特開2020-197652(P2020-197652A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋化成工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-197652(P2020-197652A)
(43)【公開日】2020年12月10日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20201113BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20201113BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20201113BHJP
   C08G 59/17 20060101ALI20201113BHJP
   C08G 75/045 20160101ALI20201113BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20201113BHJP
   G03F 7/029 20060101ALI20201113BHJP
【FI】
   G03F7/027 502
   G03F7/027 515
   G03F7/004 501
   G03F7/004 505
   G03F7/075 501
   C08G59/17
   C08G75/045
   G02F1/1339 500
   G03F7/029
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-104311(P2019-104311)
(22)【出願日】2019年6月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千野 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】酒井 優
(72)【発明者】
【氏名】若月 敦史
【テーマコード(参考)】
2H189
2H225
4J030
4J036
【Fターム(参考)】
2H189DA07
2H189EA06X
2H189EA13X
2H189FA15
2H189FA16
2H189GA06
2H189GA11
2H189GA14
2H189HA14
2H225AC21
2H225AC35
2H225AC36
2H225AC53
2H225AC55
2H225AC80
2H225AD02
2H225AD07
2H225AM66P
2H225AM86P
2H225AM99P
2H225AN39P
2H225AN56P
2H225AN72P
2H225AN82P
2H225AP03P
2H225BA05P
2H225BA13P
2H225BA16P
2H225BA33P
2H225CA16
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J030BA02
4J030BA04
4J030BB07
4J030BC43
4J036AF08
4J036CA20
4J036CA21
4J036JA09
(57)【要約】
【課題】高弾性、高解像で基材との密着性が良好なフォトスペーサの形成が可能な感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とのエステル(A)、多官能(メタ)アクリレート(B)、黒色顔料(C)、チオール基を3個以上4個以下有する多官能チオール(D)及び光重合開始剤(E)を含有する感光性樹脂組成物であって、多官能(メタ)アクリレート(B)が多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル及び/又は多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸とのエステルである感光性樹脂組成物;該感光性樹脂組成物を硬化させてなるフォトスペーサ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とのエステル(A)、多官能(メタ)アクリレート(B)、黒色顔料(C)、チオール基を3個以上4個以下有する多官能チオール(D)及び光重合開始剤(E)を含有する感光性樹脂組成物であって、多官能(メタ)アクリレート(B)が多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル及び/又は多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸とのエステルである感光性樹脂組成物。
【請求項2】
該多官能チオール(D)のチオール基がすべて2級チオールである請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
更に(メタ)アクリロイル基を1つ有するシラン(F)を含有する請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
更にホスホン基含有単官能モノマー及び/又はリン酸エステル基含有単官能モノマー(G)を含有する請求項1〜3いずれか記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の感光性樹脂組成物を硬化させてなるフォトスペーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の製造プロセスにおいて感光性樹脂が多用されている。例えば、カラーフィルタ上の画素に相当する部分には、着色顔料を分散させた感光性樹脂が用いられており、ブラックマトリックスにも感光性樹脂が用いられている。また液晶注入層である2枚の基板の間隔を一定に保つための柱として感光性樹脂であるフォトスペーサが用いられている。
【0003】
近年、フォトスペーサ製造時の外観検査にコンピューターによる自動化が進んでおり、外観検査機で良品判断ができるようにフォトスペーサの黒色化が進められている。一方、フォトスペーサを黒色にすると露光時の感度が低下し、従来の無色透明のフォトスペーサで達成していた弾性特性やスペーサ形状が悪化したり、基板への密着性が低下したりするという問題が生じており、高感度なフォトスペーサが望まれている。
【0004】
高い弾性回復特性を得るためには、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのような多官能モノマーの含有比率を50重量%以上に高めることによって高弾性を得る方法(例えば特許文献1)やアルコキシシロキサンを含有するモノマーの添加(例えば特許文献2)が知られている。
しかし、いずれの方法でも、黒色顔料の添加により高弾性、高解像性及び十分な密着性のいずれにも優れるフォトスペーサ形成用の感光性樹脂組成物は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−174812号公報
