特開2020-197479(P2020-197479A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2020-197479小型で超高感度の磁気インピーダンスセンサ、及びこれを用いた非破壊検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-197479(P2020-197479A)
(43)【公開日】2020年12月10日
(54)【発明の名称】小型で超高感度の磁気インピーダンスセンサ、及びこれを用いた非破壊検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20201113BHJP
   G01N 27/82 20060101ALI20201113BHJP
【FI】
   G01R33/02 D
   G01N27/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-104658(P2019-104658)
(22)【出願日】2019年6月4日
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】何 東風
【テーマコード(参考)】
2G017
2G053
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AA10
2G017AD02
2G017BA05
2G017BA15
2G017BA18
2G053AA11
2G053AB07
2G053AB21
2G053AB26
2G053AB27
2G053BA02
2G053BC02
2G053BC14
2G053CA17
2G053DA01
(57)【要約】
【課題】 簡単な構造で、低ノイズで、磁界分解能の高い磁気インピーダンスセンサを提供すること。
【解決手段】 零磁歪となる軟磁性合金のアモルファスからなる感磁ワイヤ(2)と、この感磁ワイヤの周囲に絶縁物を介して巻回された検出コイル(3)と、この検出コイルに駆動用周波数帯域の交流電流又はパルス電流を供給する駆動用信号供給回路(5)と、この検出コイルに直流電流を供給する直流バイアス回路(7)と、この検出コイルからの出力信号の振幅を増大させる共振回路(8)であって、共振周波数(ω)が駆動用周波数帯域に含まれ、突鋭度Qが5以上20以下の共振回路とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
零磁歪となる軟磁性合金のアモルファスからなる感磁ワイヤと、
この感磁ワイヤの周囲に絶縁物を介して巻回された検出コイルと、
この検出コイルに駆動用周波数帯域の交流電流又はパルス電流を供給する駆動用信号供給回路と、
この検出コイルに、直流電流を供給する直流バイアス回路と、
この検出コイルからの出力信号の振幅を増大させる共振回路であって、共振周波数が前記駆動用周波数帯域に含まれ、品質係数Qが5以上20以下の前記共振回路と、
を備える磁気インピーダンスセンサ。
【請求項2】
前記共振回路はインダクタ(L)とコンデンサ(C)を備え、
前記共振回路を含む前記磁気インピーダンスセンサの等価回路における等価抵抗(R)は、品質係数Qが5以上20以下となるように定められていることを特徴とする請求項1に記載の磁気インピーダンスセンサ。
【請求項3】
前記駆動用周波数帯域は、0.1MHz以上10MHz以下であると共に、
前記駆動用信号供給回路の供給する交流電流又はパルス電流の駆動周波数は、前記共振回路の共振周波数と同じであることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気インピーダンスセンサ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の磁気インピーダンスセンサと、
前記感磁ワイヤの周囲に絶縁物を介して巻回された励磁コイルと、
前記励磁コイルに欠陥検出用の渦電流発生信号(ω)を供給する渦電流用信号供給回路と、
前記共振回路で出力された前記渦電流発生信号に相当する周波数成分を抽出する渦電流抽出回路と、
前記渦電流抽出回路で抽出した前記渦電流周波数成分に相当する欠陥深さに応じた被測定対象物の欠陥位置を算出する演算処理装置と、
を備え、前記磁気インピーダンスセンサの測定端となる前記感磁ワイヤを前記被測定対象物に対峙させると共に、前記被測定対象物は非磁性且つ導電性の物質であることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項5】
前記演算処理装置は、前記被測定対象物の電気抵抗率(ρ)と透磁率(μ)及び前記渦電流発生信号の角周波数(ω)から定まる表皮深さ{δ=√(2ρ/ωμ)}を用いて、欠陥深さを算出することを特徴とする請求項4に記載の非破壊検査装置。
【請求項6】
さらに、前記感磁ワイヤの測定端を前記被測定対象物に対峙させた姿勢で、前記被測定対象物の測定面に対して定められた平面内の二軸方向の任意の位置に位置決めさせるX−Yステージと、
