【実施例】
【0045】
比較例1−先行技術による高濃縮A1PI方法のフロー
Alpha-1 MP(米国特許第 6,462,180号)、Liquid Alpha(米国特許第 9,616,126号)、及びAlpha-1 HC(米国特許出願公開第2011/0237781号)方法は、濃縮するための典型的な循環(TFF)UF工程の後に、バッファー塩を取り除くための水でのダイアフィルトレーション(DF)工程を用い、A1PIを50mg/mlまで濃縮させ、50mg/mlのタンパク質への最終処方及び調整のためのバルクを調製する。処方は、pHを維持するための20mMのリン酸ナトリウムバッファー、及び220−410mOsm/kgの等張性条件に、浸透圧を調整するための塩(Alpha-1 MP及びAlpha-1 HC;それぞれ100mM又は150mMのNaCl)、又はアミノ酸(Liquid Alpha;200から300mMのアラニン)からなる。同じく、他のA1PI処方を同様に調製する。(表1)
【0046】
【表1】
【0047】
上述の様に、本発明の方法は、上記の方法に二つの追加工程を組み込む:
図1に示すような、SPTFF濃縮及び処方。
【0048】
実施例2−本発明の方法で得られた非電荷賦形剤A1PI溶液中の凝集の指標としてのB
22値の評価
本発明の方法は、WFIでのSPTFF濃縮、及び非電荷賦形剤との処方を含む。0.12Mの濃度、pH7.0での幾つかの非電荷賦形剤、及び低いpH又は塩が多い対照処方を、20%A1PI溶液の作成に使用し、Toyopearl AF-formyl-650M(Tosoh Biosciences)樹脂にA1PIを結合させることによって生産した自己相互クロマトグラフィー(SIC)カラムに適用し、保持時間を記録した。タンパク質の保持時間を、タンパク質−タンパク質間の相互作用の尺度となる浸透圧第二ビリアル係数(B
22)に変換した。
図2は、賦形剤の種類に対するB
22のプロットを表す。B
22値が高いほど、タンパク質−タンパク質間の反発力が大きくなる(凝集を最小限にするのに好ましい)(Payneら“Second Virial Coefficient Determination of a Therapeutic Peptide by Self-Interaction Chromatography” Biopolymers (Peptide Science), Vol. 84, 527−533 (2006))。最も低いB
22値を、低いpHのネガティブ対照(0.12MKCl、pH6.0)及び対照処方(20mMリン酸ナトリウム、75mMNaCl、pH7.0)で予想通り観察し、A1PIに最も好ましくない(最も高いタンパク質−タンパク質間相互作用)と知られていた状態であった。ソルビトール、セリン、トレハロース、アラニン及びマンニトールはすべて、より高いB
22値を示し、より大きなタンパク質反発力を示唆し、マンニトールが最も高いB
22値を有する。WFI溶液は、pH7.0で内因性の電荷反発に依存し、中間のB
22値を有した。非電荷の賦形剤は0.12M及びpH7.0であった。
【0049】
実施例3−非電荷賦形剤中のA1PIの凝集の評価
40℃での20%のA1PI処方の熱動力学試験は、SE-HPLCにより経時的に加速凝集を測定した。pH7.0での様々な0.12Mの賦形剤処方(マンニトール、アラニン、セリン、ソルビトール及びトレハロース)の20%のA1PI溶液を、対照処方(16mMリン酸ナトリウム、60mMNaCl、pH7.0)と共に、40℃で7日間インキュベートし、SE-HPLCにより分析した(
図3)。これらのデータは三つのカテゴリーに分類され、予想通り、対照処方は最も高い凝集速度を有し、一方、マンニトール、アラニン、セリン及びソルビトールは、中間の凝集速度を有し、トレハロースは他より顕著に低い凝集速度を有した。結論として、結果は、非電荷賦形剤の存在下では、対照と比較して、凝集がより起こりにくかったことを示す。
【0050】
実施例4−非電荷賦形剤の存在下でのA1PIの安定性の評価
一方、電荷及び非電荷賦形剤の存在下での様々なA1PIの濃度で、凝集を、SE−HPLCにより経時的に測定した。
図4のA1PI溶液は、5℃で貯蔵したバイアル中の凝集割合を示す。浸透圧を制御するために塩を含む約50mg/mlのA1PI(ひし型)及び約200mg/mlのA1PI(丸)、並びに0.12Mのトレハロースのみで処方された約200mg/mlのA1PI(三角)は、異なる凝集速度を示す。Bauer(US 7,879,800)が表12で示したことと同様に、20mMのリン酸ナトリウム、75mMの塩化ナトリウム中に、pH7.0で処方された20%のA1PIが、5%での同様の賦形剤中のA1PIと比較して、極めて高い凝集速度を有する。しかしながら、pH7.0で120mMのトレハロースのみで処方された20%のA1PIは、同一の貯蔵条件において、より少ない凝集量を示した。
【0051】
実施例5−皮内(SC)投与、又は静脈内(IV)投与による70kg/100kgの患者に対する、A1PIの毎日又は毎週の投薬
皮内投薬は体積を制約され、一か所の注射に約25mLにしばしば制限されることがわかる。それ故、より高濃度のA1PIが、所定の量の投薬を達成するのに必要とされる。1.2吸収係数(EP 2,214,699 B1)を伴い、平均の患者に対して、2か所に15%のA1PI、又は一か所に20%のA1PIの毎週の投薬で、60mg/kgの現在の投薬が達成され得る。(表2)