【特許文献2】特開2008−116488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高弾性、高解像で基材との密着性が良好なフォトスペーサの形成が可能な感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とのエステル(A)、多官能(メタ)アクリレート(B)、黒色顔料(C)、チオール基を3個以上4個以下有する多官能チオール(D)及び光重合開始剤(E)を含有する感光性樹脂組成物であって、多官能(メタ)アクリレート(B)が多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル及び/又は多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸とのエステルである感光性樹脂組成物;該感光性樹脂組成物を硬化させてなるフォトスペーサである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の感光性樹脂組成物は高弾性、高解像性及び十分な密着性を有するフォトスペーサを形成することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の感光性樹脂組成物は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とのエステル(A)、多官能(メタ)アクリレート(B)、黒色顔料(C)、チオール基を3個以上4個以下有する多官能チオール(D)及び光重合開始剤(E)を必須成分として含有する。
【0010】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸又はメタクリル酸」を、「(メタ)アクリル樹脂」とは「アクリル樹脂又はメタクリル樹脂」を、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基又はメタクリロイル基」を、「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは「アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基」を意味する。
【0011】
以下において、本発明の感光性樹脂組成物の必須構成成分である(A)〜(E)について順に説明する。
【0012】
本発明のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とのエステル樹脂(A)は、市販品のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させることによって合成させたもの等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸の他に更にフタル酸、コハク酸及びマレイン酸等の多価カルボン酸並びにそれらの多価カルボン酸の無水物を使用してもよい。
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とのエステル(A)は、1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0013】
本発明のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とのエステル(A)の数平均分子量は、現像性の観点から好ましくは1,000〜100,000であり、更に好ましくは2,000〜50,000である。
【0014】
(A)の数平均分子量(以下、Mnと記載する場合がある)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、以下の条件で測定したものである。
装置: 「HLC−8120GPC」[東ソー(株)製]
カラム:「Guardcolumn HXL−H」(1本)、
「TSKgel GMHXL」(2本)[いずれも東ソー(株)製]
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:100μl
流量:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン
【0015】
本発明のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とのエステル(A)の含有量は、現像性の観点から(A)〜(E)の合計重量に基づいて、好ましくは10〜50重量%、更に好ましくは20〜40重量%である。
【0016】
本発明の第2の必須成分である多官能(メタ)アクリレート(B)は、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル及び/又は多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸とのエステルである。多官能(メタ)アクリレート(B)は、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであり、好ましくは2〜10個の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーである。
本発明の多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)の数平均分子量は、好ましくは1,000未満である。
このような多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)としては、2官能(メタ)アクリレート(B1)、3官能(メタ)アクリレート(B2)、4〜6官能(メタ)アクリレート(B3)及び7〜10官能(メタ)アクリレート(B4)等が挙げられる。
【0017】
2官能(メタ)アクリレート(B1)としては、例えば、2以上の多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化物[例えば、グリコールのジ(メタ)アクリレート、グリセリンのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのジ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1,5−ペンタンジオールのジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−2−エチル−1,3−プロパンジオールのジ(メタ)アクリレート];2以上の多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸のエステル化物[例えばトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、グリセリンのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート];2以上の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とヒドロキシカルボン酸のエステル化物[例えばヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート]等が挙げられる。
