磁界が発生している。交番磁界の大きさは、送電線2に流れる電流の大きさによって変化する。
【0026】
電磁誘導型発電装置3は、送電線2に取り付けられるカレントトランス10と、カレントトランス10に接続された電源回路20とを備えている。図示しないが、電源回路20は、カレントトランス10からの交流出力電圧を整流する整流回路と、整流回路から出力される直流電圧を一定の電圧レベルに制限するレギュレータ回路を有している。
【0027】
図2は、本発明の第1の実施の形態によるカレントトランス10の構成を示す略側面断面図である。また図3は、カレントトランス10の構成を示す平面図である。
【0028】
図2及び図3に示すように、カレントトランス10は、絶縁体2bに被覆された導線部2aからなる送電線2を取り囲む磁性コア11と、磁性コア11に巻回されたコイル15とを備えている。磁性コア11は、送電線2を取り囲む略U字状の第1コア部12と、送電線2の延在方向であるZ方向(第1方向)と直交するY方向(第2方向)に延在して第1コア部12の一方の先端部12cと他方の先端部12cとを接続する略棒状の第2コア部13とを有している。コイル15は第2コア部13に巻回されており、コイル軸はY方向を向いている。図示しないが第1コア部12及び第2コア部13は樹脂ケースにそれぞれ収容されていることが好ましい。
【0029】
第1コア部12は薄い板状又はシート状の磁性部材が略U字状に形成されたものである。第1コア部12は弾性部材であることが好ましく、ニッケルからなることが好ましい。地中送電線が敷設された洞道内は湿度が高く、金属が錆びやすい環境であるが、ニッケルは錆びにくいので透磁率の経年変化を抑えることができる。第1コア部12は、送電線2の外周面に沿って半周して元の位置に戻ってくる折り返し形状であればよい。
【0030】
第1コア部12の材料は、ニッケル鋼鈑やパーマロイであってもよく、さらにフェライト粉を樹脂シート中に分散させた磁性シートであってもよい。磁性シートは非常に薄く柔軟性が高いため、送電線2の外周面に沿って巻き付けることができ、取り付けが容易である。
【0031】
第2コア部13は第1コア部12よりも透磁率が高い磁性材料からなることが好ましく、フェライトであることが好ましい。このように磁性コア11の少なくとも一部に透磁率が高い材料を用い、この部分にコイル15を巻回することで所望の発電電力を確保することができる。また第2コア部13に透磁率が高い材料を用いることで第2コア部13の断面積を小さくして小型化を図ることができる。
【0032】
第2コア部13の長さLは、送電線2の導線部2aの直径Dよりも大きいことが好ましい。第2コア部13の長さLが送電線2の導線部2aの直径Dよりも小さい場合には、発電効率が大幅に低下する。しかし、第2コア部13の長さLが送電線2の導線部2aの直径Dよりも大きい場合には、所望の発電効率を確保することができる。
【0033】
図2に示すように、紙面と直交する送電線2の延在方向(Z方向)から見た第1コア部12の延在方向と直交する方向における第1コア部12の厚さtは、Z方向及びY方向と直交するX方向(第3方向)における第2コア部13の厚さtよりも薄い。そのため、磁性コア11の部分的な薄型化を図ることができ、複数本の送電線2が束ねられていたとしても磁性コア11の取り付けを容易にすることができる。
【0034】
図3に示すように、送電線2の延在方向と直交するY方向(第2方向)から見たとき、第1コア部12は、送電線2を収容するベース部12aと、第2コア部13の取り付け位置に向かって幅が徐々に狭くなるテーパー部12bと、第2コア部13が取り付けられる先端部12cとを有し、先端部12cの幅W1cは第2コア部13の幅Wよりも広く、ベース部12aの幅W1aは先端部12cの幅W1cよりもさらに広い。すなわち、Y方向から見たZ方向における第1コア部12の最大幅は、Y方向から見たZ方向における第2コア部13の最大幅よりも広い。
【0035】
第1コア部の12厚さtを薄くした場合には磁性コア11の部分的な薄型化により送電線2への取り付けが容易となるが、第1方向から見た磁路の幅が狭くなるため、そのままでは発電効率が低下する。しかし、第2方向から見た磁路の幅を広くすることにより、送電線2の周囲に発生する磁束をできるだけ多く集磁して第2コア部13に送り込むことができ、磁路の断面積の低下による発電効率の低下を防止することができる。
【0036】
