【解決手段】 本発明の非水電解質電池は、外装缶と、封口板と、前記外装缶と前記封口板との間に配置されたガスケットとを有する電池容器内に、正極、負極、セパレータおよび非水電解質が収容されてなり、前記ガスケットが、架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物で構成されており、前記樹脂組成物のL
外装缶と、封口板と、前記外装缶と前記封口板との間に配置されたガスケットとを有する電池容器内に、正極、負極、セパレータおよび非水電解質が収容されてなる非水電解質電池であって、
前記ガスケットが、架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物で構成されており、
前記樹脂組成物のL*a*b*色空間における明度L*の値が、74以下であることを特徴とする非水電解質電池。
外装缶と、封口板と、前記外装缶と前記封口板との間に配置されたガスケットとを有する電池容器内に、正極、負極、セパレータおよび非水電解質が収容されてなる非水電解質電池であって、
前記ガスケットが、架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物で構成されており、
前記樹脂組成物のL*a*b*色空間における明度L*の値が、前記セパレータのL*a*b*色空間における明度L*の値よりも12以上低い値であることを特徴とする非水電解質電池。
外装缶と、封口板と、前記外装缶と前記封口板との間に配置されたガスケットとを有する電池容器内に、正極、負極、セパレータおよび非水電解質が収容されてなる非水電解質電池を製造する方法であって、
L*a*b*色空間における明度L*の値が74以下の架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物で構成した前記ガスケットを使用することを特徴とする非水電解質電池の製造方法。
外装缶と、封口板と、前記外装缶と前記封口板との間に配置されたガスケットとを有する電池容器内に、正極、負極、セパレータおよび非水電解質が収容されてなる非水電解質電池を製造する方法であって、
L*a*b*色空間における明度L*の値が、前記セパレータのL*a*b*色空間における明度L*の値よりも12以上低い架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物で構成した前記ガスケットを使用することを特徴とする非水電解質電池の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に、本発明の非水電解質電池の一例を模式的に表す縦断面図を示す。
図1に示す非水電解質電池は、正極2およびセパレータ4を内填した外装缶5の開口部に、負極3を内填した封口板6が、断面L字状で環状のガスケット7を介して嵌合しており、外装缶5の開口端部が内方に締め付けられ、これによりガスケット7が封口板6に当接することで、外装缶5の開口部が封口されて電池内部が密閉構造となっている。すなわち、
図1に示す非水電解質電池1では、外装缶5、封口板6およびガスケット7からなり、一般にボタン形やコイン形と称される扁平形の電池容器内の空間(密閉空間)に、正極2、負極3およびセパレータ4を含む発電要素が装填されており、さらに非水電解質(図示しない)が収容されている。外装缶5および封口板6は、ステンレス鋼などの金属製であり、外装缶5は正極端子を兼ね、封口板6は負極端子を兼ねている。
【0017】
本発明の非水電解質電池の第1の態様においては、外装缶と封口板との間に介在させるガスケットを、L
*a
*b
*色空間における明度L
*の値が、74以下、好ましくは70以下の架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物で構成する。
【0018】
非水電解質電池のセパレータの素材としては、例えばポリオレフィンが一般に使用されているが、このようなセパレータは、L
*a
*b
*色空間における明度L
*の値が、例えば86以上である。そのため、前記の明度を有する架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物で構成したガスケットであれば、目視や画像検査によって、ガスケットとセパレータとを容易に識別できる。よって、このようなガスケットを使用すれば、ガスケットが取り付けられた外装缶や封口板の中に汎用のセパレータを配置する際に、目視や画像検査によりセパレータの位置ずれを検知しやすくなるため、不良品を容易に排除でき、非水電解質電池の生産性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の非水電解質電池の第2の態様においては、外装缶と封口板との間に介在させるガスケットを、L
*a
*b
*色空間における明度L
*の値が、セパレータのL
*a
*b
*色空間における明度L
*の値よりも12以上、より好ましくは16以上、特に好ましくは20以上低い架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物で構成する。
【0020】
セパレータとの明度L
*の差が前記の値を満たす架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物で構成したガスケットであれば、目視や画像検査によって、ガスケットとセパレータとを容易に識別できるため、ガスケットが取り付けられた外装缶や封口板の中にセパレータを配置する際に、目視や画像検査によりセパレータの位置ずれを正しく検知できることから、不良品を容易に排除でき、信頼性の高い非水電解質電池を製造することができる。
【0021】
