【解決手段】中空シャフト10と、中空シャフト10の外周に設けられた弾性層20とを備えた現像ローラ1Aであって、弾性層20が、ウレタン樹脂、復元性粒子21及び導電性付与剤を含有し、1mm未満の厚さを有する現像ローラとする。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、以下の実施形態は例示の目的で提示するものであり、本発明は、以下に示す実施形態に何ら限定されるものではない。
【0015】
[現像ローラ]
本発明の現像ローラ1Aは、
図1及び
図2に示すように、中空シャフト10と、中空シャフト10の外周に設けられた弾性層20とを備えた現像ローラであって、弾性層20は、ウレタン樹脂、復元性粒子21及び導電性付与剤を含有し、1mm未満の厚さを有するものである。
以下、本発明の現像ローラ1Aの構成について説明する。
【0016】
(中空シャフト)
中空シャフト10は、筒状体と筒状体の中心軸上に軸体とを備えたものであればよく、公知のものを用いることができる。例えば、
図2に示すように、筒状のシャフト本体11と、シャフト本体11の両端部に嵌入される2つのシャフト端部12とを備える中空シャフト10が挙げられる。
【0017】
−シャフト本体−
図2に示されるように、シャフト本体11は、その両端部に開口(以下、両端開口部と称する。)を有し、かつ、シャフト端部12とともに嵌合部15を形成するように、所定の位置から両端開口部までの領域における内径が拡径された円筒体を成し、その外表面の一部又は全部に後述する弾性層20が形成される。
【0018】
シャフト本体11は、その軸線方向にわたって均一な外径を有していればよく、ローラの用途等に応じて所望の厚さに調整される。シャフト本体11の外径は、通常、例えば、5〜60mm程度に調整され、好ましくは、10〜30mm程度に調整される。シャフト本体11が上記範囲の外径を有し、さらに、シャフト本体11の厚さを、例えば、0.5〜8mm程度、好ましくは、1〜5mm程度に調整することによって、中空シャフト10としたときの強度を大きく低下させることがない。その結果、中空シャフト10を用いて作製されたローラが所定の当接圧力で長手方向に均等に像担持体に当接又は圧接する状態を保持することができる。
【0019】
シャフト本体11は、所望の強度を有する材料で形成されればよく、このような材料としては、例えば、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮若しくはこれらの合金等の金属、又は、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の樹脂等が挙げられる。これらの中でも、軽量化を図ることができると共に所望の強度と導電性とを有する点で、金属であるのが好ましく、アルミニウム又はステンレス鋼であるのが特に好ましい。
【0020】
なお、シャフト本体11に導電性が要求される場合には、上記金属を用いればよい。また、樹脂で形成した絶縁性芯体にメッキを施してもよく、樹脂に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した材料を用いてもよい。
【0021】
−シャフト端部−
シャフト端部12は、シャフト本体11の両端部(両端開口部)に嵌入されることにより、シャフト本体11の両端部を閉塞する。シャフト端部12は、シャフト本体11を一体に支持すると共に、図示しないローラの駆動機構で生じる駆動力をシャフト本体11に伝達し、シャフト本体11を回転駆動させる。このシャフト端部12は、導電特性を有していても有していなくてもよく、ローラの用途等に応じて導電特性の有無が決定される。
【0022】
シャフト端部12は、シャフト本体11の両端部域に嵌入可能な外径を有する中実円筒体を成す嵌入部13と、シャフト本体11に嵌入されない一方の面から同心状に突出して形成された、嵌入部13よりも小さな外径を有する円筒体を成す支持軸14とを備えている。
【0023】
嵌入部13は、中実に形成されている。嵌入部13が中実に形成されると、シャフト本体11の両端部に形成される後述する嵌合部15も中実になり、中空シャフト10の強度を保持することができる。その結果、中空シャフト10を用いて作製されたローラを画像形成装置に装着すると、ローラを所定の当接圧力で長手方向に均等に像担持体に当接又は圧接させることができると共に、シャフト端部12とシャフト本体11との嵌合状態が強固になり、中空シャフト10の振れを小さくすることができる。
【0024】
シャフト端部12は、シャフト本体11に嵌入され、かつ、シャフト本体11の外周面に弾性層20が形成されたローラを支持することのできる強度を有する材料で形成されればよく、このような材料としては、例えば、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮若しくはこれらの合金等の金属、又は、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の樹脂等が挙げられる。これらの中でも、所望の強度と導電性とを十分に確保することができる点で、金属であるのが好ましく、アルミニウム又はステンレス鋼であるのが特に好ましい。支持軸14は、嵌入部13と同一の材料で形成されても、異なる材料で形成されてもよい。