前記演算処理装置は、このX−Yステージに対する測定位置指令情報と、この測定位置指令情報に対応する位置での前記感磁ワイヤの測定端の測定情報とから、前記被測定対象物の欠陥が位置する深さと前記欠陥の形状を求めることを特徴とする請求項4又は5に記載の非破壊検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型で高感度の磁気インピーダンス(MI)センサ、及びこれを用いた非破壊検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アモルファスワイヤの磁気インピーダンス(MI)効果は、高感度磁気センサを構成するために使用されてきた(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。高感度磁気インピーダンスセンサには、零磁歪となる軟磁性合金のアモルファスからなる感磁ワイヤが用いられており、例えば(FeCo1−x80(SiB)20、x=0.06を組成元素とするアモルファスワイヤが用いられる(非特許文献1参照)。
【0003】
図15は、特許文献3および特許文献4のMI磁気センサを示している。MI素子は、軟磁性合金のアモルファスワイヤと、そのワイヤの周囲に設けられた検出コイルとを含む。高周波交流電流が電気的接続によってMI素子に印加される。検出コイルに発生する電圧は、外部磁界に対応するもので、磁気センサとして作用する。高周波交流電流は、0.3〜1.0GHzの範囲の周波数を有する。
しかしながら、MI磁気センサにおける電気的接続回路は、素子製造の複雑さを増すと共に、材料のジュール熱損失を引き起こすという課題があった。また、高周波交流電流が0.3〜1.0GHzの周波数範囲でちょうど通信帯域内にあるため、通信電磁波はMIセンサの安定性に影響を与える可能性がある。さらに、電気的接続を有するMI素子は、センサと試料との間に数μmの小さな距離が必要とされるため、磁気顕微鏡のようないくつかの用途には適していないという課題がある。
【0004】
図16は、共振回路なしの磁気インピーダンスセンサを示す要部回路図で、特許文献1、特許文献2で使用されているものである。
図において、MI磁気センサ1は、アモルファスワイヤ2の周りにコイル3を巻き付けた構造をしており、コイル3の一端は接地されている。交流電流源5は、コンデンサC1を介してコイル3の他端に接続されているもので、検出用周波数帯域の信号(例えば100kHz〜10MHz)を出力している。直流電流源7は、インダクタL1を介してコイル3の他端に接続されている。
【0005】
このように構成された装置において、交流電流源5から供給される交流電流IACは、磁気インピーダンスセンサ1の測定信号を抽出するために使用される検出用周波数帯域の信号成分を含んでいる。直流電流源7から供給される直流電流IDCは、コイル3に接続されて、バイアス電流を発生させる。アモルファスワイヤ2のB−H曲線の非線形性のために、アモルファスワイヤ2の比透磁率は外部磁界と共に変化し、それからコイル3のインピーダンスおよびVACの振幅もまた外部磁界と共に変化する。そこで、MI磁気センサは、外部磁界の変化を検出できる。例えば、特許文献1で用いられるアモルファスワイヤ2は、形状が直径0.1mm、長さ5mmのFeCoSiBアモルファスワイヤを使用しており、磁界分解能が約30pT/√Hzの高感度磁気インピーダンスセンサを実現している。
【0006】
特許文献1および特許文献2で用いられている方法では、磁気センサの信号振幅は約10mV/ガウスであった。等価入力ノイズスペクトルがVnであり、磁気センサの信号振幅が△V/△Bである場合、磁場分解能Bnは次式によって推定することができる。
Bn=Vn/(△V/△B) (1)
例えば、Vn=3nV/√Hz、△V/△B=10mV/ガウス、Bn=30pT/√Hzと見積もることができる。磁界分解能を向上させるためには、磁気センサの信号振幅(△V/△B)を大きくする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−133397号公報
【特許文献2】特開平6−294850号公報
【特許文献3】特許第4655247号公報
【特許文献4】特許第5839527号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】磁気センサ理工学(増補)、毛利佳年雄、コロナ社(2015)、第13頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
磁気センサの信号が小さい場合、プリアンプのノイズが磁気検出システムの総合ノイズを決定する。プリアンプのノイズの影響を減らすためには、磁気センサの信号振幅を大きくする必要がある。
本発明での解決課題は、センサと試料との間に数μm程度の微小な間隔が必要とされる磁気顕微鏡のような用途に適した、簡単な構造で、低ノイズで、磁界分解能の高い磁気インピーダンスセンサを提供することである。