また、ガスケットを構成する架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の明度L
*の値をより低くすることにより、汎用のポリオレフィンセパレータよりも明度L
*が低いセパレータ(明度L
*の値が85未満のセパレータ)を用いる場合であっても、ガスケットとセパレータの明度L
*の値に一定以上の差を設けることができ、目視や画像検査によりセパレータの位置ずれを容易に検知することができる。
【0022】
従って、本発明の非水電解質電池の第2の態様においても、外装缶と封口板との間に介在させるガスケットを構成する架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、L
*a
*b
*色空間における明度L
*の値が、74以下であることが好ましく、70以下であることがより好ましい。
【0023】
本明細書でいうL
*a
*b
*色空間は、国際照明委員会(CIE)により規格化された3つの座標により表れる表色系であり、明度L
*と、色度(a
*b
*)により表され、L
*a
*b
*の各値は、分光濃度計などにより測定することができる。
【0024】
このように、本発明の非水電解質電池は、電池の組み立て工程において不良品を検知しやすい構成とすることで、信頼性の向上を達成している。
【0025】
また、架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂は、強度が大きく耐熱性および耐湿性にも優れるため、本発明の非水電解質電池は、第1の態様、第2の態様のいずれにおいても、これを含む樹脂組成物によって構成されたガスケットを使用することで、良好な封止性(特に高温下での封止性)の確保も可能としている。
【0026】
架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂とは、2次元または3次元の架橋構造を有するポリフェニレンスルフィドであり、例えば、ポリフェニレンスルフィドの製造工程中において、ポリフェニレンスルフィドを重合した後、酸素存在下で、例えば200〜250℃で熱処理を施すことによって架橋構造を形成する方法で得られるものである。
【0027】
架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂のみを含有していてもよいが、架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂と共に他の成分を、樹脂組成物の耐熱性や耐湿性を損なわい範囲であり、かつL
*a
*b
*色空間における明度L
*の値に大きな影響を与えない範囲で含有していてもよい。
【0028】
架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物における架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂の含有量は、架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂の使用によるガスケットの強度や耐熱性、耐湿性を良好に確保する観点から、90質量%以上であることが好ましい。なお、架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂のみで構成してもよいため、架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物における架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂の含有量の上限値は100質量%であるが、他の成分も添加する場合には、その使用による効果を良好に確保する観点から、架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂の含有量を99質量%以下とすることが好ましい。
【0029】
架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に添加可能な、架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂以外の成分としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマーやフィラー材(無機粒子など)が挙げられる。架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物がポリオレフィン系エラストマーも含有する場合には、樹脂組成物の柔軟性が向上するため、これによって構成されたガスケットを使用することで、非水電解質電池の封止性をより高めることができる。
【0030】
架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物にポリオレフィン系エラストマーを含有させる場合、カルボン酸基、アミド基、エポキシ基などの官能基を持った変性オレフィン系共重合体や、エチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体が例示され、その含有量は、ポリオレフィン系エラストマーの使用による効果を良好に確保する観点から、1質量%以上であることが好ましい。ただし、架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物中のポリオレフィン系エラストマーの量が多すぎると、樹脂組成物の水分透過性が高くなって、ガスケットの耐湿性が低下する虞がある。よって、架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物におけるポリオレフィン系エラストマーの含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物には、例えばポリオレフィン系エラストマーを含有するものも含めて、市販品が存在しており、これを入手してガスケットの製造に使用することができる。