【0025】
シャフト端部12は、シャフト本体11と同一の材料で形成されても、異なる材料で形成されてもよい。シャフト本体11とシャフト端部12とが異なる材料で形成される場合は、例えば、軽量かつ強度の高いアルミニウムで形成されたシャフト本体11と、より強度の高いステンレス鋼で形成されたシャフト端部12が挙げられる。
【0026】
(弾性層)
図2に示すように、弾性層20は、ウレタン樹脂、復元性粒子21及び導電性付与剤を含有し、1mm未満の厚さを有するものである。本発明における弾性層20は、復元性粒子21を含むため、厚みが1mm未満であっても、像担持体への当接又は圧接が良好になされ、長期保存後も凹みが生じることがなく高品質な画像を得ることができる。また、弾性層20を薄膜化できることにより、製造上簡便な工程で行うことができ、均一な膜質を得ることできるため、高品質な画像とコストの低減を実現することができる。
【0027】
−表面粗さRa−
弾性層20の表面粗さRaは、2.3以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
なお、表面粗さRaは、後述の実施例で示す算術平均粗さの測定方法によって測定される値とする。
【0028】
−復元性粒子−
弾性層20に含有される復元性粒子21は、20%以上100%以下の復元率を有する。20%以上の復元率を有することで、復元性の高い弾性層20を得ることができる。復元率は25%以上100%以下であることが好ましく、30%以上100%以下であることがより好ましい。
復元性粒子21は、平均粒子径が1μm以上100μm以下であることが好ましく、1μm以上80μm以下であることがより好ましく、1μm以上50μm以下であることが更に好ましい。復元性粒子21の平均粒子径が、上記範囲内であることにより、弾性層20の弾性率をより高めることができる。
【0029】
本発明における復元性粒子21としては、ウレタン樹脂粒子、アクリル粒子、シリコーンゴム粒子 が好ましい。ウレタン樹脂粒子の市販品としては、積水化成品工業株式会社製の「XX−4132Z」(商品名、復元率33%、φ10μm)が挙げられる。
【0030】
−復元率の測定方法−
復元性粒子21の復元率は、例えば、以下の方法で測定することができる。
ダイナミック微小硬度計:DUH−211S(商品名)、島津製作所製
試料:ウレタン樹脂粒子
上部加圧圧子:20μm
測定モード:負荷及び除荷試験
最大試験力:9.810「mN」
最小試験力:0.49「mN」
負荷速度:0.7437「mN/sec」
負荷保持時間:3「sec」
【0031】
図5及び
図6に示すように、復元性粒子21を試料台42に極微量散布後、X方向とY方向の径(d
X、d
Y)を測り、その平均を粒子径(d)とする。次に、圧子41により、1粒ずつ復元性粒子21を押圧して、負荷及び除荷試験を行う(
図7参照)。
次に、得られた平均を粒子径(d)、L1、L2から、試料の圧縮率及び復元率を次式で計算する。
圧縮率 Cr=L1/d×100(%)
復元率 Rr=L2/d×100(%)
【0032】
−弾性層用樹脂組成物−
弾性層20は、ウレタン樹脂、復元性粒子21及び導電性物質を含有するものである。
ウレタン樹脂を構成するウレタン樹脂としては、ポリエステルウレタン、アクリルウレタンであることが好ましい。
弾性層20は、上記復元性粒子21、(a)ポリオール、(b)イソシアネート、及び(c)導電性付与剤を含有する弾性層用樹脂組成物から形成することができる。
以下、弾性層用樹脂組成物の成分(a)〜(c)について説明する。
【0033】
(a)ポリオール
ポリオールは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリオールであればよく、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールであるのが好ましい。
【0034】
ポリエーテルポリオールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール−エチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとアルキレンオキサイドとの共重合ポリオール、及び、これらの各種変性体又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0035】
ポリエステルポリオールは、分子内に2つ以上のエステル結合と、2つ以上のヒドロキシル基を有する。ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸とポリオールとの縮合反応物等が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0036】