本実施形態において、第2コア部13は第1コア部12に対して着脱自在に構成されている。そのため、第1コア部12を取り外して第1コア部12内に送電線2を収容することができ、これにより送電線2をクランプすることができる。第1コア部12に第2コア部13を取り付けたとき、第2コア部13の先端面が第1コア部12の内側端面に直接又はギャップを介して接続される。これにより、第1コア部12と第2コア部13との組み合わせからなる閉磁路が形成される。
【0037】
図4は、カレントトランス10の送電線2への取り付け方法の一例を示す図である。
【0038】
図4(a)に示すように、まず第2コア部13を第1コア部12から取り外す。次に図4(b)に示すように第1コア部12内に送電線2をセットし、さらに図4(c)に示すように第1コア部12に第2コア部13を取り付ける。以上により、カレントトランス10を送電線2に取り付けることができる。
【0039】
図5は、3本一束の送電線の各々にカレントトランス10を1つずつ取り付けた状態を示す模式図である。
【0040】
図5に示すように、三相交流の各々に対応する3本の送電線2A,2B,2Cが束ねられ、隣接する2本の送電線間の隙間Gが非常に狭くなっている場合、太い磁性コアで構成された従来のクランプ型のカレントトランスを取り付けることは困難である。しかし、本実施形態のように第1コア部12が薄型である場合には、各送電線2A,2B,2Cへのカレントトランス10の取り付けが容易である。なお、送電線2A,2B,2Cの延在方向における3つのカレントトランス10の取り付け位置は相互に重ならない位置であることが望ましい。
【0041】
電磁誘導型発電装置3では、送電線2に流れる電流の増加と共に二次電流も増加するため、送電線2に流れる電流が非常に大きい場合には、発電量も非常に大きくなる。このように発電量が増加しているにもかかわらず、IoTデバイス4が一定の消費電力で動作している場合には、余分な電力が大量に発生することなるため、熱に変換するなど、何らかの方法で余剰電力を消費する必要がある。
【0042】
しかしながら、余剰電力を熱に変換する場合、IoTデバイス4の不要な温度上昇を招くことになり、IoTデバイス4内の部品や素子の劣化が加速するおそれがある。また、送電線2に流れる電流のダイナミックレンジは50A〜3000Aと非常に広いため、送電線2には数千アンペア以上の大電流が流れる場合があるが、大電流によって発生した余剰電力をすべて熱に変換することは極めて困難である。送電線に設置されるIoTデバイス4には、一度設置したら例えば10年以上の長期間にわたって安定的に動作することが求められていることから、高温化等によるIoTデバイス4の特性劣化を極力防止することが望ましい。
【0043】
本実施形態によるカレントトランス10は、例えば円環形状のフェライトコアを用いた従来のカレントトランス10に比べると発電効率が悪い。しかし、カレントトランス10を常設して低消費電力のIoTデバイス4に電力を供給する場合、それほど大きな発電量は必要ではない。本実施形態によるカレントトランス10は、発電力よりも取り付けやすさや耐久性を重視した磁性コアの構造としているので、IoTデバイス4に有利な電源を実現することができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によるカレントトランス10は、磁性コア11を構成する第1コア部12が薄型な磁性材料からなるので、磁性コア11の小型化及び軽量化を図ることができ、送電線2に対して容易に取り付けることができる。
【0045】
図6は、本発明の第2の実施の形態によるカレントトランス10の構成を示す断面図である。
【0046】
図6に示すように、このカレントトランス10の特徴は、第1コア部12が弾性変形可能な第1可変部材12mと第2可変部材12nとの組み合わせからなり、第1可変部材12mの湾曲した先端部と、第2可変部材12nの湾曲した先端部が重なり合った構造を有している。そして、第1可変部材12m及び第2可変部材12nの重なり度が変化することで第1コア部12の内径面積が変化するので、線径が異なる様々な送電線2に取り付けることができる。さらに、送電線2を磁性コア11に取り付ける場合には、第1可変部材12mの先端部及び第2可変部材12nの先端部をそれぞれ広げて開口を形成することにより送電線2を挿入することができる。
【0047】
図7(a)及び(b)は、本発明の第3の実施の形態によるカレントトランス10の構成を示す略断面図である。
【0048】