【0032】
ガスケットは、架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を射出成形などすることによって形成できる。
【0033】
ガスケットは、その平均表面粗さRaが5μm以下であることが好ましく、この場合は、外装缶および封口板との密着性がより向上するため、非水電解質電池の封止性がさらに良好となる。
【0034】
本明細書でいうガスケットの平均表面粗さRaとは、JIS B 0601に規定の算術平均粗さであり、具体的には、共焦点レーザー顕微鏡(レーザテック株式会社製「リアルタイム走査型レーザ顕微鏡 1LM−21D」)を用い、50倍の倍率で90μm×90μmの視野を3視野観察し、視野毎に900×900ピクセルで測定して各点の平均線からの絶対値を算術平均することにより求められる各視野の数値を、更に算術平均して求められる値である。
【0035】
本発明の非水電解質電池は、一次電池(非水電解質一次電池)としての形態を取ることもでき、また、二次電池(非水電解質二次電池)としての形態を取ることも可能である。
【0036】
非水電解質電池の正極には、正極には、正極活物質、導電助剤およびバインダを含有する正極合剤をペレット状に成形した正極合剤成形体や、前記正極合剤で形成された正極合剤層を集電体の表面に形成した構造のものが使用できる。
【0037】
正極活物質としては、二酸化マンガン;バナジウム酸化物、ニオブ酸化物、チタン酸化物、二硫化鉄などの硫化物;フッ化黒鉛;Li
xMn
3O
6(0<x<2)、Li
xMnO
2(0<x<1)などのリチウム含有マンガン酸化物、Li
xTi
5/3O
4(4/3≦x<7/3)、LiMn
2O
4やその元素の一部を他元素で置換したスピネル構造の複合酸化物、Li
1+xM
1O
2(−0.1<x<0.1、M
1:Co、Ni、Mn、Al、Mgなど)で表される層状構造のリチウム含有複合酸化物、LiM
2PO
4(M
2:Co、Ni、Mn、Feなど)で表されるオリビン型化合物などの各種リチウム含有複合酸化物;などが挙げられる。
【0038】
前記層状構造のリチウム含有複合酸化物としては、LiCoO
2などのコバルト酸リチウムやLiNi
1−aCo
a−bAl
bO
2(0.1≦a≦0.3、0.01≦b≦0.2)などの他、少なくともCo、NiおよびMnを含む酸化物(LiMn
1/3Ni
1/3Co
1/3O
2、LiMn
5/12Ni
5/12Co
1/6O
2、LiNi
3/5Mn
1/5Co
1/5O
2など)などが例示できる。
【0039】
正極合剤に係る導電助剤には、例えば、アセチレンブラック;ケッチェンブラック;チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維;などの炭素材料の他、金属繊維などの導電性繊維類;フッ化カーボン;銅、ニッケルなどの金属粉末類;ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料;などを用いることができる。
【0040】
正極合剤に係るバインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)などが挙げられる。
【0041】
正極は、正極合剤成形体の場合には、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを混合して調製した正極合剤を所定の形状に加圧成形することで製造することができる。
【0042】
また、正極合剤層と集電体とを有する形態の正極の場合には、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを水またはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの有機溶媒に分散させて正極合剤含有組成物(スラリー、ペーストなど)を調製し(バインダは溶媒に溶解していてもよい)、これを集電体上に塗布し乾燥し、必要に応じてカレンダ処理などのプレス処理を施す工程を経て製造することができる。
【0043】
ただし、正極は、前記の各方法で製造されたものに限定されず、他の方法で製造したものであってもよい。
【0044】
正極に係る正極合剤中の組成としては、正極活物質の量が80〜98質量%であることが好ましく、導電助剤の含有量が1.5〜10質量%であることが好ましく、バインダの含有量が0.5〜10質量%であることが好ましい。
【0045】
正極合剤成形体の場合、その厚みは、0.15〜4mmであることが好ましい。他方、正極合剤層と集電体とを有する形態の正極の場合、正極合剤層の厚み(集電体の片面あたりの厚み)は、30〜300μmであることが好ましい。
【0046】
正極に集電体を用いる場合には、その集電体としては、例えば、SUS316、SUS430、SUS444などのステンレス鋼;アルミニウムやアルミニウム合金;を素材とするものが挙げられ、その形態としては、平織り金網、エキスパンドメタル、ラス網、パンチングメタル、金属発泡体、箔(板)などが例示できる。集電体の厚みは、例えば、0.05〜0.2mmであることが好ましい。
【0047】
非水電解質電池の負極には、負極活物質およびバインダなどを含有する負極合剤層を集電体上に形成した構造のものや、負極活物質となる金属箔などをそのまま用いたもの、更には、負極活物質となる金属箔と集電体とを積層した構造のものなどを使用することができる。