ポリアクリレートポリオールは、ヒドロキシル基含有モノマーと他のオレフィン系不飽和モノマー、例えば(メタ)アクリル酸のエステル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル及びマレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル及びフマル酸ジアルキルエステル、α−オレフィン並びに他の不飽和オリゴマー及び不飽和ポリマーとのコポリマーである。
【0037】
ポリカーボネートポリオールは、分子内に2つ以上のカーボネート結合と、2つ以上のヒドロキシル基を有する。ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールとカーボネート化合物との縮合反応物等が挙げられる。また、カーボネート化合物としては、例えば、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキレンカーボネート等が挙げられる。ポリカーボネートポリオールの原料として用いられるポリオールとしては、例えば、ヘキサンジオール、ブタンジオール等のジオール、2,4−ブタントリオール等のトリオールなどが挙げられる。
ポリオールは、後述するイソシアネート等との相溶性に優れる点で、1000〜8000の数平均分子量を有するのが好ましく、1000〜5000の数平均分子量を有するのが更に好ましく、イオン液体が水酸基含有イオン液体である場合には、800〜15000の数平均分子量を有するのが好ましく、1000〜5000の数平均分子量を有するのが更に好ましい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレンに換算したときの分子量である。
【0038】
(b)イソシアネート
イソシアネートは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種イソシアネートであればよく、例えば、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート及びこれらの誘導体等が挙げられる。イソシアネートは、貯蔵安定性に優れ、反応速度を制御しやすい点で、脂肪族イソシアネートであるのが好ましい。
芳香族イソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(トリレンジイソシアネートとも称する。TDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートウレチジンジオン(2,4−TDIの二量体)、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、メタフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、オルトトルイジンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート等が挙げられる。
誘導体としては、ポリイソシアネートの多核体、ポリオール等で変性したウレタン変性物(ウレタンプレポリマーを含む)、ウレチジオン形成による二量体、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、ウレトンイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物等が挙げられる。ポリイソシアネートは、1種単独で又は2種以上を用いることができる。ポリイソシアネートは、500〜2000の分子量を有するのが好ましく、700〜1500の分子量を有するのがより好ましい。
【0039】
弾性層用樹脂組成物に用いられる(b)イソシアネートはポリイソシアネートであることが好ましい。(b)イソシアネート1分子中のイソシアネート基の数が2を超えることが好ましく、2.5以上がより好ましく、3以上が更に好ましい。
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物における混合割合は、特に限定されないが、通常、ポリオールに含まれる水酸基(OH)と、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基(NCO)とのモル比(NCO/OH)が0.7以上1.15以下であるのが好ましい。このモル比(NCO/OH)は、ポリウレタンの加水分解を防止することができる点で、0.85以上1.10以下であるのがより好ましい。なお、実際には、作業環境、作業上の誤差を考慮して適正モル比の3倍から4倍相当量を配合してもよい。
【0040】
弾性層用樹脂組成物には、(a)ポリオールと(b)イソシアネートとの反応に通常使用される助剤、例えば、鎖延長剤、架橋剤等を併用してもよい。鎖延長剤、架橋剤としては、例えば、グリコール類、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン及びアミン類等が挙げられる。