別の本発明での解決課題は、上記の磁気インピーダンスセンサを用いた非破壊検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明の磁気インピーダンスセンサは、例えば図1に示すように、零磁歪となる軟磁性合金のアモルファスからなる感磁ワイヤ(2)と、この感磁ワイヤの周囲に絶縁物を介して巻回された検出コイル(3)と、この検出コイルに駆動用周波数帯域の交流電流又はパルス電流を供給する駆動用信号供給回路(5)と、この検出コイルに、前記交流電流又はパルス電流の振幅電圧の1/2以上の直流電流を供給する直流バイアス回路(7)と、この検出コイルからの出力信号の振幅を増大させる共振回路(8)であって、共振周波数(ω)が前記駆動用周波数帯域に含まれ、品質係数Qが5以上20以下の前記共振回路とを備える。
品質係数Qが5以上20以下であれば、共振周波数(ω)での増幅率が10倍程度で好ましいと共に、高調波のノイズ低減に適切である。
【0011】
[2]本発明の磁気インピーダンスセンサにおいて、好ましくは、例えば図2に示すように、前記共振回路はインダクタ(L)とコンデンサ(C)を備え、前記共振回路を含む前記磁気インピーダンスセンサの等価回路における等価抵抗(R)は、品質係数Qが5以上20以下となるように定められているとよい。
ここで、品質係数Qは前記等価回路のパラメータL、C、R、ωを用いて、次の式で表される。
Q=1/(ωCR)=ωL/R=√(L/C)xR−1 (2)
[3]本発明の磁気インピーダンスセンサにおいて、好ましくは、前記駆動用周波数帯域は、0.1MHz以上10MHz以下であると共に、前記駆動用信号供給回路の供給する交流電流又はパルス電流の駆動周波数は、前記共振回路の共振周波数と同じであるとよい。前記共振周波数は共振回路のコンデンサの値を変えることで調整できる。
駆動用周波数帯域を、0.1MHz以上10MHz以下とすると、感磁ワイヤの出力信号の感度が適切な範囲となる。
【0012】
[4]本発明の非破壊検査装置は、例えば図1図4に示すように、[1]乃至[3]の何れかに記載の磁気インピーダンスセンサ20と、感磁ワイヤ(2)の周囲に絶縁物を介して巻回された励磁コイル22と、励磁コイル22に欠陥検出用の渦電流発生信号(ω)を供給する渦電流用信号供給回路25と、共振回路(8)で出力された前記渦電流発生信号に相当する周波数成分を抽出する渦電流抽出回路30と、渦電流抽出回路30で抽出した前記渦電流周波数成分に相当する欠陥深さに応じた被測定対象物の欠陥位置を算出する演算処理装置40とを備え、磁気インピーダンスセンサ20の測定端となる感磁ワイヤ(2)を被測定対象物24に対峙させると共に、被測定対象物24は非磁性且つ導電性の物質であることを特徴とする。
[5]前記演算処理装置は、前記被測定対象物の電気抵抗率(ρ)と透磁率(μ)及び前記渦電流発生信号の角周波数(ω)から定まる表皮深さ{δ=√(2ρ/ωμ)}を用いて、欠陥深さを算出するとよい。
【0013】
[6]本発明の非破壊検査装置において、好ましくは、例えば図10に示すように、さらに、感磁ワイヤ(2)の測定端を前記被測定対象物に対峙させた姿勢で、被測定対象物24の測定面に対して定められた平面内の二軸方向の任意の位置に位置決めさせるX−Yステージ50を備え、演算処理装置40は、このX−Yステージに対する測定位置指令情報と、この測定位置指令情報に対応する位置での前記感磁ワイヤの測定端の測定情報とから、被測定対象物24の欠陥が位置する深さと前記欠陥の形状を求めるとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の磁気インピーダンスセンサによれば、MI磁気センサの出力電圧振幅は共振回路によって増大されると共に、共振回路はプリアンプのような能動素子と比較して低ノイズの特性を有する素子で構成されるので、磁気センサの信号振幅を大きくでき、磁界分解能が良好となる。
本発明の非破壊検査装置によれば、磁界分解能が良好な磁気インピーダンスセンサを用いているので、渦電流周波数に応じた表皮深さでの非磁性且つ導電性の被測定対象物に存在する欠陥、その位置する深さと形状を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例を示す共振回路付き磁気インピーダンスセンサの要部回路図である。
図2図1に示す共振回路の等価回路である。
図3】異なる周波数における磁気センサの信号振幅で、aは共振回路を持たない磁気センサ、bは共振回路を有する磁気センサを示している。
図4】本発明の一実施例を示すMI磁気センサを用いた多周波渦電流試験システムの構成図である。
図5図4の装置の動作を説明するフローチャート図である。
図6図4に示す装置のコンピュータを、汎用のコンピュータの構成に準拠して構成する場合の機能ブロック図である。
図7図6に示す機能ブロックを有するコンピュータのためのソフトウェアの機能ブロック図である。
図8図4に示す駆動回路30に用いて好適な、共振回路を有する磁気インピーダンスセンサの等価回路図である。