【0048】
非水電解質電池が一次電池の場合の負極活物質としては、金属リチウム、リチウム合金(リチウム−アルミニウム合金)などが挙げられる。
【0049】
また、非水電解質電池が二次電池の場合の負極活物質としては、金属リチウム、リチウム合金(リチウム−アルミニウム合金)などのほか、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などの炭素材料;Si、Snなどのリチウムとの合金化が可能な元素を含む合金;SiやSnの酸化物:などが挙げられる。
【0050】
負極合剤層を有する負極の場合のバインダには、正極合剤に係るバインダとして先に例示した各種バインダと同じものを用いることができる。また、負極合剤層には導電助剤を含有させてもよく、その場合の導電助剤としては、正極合剤に係る導電助剤として先に例示した各種導電助剤と同じものを用いることができる。
【0051】
負極合剤層と集電体とを有する形態の負極の場合、例えば、負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて導電助剤などを水またはNMPなどの有機溶媒に分散させて負極合剤含有組成物(スラリー、ペーストなど)を調製し(バインダは溶媒に溶解していてもよい)、これを集電体上に塗布し乾燥し、必要に応じてカレンダ処理などのプレス処理を施す工程を経て製造することができる。
【0052】
ただし、負極は、前記の各方法で製造されたものに限定されず、他の方法で製造したものであってもよい。
【0053】
負極合剤層の組成としては、例えば、負極活物質の含有量が70〜99質量%であることが好ましく、バインダの含有量が1〜30質量%であることが好ましい。また、導電助剤を使用する場合には、負極合剤層における導電助剤の含有量は、1〜20質量%であることが好ましい。更に、負極合剤層の厚み(集電体の片面あたりの厚み)は、1〜100μmであることが好ましい。
【0054】
負極の集電体には、例えば、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはそれらの合金などからなる箔、パンチドメタル、エキスパンドメタル、網などを用い得るが、通常、厚みが5〜30μmの銅箔が好適に用いられる。
【0055】
非水電解質電池のセパレータには、樹脂製の微多孔膜(微孔性フィルム)や不織布を好適に用いることができる。
【0056】
セパレータを構成する樹脂は、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィンであることが好ましい。ポリオレフィン製のセパレータであれば、L
*a
*b
*色空間における明度L
*の値が、例えば86以上であるため、ガスケットを構成する架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の明度L
*が比較的大きく、目視や画像検査によるガスケットとの識別がより容易となる。
【0057】
セパレータが微多孔膜である場合の厚みは、10〜30μmであることが好ましく、不織布である場合の厚みは、20〜500μmであることが好ましい。
【0058】
非水電解質電池の非水電解質には、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解させた溶液(非水電解液)が使用される。この場合のリチウム塩としては、LiClO
4、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiSbF
6などの無機リチウム塩;LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、Li
2C
2F
4(SO
3)
2、LiN(CF
3SO
2)
2、LiC(CF
3SO
2)
3、LiC
nF
2n+1SO
3(n≧2)、LiN(R
fOSO
2)
2〔ここでR
fはフルオロアルキル基〕などの有機リチウム塩;などが挙げられる。
【0059】
また、非水電解液に係る有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;プロピオン酸メチルなどの鎖状エステル;γ−ブチロラクトンといった環状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリルといったニトリル類;エチレングリコールサルファイトなどの亜硫酸エステル類;などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても構わない。なお、より良好な特性の電池とするためには、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒など、高い導電率を得ることができる組み合わせで用いることが望ましい。
【0060】
また、これらの非水電解液に安全性や充放電サイクル性、高温貯蔵性といった特性を向上させる目的で、ビニレンカーボネート類、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤を適宜加えることもできる。
【0061】
リチウム塩の非水電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/lとすることがより好ましい。
【0062】
また、非水電解液は、公知のポリマーなどのゲル化剤を用いてゲル状(ゲル状電解質)としてもよい。
【0063】
また、非水電解液に代えて、ポリマー電解質や固体電解質を非水電解質として用いることもできる。
【0064】