【0041】
(c)導電性付与剤
(c)導電性付与剤としては、弾性層20に導電性を付与できる成分であればよく、例えば、金属、金属酸化物、導電性ポリマー等の導電性粉末、カーボンブラック、イオン導電材、界面活性剤等が挙げられる。
【0042】
導電性付与剤としては、カーボンブラックが特に好ましい。カーボンブラックを弾性層用樹脂組成物に配合することで、帯電性及び電荷減衰速度に係る効果がより顕著に奏される。導電性付与剤としては、1種を単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックは特に限定されず、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック等が好適に用いられる。カーボンブラックとしては、これらのうち1種を単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
弾性層用樹脂組成物における導電性付与剤の含有量は、弾性層用樹脂組成物の全量基準で、例えば0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。2質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。導電性付与剤の含有量が0.5質量%以上であることにより、現像ローラの抵抗値がより安定化し、印字性能がより向上する傾向がある。また20質量%以下であることにより、弾性層20の圧縮永久歪がより小さくなり、現像ローラの印字性能及び耐久性がより向上する傾向がある。
【0044】
弾性層20は上記以外の添加剤を更に含有してもよい。例えば、弾性層20は、シランカップリング剤、潤滑剤、重合触媒、分散剤、充填材の添加剤を更に含有してもよい。
【0045】
弾性層20は、弾性層用樹脂組成物をシャフト本体11上に塗布し、加熱等により(a)ポリオール成分及び(b)イソシアネート成分と、を重合して硬化する。塗布液に使用される溶媒は、ポリオール成分及びイソシアネート成分を溶解可能な溶媒であることが好ましく、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等であってよい。
【0046】
弾性層用樹脂組成物の塗工は、例えば、弾性層用樹脂組成物の塗工液を塗工する塗布法、塗工液に弾性層等を浸漬するディッピング法、塗工液を弾性層等に吹き付けるスプレーコーティング法等の公知の塗工方法によって行われる。弾性層用樹脂組成物は、そのまま塗工してもよいし、弾性層用樹脂組成物に、例えば、メタノール及びエタノール等のアルコール、キシレン及びトルエン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系溶媒等の揮発性溶媒、又は、水を加えた塗工液を塗工してもよい。このようにして塗工された弾性層用樹脂組成物を硬化する方法は、弾性層用樹脂組成物の硬化等に必要な熱を加えられる方法であればよく、例えば、弾性層用樹脂組成物が塗工された弾性層等を加熱器で加熱する方法、樹脂組成物が塗工された弾性層等を高湿度下に静置する方法等が挙げられる。弾性層用樹脂組成物を加熱硬化させる際の加熱温度は、例えば、100℃以上200℃以下であることが好ましく、特に120℃以上160℃以下であることがより好ましく、加熱時間は10分以上120分間以下であることが好ましく、30分以上60分以下であることがより好ましい。
【0047】
(被覆層)
本発明の現像ローラは、
図3の現像ローラ1Bに示すように、弾性層20の外周に被覆層30を有してもよい。被覆層30は、熱硬化性樹脂からなるものである。また、被覆層30は、弾性層20の外周であって、現像ローラ1Bの最表面に設けられ、現像剤を担持する役割を有する。
弾性層20を作製するための弾性層用樹脂組成物中の復元性粒子21の平均粒子径及び/又は含有量を調整することにより、弾性層20の表面に凹凸を形成することができ、その上に被覆層用樹脂組成物を塗工することにより、弾性層20の凹凸を反映した被覆層30を形成することができる。
なお、被覆層用樹脂組成物は、上記弾性層用樹脂組成物と同様の材料を用いることができる。
【0048】
さらに、
図4の現像ローラ1Cのように、復元性粒子21によって凹凸が形成された弾性層20の表面に、さらに表面粗さ材31を含有する被覆層30を形成することによって、被覆層30の表面に凹凸を形成することもできる。
【0049】
被覆層30の厚さは、15μm以上500μm以下であることが好ましい。被覆層30の厚さが上記範囲であることにより、弾性層30の表面を保護できるとともに、弾性層20の凹凸を維持することができる。なお、弾性層の厚さとは、復元性粒子21を有しない領域で測定した値とする。
【0050】
−表面粗さRa−