なお、多価アルコールの水酸基のすべてを(メタ)アクリル酸、アルキレンオキサイド付加物などと反応させる必要はなく、未反応の水酸基が残っていてもよい。
【0018】
3官能(メタ)アクリレート(B2)としては、グリセリンのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート;並びに3以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等)のアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
4〜6官能(メタ)アクリレート(B3)としては、ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド付加物のペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
7〜10官能の(メタ)アクリレート化合物(B4)としては例えばジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応により得られる化合物など、ジイソシアネート化合物と水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物との反応により得ることができる。
【0021】
多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)のうち、硬度及び弾性回復率の観点から好ましくは3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーであり、更に好ましくはグリセリン、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトール骨格を有する3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーである。
多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)は、1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物中の多官能(メタ)アクリレート(B)の含有量は、弾性回復率の観点から(A)〜(E)の合計重量に基づいて、好ましくは40〜88.8重量%、更に好ましくは50〜76.9重量%である。
【0023】
本発明の第3の必須成分である黒色顔料(C)としては、カーボンブラック、ペリレンブラック及びチタンブラック等が挙げられる。
黒色顔料(C)は、1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明の黒色顔料(C)の含有量は、高弾性、高解像性及び密着性の観点から(A)〜(E)の合計重量に基づいて、好ましくは0.1〜30重量%、更に好ましくは1〜10重量%である。
【0025】
本発明の第4の必須成分である
チオール基を3個以上4個以下有する多官能チオール(D)としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)及び1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等が挙げられる。
チオール基を3個以上4個以下有する多官能チオール(D)は、1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらのチオール基を3個以上4個以下有する多官能チオール(D)のうち、硬化性向上と熱安定性の観点から好ましくはチオール基がすべて2級チオールである。
【0026】
本発明のチオール基を3個以上4個以下有する多官能チオール(D)の含有量は、(A)〜(E)の合計重量に基づいて、好ましくは0.1〜5重量%、更に好ましくは0.1〜2重量%である。
【0027】
本発明の第5の必須成分である光重合開始剤(E)として、可視光線、紫外線、遠赤外線、荷電粒子線及びX線等の放射線の露光により、重合性不飽和化合物の重合を開始しうるラジカルを発生する成分であればどのようなものでもよい。
【0028】
光重合開始剤(E)としては、α−ヒドロキシアルキルフェノン型(E1)(例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等);α−アミノアルキルフェノン型(E2)(例えば、(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等);チオキサントン化合物型(E3)(例えば、(イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等);リン酸エステル型(E4)(例えば、(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等);アシルオキシム系型(E5)(例えば、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等);ベンジルジメチルケタール型(E6)等;ベンゾフェノン型(E7)(例えば、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4‘−メチルジフェニルスルフィド、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等)が挙げられる。
光重合開始剤(E)は、1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
これらの光重合開始剤(E)うち、硬化物の硬化性の観点から好ましいのはα−アミノアルキルフェノンであり、更に好ましいのは2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンである。
【0030】
光重合開始剤(E)の含有量は、(A)〜(E)の合計に基づいて硬化性及び硬化物の着色の観点から好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは2〜10重量%である。
【0031】
本発明にかかる感光性樹脂組成物は、溶剤を含んでいてもよい。
溶剤としては、ケトン溶剤(シクロヘキサノン等)、エーテル溶剤(エーテルエステル溶剤及びエーテルアルコール溶剤を含む)(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びメトキシブチルアセテート等)、エステル溶剤(酢酸ブチル等)、エーテル溶剤(エーテルエステル溶剤及びエーテルアルコール溶剤等)、アルコール溶剤(ケトンアルコール溶剤を含む)(1.3−ブチレングリコール及びジアセトンアルコール等)、エステル溶剤(乳酸エチル等)、ケトン溶剤(アセトン及びメチルエチルケトン等)等が挙げられる。
溶剤は、1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらの溶剤のうち、塗布性の観点から好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。
溶剤の含有量は、塗布設備の粘度の仕様に合わせて適宜調整する。
【0032】