非水電解質電池の平面視での形状は、円形でもよく、四角形(正方形・長方形)などの多角形であってもよい。また、多角形の場合には、その角を曲線状としていてもよい。
【0065】
本発明の非水電解質電池は、従来から知られている非水電解質電池(一次電池または二次電池)と同様の用途に適用することができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0067】
(実施例1)
正極活物質である二酸化マンガンと、導電助剤であるカーボンブラックと、バインダであるPTFEとを、93:3:4の質量比で混合して調製した正極合剤を成形して、直径16mm、厚み1.8mmの正極(正極合剤成形体)を得た。
【0068】
また、負極を構成するための前駆体として、厚みが0.6mmのリチウム箔の片面に、厚みが10μmのアルミニウム箔を圧着し、これを直径16mmの円形に打ち抜いて、リチウム層とアルミニウム層の積層体を得た。
【0069】
次に、プロピレンカーボネートと1,2−ジメトキシエタンとを、体積比1:1で混合した混合溶媒に、LiClO
4を0.5mol/lの濃度で溶解させ、更に1,3−プロパンスルトン1質量%を添加して非水電解液を調製した。
【0070】
前記の正極と、リチウム層とアルミニウム層の積層体と、非水電解液とを使用し、ガスケットには、架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂100質量部と、エチレンとグリシジルメタクリレートとの共重合体(質量比は88:12)7質量部とで構成された樹脂組成物(ポリマーアロイ)により作製された環状ガスケット(平均表面粗さ:0.6μm)を使用し、セパレータにPPS製の不織布(厚み400μm)を使用して、以下の手順でコイン形非水電解液一次電池を組み立てた。
【0071】
まず、ガスケットを封口板に装着した後、負極を構成するための前記積層体を、リチウム層が封口板に接するようにして前記封口板の内底面に載置し、さらに、前記セパレータを前記積層体の上に配置した。この時、セパレータが配置された前記封口板全体の画像データをカメラにより取り込み、前記画像データからガスケットとセパレータの位置を判断し、セパレータの位置がガスケットに対して一定以上ずれているものを検知するようにし、セパレータが所定の位置に配置されていない封口板を分別し、セパレータが正しく配置されている封口板のみを用いて電池が組み立てられるよう組み立て装置を構成した。
【0072】
選別された封口板のセパレータの上に前記正極(合剤成形体)を載置し、さらに前記非水電解液を注入した後、外装缶を上から被せてかしめ封口を行うことにより、
図1に示す構造で、直径20mm、高さ3.2mmのコイン形非水電解液一次電池を組み立てた。
【0073】
なお、前記の組み立て工程において、前記リチウム層とアルミニウム層の積層体が非水電解液と接触することにより、電池内でアルミニウム層がリチウムと反応して、表面にリチウム−アルミニウム合金層を有する負極が形成された。
【0074】
また、前記ガスケットを構成する樹脂組成物の板を3枚作製し、エックスライト社製反射分光濃度計(X−rite 939)を用いて前記樹脂組成物の明度L
*を測定した。
【0075】
白色基準板および黒色基準版による校正を行った後、測定スポットサイズ:3.4mmの測定径にて明度L
*を測定しその平均値を求めたところ、それぞれの板の明度L
*の平均は65.0となった。
【0076】
また、前記セパレータについても、そのまま測定試料とし、同様にして3枚のセパレータの明度L
*を測定して平均値を求めたところ、セパレータの明度L
*の平均は89.0となり、前記ガスケットを構成する樹脂組成物と前記セパレータとの明度L
*の差は24.0となった。
【0077】
(比較例1)
ガスケットとして、直鎖状のポリフェニレンサルファイド樹脂により構成された環状ガスケット(平均表面粗さ:0.6μm)を用いた。実施例1と同様にして、前記ガスケットを構成する樹脂組成物の明度L
*を測定したところ78.3となり、セパレータとの明度L
*の差は10.7であった。以下、実施例1と同様にしてコイン形非水電解液一次電池を組み立てようとしところ、ガスケットとセパレータとの明度の差が小さく、セパレータの位置を正しく検知できなかった。
【0078】
そのため、拡大鏡を用い目視でセパレータの位置を判断し、セパレータが正しく配置されている封口板を選別してコイン形非水電解液一次電池を組み立てた。
【0079】
実施例1および比較例1の電池を、100℃の恒温槽中で75日間保持し、貯蔵後に取り出して放冷させ、室温まで冷却した電池に1kHzの交流を印加して電池の内部抵抗を測定した。あらかじめ高温貯蔵前の電池についても内部抵抗を測定しておき、高温貯蔵前後での内部抵抗の上昇の程度によりガスケットの封止性を評価した。
【0080】
また、実施例1および比較例1の電池を、100℃の恒温槽中で75日間保持し、貯蔵後に取り出して放冷させ、室温まで冷却した電池に400Ωの放電抵抗を接続して放電させ、放電開始から1秒後の電池の閉回路電圧(CCV)を測定した。高温貯蔵後の電池の放電電圧によりガスケットの封止性を評価した。
【0081】
前記測定結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表1に示す結果から、架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物で構成されたガスケットを用いた実施例1の電池は、高温貯蔵後においても、従来の直鎖状のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物で構成されたガスケットを用いた比較例1の電池と同等の優れた特性を示しており、優れた封止性を有することが確認された。