上記のようにして作製される被覆層30は、表面粗さRaが0.4以上2.3以下であることが好ましい。表面粗さRaは、0.4以上1.5以下であることがより好ましい。表面粗さRaが上記範囲であることにより、現像剤搬送性が向上し、一層優れた印字特性が得られる。
なお、表面粗さRaは、後述の実施例で示す算術平均粗さの測定方法によって測定される値とする。
【0051】
(その他の構成)
本発明の現像ローラは、シャフト本体11と弾性層20との間、及び弾性層20と被覆層30との間に、接着層又はプライマー層等を備えていてもよい。ここで、これらの層のうち、特に、弾性層20と被覆層30の間に設けられる接着層及びプライマー層については、その電気的特性を調整することにより、現像ローラとしての電気的特性を調整することができ、これにより、現像ローラの現像性能を良好に調整することができる。
【0052】
プライマー層としては、現像ローラのプライマー層として通常用いられるものを使用することができるが、例えば、エステル基を有するウレタン樹脂からなるプライマー層を形成することにより、現像ローラの現像性能を良好に維持することができる。
【0053】
[現像装置及び画像形成装置]
次に、本発明の現像装置及び画像形成装置の一実施形態について
図8を参照して、説明する。
本発明の現像ローラは、現像装置及び画像形成装置における現像剤担持体として、好適に用いることができる。本実施形態において、画像形成装置における現像ローラ以外の構成は特に限定されない。
【0054】
画像形成装置100は、各色(黒色、シアン、マゼンタ、黄色)の現像ユニットB、C、M及びYに装備された複数の像担持体111B、111C、111M及び111Yを転写搬送ベルト146上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置であり、現像ユニットB、C、M及びYが転写搬送ベルト146上に直列に配置されている。現像ユニットBは、像担持体111B例えば感光体(感光ドラムとも称される。)と、帯電手段112B例えば帯電ローラと、露光手段113Bと、現像装置120Bと、転写搬送ベルト146を介して像担持体111Bに当接する転写手段114B例えば転写ローラと、クリーニング手段115Bとを備えている。
【0055】
現像装置120Bは、本発明の現像装置の一例であり、
図8に示されるように、現像剤担持体123Bと現像剤122Bとを備えている。すなわち、本発明の現像ローラは、現像剤担持体123B、123C、123M及び123Yとして装着されている。現像装置120Bは、具体的には、一成分非磁性の現像剤122Bを収容する筐体121Bと、現像剤122Bを像担持体111Bに供給する現像剤担持体123Bと、現像剤担持体123Bに現像剤122Bを供給するトナー供給ローラ125Bと、現像剤122Bの厚みを調整する現像剤量調節手段124B、例えばブレードとを備えてなる。現像装置120Bにおいて、現像剤量調節手段124Bは、
図8に示されるように、現像剤担持体123Bの外周面に接触又は圧接している。すなわち、現像装置120Bは「接触式現像装置」である。現像ユニットC、M及びYは現像ユニットBと基本的に同様に構成されており、同じ要素には、同じ符号と各ユニットを示す記号C、M又はYとを付して、説明を省略する。
【0056】
画像形成装置100において、現像装置120Bの現像剤担持体123Bは、その表面が像担持体111Bの表面に接触又は圧接するように配置されている。現像装置120C、120M及び120Yも、現像装置120Bと同様に、現像剤担持体123C、123M及び123Yの表面が像担持体111C、111M及び111Yの表面に接触又は圧接するように配置されている。すなわち、この画像形成装置100は「接触式画像形成装置」である。
【0057】
定着手段130は、現像ユニットYの下流側に配置されている。この定着手段130は、記録体116を通過させる開口部135を有する筐体134内に、定着ローラ131と、定着ローラ131の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ133と、定着ローラ131及び無端ベルト支持ローラ133に巻き掛けられた無端ベルト136と、定着ローラ131と対向配置された加圧ローラ132とを備え、無端ベルト136を介して定着ローラ131と加圧ローラ132とが互いに当接又は圧接するように回転自在に支持されてなる圧力熱定着装置である。画像形成装置100の底部には、記録体116を収容するカセット141が設置されている。転写搬送ベルト146は複数の支持ローラ142に巻回されている。
【0058】
画像形成装置100に使用される現像剤122B、122C、122M及び122Yはそれぞれ、摩擦により帯電可能な現像剤であれば、乾式現像剤でも湿式現像剤でもよく、また、非磁性現像剤でも磁性現像剤でもよい。各現像ユニットB、C、M及びYの筐体121B、121C、121M及び121Y内には、一成分非磁性の、黒色現像剤122B、シアン現像剤122C、マゼンタ現像剤122M及び黄色現像剤122Yがそれぞれ収納されている。
