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特開2020-197596空間光変調器、描画装置、空間光変調方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-197596(P2020-197596A)
(43)【公開日】2020年12月10日
(54)【発明の名称】空間光変調器、描画装置、空間光変調方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/03 20060101AFI20201113BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20201113BHJP
【FI】
   G02F1/03 503
   G03F7/20 505
   G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-102831(P2019-102831)
(22)【出願日】2019年5月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 雅英
(72)【発明者】
【氏名】馬越 昌一
【テーマコード(参考)】
2H197
2K102
【Fターム(参考)】
2H197AA22
2H197BA04
2H197BA09
2H197CA02
2H197CA03
2H197CA07
2H197CC05
2H197CC16
2H197CD12
2H197CD15
2H197CD18
2H197CD41
2H197DA03
2H197DA04
2H197HA03
2H197HA10
2K102AA21
2K102BA05
2K102BB01
2K102BC04
2K102BD10
2K102CA00
2K102DA08
2K102DA20
2K102DD05
2K102EA02
2K102EA16
2K102EB08
2K102EB10
2K102EB20
(57)【要約】
【課題】印加される電位差に応じて回折格子を生成する光学素子を利用して光を変調する空間光変調技術において、光学素子への電荷の残留を抑えつつ光変調を適切に行う。
【解決手段】ラスターデータDrが示す複数のオン操作Sonは、第2電極572の電圧よりも高い電圧を第1電極571に継続的に印加する第1高圧操作Son1と、第1電極571の電圧よりも高い電圧を第2電極572に継続的に印加する第2高圧操作Son2とを含む。したがって、空間光変調素子51への電荷の残留を抑制できる。しかも、オン操作Sonの実行中は、空間光変調素子51に印加される電位差Eは、第1電極571側が高い状態か、第2電極572側が高い状態かのいずれかに維持されるため、回折されずに空間光変調素子51を通過する光の発生を抑えることができる。こうして、空間光変調素子51への電荷の残留を抑えつつ光変調を適切に行うことが可能となっている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極に対向する第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、前記第1電極と前記第2電極との間の電位差に応じた回折格子を生成する光学素子と、
前記光学素子に入射した光を前記回折格子により回折する複数のオン操作と、時間的に隣り合う前記オン動作の間で前記光学素子に入射した光を回折しないオフ操作との実行タイミングを、時系列に並べて示すデータ信号に基づき、前記電位差を制御することで前記光学素子に入射する光を変調する光変調動作を実行する制御部と
を備え、
前記複数のオン操作は、前記第2電極の電圧よりも高い電圧を前記第1電極に印加して前記回折格子を生成する前記オン操作である第1高圧操作と、前記第1電極の電圧よりも高い電圧を前記第2電極に印加して前記回折格子を生成する前記オン操作である第2高圧操作とを含む空間光変調器。
【請求項2】
前記第1高圧操作により生じる前記電位差の絶対値と、前記第2高圧操作により生じる前記電位差の絶対値とが等しい請求項1に記載の空間光変調器。
【請求項3】
前記光学素子では、前記第1電極側へ分極する第1分極域と、前記第2電極側へ分極する第2分極域とが配列方向に周期的に並ぶ単一の周期分極反転構造が設けられ、
前記オン操作では、前記周期分極反転構造が前記電位差に応じた前記回折格子を生成して、当該周期分極反転構造に入射する光を前記回折格子により回折する請求項1または2に記載の空間光変調器。
【請求項4】
前記光学素子では、前記第1電極側へ分極する第1分極域と、前記第2電極側へ分極する第2分極域とが配列方向に周期的に並ぶ複数の周期分極反転構造が前記配列方向に直交する厚さ方向に並び、
前記オン操作では、前記複数の周期分極反転構造のそれぞれは、前記電位差に応じた前記回折格子を生成して、前記複数の周期分極反転構造に順に入射する光を前記回折格子により回折し、
前記複数の周期分極反転構造は、最小周期で前記第1分極域と前記第2分極域とが並ぶNa個(Naは1以上の整数)の周期分極反転構造と、前記最小周期の2以上の整数倍で前記第1分極域と前記第2分極域とが並ぶNb個(Nbは1以上の整数)の周期分極反転構造とを含み、
前記Nb個の周期分極反転構造における前記第1分極域と前記第2分極域との境界を通る仮想直線は、前記Na個の周期分極反転構造における前記第1分極域と前記第2分極位置との境界に重なる請求項1または2に記載の空間光変調器。
【請求項5】
前記Naは1であり、前記Nbは1である請求項4に記載の空間光変調器。
【請求項6】
前記Naは2であり、前記Nbは1であり、
前記Na個の周期分極反転構造の間に前記Nb個の周期分極反転構造が配置される請求項4に記載の空間光変調器。
【請求項7】
前記Na個の周期分極反転構造のうち、一方において前記第1分極域と前記第2分極域とが前記最小周期で並ぶ位相と、他方において前記第1分極域と前記第2分極域とが前記最小周期で並ぶ位相とが一致する請求項6に記載の空間光変調器。
【請求項8】
前記Na個の周期分極反転構造のうち、一方において前記第1分極域と前記第2分極域とが前記最小周期で並ぶ位相と、他方において前記第1分極域と前記第2分極域とが前記最小周期で並ぶ位相とが、前記最小周期の半分だけずれる請求項6に記載の空間光変調器。
【請求項9】
前記Nb個の周期分極反転構造では、前記第1分極域と前記第2分極域とが前記最小周期の2倍の周期で並ぶ請求項4ないし8のいずれか一項に記載の空間光変調器。
【請求項10】
複数の第1電極が前記配列方向に並び、
前記制御部は、前記複数の第1電極に個別に電圧を与えて前記電位差を発生させる請求項3ないし9のいずれか一項に記載の空間光変調器。
【請求項11】
前記複数のオン操作では、前記第1高圧操作と前記第2高圧操作とが交互に並ぶ請求項1ないし10のいずれか一項に記載の空間光変調器。
【請求項12】
前記制御部は、前記複数のオン操作のうちの一のオン操作を、前記第1高圧操作および前記第2高圧操作のいずれにするかを、前記一のオン操作より前における前記第1高圧操作および前記第2高圧操作の実行状況を判断した結果に基づき決定する請求項1ないし10のいずれか一項に記載の空間光変調器。
【請求項13】
前記制御部は、前記一のオン操作より前の所定期間における前記第1高圧操作および前記第2高圧操作それぞれの累積実行時間を比較した結果に基づき、前記一のオン操作を、前記第1高圧操作および前記第2高圧操作のいずれにするかを決定する請求項12に記載の空間光変調域。
【請求項14】
前記制御部は、前記一のオン操作を、前記第1高圧操作および前記第2高圧操作のうち、前記累積実行時間が少ないほうの一方にすると決定する請求項13に記載の空間光変調器。
【請求項15】
前記制御部は、前記光変調動作を実行していない期間に、前記光学素子から電荷を除去するディスチャージを実行する請求項1ないし14のいずれか一項に記載の空間光変調器。
【請求項16】
前記ディスチャージでは、前記第1電極の電圧と前記第2電極の電圧とが繰り返し反転するように前記電位差を振動させつつ、前記電位差の振動の振幅を時間経過とともに減衰させる請求項15に記載の空間光変調器。
【請求項17】
光を射出する光源と、
前記光源から射出された光を変調する請求項1ないし16のいずれかに記載の空間光変調器と、
前記空間光変調器により変調された光が照射される描画対象を支持する支持部と
を備えた描画装置。
【請求項18】
第1電極と第2電極との間に配置され、前記第1電極と前記第2電極との間の電位差に応じた回折格子を生成する光学素子に光を入射させる工程と、
前記光学素子に入射した光を前記回折格子により回折する複数のオン操作と、時間的に隣り合う前記オン動作の間で前記光学素子に入射した光を回折しないオフ操作との実行タイミングを、時系列に並べて示すデータ信号に基づき、前記電位差を制御することで前記光学素子に入射する光を変調する工程と
を備え、