本発明にかかる感光性樹脂組成物は、必要により更にその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、(メタ)アクリロイル基を1つ有するシラン(F)、ホスホン基含有単官能モノマー又はリン酸エステル基含有単官能モノマー(G)、レベリング剤(H)、重合性有機基を有さない無機フィラー(例えば、酸化チタン、アルミナ等)、増感剤、増粘剤、及びその他の添加剤(例えば、シランカップリング剤、酸化防止剤、及び消泡剤等)が挙げられる。
【0033】
(メタ)アクリロイル基を1つ有するシラン(F)としては、3−(アクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を1つ有するシラン(F)の含有量は、(A)〜(E)の合計に基づいて密着性及び硬化物の着色の観点から好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは2〜10重量%である。
【0034】
ホスホン基含有単官能モノマー又はリン酸エステル基含有単官能モノマー(G)としては、ホスホン基含有単官能モノマー(G1)として、ビニルホスホン酸等、リン酸エステル基含有単官能モノマー(G2)として、2−メタクロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート等が挙げられる。
ホスホン基含有単官能モノマー又はリン酸エステル基含有単官能モノマー(G)の含有量は、(A)〜(E)の合計に基づいて硬化性及び硬化物の着色の観点から好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは2〜10重量%である。
【0035】
レベリング剤(H)としては、オキシアルキレン鎖を有するポリジメチルシロキサン及びオキシアルキレン鎖を有するフッ素化合物等が挙げられる。
レベリング剤(H)の含有量は、(A)〜(E)の合計に基づいて硬化性及び硬化物の着色の観点から好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは2〜10重量%である。
【0036】
前記(F)〜(H)以外のその他の成分を使用する場合、その他の成分の含有量の合計は、(A)〜(E)の合計に基づいて硬化性及び硬化物の着色の観点から好ましくは20重量%以下であり、更に好ましくは5〜15重量%である。
【0037】
本発明におけるフォトスペーサは、液晶表示装置の液晶注入層である2枚の基板の間隔を一定に保つための柱であり、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させてなる。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物の硬化方法及びフォトスペーサの作製方法について説明する。
感光性樹脂組成物を硬化させるには、感光性樹脂組成物を塗布工程でガラス基板等の基材上に塗布した後、減圧乾燥で溶剤を留去し、60〜120℃程度でプリベークをほどこし薄膜を形成した後、活性エネルギー線を照射して硬化させる。本発明における活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線及び可視光線が含まれる。
【0039】
本発明の感光性樹脂組成物の硬化に用いる活性エネルギー線は、光重合開始剤(E)の選択により調整することができる。
前記の光重合開始剤(E)を用いた場合には200〜700nmの波長を有する活性エネルギー線の照射で光硬化でき、200〜400nmの波長を持つ光(紫外線)の照射により硬化することが好ましい。紫外線を発する光源としては、高圧水銀灯の他、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ及びハイパワーメタルハライドランプ等(UV・EB硬化技術の最新動向、ラドテック研究会編、シーエムシー出版、138頁、2006)及びLEDが使用できる。なかでも、LEDは、その他の光源と比較して、消費電力とオゾンの発生量が少なく、ランニングコストが低く環境負荷が少ない。
本発明の感光性樹脂組成物を光硬化するときの紫外線の照射量は、組成物の硬化性及び硬化物の可撓性の観点から好ましくは10〜10,000mJ/cm、更に好ましくは20〜2,000mJ/cmである。
活性エネルギー線の照射時及び/又は照射後に本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化速度を加速させる目的で、加熱を行ってもよい。加熱温度は、30℃〜200℃が好ましく、更に好ましくは35℃〜150℃、特に好ましくは40℃〜120℃である。
【0040】
露光後の硬化させた薄膜は、アルカリ現像液(水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、KOH、NaCO等のアルカリ水溶液に界面活性剤を含んだもの)にて未硬化部を洗浄(現像)したのち超純水にてリンスを行う。リンス液を除去した後に得られたパターンはクリーンオーブン中220〜240℃にてポストベーク処理を行いパターン樹脂中の架橋反応を完結させてフォトスペーサを得る。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
製造例1 [クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とのエステル(A−1)の製造]
加熱冷却・攪拌装置、環流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたガラス製コルベンに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂「EOCN―102S」(日本化薬(株)製 エポキシ当量200)200重量部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート245重量部とを仕込み、110℃まで加熱して均一に溶解させた。続いて、アクリル酸76重量部(1.07モル部)、トリフェニルホスフィン2重量部及びp−メトキシフェノール0.2重量部を仕込み、110℃にて10時間反応させた。
反応物に更にテトラヒドロ無水フタル酸91重量部(0.60モル部)を仕込み、90℃にて5時間反応させ、その後、溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを減圧下で留去して、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とのエステル(A−1)を得た。
この樹脂のGPCによる数平均分子量(Mn)は2,200であった。
【0043】
製造例2 [クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とのエステル(A−2)の製造]
製造例1のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を「EOCN―104S」(日本化薬(株)製 エポキシ当量220)に変更する以外は同様の方法で製造した。
この樹脂のGPCによる数平均分子量(Mn)は8,300であった。