【0059】
画像形成装置100は、以下のようにして記録体116にカラー画像を形成する。まず、現像ユニットBにおいて、帯電手段112Bで帯電した像担持体111Bの表面に露光手段113Bにより静電潜像が形成され、現像剤担持体123Bにより供給された現像剤122Bで黒色の静電潜像が現像される。そして、記録体116が転写手段114Bと像担持体111Bとの間を通過する際に黒色の静電潜像が記録体116表面に転写される。次いで、現像ユニットBと同様にして、現像ユニットC、M及びYによって、静電潜像が黒像に顕像化された記録体116に、それぞれシアン像、マゼンタ像及び黄色像が重畳され、カラー像が顕像化される。次いで、カラー像が顕像化された記録体116は、定着手段130によりカラー像が永久画像として記録体116に定着される。このようにして、記録体116にカラー画像を形成することができる。
【0060】
現像装置120Bは、本発明の現像ローラを備えており、現像剤搬送性に優れるとともにトナーフィルミングの発生を抑えて、高濃度で高画質の画像を長期にわたって形成することに貢献できる。また、この現像装置120Bを備えた画像形成装置100は高濃度で高画質の画像を長期にわたって形成できる。
【0061】
本発明の現像装置及び画像形成装置100は、上記したものに限定されることはなく、本発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0062】
画像形成装置は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、本発明の現像ローラが配設される画像形成装置100は、各色の現像ユニットを備えた複数の像担持体を転写搬送ベルト146上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置に限られず、例えば、単一の現像ユニットを備えたモノクロ画像形成装置、像担持体上に担持された現像剤像を無端ベルト136に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置等であってもよい。また、画像形成装置100に用いられる現像剤は、一成分非磁性現像剤とされているが、この発明においては、一成分磁性現像剤であってもよく、二成分非磁性現像剤であっても、また、二成分磁性現像剤であってもよい。
【0063】
画像形成装置100は、像担持体、現像剤供給ローラ及びブレード等に接触又は圧接して配置される接触式画像形成装置である。なお、本発明の画像形成装置100は、現像剤担持体の表面が像担持体の表面に接触しないように間隙を有して配置される非接触式画像形成装置であってもよい。
【0064】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた発明も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例】
【0065】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0066】
[実施例1]
(中空シャフトの作製)
外径9.7±0.005mm、軸線方向の長さ12mmの嵌入部と、外径7.5mm、軸線方向の長さ23mmの支持軸とを有するシャフト端部をステンレス鋼(SUS 304)で作製した。また、外径11.5mm、厚さ1.3mm、軸線方向の長さ(Lg)235mmの円筒状を成し、内径9.7mm(公差:嵌入部の外径に対して、JIS B0401(1986)における「しばりばめ」の軸の公差域クラス「P6」)の内径拡径領域(軸線方向の長さ12mm)を両端部に形成したシャフト本体をアルミニウムで作製した。次いで、シャフト本体の両端部それぞれにシャフト端部の嵌入部を嵌入して、中空シャフトを作製した。
【0067】
(プライマー層の形成)
このようにして作製した中空シャフトに対して、エタノールで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した中空シャフトを、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、中空シャフトの表面にプライマー層を形成した。
【0068】
(弾性層の形成)
次に、以下の材料から弾性層用樹脂組成物を調製した。
・ウレタン樹脂(スーパーフレックスE−2000、第一工業製薬(株)製)
100質量部
・硬化剤(エラストロンBN11、第一工業製薬株式会社製) 10質量部
・復元性粒子(XX−4132Z、復元率33%、φ10μm 積水化成品工業製)
40質量部
・水分散カーボン(導電剤) 5質量部
次に、弾性層用樹脂組成物を上記シャフト上に塗布し、160℃30分乾燥し、弾性層を厚み100μmにて形成した。
このようにして、表面粗さ Ra=1.0の実施例1の現像ローラを得た。
【0069】
[実施例2]
(弾性層の形成)
水分散カーボンに代えて、イオン導電材(EF−112N)を0.5質量部用いた以外は、実施例1と同様に弾性層を形成した。