前記複数のオン操作は、前記第2電極の電圧よりも高い電圧を前記第1電極に印加して前記回折格子を生成する前記オン操作である第1高圧操作と、前記第1電極の電圧よりも高い電圧を前記第2電極に印加して前記回折格子を生成する前記オン操作である第2高圧操作とを含む空間光変調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印加される電位差に応じて回折格子を生成する光学素子を利用して光を変調する空間光変調技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電位差の印加に応じて回折格子を生成する光学素子が知られている。例えば、特許文献1では、このような光学素子として、周期分極反転構造を有する強誘電体結晶が、光の変調に利用されている。つまり、2個の電極が結晶軸のZ軸と垂直に強誘電体結晶を挟むように配置され、これらの電極に電位差が印加されると、この電位差に応じた回折格子が強誘電体結晶に生成され、強誘電体結晶に入射する光が回折格子により回折される。そのため、2個の電極の電位差を制御することで、強誘電体結晶に入射する光を変調することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−208190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような光変調技術では、正側あるいは負側に電位差が偏って印加されると、電荷が光学素子に残留して、光学素子に生成される回折格子に影響した結果、光変調を適切に実行できない場合があった。そこで、特許文献1では、データ信号に応じた回折格子を光学素子に生成するにあたって、データ信号よりも高周波の交流信号をデータ信号によって振幅変調させた振幅変調信号を光学素子に印加することで、光学素子への電荷の残留を抑制する。
【0005】
しかしながら、このような振幅変調信号による制御では、データ信号が示す大きさの電位差を光学素子に与えてデータ信号に応じた回折格子により光の回折を実行すべき期間であっても、光学素子に印加される電位差が繰り返し反転する(ゼロを交差する)。そのため、回折されずに光学素子を通過する光が多くなり、光変調を適切に行うことが必ずしもできなかった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、印加される電位差に応じて回折格子を生成する光学素子を利用して光を変調する空間光変調技術において、光学素子への電荷の残留を抑えつつ光変調を適切に行うことを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空間光変調器は、第1電極と、第1電極に対向する第2電極と、第1電極と第2電極との間に配置され、第1電極と第2電極との間の電位差に応じた回折格子を生成する光学素子と、光学素子に入射した光を回折格子により回折する複数のオン操作と、時間的に隣り合うオン動作の間で光学素子に入射した光を回折しないオフ操作との実行タイミングを、時系列に並べて示すデータ信号に基づき、電位差を制御することで光学素子に入射する光を変調する光変調動作を実行する制御部とを備え、複数のオン操作は、第2電極の電圧よりも高い電圧を第1電極に印加して回折格子を生成するオン操作である第1高圧操作と、第1電極の電圧よりも高い電圧を第2電極に印加して回折格子を生成するオン操作である第2高圧操作とを含む。
【0008】
本発明に係る空間光変調方法は、第1電極と第2電極との間に配置され、第1電極と第2電極との間の電位差に応じた回折格子を生成する光学素子に光を入射させる工程と、 光学素子に入射した光を回折格子により回折する複数のオン操作と、時間的に隣り合うオン動作の間で光学素子に入射した光を回折しないオフ操作との実行タイミングを、時系列に並べて示すデータ信号に基づき、電位差を制御することで光学素子に入射する光を変調する工程とを備え、複数のオン操作は、第2電極の電圧よりも高い電圧を第1電極に印加して回折格子を生成するオン操作である第1高圧操作と、第1電極の電圧よりも高い電圧を第2電極に印加して回折格子を生成するオン操作である第2高圧操作とを含む。
【0009】
このように構成された本発明(空間光変調器、空間光変調方法)では、光学素子に入射した光を回折格子により回折する複数のオン操作の実行タイミングを時系列で示すデータ信号に基づき、光学素子を挟む第1電極と第2電極との間の電位差を制御することで光学素子に入射する光が変調される。この際、複数のオン操作は、第2電極の電圧よりも高い電圧を第1電極に印加して回折格子を生成するオン操作である第1高圧操作と、第1電極の電圧よりも高い電圧を第2電極に印加して回折格子を生成するオン操作である第2高圧操作とを含む。このように複数のオン操作に第1高圧操作と第2高圧操作とを混在させることで、複数のオン操作の全てを、第1高圧操作あるいは第2高圧操作のいずれかで実行した場合と比較して、光学素子への電荷の残留を抑制できる。しかも、オン操作の実行中は、光学素子に印加される電位差は、第1電極側が高い状態(第1高圧操作)か、第2電極側が高い状態(第2高圧操作)かのいずれかに維持される。つまり、光学素子に印加される電位差が繰り返し反転することがない。そのため、回折されずに光学素子を通過する光の発生を抑えることができる。こうして、光学素子への電荷の残留を抑えつつ光変調を適切に行うことが可能となっている。
【0010】
また、第1高圧操作により生じる電位差の絶対値と、第2高圧操作により生じる電位差の絶対値とが等しいように、空間光変調器を構成してもよい。かかる構成では、第1高圧操作での光の回折効率と、第2高圧操作での光の回折効率との差を抑えることができ、光変調をより適切に実行することができる。
【0011】
ところで、第1電極側へ分極する第1分極域と、第2電極側へ分極する第2分極域とが配列方向に周期的に並ぶ周期分極反転構造を有する光学素子を用いることができる。ただし、周期分極反転構造の構成によっては、光学素子に生成される回折格子の回折効率の変化が、電位差の印加に対して非対称(つまり、回折効率の変化を横軸としたとき、電位差がゼロの縦軸に対して非対称)となる場合がある。このような場合、第1高圧操作と第2高圧操作とで回折格子の回折効率が大きく異なり、光変調を適切に行うことができないおそれがある。
【0012】
そこで、光学素子では、第1電極側へ分極する第1分極域と、第2電極側へ分極する第2分極域とが配列方向に周期的に並ぶ単一の周期分極反転構造が設けられ、オン操作では、周期分極反転構造が電位差に応じた回折格子を生成して、当該周期分極反転構造に入射する光を回折格子により回折するように、空間光変調器を構成してもよい。かかる構成では、光学素子に生成される回折格子の回折効率が、電位差の印加に対して比較的対称に変化する。その結果、第1高圧操作と第2高圧操作との回折格子の回折効率の差を抑えて、光変調をより適切に行うことができる。
【0013】
また、光学素子では、第1電極側へ分極する第1分極域と、第2電極側へ分極する第2分極域とが配列方向に周期的に並ぶ複数の周期分極反転構造が配列方向に直交する厚さ方向に並び、オン操作では、複数の周期分極反転構造のそれぞれは、電位差に応じた回折格子を生成して、複数の周期分極反転構造に順に入射する光を回折格子により回折し、複数の周期分極反転構造は、最小周期で第1分極域と第2分極域とが並ぶNa個(Naは1以上の整数)の周期分極反転構造と、最小周期の2以上の整数倍で第1分極域と第2分極域とが並ぶNb個(Nbは1以上の整数)の周期分極反転構造とを含み、Nb個の周期分極反転構造における第1分極域と第2分極域との境界を通る仮想直線は、Na個の周期分極反転構造における第1分極域と第2分極位置との境界に重なるように、空間光変調器を構成してもよい。かかる構成では、光学素子に生成される回折格子の回折効率が、電位差の印加に対して比較的対称に変化する。その結果、第1高圧操作と第2高圧操作との回折格子の回折効率の差を抑えて、光変調をより適切に行うことができる。
【0014】
なお、NaおよびNbの値や、周期分極反転構造の配置は種々のバリエーションが想定できる。そして、いずれのバリエーションも、上記の効果を同様に奏しうる。
【0015】
したがって、Naは1であり、Nbは1であるように、空間光変調器を構成してもよい。あるいは、Naは2であり、Nbは1であり、Na個の周期分極反転構造の間にNb個の周期分極反転構造が配置されるように、空間光変調器を構成してもよい。
【0016】
後者の場合には、Na個の周期分極反転構造のうち、一方において第1分極域と第2分極域とが最小周期で並ぶ位相と、他方において第1分極域と第2分極域とが最小周期で並ぶ位相とが一致するように、空間光変調器を構成してもよい。あるいは、Na個の周期分極反転構造のうち、一方において第1分極域と第2分極域とが最小周期で並ぶ位相と、他方において第1分極域と第2分極域とが最小周期で並ぶ位相とが、最小周期の半分だけずれるように、空間光変調器を構成してもよい。
【0017】
また、Nb個の周期分極反転構造では、第1分極域と第2分極域とが最小周期の2倍の周期で並ぶように、空間光変調器を構成してもよい。かかる構成では、最小周期の周期分極反転構造と、最小周期の2倍の周期の周期分極反転構造の2種類によって、光学素子を簡便に構成することができる。
【0018】
また、複数の第1電極が配列方向に並び、制御部は、複数の第1電極に個別に電圧を与えて電位差を発生させるように、空間光変調器を構成してもよい。かかる構成では、光学素子のうち、複数の第1電極のそれぞれに対向する領域をチャンネルとして機能させて、多チャンネル化を実現することができる。
【0019】
また、複数のオン操作では、第1高圧操作と第2高圧操作とが交互に並ぶように、空間光変調器を構成してもよい。かかる構成では、第1高圧操作と第2高圧操作とを交互に実行するといった簡便な制御によって、光学素子への電荷の残留を抑えつつ光変調を適切に行うことができる。
【0020】