図7(a)及び(b)に示すように、このカレントトランス10の特徴は、コイル15に直列又は並列に接続されたコンデンサ16をさらに備え、コイル15及びコンデンサ16が共振回路を構成している点にある。特に、図7(a)はLC直列共振回路、図7(b)はLC並列共振回路をそれぞれ示している。本実施形態によれば、カレントトランス10の発電効率を高めることができる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0050】
例えば、本実施形態による地中送電線に接続されるカレントトランスを例に挙げたが、架空送電線等の他の送電線に接続することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 送電線監視システム
2,2A,2B,2C 送電線(地中送電線)
2a 送電線の導線部
2b 送電線の絶縁体
3 電磁誘導型発電装置
4 IoTデバイス
5 データ通信部
10 カレントトランス
11 磁性コア
12 第1コア部
12a 第1コア部のベース部
12b 第1コア部のテーパー部
12c 第1コア部の先端部
12c 一方の先端部
12c 他方の先端部
12m 第1可変部材
12n 第2可変部材
13 第2コア部
15 コイル
16 コンデンサ
20 電源回路
G 2本の送電線間の隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2020年6月24日
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被覆された送電線に取り付け可能な磁性コアと、
前記磁性コアに巻回されたコイルとを備え、
前記磁性コアは、
前記送電線を略U字状に取り囲む第1コア部と、
前記送電線の延在方向である第1方向と直交する第2方向に延在して前記第1コア部の一方の端部と他方の端部とを接続する第2コア部とを有し、
前記コイルは前記第2コア部に巻回されており、
前記第1方向から見た前記第1コア部の延在方向と直交する方向における前記第1コア部の厚さは、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向における前記第2コア部の厚さよりも薄いことを特徴とするカレントトランス。
【請求項2】
前記第2方向から見た前記第1方向における前記第1コア部の最大幅は、
前記第2方向から見た前記第1方向における前記第2コア部の最大幅よりも広い、請求項1に記載のカレントトランス。
【請求項3】
前記第2コア部は前記第1コア部に対して着脱自在に構成されている、請求項1又は2に記載のカレントトランス。
【請求項4】
前記第2コア部の透磁率は前記第1コア部の透磁率よりも高い、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカレントトランス。
【請求項5】
前記第1コア部がニッケルからなる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のカレントトランス。
【請求項6】
前記第2コア部がフェライトからなる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のカレントトランス。
【請求項7】
前記第2コア部の長さは、前記送電線の導線部の直径よりも大きい、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のカレントトランス。
【請求項8】
前記第1コア部は弾性を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のカレントトランス。
【請求項9】
前記第1コア部の内径面積は前記送電線の太さに合わせて変化する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のカレントトランス。
【請求項10】
前記コイルに接続されたコンデンサをさらに備え、前記コイル及び前記コンデンサは共振回路を構成している、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のカレントトランス。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のカレントトランスと、
前記カレントトランスに接続された電源回路とを備えることを特徴とする電磁誘導型発電装置。