(被覆層の形成)
次に、以下の材料で被覆層用樹脂組成物を調製し、実施例1で得られた弾性層の表面にスプレーコーティング法によって塗布し、160℃で30分間加熱して、層厚10μmの被覆層を形成した。このようにして実施例2の現像ローラを製造した。
【0070】
−ポリエステルポリオールの合成−
被覆層用樹脂組成物に使用するポリエステルポリオールを次のようにして合成した。すなわち、冷却管、温度計、水分受、窒素導入管及び減圧装置がセットされたセパラブルフラスコに、1,6−ヘキサンジオール709質量部及び1,2,4−ブタントリオール212質量部、アジピン酸472質量部及びイソフタル酸498質量部、p−トルエンスルホン酸0.5質量部、トルエン50質量部を仕込み、窒素を流しながら180℃に2時間かけて加温し、攪拌した。加温中に、全体が溶融混合し均一となって、水とトルエンとの混合物が流出してきた。180℃まで昇温後に同温度で2時間脱水縮合させた。次いで、フラスコ内の圧力を20mmHgまで徐々に減圧し、この圧力で1時間かけてトルエンを留去しつつ、引き続き脱水縮合を行った。その後冷却してポリエステルポリオールを得た。
【0071】
−被覆層用樹脂組成物の調製−
・上記で作製したポリエステルポリオール 28質量部
・ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名「デュラネートE402−80B」、旭化成株式会社製) 20質量部
・フッ素系表面調整剤 0.05質量部
・ジブチル錫ジウラウレート(商品名「ジ−n-ブチルすずジウラウレート」、昭和化学株式会社製) 0.03質量部
・シリカ(4.4μm商品名:ACEMATT OK−607 エボニックデグサ製)
3質量部
(ポリウレタン調整成分100質量部に対して9.5質量部)
・カーボンブラック(商品名「トーカブラック#5500」、東海カーボン株式会社製)
1質量部
・イオン導電材(EF−112N 三菱電子化成マテリアル製) 0.2質量部
【0072】
[実施例3]
(弾性層の形成)
ウレタン樹脂としてスーパーフレックスE−2000のかわりにE−4800(第一工業製薬株式会社)用い、復元性粒子の配合量を30質量部とし、導電性付与剤として、カーボンブラック2質量部及びイオン導電材(EF−112N)を0.5質量部用いた以外は、実施例1と同様に弾性層を形成した。
(被覆層の形成)
実施例2と同様に被覆層を形成し、現像ローラを製造した。
【0073】
[実施例4]
(弾性層の形成)
以下の材料から弾性層用樹脂組成物を調製し、実施例1と同様に弾性層を形成した。
・上記で作成したポリエステルポリオール 28質量部
・イソシアネート(E402−80B 旭化成株式会社製) 20質量部
・復元性粒子(XX−4132Z、復元率33%、φ10μm 積水化成品工業製)
20質量部
・カーボンブラック(商品名「トーカブラック#5500」、東海カーボン株式会社製)
1質量部
・イオン導電材(EF−112N) 0.5質量部
【0074】
(被覆層の形成)
シリカを復元性粒子(XX−4132Z)1質量部に代えた以外は実施例3と同様に被覆層を形成した。
【0075】
[比較例1]
復元性粒子(XX−4132Z)の代わりにウレタンC−600(商品名、復元率14%、根上工業株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様に現像ローラを作製した。
【0076】
[比較例2]
(弾性層の形成)
復元性粒子(XX−4132Z)の代わりにウレタンC−600(商品名、復元率14%、根上工業株式会社製)を使用し、カーボンブラックの量を2質量部にした以外は、実施例4と同様に弾性層を形成した。
(被覆層の形成)
実施例2と同様に被覆層を形成した。
【0077】
[評価]
(算術平均粗さRaの測定方法)
上記のようにして作製された現像ローラについて、JIS B0601−2001に基づき、表面粗さ計(商品名「サーフコム 1400G」、株式会社東京精密製)により算術平均粗さRaを測定した。
【0078】
(保存性)
画像形成装置C610dn2(型番、株式会社沖データ製)を用意し、この画像形成装置の現像ローラを作製した各実施例及び各比較例の現像ローラに差し替えて、50℃60%RHで1か月保存後、3時間室温で放置し、プリンターに組み込み印字した。
評価結果を表1に示す。なお、表1中、弾性層、及び被覆層数値の単位は質量部である。
A:初期印字で横筋発生しない
B:印字20枚までに横筋は見えなくなる
C:初期印字から横筋が発生し、20枚印字後も横筋が見える
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示すように、実施例1及び4と比較例1及び2とを比較すると、弾性層に復元性粒子を含む実施例1及び4は、復元率が14%の粒子を含む比較例1及び2と比べ、保存性に優れる。
また、実施例2、3及び4から、復元性粒子の量が多い程、保存性が良く高品質な画像を得ることができる。