また、制御部は、複数のオン操作のうちの一のオン操作を、第1高圧操作および第2高圧操作のいずれにするかを、一のオン操作より前における第1高圧操作および第2高圧操作の実行状況を判断した結果に基づき決定するように、空間光変調器を構成してもよい。かかる構成では、第1高圧操作および第2高圧操作のうち、一のオン操作より以前のこれらの実行状況に応じた一方で、当該一のオン操作を実行できる。よって、光学素子の電荷の残留をより効果的に抑えることができる。
【0021】
また、制御部は、一のオン操作より前の所定期間における第1高圧操作および第2高圧操作それぞれの累積実行時間を比較した結果に基づき、一のオン操作を、第1高圧操作および第2高圧操作のいずれにするかを決定するように、空間光変調域を構成してもよい。かかる構成では、第1高圧操作および第2高圧操作のうち、一のオン操作より以前のこれらの累積実行時間に応じた一方で、当該一のオン操作を実行できる。よって、光学素子の電荷の残留をより効果的に抑えることができる。
【0022】
また、制御部は、一のオン操作を、第1高圧操作および第2高圧操作のうち、累積実行時間が少ないほうの一方にすると決定するように、空間光変調器を構成してもよい。これによって、光学素子の電荷の残留をより効果的に抑えることができる。
【0023】
また、制御部は、光変調動作を実行していない期間に、光学素子から電荷を除去するディスチャージを実行するように、空間光変調器を構成してもよい。かかる構成では、光変調動作を実行していない期間を有効利用して、光電素子から電荷を除去することができる。
【0024】
また、ディスチャージでは、第1電極の電圧と第2電極の電圧とが繰り返し反転するように電位差を振動させつつ、電位差の振動の振幅を時間経過とともに減衰させるように、空間光変調器を構成してもよい。かかる構成では、ディスチャージによって、光電素子から電荷を効果的に除去することができる。
【0025】
本発明に係る描画装置は、光を射出する光源と、光源から射出された光を変調する上記の空間光変調器と、空間光変調器により変調された光が照射される描画対象を支持する支持部とを備える。したがって、光学素子への電荷の残留を抑えつつ光変調を適切に行うことが可能となっている。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば、印加される電位差に応じて回折格子を生成する光学素子を利用して光を変調する空間光変調技術において、光学素子への電荷の残留を抑えつつ光変調を適切に行うことが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は本発明に係る描画装置の一例に相当するパターン描画装置を示す側面図。
図2】光学ヘッドの内部構成を簡略化して示す図。
図3】本発明に係る空間光変調器の構成を模式的に示す図。
図4図3の空間光変調器が備える空間光変調素子の第1例の構成を模式的に示す図。
図5】空間光変調素子を用いて実行される光変調動作の第1例を模式的に示すタイミングチャート。
図6図3の空間光変調器が備える空間光変調素子の第2例の構成を模式的に示す図。
図7図3の空間光変調器が備える空間光変調素子の第3例の構成を模式的に示す図。
図8図3の空間光変調器が備える空間光変調素子の第4例の構成を模式的に示す図。
図9】空間光変調素子による光変調の制御例を示すフローチャート。
図10図9の光変調制御に従って実行される具体例を模式的に示すタイミングチャート。
図11図1のパターン描画装置における光変調動作の実行タイミングの一例を示す図。
図12】ディスチャージ信号の一例を模式的に示すタイミングチャート。
図13】第1電極に対する第2電極の配設態様の変形例を模式的に示す図。
図14図13の第1電極および第2電極への電圧の印加態様を模式的に示すタイミングチャート。
図15】3個の周期分極反転構造を有する空間光変調素子の消光比のシミュレーション結果を示す図。
図16】同シミュレーションで用いられた空間光変調素子の一例を模式的に示す図。
図17】2個の周期分極反転構造を有する空間光変調素子の消光比のシミュレーション結果を示す図。
図18】同シミュレーションで用いられた空間光変調素子の一例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は本発明に係る描画装置の一例に相当するパターン描画装置を示す側面図である。同図および以下の図では、xyz直交座標を適宜示す。ここで、x方向およびy方向は、水平方向に平行であるとともに互いに直交し、z方向は、鉛直方向に平行である。図1に示すパターン描画装置100は、感光材料が表面に付与された半導体基板やガラス基板等の基板Wの表面に光を照射することでパターンを描画する。
【0029】
このパターン描画装置100では、本体フレーム101に対してカバー102が取り付けられて形成される本体内部に装置各部が配置されて本体が構成されるとともに、本体の外側(図1の右手側)に基板収納カセット110が配置されている。この基板収納カセット110には、パターンを描画予定の未処理の基板Wが収納されている。そして、本体内部に配置された搬送ロボット120によって、基板収納カセット110から本体に未処理の基板Wがローディングされる。また、未処理の基板Wに対するパターン描画(露光)が完了すると、この基板Wが搬送ロボット120によって本体からアンローディングされて基板収納カセット110に戻される。
【0030】
この搬送ロボット120は、カバー102に囲まれた本体内部の右手側の端部に配置されている。また、搬送ロボット120の左手側には基台130が配置されている。この基台130のうち、一方側の領域(図1の右手側の領域)が、搬送ロボット120との間で基板Wの受け渡しを行う基板受渡領域となっており、他方側の領域(図1の左手側の領域)が基板Wへのパターン描画を行うパターン描画領域となっている。
【0031】
基板受渡領域とパターン描画領域の境界位置では、ヘッド支持部140が基台130から立設しており、ヘッド支持部140によって光学ヘッド3が支持されている。こうして、基台130の上側に光学ヘッド3が配置される。光学ヘッド3は、本発明に係る空間光変調器によって基板Wに光を照射することで基板Wを露光する。この光学ヘッド3の構成および動作については、後で詳述する。
【0032】
また、光学ヘッド3の下方には、基板Wを保持するステージ150が配置されている。このステージ150は、基台130上に配置されたステージ移動機構151により支持されており、ステージ移動機構151は、x方向、y方向およびθ方向にステージ150を移動させる。ここで、θ方向は、z方向に平行な回転軸を中心とする回転方向である。つまり、ステージ移動機構151は、x軸ステージ、y軸ステージおよびθ軸ステージを積奏した構成を具備し、ステージ150を水平面内で二次元的に移動させる。なお、このようなステージ移動機構151としては、従来多用されているx−y−θ軸移動機構を用いることができる。
【0033】
光学ヘッド3はヘッド支持部140に固定されており、光学ヘッド3の直下を移動する基板Wに光を照射(落射)することでステージ150に保持された基板Wにパターンを描画する。なお、ここの例では、光学ヘッド3はy方向に並ぶ複数のチャンネルから光を同時に照射可能となっており、y方向が「副走査方向」に相当している。また、ステージ150をx方向に移動させることで基板Wに対してパターンを2次元的に描画することが可能となっており、x方向が「主走査方向」に相当している。
【0034】
かかるパターン描画装置100は、装置各部を制御する制御部190を有する。この制御部190は、ステージ移動機構151および光学ヘッド3を制御することで、ステージ150に保持された基板Wをx方向に移動させつつ光学ヘッド3から基板Wに光を照射する主走査を実行する。特に、制御部190は、基板Wのうち、主走査において露光する領域(露光領域)と露光しない領域(非露光領域)とを示すラスターデータDrを生成し、ラスターデータDrに応じたタイミングで光学ヘッド3に光を変調することで、パターンを基板Wに描画する。
【0035】
次に光学ヘッド3の構成および動作について説明する。図2は光学ヘッドの内部構成を簡略化して示す図であり、光学ヘッド3の光軸OAおよび副走査方向yに沿って光学ヘッド3をx方向から見た場合の光学ヘッド3の内部構成を示す。
【0036】
この光学ヘッド3は、所定の波長(例えば、830、635、405あるいは355ナノメートル(nm))の光ビームを出射する半導体レーザなどにより構成された光源31を有する。なお、355nmのレーザ光を用いる場合は、光源31は、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザの3倍高調波を用いる固体レーザ光源である。この光源31はコリメータレンズ(図示省略)を有しており、半導体レーザから出射される光ビームはコリメータレンズを介して平行光とされて図示を省略するミラーを介して照明光学系32に入射する。
【0037】
この照明光学系32は3枚のシリンドリカルレンズ321〜323により構成されており、光源31から出射してきた光ビームはシリンドリカルレンズ321〜323の順で通過して空間光変調器5に入射する。これらのうちシリンドリカルレンズ321はy方向にのみビーム拡大機能(負の集光機能)を有しており、シリンドリカルレンズ321を通過した光は光軸OAに垂直な光束断面が円形から次第にy方向に長い楕円形へと変化する。一方、光軸OAおよびy方向に垂直なx方向に関して、シリンドリカルレンズ321を通過した光の光束断面の幅は一定とされる。また、シリンドリカルレンズ322はy方向にのみ正の集光機能を有しており、シリンドリカルレンズ321を通過した光ビームはシリンドリカルレンズ322によりビーム整形される。つまり、シリンドリカルレンズ322を通過した光は、光束断面がy方向に長い一定の大きさの楕円形とされてシリンドリカルレンズ323へと入射する。このシリンドリカルレンズ323は、x方向にのみ正の集光機能を有し、x方向のみに着目した場合には、シリンドリカルレンズ323を通過した光Liは集光しつつ、空間光変調器5の入射面331aへと入射する。また、y方向に関しては、シリンドリカルレンズ323からの光ビームは平行光ビームとして空間光変調器5に入射する。