図9】本発明の一実施例を示す3層パーマロイシールドでGMIセンサによって測定された磁場ノイズスペクトルの一例を示す図である。
図10】本発明の第2の実施例を示すMIセンサを用いた渦電流試験式の非破壊検査装置の評価システムの構成図である。
図11図10の装置の動作を説明するフローチャート図である。
図12図10に示す装置のコンピュータを、汎用のコンピュータの構成に準拠して構成する場合の機能ブロック図である。
図13図12に示す機能ブロックを有するコンピュータのためのソフトウェアの機能ブロック図である。
図14】開発した渦電流試験非破壊評価システムを使って、3Dプリント成形したチタン合金の欠陥の検出結果の一例を示す図である。
図15】特許文献3、4に開示されたMI磁気センサの構成図である。
図16】共振回路を持たない通常の磁気インピーダンスセンサの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0016】
以下、図面を用いて本発明を説明する。
図1は、本発明の一実施例を示す共振回路付き磁気インピーダンスセンサの要部回路図である。なお、図1において前出の図16と同一作用をするものには同一符号を付して説明を省略する。図において、共振回路8は、インダクタ(L2)とコンデンサ(C2)を備えるもので、共振周波数は、例えば1MHzであるが、これに限定されるものではなく0.1〜10MHzの範囲内にあればよい。コンデンサ(C2)は接地されていると共に、インダクタ(L2)の一端はコイル3の一端に接続されると共に、インダクタ(L2)の他端はコンデンサ(C2)の他端と接続されている。ここで、アモルファスワイヤ2は、例えば長さを5mm、直径を100μmとする。なお、アモルファスワイヤ2の形状はこれに限定されるものではない。コイル3は、例えば直径0.1mmの銅線とし、巻数を40ターンとする。また、コイル3の形状・材料もこれに限定されるものではない。
なお共振回路としてトランスを用いることも考えられるが、カットオフ周波数は数百kHzであり、トランスの損失も周波数とともに増加する課題がある。そこで、共振周波数が0.1〜0.5MHzの範囲内では、トランスをMI磁気センサの信号振幅を増大させるために使用され得る。そこで、共振周波数が0.5〜10MHzの範囲内では、LC共振回路8がトランスより優れた特性を有している。
【0017】
図2は、図1に示す共振回路の等価回路である。共振回路の等価抵抗はRである。共振周波数fはf=1/(2π√(LC))で決定される。共振回路の品質係数はQ=1/(2πfCR)である。電圧源Vsに対して、共振周波数で共振回路を流れる電流はI=Vs/Rである。コンデンサCの両端の電圧Voは次のようになる。
Vo=I/(2πfC)=Vs/(2πfCR)=QVs (3)
Qの正常値は約10である。したがって、電圧振幅は共振回路によって約10倍に増幅することができる。
【0018】
磁気インピーダンスセンサについて共振回路のある場合とない場合の2類型について、MI磁気センサの信号振幅を測定した。図3は、異なる周波数における磁気インピーダンスセンサの信号振幅を示す図である。図3の線aは共振回路なしの磁気インピーダンスセンサの信号振幅△V/△Bを示し、図3の線bは共振回路付き磁気インピーダンスセンサの信号振幅△V/△Bを示す。約1MHzの共振周波数では、信号振幅は約10倍に増加する:例えば、約10mV/ガウスから約100mV/ガウスに増幅される。式(1)を用いて、共振回路を使用した場合の磁界分解能は約3pT/√Hzと推定できる。これは理論値である。実際の磁気インピーダンスセンサでは、10pT/√Hzの磁界分解能が達成された。
【0019】
次に、本発明者は、本発明の高感度MI磁気センサを用いて、非破壊検査装置を開発した。
図4は、MI磁気センサを備えた非破壊検査装置の一類型としての、多周波数の渦電流試験非破壊評価システムのブロック図を示す。MI磁気センサ20は、試料24に誘導された渦電流によって生成された磁界を測定するために使用される。励磁コイル22は、MI磁気センサ20の主要部をなす、零磁歪となる軟磁性合金のアモルファスからなる感磁ワイヤに巻装される。
試料24は、例えば非磁性且つ導電性の金属物質が好ましく、例えばチタン合金が用いられる。
多周波数の信号発生器25は、渦電流用信号供給回路25として作用するもので、例えば100Hzから100kHzまでの多周波信号を生成するために使用され、当該多周波信号は多周波励起磁場を生成するために励磁コイル22に送信される。
【0020】
駆動回路30は、例えは図8に示すような電子回路を有するもので、図8に示す信号発生器11と直流電流源12により、MI磁気センサ20に駆動信号を供給すると共に、渦電流抽出回路30としての機能も兼ねている。駆動回路30は、MI磁気センサ20の測定した試料24に関する磁界測定信号を増幅する機能を備えるもので、AD変換器35を介して、磁界測定信号をコンピュータ40に送る。