【0052】
【表2】
【0053】
実施例6−SPTFFによる高濃縮A1PI
多くの治療症状に使用される高濃縮A1PIを含む組成物を達成する方法は、SPTFFの適用を含む。SPTFF工程は、WFI中のダイアフィルトレーション工程に続く(
図1)。SPTFFは、低いポンプ速度でUF膜アセンブリを一度通過させるのみで、従来のTFF(100mg/ml超)で達成されるより、WFI中で、高濃度にA1PIを濃縮することができ、TFFの継続したポンプ循環に関連した熱及び圧力への暴露を減少させることができる。高い膜間圧力差で、減少させた流速を組み合わせた、増大したフロー経路の長さによって、WFIの単独の存在下で、SPTFFにより高いA1PIの濃度を達成する(>25%(質量/体積))ことを可能にする。最後に、A1PI溶液の濃度を、pH7.0に調整した濃縮賦形剤溶液で、狙いの濃度(少なくとも10%(質量/体積))に正確に希釈し、アミノ酸、糖、又はポリオール(それぞれアラニン、トレハロース及びソルビトールにより表3に表される)のいずれかで浸透圧調整を果たす。本方法は、高濃縮のA1PIを達成することを可能にし、一方で液体薬製品の安定な処方が、バッファー、塩、又は界面活性剤を使用せずに、結果として得られる。
【0054】
【表3】
【0055】
実施例7−ゼータ電位により測定されるpH範囲
0.12Mの賦形剤濃度でのA1PI溶液のゼータ電位測定を、Zetasizerを用いて、様々なpHで評価した。ゼータ電位の振幅が高いほど(≧40mV、又は≦−40mV)、コロイドがより良い安定性を表すのは、十分に帯電した分子は、静電気的に反発する傾向があり、溶液中で凝集物を形成しにくいためである。すべての試験されたA1PI処方(
図5)は、40mV未満の測定されたZP値に基づき、6.6から7.4のpHの範囲内でコロイドの安定性を示した。それぞれの処方において、pHが、A1PIの等電点に達するため(4.0から5.0の間)、ゼータ電位は0への傾向を示した。
【0056】
定義
本明細書内に使用されたように、セクションの表題は、構成する目的のみで、どのような方法でも記載された主題を限定するように解釈されない。限定しないが、特許、特許出願、文献、書籍、論文、及びインターネットウェブページを含む、本出願に引用されるすべての文書、及び同様の資料は、任意の目的でそれらの全体から、明確に援用される。援用される用語の定義が、本教示で提供される定義と異なるように見える場合、本教示で提供される定義が制御する。わずか及びごくわずかな逸脱が本明細書内の教示の範囲内にあるように、本教示で議論される、温度、濃度、時間などの前に、言外の「約」があることを理解されるだろう。
【0057】
本出願において、特に具体的に言及しない限り、単数の使用は、複数を含む。また、「含む」の使用は、限定する意図はない。
【0058】
本明細書及び特許請求の範囲内で使用され際に、内容が明らかに特に指示しない限り、単数形「a」」、「an」及び「the」は複数の参照を含む。
【0059】
本明細書内で使用される際に、「約」は、参照する量、濃度、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、総量、重さ又は長さに対して20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1%変化する量、濃度、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、総量、重さ又は長さを意味する。
【0060】
本開示は、特定の実施態様及び実施例の状況下にあるが、当業者は、本開示が、他に代わりの実施態様並びに/又は実施態様の使用、及び明らかな変更、及びそれらに同等のものに、具体的に開示された実施態様を超えて広げることを理解するだろう。加えて、実施態様のいくつかの変化は、詳細に示され及び開示される一方、本開示の範囲内での他の変更は、本開示に基づいて、当業者に容易に明らかになるだろう。
【0061】
実施態様の特定の特性及び態様の、様々な組み合わせ、又は副組み合わせは本開示の範囲内で作られ、及び収まったままであってもよいことも理解される。開示の様々な方式または実施態様を形成することを目的として、開示された実施態様の、様々な特性及び態様は、お互い組み合わされ、又は置き換えられることが理解されるべきである。それ故、本明細書内の開示の範囲は、上記開示された特定の実施態様に限定されないと意図される。
【0062】
しかしながら、本詳細な開示は、開示の好ましい実施態様を示唆しながら、実例のみを目的に与えられることは理解されるであろう。なぜならば、本開示の主旨、及び範囲内での様々な変化並びに変更が当業者には明らかであるためである。
【0063】
本明細書内で示される記載内に使用される専門用語は、任意の限定又は制限方法に解釈される意図はない。むしろ、専門用語は、システム、方法及び関連する成分の実施態様の詳細な開示と併せて利用されるのみである。更に、実施態様は、いくつかの新しい特性を含んでもよく、これら特性は何れも、望ましい特性を単独で担うものでなく、又は本明細書内で開示される実施態様を実行するのに本質的であるとは考えられないものである。