【0038】
空間光変調器5に入射した光は、空間光変調器5によって変調されて射出される。この空間光変調器5は、後述するように光回折機能を有し、基板Wに描画するパターンを示すパターンデータに応じた変調信号に基づき光を回折することで変調した光を射出する。
【0039】
空間光変調器5の射出側(図2の右手側)には、x方向にのみ正の集光機能を有するシリンドリカルレンズ34、レンズ351、アパーチャ3521を有するアパーチャ板352、レンズ353がこの順序で配置されている。シリンドリカルレンズ34はx方向にのみ正の集光機能を有しており、空間光変調器5からの0次光Loは、シリンドリカルレンズ34によりx方向に関して平行な光とされ、正の集光機能を有するレンズ351に入射する。
【0040】
レンズ351の後側焦点はアパーチャ3521に一致している。そのため、空間光変調器5で回折されずにレンズ34を通過してy方向およびx方向の双方に平行とされる0次光Loは、図2中に細い実線にて示すように、レンズ351を介してアパーチャ3521に集光し、当該アパーチャ3521を通過してレンズ353に入射する。このレンズ353の前側焦点はアパーチャ3521に一致するとともに、レンズ353の後側焦点はステージ160に保持された基板Wの表面上に位置する。したがって、0次光Loはレンズ353を介して基板Wの表面上に照射され、これによって基板Wが露光される。一方、回折光Ldは、図2中に破線にて示すように、光軸OAに対して所定角度だけ傾いて空間光変調器5から出射されるため、アパーチャ3521から離れた位置、すなわちアパーチャ板352の表面で遮蔽される。
【0041】
このように、レンズ351、アパーチャ板352およびレンズ353により、いわゆるシュリーレン光学系35が構成されている。このシュリーレン光学系35は両側テレセントリック光学系と同等の配置であり、図2に示すように、複数のチャンネルを有する光学ヘッド3で基板Wに露光する場合にも、その露光面(基板Wの表面)に対して各チャンネルの0次光Loの主光線(図2中の2点鎖線)は垂直であり、露光面のピント方向zの変動に対して倍率の変化を受けない。その結果、高精度な露光が可能となる。
【0042】
図3は本発明に係る空間光変調器の構成を模式的に示す図である。図3に示すように、空間光変調器5は平板状の空間光変調素子51を備える。ここの例では、空間光変調素子51は、x方向、y方向あるいはz方向に平行な各辺で構成された直方体形状を有する。つまり、空間光変調素子51は、それぞれy方向およびz方向に平行な平面である第1主面521および第2主面522を有し、第1主面521および第2主面522がx方向に間隔を空けて対向する。さらに、空間光変調素子51は、それぞれx方向およびy方向に平行な平面である入射面531および射出面532を有し、入射面531および射出面532がz方向に間隔を空けて対向する。そして、光源31(図2)からz方向へ射出された光は、入射面531に入射し、空間光変調素子51の内部を通過してから射出面532から射出される。
【0043】
また、空間光変調器5は、空間光変調素子51の第1主面521に取り付けられた複数(5個)の第1電極571を備える。これら複数の第1電極531はy方向に等間隔を空けて配列されており、互いに同一の形状を有する。具体的には、各第1電極531は、x方向、y方向およびz方向のいずれかに平行な辺で構成された直方体形状を有し、z方向に延設されている。さらに、空間光変調素子51は、第2主面522に取り付けられた単一の第2電極572を備える。この第2電極572は、x方向、y方向およびz方向のいずれかに辺で構成されたる直方体形状を有する。特にx方向からの平面視において、第2電極572は複数(5個)の第1電極571に重複するようにy方向に延設されている。つまり、z方向において第2電極572の両端は複数(5個)の第1電極571それぞれの両端に一致し、y方向において第2電極572の両端の間に複数(5個)の第1電極571が位置する。このように、空間光変調素子51は、第2電極572と、複数の第1電極571のそれぞれとの間に配置されている。
【0044】
さらに、空間光変調器5は、空間光変調素子51を制御する制御部59を備える。この制御部59は演算機能を有するプロセッサーであり、第1電極571および第2電極572のそれぞれに電圧を印加することで、第1電極571と第2電極572との間の電位差を制御する。特に、制御部59は、基板Wに描画するパターンを示すラスターデータDrに基づき、この電位差を制御する。
【0045】
図4図3の空間光変調器が備える空間光変調素子の第1例の構成を模式的に示す図である。図4に示すように、空間光変調素子51は、例えばリチウムナイオベート(LiNbO)の単結晶で形成された電気光学結晶基板であり、この電気光学結晶基板中には複数(3個)の分極反転構造54、55、56が構成されている。これら3個の周期分極反転構造54、55、56はz方向に直列に配列され、空間光変調素子51に入射した光は、周期分極反転構造54、55、56をこの順に通過する。なお、本明細書では、強誘電体結晶の結晶軸(光学軸とも呼ぶ)のZ軸を、xyz座標系のx方向と一致させている。また、結晶軸のZ軸を大文字の「Z」で表記するとともに、xyz座標系のz方向を小文字の「z」で表記することで、これらを区別している。
【0046】
周期分極反転構造54は直方体形状を有し、周期分極反転構造54の光の入射面(入射面531に相当)および射出面はx方向およびy方向に平行である。この周期分極反転構造54は、互いに分極の向きが反転した分極域541、542が周期Λ54で周期的にy方向に並ぶ。分極域541は、第2主面522から第1主面521に向いて、換言すれば第2電極572から第1電極571に向いて−x方向に分極し、分極域542は、第1主面521から第2主面522に向いて、換言すれば第1電極571から第2電極572に向いて+x方向に分極する。なお、図4において、「周期分極反転構造54」の欄では矢印で分極の向きが示され、「空間光変調素子51」の欄ではハッチングの有無で分極の向きが示されている(ハッチングが付された区域が第1主面521側へ分極し、ハッチングが付されていない区域が第2主面522側へ分極する)。また、y方向において、分極域541、542のそれぞれは、z方向に平行に延設された四角柱形状を有し、互いに等しい幅(=Λ54/2)を有する。つまり、周期Λ54において分極域541、542のそれぞれが占める幅の割合は1対1である(すなわち、周期Λ54における分極域541、542のデューティーは50%である)。なお、y方向において各第1電極571の幅は周期Λ54より広く、ここの例では、周期Λ54の複数倍以上である。
【0047】
周期分極反転構造55は直方体形状を有し、周期分極反転構造55の光の入射面および射出面はx方向およびy方向に平行である。この周期分極反転構造55は、互いに分極の向きが反転した分極域551、552が周期Λ55で周期的にy方向に並ぶ。分極域551は、第2主面522から第1主面521に向いて、換言すれば第2電極572から第1電極571に向いて−x方向に分極し、分極域552は、第1主面521から第2主面522に向いて、換言すれば第1電極571から第2電極572に向いて+x方向に分極する。なお、図4において、「周期分極反転構造55」の欄では、上述と同様に、矢印で分極の向きが示され、「空間光変調素子51」の欄ではハッチングの有無で分極の向きが示されている。また、y方向において、分極域551、552のそれぞれは、z方向に平行に延設された四角柱形状を有し、互いに等しい幅(=Λ55/2)を有する。つまり、周期Λ55において分極域551、552のそれぞれが占める幅の割合は1対1である(すなわち、周期Λ55における分極域551、552のデューティーは50%である)。なお、y方向において各第1電極571の幅は周期Λ55より広く、ここの例では、周期Λ55の複数倍以上である。
【0048】
周期分極反転構造56は直方体形状を有し、周期分極反転構造56の光の入射面および射出面(射出面532に相当)はx方向およびy方向に平行である。この周期分極反転構造56は、互いに分極の向きが反転した分極域561、562が周期Λ56で周期的にy方向に並ぶ。分極域561は、第2主面522から第1主面521に向いて、換言すれば第2電極572から第1電極571に向いて−x方向に分極し、分極域562は、第1主面521から第2主面522に向いて、換言すれば第1電極571から第2電極572に向いて+x方向に分極する。なお、図4において、「周期分極反転構造56」の欄では、上述と同様に、矢印で分極の向きが示され、「空間光変調素子51」の欄ではハッチングの有無で分極の向きが示されている。また、y方向において、分極域561、562のそれぞれは、z方向に平行に延設された四角柱形状を有し、互いに等しい幅(=Λ56/2)を有する。つまり、周期Λ56において分極域561、562のそれぞれが占める幅の割合は1対1である(すなわち、周期Λ56における分極域561、562のデューティーは50%である)。なお、y方向において各第1電極571の幅は周期Λ56より広く、ここの例では、周期Λ56の複数倍以上である。