コンピュータ40は、FFT(高速フーリエ変換)変換プログラムを搭載して周波数分析を行うと共に、X−Yステージ制御装置45に対して、試料24に対向するMI磁気センサ20の測定位置命令信号を送る。FFT変換プログラムは、迅速に測定を行うために、ロックインアンプの代わりに、コンピュータ40で多周波数信号の振幅信号を得るために使用される。
X−Yステージ50は、X−Yステージ制御装置45からの測定位置命令信号に従い、試料24のX−Y平面内の位置を動かす。
【0021】
このように構成された非破壊検査装置の動作を説明する。図5は、図4の非破壊検査装置の動作を説明するフローチャート図である。まず、MIセンサ測定位置出力ステップでは、X−Yステージ制御装置45に対して、試料24に対向するMI磁気センサ20の測定位置命令を送る(S505)。測定位置命令はセンサ位置データとして、コンピュータ40に記憶される。すると、X−Yステージ50により、試料24のX−Y平面内での位置を動かして、MI磁気センサ20に測定する試料24の位置を調整する。これによって、MI磁気センサ20により磁界測定信号の得られる試料24の任意の場所が指定できる。
【0022】
測定制御ステップでは、多周波数の信号発生器25から、励磁コイル22に対して、多周波信号の出力を命令する(S510)。多周波励起磁場を生成するために送信される発生信号データは、コンピュータ40に記憶される。
MIセンサ測定値読込ステップでは、試料24に誘導された渦電流によって生成された磁界をMI磁気センサ20で測定し、駆動回路30とAD変換器35を介してMIセンサ測定値として読込む(S520)。
【0023】
厚み方向測定値演算ステップでは、MIセンサ測定値の周波数解析結果から、試料の厚み方向の測定値を演算する(S525)。入力されたMI磁気センサ20の磁界測定信号に対して、FFT周波数解析を行うことで、試料24の欠陥の深さ情報が得られる。
測定値プロフィール測定ステップでは、MI磁気センサ20の測定位置命令により、試料24のX−Y面内平面の磁場検出信号測定を繰り返すことで、測定値プロフィールを測定する(S530)。
【0024】
欠陥分布プロフィール解析ステップでは、試料24のX−Y面内平面の磁場検出信号測定により、当該試料の欠陥の三次元的な分布を演算する(S535)。コンピュータ40では、測定値プロフィールや欠陥分布プロフィールの測定結果をディスプレイ装置にグラフ表示してもよい。
このようにして、本発明の非破壊検査装置では、MI磁気センサ20の磁界測定信号を用いて、試料10の三次元的な欠陥分布プロフィールを詳細に測定し、その空間分布を調べることで、試料10を評価することができる。
【0025】
図6は、本開示によるMI磁気センサを用いて構成された試料の欠陥の三次元的な分布を演算するための、例示的なコンピューティング装置600を示すブロック図である。図4のコンピュータ40は、コンピューティング装置600の全部または一部を使用して実施することができる。
非常に基本的な構成601では、コンピューティング装置600は通常、1つまたは複数のプロセッサ610とシステムメモリ620とを含む。メモリバス630は、プロセッサ610とシステムメモリ620との間の通信に使用され得る。
【0026】
所望の構成に応じて、プロセッサ610は、マイクロプロセッサ(μP)、マイクロコントローラ(μC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない任意のタイプのものであり得る。プロセッサ610は、レベル1キャッシュ611およびレベル2キャッシュ612などのもう1つのレベルのキャッシング、プロセッサコア613、およびレジスタ614を含むことができる。例示的なプロセッサコア613は、算術論理演算装置(ALU)、浮動小数点ユニット(FPU)、デジタル信号処理コア(DSPコア)、またはそれらの任意の組み合わせなどを含むことができる。例示的なメモリ制御部615もプロセッサ610と共に使用することができ、またはいくつかの実装形態では、メモリ制御部615はプロセッサ610の内部部分とすることができる。
【0027】
所望の構成に応じて、システムメモリ620は、揮発性メモリ(RAMなど)、不揮発性メモリ(ROM、フラッシュメモリなど)、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない任意のタイプのものとすることができる。システムメモリ620は、オペレーティングシステム621、1つまたは複数のアプリケーション622、およびプログラムデータ632を含み得る。アプリケーション622は、上述の例に従ってFFT周波数解析を演算するように構成されたMIセンサ測定値解析623、MIセンサ測定位置解析624、測定値プロフィール解析625、欠陥分布プロフィール解析626を含み得る。
プログラムデータ632は、発生信号データ633、MIセンサ測定データ634、センサ位置データ635、コンピューティング装置600によって計算された測定値プロフィール636、欠陥分布プロフィール637を含み得る。