【0044】
実施例1〜13及び比較例1〜2
表1の配合部数(重量部)に従い、ガラス製の容器に各原料を仕込み、均一になるまで攪拌し、更に追加の溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を添加して、実施例1〜13及び比較例1〜2の感光性樹脂組成物を得た。なお、黒色顔料(C−1)の分散液については、分散液中の黒色顔料(C−1)の配合部数であり、分散液中の溶剤は溶剤の配合部数に含めた。
【0045】
【表1】
【0046】
なお、表1中の略称の化学品の詳細は以下の通りである。
(B−1):「ネオマーDA−600」(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:三洋化成工業(株)製;官能基数が6個)
(B−2):「ネオマーEA−300」(ペンタエリスリトールテトラアクリレート:三洋化成工業(株)製;官能基数が4個)
(B−3):「ライトアクリレートPE−3A」(ペンタエリスリトールトリアクリレート:共栄社化学(株)製;官能基数が3個)
(C−1):「CF BLACK MP−488」(カーボンブラックの28重量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート分散液:御国色素(株)製)
(D−1):「カレンズMT PE1」(ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート:昭和電工(株)製)
(D−2):「カレンズMT NR1」(1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン:昭和電工(株)製)
(D−1’):「カレンズMT BD1」(1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン:昭和電工(株)製)
(E−1):「イルガキュアー 819」(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド:BASF(株)製))
(E−2):「イルガキュアー 907」(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン:BASF(株)製)
(E−3):「SB PI−701」(4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン:三洋貿易(株)製)
(F−1):「KBM−5103」(3−(アクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン:信越化学(株)製)
(G−1):「ライトアクリレートP−1A」(2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート:共栄社化学(株)製)
(H−1):「KF−352A」(オキシアルキレン鎖を有するポリジメチルシロキサン:信越化学(株)製)
(H−2):「サーフロンS−386」(オキシアルキレン鎖を有するフッ素化合物:AGCセイミケミカル(株)製)
【0047】
[フォトスペーサの作製]
10cm×10cm四方のガラス基板上にスピンコーターにより塗布し、乾燥し、乾燥膜厚5μmの塗膜を形成した。この塗膜をホットプレート上で80℃、3分間加熱した。
得られた塗膜に対し、1cmあたり10000個、直径7、8、9及び10μmの開口部を有する複数のフォトスペーサ形成用のマスクを通して超高圧水銀灯の光を60mJ/cm照射した(i線換算で照度22mW/cm)。
なお、マスクと基板の間隔(露光ギャップ)は100μmで露光した。
その後0.05重量%KOH水溶液を用いてアルカリ現像した。水洗したのち、230℃で30分間ポストベークを行い、ガラス基板上に1cmあたり10000個フォトスペーサを形成した。
なお、マスク開口径を調整することにより所望の下底径を有するフォトスペーサを形成した。
【0048】
<弾性特性の評価>
(1)ガラス基板上に形成したフォトスペーサのうち任意に選択した3個のフォトスペーサのそれぞれに対し、微小硬度計(フィッシャーインストルメンツ社製;「フィッシャースコープH−100」)と断面が正方形の平面圧子(50μm×50μm)を用いて、荷重をかけたときと戻したときの変形量を測定した。
この際に、2mN/秒の負荷速度で、30秒かけて60mNまで荷重をかけ、5秒間保持した。
荷重がかかった状態でのフォトスペーサの初期位置からの変形量を測定した。このときの変化量を総変形量T(μm)とする。
(2)次に、2mN/秒の除荷速度で30秒かけて荷重を0まで解除し、その状態で5秒間保持した。この時のフォトスペーサの変形量を塑性変形量T(μm)とする。
(3)上記のようにして測定した総変形量Tと塑性変形量Tから、下記数式(1)を用いて弾性回復率を算出し、3個の平均値を算出した。
弾性回復率(%)=[(T−T)/T]×100 (1)
【0049】
フォトスペーサの「弾性特性」は、以下の基準で評価した。
◎:弾性回復率90%以上
〇:弾性回復率80〜90%
△:弾性回復率70〜80%
×:弾性回復率70%未満
【0050】
<解像性の評価>
ガラス基板上に形成したフォトスペーサのうち任意に選択した3個のフォトスペーサに対し、走査型電子顕微鏡(SEM、S−4800)を用いた観察画像において、ガラス基板とフォトスペーサ側面の角度(テーパー角)をそれぞれ計測し、平均値を算出した。
【0051】
フォトスペーサの解像性は以下の基準で評価した。
〇:テーパー角50°以上90°以下
△:テーパー角40°以上50°未満
×:テーパー角0°以上40°未満
【0052】
<密着性の評価>
フォトスペーサの密着性は、フォトスペーサの下底径を直径10μmに設定し、綿棒こすり試験によって以下の基準で評価した。
【0053】
上記の直径7、8、9及び10μmの開口部を有する複数のフォトスペーサ形成用のマスクを用いて作製したフォトスペーサから下底径が直径10μmであるマスクだけを選定し、下記の密着性試験を行った。
(1)フォトスペーサを形成したガラス基板の裏側に油性ペンで縦1cm、横1cmの十文字の印を付けた。
(2)アセトンをしみ込ませた綿棒で、十文字の印の付いたガラス基板の表側の表面を、まず縦線の上から下方向に毎秒2cmの速度で10回擦りつけた。
次に横線の左から右方向に毎秒2cmの速度で10回擦りつけた。
(3)上記(2)において擦った部分が交差する点を光学顕微鏡で観察して剥離せずに残存するフォトスペーサの数を数えた。
なお、1個も剥がれがない場合はガラス基板上には1mmあたり100個(10個×10個)のスペーサが存在する。
〇:剥がれの個数 5個未満
△:剥がれの個数 5個以上10個未満
×:剥がれの個数 10個以上
【0054】
本発明の実施例1〜13の感光性樹脂組成物は、表1に示す通り、弾性特性、解像性及び密着性のすべての点で優れている。
その一方で、比較例の感光性樹脂組成物は、少なくとも1つの評価結果が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の感光性樹脂組成物は、硬化後の弾性特性と解像性に優れるため、表示素子用フォトスペーサとして好適に使用できる。