【0049】
図4に示すように、周期Λ54と周期Λ56とは等しく、周期Λ55は周期Λ54および周期Λ56それぞれの2倍である。つまり、空間光変調素子51に存在する周期分極反転構造54、55、56の周期Λ54、Λ55、Λ56のうち、周期Λ54および周期Λ56が最小周期となり、周期Λ55は、最小周期Λ54、Λ56の2以上の整数倍(2倍)となる。つまり、ここの例では、最小周期Λ54、Λ56を有する周期分極反転構造54、56の個数Na(Naは1以上の整数)は「2」であり、最小周期Λ54(Λ56)の2倍以上の整数倍の周期Λ55を有する周期分極反転構造55の個数Nbは「1」である。
【0050】
また、周期分極反転構造54、56のうち、一方の周期分極反転構造54において分極域541と分極域542とが最小周期Λ54で並ぶ位相と、他方の周期分極反転構造56において分極域561と分極域562とが周期Λ56で並ぶ位相とが、最小周期Λ54、Λ56の半分だけずれている。
【0051】
そして、x方向から見て、周期分極反転構造55における分極域551と分極域552との境界B55を通るz方向に平行な仮想直線Vが、周期分極反転構造54における分極域541と分極域542との境界B54と、周期分極反転構造56における分極域561と分極域562との境界B56と重なるといった関係(境界関係)が成立する。この境界関係は、周期分極反転構造55に存在する複数の境界B55のそれぞれについて成立する。
【0052】
上述のように、空間光変調素子51の第1主面521には、複数の第1電極571がy方向に配列されている。x方向において第1電極571に対向する領域がチャンネルとして機能し、複数の第1電極571にそれぞれ対応して複数のチャンネルが設けられている。また、制御部59は、複数の第1電極571のそれぞれに、独立して(すなわち、個別に)電圧を印加することができる。なお、制御部59は、第2電極572に対してグランド電圧(0ボルト)を与える。
【0053】
第1電極571にグランド電圧と異なる電圧が印加されて、当該第1電極571と第2電極572との間にゼロより大きな電位差が生じると、周期分極反転構造54、55、56のそれぞれは当該第1電極571に対向する領域(チャンネル)に回折格子を生成する。この回折格子は、第1電極571と第2電極572との間の電位差に応じた回折効率を有する。そして、周期分極反転構造54、55、56それぞれの回折格子は、ラマンナス回折により光をy方向に回折する。つまり、周期分極反転構造54の回折格子は、入射面531から入射した光をラマンナス回折により回折して周期分極反転構造55へ射出し、周期分極反転構造55の回折格子は、周期分極反転構造54から入射した光をラマンナス回折により回折して周期分極反転構造56へ射出し、周期分極反転構造56の回折格子は、周期分極反転構造55から入射した光をラマンナス回折により回折して射出面532から射出する。こうして、空間光変調素子51から回折光Ld(図2)が射出される。
【0054】
一方、第1電極571にグランド電圧が印加されている場合は、当該第1電極571と第2電極572との間の電位差はゼロとなり、周期分極反転構造54、55、56のそれぞれは当該第1電極571に対向する領域(チャンネル)に回折格子を生成しない。そのため、光は周期分極反転構造54、55、56により回折されることなく、これらを通過する。こうして、空間光変調素子51から0次光Lo(図2)が射出される。
【0055】
つまり、制御部59は、第1電極571と第2電極572との間にゼロより大きい電位差を印加することで、当該第1電極571に対応するチャンネルによって光を回折して、当該チャンネルに入射した光の基板Wへの入射を遮断する。一方、制御部59は、第1電極571と第2電極572との間の電位差をゼロにすることで、当該第1電極571に対応するチャンネルに入射した光を基板Wに照射する。こうして、制御部59は、空間光変調素子51により光変調を実行する。続いては、制御部59による光変調動作について説明する。
【0056】
図5は空間光変調素子を用いて実行される光変調動作の第1例を模式的に示すタイミングチャートである。図5の「ラスターデータDr」の欄では、ラスターデータDrが時間軸tで表されている。つまり、ラスターデータDrは、主走査における露光領域と非露光領域とを示すデータである。換言すれば、「ラスターデータDr」の欄に示すように、ラスターデータDrは、基板Wと光学ヘッド3とを相対的に移動させる主走査において、光学ヘッド3から基板Wに光を照射するタイミング(照射タイミング)と、光を照射しないタイミング(非照射タイミング)とを示す。
【0057】
一方、空間光変調器5は、空間光変調素子51に回折格子を生成せずに光を通過させることで基板Wへ光を照射し、空間光変調素子51に回折格子を生成して光を回折することで基板Wへの光の照射を遮断する。つまり、照射タイミングは、空間光変調素子51に入射した光を回折しないオフ操作Soffの実行タイミングに相当し、非照射タイミングは、空間光変調素子51に入射した光を回折格子により回折するオン操作Sonの実行タイミングに相当する。このように、ラスターデータDrは、オン操作Son(光の非照射)およびオフ操作Soff(光の照射)それぞれの実行タイミングを時系列で並べて示すデータ信号に相当する。なお、「ラスターデータDr」の欄に示すように、オフ操作Soffは、時系列において隣り合う2回のオン操作Sonの間に設けられ、オン操作Sonとオフ操作Soffとが交互に並ぶ。
【0058】
これに対して、制御部59は、制御部190から取得したラスターデータDrに基づき、第1電極571と第2電極572との間の電位差Eを制御する。この際、図5の「電位差パターン」の欄に示すように、制御部190は、第1高圧操作Son1と第2高圧操作Son2とを用いて電位差Eの印加を実行できる。ここで、第1高圧操作Son1は、第2電極572に与えたグランド電位(=0ボルト)よりも高い電圧E1(すなわち、正の電圧)を、ラスターデータDrが示すオン操作Sonの実行期間を通じて継続的に第1電極571に印加して回折格子を生成する。第2高圧操作Son2は、第2電極572に与えたグランド電位(=0ボルト)よりも低い電圧E2(すなわち、負の電圧)を、ラスターデータDrが示すオン操作Sonの実行期間を通じて継続的に第1電極571に印加して回折格子を生成する。ここで、第1高圧操作Son1および第2高圧操作Son2のそれぞれにおける電位差E1、E2の絶対値はいずれも値Ea(>0)であり、互いに等しい。なお、第1高圧操作Son1と第2高圧操作Son2としては、例えば数ボルトから100ボルト程度の電圧を印加する。
【0059】
つまり、ラスターデータDrは複数のオン操作Sonを示す。これに対して、制御部59は、複数のオン操作Sonのうち、一部のオン操作Sonを第1高圧操作Son1により実行し、他部のオン操作Sonを第2高圧操作Son2により実行する。換言すれば、第1高圧操作Son1および第2高圧操作Son2の両方が複数のオン操作Sonに含まれるように、制御部59はオン操作Sonを実行する。特に、ここの例では、制御部59は、第1高圧操作Son1と第2高圧操作Son2とを交互に実行することで、ラスターデータDrが示す複数のオン操作Sonを実行する。なお、複数のオン操作とは、時間経過に対して時系列的にオン操作を行うことをいう。
【0060】
以上に説明した実施形態では、空間光変調素子51に入射した光を回折格子により回折する複数のオン操作Sonの実行タイミングを時系列で示すラスターデータDr(データ信号)に基づき、空間光変調素子51を挟む第1電極571と第2電極572との間の電位差Eを制御することで空間光変調素子51に入射する光が変調される。この際、複数のオン操作Sonは、第2電極572の電圧よりも高い電圧を第1電極571に継続的に印加して回折格子を生成するオン操作Sonである第1高圧操作Son1と、第1電極571の電圧よりも高い電圧を第2電極572に継続的に印加して回折格子を生成するオン操作Sonである第2高圧操作Son2とを含む。このように複数のオン操作Sonに第1高圧操作Son1と第2高圧操作Son2とを混在させることで、複数のオン操作Sonの全てを、第1高圧操作Son1あるいは第2高圧操作Son2のいずれかで実行した場合と比較して、空間光変調素子51への電荷の残留を抑制できる。しかも、オン操作Sonの実行中は、空間光変調素子51に印加される電位差Eは、第1電極571側が高い状態(第1高圧操作Son1)か、第2電極572側が高い状態(第2高圧操作Son2)かのいずれかに維持される。つまり、空間光変調素子51に印加される電位差Eが繰り返し反転することがない。そのため、オン操作Sonの実行中に回折されずに空間光変調素子51を通過する光の発生を抑えることができる(つまり、消光比を確保できる)。こうして、空間光変調素子51への電荷の残留を抑えつつ光変調を適切に行うことが可能となっている。
【0061】
また、特許文献1のように、ラスターデータDrよりも高い周波数の交流信号をラスターデータDrにより振幅変調させた振幅変調信号を印加することなく、空間光変調素子51の電荷の残留を抑えることができる。そのため、第1電極571を駆動する制御部59のアンプに要求されるスルーレートは比較的低く、安価なアンプにより制御部59を構成できるといった利点もある。
【0062】