【0028】
コンピューティング装置600は、追加の特徴または機能性、および基本構成601と任意の必要な装置およびインターフェースとの間の通信を容易にするための追加のインターフェースを有することができる。例えば、バス/インターフェース制御部640を使用して、ストレージインターフェースバス641を介した基本構成601と1つまたは複数のデータ記憶装置650との間の通信を容易にすることができる。データ記憶装置650は、取り外し可能な記憶装置651、取り外しができない記憶装置652、またはそれらの組み合わせである。取り外し可能な記憶装置および取り外しができない記憶装置の例には、フレキシブルディスクドライブ(FDD)およびハードディスクドライブ(HDD)などの磁気ディスク装置、コンパクトディスク(CD)ドライブまたはデジタル多用途ディスク(DVD)ドライブなどの光ディスクドライブ、ソリッドステートドライブ(SSD)、テープドライブが含まれる。例示的なコンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、または他のデータなどの情報を記憶するための任意の方法または技術で実施される揮発性および不揮発性、取り外し可能および固定の媒体を含み得る。
【0029】
システムメモリ620、取外し可能記憶装置651、および固定記憶装置652はすべてコンピュータ記憶媒体の例である。 コンピュータ記憶媒体は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリまたは他のメモリ技術、CDROM、デジタル多用途ディスク(DVD)または他の光学記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置または他の磁気記憶装置を含むがこれらに限定されない。所望の情報を格納するために使用され得、かつコンピューティング装置600によってアクセスされ得る任意のそのようなコンピュータ記憶媒体は、デバイス600の一部であり得る。
【0030】
また、コンピューティング装置600はバス/インターフェース制御部640を介して様々なインターフェース装置(例えば、出力インターフェース、周辺インターフェース、および通信インターフェース)から基本構成601への通信を容易にするためのインターフェースバス642を含むことができる。
出力デバイス660では、画像処理ユニット661および音声処理ユニット662が、1つまたは複数のAVポート663を介して表示装置692またはスピーカなどの様々な外部装置と通信するように構成され得る。
例示的な周辺インターフェース670は、入力装置(例えば、キーボード、マウス、ペン、音声入力装置、タッチ入力装置など)のような外部装置と通信するように構成され得るシリアルインターフェース制御部671またはパラレルインターフェース制御部672を含む。周辺インターフェース670は、I/Oポート673を介してMIセンサ駆動回路692、多重周波数信号発生器694、及びX−Yステージ制御部696と通信するように構成され得る。
例示的な通信装置680は、ネットワーク制御部681を含み、ネットワーク制御部681は、1つまたは複数の通信ポート682を介したネットワーク通信リンクを介して、1つまたは複数の他のコンピューティング装置690との通信を容易にするように構成されてもよい。
【0031】
ネットワーク通信リンクは、通信媒体の一例であり得る。 通信媒体は、通常、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、または搬送波もしくは他の搬送機構などの変調データ信号内の他のデータによって具現化することができ、任意の情報配信媒体を含むことができる。「変調データ信号」は、信号内に情報を符号化するような方法で設定または変更されたその特性のうちの1つまたは複数を有する信号であり得る。限定ではなく例として、通信媒体は、有線ネットワークまたは直接配線接続などの有線媒体、ならびに音響、無線周波数(RF)、マイクロ波、赤外線(IR)および他の無線媒体などの無線媒体を含み得る。本明細書で使用されるコンピュータ可読媒体という用語は、記憶媒体と通信媒体の両方を含み得る。
【0032】
コンピューティング装置600は、携帯電話、パーソナルデータアシスタント(PDA)、パーソナルメディアプレーヤデバイス、ワイヤレスウェブウォッチデバイス、パーソナルコンピュータなどのスモールフォームファクタポータブル(またはモバイル)電子デバイス、上記の機能のいずれかを含むヘッドセットデバイス、特定用途向けデバイス、またはハイブリッドデバイスの一部として実装され得る。コンピューティング装置600はまた、ラップトップコンピュータ構成および非ラップトップコンピュータ構成の両方を含むパーソナルコンピュータとして実装され得る。
【0033】