また、第1高圧操作Son1により生じる電位差E1の絶対値Eaと、第2高圧操作Son2により生じる電位差E2の絶対値Eaとが等しい。かかる構成では、第1高圧操作Son1での光の回折効率と、第2高圧操作Son2での光の回折効率との差を抑えることができ、光変調をより適切に実行することができる。
【0063】
上述のように、第1電極571側へ分極する分極域541、551、561と、第2電極572側へ分極する分極域542、552、562とがy方向に周期的に並ぶ周期分極反転構造54、55、56を有する空間光変調素子51を用いることができる。ただし、後に具体例を示して説明するように、周期分極反転構造54、55、56の構成によっては、空間光変調素子51に生成される回折格子の回折効率の変化が、電位差Eの印加に対して非対称(つまり、回折効率の変化を横軸としたとき、電位差Eがゼロの縦軸に対して非対称)となる場合がある。このような場合、第1高圧操作Son1と第2高圧操作Son2とで回折格子の回折効率が大きく異なり、光変調を適切に行うことができないおそれがある。
【0064】
これに対して、空間光変調素子51では、複数の周期分極反転構造54、55、56がz方向に並び、オン操作Sonでは、複数の周期分極反転構造54、55、56のそれぞれが電位差Eに応じた回折格子を生成して、これらに順に入射する光を回折格子により回折する。これら複数の周期分極反転構造54、55、56は、最小周期Λ54、Λ56を有する周期分極反転構造54、56と、最小周期Λ54、Λ56の2以上の整数倍の周期Λ55を有する周期分極反転構造55とを含む。そして、x方向から見て、周期分極反転構造55における分極域551と分極域552との境界B55を通るz方向に平行な仮想直線Vが、周期分極反転構造54における分極域541と分極域542との境界B54と、周期分極反転構造56における分極域561と分極域562との境界B56と重なるように、周期分極反転構造54、55、56が構成されている。かかる構成では、空間光変調素子51に生成される回折格子の回折効率が、電位差Eの印加に対して比較的対称に変化する。その結果、第1高圧操作Son1と第2高圧操作Son2との回折格子の回折効率の差を抑えて、光変調をより適切に行うことができる。
【0065】
また、複数の周期分極反転構造54、55、56のうち、周期分極反転構造55では、分極域551と分極域552とが最小周期Λ54、Λ56の2倍の周期Λ55で並ぶ。かかる構成では、最小周期Λ54、Λ56の周期分極反転構造54、56と、最小周期Λ54、Λ56の2倍の周期Λ55の周期分極反転構造55の2種類によって、空間光変調素子51を簡便に構成することができる。
【0066】
また、複数の第1電極571がy方向に並び、制御部59は、複数の第1電極571に個別に電圧を与えて電位差Eを発生させる。かかる構成では、空間光変調素子51のうち、複数の第1電極571のそれぞれに対向する領域をチャンネルとして機能させて、多チャンネル化を実現することができる。チャンネルとして機能させるには、第1電極571のy方向への幅と、周期分極反転構造54、55、56のy方向の幅との関係を、論文(Masahide Okazaki, and Toshiaki Suhara, “Highperformance 1024-pixel EO spatial light modulator using cascaded periodically-poled Raman-Nath gratings,” IEEE/OSA Journal of Lightwave Technology, vol. 33, no. 24, pp. 5195-5200, Nov. 2015.)で示すように設定するとよい。
【0067】
また、制御部59は、第1高圧操作Son1と第2高圧操作Son2とが交互に並ぶように制御を実行する。つまり、第1高圧操作Son1と第2高圧操作Son2とを交互に実行するといった簡便な制御によって、空間光変調素子51への電荷の残留を抑えつつ光変調を適切に行っている。
【0068】
図6図3の空間光変調器が備える空間光変調素子の第2例の構成を模式的に示す図である。ここでは、既述の例との差異点を主に説明することとし、共通点については相当符号を付して適宜説明を省略する。ただし、共通する構成を備えることで、既述の例と同様の効果を奏することは言うまでもない。かかる点は、後に示す空間光変調素子の各例についても同様である。
【0069】
空間光変調素子の第1例と第2例との差異は、周期分極反転構造54、56の位相である。つまり、第2例では、周期分極反転構造54、56のうち、一方の周期分極反転構造54において分極域541と分極域542とが最小周期Λ54で並ぶ位相と、他方の周期分極反転構造56において分極域561と分極域562とが周期Λ56で並ぶ位相とが一致する点で第1例と異なり、その他の点では第1例と共通する。
【0070】
この第2例では、第1例と同様に、x方向から見て、周期分極反転構造55における分極域551と分極域552との境界B55を通るz方向に平行な仮想直線Vが、周期分極反転構造54における分極域541と分極域542との境界B54と、周期分極反転構造56における分極域561と分極域562との境界B56と重なるといった境界関係が成立する。この境界関係は、周期分極反転構造55に存在する複数の境界B55のそれぞれについて成立する。
【0071】
そして、この第2例に係る空間光変調素子51に対して、図5に示す制御を実行できる。つまり、ラスターデータDrが示す複数のオン操作Sonに第1高圧操作Son1と第2高圧操作Son2とを混在させることで、空間光変調素子51への電荷の残留を抑制できる。しかも、オン操作Sonの実行中は、空間光変調素子51に印加される電位差Eは、第1電極571側が高い状態(第1高圧操作Son1)か、第2電極572側が高い状態(第2高圧操作Son2)かのいずれかに維持される。そのため、オン操作Sonの実行中に回折されずに空間光変調素子51を通過する光の発生を抑えて、消光比を確保できる。こうして、空間光変調素子51への電荷の残留を抑えつつ光変調を適切に行うことが可能となる。
【0072】
また、x方向から見て、周期分極反転構造55における分極域551と分極域552との境界B55を通るz方向に平行な仮想直線Vが、周期分極反転構造54における分極域541と分極域542との境界B54と、周期分極反転構造56における分極域561と分極域562との境界B56と重なるように、周期分極反転構造54、55、56が構成されている。したがって、第1高圧操作Son1と第2高圧操作Son2との回折格子の回折効率の差を抑えて、光変調をより適切に行うことができる。
【0073】
図7図3の空間光変調器が備える空間光変調素子の第3例の構成を模式的に示す図である。空間光変調素子の第2例と第3例との差異は、空間光変調素子51に構成される周期分極反転構造の個数が2個である点である。つまり、第3例の空間光変調素子51では、2個の周期分極反転構造54、55がz方向に直列に配列され、空間光変調素子51に入射した光は、周期分極反転構造54、55をこの順に通過する。
【0074】
図7に示すように、空間光変調素子51に存在する周期分極反転構造54、55の周期Λ54、Λ55のうち、周期Λ54が最小周期となり、周期Λ55は、最小周期Λ54の2以上の整数倍(2倍)となる。つまり、ここの例では、最小周期Λ54を有する周期分極反転構造54の個数Na(Naは1以上の整数)は「1」であり、最小周期Λ54の2倍以上の整数倍の周期Λ55を有する周期分極反転構造55の個数Nbは「1」である。
【0075】
そして、x方向から見て、周期分極反転構造55における分極域551と分極域552との境界B55を通るz方向に平行な仮想直線Vが、周期分極反転構造54における分極域541と分極域542との境界B54と重なるといった境界関係が成立する。この境界関係は、周期分極反転構造55に存在する複数の境界B55のそれぞれについて成立する。
【0076】
かかる構成では、第1電極571にグランド電圧と異なる電圧が印加されて、当該第1電極571と第2電極572との間にゼロより大きな電位差が生じると、周期分極反転構造54、55のそれぞれは当該第1電極571に対向する領域(チャンネル)に回折格子を生成する。したがって、周期分極反転構造54の回折格子は、入射面531から入射した光をラマンナス回折により回折して周期分極反転構造55へ射出し、周期分極反転構造55の回折格子は、周期分極反転構造54から入射した光をラマンナス回折により回折して射出面532から射出する。こうして、空間光変調素子51から回折光Ld(図2)が射出される。
【0077】
そして、この第3例に係る空間光変調素子51に対して、図5に示す制御を実行できる。つまり、ラスターデータDrが示す複数のオン操作Sonに第1高圧操作Son1と第2高圧操作Son2とを混在させることで、空間光変調素子51への電荷の残留を抑制できる。しかも、オン操作Sonの実行中は、空間光変調素子51に印加される電位差Eは、第1電極571側が高い状態(第1高圧操作Son1)か、第2電極572側が高い状態(第2高圧操作Son2)かのいずれかに維持される。そのため、オン操作Sonの実行中に回折されずに空間光変調素子51を通過する光の発生を抑えて、消光比を確保できる。こうして、空間光変調素子51への電荷の残留を抑えつつ光変調を適切に行うことが可能となる。
【0078】
また、x方向から見て、周期分極反転構造55における分極域551と分極域552との境界B55を通るz方向に平行な仮想直線Vが、周期分極反転構造54における分極域541と分極域542との境界B54と重なるように、周期分極反転構造54、55、56が構成されている。したがって、第1高圧操作Son1と第2高圧操作Son2との回折格子の回折効率の差を抑えて、光変調をより適切に行うことができる。
【0079】
図8図3の空間光変調器が備える空間光変調素子の第4例の構成を模式的に示す図である。空間光変調素子の第2例と第4例との差異は、空間光変調素子51に構成される周期分極反転構造の個数が1個である点である。つまり、第4例の空間光変調素子51では、1個の周期分極反転構造54が設けられ、空間光変調素子51に入射した光は、周期分極反転構造54を通過する。
【0080】
かかる構成では、第1電極571にグランド電圧と異なる電圧が印加されて、当該第1電極571と第2電極572との間にゼロより大きな電位差が生じると、周期分極反転構造54は当該第1電極571に対向する領域(チャンネル)に回折格子を生成する。したがって、周期分極反転構造54の回折格子は、入射面531から入射した光をラマンナス回折により回折して射出面532から射出する。こうして、空間光変調素子51から回折光Ld(図2)が射出される。
【0081】
そして、この第4例に係る空間光変調素子51に対して、図5に示す制御を実行できる。つまり、ラスターデータDrが示す複数のオン操作Sonに第1高圧操作Son1と第2高圧操作Son2とを混在させることで、空間光変調素子51への電荷の残留を抑制できる。しかも、オン操作Sonの実行中は、空間光変調素子51に印加される電位差Eは、第1電極571側が高い状態(第1高圧操作Son1)か、第2電極572側が高い状態(第2高圧操作Son2)かのいずれかに維持される。そのため、オン操作Sonの実行中に回折されずに空間光変調素子51を通過する光の発生を抑えて、消光比を確保できる。こうして、空間光変調素子51への電荷の残留を抑えつつ光変調を適切に行うことが可能となる。
【0082】
また、空間光変調素子51では、第1電極571へ分極する分極域541と、第2電極572へ分極する分極域542とがy方向に周期的に並ぶ単一の周期分極反転構造54が設けられる。そして、オン操作Sonでは、周期分極反転構造54が電位差Eに応じた回折格子を生成して、当該周期分極反転構造54に入射する光を回折格子により回折する。かかる構成では、空間光変調素子51に生成される回折格子の回折効率が、電位差Eの印加に対して比較的対称に変化する。その結果、第1高圧操作Son1と第2高圧操作Son2との回折格子の回折効率の差を抑えて、光変調をより適切に行うことができる。
【0083】
図9は空間光変調素子による光変調の制御例を示すフローチャートであり、このフローチャートは制御部59によって実行される。図9の光変調制御は、ラスターデータDrに含まれる複数のオン操作Sonのそれぞれを、第1高圧操作Son1および第2高圧操作Son2のいずれで実行するかを、これらの実行状況に基づき決定する。かかる光変調制御は、空間光変調素子51により光を変調する光変調動作の開始前に予め実行されてもよいし、光変調動作と並行して実行されてもよい。
【0084】
ステップS101では、ラスターデータDrに含まれる複数のオン操作Sonを時系列で順に数えた番号Mがゼロにリセットされ、ステップS102では、番号Mが1だけインクリメントされる。
【0085】
ステップS103では、M番目のオン操作Sonの開始予定時刻を起点に、当該開始予定時刻より前の所定期間での第1高圧操作Son1の累積実行時間T1が算出される。また、ステップS104では、M番目のオン操作Sonの開始予定時刻を起点に、当該開始予定時刻より前の所定期間での第2高圧操作Son2の累積実行時間T2が算出される。
【0086】
ステップS105では、第1高圧操作Son1の累積実行時間T1と、第2高圧操作Son2の累積実行時間T2とが比較されて、累積実行時間T1が累積実行時間T2以下であるかが判断される。累積実行時間T1が累積実行時間T2以下である場合(ステップS105で「YES」の場合)には、第1高圧操作Son1および第2高圧操作Son2のうち、M番目のオン操作Sonを第1高圧操作Son1により実行すると決定される(ステップS106)。一方、累積実行時間T1が累積実行時間T2より長い場合(ステップS105で「NO」の場合)には、第1高圧操作Son1および第2高圧操作Son2のうち、M番目のオン操作Sonを第2高圧操作Son2により実行すると決定される(ステップS107)。
【0087】
そして、ステップS108で番号Mが最大番号Mxに一致すると判断されるまで、ステップS105〜S108が繰り返される。ここで、最大番号Mxは、ラスターデータDrに含まれるオン操作Sonの個数に相当する。これによって、ラスターデータDrに含まれる複数のオン操作Sonのそれぞれを、第1高圧操作Son1および第2高圧操作Son2のいずれで実行するかが決定される。
【0088】
図10図9の光変調制御に従って実行される具体例を模式的に示すタイミングチャートである。つまり、図10に符号「M」が付されたM番目のオン操作Son(M)について、ステップS103〜S106を実行する例を説明する。
【0089】
ステップS103では、M番目のオン操作Son(M)の開始予定時刻tmを起点に、当該開始予定時刻tmより前の所定期間Pでの第1高圧操作Son1の累積実行時間T1が算出される。ここの例では、所定期間P内のオン操作Son1−1および第1高圧操作Son1−2のそれぞれに要する時間の合計が累積実行時間T1として算出される。ステップS104では、当該所定期間Pでの第2高圧操作Son2の累積実行時間T2が算出される。ここの例では、所定期間P内のオン操作Son2−1に要する時間が累積実行時間T2として算出される。
【0090】
ステップS105では、累積実行時間T1と累積実行時間T2とが比較される。ここの例では、累積実行時間T1が累積実行時間T2より短いため、ステップS105で「YES」と判断される。その結果、第1高圧操作Son1および第2高圧操作Son2のうち、M番目のオン操作Son(M)を第1高圧操作Son1により実行すると決定される(ステップS106)。
【0091】
ここで示した光変調の制御例では、制御部59は、ラスターデータDrが示す複数のオン操作Sonのうちの一のオン操作Son1(M)を、第1高圧操作Son1および第2高圧操作Son2のいずれにするかを、一のオン操作Son1(M)より前における第1高圧操作Son1および第2高圧操作Son2の実行状況を判断した結果に基づき決定する。かかる構成では、第1高圧操作Son1および第2高圧操作Son2のうち、一のオン操作Son1(M)より以前のこれらの実行状況に応じた一方で、当該一のオン操作Son1(M)を実行できる。よって、空間光変調素子51の電荷の残留をより効果的に抑えることができる。
【0092】
また、制御部59は、一のオン操作Son1(M)より前の所定期間Pにおける第1高圧操作Son1および第2高圧操作Son2それぞれの累積実行時間T1、T2を比較する。そして、この比較結果に基づき、一のオン操作Son(M)を、第1高圧操作Son1および第2高圧操作Son2のいずれにするかが決定される。かかる構成では、第1高圧操作Son1および第2高圧操作Son2のうち、一のオン操作Son2(M)より以前のこれらの累積実行時間T1、T2に応じた一方で、当該一のオン操作Son(M)を実行できる。よって、空間光変調素子51の電荷の残留をより効果的に抑えることができる。
【0093】
また、制御部59は、一のオン操作Son(M)を、第1高圧操作Son1および第2高圧操作Son2のうち、累積実行時間T1、T2が少ないほうの一方にすると決定する。これによって、空間光変調素子51の電荷の残留をより効果的に抑えることができる。
【0094】
図11図1のパターン描画装置における光変調動作の実行タイミングの一例を示す図である。上述の通り、パターン描画装置100では、ステージ150に保持された基板Wをx方向に移動させつつ光学ヘッド3から基板Wに光を照射する主走査を実行する。ただし、y方向において、1度の主走査でパターンを描画できる範囲は基板Wのうちの描画対象範囲より狭い。そのため、基板Wの描画対象範囲の全体に1度の主走査でパターンを描画することはできない。そこで、パターン描画装置100は、複数の主走査(光変調動作)を間欠的に実行し、光変調動作の停止中に光学ヘッド3に対して基板Wをy方向に移動させる(副走査)。これによって、基板Wの描画対象範囲の全体にパターンを描画する。
【0095】
また、制御部59は、連続して実行される2回の光変調動作の間の期間Δt、すなわち光変調動作の停止期間Δtに、副走査と並行してディスチャージを実行する。これによって、光変調動作とディスチャージとが交互に実行される。光変調動作では、制御部59は、光源31をオンにして光源31から空間光変調器5に光を射出しつつ、空間光変調器5によって光を変調して、基板Wにパターンを描画する。一方、光変調動作が停止すると、制御部59は光源31をオフにして光源31を消灯する。続いて、制御部59は、空間光変調素子51から電荷を除去するディスチャージを実行する。かかるディスチャージは、図12のディスチャージ信号を各第1電極571に印加することで実行される。
【0096】
図12はディスチャージ信号の一例を模式的に示すタイミングチャートである。このディスチャージ信号は、グランド電圧を中心に振動しつつ時間経過とともに減衰する電圧信号である。かかるディスチャージ信号が第1電極571に印加されることで、第1電極571と第2電極572との間の電位差Eが振動して、第1電極571の電圧と第2電極572の電圧とが繰り返し反転しつつ、当該電位差Eの振幅が時間経過とともに減衰する。