図7は、本開示による、MIセンサの磁界測定信号に基づいて試料の三次元的な測定値プロフィールを格納するように構成された例示的なコンピュータプログラム製品700を示すブロック図である。プログラム担持媒体702は、コンピュータ読取可能媒体706、記録可能媒体708、通信媒体709、またはそれらの組み合わせとして実装することができるもので、処理ユニットのすべてまたは一部の処理を実行するように構成することができるプログラム命令格納部704を有する。
プログラム命令格納部704に格納されたプログラム命令は、例えば、AD変換器35を介して入力した、MI磁気センサ20の測定した試料24に関する磁界測定信号に対して、FFT(高速フーリエ変換)変換プログラムにより周波数分析を行うMIセンサ測定値解析部710、X−Yステージ制御装置45に対して、試料24に対向するMI磁気センサ20の測定位置命令を送るMIセンサ測定位置解析部720を含む。また、MIセンサ測定値解析部で解析したMI磁気センサ20の磁界測定信号と、MIセンサ測定位置解析部の測定位置命令から、試料における磁界測定信号の三次元的な分布状態を求める測定値プロフィール解析部725、測定値プロフィール解析部の試料における磁界測定信号の三次元的な分布状態から、試料における欠陥の三次元的な分布を演算する欠陥分布プロフィール解析部730を含む。
【0034】
図8は、図4に示す駆動回路30に用いて好適な、共振回路を有する磁気インピーダンスセンサの等価回路図である。なお、図8において前出の図16と同一作用をするものには同一符号を付して説明を省略する。図8において、信号発生器11は、コイル3に供給する100kHz〜10MHzの正弦波電流を発生する電気回路である。直流電流源12は、コイル3に供給する直流バイアス電流を供給するものである。前置増幅器13は、共振回路8で得られた検出信号の前置増幅器をすると共に、共振回路8と復調器14の間で検出信号が歪まないようにしている。復調器14は、検出信号に含まれる外部磁気の測定信号成分を抽出する。増幅器15は、復調器14で復調された外部磁気の測定信号成分を増幅する。
【0035】
信号発生器11で発生した正弦波電流がコイル3に送られる。信号発生器11で発生する正弦波電流の周波数は、共振回路の共振周波数と同じである。例えば、共振回路の共振周波数が1MHzの場合、1MHzの正弦波電流が使用される。DC電流はバイアス静磁場を発生させるために使用される。交流電圧は共振回路8に送られ、次に低雑音の前置増幅器13に送られる。前置増幅器13で増幅されたコイル3の磁場検出信号は、復調器14の後段に接続された増幅器15によって交流電圧Voutが得られる。Voutの出力電圧は外部磁界の測定に使用される。
【0036】
図9は、共振回路を有するMI磁気センサの磁界ノイズスペクトルを示すもので、縦軸は信号振幅、横軸は周波数であり、縦軸と横軸は共に対数を用いて表示している。ノイズスペクトルは、3層パーマロイシールドボックス内で測定された。ピークは50Hz電源の基本波とその高調波である。信号振幅は約100mV/ガウス、磁場ノイズスペクトルは約10pT/√Hzである。
【0037】
これに対して、比較例としての特許文献1および特許文献2の測定回路では、共振回路は使用されていない。信号振幅は約10mV/ガウスであった。特許文献1では、ワイヤとの電気的接続はなく、信号振幅は約10mV/ガウス、磁場分解能は約30pT/√Hzであった。特許文献2では、ワイヤとの電気的接続はなく、磁場感度は約0.1mG=10000pTであった。
比較例としての特許文献3、特許文献4では、ワイヤとの電気的接続があり、信号振幅は約20〜100mV/ガウスであった。これに対して、本発明では、ワイヤとの電気的接続はなく、信号振幅は約100mV/ガウス、磁場分解能は約10pT/√Hzである。
【0038】
図10は、本発明の高感度MI磁気センサを用いて開発した第2の渦電流試験非破壊評価システムを表している。なお、図10において、前記図4と同一作用をするものには同一符号を付して説明を省略する。被測定対象物である試料24として、非磁性且つ導電性の金属物質であるTi−6Al−4Vチタン合金試料を使用した。試料24の形状は5cm×5cm×1cmであり、端部近くにいくつかの亀裂欠陥が存在した。その中の欠陥を検出するために、渦電流試験法を用いた。
【0039】
図において、駆動回路55は、MI磁気センサ20の測定した試料24に関する磁界測定信号を増幅するもので、磁界測定信号をロックインアンプ60に送る。ロックインアンプ60は、励磁コイル22に供給する100kHz〜10MHzの正弦波電流を発生するもので、併せて駆動回路55からの駆動信号を入力している。ロックインアンプ60は、図4の多周波数の信号発生器25やAD変換器35の機能を代替するものである。
コンピュータ65は、X−Yステージ制御装置の機能を含んでおり、X−Yステージ50に対してX−Y測定位置命令信号を送ることで、試料24に対向するMI磁気センサ20の位置決めをしている。
X−Yステージ50は、コンピュータ65からの測定位置命令信号に従い、試料24のX−Y平面内の位置を動かす。
【0040】
図11は、図10の装置の動作を説明するフローチャート図である。なお、図11において、前出の図5のステップと同一作用をするものには同一符号を付して、説明を省略する。