【0097】
なお、ディスチャージ信号の周波数は、ラスターデータDrの周波数よりも低く、例えば、ラスターデータDrの周波数の10分の1以下である。また、ディスチャージ信号の最大振幅の絶対値は、上記の絶対値Eaに等しい。
【0098】
このように、制御部59は、光変調動作を実行していない停止期間Δtに、空間光変調素子51から電荷を除去するディスチャージを実行する。かかる構成では、光変調動作を実行していない停止期間Δtを有効利用して、空間光変調素子51から電荷を除去することができる。
【0099】
また、ディスチャージでは、第1電極571の電圧と第2電極572の電圧とが繰り返し反転するように電位差Eを振動させつつ、電位差Eの振動の振幅を時間経過とともに減衰させる。かかる構成では、空間光変調素子51では、電荷が第1電極571側に偏った状態と電荷が分極域562に偏った状態とが繰り返し発生しつつ、電荷の偏りが時間経過とともにゼロに収束する。こうして、ディスチャージによって、空間光変調素子51から電荷を効果的に除去することができる。
【0100】
このように上述の実施形態では、パターン描画装置100が本発明の「描画装置」の一例に相当し、光源31が本発明の「光源」の一例に相当し、ステージ150が本発明の「支持部」の一例に相当し、空間光変調器5が本発明の「空間光変調器」の一例に相当し、第1電極571が本発明の「第1電極」の一例に相当し、第2電極572が本発明の「第2電極」の一例に相当し、空間光変調素子51が本発明の「光学素子」の一例に相当し、制御部59が本発明の「制御部」の一例に相当し、オン操作Sonが本発明の「オン操作」の一例に相当し、オフ操作Soffが本発明の「オフ操作」の一例に相当し、ラスターデータDrが本発明の「データ信号」の一例に相当し、第1高圧操作Son1が本発明の「第1高圧操作」の一例に相当し、第2高圧操作Son2が本発明の「第2高圧操作」の一例に相当し、周期分極反転構造54、55、56のそれぞれが本発明の「周期分極反転構造」の一例に相当し、分極域541、551、561のそれぞれが本発明の「第1分極域」の一例に相当し、分極域542、552、562のそれぞれが本発明の「第2分極域」の一例に相当し、y方向が本発明の「配列方向」の一例に相当し、z方向が本発明の「厚さ方向」の一例に相当する。
【0101】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、空間光変調素子51の具体的な構成は図4図6図8に示した例に限られない。したがって、これらの図に示した周期分極反転構造において、第1電極571側に分極する分極域と、第2電極572側に分極する分極域とを置き換えた(換言すれば、反転させた)構成を具備するように、空間光変調素子51を構成してもよい。かかる空間光変調素子51も上述の境界関係を満たす。
【0102】
また、空間光変調素子51に構成される周期分極反転構造の個数は、上記の1、2あるいは3個に限られず、4個以上でもよい。
【0103】
また、周期分極反転構造で互いに反転する分極域が配列される周期は、上記の例に限られない。したがって、例えば周期Λ55が周期Λ54の3倍以上であってもよい。
【0104】
また、空間光変調素子51の周期分極反転構造による光の回折態様はラマンナス回折に限られず、入射する光に対して回折格子をブラッグ角だけ傾けてブラッグ回折としてもよい。
【0105】
また、ディスチャージを実行するタイミングは、上記の副走査の際に限られない。例えば、ドラムの周面にシート状の感光材料を巻き付けた感光体ドラムを回転させながら光変調動作を実行することで、感光材料にパターンを描画する装置では、感光体ドラムの周面の一部は、感光材料の端を繋ぐ継ぎ目となる。かかる継ぎ目にはパターンを描画できないため、光変調動作はこのパターンを挟んで間欠的に実行され、光変調動作の停止期間Δtが生じる。そこで、この停止期間Δtにディスチャージを実行してもよい。
【0106】
また、空間光変調素子51に印加するディスチャージ信号は、図12の例に限られない。したがって、ディスチャージ信号の波形は、矩形状に限られず、正弦波でもよい。さらに、ディスチャージ信号の周波数や振幅も適宜変更できる。
【0107】
また、空間光変調素子51のディスチャージの具体的な方法は、上記の例に限られない。したがって、ディスチャージ信号を印加するのに代えて、第1電極571に第2電極572と同じ直流電圧、すなわちグランド電圧を与えることでディスチャージを行ってもよい。
【0108】
また、第1電極571の個数や構成を適宜変更してもよい。さらに、上記の例では、複数の第1電極571に対して共通の第2電極572が設けられている。しかしながら、かかる第2電極572の配設態様を変更してもよい。
【0109】
図13は第1電極に対する第2電極の配設態様の変形例を模式的に示す図であり、図14図13の第1電極および第2電極への電圧の印加態様を模式的に示すタイミングチャートである。図13に示すように、複数の第1電極571のそれぞれに対向する複数の第2電極572が空間光変調素子51の第2主面522に設けられている。そして、空間光変調素子51では、互いに対向する第1電極571と第2電極572との間にチャンネルが形成される。
【0110】
図14に示すように、第1高圧操作Son1では、0ボルトより高い正の電圧E11を第1電極571に印加するとともに、0ボルトより低い負の電圧E12を第2電極572に印加することで、第2電極572の電圧よりも高い電圧を第1電極571に印加する。また、第2高圧操作Son2では、0ボルトより低い負の電圧E21を第1電極571に印加するとともに、0ボルトより高い正の電圧E22を第2電極572に印加することで、第1電極571の電圧よりも高い電圧を第2電極572に印加する。ここで、電圧E11の絶対値、電圧E12の絶対値、電圧E21の絶対値および電圧E22の絶対値は等しい。
【0111】
つまり、制御部59は、0ボルトに対して互いに反転した電圧を第1電極571および第2電極572に印加することで、第1高圧操作Son1および第2高圧操作Son2を実行する。かかる構成では、第1電極571および第2電極572を駆動する制御部59のアンプに要求されるスルーレートは比較的低く、安価なアンプにより制御部59を構成できるといった利点がある。
【0112】
ところで、上記の空間光変調素子51は、当該空間光変調素子51に生成される回折格子の回折効率が、第1電極571と第2電極572との間の電位差Eの印加に対して対称に変化する構成を備える。かかる空間光変調素子51で光を変調することで、消光比も当該電位差Eの印加に対して対称に変化する。続いては、かかる消光比のシミュレーション結果について説明する。
【0113】
図15は3個の周期分極反転構造を有する空間光変調素子の消光比のシミュレーション結果を示す図であり、図16は同シミュレーションで用いられた空間光変調素子の一例を模式的に示す図である。図16の空間光変調素子51は、上記の境界関係を満たさない。
【0114】
図15において、離散的な点で表された結果Raは、図16に示した境界関係を満たさない空間光変調素子51の消光比であり、電位差Eの変化に対して対称ではない。一方、図15において、近似曲線が付された散布図で示される結果Rbおよび結果Rcはそれぞれ、図4に示す空間光変調素子51の消光比および図6に示す空間光変調素子51の消光比である。これらの消光比は、電位差Eの変化について、0ボルトを中心に対称である。これらのシミュレーション結果から、上記の境界関係を満たす空間光変調素子51は、電位差Eの変化について対称な消光比、換言すれば回折効率を有することが分かる。
【0115】
図17は2個の周期分極反転構造を有する空間光変調素子の消光比のシミュレーション結果を示す図であり、図18は同シミュレーションで用いられた空間光変調素子の一例を模式的に示す図である。図18の空間光変調素子51は、上記の境界関係を満たさない。
【0116】
図17において、近似曲線が付された散布図で示される結果Raは、図18に示した境界関係を満たさない空間光変調素子51の消光比であり、電位差Eの変化に対して対称ではない。一方、図17において、近似曲線が付された散布図で示される結果Rbは、図7に示す空間光変調素子51の消光比である。この消光比は、電位差Eの変化について、0ボルトを中心に対称である。これらのシミュレーション結果から、上記の境界関係を満たす空間光変調素子51は、電位差Eの変化について対称な消光比、換言すれば回折効率を有することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は印加される電位差に応じて回折格子を生成する光学素子を利用して光を変調する空間光変調技術の全般に利用可能である。
【符号の説明】
【0118】
100…パターン描画装置(描画装置)
150…ステージ(支持部)
31…光源
5…空間光変調器
51…空間光変調素子(光学素子)
54、55、56…周期分極反転構造
541、551、561…分極域(第1分極域)
542、552、562…分極域(第2分極域)
571…第1電極
572…第2電極
59…制御部
Dr…ラスターデータ(データ信号)
Son…オン操作
Son1…第1高圧操作
Son2…第2高圧操作
Soff…オフ操作
y…y方向(配列方向)
z…z方向(厚さ方向)
図1
図2
図3
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図5
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図18