測定制御ステップでは、ロックインアンプ60に対して、励磁コイル22に多周波信号の出力をするように命令する(S515)。多周波励起磁場を生成するために送信される発生信号データは、コンピュータ40に記憶される。
MIセンサ測定値読込ステップでは、試料24に誘導された渦電流によって生成された磁界をMI磁気センサ20で測定し、駆動回路55とロックインアンプ60を介してMIセンサ測定値として読込む(S522)。
【0041】
図12は、図10に示す装置のコンピュータ65を、汎用のコンピュータの構成に準拠して構成する場合の機能ブロック図である。なお、図12において、前出の図6の構成要素と同一作用をするものには同一符号を付して、説明を省略する。図15では、ロックインアンプ695が、図6のMIセンサ駆動回路692、多重周波数信号発生器694に代えて、装着されている。
【0042】
図13は、図12に示す機能ブロックを有するコンピュータのためのソフトウェアの機能ブロック図である。なお、図13において、前出の図7の機能ブロックと同一作用をするものには同一符号を付して、説明を省略する。図13では、MIセンサ測定値解析部715が図7の機能ブロック図のMIセンサ測定値解析部710に代えて設けてある。
【0043】
このように構成された装置においては、ロックインアンプ60の供給する交流電流が励磁コイル22に印加される。励磁コイル22とMI磁気センサ20のアモルファス感磁ワイヤで交流磁場を発生させることで、MI磁気センサ20のアモルファス感磁ワイヤに対向する試料24に渦電流を誘導する。次に、MI磁気センサ20を用いて渦電流によって発生した磁場を測定する。試料24に欠陥が存在すると、渦電流の分布が変化し、次に渦電流によって生成される磁場が変化する。MI磁気センサ20の出力から、試料24の欠陥を検出することができる。通常の渦電流試験装置では、信号が小さくエッジ効果が大きいため、エッジ付近の小さな欠陥を検出することは困難である。
【0044】
図14は、開発した渦電流試験非破壊評価システムを使って、3Dプリント成形したチタン合金の欠陥の検出結果を表している。この検出結果をみると、チタン合金の縁に近い小さな亀裂の検出に成功した。
MI磁気センサは広い周波数応答を有する。それはDCから200kHzまでの磁気信号を測定することができるので、MI磁気センサは多周波数の渦電流試験非破壊評価システムを構築するために使用することができる。渦電流の侵入深さは次式で決定される。
δ=1/(πfσμ)1/2 (4)
ここで、δは侵入深さ、fは周波数、σは試料の導電率、そしてμは試料の透磁率である。非破壊検査装置として多周波数の渦電流試験システムを使用すると、欠陥の深さやプロファイルなど、欠陥に関するより多くの情報を取得できる。
【0045】
なお、本発明の磁気インピーダンスセンサの実施例として、共振回路が一段のインダクタとコンデンサを備える場合を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、受動素子を用いた低ノイズの素子であれば、当業者にとって自明の各種の変形実施例が含まれる。例えば、インダクタとコンデンサのLC共振回路は、一段の場合に限られるものではなく、二段構成や三段構成であってもよい。
また、本発明の非破壊検査装置の実施例として、X−Yステージを示しているが、磁気インピーダンスセンサの位置決め装置や走査制御装置としては、マニプレーターのような三次元の位置決めが可能なものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の磁気インピーダンスセンサによれば、小型で高感度の磁気検出器を構築することができ、特に磁気顕微鏡のような微細組織の観察分野に応用可能である。
また、本発明の非破壊検査装置によれば、被測定対象物の電気抵抗率(ρ)と透磁率(μ)及び前記渦電流発生信号の角周波数(ω)から定まる表皮深さ{δ=√(2ρ/ωμ)}を用いて、欠陥深さを算出しているので、非磁性且つ導電性の物質である被測定対象物の欠陥検査に適用できる。
更に、本発明の非破壊検査装置においてX−Yステージを更に設けると、試料の三次元的な測定プロフィールや欠陥プロフィールが得られる。
【符号の説明】
【0047】
1:磁気インピーダンスセンサ(MI)素子
2:アモルファスワイヤ
3:コイル
4:コンデンサC1
5:交流電流源
6:インダクタL1
7:直流電流源
8:共振回路
9:インダクタL2
10:コンデンサC2
11:信号発生器
12:直流電流源
20:MI磁気センサ(磁気インピーダンスセンサ)
22:励磁コイル
24:サンプル(試料)
25:多周波数の信号発生器(渦電流用信号供給回路)
30、55:駆動回路(渦電流抽出回路)
40、60:PC(コンピュータ)
45:X−Yステージ制御装置
50:X−Yステージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16